(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記被処理流体の供給状態及び/又は前記触媒体の反応状態に応じて、前記各ヒーター部にそれぞれ異なる電気量を供給する請求項1又は2に記載の触媒反応システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出されたもので、例えば、有機ハイドライドの脱水素反応の反応転化率の向上や触媒物質の長寿命化等に役立つ触媒反応システム及び触媒反応装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、被処理流体の化学反応を促進させる触媒を用いた触媒反応システムであって、前記被処理流体が流れるチャンバーと、前記被処理流体と接触可能に前記チャンバー内に配される触媒部材と、前記触媒部材に電力を供給する制御装置とを含み、前記触媒部材は、前記被処理流体の流れ方向に沿って多段に配された複数の触媒体を有し、前記各触媒体は、通電により発熱するヒーター部と、前記ヒーター部の表面に配された触媒物質を担持した担体とを有し、前記制御装置は、前記各触媒体の温度を互いに独立して制御することを特徴とする。
【0008】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記制御装置は、前記各ヒーター部に通電する電気量を調整することにより、前記各触媒体の温度を制御することが望ましい。
【0009】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記制御装置は、前記被処理流体の供給状態及び/又は前記触媒体の反応状態に応じて、前記各ヒーター部にそれぞれ異なる電気量を供給することが望ましい。
【0010】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記制御装置は、前記被処理流体の流れ方向の上流側の触媒体に対して通電し、その輻射熱を利用することにより、その下流側の触媒体に対して、より少ない電気量を付加するか又は無通電状態とすることが望ましい。
【0011】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記制御装置は、前記被処理流体の流れ方向に並ぶ前記触媒部材のヒーター部を間欠的に通電することが望ましい。
【0012】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記制御装置は、前記ヒーター部の電気量と温度との変化から前記触媒物質の機能劣化を検知する検知手段と、前記触媒物質の機能劣化が検知された触媒体よりも下流側の触媒体への電気量を変化させる調整手段とを含むことが望ましい。
【0013】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記調整手段は、電力調整器を含むことができる。
【0014】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記被処理流体は、水素と芳香族化合物とを含み、前記化学反応が、水素と芳香族化合物との水素付加反応による有機ハイドライドを生成するものに好適である。
【0015】
前記第1発明の触媒反応システムにおいて、前記被処理流体は、噴霧状のメチルシクロヘキサン(MCH)と随伴ガスとを含み、前記被処理流体から脱水素反応によって水素を生成することが望ましい。
【0016】
本願の第2発明は、被処理流体の化学反応を促進させる触媒を用いた触媒反応装置であって、前記被処理流体が流れるチャンバーと、前記被処理流体と接触可能に前記チャンバー内に配置された触媒部材と、前記触媒部材に電力を供給する制御装置とを含み、前記触媒部材は、前記被処理流体の流れ方向に沿って多段に配された複数の触媒体を有し、前記各触媒体は、通電により発熱するヒーター部と、前記ヒーター部の表面に配された触媒物質を担持した担体とを有し、前記制御装置は、前記各触媒体の前記ヒーター部への通電量を制御して、各触媒体の温度を互いに独立して制御可能に回路形成されていることを特徴とする。
【0017】
前記第2発明の触媒反応装置において、前記触媒体は、線材がコイル状に成形されたものであり、前記線材は、ヒーター芯材と、その表面を覆う多孔質のアルマイト層と、前記多孔質の細孔内に担持された前記触媒物質とを含むことが望ましい。
【0018】
前記第2発明の触媒反応装置において、前記触媒体は、前記チャンバーに設けた反応室に沿って渦巻状に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の触媒反応システムは、被処理流体が流れるチャンバーと、被処理流体と接触可能に前記チャンバー内に配される触媒部材と、前記触媒部材に電力を供給する制御装置とを含み、前記触媒部材は、被処理流体の流れ方向に配された複数の触媒体を有し、各触媒体は、通電により発熱するヒーター部と、前記ヒーター部の表面に配された触媒物質を担持した担体とを有し、前記制御装置は、例えば、被処理流体の反応転化率を向上させるように、又は、触媒物質の劣化が抑制されるように、各触媒体の温度を互いに独立して制御することができる。従って、本発明のシステム及びこれを具現化する前記触媒反応装置による発明によれば、被処理流体の反応転化率の向上や触媒物質の長寿命化が図られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
本実施形態は、例えば、被処理流体として芳香族化合物(有機ハイドライド)が用いられ、該芳香族化合物の脱水素化反応(吸熱反応)を促進して例えば水素生成を図る触媒反応装置(以下、単に「反応装置」ともいう。)に利用され得る。
【0022】
この反応に用いられる被処理流体には、例えば、エステル類、カルボン類及びアルデヒド類などの他、メチルシクロヘキサン(MCH)、ベンゼン及びシクロヘキサン等の芳香族化合物の水素化誘導体が用いられる。これらは、気体乃至噴霧状のガス流体として利用される。本実施形態の触媒反応装置1は、好適には、上記化合物の触媒反応による水素生成システムを構成する。
【0023】
図1は、上述の水素生成システム20の処理フローを示す一例である。このシステム20では、例えば、被処理流体に芳香族化合物(例えばトルエン)の水素化誘導体である有機ハイドライド(例えば、メチルシクロヘキサン:MCH)が用いられている。このシステム20は、例えば、MCHを貯留する貯槽21と、貯槽21内のMCHを圧送するポンプ22と、圧送されたMCHを気化するための気化器23と、その下流側に配される触媒反応装置24と、その反応装置24で生成された反応ガスを冷却して気液分離可能にする冷却器25とを具えている。このシステム20では、得られた生成物中の気体分は水素として、タンク28内の液体はトルエンとして、それぞれ取り出される。取り出されたトルエンは、必要に応じてその逆反応を利用してMCHに戻される循環型の反応装置を構成することができる。
【0024】
前記システム20は、さらに、MCHの供給背圧と反応装置24の触媒物質の酸化劣化を防止するための随伴用ガスを併用する場合が示されている。随伴用ガスには、実質的に還元性雰囲気をもたらすように、例えば水素などが用いられる。
【0025】
図2は、
図1のシステムの触媒反応装置24の要部の分解斜視図である。
図2において、被処理流体Gは、矢印方向に上から下に向かって流れ、触媒反応装置24の上流側には、気化器23が配置されている。反応装置24と気化器23とは、例えば、継手状のフランジ30を介して接続される。気化器23は、加熱用ヒーターhにより、被処理流体Gを所定温度に加熱することにより、気体ガス状乃至噴霧状に変性させる。その加熱条件は、被処理流体Gの種類や処理条件によって適宜調整され、本実施形態では、例えば、300〜400℃、より最適には320〜360℃に設定される。
【0026】
気化器23は、その下流側にノズル部材26が設けられている。ノズル部材26と反応装置24とは、フランジ30によって一定の距離を隔てて配置されている。ノズル部材26は、気体状の被処理流体Gが触媒反応装置24に対してほぼ平均的に送給されるように、下流側に向かってなだらかに増幅する流通路を具えている。これにより、被処理流体Gがノズル部材26やフランジ30内に滞留することが防止される。被処理流体Gが既に気体ガス化している場合、気化器23は不要であり、該気化器23及びノズル部材26は必要に応じて採用される。
【0027】
触媒反応装置24は、例えば、被処理流体Gの流れ方向に沿って配された第1ユニット24A及び第2ユニット24Bを含んでいる。この場合、より高効率型の反応装置が提供され得る。ただし、触媒反応装置24は、さらに多段にすることでより特性向上が図れる。その場合、異なる構造の反応装置を組み合わせることもできる。逆に、触媒反応装置24は、一つのユニットで構成されても良い。
【0028】
図3には、各ユニット24A、24Bの平面図を示し、
図4には、そのA−A断面図が示されている。
図3〜
図4に示されるように、各ユニット24A、24Bは、チャンバー2に相当するホルダー2Cを用いた形態を示し、該ホルダー2Cには、反応室31が形成されている。
【0029】
本実施形態の反応室31は、例えば、螺旋状にのびる凹溝状の空間として提供されている。これによって反応装置24としてコンパクト化でき、この反応室31には、被処理流体Gが供給される。反応室31内には、触媒部材3が配置されている。必要ならば、反応室31の内壁面31Aにも、触媒物質を担持させることができる。反応室31の底面には、触媒部材3との触媒反応で生成する生成物を系外に排出する複数の排出口34が設けられている。
【0030】
触媒反応装置24は、上述のような一連の装置を構成することで、より好ましい芳香族化合物の水素化反応、乃至該芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応がライン化され、それぞれ促進させる触媒反応装置として用い得る。必要ならば、汎用型としてこのような可逆反応を随時行なう応用システムとしても用い得る。
【0031】
図5には、触媒反応装置24の構成がさらに具体的に説明される。触媒反応装置24は、前記チャンバー2と、チャンバー2内の被処理流体Gと接触可能にチャンバー2内に配された触媒部材3と、触媒部材3に所定の電気量を供給しうる制御装置4とを含んで構成される。
【0032】
チャンバー2の形状、構造及び大きさは、特に限定されない。本実施形態のチャンバー2は、例えば、外径30〜300mm、高さ20〜200mm程度の寸法に成形されたアルミニウム製のブロックで形成されている。チャンバー2は、被処理流体Gが供給される入口2aと、その反対側には、処理済流体が排出される出口2bとを有する。チャンバー2は、図示しない配管等に接続され、その内部は実質的に外界と隔離された無酸化状態に維持される反応室31を形成する。これによって、気化器23で気体状化した被処理流体Gは、入口2aから入り、出口2bから排出されるまでの間、チャンバー2内に滞在する。
【0033】
触媒部材3は、ガスGの流れ方向(即ち、上流側から下流側に向かう方向)に沿って多段に配された複数の触媒体3a乃至3eを有している。従って、内蔵された各触媒体3a〜3eは、チャンバー2内で効果的に被処理流体Gと接触し、目的の触媒反応が行われる。本実施形態では、5つの触媒体3a乃至3eが、ほぼ隣接した状態で配置されている。触媒体の個数は、本実施態様に限定されるものではなく、少なくとも2つ設けられていれば良い。
【0034】
各触媒体3a乃至3eは、各々通電により発熱するヒーター部6と、各ヒーター部6の表面に配された触媒物質7を担持する担体8との複合部材として用いられる。
【0035】
触媒体3a乃至3eは、例えば、ワイヤー状の細線が推奨される。細線は、例えば、線径が1mm以下であるのが望ましい。このように細径化された細線は、表面積の増大によって触媒物質の担持量を効果的に高め、効率よく触媒反応を得ることができる。それに見合うように、ヒーター部6及び担体8が各々設定される。
【0036】
ヒーター部6は、通電によって所定の反応温度に自己発熱可能な電気的特性を具えた材料が好適であり、例えば、銅、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、バナジウム、ニオブ、クロム、チタン、アルミニウム、シリコン、モリブデン、タングステン及び鉄のグループから選択される少なくとも1種の金属又はその合金のいずれかから選択される。
【0037】
ヒーター部6の表面には、所定厚さ(例えば0.1〜500μm、好ましくは5〜60μm程度)の層状で触媒物質を担持する担体8が設けられる。担体8は、直接又は間接的にヒーター部6に一体に形成されている。本実施形態の担体8は、例えば、多孔質構造のアルミナ層を含み、その細孔内に所定の触媒物質7を担持することができる。すなわちアルミナ層は、アルミニウムの酸化表面処理(アルマイト処理)によって、表面側に多数の微細孔を有する前記多孔質構造が形成されるもので、触媒物質はその微細孔の内壁面上に適宜担持することができる。
【0038】
担体8は、上記以外にも、例えばTa、Mg又はTiなどの金属材料を用いて、同様の多孔質な表面構造を持つものでも良い。多孔質構造のアルミナ層の形成については、例えば特開2005−171340号公報、特開2004−107739号公報などに見られるように容易に採用され得る。
【0039】
触媒物質7は、用いられる被処理流体Gの種類に応じて種々のものが選択される。特に限定はされないが、触媒物質7は、例えば、白金(白金族金属及びその合金を含む)が好適である。触媒物質7は、白金以外にも、ロジウム、レニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される1以上の遷移金属が採用される。触媒物質7は、例えば、多孔質構造の担体8に塗布され、圧力をかけて細孔内に圧入浸透される。
【0040】
触媒物質7及びこれが担持される担体8やその処理方法、形状などについては、特に限定されず種々形態のものが採用可能である。触媒体3a乃至3eとして、前記ワイヤー状の細線を用いたものでは、単位容積当たりにおける担体8の収容量が高く、より増大した表面積に触媒物質が担持できるので、触媒反応の促進が図られる点で望ましい。
【0041】
触媒反応の効果をより高める工夫として、触媒体3a乃至3eは、所定の巻径で巻回したコイル線として用いられることが望ましい。とりわけ、WO2012/090326A1のように、巻き径の異なる大小複数のコイル線が同心状に挿通してなる複合コイル線体として構成されるのが望ましい。さらに、コイル線は、例えば、本実施形態のように、渦巻状乃至蛇行状に成形されることで、見掛け上、平面的に形成されるのが望ましい。ただし、触媒体3a乃至3eは、上記形態以外にも、任意の形態で実施できる。
【0042】
図6はその一例として、コイル状とされた触媒体3a乃至3eが示されている。触媒体3a乃至3eは、両端40の芯材が露出した部分40を介してカプラCが設けられている。触媒体3a乃至3eは、
図3の反応装置の渦巻状の反応室31内に装着されることで、渦巻状に保たれる。
図7は、コイル径が異なる2種類のコイル線同士を同心状に配置した複合コイル線体の構成が示されている。
【0043】
触媒体3a乃至3eは、このようなコイル状以外にも、例えば、帯状、板状乃至メッシュ状などの種々形態で形成される。
【0044】
図4に示されるように、反応室31には、被処理流体Gの流れを広範囲に分散させるために、分散材35が配置されるのが好ましい。分散材35は、例えば、石英やシリカセラミック等の無機製粉末、繊維材料又は多孔質材料が好適に用いられる。多孔質材料としては、例えば、空隙率が40%以上であるものが望ましい。このような分散材35は、最上段の触媒体3aを覆うように、あるいは各触媒体3a乃至3eと反応室31との間の隙間に用いることで、複雑な流路を形成し、被処理流体Gと触媒物質との接触機会を高めるのに役立つ。
【0045】
本実施形態の触媒反応装置24は、
図5のように、さらに電源部10と、リレー素子11a〜11eと、リレー回路9(9a〜9e)とを具えている。各触媒体3a乃至3eのヒーター部6毎に各々独立した電気量が付加できるように、各触媒体3a乃至3eと制御装置4との間には、リレー素子11a〜11eでスイッチングされた電力を各触媒体3a〜3eに供給するためのリレー回路9(9a〜9e)が設けられている。これにより、各触媒体3a乃至3eは、各々、独立して通電制御、ひいては加熱制御される。リレー素子11a〜11eは、例えば、半導体やトランジスター等が用いられ、制御装置4からの制御信号により、所定のタイミングで独立してスイッチングされる。
【0046】
また、触媒反応装置24は、温度センサー12a乃至12eを含んでいる。各温度センサー12a乃至12eは、それぞれ、各触媒体3a乃至3eの温度を測定し、その検知信号を制御装置4にフィードバックする。制御装置4は、触媒体3a乃至3eへの通電量と、発熱温度の関係をシステム的に計測し、制御する。その計測管理は、例えば熱処理炉などの温度管理に利用されている電力調整器が採用できる。電力調整器は、温度センサーで計測された温度と目標設定温度の差異に基づいて、その回路に通電する出力電圧乃至電流を適宜調整する。これにより、各触媒体3a乃至3eが、一定温度に制御される。
【0047】
本実施形態の触媒反応装置24によれば、制御装置4は、各リレー素子11a乃至11eを個別にオンオフさせることで、各触媒体3a乃至3eへの通電量を独立して制御することができる。これにより、各触媒体3a乃至3e毎に、各々任意な温度に設定することができ、独立した調整が可能となる。
【0048】
温度調整のより好ましい形態として、前記脱水素反応の場合が説明される。被処理流体Gは、一般に、手近な上流側の触媒体3aと接触する機会が多い。これに伴う上流側の触媒体3aの温度低下を軽減するために、触媒体3aには相対的なものとして、大きな電気量が付加される。一方、その下流側の触媒体3bは、上流側の触媒体3aからの輻射熱を受けて温められる。従って、下流側の触媒体3bへの通電量は、相対的なものとして、やや低い電気量又は無通電状態に設定され得る。これにより、触媒体3a乃至3eを一定温度に調整することができる。各触媒体3a乃至3eへの通電量(電圧又は電流)は、例えば、被処理流体Gの供給状態や濃度、触媒物質との反応状態に応じて異ならせることができる。また、多段に積層配置された各触媒体に対して、1乃至複数間隔毎に通電量を変化させることも好ましい。
【0049】
触媒体3a乃至3eは、使用によって触媒反応による吸熱乃至発熱反応を生じさせることから、これを前提に、通電量と温度との関係をデーター管理することで、触媒の反応状況が観察され得る。例えば、触媒体3a乃至3eが長期使用されると、コーキング現象等により、触媒体3a乃至3eに機能低下が生じることがあるが、この場合、通電量と加熱温度との関係が、変化する。
【0050】
本実施形態では、制御装置4が、各触媒体3a乃至3eの通電量と温度との関係を経時的に計測し、そのデーターを管理して変化を捉えることで、触媒物質の機能劣化を検知する検知手段50を具えている。また、制御装置4は、例えば、触媒反応の最適化を図るように、加熱ポイントを、機能低下した触媒体から一段下流側の触媒体に移すように制御する調整手段60を具えている。このような実施形態では、より効果的で安定した触媒反応が得られ、装置全体の長寿命化が図られる。
【0051】
必要ならば、下流側の触媒体に加熱ポイントが移転した情報に基づいて、上段側の劣化した触媒体に付加する通電量を低減させることが望ましい。これにより、上流側の触媒体において、例えば、コーキング現象の抑制が図られる。さらに、このような制御をより下流側にまで引き継ぐようにプログラミングすることで、装置全体として、ロングランできる点で特に好ましい。コーキング現象によって機能低下した各触媒体は、例えば、その後に別途行われる空気環境下での300〜400℃程度で加熱する空気再生処理によって、容易に機能回復をすることができる。
【0052】
図8には、その効果の一例として、実施例に基づく反応の経時変化の一例が示されている。これは、最も上流側の触媒体が機能低下したとき(この例では転化率がb%以下になった時間S1)、その次の下流側の触媒体に通電ポイントを移行させる。これにより、転化率の低下が抑制されている。さらに、下流側の触媒体が機能低下したとき(この例では転化率がb%以下になった時間S2)、その次の下流側の触媒体に通電ポイントを移行させる。これにより、再び、転化率の低下が抑制されている。通電ポイントが最下流まで至った段階では、該反応装置24を空気再生処理し、機能回復させることができる。こうした方法により、寿命アップを図ることが可能となる。
【0053】
上記のような調整手段60を有することで、例えば、メチルシクロヘキサンの転化率及びトルエンの選択率を向上しうる。また、本実施形態の反応装置24は、機能回復ができることから、水素化反応又は脱水素化反応用の触媒装置に有効に採用される。また長寿命ももたらし得る。なお、「メチルシクロヘキサン転化率」とは、被処理流体のメチルシクロヘキサンが前記触媒反応に伴い実質的に反応して水素及びトルエン等に転化した物質の分量を比率で示すもので、残分は未反応状態のものとなる。従って、この比率が高いものほど反応効率に優れることを意味する。「トルエン選択率」とは、該反応物質中に占める前記水素及びトルエンのみの含有比率で、この比率が高いものほど副次的な生成分が少なく良好なことを意味する。これらは、いずれも前記ガスクロマトグラフィーにより分析可能である。
【0054】
以上の説明は、主として、被処理流体の吸熱現象を伴う脱水素化反応によって水素を生成する場合である。次の実施例では、本発明がさらに詳細に説明されるが、本発明は、このような実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
[触媒体の製作]
本発明の実施例の触媒体は、
図6及び
図7に示すように、Ni95wt%以上の純Ni線41をヒーター材として、その表面に触媒物質Xを担持するためのアルミニウム帯42をクラッドしたクラッド複合材を出発材料とし、これに冷間伸線と熱処理を行いながら、仕上げ線径0.70mmに細径化して複合線43を得た。複合線43のアルミニウム層の複合率は60%で、Ni線41はアルミニウム層でほぼ同心状に覆われていた。
【0056】
次に、複合線43が、市販のコイル巻き線機にセットされ、コイル平均径が7mmと4mmの2種類で、長さ約250mmのコイル線44A,44Bが製作された。各コイル線の線径dと平均コイル巻径Dとの比(D/d)は、7〜15倍に調整された。
【0057】
上記各コイル線44A、44Bは、陽極酸化処理にてアルミニウム層の表面にアルマイト層が形成された後、温度300〜600℃の範囲で約1時間の焼成処理、及び、温水による水和処理が行われた。これにより、コイル線44A、44Bは、アルミニウム層の表面に厚さ10〜30μmの均一厚さの層状で、かつ微細な細孔(孔径10〜200nm)を具えるγアルミナ系の多孔質構造を備える担体とされた。その具体的構成や処理条件等は、上記WO2012−090326号に沿うものであった。
【0058】
次に、含浸法によって、各コイル線44A、44Bの多孔質の細孔内に、白金製触媒物質を担持させた後、大小2種類のコイル線44A、44B同士が嵌め合わされ、
図7に示したような複合コイル状の触媒体3を得た。
【0059】
[触媒反応装置への組込み]
複合コイル状の複数の触媒体3は、チャンバー2の渦巻状の反応室に沿って順次多段(この実施例では4段)に重ねて組込まれた。触媒体3の両端40はカプラCを介して制御装置4に接続された。
【0060】
各触媒体3a乃至3dには、さらに、温度センサー12が接続された。本実施例では、さらに、反応室31の隙間に、非導電性の石英粉末からなる分散材35が配置された。
〔脱水素試験〕
【0061】
本試験では、上記触媒反応装置に対して被処理流体を送給し、脱水素反応を行わせた。被処理流体は、シクロメチルヘキサン(MCH)であり、噴霧化したガス状で4ml/minの条件で供給された。制御装置は、最上流の触媒体に2.2(A/dm
2)、その下流側の触媒体には2.0(A/dm
2)の電気量を各々供給し、各触媒体3a乃至3dが、設定温度340℃になるように制御された。さらに、各温度センサーの計測値がほぼ均一化するように電気量が調整された。
【0062】
連続200時間試験した結果、水素生成量は0.4(L/min)、転化率は90.6%であった。この性能は、複合コイル線の触媒体を1本だけ用いた場合に比して、水素生成量では0.3(L/min)、転化率は約8%の向上をもたらし、本システムの有効性を裏付けるものとして、拡大普及に大きく期待できるものであった。
【実施例2】
【0063】
実施例1で用いた4段のコイル状の触媒体を収納したホルダーユニットをさらに4ユニット準備し、各ユニットを直列に多段積みすることで合計16段の触媒体を配置した触媒反応装置が試作され、実施例1と同様の脱水素試験が行われた。各触媒体への通電は、各ユニットそれぞれにおいて、最上流(第1段)と第3段の触媒体に対してのみ2(A/dm
2)を付加し、2段目及び4段目の触媒体については、実質的にその隣接配置する第1段及び第3段の触媒体の輻射熱を受けるため、無通電状態とされた。連続24時間の脱水素反応の結果、水素生成量は8(L/min)、転化率は99.2%であった。
【実施例3】
【0064】
実施例2の多段ユニット型の触媒反応装置について、通電方法の調整による長寿命化試験を行なった。試験は、実施例2と同様、各ユニット毎にその上流側から勾配的に通電量を低くするように設定されており、上段部では2(A/dm
2)を付加している。この状態で、各触媒体の通電量と発熱温度、並びに水素生成量との関係を経時的にデーター回析しながら、徐々に前記関係が低下して、
図8のようにその関係が試験当初値の70%を下回った時点をその触媒体の使用期限として、通電のポイントを次段の第2触媒体に切り替える方式で通電量を移行し、その切り替え操作は電力調整器で自動化している。こうして、収納された各触媒体に対する通電を順次移行させることで、結果的に連続3000時間の使用にも十分に対応できるものとなった。
【実施例4】
【0065】
実施例1の方法で得た線径0.45mmのアルミニウム被覆複合線を用いて20#の平織りメッシュシートが成形された。このメッシュシートは、シュウ酸溶液中での陽極酸化処理によって複合線の表面上にアルマイト層が形成され、その後、500℃×1時間の焼成処理と水和処理によって、平均細孔径100nm及びアスペクト比400の微細孔がほぼ全面に形成された。そして、メッシュシートの表面の微細孔内に白金製触媒粒子を1.8gpt/μm
2で担持させることで触媒体が試作された。
【0066】
次に、メッシュシートからなる触媒体の10枚が一定間隔を持って多段に積層された。各シートには、3.0〜3.5(A/dm
2)の範囲の電流を流しながら、MCHを被処理流体とする脱水素試験を行なった。試験は、実施例1と同様に各メッシュシート間に配置された温度センサーで温度を計測し、各触媒体の温度が350℃になるように電力調整された。200時間の連続試験の結果、水素生成量は1.4(L/min)、転化率は93%であった。この結果から、触媒体の形態が異なるものでも、多段に配置して適宜加熱温度調整することで、十分な利用可能性が見込めるものであることが確認された。
【実施例5】
【0067】
線状触媒体の芯材として、Ni-Cr合金ニクロム線1.2mmφを用いて、表面に厚さ0.2mmのアルミニウム金属膜をクラッドして、実施例1と同様の細径加工で外径0.3mmのアルミクラッド複合細線が作成された。その細径状態におけるアルミニウム外装材の複合比は50%であった。この複合線から、コイル平均径Dと線径dとの比D/dが5となるように密着コイル線が作成された。コイル線は、4%シュウ酸溶液を用いた陽極酸化処理にて、表面上に微細細孔を具えたアルマイト層が形成され、その細孔内に白金微粒子の触媒物質を担持させて線状の触媒体が得られた。
【0068】
次に、長さ230mmの上記触媒体の6本が、排出口付きのアルミニウム製のチャンバー上に配置され、各触媒体の末端を各々並列配線して板状の触媒ユニットが試作された。その最上層のコイル状の触媒体の表面を、さらに粒径80μmの石英粉末で覆い、被処理流体が良好に分散して触媒体に接触するように構成した。そして、板状の触媒ユニットの5枚がチャンバー内に積層配置されて反応器を構成し、前記と同様にメチルシクロヘキサンを被処理流体として脱水素反応による水素生成を行なった。
【0069】
触媒ユニットへの通電は、上流側の最上流(第1段)、及び、その下流側(第2段)のみに対して行い、それらよりも下流側は上流側の触媒体の輻射熱を利用するように無通電で行なったものである。その結果、水素生成量は0.5(L/min)、水素添加率は93%であった。