【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。まず、本発明に係るレーザ投射表示装置の全体構成と半導体レーザの出力特性を、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施例におけるレーザ投射表示装置の基本構成を示すブロック図である。レーザ投射表示装置1は、画像処理部2、フレームメモリ3、レーザドライバ4、レーザ光源5、反射ミラー6、MEMS走査ミラー7、MEMSドライバ8、増幅器9、光センサ10、照度センサ11、CPU(Central Processing Unit)12を有し、表示画像13を表示する。
【0014】
画像処理部2は、外部から入力される画像信号に各種補正を加えた画像信号を生成し、且つそれに同期した水平同期信号及び垂直同期信号を生成し、MEMSドライバ8へ供給する。また、画像処理部2はCPU12より取得した情報に応じてレーザドライバ(以下、レーザ光源駆動部とも呼ぶ)4を制御し、ホワイトバランスを一定にするようなレーザ出力調整をおこなう。その詳細は後述する。
【0015】
ここで、前記した各種補正とは、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正、LOOK UP TABLE(以降、LUTと記載する)による画像の階調調整などを行うことを意味する。なお、画像歪みはレーザ投射表示装置1と投射面との相対角で異なること、レーザ光源5とMEMS走査ミラー7の光軸ずれなどのために発生する。LUTに関する事項は後述する。
【0016】
レーザドライバ4は、画像処理部2から出力される画像信号を受け、それに応じてレーザ光源5を変調する。レーザ光源5は、例えばRGB用に3個の半導体レーザ(5a、5b、5c)を有し、画像信号のRGB毎に画像信号に対応したRGBのレーザ光を出射する。
【0017】
RGBの3つのレーザ光は、3つのミラーを有する反射ミラー6により合成され、MEMS走査ミラー7に照射される。反射ミラー6は特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過する特殊な光学素子が用いられる。この光学素子は一般的にはダイクロイックミラーと呼ばれている。
【0018】
詳しくは、反射ミラー6は、半導体レーザ5aから出射されたレーザ光(例えば、R光)を反射し他の色のレーザ光が透過するダイクロイックミラー6aと、半導体レーザ5bから出射されたレーザ光(例えば、G光)を反射し他の色のレーザ光が透過するダイクロイックミラー6bと、半導体レーザ5cから出射されたレーザ光(例えば、B光)を反射し他の色のレーザ光が透過するダイクロイックミラー6cとを有し、R光、G光、B光のレーザ光をひとつのレーザ光に合成して、MEMS走査ミラー7に供給する。
【0019】
MEMS走査ミラー7は2軸の回転機構を有する画像の走査部であって、中央のミラー部を水平方向と垂直方向の2つの方向に振動させることができる。MEMS走査ミラー7の振動制御はMEMSドライバ8により行われる。MEMSドライバ8は画像処理部2からの水平同期信号に同期して正弦波を生成し、また、垂直同期信号に同期したノコギリ波を生成して、MEMS走査ミラー7を駆動する。
【0020】
MEMS走査ミラー7は、MEMSドライバ8からの正弦波の駆動信号を受けて水平方向に正弦波共振運動を行う。これと同時に、MEMSドライバ8からのノコギリ波を受けて垂直方向の一方向に等速運動を行う。これにより、
図1の表示画像13に示すような軌跡でレーザ光は走査され、その走査がレーザドライバ4による変調動作と同期することで、入力画像が光学的に投射されることになる。
【0021】
光センサ10は、投射されるレーザ光の光量を測定し、増幅器9に出力する。増幅器9は、光センサ10の出力を、画像処理部2により設定された増幅率に従い増幅した後、画像処理部2へ出力する。
図1では、光センサ10は反射ミラー6により合成されるRGBのレーザ光の漏れ光を検出するよう配置されている。即ち、光センサ10を半導体レーザ5cに対し反射ミラー6cを挟んで対向側に配置する。反射ミラー6cは半導体レーザ5a及び5bからのレーザ光を透過し、半導体レーザ5cからのレーザ光を反射する特性であるが、100 %透過もしくは反射する特性には出来ないため、一般的には数%は反射(半導体レーザ5a及び5bの光)もしくは透過(半導体レーザ5cの光)する。従って
図1の位置に光センサ10を配置することで、反射ミラー6cは、半導体レーザ5cからのレーザ光の数%を透過、また半導体レーザ5a及び5bからのレーザ光の数%を反射して、光センサ10に入射させることができる。
【0022】
また、照度センサ11はレーザ投射表示装置1の周囲の照度を検出し、CPU12へ出力する。CPU12は、照度センサ11からの信号もしくは外部からの制御信号を受け、画像処理部2が生成する表示画像13の明るさを制御するための調光要求信号を、画像処理部2に供給する。
【0023】
次に、
図2を用いて、本発明の実施例の構成を説明する。
【0024】
図2は、本実施例の信号処理部を示すブロック図であり、
図1の画像処理部2およびレーザドライバ4の内部構成の詳細を示した図である。画像処理部2の外部から入力される画像信号は、画像補正部20に入力される。
【0025】
画像補正部20は、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正やLUTによる画像の階調調整を行う。画像補正部20で行うLUTによる画像の階調調整は、発光制御部22からのLUT選択信号27、LUT更新信号28に基づき、外部から入力される画像信号に対し画像調整を行い、タイミング調整部21へ補正後の画像信号29を送出する。
【0026】
タイミング調整部21は、画像補正部20から入力される補正後の画像信号29から水平(以降Hとも記載)同期信号と垂直(以降Vとも記載)同期信号を生成し、MEMSドライバ8および発光制御部22に送出する。また、画像信号は、フレームメモリ3に一旦格納される。フレームメモリ3に書き込まれた画像信号は、タイミング調整部21で生成される、水平同期信号と垂直同期信号に同期した読み出し信号で読み出される。またフレームメモリ3内の画像信号は入力された画像信号に対して、1フレーム分遅延させて読み出される。
【0027】
発光制御部22の詳細動作は、
図7および
図8を用いて後述する。
【0028】
読み出された画像信号はラインメモリ23に入力される。ラインメモリ23は1水平期間の画像信号を取り込み、次の水平期間で順次画像信号を読出す。ラインメモリ23で一旦中継する理由は、次のとおりである。一般的にフレームメモリ3の読出しクロック周波数と、レーザドライバ4側へ画像信号を伝送する時のクロック周波数が異なる場合がある。このため、一旦ラインメモリ23で1水平期間の画像信号をフレームメモリ3の読出しクロック周波数で取り込んだ後に、画像信号の伝送クロック周波数でラインメモリ23から読み出す処理を行う。フレームメモリ3の読出しクロック周波数と画像信号の伝送クロック周波数が一致していればラインメモリ23は不要になる。ラインメモリ23から読み出された画像信号はレーザドライバ4へ供給される。
【0029】
次に、レーザドライバ4内の電流ゲイン回路24と閾値電流調整回路25について説明する。閾値電流調整回路25は、後に詳しく述べるように、発光制御部22が設定する閾値電流値に応じて、半導体レーザ5a〜5cが発光する下限値を決める閾値電流を調整する。言い換えると、閾値電流調整回路25は、半導体レーザ5a〜5cに流れる電流値のオフセット成分を生成する。また、電流ゲイン回路24は、ラインメモリ23から入力される画像信号に対して、画像信号値(電圧値)を電流値に換算するための電流ゲインを乗算することで、レーザ5に流れる電流値を制御する。なお、前記電流ゲインは、発光制御部22が求めて電流ゲイン回路24に設定する。つまり、電流ゲインを増減することは、画像信号に対応する電流値が増減することになる。よって、実際に半導体レーザ5a〜5cに流れる電流値は、閾値電流調整回路25で設定された閾値電流値と、電流ゲイン回路24で設定された電流ゲインと画像信号に応じた信号電流値との合計値となる。
【0030】
以上は画像処理部2の基本的な動作である。次に、動作中の表示階調数を維持する役割を有するLUTの働きについて、
図3、
図4A、
図4Bを用いて説明する。
【0031】
図3は、半導体レーザの光量−順方向電流特性の一例を示す特性図である。半導体レーザは、
図3に示すように、ある閾値電流Ith1を境にして光量が急峻に増加する特性を有する。また、電流に対する光量の変化量は一定ではなく、R1で描くような非線形の特性を有する。ここで、明るい画像を形成する際に用いる電流制御範囲は、閾値電流Ith1から光量Lmが得られる電流Imまでの範囲であることが望ましい。つまり、画像信号を8bit(最大255)としたとき、画像信号が0もしくは1の場合は順方向電流をIth1に、画像信号が255の場合の最大順方向電流をImとなるよう、電流ゲイン回路24と閾値電流調整回路25を制御する。より具体的には、発光制御部22は閾値電流調整回路25を電流値がIth1となるよう制御し、電流ゲイン回路24には(Im-Ith1)/255の電流ゲインを設定する。このようにすることで、画像信号が0の場合は、Ith1の電流がレーザに流れ、画像信号が255の場合は、Imの電流を半導体レーザに流すことが可能となる。つまり、明るい画像を形成する際に半導体レーザに流れる電流範囲は、
図3中の電流制御範囲1となる。尚、画像信号が0の場合は、順方向電流を0にすることでレーザを消灯し、コントラストを得るよう制御しても良い。
【0032】
上述したとおり、
図3に示す電流制御範囲1中で半導体レーザの電流に対する光量の変化量は一定ではなく、R1で描く非線形の特性を有する。表示画像の表示階調数を得るためには、一定の画像の変化量に対し、光量が所定の変化量を有することが望ましい。光量が所定の変化量を有するための手段として、LUTによる画像の階調調整を行う手順を説明する。簡単化の為に、入力画像信号に対し、出力光量がリニアに変化するLUTの作成手順について説明する。
【0033】
図4Aは、本実施例のLUTの動作を説明するための第1の特性図であり、
図3中に記載した目標特性T1を得るよう特性R1を変換した特性が記載されている。この変換について説明する。
図3中の電流値Itで説明すると、半導体レーザに電流Itを流した際、目標特性T1との交点から、目標光量Ltが求められる。しかし、実際のレーザ特性はR1であるため、目標光量Ltとなる実際の電流値はIt’である。従って、Itの電流に対応する入力画像信号Piを、It’の電流に対応する出力画像信号Poへ変換する。これにより、Itの電流に対応する入力画像信号Piに対して得られる光量が、目標光量のLtとなる。この変換を全ての入力画像信号に対して示したのが
図4AのLUTである。
図4Aはアナログ的な特性を描いているが、実際のLUTは数表であるので離散的な値が示されていることは勿論である。
【0034】
図4Bは、本実施例のLUTの動作を説明するための第2の特性図である。上記ように
図4AのLUTを用いることで、入力画像信号に対する出力光量の関係は
図4Bのようにリニアに変化する。尚、説明では入力画像信号に対し、出力光量がリニアに変化するLUTを説明したが、一般的なガンマ特性を有するように作成しても良いことは言うまでもない。
【0035】
図5は、本実施例の画像補正部20を示すブロック図である。これを用いて画像補正部20の動作について説明する。尚、
図5の画像補正部20はLUT1(50)、LUT2(51)、LUT3(52)の3種類のLUTを有するが、この構成に限定されるものではなく、3種類より多くても良く、また、入力画像に対して出力画像が変化するものであればよい。但し、少なくとも2種類のLUTを有することで、本実施例を実現することができる。
【0036】
画像補正部20は、入力される画像信号をLUT1、LUT2、LUT3に入力し、各LUTから
図4Aで説明したような前記画像信号に対する出力を得る。各LUTからの出力はセレクタ53に入力され、セレクタ53は、発光制御部22からのLUT選択信号27に基づき、画像信号29を出力する。また、発光制御部22からのLUT更新信号28に従い、各LUTの内容が更新される。このLUTの更新手順については後述する。
【0037】
実施例1においては、少なくとも2種類のLUTを有することを一つの特徴としている。ここで、少なくとも2種類のLUTを有することの必要性について説明する。例えば、レーザ投射表示装置を車載表示装置として使用した場合において、昼間の明るい環境下では最も明るい画像を、
図3で示す光量Lm、即ちレーザ投射表示装置が投射できる最大の光量を用いて投射すると良い。この場合、半導体レーザを駆動する電流の制御範囲は、
図3で示す電流制御範囲1で良い。しかし、トンネル内等の車体周囲が暗い環境下においては、このままの明るさで画像を投射すると、運転手に眩しい印象を与えてしまう。そこで、レーザ投射表示装置は、車体周囲の環境下に合わせた明るさの画像を投射するように、即座に切り替わる必要がある。つまり、周囲の環境に応じて、レーザ投射表示装置の表示画像の光強度を変更するという調光動作が必要となる。例として、通常動作における明るい画像(最大光量がLm)から、調光動作における1/4の明るさの画像(最大光量がLm/4)に変更する場合につき、特に
図3で示した電流制御範囲について考える。
【0038】
図6は、いずれの明るさにおいても電流制御範囲を変更しない場合のLUTの動作を説明する特性図である。電流制御範囲を前記した電流制御範囲1のままとすると、LUTを
図4Aに示す特性のLUTから、
図6に示す特性のLUTに変更することで、最大光量がLm/4の画像を出力することができる。このように少なくとも2種類LUTを用意し、使用するLUTを変更することで調光動作が可能となる。しかしながら、
図6に示すLUTは、8bit(256階調)の入力信号を6bit(64階調)の出力信号に変換する。つまり、
図6のLUTを使用すると、調光動作はするものの、表示画像の階調数が低下し、表示画像の品位が低下してしまう。
【0039】
上記、表示画像の品位の低下を抑制するためには、電流制御範囲を
図3の電流制御範囲1から電流制御範囲2へ変化させる必要がある。つまり、画像信号が0もしくは1の場合は順方向電流をIth1に、画像信号が255の場合の最大順方向電流をI1とするよう、電流ゲイン回路24と閾値電流調整回路25を制御する。より具体的には、発光制御部22は閾値電流調整回路25を電流値がIth1となるよう制御し、電流ゲイン回路24には(I1-Ith1)/255の電流ゲインを設定する。このようにすることで、画像信号が0の場合は、Ith1の電流が半導体レーザに流れ、画像信号が255の場合は、I1の電流が半導体レーザに流れるようになり、画像信号の階調数を損なうことなく、表示画像の明るさを変更することができる。
【0040】
図3から明らかな通り、電流制御範囲1に対するLUTと、電流制御範囲2に対するLUTではテーブルの形状が異なるため、電流制御範囲1用のLUTとは別に、電流制御範囲2用のLUTが必要となる。しかしながら、半導体の高度化が進んだ現在では、複数のLUTを用意することは特に問題とはならない。
【0041】
例えば、明るい画像(最大光量がLm)を出力する場合には、電流制御範囲1と、電流制御範囲1に対応したLUT1を使用し、1/4の明るさの画像(最大光量がLm/4)を出力する場合には、電流制御範囲2と、電流制御範囲2に対応したLUT2を使用するよう、発光制御部22が瞬時に画像補正部20を切り替える。これにより、調光動作時に表示画像の階調数を損なうことなく表示階調数を保つことができる。このように、少なくとも2種類の電流制御範囲に対応した、少なくとも2種類のLUTを有することで、調光動作時に表示階調数を保つことができる。尚、上記の例では最大光量がLmとなる電流制御範囲1と、最大光量がLm/4となる電流制御範囲2について説明したが、これに限らず、複数の電流制御範囲と、それに対応する複数のLUTを用意しても良いことは言うまでもない。
【0042】
以上は本実施例におけるレーザ投射表示装置の基本的な動作である。本実施例は、これを用いることにより調光動作時においても表示階調数を保ちつつ、さらに、温度の変化による表示画像のホワイトバランス変化を低減することができる。この場合の具体的な動作例を、発光制御部22の動作を中心に説明する。
【0043】
図7は、実施例1の全体処理を示すフローチャートである。
図7では表示画像の電流制御範囲を電流制御範囲1とし、LUT1を使用している場合を例として示す。
【0044】
電源投入後、発光制御部22は、変数iをリセットする(St100)。変数iは、フレーム数カウンタとして動作し、後述する通常動作用処理と調光動作用処理を実施する頻度を制御するカウンタとして動作する。変数iをリセットした後、タイミング調整部21から送出される垂直同期信号に基づき、表示期間が終了したかを判断する(St101)。表示期間が終了し、帰線期間に入った後、発光制御部22は変数iをインクリメントする(St102)。その後、通常動作用処理と調光動作用処理を実施する頻度を決定する、所定数Nと比較し(St103)、変数iが所定数Nと等しくない場合はSt104からSt109に係る通常動作用処理へ移行する。変数iが所定数Nと等しい場合はSt110からSt120に係る調光動作用処理に移行する。
【0045】
後述する通常動作用処理と調光動作用処理は、投射表示する画像に影響を与えることのないよう、表示期間を避け帰線期間に行われる。また、通常動作用処理と調光動作用処理は各々の優先度に応じた前記所定数Nに係り、例えばNフレーム毎に前者は(N-1)回、後者は1回行われる。なお、Nは定数でも変数でも良い。
【0046】
ここで、St104からSt109に係る通常動作用処理について説明する。一般的に半導体レーザは、温度特性を有し、温度が高くなると発光が始まる閾値電流が大きくなり、光量の電流に対する傾きが小さくなる特性を有する。そこで、半導体レーザの発光強度を時間的に一定とするために、レーザ発光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介してモニタし、得られた発光強度を電流ゲイン回路24と閾値電流調整回路25へフィードバックするAPC(Auto Power Control)を行う必要がある。一例としては、発光制御部22から最大画像信号を電流ゲイン回路24に画像信号として送出し、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介して取得することで、取得した光強度と電流制御範囲1で目標とする光量Lmとを比較し、最大画像信号入力時の出力光量がLmとなるよう電流ゲイン回路24に設定するゲインをフィードバック制御する。
【0047】
また、閾値電流調整回路25に与える設定値を決定するため、閾値電流Ith1もしくはその近傍の電流値となる画像信号を電流ゲイン回路24に画像信号として送出し、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介して取得することで、閾値電流Ith1もしくはその近傍の電流値となる画像信号入力時の出力光量となるよう、閾値電流調整回路25に設定する電流値をフィードバック制御する。このようにすることで、電流制御範囲1は時間的に変化するものの、入力画像信号に対する出力光量の値が一定となり、半導体レーザの温度による特性の変化をユーザに認識させないようにすることができる。ここで、上記出力光量Lmおよび閾値電流Ith1もしくはその近傍の電流値となる画像信号入力時の出力光量は、図示しない記憶領域に保持しておく。また、RGB各色に対応した上記光量の値を保持することで、ホワイトバランスを一定とすることができる。尚、説明の簡単化のために、光センサ10で検出し、増幅器9を介して取得する光強度を最大画像信号および閾値電流Ith1もしくはその近傍の電流値となる画像信号としたが、この限りではなく、或る所定の画像信号における光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介して取得しても良いことは言うまでもない。
【0048】
上述の通常動作用処理を行うために、帰線期間中に電流制御範囲1中の或る所定の光強度で半導体レーザを発光させ、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介して取得する(St104)。この取得した光強度に基づき、電流制御範囲1を変更するか否かを判断して、これに応じた処理を行う(St105)。尚、光強度に基づき、電流制御範囲1を変更するか否かの判断は、発光制御部22が行っても良く、もしくは発光制御部22からCPU12へ光強度情報を送出し、CPU12が判断しても良い。St106にて電流制御範囲1が更新されたか、つまり電流ゲイン回路24もしくは閾値電流調整回路25の少なくもいずれか一方の設定値が変更されたかを判断し、更新された場合はSt107へ移行する。更新された場合は、St107にて過去フレームに取得したLUT1用保持データをリセットし、St108へ移行する。以上で電流制御範囲1に係る処理が終了し、必要な場合は電流制御範囲1が変更されている。
【0049】
St108では、画像信号に対応した光強度を取得する。ここで、St108では複数の画像信号に対応した光強度を取得することが望ましい。また、取得した光強度は、LUT1用保持データとして、図示しない記憶領域に蓄えられても良く、もしくは発光制御部2がCPU12へ光強度情報を送出し、CPU12がこれを保持しても良い。ここで、LUT1用保持データとは、LUT1のデータを更新するためのデータのことである。画像信号は半導体レーザに流れる電流値に変換できるため、画像信号に対応した光強度を取得することで、電流制御範囲1における半導体レーザの光量−順方向電流特性を作成することが可能であり、この半導体レーザの光量−順方向電流特性をLUT1用保持データとする。
【0050】
LUT1用保持データから、上記
図4Aで説明した変換を行うことで、LUT1を更新する(St109)。尚、LUT1を更新するための演算は、発光制御部22およびCPU12のいずれで行っても良い。また、電流制御範囲1が変更されない間に、St108にて複数フレームに渡り多くの光強度を取得し、LUT1用保持データがある一定量溜まってからLUT1を更新するようにしても良い。このように動作中に適宜LUT1のデータを更新することで、レーザの経時劣化に対応することができる。
【0051】
以上が、St104からSt109に係る通常動作用処理の説明である。即ち、帰線期間中に或る所定の画像信号において検出した光強度に応じて、
図3の電流制御範囲1におけるLUT1を更新する。その際、St104で或る所定の画像信号、例えば階調0と255における光強度を検出し、これに基づきSt105で電流制御範囲1を更新するか否かが決定され、更新した場合はSt107でLUT1に関するこれまで保持していたデータをリセットする。次いでSt108で現時点での電流制御範囲1における複数の画像信号レベルにおいて光強度を検出し、
図4Aで説明したように変換してLUT1を更新するための新しいデータを得、St109でLUT1を更新する。以上、St104からS109に至るフローは、S103での判定の結果、変数iが所定数Nとは異なる帰線期間において実施される。
【0052】
次に、St103において変数iが所定数Nと等しいと判断された場合に移行する、St110からSt120に係る調光動作用強度変更処理について説明する。
【0053】
St103にて変数iと変数Nが等しい場合は、St110に移行し、変数iをリセットする。次に、電流制御範囲を通常動作期間中の電流制御範囲である電流制御範囲1から変更し、電流制御範囲2を設定する(St111)。このように電流制御範囲を変更することで、前述した通り、調光動作時においても表示階調数を保つことが出来る。次に、発光制御部22は、光センサ10からの出力を増幅する増幅器9に対し、通常動作期間中の電流制御範囲である電流制御範囲1に対応した増幅率1から変更し、電流制御範囲2に対応した増幅率2を設定する(St112)。この増幅率は光センサからの出力に係るものであり、最大光量がLmである電流制御範囲1と、最大光量がLm/4である電流制御範囲2で異なる増幅率とすることが望ましい。
【0054】
例えば、増幅器9が電流制御範囲1においてレーザ光量が0からLmの範囲を10bit(最大1023)で出力する場合、同じ増幅率で電流制御範囲2におけるレーザ光量である0からLm/4の範囲を検出すると、8bitの精度でしか光強度を取得できない。そこで、電流制御範囲2に対応した増幅率2を、電流制御範囲1に対応した増幅率1の1/4に設定することで、増幅器9の出力を10bitの精度で得ることができる。このように、設定した電流制御範囲に対応した増幅率を増幅器9に設定することで、光強度の取得データの高精度化ができる。
【0055】
St112で増幅率2を設定した後、電流制御範囲2中の或る所定の光強度でレーザを発光し、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介し取得する(St113)。この取得した光強度に基づき、電流制御範囲2を変更するか否かを判断して、これに応じた処理を行う(St114)。尚、光強度に基づき、電流制御範囲2を変更するか否かの判断は、発光制御部22が行っても良く、もしくは発光制御部22からCPU12へ光強度情報を送出し、CPU12が判断しても良い。St114にて電流制御範囲2が更新されたか、つまり電流ゲイン回路24もしくは閾値電流調整回路25の少なくもいずれか一方の設定値が変更されたかを判断し、更新された場合はSt116へ移行する。更新された場合は、St116にて過去フレームに取得したLUT2用保持データをリセットし、St117へ移行する。
【0056】
St117では、画像信号に対応した光強度を取得する。ここで、St117では複数の画像信号に対応した光強度を取得することが望ましい。また、取得した光強度は、LUT2用保持データとして、図示しない記憶領域に蓄えても良く、もしくは発光制御部22からCPU12へ光強度情報を送出し、CPU12が保持しても良い。ここで、LUT2用保持データとは、LUT2のデータを更新するためのデータのことである。画像信号はレーザに流れる電流値に変換できるため、画像信号に対応した光強度を取得することで、電流制御範囲2における半導体レーザの光量−順方向電流特性を作成することが可能であり、この半導体レーザの光量−順方向電流特性のことをLUT2用保持データとする。
【0057】
LUT2用保持データから、上記
図4Aで説明した変換を行うことで、LUT2を更新する(St118)。尚、LUT2を更新するための演算は、発光制御部22およびCPU12のいずれで行っても良い。また、電流制御範囲2が変更されない間に、St117にて複数フレームに渡り多くの光強度を取得し、LUT2用保持データがある一定量溜まってからLUT2を更新するようにしても良い。このように動作中に適宜LUT2のデータを更新することで、レーザの経時劣化に対応することができる。
【0058】
次に、表示期間が始まる前に、電流制御範囲を電流制御範囲2から変更し、電流制御範囲1を設定する(St119)。また、発光制御部22は、光センサ10からの出力を増幅する増幅器9に対し、増幅率を電流制御範囲2に対応した増幅率2から変更し、電流制御範囲1に対応した増幅率1を設定し(St120)、先のSt101へ戻って以上の処理フローを繰返す。
【0059】
以上が、St110からSt120に係る調光動作用強度変更処理の説明である。即ち、帰線期間中に或る所定の画像信号において検出した光強度に応じて、
図3の電流制御範囲2におけるLUT2を更新する。その際、St113で或る所定の画像信号、例えば階調0と255における光強度を検出し、これに基づきSt114で電流制御範囲2を更新するか否かが決定され、更新した場合はSt116でこれまで保持していたデータをリセットする。次いでSt117で現時点での電流制御範囲2における複数の画像信号レベルにおいて光強度を検出し、
図4Aで説明したように変換してLUT2を更新するための新しいデータを得、St118でLUT2を更新する。次いでSt119とSt120を経てSt101へ戻る。以上、St110からS120に至るフローは、S103での判定の結果、変数iが所定数Nと等しい帰線期間において実施される。
【0060】
このように、調光動作用処理は、帰線期間中に、通常動作期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、調光時に設定する電流制御範囲や電流制御範囲に対応したLUTを更新する処理である。このようにすることで、調光時に適用する電流制御範囲や電流制御範囲に対応したLUTを、予め作成することが可能となるため、レーザ投射表示装置は、表示階調数を保ちつつ、画像の明るさを即座に切り替えることができる。
【0061】
尚、
図7では通常動作期間中の電流制御範囲を電流制御範囲1、調光動作期間中の電流制御範囲を電流制御範囲2として説明したが、上記2種類だけに限定されるものではなく、St103での分岐を複数用意し、複数の電流制御範囲としてもよい。また、調光動作用処理にて電流制御範囲2を更新した後、次のフレーム以降の調光動作用処理で電流制御範囲2と異なる電流制御範囲に対して同様な処理を行うといった、時分割処理をしても良いことは言うまでもない。
【0062】
次に、上記
図7のフローチャートを用いた、調光時における具体的なタイミングチャートを、
図8を用いて説明する。
【0063】
図8は、実施例1の全体処理を示すタイミングチャートであり、垂直同期信号、電流制御範囲、増幅率設定信号、増幅率、レーザ発光、調光要求信号および使用LUTに関して示している。フレームf0の帰線期間中に調光動作用処理を、フレームf1およびフレームf2の帰線期間中に通常動作用処理を行い、さらに、これらに係りなく、例えば
図2の照度センサ11での装置周辺の明るさの検出結果に応じてCPU12が発生する調光要求信号が、フレームf3中に入る。尚、ここでの調光要求信号は、電流制御範囲1から電流制御範囲2へ変更する要求を示す信号とする。
【0064】
まず、フレームf0の表示期間が終了した後、先の
図7のSt103にてi=Nとなったとすると、調光動作用処理へ移行する。次に、電流制御範囲2および増幅率2が設定される(St111およびSt112)。その後、電流制御範囲2中の複数箇所における光強度で発光制御部22が半導体レーザを発光させ、その光強度を光センサ10で検出させ、増幅器9を介し取得する(St113もしくはSt117)。
図8では示していない電流制御範囲2変更処理(St114)およびLUT2の更新(St118)を行った後、電流制御範囲1および増幅率1が設定され(St119およびSt120)、フレームf1に移行する。
【0065】
次に、フレームf1の表示期間が終了した後、St103にてi≠Nとなるので、通常動作用処理へ移行する。電流制御範囲1中の複数箇所における光強度で発光制御部22が半導体レーザを発光させ、その光強度を光センサ10で検出させ、増幅器9を介し取得する(St104もしくはSt108)。
図8では示していない電流制御範囲1変更処理(St105)およびLUT1の更新(St109)を行った後、フレームf2に移行する。フレームf2の帰線期間では、フレームf1と同様の通常動作用処理が行われる。
【0066】
次に、フレームf3中に調光要求信号が発光制御部22へ入力された場合について説明する。調光要求信号は、一旦、発光制御部22において保持される。発光制御部22は、フレームf3の帰線期間中に、予め作成しておいた電流制御範囲2および増幅率2を設定し、LUT2が選択されるようLUT選択信号27を画像補正部20へ供給する。このように帰線期間中に電流制御範囲を変更することで、画像の一部が急激に暗くなることによる違和感を抑制することができる。また、フレームf3の帰線期間から、通常動作用処理の対象が電流制御範囲2となり、表示期間での表示の明るさは調光動作の明るさとなる。これにより、周囲の環境下に合わせた明るさの画像を投射することができる。
【0067】
よって、
図8ではフレームf3の帰線期間では、電流制御範囲2に対する通常動作用処理が行われており、フレームf3以降の帰線期間では、任意の頻度で、図示しない電流制御範囲2以外への調光動作用強度変更処理が行われる。上記のとおり、本実施例によれば、調光時に適用する電流制御範囲や電流制御範囲に対応したLUTを、予め作成することができるため、レーザ投射表示装置は、表示階調数を保ちつつ画像の明るさを、調光要求信号が入力されてから即座に切り替えることができる。
【0068】
即ち、調光要求信号が入力されると、帰線期間では先のiの値に係らず調光動作用処理が行われ、表示期間では次のフレームから調光動作が行われる。通常動作の帰線期間で準備された調光動作時の電流制御範囲2とLUT2を用いて、調光動作が行われる。なお、調光要求信号は、前記したような照度センサ11での明るさの検出結果に応じて発生されるに限らず、例えばユーザの要求に応じて発生されても良い。
【0069】
本実施例によれば、調光動作時の表示階調数を保ちつつ、温度の変化による表示画像のホワイトバランス変化を低減したレーザ投射表示装置を提供できる。
【0070】
尚、本実施例においては、調光動作用処理において、帰線期間中に表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、調光時に適用する電流制御範囲や電流制御範囲に対応したLUTを、予め作成する構成について示したが、電流制御範囲および増幅率のいずれか一方のみを変更するようにしても良い。例えば、
図7においてSt112およびSt120を削除した場合は、St113およびSt117における光強度の取得データの高精度化がされないため、電流制御範囲2に対応したLUT2の精度が落ちるが、発光制御部22もしくはCPU12などによりLUT2用保持データを補間することで簡略化したLUT2を作成し、更新しても良い(St118)。このようにすることで、構成が簡単化される利点がある。また、調光後は、通常動作用処理のSt109により、簡略化されていたLUT2の精度が向上する。
【実施例2】
【0071】
上記の実施例1では、調光動作用処理において、帰線期間中に表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、調光時に適用する電流制御範囲と電流制御範囲に対応したLUTを、予め作成する構成について説明した。
【0072】
この制御方法以外にも、調光要求信号が入力された後、調光時に適用する電流制御範囲や電流制御範囲に対応したLUTを決定するよう制御しても良い。この場合、調光要求信号が入力されてから即座に調光動作することは出来なくなるが、調光動作の前後で表示階調数を保つことができる。さらに、この制御方法では、要求信号が入力された後に調光時に適用する電流制御範囲と電流制御範囲に対応したLUTを決定するよう制御するため、必要となるLUTの数を少なくすることができ、回路規模を小さくすることができる。また、調光要求信号が入力されるまで調光動作用強度変更処理をする必要がなく、毎フレーム通常動作用強度変更処理をすることができる。
【0073】
以下、この調光要求信号が入力された後、調光時に適用する電流制御範囲と電流制御範囲に対応したLUTを決定する構成を、本発明の実施例2として
図9〜
図11を参照しながら説明する。尚、実施例1と同一の構成、機能を有するものには同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0074】
図9は、実施例2の全体処理を示すフローチャートである。
図9のフローチャートでは、表示画像の電流制御範囲を電流制御範囲1とし、LUT1を使用していることを例として示す。尚、ここでの調光要求信号は、電流制御範囲1から電流制御範囲2へ変更するための、例えば
図2の照度センサ11での装置周辺の明るさの検出結果に応じてCPU12が発生する信号とする。
【0075】
発光制御部22は、電源投入後、タイミング調整部21から送出される垂直同期信号に基づき、表示期間が終了したかを判断する(St101)。表示期間が終了し、帰線期間に入った後、発光制御部22は、調光要求信号が入力されたか否かを判断する(St200)。調光要求信号が入力されてない場合は、実施例1と同様、St104からSt109に係る通常動作用処理へ移行する。
【0076】
St200にて調光要求信号が入力されたと判断した場合は、St111に移行し、電流制御範囲を通常動作期間中の電流制御範囲である電流制御範囲1から変更し、電流制御範囲2を設定する(St111)。以降、実施例1と同様、St112からSt118を実施する。次に、St201にて、調光動作を実行するかを判断する。ここで、調光動作をするか否かは、発光制御部22により判断されるもので、LUT2の簡略更新もしくは所定時間経過によってLUT2の更新をした後に調光動作をするものとする。このLUT2の更新の違いについては、後述するタイミングチャートで説明する。
【0077】
St201で調光動作をすると判断した場合は、St202へ移行し、表示期間で適用するLUTをLUT2が選択されるよう、LUT選択信号27を画像補正部20に供給する。St202以降は、電流制御範囲2が通常動作用処理の対象となり、次の調光要求信号が入力されるまで、帰線期間中はSt104からSt109に係る通常動作用強度変更処理を行う。
【0078】
St201で調光動作を実行しないと判断した場合は、表示期間が始まる前に、電流制御範囲を電流制御範囲2から変更し、電流制御範囲1を設定する(St119)。また、発光制御部22は、光センサ10からの出力を増幅する増幅器9に対し、増幅率を電流制御範囲2に対応した増幅率2から変更し、電流制御範囲1に対応した増幅率1を設定する(St120)。その後、St203においてタイミング調整部21から送出される垂直同期信号に基づき、表示期間が終了したかを判断し、表示期間が終了し、帰線期間に入った後、St111へ移行する。
【0079】
このように、調光要求信号が入力された後、帰線期間中に、通常動作期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、調光時に設定する電流制御範囲、電流制御範囲に対応したLUTを更新する処理を行うことで、表示階調数を保ちつつ画像の明るさを切り替えることができる。また、調光要求信号が入力されるまで調光動作用強度変更処理をする必要がなく、毎フレーム通常動作用強度変更処理をすることができる。
【0080】
次に、上記
図9のフローチャートを用いた、調光時における具体的なタイミングチャートを、
図10および
図11を用いて説明する。
【0081】
図10は、実施例2の全体処理を示すタイミングチャートであり、St201においてLUT2の簡略更新をした後に調光動作を実行すると判断した場合のタイミングチャートである。
【0082】
図11は、実施例2に係る他の形態の全体処理を示すタイミングチャートであり、St201において所定時間経過によってLUT2の更新をした後に調光動作を実行すると判断した場合のタイミングチャートである。
【0083】
図10では、調光要求信号がフレームf0中に入る場合を示す。尚、ここでの調光要求信号は、電流制御範囲1から電流制御範囲2へ変更する要求であるとする。まず、フレームf0の表示期間が終了した後、調光要求信号が入力されたと判断され(St200)、電流制御範囲2および増幅率2が設定される(St111およびSt112)。その後、電流制御範囲2中の複数箇所における光強度で発光制御部22が半導体レーザを発光させ、その光強度を光センサ10で検出させ、増幅器9を介し取得する(St113もしくはSt117)。
図10では示していない電流制御範囲2変更処理(St114)およびLUT2の更新(St118)を行った後、LUT2の簡略更新をしたかを判断し、調光動作を実行するか否かを判断する(St201)。
【0084】
ここで、LUT2の簡略更新とは、St117にて複数フレームに渡り多くの光強度を取得し、LUT2用保持データがある一定量溜まってからLUT2を更新することを意味する。ここで、上記ある一定量は、表現可能な画像信号の全数に対し、25%以上であることが望ましい。つまり、LUT2の簡略更新とは、画像信号が8bit (最大255)階調の場合、64階調以上に対応した光強度をLUT2用保持データとして取得した後、St118にてLUT2を更新したこと意味する。尚、表現可能な画像信号の全数に対し、取得する画像信号の階調を均等間隔になるよう割り当てることで、画像信号の階調に対応した光強度を隈なく取得することが好ましい。このようにすることで、取得していない画像信号の階調に対する補間処理の誤差を小さくすることができる。
【0085】
図10のフレームf0では、LUT2の簡略更新がされてないと判断し、調光動作を実行しないため、St119およびSt120にて、電流制御範囲1および増幅率1が設定され、フレームf1に移行する。フレームf1の帰線期間でもフレームf0と同様に、St111からSt120の処理を実行する。
【0086】
次に、フレームf29の帰線期間において、St118にてLUT2の簡略更新が完了した場合について説明する。フレームf29では、St201において、発光制御部22はLUT2の簡略更新をしたと判断し、調光動作を実行すると決定する。つまり、St202に移行し、使用LUTをLUT1からLUT2へ変更するよう設定した後、St101へ移行する。よって、次フレームであるフレームf30以降は、電流制御範囲2が通常動作用処理の対象となり、次の調光要求信号が入力されるまで、通常動作用処理が毎フレームの帰線期間に実行される。
【0087】
即ち
図10においては、調光要求信号を受けた後の帰線期間において、電流制御範囲2中の複数箇所における光強度のデータを、全階調には及ばなくとも複数フレーム期間を使って取得することにより、LUT2を簡易更新する。簡易更新が完了した後の帰線期間と表示期間では、電流制御範囲2に基づく動作が行われ、調光動作が行われる。
【0088】
図11では、
図10と比較してフレームf29の帰線期間中における、St118のLUT2の更新処理が異なる。
図11では、図示しないフレームカウンタにより調光要求信号が入力されてからの時間を計測しており、所定時間経過後、強制的にSt201において調光動作を実行すると決定する。つまり、St202に移行し、使用LUTをLUT1からLUT2へ変更するよう設定した後、St101へ移行する。よって、次フレームであるフレームf30以降は、電流制御範囲2が通常動作用処理の対象となり、次の調光要求信号が入力されるまで、通常動作用処理が毎フレームの帰線期間に実行される。その間、LUT2が随時更新されるため、
図11では例えばフレームf60の時点でLUT2とは異なるLUT2’を適用している。
【0089】
ここで、
図11におけるLUT2は、調光要求信号が入力されてから所定時間が経過するまでのデータにより更新されるので、前述したLUT2の簡略更新に比べ精度が高いものではない。しかしながら、調光要求信号が入力されてから調光動作を実行するまでの時間を極力短くするため、所定時間経過すると調光動作を実行する。尚、上記所定時間は1秒以下であることが望ましい。調光要求信号から調光動作までの時間が1秒以上であると、ユーザに違和感を与えてしまうからである。
【0090】
上記のとおり、本実施例によれば、調光要求信号が入力された後、帰線期間中に、通常動作期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、調光時に設定する電流制御範囲、電流制御範囲に対応したLUTを更新する処理を行うことで、表示階調数を保ちつつ画像の明るさを切り替えることができ、また温度の変化による表示画像のホワイトバランス変化を低減することができる。
【実施例4】
【0099】
実施例4は、通常動作用処理が上記実施例1〜3と異なる。具体的には、実施例4では、通常動作用処理においても、帰線期間中に、表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率のいずれかを設定する。このように制御することで、通常動作用処理において、レーザ光が、光センサ10で取得不可能な非常に微弱な発光をする電流制御範囲に対応することができる。また、レーザ光が、光センサ10の検出限界付近の微弱な発光をする閾値電流近傍の発光を精度良く検出することができる。
【0100】
以下、この通常動作用処理においても、帰線期間中に、表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率のいずれかを設定する構成を、本発明の実施例4として
図3、
図13ならびに
図14を参照しながら説明する。尚、実施例1〜3と同一の構成、機能を有するものには同一の符号を付してその詳細な説明を省略するものとする。
【0101】
図13は、半導体レーザの光量−順方向電流特性の一例を示す特性図である。半導体レーザは、
図13に示すように、ある閾値電流Ith1を境にして光量が急峻に増加する特性を有する。また、電流に対する光量の変化量は一定ではなく、R1で描く非線形の特性を有する。ここで、表示画像における電流制御範囲を、非常に暗い画像を形成する際に用いる電流制御範囲3とする場合を考える。この電流制御範囲3における光量La0から光量La1は、光センサ10で取得が不可能な非常に微弱な光量とする。
【0102】
光量La0から光量La1が光センサ10で取得不可能な場合、通常動作用処理においても、帰線期間中に、表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率を設定し、得たデータに基づいて表示期間中の電流制御範囲を変更する。つまり、
図13において、光量が温度特性を持たないよう電流制御範囲3を変更するために、光センサ10で取得可能な光量Lb0および光量Lb1となる電流制御範囲4を用いてデータを取得する。
【0103】
以下、通常動作用処理に電流制御範囲4を用いて、電流制御範囲3を変更する手順について説明する。表示期間が終了し、帰線期間に入った後、電流制御範囲を表示期間中の電流制御範囲である電流制御範囲3から変更し、電流制御範囲4を設定する。電流制御範囲を変更後、発光制御部22からレーザに流れる電流がIb0およびIb1となる画像信号を電流ゲイン回路24に画像信号として送出し、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介して発光制御部22に供給し、光強度信号Lb0およびLb1を取得する。取得したLb0およびLb1より、発光制御部22もしくはCPU12は、直線近似を用いて閾値電流Ith1の電流値を算出する。予め図示しない記憶領域にIc=Ith1-Ia1となる固定定数Icを記憶させる。上記したように閾値電流Ith1が算出される毎に、固定定数Icを用いて、Ia1の値を決定することができる。Ia0はIa1から所定数を減算して求める。このようにすることで、レーザ光が、光センサ10で取得不可能な非常に微弱な発光をする電流制御範囲3を、異なる電流制御範囲である電流制御範囲4を用いて算出した閾値電流Ith1に基づき、光量が温度特性を持たないようにするよう変更することができる。
【0104】
次に、
図3および
図14を用いて、レーザ光が、光センサ10の検出限界付近の微弱な発光をする閾値電流近傍の発光を精度良く検出する場合について説明する。
【0105】
前記したとおり、
図3は半導体レーザの光量−順方向電流特性の一例を示す特性図である。半導体レーザは、
図3に示すように、ある閾値電流Ith1を境にして光量が急峻に増加する特性を有する。ここで、閾値電流Ith1の電流値を精度良く検出することが、電流制御範囲1を決定する上で重要である。そこで、電流制御範囲1を決定する上で、閾値電流Ith1近傍にあって光量が光センサ10での検出限界付近の電流値である電流I2を用いて、微弱な光量Lsを検出することが好ましい。しかしながら、光量Lsは微弱なため、光量Lmを検出する際の増幅器9の増幅率と同じ増幅率では、精度良く検出することが難しい。そのため、通常動作用処理においても、帰線期間中に、表示期間中とは異なる増幅器9の増幅率を設定することで、微弱な光量Lsを検出できるようにする。なお、この手法は実施例4のみではなく、実施例1から3においても適用できることは勿論である。
【0106】
次に、通常動作処理における具体的なタイミングチャートを、
図14を用いて説明する。
【0107】
図14は、実施例4の全体処理を示すタイミングチャートであり、垂直同期信号、増幅率設定信号、電流制御範囲、増幅率、レーザ発光、調光要求信号、使用LUTについて示したものである。尚、
図14のタイミングチャートはここでは、調光動作用処理を実施例1と同様のものとする。
【0108】
図14では、フレームf0の帰線期間中に調光動作用処理をする際に、フレームf1からフレームf4の帰線期間中に通常動作用処理を行い、フレームf1およびフレームf3は増幅器9の増幅率を増幅率1とし、フレームf2およびフレームf4は増幅器9の増幅率を増幅率3としている。尚、フレームf0の調光動作用処理およびフレームf1の通常動作用処理は、実施例1と同様である。
【0109】
フレームf2の帰線期間では、フレームf2の表示期間が終了した後、発光制御部22は、光センサ10からの出力を増幅する増幅器9に対し、表示期間中の電流制御範囲である電流制御範囲1に対応した増幅率1から変更し、微弱な光量Lsおよびその近傍の光量を検出するための増幅率3を設定する。その後、電流制御範囲1中の微弱な光強度でレーザを発光し、その光強度を光センサ10で検出し、増幅器9を介し取得する。このように増幅度を変えることで、前記した電流I2の近傍での光量を検出することができる。
【0110】
この取得した光強度に基づき、電流制御範囲1を変更するか否かの処理を行い、表示期間が始まる前に、増幅率を微弱な光量Lsおよびその近傍の光量を検出するための増幅率3から変更し、電流制御範囲1に対応した増幅率1を設定する。このように、取得する光量に応じて増幅率を変化させることで、微弱な光量を精度良く検出することが可能となる。これは、電流制御範囲の精度や、更新するLUTの精度が向上することを意味する。
【0111】
上記のとおり、本実施例によれば、通常動作用強度変更処理においても、帰線期間中に、表示期間中とは異なる電流制御範囲および増幅器9の増幅率のいずれかを設定することで、通常動作用処理において、レーザ光が、光センサ10で取得不可能な非常に微弱な発光をする電流制御範囲に対応することができる。また、レーザ光が、光センサ10の検出限界付近の微弱な発光をする閾値電流近傍の発光を精度良く検出することができる。