(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321962
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】オレアノール酸を含有する化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/14 20060101AFI20180423BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20180423BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
A61K8/14
A61K8/365
A61Q19/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-539759(P2013-539759)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2013-542984(P2013-542984A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2011008785
(87)【国際公開番号】WO2012070804
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年9月5日
【審判番号】不服2016-11118(P2016-11118/J1)
【審判請求日】2016年7月22日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0116288
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】ピ ボン ソー
(72)【発明者】
【氏名】パク スン イル
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン サン フン
【合議体】
【審判長】
田村 聖子
【審判官】
阪野 誠司
【審判官】
關 政立
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−131502(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1923178(CN,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0038812(KR,A)
【文献】
国際公開第2007/078060(WO,A1)
【文献】
Isabelle BONNET,第2世代リポソーム技術により安定化された純ウルソル酸の開発と評価,FRAGRANCE JOURNAL,2006年 9月,pp.74−78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノリポソーム内に捕集されたオレアノール酸を有効成分として含有する化粧料組成物であって、前記オレアノール酸を捕集したナノリポソームは、
1)プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの混合物で構成された群から選択される1種以上のポリオール成分と、水素化レシチンであるリン脂質成分とを混合して溶解してから、それに炭酸ジカプリリルである油性成分とオレアノール酸とを添加し、均一に混合して混合物を得るステップと、
2)ステップ1)の混合物を冷却させ、エタノールを添加した後、均一に混合するステップと、
3)ステップ2)の混合液に界面活性剤と水を添加した後、これを均一に混合するステップと、を含む製造方法で得られたものであり、
前記水素化レシチンの含量は、組成物の総重量に対して、0.05〜1.0重量%であることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
前記オレアノール酸は、組成物の総重量に対して0.05重量%の量で含有されることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記オレアノール酸を捕集したナノリポソームは、組成物の総重量に対して0.001〜50重量%の量で含有されることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記ナノリポソームは、平均粒子直径が50〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記組成物は、可溶化剤形であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記組成物は、抗老化用であることを特徴とする請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記組成物は、コラーゲン生合成促進用であることを特徴とする請求項5に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ改善の有効成分としてナノリポソーム内に捕集したオレアノール酸を含有する可溶化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度及び湿度変化や、紫外線、公害物質など外部環境の刺激から保護し、且つ、体温調節などの生体恒常性の維持にも重要な役割をしている。しかし、外部から受ける過度な物理的・化学的刺激及びストレス、栄養欠乏などは、皮膚の正常機能を低下させ、弾力損失、角質化、シワ生成などの皮膚老化現象を促進させることになる。このような現象を防止してより健康で且つ弾力のある皮膚を保つために、従来に使用された殆どの化粧料は、効能が微弱であったり皮膚の副作用を誘発するなど様々な問題点を有していた(韓国特許公開10−2010−0064451)。
【0003】
皮膚の副作用を誘発しないながら、皮膚の老化防止効果を有する原料に対する研究が活発に進められている中、オレアノール酸を皮膚化粧料組成物に適用して優れた皮膚の老化防止効果を示すことを発見した。ヒドロキシ5環性テルペンの一種類であるオレアノール酸は、Eriobotrya japonica(loquata)、Perilla frutescens、Staphyleaholocarpaなどの多くの天然植物の有効成分であって、リンゴまたは梨のような果物内でも発見される。また、抗炎症、抗がん、抗アレルギー、抗憂鬱、そして抗菌、抗真菌などの薬理的な効果を有しており、特に皮膚の生理活性と関連して抗炎症及び刺激緩和などの効果を有している。また、抗老化機能としてコラーゲンの生成に重要なプロコラーゲンの合成を促進し、老化防止に重要なセラミド及びフィラグリーンの合成を促進し、生成されたコラーゲンなどの高分子タンパク質を破壊する酵素であるMMP−1の活性を阻害することで、コラーゲンの生成は促進し、コラーゲンの破壊は防ぐ二重老化防止システムを有することが特徴である。このように皮膚のシワ改善に優れた効果のあるオレアノール酸は、その間に多様な乳化化粧品剤形のシワ改善原料として使用されてきたが、水にほとんど溶けない難溶性であるだけでなく、化粧品に適用しても安定度及び力価不安定の問題によって、一定の含量以上含むのに限界があった。特に、このような難溶性の性質のため、化粧水のような可溶化剤形には、オレアノール酸をシワ改善原料として直接的に使用することは不可能な実情であった。
【0004】
最近、皮膚の脂質類似組成のナノ技術を利用してオレアノール酸の成分を100〜150nm大きさのナノエマルジョンにカプセル化し、天然多糖類のイヌリンを用いた高分子乳化剤で2次カプセル化することにより、安定性を高めて化粧品の剤形に関係なく、オレアノール酸を使用できる状況が展開されたが、乳化製品においては、このようにカプセル化されたオレアノール酸を剤形内に投入するとき、製造工程によるカプセルの破壊を防ぐために、50℃以下の温度及び低いホモ混合速度下で投入しなければならないという煩わしさがあり、特に可溶化剤形では、安定度及び力価不安定性が依然として存在している実情である。また、単純にオレアノール酸を使用することよりも、さらに多くの費用がかかるだけでなく、オレアノール酸のカプセル化のためにオレアノール酸に加えて追加的な原料を使用することにより、製品の使用感に良くない影響を与えることができる。
【0005】
また、全世界的に有機農認証化粧品の市場が大きくなっている時点において、オレアノール酸は、唯一に天然由来のシワ機能性成分として認められたが、前に言及した皮膚の脂質類似組成のナノ技術を利用してオレアノール酸をカプセル化した場合には、有機農認証化粧品に使用できない成分が多数含まれているので、有機農認証化粧品の原料として使用できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するために、シワ改善効果に優れたオレアノール酸を他の追加的な原料を使用してカプセル化することなく、単独でナノリポソームに安定するように捕集させて、可溶化剤形に使用した化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、ナノリポソーム内に捕集したオレアノール酸を有効成分として含有する化粧料組成物であって、前記オレアノール酸を捕集したナノリポソームが、
1)プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの混合物で構成された群から選択される1種以上のポリオール成分と
、水素化レシチンであるリン脂質成分とを
混合して溶解してから、それに炭酸ジカプリリルである油性成分とオレアノール酸とを添加し、均一に混合して混合物を得るステップと
、
2)ステップ
1)の混合物を冷却させ、エタノールを添加した後、均一に混合するステップと、
3)ステップ
2)の混合液に界面活性剤と水を添加した後、これを均一に混合するステップ
と、を含む製造方法で得られたものであり、前記水素化レシチンの含量は、組成物の総重量に対して、0.05〜1.0重量%であることを特徴とする化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧料組成物は、皮膚のシワ改善に効果的なオレアノール酸をナノリポソーム内に捕集させて剤形内に安定化することにより、ナノリポソームによって経皮吸収の速度が増加され、コラーゲンの合成を促進することで優れたシワ改善効果を提供し、また、オレアノール酸を安定化させるための追加的な原料を投入せずに製品製造の単価を減らすことができる。また、爽やかで吸収後の水分感のある使用感を提供することができ、全世界的に増加している有機農のシワ機能性化粧品に対する消費者の需要を充足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、有効成分としてオレアノール酸を含有する化粧料組成物を提供し、前記化粧料組成物は、可溶化の形態で剤形化することができる。前記オレアノール酸は、ナノリポソーム内に捕集されており、ナノリポソームによって安定化させることにより、可溶化の剤形内でオレアノール酸の安定性及び溶解度を高めることができ、経皮吸収率を高めることができる。
【0010】
本発明で使用されるオレアノール酸は、天然由来のシワ機能性成分として唯一に認められたものであって、本発明では、組成物の総重量に対して0.0001〜5.0重量%、好ましくは0.0005〜1.0重量%の量で含有する。0.0001重量%未満の濃度では、明確な効果を期待することができず、5.0重量%超過の濃度では、含有量増加による明確な効果の増加が現れないだけでなく、剤形安定度に良くない影響を及ぼすからである。
【0011】
本発明の可溶化化粧料組成物を製造する時に形成されるナノリポソームは、リポソームの形態を有するもので、平均粒子直径が10〜500nmのリポソームを意味し、本発明で形成されるナノリポソームの大きさは、好ましくは50〜300nmである。ナノリポソームの平均粒子直径が300nmを超過する場合には、本発明で達成しようとする技術的効果のうち皮膚浸透の改善及び剤形安定性の改善が非常に微弱なためである。
【0012】
本発明でオレアノール酸の安定化のために形成されるナノリポソームは、ポリオール、油性成分、界面活性剤、リン脂質、及び水を含む混合物によって製造される。また、可溶化化粧料組成物に含まれているオレアノール酸を捕集しているナノリポソームは、高圧乳化や別途の製造工程なしで単純に可溶化化粧料組成物を製造する時、自然に形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明のナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物に用いられるポリオールは、特に制限されず、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、メチルプロパンジオール、イソプロピレングリコール、ペンチレングリコール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール及びこれらの混合物で構成された群から選択される1種以上である。また、前記ポリオールは、ナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物の総重量に対して5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%の量で使用される。
【0014】
本発明のナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物に用いられる油性成分は、当業界に公知された多様なオイルが利用されることができ、好ましくは、ヘキサデカン及びパラフィンオイルのようなハイドロカーボン系オイル、エステル系の合成オイル、ジメチコン及びシクロメチコン系のようなシリコーンオイル、ひまわり油、トウモロコシ油、大豆油、アボカド油、ごま油、及び漁油のような動植物性オイル、エトキシ化アルキルエーテル系オイル、プロポキシル化アルキルエーテル系オイル、フィトスフィンゴシン(phytosphingosine)、スフィンゴシン及びスフィンガニンのようなスフィンゴ脂質、セレブロシドコレステロール、シトステロール硫酸コレステリル、硫酸シトステロール、C
10-40脂肪アルコール、並びにこれらの混合物である。その使用量は、ナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物の総重量に対して0.01〜10.0重量%であり、好ましくは1.0〜5.0重量%である。
【0015】
本発明のナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物に用いられる界面活性剤は、当業界に公知されたいずれのものを使用してもよい。例えば、本発明で界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤を使用することができ、好ましくは、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤の具体的な例としては、アルキルアシルグルタミン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル乳酸、ジアルキルリン酸塩及びトリアルキルリン酸塩を含む。非イオン性界面活性剤の具体的な例は、ポリソルベート、アルコキシル化アルキルエーテル、アルコキシル化アルキルエステル、アルキルポリグリコシド、ポリグリセリルエステル、及び糖エステルを含む。前記界面活性剤の使用量は、ナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物の総重量に対して0.001〜5.0重量%であり、好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0016】
本発明で形成されるナノリポソームにおいてリン脂質は、両親媒性脂質が利用され、天然リン脂質(例えば、卵黄レシチンまたは大豆レシチン、スフィンゴミエリン)及び合成リン脂質(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン又は水素化レシチン)を含み、好ましくはレシチンである。特に、大豆または卵黄で抽出した天然由来の不飽和レシチンまたは飽和レシチンが好ましい。通常的に天然由来のレシチンは、ホスファチジルコリンの量が23〜95%、そしてホスファチジルエタノールアミンの量が20%以下である。本発明のナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物の製造において、リン脂質の使用量は、可溶化化粧料組成物の総重量に対して0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.5〜2.0重量%である。
【0017】
本発明のナノリポソームを含む可溶化化粧料組成物で用いられる水は、一般的に脱イオン化された蒸留水であり、水の使用量は、可溶化化粧料組成物の総重量に対して25.0〜90.0重量%である。
【0018】
本発明の可溶化化粧料組成物は、オレアノール酸を含有することにより、特に優れたシワ改善効果を提供する抗老化用の組成物として使用される。
【0019】
また、本発明の組成物は、その剤形において特別な制限はないが、透明または懸濁液状の外観および使用上の長所を考慮すれば、柔軟化粧水、栄養化粧水、スプレー、ミストまたはゲル等の基礎化粧料;ヘアトニック、ヘアエッセンス又はヘアトリートメントなどの養毛剤のような毛髪用化粧料組成物;その他の医薬品及び医薬部外品などに幅広く適用することができ、人の皮膚に塗布された時にも副作用なしで安全で且つ効果が優れた皮膚のシワ改善剤として使用することができる。
【0020】
本発明の組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型若しくは非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性若しくは親油性の活性剤、脂質小胞、又は化粧品に通常的に用いられる任意の他成分のような化粧品学若しくは皮膚科学分野で通常的に用いられる補助剤を含有することができる。これらの補助剤は、化粧品学または皮膚科学分野で一般的に使用される量で導入される。
【実施例】
【0021】
以下、実施例及び試験例を通じて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、以下の実施例、実験例及び製造例は、本発明に対する理解を助けるために例示の目的のみで提供されるものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がこれに限定されないことを明らかにする。
【0022】
[参考例1]ナノリポソームで安定化されたオレアノール酸の可溶化化粧水の製造
下記の表1に記載された組成によって実施例1〜3及び比較例1〜4のシワ改善用の可溶化化粧水を製造した(単位:重量%)。
実施例1〜3は、本発明に係るナノリポソームを形成するとともに、前記ナノリポソームが含まれる可溶化化粧水であり、比較例1〜2は、実施例1〜3とは異なる一般的な可溶化剤を使用したものであり、比較例3は、オレアノール酸をカプセル化されたオレアノール酸ナノベースの形態で含むものである。比較例4は、オレアノール酸をエタノールとプロピレングリコール4:1の比率の混合物に溶解させたものである。
【0023】
【表1】
【0024】
製造方法は、次の通りである。
1)成分1〜3とポリオールの成分4〜5を一度に投入し、80℃で加温溶解した後、成分6〜9を投入して均一に混合した。
2)1)の混合物を65℃で冷却した後、エタノール(成分10)を投入して十分に混合した。
3)成分11〜14の水相成分をあらかじめ均一に混合した後、65℃で加熱した後、2)の混合物と均一に混合した。
4)前記3)を室温で冷却して保管した。
【0025】
一方、比較例3の場合には、前記ステップ3)の次に、カプセル化されたオレアノール酸ナノベース(成分15)を投入する。
【0026】
[試験例1]組成物の安定度評価
前記経時変化によるシワ改善用の可溶化化粧料組成物の安定度を調べるために、実施例1〜3及び比較例1〜4で製造した可溶化化粧水を室温、45℃の恒温槽及び−10℃から45℃に12時間の間隔で循環する恒温槽でそれぞれ1ヶ月間保管した後、外観の変化を観察した。
【0027】
【表2】
【0028】
前記表2における結果を見れば、オレアノール酸をナノリポソームに捕集した実施例1〜3は、他の一般的な可溶化剤を使用した比較例1〜2よりも長期的に安定することが分かる。また、実施例2と比較例1〜2とを比較してみれば、オレアノール酸をナノリポソームに捕集して安定化させた実施例2で使用した界面活性剤の量が、比較に1〜2で使用した界面活性剤の量よりも、遥かに少ないことが分かる。これにより、ナノリポソームを形成してオレアノール酸を捕集する場合、剤形内に使用しなければならない界面活性剤の量をかなり減らせることが分かり、多量の界面活性剤を使用する場合の皮膚刺激に対する危険も避けることができる。
【0029】
[試験例2]ナノリポソームを形成してオレアノール酸を安定化させた組成物と、カプセル化されたオレアノール酸を使用した組成物との使用感比較
前記実施例2及び比較例3の使用感を評価するために、実施例2及び比較例3で製造されたシワ改善用の可溶化化粧料組成物に対して官能試験を実施した。25〜35歳の女性20名を対象にして、それぞれのシワ改善用の可溶化化粧料組成物を一般的な使用法によって手の甲皮膚に塗布した後、使用感に対する満足度を評価するようにした。官能評価は、べたつき感、吸収感、保湿感、栄養感の総4項目であり、各項目に対して非常に優秀(10点)、優秀(7.5点)、普通(5点)、悪い(2.5点)、及び非常に悪い(0点)の基準に基づいて行い、この値を平均して下の表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
ナノリポソームを剤形内に形成してオレアノール酸を安定化させた実施例2と、カプセル化されたオレアノール酸を使用した比較例3とを比較してみる場合、同じ量のオレアノール酸を使用してもカプセル化されたオレアノール酸を使用した比較例3は、カプセル化されたオレアノール酸ナノベースを製造するために安定化物質を実施例2よりも約2.4重量%以上さらに使用するので、使用感に良くない影響を及ぼすということが分かり、使用感を比較した場合には、表3のように剤形内にナノリポソームを形成してオレアノール酸を安定化させた剤形の使用感が遥かに良いことが分かる。
【0032】
[試験例3]コラーゲン生合成促進効果の測定
前記実施例2のコラーゲン生合成促進効果に対して、コラーゲン生合成を促進すると知られているトコフェロール及びEGCGと比較して測定した。まず、ヒト線維芽細胞(fibroblast)(PromoCell,Germany)を24孔(well)に1孔当たり10
5個ずつ種まき(seeding)をして90%程度育つまで培養した。これを24時間の間に無血清DMEM培地で培養した後、無血清培地に溶かした実施例2、トコフェロール及びEGCGをそれぞれ10
-4モル濃度で処理し
、24時間の間にCO
2培養器で培養した。これらの上層液を取ってプロコラーゲン型(I)エライザ(ELISA)キット(procollagen type(I))を利用してプロコラーゲン(procollagen)の増減の有無を観察した。その結果は、下記の表4に示した。ここで、合成能は、非処理群を100にして対比したものである。
【0033】
【表4】
【0034】
前記表4から分かるように、実施例2の組成物は、コラーゲン生合成を促進し、これは、コラーゲン生合成を促進すると知られているトコフェロール及びEGCGと比較しても、遥かに優れた効果を提供することが分かる。
【0035】
[試験例4]皮膚吸収量の測定
皮膚吸収は、モルモットの皮膚を対象にしてフランツ透過セルを利用して測定した。試験の直前、モルモットの腹部の部分の皮膚を採取して平方1cm
2の面積で切断した後、これを透過鏡の直径が0.9cmの透過セルに設置してクランプで固定した。皮膚の一方の面〔ドナー(donor)容器〕は、オレアノール酸をエタノールとプロピレングリコール(4:1)に溶解させた比較例4のサンプルと、ナノリポソームで形成してオレアノール酸を安定化させた実施例2のサンプルとを、それぞれ0.2gずつ塗布し、他方の面〔受容(receptor)容器〕は、精製水とエタノールが4:1の重量比で混合された溶媒と接触するようにし、試験時の温度は、実際の皮膚温度である32℃を維持した。試験の開始後、一定の時間間隔で溶媒の一部を採取した後、HPLCを利用して皮膚に吸収されたオレアノール酸の量を測定し、経過時間による塗布濃度当たりの皮膚吸収量(μg/cm
2/重量%)に示した。その結果を下記の表5に示した。
【0036】
<HPLC分析条件>
−カラム:Waters Novapak C18(3.9mm×250mm、4um)
−溶媒流速:1ml/分
−検出UV:210nm
−サンプル測定濃度:10〜100ug/mL
−サンプル注入量:20uL
−溶離液:MeOH/0.1% H
3PO
4=82/18
【0037】
【表5】
【0038】
前記表5の結果からナノリポソームの形成により、オレアノール酸を安定化させた実施例2の経皮吸収量が遥かに優秀であることが分かる。