(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被験物質、又は前記被験物質と前記第1の特異的結合物質の複合体、に特異的に結合する第2の特異的結合物質を備え、被験物質、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質で複合体を形成できるように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の免疫クロマトグラフィー装置は簡便な構造であり、短時間で被験物質の検出を行うことができる。しかし、従来の免疫クロマトグラフィー装置は上述したようにメンブレンの毛細管現象を利用するものであるので、移動相である液体と検体の移動速度を調節することはできないため、検出部における被験物質と用いる抗体の親和性が低い場合には、十分な抗体−抗原反応の時間を確保できないという問題があった。
また、検体中に含まれる液体を移動相として利用する簡便な構造の免疫クロマトグラフィー装置が知られている。このような免疫クロマトグラフィー装置では移動相となる液体を別途添加する操作を必要としないため、操作が簡便である。しかし、検体量が少ないと移動相である液体の量が不足するため毛細管現象による検体の移動が途中で止まってしまい、検出部まで検体が到達しない。そのため、このような免疫クロマトグラフィー装置は、操作は簡便であるが大量の検体を必要としていた。
また、検出におけるバックグラウンドを抑え検出精度を上げるためには、検出部における免疫複合体を洗浄するための洗浄液を別途追加する必要があるという問題がある。そして、十分な洗浄を行うために多量の洗浄液を加えると、上述したような吸水パッドの保水力では液の逆流を抑えることができず、逆に検出精度が低くなってしまうといった問題があった。
一方、特許文献1に記載のような高速液体クロマトグラフィー装置では、液体の移動をポンプによって行うため、液の逆流等の問題は起こらない。しかし、高速液体クロマトグラフィー装置は、上述したようにポンプが必要であり、簡便な装置であるとは到底いえない。
【0005】
そこで本発明の解決しようとする課題は、少量の検体中の被験物質を検出することができる簡便な検出装置を提供することにある。
また、本発明は、好ましい形態では、精度の高い検出が可能な検出装置を提供することも目的とする。また、より好ましい形態では、被験物質の定量的な測定もできる検出装置を提供することも本発明の課題である。さらに、好ましい形態では、液体の逆流が起こらない検出装置を提供することも本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、検体中の被験物質を所定位置で捕捉することにより検出する検出装置であって、液体を収容する検出槽と、該検出槽内の液体に検体を投入する投入部と、前記投入部から離れた位置であって、検出槽内に設けられた、前記被験物質を検出する検出部と、前記液体を前記投入部側から前記検出部側へ移動させる吸液手段と、を備え、前記吸液手段は、吸液材と、該吸液材を前記検出槽内の液体と非接触状態で収納する収納部と、前記吸液材を液体に接触させる操作部と、を有することを特徴とする、検出装置である。
本発明によれば、吸液材を液体に接触させることで、検出槽内において液体の流れが吸液材の吸液力によって形成される。すなわち、投入部から投入された検体中の被験物質は、吸液手段によって形成される液体の流れに乗って検出槽内を移動し、検出部によって捕捉される。当該被験物質が検出部によって捕捉された後も液体は移動を続けるため、被験物質以外の物質が検出部に非特異的に捕捉されることを防ぐことができる。したがって、本発明によれば、バックグラウンドの低い定量的な被験物質の検出を可能とする検出装置を提供することができる。
また、従来の免疫クロマトグラフィー装置のように、メンブレンの毛細管現象を利用するものではないため、本発明の検出装置では少量の検体における被験物質の検出が可能である。
また上述したように本発明の検出装置における吸液手段は吸液材、収納部及び操作部を有する。このような構成をとることによって、吸液手段の態様を、収納部に吸液材が収納されている状態から、吸液材が検出槽内の液体に接触する状態へ、操作部によって切り替えることができる。
また、本発明の検出装置においては、操作部によって吸液材を液体に接触させるまでは、検出槽内での液体の移動は起こらない。そのため、複数の検出装置の操作部を同時に操作することができる操作装置を利用した使用態様も可能となる。すなわち、複数の検出装置を用意し、それぞれに検体を投入する。そして、検体の投入された検出装置を、操作装置に設置する。次に、この操作装置を操作することによって、複数の検出装置の操作部を同時に操作する。すると、複数の検出装置の検出槽内での液体の移動を同時に開始することができる。このような使用態様とすることによって、複数の本発明の検出装置を用いる場合に、検出装置間での液体の移動時間の誤差が生じることを防ぐことができる。
この場合、前記操作装置に、本発明の検出装置の検出部を読み取る読み取り手段を設けることが好ましい。操作装置をこのような形態とすることによって、複数の本発明の検出装置を使用して、複数の検体からの被験物質の検出を同時に行うことができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記検出槽はその上面を覆う天板部を備え、前記投入部は前記天板部に設けられた投入口である。
このように検出槽に天板部を設けることによって、検出槽内の液体がこぼれることを防ぐことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記収納部は、前記検出槽の上部に、該検出槽内に吸液材を投入可能に配置されており、前記操作部は、前記液体が前記吸液材に向かうように液体の流れを形成する流向形成手段を備えていることを特徴とする。
このような形態とすることによって、収納部から検出槽へ吸液材を容易に投入することができる。すなわち、操作部によって収納部から吸液材を落として液体と接触させることで液体の流れを形成するという簡便な構造とすることができる。
【0009】
また、本発明の好ましい形態では、前記収納部は、前記検出槽内に配置されて前記吸液材を液体から隔離する隔離部材を備え、前記操作部は、前記液体が前記吸液材に向かうように液体の流れを形成する流向形成手段を備えている。
このように収納部に、吸液材と液体を隔離する隔離部材を備えることによって、吸液材が収納部に収納されている状態において、吸液材が液体と接触することを防ぐことができる。つまり、操作部を操作するまで、液体が前記吸液材に向かう流れは形成されない。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記収納部の少なくとも一部がシート状材料によって構成されており、操作部が前記シート状材料を破くシート破断手段を備える。
このような構成とすることで、シート破断手段によってシート状材料を破くことで、検出槽内の液体に吸液材を投入することができる。つまり、収納部のシート状材料を破くという行為が、検出槽における液体と検体の移動を開始することになるのである。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記収納部はシート状材料が設けられた反対側の面に押込み面を備え、前記シート破断手段は、前記押込み面を押し込むことにより反対側の面のシート状材料を破ることを特徴とする。
このような構成とすることによって、押込み面を押込むという簡便な操作によってシート状材料を破くことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記収納部の押込み面が応力により変形する材料で構成されている。
このような形態とすれば、押込み面を押込むことが容易になり、簡単にシート状材料を破くことができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記収納部の押込み面が、鉛直方向に可動する。
このような形態とすれば、押込み面を押込むことが容易になり、簡単にシート状材料を破くことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記収納部の押込み面の内側に少なくとも1つの針又は刃物が、その針先又は刃先をシート状材料に向けて設けられている。
このような形態とすることによって、シート状材料の破断が極めて容易になる。
【0015】
また、本発明においては、前記シート状材料にティアテープを設け、前記ティアテープを引くことによりシート状材料を破るように構成することも好ましい。
このような形態とすることによって、ティアテープを引くという簡単な操作によって、シート状材料を破くことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記液体と前記検体を内部に保持しながら移動させることができる展開部材を検出槽内に備え、前記展開部材が液体で湿潤していることを特徴とする。
このような形態とすることによって、投入部から検体を投入したときに、検出槽内の液体中での検体の拡散を抑えることができる。
かかる形態の検出装置においては、検体及び液体は展開部材の内部を通って検出槽内を、吸液材に向かって移動する。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記展開部材は少なくとも2以上の流路に分岐し、前記流路は再び合流する構成をとる。
このように流路を分岐させることによって、複数の検体を一度に検出装置に投入し、それぞれの検体中の被験物質を同時に検出することが可能になる。
【0018】
本発明の好ましい形態では前記被験物質に特異的に結合する第1の特異的結合物質を備え、第1の特異的結合物質が前記検出部の所定の位置に固定されていることにより、検体中の被験物質を所定位置で捕捉することができるように構成されている。
このような形態の本発明の検出装置は非常に精度に優れたものとなる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記被験物質、又は前記被験物質と前記第1の特異的結合物質の複合体、に特異的に結合する第2の特異的結合物質を備え、被験物質、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質で複合体を形成できるように構成されている。
このような形態とすることによって、第1の特異的結合物質によって捕捉された被験物質を精度よく検出することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記第2の特異的結合物質にマーカーが付加又は内在されている。
このような形態とすることによって、被験物質の検出が非常に容易になる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記第1の特異的結合物質及び前記第2の特異的結合物質は抗体である。
抗体は特異的結合能に極めて優れたものであるため、かかる形態の本発明の検出装置は、非常に精度が高いものとなる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記吸液材が吸水性高分子である。
吸水性高分子は自身の質量の何倍もの水分を吸水・保持することができるため、かかる形態の本発明の検出装置においては、検出槽内での液体の移動が途切れたり逆流したりすることがない。
【0023】
また、本発明は、吸液材の吸液力によって液体と検体を移動させ、前記検体中の被験物質を所定位置で捕捉する工程を含む被験物質の検出方法において、前記吸液材を前記液体に接触させることにより、前記液体の移動を開始する方法にも関する。
本発明によれば、吸液材の液体への接触という簡便な操作によって、液体の移動の開始段階を制御することができる。また、液体の移動を吸液材によって行うため、液体の移動が途切れたり、逆流したりすることがなくなる。また本発明の検出方法によれば、従来の免疫クロマトグラフィー法に比して少量の検体中の被験物質の検出を行うことができる。
【0024】
さらに、本発明は、吸液材の吸液力によって液体と検体を移動させ、前記検体中の被験物質を所定位置で捕捉する工程を含む被験物質の検出方法において、前記吸液材及び/又は前記液体の質量を調節することで、前記液体の移動速度を調節する方法にも関する。
本発明によれば、極めて簡便に液体の移動速度を調節することができる。
また、本発明によれば、使用する吸液材の質量を段階的に増やすことで、前記液体の移動速度を段階的に上昇させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、少量の検体中の被験物質を検出することができる簡便な検出装置を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態では、精度の高い検出が可能な検出装置を提供することができる。また、本発明のより好ましい形態では、被験物質の定量的な測定も可能である検出装置を提供することができる。さらに、本発明の好ましい形態では、液体の逆流が起こらない検出装置を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<1>検出装置
<1−1>検出装置と検体
以下、本発明の検出装置の実施の形態について詳述する。
本発明は、検体中の被験物質を所定位置で捕捉することにより検出する検出装置であって、液体を収容する検出槽と、該検出槽内の液体に検体を投入する投入部と、前記投入部から離れた位置であって、検出槽内に設けられた、前記被験物質を検出する検出部と、前記液体を前記投入部側から前記検出部側へ移動させる吸液手段と、を備え、前記吸液手段は、吸液材と、該吸液材を前記検出槽内の液体と非接触状態で収納する収納部と、前記吸液材を液体に接触させる操作部と、を有することを特徴とする、検出装置である。
本発明の検出装置によって検査することができる検体としては、液体に溶解又は分散させることができるものであれば特に制限されず、生体検体、有機・無機化合物を含む混合物や水溶液などが挙げられる。具体的には、生体検体としては血液、尿、唾液、糞便などや、生物試料、食品試料からの抽出物などが挙げられ、また、有機・無機化合物を含む混合物や水溶液としては、粉塵サンプル、土壌サンプル、海水、川の水などが挙げられる。特に簡便・迅速でなおかつ高精度な検査が求められる生体検体の検査において、本発明の検出装置は有用である。
以下、本発明の検出装置の構成について説明する。
【0028】
<1−2>検出槽
本発明における検出槽としては、液体を溜めることができる容器状の構造物であれば特に限定されない。つまり、液体を溜めることができるように少なくとも底面と側面を備えていればよい。本発明の好ましい実施の形態では、前記検出槽はその上面を覆う天板部を備える。
検出槽の素材としては、液体を漏らすことなく貯めることができるものであれば特に限定されない。工業的生産の観点から検出槽は熱可塑樹脂製であることが好ましい。
【0029】
<1−3>投入部
本発明において投入部の構成は検出槽外から検出槽内へ検体を投入可能な構成であれば特に限定されない。
上述したように検出槽に天板部を設ける場合には、天板部に投入口を設け、かかる投入口を投入部とすることが好ましい。
【0030】
<1−4>検出部
本発明における検出部は、投入部から離れた位置の槽内に設置され、被験物質を検出できる構成であれば特に限定されない。上述のように検出槽に天板部を備える場合には、検出部の観察を容易に行うことができるように、検出槽の天板部のうち検出部の上方に当たる部分に開口部を設けるか、天板部を透明の素材により構成することが好ましい。
投入部から検出部までの距離は特に限定されないが、投入部から検体を投入した際に、検体が直接検出部に投入される恐れが無い距離に設定することが好ましい。
検出部における被験物質の検出は、被験物質を捕捉することにより行う。被験物質を捕捉する機構としては、被験物質を特異的に捕捉し、被験物質以外の物質は捕捉しないように構成されていることが好ましい。
【0031】
被験物質を特異的に捕捉するため、本発明の検出装置の好ましい実施の形態では、被験物質に特異的に結合する第1の特異的結合物質を備え、第1の特異的結合物質を検出部の所定の位置に固定することにより、検体中の被験物質を所定位置で捕捉し、検出することができるように構成する。このような構成とすることによって、本発明の検出装置の精度が上がる。
第1の特異的結合物質としては、以下に挙げるものが好ましい。すなわち、被験物質がタンパク質などの生体物質である場合には抗体が好ましく挙げられる。また、被験物質が特定の配列を有するDNAやRNAなどの核酸である場合には、これらと相補的な配列を有するDNA又はRNAが挙げられる。そして、被験物質が上記の化学物質以外の有機・無機物質である場合には、被験物質であるこれら物質と特異的に結合する物質であることが好ましい。
【0032】
本発明のより好ましい形態では、被験物質、又は前記被験物質と前記第1の特異的結合物質の複合体、に特異的に結合する第2の特異的結合物質をさらに備え、被験物質、第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質で複合体を形成できるように構成されている。このような構成とすることによって、検出装置の検出精度は各段に向上する。
この場合、第2の特異的結合物質としては上記の特異的な結合能を有していれば特に限定されないが、好ましくは抗体が挙げられる。また、上述したように被験物質と第1の特異的結合物質がDNA又はRNAである場合には、第2の特異的結合物質として核酸の二重らせん構造に特異的に結合するエチジウムブロマイド等のインカレーターを好ましく挙げることができる。
また、第2の特異的結合物質にマーカーが付加又は内在されていることが好ましい。このような形態とすることによって、簡便に被験物質を検出することができる。マーカーとしては第2の特異的結合物質に付加することができるものであれば特に限定されないが、蛍光分子、金コロイド、着色及び蛍光微粒子、呈色又は発光反応を示す物質、放射性同位元素を含む化合物などが挙げられる。また、マーカーとして第2の特異的結合物質に内在することができるものとして放射性同位元素が例示される。
安全性、検出の簡便さ、定量性を考慮すると、マーカーとして蛍光分子を用いることが特に好ましい。この場合、市販の蛍光リーダーを用いて蛍光分子の発する蛍光を定量的に測定することができる。
【0033】
本発明の特に好ましい形態では、前記第1の特異的結合物質及び前記第2の特異的結合物質は抗体である。かかる実施の形態によれば、本発明の検出装置は、抗体の優れた特異的結合能によって、極めて感度及び精度に優れたものとなる。
第1の特異的結合物質及び第2の特異的結合物質を抗体とする場合における実施の形態について説明する。
被験物質に特異的に結合する、第1の特異的結合物質である抗体(以下、第1の抗体とする)は、市販のものを使用してもいいし、常法に従って作製しても良い。
第1の抗体を検出部の所定の位置に固定する態様としては、後述する展開部材の所定の位置に第1の抗体を常法に従って固定するようにしても良いし、また不溶性の固形担体(セファロースビーズなど)に第1の抗体を固定して、所定の位置にかかる固形担体を載置するようにしても良い。
第2の特異的結合物質である抗体(以下、第2の抗体とする)は、被験物質、又は被験物質と第1の抗体の複合体に特異的なものであれば特に限定されず、市販のものを使用してもいいし、常法に従って作製したものを使用しても良い。
特に被験物質に特異的な抗体を第2の抗体とすることが好ましく、検出精度の向上の観点から、第2の抗体は第1の抗体とは別のエピトープを認識するものであることが好ましい。
また、第2の抗体には金コロイド又は蛍光分子がマーカーとして付加されていることが好ましい。第2の抗体へのこれらのマーカーの付加は常法に従って行うことができる。第2の抗体に付加する蛍光分子としては、市販の蛍光分子を際限なく用いることができる。
【0034】
<1−5>吸液手段
本発明における「吸液」とは液体を吸収することであり、吸液手段とは、検出槽内の液体を吸収することにより投入部側から検出部側へ液体を移動させる手段のことであり、前記吸液手段は、吸液材と、該吸液材を前記検出槽内の液体と非接触状態で収納する収納部と、前記吸液材を液体に接触させる操作部を有する。
以下、吸液手段の構成について説明する。
【0035】
<1−5−1>収納部
本発明における収納部は、吸液材を前記検出槽内の液体と非接触状態で収納する構成をとる。収納部は吸液材を検出槽内の液体と接触しないように収納できれば、その構成は特に限定されない。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態では、前記収納部は、前記検出槽の上部に、該検出槽内に吸液材を投入可能に配置する。このような形態とすることによって、収納部から検出槽へ吸液材を容易に投入することができる。
この場合、収納部に、吸液材と検出槽内の液体を隔てる部材を設けても良い。また、そのような部材を設けずに、収納部の天井部に吸液材を保持することによって、吸液材と検出槽内の液体を接触しないようにしても良い。
【0037】
また、上の形態とは別に、本発明の好ましい実施の形態では、前記収納部は、前記検出槽内に配置されて前記吸液材を液体から隔離する隔離部材を備え、前記操作部は、前記液体が前記吸液材に向かう液体の流れを形成する流向形成手段を備える。
かかる実施形態では、液体が溜まっている検出槽内に収納部が設けられているため、吸液材と液体を非接触状態にするために、隔離部材は液体を透過しない素材で構成されていることが必要となる。
【0038】
<1−5−2>操作部
操作部は収納部に収納された吸液材を、検出槽内の液体に接触させる操作の用に供する部分である。以下に、操作部の形態について例示する。
(1)シート破断手段を備える操作部
本発明の好ましい形態では、前記収納部の少なくとも一部がシート状材料によって構成されており、前記操作部が前記シート状材料を破くシート破断手段を備える。
収納部を検出槽の上部に設ける場合には、収納部の下面をシート状材料によって構成することが好ましい。
また、収納部を検出槽内に配置する場合には、検出槽内の液体と接触している隔離部材の少なくとも一部をシート状材料によって構成することが好ましい。
シート状材料の素材としては、シート破断手段によって破ることができる素材であれば特に限定されず、水を透過しない素材であればより好ましい。シート状材料の素材としてはプラスチック、布、紙、金属が挙げられる。防水性、経時耐久性、耐腐食性の観点からシート状材料の素材としてはプラスチック又は金属が好ましい。
【0039】
シート破断手段を備える本発明の実施形態では、前記収納部はシート状材料が設けられた反対側の面に押込み面を備え、前記シート破断手段は、前記押込み面を押し込むことにより反対側の面のシート状材料を破ることで実現されることが好ましい。
上記押込み面の押し込みによりシート破断手段を実現するためには、前記収納部の押込み面が応力により変形する材料で構成されていることが好ましい。また押込み面は応力によって破れない材料であることが好ましい。このような材料としては、ゴムやプラスチックが挙げられる。
【0040】
また、押し込み面を押し込むことによりシート状材料を破断する場合には、前記収納部の押込み面が、鉛直方向に可動する構成にすることも好ましい。すなわち、収納部を押しボタンスイッチ様の構造とすることも好ましい。
【0041】
そして、押し込み面を押し込むことによりシート状材料を破断する場合には、収納部の押込み面の内側に、針先又は刃先がシート状材料に向く少なくとも1つの針又は刃物を設けることが好ましい。
【0042】
また、シート状材料を破断する形態として、シート状材料にティアテープを設け、このティアテープを引くことによりシート状材料を破るようにした形態も好ましい。
【0043】
(2)隔離部材の引き抜き手段を備える操作部
上述した、収納部が検出槽内に設置されている形態においては、隔離部材によって検出槽内の液体と吸液材が隔離されている。このような実施形態の場合には、隔離部材を検出装置から外部へ引き抜くことによって検出槽内の液体と吸液材を接触させる構成とすることも好ましい。
【0044】
(3)風船状の収納部を破裂させる手段を備える操作部
収納部を針等で穿てば破裂するような風船のような形態とすることも好ましい。このような形態とすれば、針等で収納部を穿つことによって、収納部を破裂させ、簡単に中身の吸液材を検出槽内の液体に接触させることができる。
【0045】
(4)収納部の回転手段を備える操作部
収納部の形態を、一部に開口部を備える内部筒部と、その内部筒部の外側に密着するように設けられた、一部に開口部を備える外部筒部によって構成することも好ましい。この場合、収納部は検出槽の上部に、外部筒部の開口部を下に向け、内部筒部の開口部を上に向けた状態で設けることが好ましい。このような形態の収納部を有する検出装置においては、内部筒部を回転させ内部筒部の開口部を、外部筒部の開口部と合わせることで、収納部に収納されていた吸液材が、検出槽内へ投下される。
【0046】
<1−5−3>吸液材
本発明における吸液材とは液体を吸収する性質を有する物質、又はかかる物質を含む部材のことをいう。吸液材としては、ろ紙、わた、スポンジ、布、カイメン、吸水性高分子などが挙げられる。
本発明における吸液材としては吸水性高分子が特に好ましく挙げられる。吸水性高分子とは吸水性と保水性を有する高分子のことをいう。本発明においては、吸水性高分子のうち、高吸水性高分子(Super Absorbent Polymer、略称:SAP)を用いることが特に好ましい。高吸水性高分子とは特に高い吸水性と水分保持性能を有するように設計された高分子であり、高分子が形作る網目構造の中に多数の水分子を取り込んでゲル状にする性質をもつものである。高吸水性高分子は自重の100倍から1000倍の水を吸収することができ、また圧力をかけても離水しにくい性質を持つ。すなわち、吸液材として高吸水性高分子を採用した本発明の検出装置においては、検出槽内での液体の逆流はほぼ起こらない。
このような高吸水性高分子としては、グラフト重合あるいはカルボキシメチル化によるデンプン系およびセルロース系、ポリアクリル酸塩系・ポリビニルアルコール系・ポリアクリルアミド系・ポリオキシエチレン系、及びポリアクリル酸ナトリウム系などの合成ポリマー系高分子が挙げられる。特に吸水・保水機能の観点からポリアクリル酸ナトリウム系高分子が好ましく挙げられる。
【0047】
本発明における吸水性高分子として高吸水性高分子であるポリアクリル酸ナトリウムを用いる場合には、粉末、顆粒状、球状、繊維状、シート状に成形したものの何れであっても用いることができる。
また、本発明の検出装置に投入する検体の性質や検査の目的によって、使用するポリアクリル酸ナトリウムを選択することができる。
ポリアクリル酸ナトリウムは水溶液重合法で作製したものは不定形で、懸濁重合法によって作製したものは微小球状となることが知られている。そして微小球状のポリアクリル酸ナトリウムは表面積が大きくなるため、不定形のものに比して吸水速度が大きくなる。また、不定形のポリアクリル酸ナトリウムは微小球状のものに比して多くの水分を吸収することができる。
すなわち、被験物質を検出部において捕捉した後においても多量の液体によって検出部を洗浄し、被験物質以外の物質が検出部に非特異的に捕捉されることを極力防ぎたい場合には、水溶液重合法によって作製した高吸水性のタイプのポリアクリル酸ナトリウムを用いることができる。また、検出槽における液体の移動速度を上げ、早期に検出結果を得たい場合には、懸濁重合法によって製造した急速吸水タイプのポリアクリル酸ナトリウムを用いることができる。
【0048】
また、本発明においては、液体及び/又は吸液材の質量を調節することによって、検出槽における液体の移動速度を調節することができる。すなわち、吸液材の質量を大きくすれば検出槽における液体の移動速度を上昇させることができ、逆に吸液材の質量を小さくすれば液体の移動速度を低下させることができる。
また、液体の質量を大きくすれば検出槽における液体の移動速度を低下させることができ、逆に液体の質量を小さくすれば液体の移動速度を上昇させることができる。
さらに、本発明においては吸液材を段階的に加えることで液体の移動速度を調節することができる。吸液材を段階的に加えることができる本発明の検出装置の形態としては、例えば、複数の収納部を備えた形態が挙げられる。かかる形態の本発明の検出装置においては、それぞれの収納部に収納された吸液材の液体への接触を段階的に行うことによって、液体の移動速度の段階的な調節をすることができる。
【0049】
さらに、本発明における吸液材としてポリアクリル酸ナトリウムを使用する場合には、ポリアクリル酸ナトリウムの種類を変更することによって、検出槽における液体の移動速度を調節することができる。
【0050】
<1−6>展開部材
本発明の好ましい形態では、前記液体と前記検体を内部に保持しながら移動させることができる展開部材を検出槽内に備え、前記展開部材が液体で湿潤していることを特徴とする。
ここで展開部材とは、繊維状又は粒子の密集した構造をもち液体と検体を内部に保持しながら移動させることができる部材をいう。具体的には、薄層クロマトグラフィーで用いる固定相のような、ガラスの板の上にシリカゲル、アルミナ、ポリアミド樹脂などを薄く張ったものや、免疫クロマトグラフィーで用いるようなセルロース、樹脂、ガラスからなるメンブレンや不織布状のシート、そしてアガロースゲルのようなゲル状組成物などが挙げられる。なお、本発明における展開部材は上に列挙したものに限られないことは言うまでもない。
【0051】
ここで本発明の展開部材としてニトロセルロースメンブレンやファイバーシートのようなシート状のものを使用する場合の実施の形態について詳述する。
この場合、検出槽と展開部材の形状は液体が流れる方向に平行な辺を長辺とする矩形とする。そして、検出槽内における展開部材は検体を投入する前から液体によって湿潤していることが好ましい。
また、投入部から検出部にかけては、展開部材の内部にのみ液体が存在している状態であることが好ましい。そのため、検出槽の両端には液体を貯留することができる液体貯蔵部を設け、投入部から検出部にかけての検出槽の底面が、前記液体貯蔵部の底面より高くなるように構成することが好ましい。こうすることで、多量の液体を液体貯蔵部に溜めながら、投入部から検出部にかけては、展開部材の内部にのみ液体が存在している状態を作り出すことができる。
【0052】
展開部材は、1つの流路で2以上に分岐させる構成をとることができるものの、本発明の好ましい形態においては、展開部材は少なくとも2以上の流路に分岐し、流路は再び合流する構成をとる。
このように流路を分岐させることによって、複数の検体を一度に検出装置に投入し、それぞれの検体中の被験物質を同時に検出することが可能になる。
この場合、それぞれの流路を形成する展開部材(少なくとも投入部から検出部にかけての部分)の間での液体の移動が起こらないようにすることが好ましい。具体的には、それぞれの流路を隔てるような凸状の障壁部分を検出槽に設けることが好ましい。このような形態とする場合には、さらに、投入部をそれぞれの流路に対して独立して備える構成とすることが好ましい。複数の検体の検出槽内におけるコンタミネーション防止の観点からである。
【0053】
上述したように、第1の抗体を固定した不溶性の固形担体(セファロースビーズなど)を検出部に載置するような形態とする場合には、展開部材の検出部に当たる部分に間隙を設け、かかる間隙に該固形担体を載置するように構成することも好ましい。
【0054】
<2>操作装置による本発明の検出装置の使用
本発明の検出装置においては、操作部によって吸液材を液体に接触させるまでは、検出槽内での液体の移動は起こらない。そのため、複数の検出装置の操作部を同時に操作することができる操作装置を利用した使用態様が好ましく挙げられる。
すなわち、複数の検出装置を用意し、それぞれに検体を投入する。そして、検体の投入された検出装置を、操作装置に設置する。次に、この操作装置を操作することによって、複数の検出装置の操作部を同時に操作する。すると、複数の検出装置の検出槽内での液体の移動を同時に開始することができる。このような使用態様とすることによって、複数の本発明の検出装置を用いる場合に、検出装置間での液体の移動時間の誤差が生じることを防ぐことができる。
この場合、前記操作装置に、本発明の検出装置の検出部を読み取る読み取り手段を設けることが好ましい。操作装置をこのような形態とすることによって、複数の本発明の検出装置を使用して、複数の検体からの被験物質の検出を同時に行うことができる。
【0055】
上記<1−5−2>(1)で説明した、押込み面の押込みによって、シート状材料を破る形態の本発明の検出装置を使用する場合には、前記操作装置は、複数の本発明の検出装置の押込み面を押し込むことができる機構を備えることが好ましい。
そして、上記<1−4>で説明したように、第2の特異的結合物質にマーカーとして蛍光分子を付加する場合には、前記操作装置に読み取り手段として、蛍光読み取り機構を備えることが好ましい。
【0056】
<3>被験物質の検出方法
本発明は、吸液材の吸液力によって液体と検体を移動させ、前記検体中の被験物質を所定位置で捕捉する工程を含む被験物質の検出方法において、前記吸液材を前記液体に接触させることにより、前記液体の移動を開始する方法にも関する。
本発明における吸液力とは、液体を吸収する力である。また、本発明における検体、被験物質、被験物質を所定位置で捕捉する工程、吸液材の実施の形態は、上記<1>の項目において説明したものと同様である。
【0057】
<4>液体の移動速度を調節する方法
本発明は、吸液材の吸液力によって液体と検体を移動させ、前記検体中の被験物質を所定位置で捕捉する工程を含む被験物質の検出方法において、前記吸液材及び/又は前記液体の質量を調節することで、前記液体の移動速度を調節する方法にも関する。
本発明によれば、吸液材の質量を大きくすれば検出槽における液体の移動速度を上昇させることができ、逆に吸液材の質量を小さくすれば液体の移動速度を低下させることができる。
また、液体の質量を大きくすれば検出槽における液体の移動速度を低下させることができ、逆に液体の質量を小さくすれば液体の移動速度を上昇させることができる。
本発明における検体、被験物質、被験物質を所定位置で捕捉する工程、吸液材の実施の形態は、上記<1>の項目において説明したものと同様である。
【実施例】
【0058】
<1>実施例1:シート破断手段を備える操作部が設けられた検出装置
(1)実施例1の検出装置の作製
実施例1の検出装置1の検出槽12は、アクリル製の天板部121(縦52mm、横18mm、高さ0.5mm)、中枠部122(縦52mm、横18mm、高さ3mm)、底板部123(縦52mm、横18mm、高さ0.5mm)からなる(
図1(b)、
図3(a))。
天板部121には3つの投入口15と、3つの検出口16が備えられている。また、天板部121には箱型の収納部14を設置するように、矩形(縦20mm、横12mm)の切り抜き121aが設けられている(
図1(b)、
図3(a))。この切り抜き121aは収納部14の底面よりも少し小さい矩形に形成されている。さらに、天板部121の裏側には凸部12aが設けられている(
図3(a)、(b))。
中枠部122には液体貯蔵部13を形成できるように、矩形(縦20mm、横12mm)の切り抜き122aが2つ設けられている(
図1(b)、
図3(a))。
実施例1の検出装置1の作製は、以下のようにして行った。まず底板部123と中枠部122を熱圧着させた。そして、底板部123と中枠部122により形成される液体貯蔵部13に所望の量の液体3を添加した。そして、中枠部122と天板部121の間にファイバーシート2をはさみ、熱圧着した。最後に、収納部14を熱圧着によって設置し、実施例1の検出装置を作製した(
図1(a)、(b))。
【0059】
上のようにして作製した実施例1の検出装置1の構成についてさらに説明を加える。
上述のようにして作製した実施例1の検出装置1は、アクリル製の検出槽12(縦52mm、横18mm、高さ4mm)を備える(
図1〜4)。検出槽12の上面に備えられた天板部121には投入口15と検出口17が設けられている。また、検出槽12の両端に液体が貯蓄された液体貯蔵部13(縦20mm、横12mm、深さ3mm)を備える(
図4)。
図4に示すように、検出槽12の上部に、押込み面142とシート状材料141を備えた収納部14が備えられている。押込み面142は硬質プラスチックフィルムからなり、シート状材料141はアルミ箔からなる。そして、収納部14には高吸水性高分子であるポリアクリル酸ナトリウム4が収納されている。
検出槽内には展開部材としてファイバーシート2が設けられ、
図2(b)及び
図3に示すように3つの流路21に分岐している。そして、それぞれの流路21は検出槽12に設けられた凸部12aによって仕切られている(
図3(a)(b))。ファイバーシート2には、検出部16に当たる部分に間隙22が設けられている。かかる間隙22に、第1の抗体163が担持されたセファロースビーズ162が載置されている(
図5(a))。
【0060】
実施例1の検出装置1においては、押込み面142に対して鉛直方向下向きの応力を加える(
図4(b))ことによって、シート状材料141が破れ、ポリアクリル酸ナトリウム4を検出槽内に投下することができる(
図4(c))。投下されたポリアクリル酸ナトリウム4は検出槽内の液体を吸収することで、検出槽内でポリアクリル酸ナトリウム4の方向に液体が移動を開始する(
図4(c))。
【0061】
次に、実施例1の検出槽内での抗体−抗原反応による被験物質の検出の機構について説明する。検出部16には、第1の抗体163が担持されたセファロースビーズ162が載置されている(
図5(a))。
この場合、検出部16よりも上流側に蛍光分子によって標識された第2の抗体164を予め備えていても良いし(
図5(a))、検体と同時に第2の抗体164を投入するようにしても良い。
投入部より検体を投入し、ポリアクリル酸ナトリウム4が検出槽内に投下され液体の移動が始まると、その液体の移動に伴い、検体中の被験物質5と第2の抗体164が複合体を形成した状態で、検出部方向へ移動する(
図5(b))。そして、かかる免疫複合体が検出部16へ到達すると、被験物質5と第1の抗体163が結合し、第1の抗体163−被験物質5−第2の抗体164の三元複合体となり、検出部16に留まる(
図5(c))。この検出部16に捕捉された第2の抗体164に結合している蛍光分子から発せられる蛍光を蛍光リーダーによって測定することによって、検体に含まれていた被験物質を検出し、またその量を定量的に測定することができる。
【0062】
<2>実施例2:ティアテープを備える操作部が設けられた検出装置
実施例2の検出装置1は、ティアテープ143を備える操作部が設けられた検出装置である。
図6(a)は収納部14を底面から見た斜視図である。
図6(a)に示すように、実施例2の検出装置1における底面のシート状材料141にはティアテープ143が設けられている。そして、ティアテープ143の余剰の端部が
図6(b)に示すように、検出槽12の外へ出るように構成されている。
実施例2の検出装置においては、この検出槽12から外へ出ているティアテープ143を引くことにより、シート状材料141が破れ、収納部14に収納されているポリアクリル酸ナトリウム4が検出槽内へ投入される。
【0063】
<3>実施例1の検出装置を使用した被験物質の検出
次に、実施例1の検出装置を使用して検体中の被験物質の検出及び被験物質量の測定を行った。
(1)準備
抗体標識ビーズ、蛍光標識抗体の作製
NHS−activated Sepharose High Performance beads(直径34μm、GE Healthcare)に抗インスリンモノクローナル抗体(cloneD3E7、Hytest)を250 μg/mLで標識し、抗インスリン抗体標識ビーズを作製した(第1の抗体163が担持されたセファロースビーズ162の作製)。抗インスリンモノクローナル抗体(cloneD6C4、Hytest)にDyLight 488 Antibody Labeling Kit(Thermo scientific)をプロトコルに従い標識し、PBSバッファーで10倍希釈した蛍光標識抗インスリン抗体を作製した(蛍光分子によって標識された第2の抗体164の作製)。
【0064】
(2)実施例1の検出装置を利用したインスリンの定量測定
実施例1の検出装置を用いて、簡便に少量検体(2.5μL)から、短時間(20分)で、タンパク質(インスリン)を定量測定した。
検出槽内の両端の液体貯蔵部13にそれぞれTBSバッファーを75μLずつ備え、収納部14にポリアクリル酸ナトリウム(重合度30000−40000、和光)が50 mg収納された実施例1の検出装置を用意した。
インスリン標準品((株)森永生科学研究所製)0、6.25、12.5、25、50、100 ng/mL (PBSで希釈) 2.5 μLに蛍光標識抗体1 μLを混合したものを投入部から投入した後、収納部14の押込み面142を指で押込み、シート状材料141を破って、下流側の液体貯蔵部13へポリアクリル酸ナトリウム4を投入した。ポリアクリル酸ナトリウム4の投入時を0分とし、15分後に蛍光顕微鏡で検出部の画像を取得し、画像解析ソフト(ImageJ、NIH)でgray valueを測定した。
【0065】
実施例1の検出装置で、インスリンの定量をおこなったところ、良好な直線性がみられ、少量検体(2.5μL)を、短時間(20分)で、チップ内において簡便に、6.25〜100ng/mLのタンパク質の定量が可能であることが示された(表1及び
図7)。
【0066】
【表1】
【0067】
(3)検出槽内の液体の量の検討
検出槽の両端の液体貯蔵部13に、TBSバッファーをそれぞれ(i)0 μL、(ii)75 μL、(iii)150 μLずつ備え、収納部にポリアクリル酸ナトリウム4(重合度30000−40000、和光)50 mgが収納された検出装置をそれぞれ用意した。
PBS 2.5 μLに蛍光標識された第2の抗体164 1 μLを混合したものを投入部から投入した後、収納部14の押込み面142を指で押込み、シート状材料141を破って、下流側の液体貯蔵部13へポリアクリル酸ナトリウム4を投入した。ポリアクリル酸ナトリウム4投入時を0分とし、15分後まで蛍光顕微鏡で観察し、画像を取得した。
その結果、蛍光標識がされた第2の抗体164は、上流(左)から下流(右)の向きに流れることが確認できた。(i)バッファー添加量0 μLでは、5分程度で流れ切ったが、(iii)一つの液体貯蔵部13のバッファー添加量を150 μLまで増加させると、15分では流れ切らなかった(
図8)。つまり、バッファー量が少ないと流速が速くなり、バッファー量を増加させると流速が遅くなることが分かった。すなわち、液体貯蔵部13へ添加する液体の量によって、検出槽内での液体の移動速度を調節できることが分かった。
【0068】
(4)吸水性高分子の種類と量を変えることによる流速変化の検討
検出槽内の両端の液体貯蔵部13にTBSバッファーをそれぞれ75 μLずつ備え、収納部に(i)1 mg、(ii)3 mg、(iii)5 mg、(iv)50 mgのアクリル酸ナトリウム4(アクアリックCA、日本触媒)が収納された検出装置を用意した。なお、本試験例におけるポリアクリル酸ナトリウムはアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物である。
PBS 2.5 μLに蛍光標識された第2の抗体164 1 μLを混合したものを投入口15から投入した後、押込み面142を押し込むことによって収納部14から下流側の液体貯蔵部13にアクリル酸ナトリウム4を投入した。ポリアクリル酸ナトリウム4の投入時を0分とし、15分後まで蛍光顕微鏡で観察し、画像を取得した。
【0069】
両端の液体貯蔵部13にそれぞれ75 μL備えた検出装置1において、重合度30000−40000のポリアクリル酸ナトリウム(和光)を50mg投入した場合(
図8(ii))と比較すると、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA、日本触媒)を3 mg(
図9(ii))投入したときに、同等の流速となった。つまり、アクリル酸ナトリウムの種類や重合度により、吸水能が異なるため、同質量であっても流速が異なることが分かった。
また、
図9より、ポリアクリル酸ナトリウムの投入量が少ないと、流速が遅くなり、添加量が多いと流速が速くなることが分かった。