【実施例】
【0032】
<アクリル系粘着剤の調製>
n−ブチルアクリレート:91重量部、アクリル酸:8重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:1重量部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部、および溶剤(酢酸エチル、トルエン):150重量部を、窒素気流中、85℃で5時間反応させて樹脂分40%、粘度7000Pa・sのアクリル系粘着剤を得た。
【0033】
<遮熱シートの作製>
アクリル系粘着剤:100重量部に、イソシアネート系架橋剤(コロネート(登録商標)L-55E:日本ポリウレタン製):1重量部を添加し、撹拌後、脱泡してアクリル系粘着剤組成物を得た。
次に、アクリル系粘着剤組成物をリリースライナー上に所定の厚さで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、金属層としてのサイズ60mm×30mm、厚さ35μmの銅箔(GTS:古河電気工業(株)製)に転写し、「銅箔/アクリル系粘着剤層/剥離ライナー」を得た。この工程を繰り返し、「剥離ライナー/アクリル系粘着剤層/銅箔/アクリル系粘着剤層/剥離ライナー」を得た。
【0034】
そして、一方の剥離ライナーを剥がし、透明樹脂層としてのPETフィルム(ルミラー(登録商標):東レ(株)製)を貼り合わせて「PET/アクリル系粘着剤層(第2接合層)/銅箔/アクリル系粘着剤層(第1接合層)/剥離ライナー」を作製し、40℃で3日間養生させ、実施例2〜4と比較例3〜4の遮熱シートを得た。なお、実施例2〜4と比較例3〜4において、PETフィルムの厚さ、PETフィルムと銅箔の間のアクリル系粘着剤層の厚さ、もう一方のアクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。実施例1については後述する。
【0035】
PETフィルムの代わりにOPPフィルム(トレファン(登録商標):東レ(株)製)を用い、実施例2〜4と同様にして実施例5および比較例5の遮熱シートを得た。なお、実施例5と比較例5において、OPPフィルムの厚さ、OPPフィルムと銅箔の間のアクリル系粘着剤層の厚さ、もう一方のアクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0036】
PETフィルムと銅箔の間の第2接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにポリエステル系接着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例6および比較例6の遮熱シートを得た。なお、実施例6と比較例6において、PETフィルムの厚さ、ポリエステル系接着剤層(第2接合層)の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ポリエステル系接着剤層の材料となるポリエステル系接着剤組成物は、ポリエステル系接着剤(ディックドライLX-500:DICグラフィックス(株)製):100重量部に、硬化剤(KW-75:DICグラフィックス(株)製):50重量部、希釈溶剤として酢酸エチル200重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0037】
PETフィルムと銅箔の間の第2接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにポリエーテル系接着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例7の遮熱シートを得た。なお、実施例7において、PETフィルムの厚さ、ポリエーテル系接着剤層(第2接合層)の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ポリエーテル系接着剤層の材料となるポリエーテル系接着剤組成物は、ポリエーテル系接着剤(ディックドライLX-401A:DICグラフィックス(株)製):100重量部に、硬化剤(SP-60:DICグラフィックス(株)製):100重量部、希釈溶剤として酢酸エチル250重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0038】
第1接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにシリコーン系粘着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例8の遮熱シートを得た。このとき、実施例8において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、シリコーン系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、シリコーン系粘着剤層の材料となるシリコーン系粘着剤組成物は、シリコーン系粘着剤(TSR1512:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製):100重量部に、硬化剤(CR50:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製):1重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0039】
第1接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにゴム系粘着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例9の遮熱シートを得た。このとき、実施例9において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、ゴム系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ゴム系粘着剤層の材料となるゴム系粘着剤組成物は、ビッグテクノス(株)製のGR-1134を用いた。
【0040】
金属層としての銅箔の代わりにアルミニウム箔(A1N30:日本製箔(株)製)を用い、実施例2〜4と同様にして実施例11および12と比較例9および10の遮熱シートを得た。このとき、実施例11、12と比較例9、10において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、アルミニウム箔の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0041】
前記ポリエステル系接着剤組成物を剥離ライナーに塗布、乾燥してポリエステル系接着剤層(透明樹脂層)を形成し、その後、ポリエステル系接着剤層に銅箔(金属層)を貼り合せ、銅箔の反対面には前記と同様にアクリル系粘着剤層(第1接合層)を積層することにより、実施例1の遮熱シートを得た。このとき、実施例1において、ポリエステル系接着剤層の厚さ、銅箔の厚さ、アクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0042】
<遮熱シートの評価方法>
筐体としてサイズ95mm×55mm、高さ20mm、厚さ2mmのABSケースを用い、剥離ライナーを剥がした遮熱シートをABSケースの内面に貼り付けた。この遮熱シートは前記実施例および比較例のものである。
一方、サイズ50mm×25mmのヒーター(日本ヒーター製)が接合されたガラスエポキシ基板を、ヒーターが遮熱シートと対面するように筐体内に配置した。このとき、ABSケース内面とヒーターとの間の空隙の距離L1を0.1mm、0.4mm、1.0mmに設定した(
図1参照)。
【0043】
ABSケースにおける遮熱シートとは反対側の外面に熱電対を取り付けた状態でヒーターを発熱させ、ABSケース外面の温度測定を行い、ケース外面温度が安定してきた20〜40分経過時の平均温度を表2に示した。このとき、ヒーター出力を3W、1Wに設定した。
【0044】
また、表1に示すように、遮熱シートを設けない比較例1、銅箔にアクリル系粘着剤層のみを積層してなる遮熱シートを用いヒーター出力を3W、1Wに設定した比較例2、7、アルミニウム箔にアクリル系粘着剤層のみを積層してなる遮熱シートを用いヒーター出力を1Wに設定した比較例9についても温度測定を行い、その結果を表2に示した。
【0045】
また、各実施例および各比較例について、ABSケース内面とヒーターとの間の空隙の距離L1が0.1mm、0.4mm、1.0mmであるときの遮熱シートとヒーターとの間の隙間の距離L2を表3に示した(
図1参照)。
【0046】
なお、表2において、「差」とは、比較例2の温度に対する実施例1〜9、比較例3〜6の温度差、比較例7の温度に対する実施例10、比較例8の温度差、比較例9の温度に対する実施例11および12、比較例10の温度差を意味し、これらの温度差がプラスの値であれば放熱性が劣るとして「評価」をIと記し、マイナスの値であれば放熱性が優れるとして「評価」をIIと記している。
【表1】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
<結果>
比較例1と2を比較すると、ABSケース内に遮熱シートを設けない比較例1の場合、筐体外面温度が80.0℃であるのに対し、総厚40μmの遮熱シート(接合層+金属層)を設けた比較例2の筐体外面温度は71.8℃であった。つまり、比較例2の遮熱シートによって筐体外面温度を8.2℃低く抑えることができ、構造が簡素な遮熱シートでも温度上昇の抑制に有効であることが確認できた。
【0049】
次に、比較例2を基準として、比較例2で使用した遮熱シートの金属層上に第2接合層を介して透明樹脂層を積層した実施例および比較例の結果について説明する。
【0050】
図2は実施例2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの温度変化を示すグラフであり、
図3は実施例1、2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの表面層厚さと平均温度との関係を示すグラフである。
図2と
図3に示すように、銅箔上にアクリル系粘着剤層およびPETフィルムからなる表面層が積層された実施例1、2、4は、銅箔上に表面層を有さない比較例2よりも温度上昇の抑制効果に優れていた。また、銅箔上の表面層の厚みを10μmよりも厚くした比較例3および4は、表面層を有さない比較例2よりも温度上昇した。
【0051】
酸化されていない金属は熱線を高効率で反射するため、その金属表面に放射率の高い材料を積層すると、熱線を吸収しやすくなって温度上昇に寄与し、かつ表面層からの放射エネルギーも増大して温度低下に寄与する。すなわち、吸収エネルギーと放射エネルギーの大小で温度抑制効果が決まる。
【0052】
表面層の厚みが10μm以下と薄い実施例1、2、4の場合、吸収エネルギーよりも放射エネルギーの方が大きいため、表面層を有さない銅箔のみの比較例2よりも温度抑制効果が高くなったと考えられる。一方、表面層の厚みが10μm超と厚い比較例3および4の場合、放射エネルギーよりも吸収エネルギーの方が大きいために温度抑制効果が比較例2よりも低下したと考えられる。
【0053】
この傾向は実施例3の場合も同様であり、実施例1、2、4および比較例2〜4における空隙の距離L1が0.1mm、0.4mmの場合も同様であった。さらに、実施例5〜9および比較例5、6のように透明樹脂層、第2接合層または第1接合層の材料を変更しても同様であり、実施例10〜12および比較例7〜10のようにヒーター出力を低下させ、それに加えて金属層の材料を変更しても同様であった。
【0054】
図4は温度と低温やけどが起こる時間との関係を示すグラフである(佐々木健司「あなどれない低温やけど」『NHKきょうの健康』2003.1,102-106より)。
図4から、低温やけどが起こる時間は、熱源の温度が高いほど指数関数的に短くなり、熱源の温度が低いほど指数関数的に長くなることがわかる。
よって、薄い携帯型の電子機器の表面温度が僅か1℃低下するだけでも低温やけどの抑制には大きな利点となるため、本発明の電子機器の遮熱構造による遮熱効果は有効であると言える。
【0055】
なお、開示された実施形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。