特許第6321971号(P6321971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321971
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】電子機器の遮熱構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   H05K7/20 Y
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-8588(P2014-8588)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-138825(P2015-138825A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592103442
【氏名又は名称】ビッグテクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】上利 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 寛
(72)【発明者】
【氏名】門多 丈治
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲周
【審査官】 宮下 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−151196(JP,A)
【文献】 特開2012−129476(JP,A)
【文献】 特開2014−7246(JP,A)
【文献】 特開2007−27520(JP,A)
【文献】 特開2015−88538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 5/00
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装された発熱部品を有する基板と、この基板を収納する筐体と、この筐体の内面における前記発熱部品と対向する位置にかつ前記前記発熱部と隙間をもって配置された遮熱シートとを備え、
前記遮熱シートは、前記筐体の内面に接合層を介して貼り付けられた金属層と、この金属層上に積層された表面層とからなり、
前記表面層は、前記金属層上に直接または第2の接合層を介して積層された透明樹脂層からなり、
前記表面層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする電子機器の遮熱構造。
【請求項2】
前記隙間が10〜1000μmである請求項1に記載の電子機器の遮熱構造。
【請求項3】
前記遮熱シートの厚さが16〜130μmである請求項1または2に記載の電子機器の遮熱構造。
【請求項4】
前記金属層が銅またはアルミニウムからなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子機器の遮熱構造。
【請求項5】
前記透明樹脂層がポリエチレンテレフタレート若しくは二軸延伸ポリプロピレン又はポリエチレンナフタレートからなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子機器の遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高密度化に伴って発生する熱や電子機器の小型化に伴う放熱面積の減少等によって機器内部が温度上昇し、それを原因とする製品寿命の低下、誤動作、低温やけど等が問題となっている。特に、スマートフォンやタブレット型携帯情報端末やノート型パソコンといった薄型の電子機器は、ユーザーの身体の一部(例えば、手のひらや太股)に接触した状態で使用される場合があるため、低温やけど対策が重要となっている。
【0003】
「低温やけど」とは、比較的低い温度の物であっても長時間にわたって皮膚の同じところに触れていると筋肉、血液等が壊死する現象であり、一般的に44℃では3〜4時間、46℃では0.5〜1時間、50℃では2〜3分の接触で発症すると言われている。
そのため、電子機器の使用中にユーザーが低温やけどをしないよう、電子機器内部の発熱する電子部品(以下「発熱部品」という)と筐体との間には一般に放熱シートが設けられている。
【0004】
このような放熱シートの1種類として遮熱シートがある。主にアルミニウム箔が用いられており、筐体の内面における発熱部品と対向する位置に粘着剤層を介してアルミニウム箔を貼り付けることにより、発熱部品からの輻射熱を反射して筐体外面の温度上昇を抑制していた(従来技術1)。
【0005】
さらに、特許文献1では、発熱部品を実装した基板と、この基板を収納する筐体とを備えた薄型の電子機器において、筐体内面の発熱部品と対向する位置に多層構造の遮熱シートを貼り付けた遮熱構造が提案されている(従来技術2)。
【0006】
従来技術2における遮熱シートは、電子機器の筐体内面に接着剤層を介して貼り付けられる断熱シートと、両面テープまたは粘着剤といった第1の粘着剤層を介して断熱シート上に積層された熱伝導シートと、両面テープまたは粘着剤といった第2の粘着剤層を介して熱伝導シート上に積層された保護層とからなり、発熱部品に対して隙間をもって対向配置される。
【0007】
前記遮熱シートにおいて、断熱シートとしては不織布または発泡体樹脂が用いられ、熱伝導シートとしては熱分解グラファイトシートが用いられ、保護層としてはPETフィルムまたはアルミニウムシートが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−151196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術2に記載の遮熱シートは、筐体側から接着剤層、断熱シート、第1の粘着剤層、熱伝導シート、第2の粘着剤層および保護層が順次積層された6層構造である。この遮熱シートは積層数が多いため、その製造工程数は多く、材料費も増加し、しかも熱伝導シートとして高価な熱分解グラファイトシートが用いられているため、製造コストが嵩んでいた。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、製造コストの上昇を抑えながら比較的高い遮熱効果を得ることができる電子機器の遮熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明によれば、実装された発熱部品を有する基板と、この基板を収納する筐体と、この筐体の内面における前記発熱部品と対向する位置にかつ前記前記発熱部と隙間をもって配置された遮熱シートとを備え、
前記遮熱シートは、前記筐体の内面に接合層を介して貼り付けられた金属層と、この金属層上に積層された表面層とからなり、
前記表面層は、前記金属層上に直接または第2の接合層を介して積層された透明樹脂層からなり、
前記表面層の厚さが1〜10μmである電子機器の遮熱構造が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子機器の遮熱構造において、発熱部品からの熱は主に熱伝導や対流としては遮熱シートへ伝わらず、発熱部品から放射された輻射熱が遮熱シートへ伝わる。そして、発熱部品からの輻射熱の一部は透明樹脂層を透過し金属層に当たって発熱部品側へ反射すると共に、発熱部品からの輻射熱の一部は透明樹脂層に吸収される。さらに、輻射熱を吸収した透明樹脂層の吸収エネルギーの一部は輻射熱として発熱部品側へ放射される。
【0013】
このとき、金属層の表面が透明樹脂層にて覆われているため、金属層表面の酸化が抑止され、長期間にわたる高い反射率が維持される。それに加え、厚さが10μm以下と薄く透明である透明樹脂層に輻射熱が吸収され難く、かつ透明樹脂層に吸収された吸収エネルギーのほとんどが透明樹脂層表面より放射エネルギーとして放射される。
本発明の電子機器の遮熱構造によれば、このような作用により、筐体内面における遮熱シート貼付領域の反対側の外面の局所的な温度上昇が前記従来技術1よりも低く抑えられる。
【0014】
また、本発明における遮熱シートは3層または4層構造であるため前記従来技術2よりも積層数が低減され、しかも熱分解グラファイトシートのような高価な材料を用いないため、前記従来技術2よりも大幅なコストダウンを実現できる。
このように、本発明の電子機器の遮熱構造によれば、製造コストの上昇を抑えながら高い遮熱効果を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の電子機器の遮熱構造によれば、絶縁性の透明樹脂層を用いることにより、万が一遮熱シートが発熱部品に接触したとしてもショートするといった不具合も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る電子機器の遮熱構造の実施形態1を示す拡大断面図である。
図2】実施例2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの温度変化を示すグラフである。
図3】実施例1、2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの表面層厚さと平均温度との関係を示すグラフである。
図4】温度と低温やけどが起こる時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る電子機器の遮熱構造は、実装された発熱部品を有する基板と、この基板を収納する筐体と、この筐体の内面における前記発熱部品と対向する位置にかつ前記発熱部材と隙間をもって配置された遮熱シートとを備え、
前記遮熱シートは、前記筐体の内面に接合層を介して貼り付けられた金属層と、この金属層上に積層された表面層とからなり、
前記表面層は、前記金属層上に直接または第2の接合層を介して積層された透明樹脂層からなり、
前記表面層の厚さが1〜10μmである。
【0018】
本発明が対象とする電子機器は、例えば、スマートフォンやタブレット型携帯情報端末やノート型パソコンといった薄型電子機器であり、このような薄型電子機器に本発明の遮熱構造が好適に採用される。
【0019】
本発明において、遮熱シートを構成する金属層と透明樹脂層との金属樹脂積層体は、例えば、金属シート上に接着剤または粘着剤を介して透明樹脂フィルムをラミネートする、あるいは透明樹脂フィルム上に金属膜を蒸着するなど、公知技術によって製造することができる。
また、遮熱シートの少なくとも一部が筐体内面に直接的または間接的に接触した状態で取り付けられる。この場合、金属層の透明樹脂層とは反対面の少なくとも一部に接着剤または粘着剤を塗布することにより、金属層を筐体内面に直接的または間接的に接触した状態で、かつ位置ずれすることなく固定できる。
【0020】
本発明において、遮熱シートの金属層の材料としては、輻射熱に対する反射率が高く、熱伝導率の高い金属が好ましく、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)等が挙げられ、コスト面も考慮すれば銅またはアルミニウムが好適である。
金属層の厚さとしては、薄膜性、高い遮熱効果、横方向への優れた熱拡散性が両立する厚さが好ましく、具体的には10〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましく、35〜50μmがさらに好ましい。
【0021】
透明樹脂層の材料としては、輻射熱の透過性が高く、さらには耐熱性が高い透明樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
透明樹脂層の厚さとしては、できるだけ薄く、かつ高い遮熱効果が得られる厚さが好ましく、具体的には1〜10μmが好ましく、2.5〜6μmがより好ましく、3.5〜4.5μmがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、遮熱シートの厚さ(総厚)としては16〜130μmが好ましく、30〜100μmがより好ましく、45〜65μmがさらに好ましい。
本発明において、遮熱シートと発熱部品との間の隙間の距離は、高い遮熱効果が得られるよう発熱部品が遮熱シートに近過ぎずかつ遠過ぎない距離が適当であり、具体的には10〜1000μmである。
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明に係る電子機器の遮熱構造の実施形態を詳説する。
【0024】
(実施形態1)
図1は本発明の電子機器の遮熱構造の実施形態1を示す断面図である。
本発明の電子機器の遮熱構造は、図1に示すように、実装された発熱部品2を有する基板1と、この基板1を収納する筐体3と、この筐体3の内面における発熱部品2と対向する遮熱シート貼付領域Aに貼り付けられた遮熱シート10とを備える。そして、この電子機器の遮熱構造において、遮熱シート10と発熱部品2との間に隙間Gが設けられている。すなわち、筐体3の遮熱シート貼付領域Aと発熱部品2との間の間隙L1は、遮熱シート10が発熱部品2に接触しないよう遮熱シート10の厚さTよりも広く設定されている。
【0025】
遮熱シート10は、遮熱シート貼付領域A上に第1接合層12を介して貼り付けられた金属層11と、金属層11上に第2接合層14を介して積層された透明樹脂層13とからなる金属樹脂積層体である。実施形態1において、遮熱シート10の厚さ(総厚)Tは42〜82μmとされている。
【0026】
金属層11の材料として、実施形態1では銅またはアルミニウムが用いられており、その厚さT1は35〜50μmとされている。
透明樹脂層13の材料として、実施形態1ではPETまたはOPPが用いられており、その厚さT3は3.5〜4.5μmとされている。
【0027】
第1および第2接合層12、14の材料として、実施形態1ではアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、シリコーン系またはゴム系の粘着剤、接着剤が用いられており、第1接合層12の厚さT2は5〜40μmとされ、第2接合層14の厚さT4は1.5〜5.5μmとされている。
【0028】
実施形態1の場合、第1接着層12は金属層11の一面に全面的に積層されているが、必要最低限の接合強度が確保されれば部分的に積層されてもよい。また、実施形態1の場合、第2接着層14は金属層11と透明樹脂層13との間に全体的に積層されているが、必要最低限の接合強度が確保されれば部分的に積層されてもよい。
【0029】
このように構成された実施形態1の遮熱構造では、遮熱シート10の厚さは42〜82μmであり、このときの筐体3の内面(遮熱シート貼付領域)と発熱部品2との間の空隙の距離L1を0.1〜1.0mmに設定し、遮熱シート10と発熱部品2との間の隙間Gの距離L2を18〜958μmに設定することができる。
【0030】
(実施形態2)
図1に示した実施形態1の遮熱シート10において、第2接合層14を省略してもよい。この場合、透明樹脂層13の一面に金属層11を蒸着させた後、金属層11の透明樹脂層13側の面とは反対面に第1接合層12を塗布することにより遮熱シート10を作製できる。
【0031】
(実施形態3)
図1では、筐体3の遮熱シート貼付領域Aを1個の発熱部品2の対向位置に設定し、この遮熱シート貼付領域Aよりも少し大きいサイズの遮熱シート10を筐体3に貼り付けた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板1上に複数個の発熱部品が実装されている場合は複数の遮熱シート貼付領域が存在するため、複数の遮熱シート貼付領域を1枚で網羅できるサイズおよび形状に遮熱シートを形成すればよい。
【実施例】
【0032】
<アクリル系粘着剤の調製>
n−ブチルアクリレート:91重量部、アクリル酸:8重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:1重量部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部、および溶剤(酢酸エチル、トルエン):150重量部を、窒素気流中、85℃で5時間反応させて樹脂分40%、粘度7000Pa・sのアクリル系粘着剤を得た。
【0033】
<遮熱シートの作製>
アクリル系粘着剤:100重量部に、イソシアネート系架橋剤(コロネート(登録商標)L-55E:日本ポリウレタン製):1重量部を添加し、撹拌後、脱泡してアクリル系粘着剤組成物を得た。
次に、アクリル系粘着剤組成物をリリースライナー上に所定の厚さで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、金属層としてのサイズ60mm×30mm、厚さ35μmの銅箔(GTS:古河電気工業(株)製)に転写し、「銅箔/アクリル系粘着剤層/剥離ライナー」を得た。この工程を繰り返し、「剥離ライナー/アクリル系粘着剤層/銅箔/アクリル系粘着剤層/剥離ライナー」を得た。
【0034】
そして、一方の剥離ライナーを剥がし、透明樹脂層としてのPETフィルム(ルミラー(登録商標):東レ(株)製)を貼り合わせて「PET/アクリル系粘着剤層(第2接合層)/銅箔/アクリル系粘着剤層(第1接合層)/剥離ライナー」を作製し、40℃で3日間養生させ、実施例2〜4と比較例3〜4の遮熱シートを得た。なお、実施例2〜4と比較例3〜4において、PETフィルムの厚さ、PETフィルムと銅箔の間のアクリル系粘着剤層の厚さ、もう一方のアクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。実施例1については後述する。
【0035】
PETフィルムの代わりにOPPフィルム(トレファン(登録商標):東レ(株)製)を用い、実施例2〜4と同様にして実施例5および比較例5の遮熱シートを得た。なお、実施例5と比較例5において、OPPフィルムの厚さ、OPPフィルムと銅箔の間のアクリル系粘着剤層の厚さ、もう一方のアクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0036】
PETフィルムと銅箔の間の第2接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにポリエステル系接着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例6および比較例6の遮熱シートを得た。なお、実施例6と比較例6において、PETフィルムの厚さ、ポリエステル系接着剤層(第2接合層)の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ポリエステル系接着剤層の材料となるポリエステル系接着剤組成物は、ポリエステル系接着剤(ディックドライLX-500:DICグラフィックス(株)製):100重量部に、硬化剤(KW-75:DICグラフィックス(株)製):50重量部、希釈溶剤として酢酸エチル200重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0037】
PETフィルムと銅箔の間の第2接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにポリエーテル系接着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例7の遮熱シートを得た。なお、実施例7において、PETフィルムの厚さ、ポリエーテル系接着剤層(第2接合層)の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ポリエーテル系接着剤層の材料となるポリエーテル系接着剤組成物は、ポリエーテル系接着剤(ディックドライLX-401A:DICグラフィックス(株)製):100重量部に、硬化剤(SP-60:DICグラフィックス(株)製):100重量部、希釈溶剤として酢酸エチル250重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0038】
第1接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにシリコーン系粘着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例8の遮熱シートを得た。このとき、実施例8において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、シリコーン系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、シリコーン系粘着剤層の材料となるシリコーン系粘着剤組成物は、シリコーン系粘着剤(TSR1512:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製):100重量部に、硬化剤(CR50:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製):1重量部を添加し、撹拌後、脱泡して得た。
【0039】
第1接合層としてのアクリル系粘着剤層の代わりにゴム系粘着剤層を用い、実施例2〜4と同様にして実施例9の遮熱シートを得た。このとき、実施例9において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、ゴム系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
なお、ゴム系粘着剤層の材料となるゴム系粘着剤組成物は、ビッグテクノス(株)製のGR-1134を用いた。
【0040】
金属層としての銅箔の代わりにアルミニウム箔(A1N30:日本製箔(株)製)を用い、実施例2〜4と同様にして実施例11および12と比較例9および10の遮熱シートを得た。このとき、実施例11、12と比較例9、10において、PETフィルムの厚さ、アクリル系粘着剤層(第2接合層)の厚さ、アルミニウム箔の厚さ、アクリル系粘着剤層(第1接合層)の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0041】
前記ポリエステル系接着剤組成物を剥離ライナーに塗布、乾燥してポリエステル系接着剤層(透明樹脂層)を形成し、その後、ポリエステル系接着剤層に銅箔(金属層)を貼り合せ、銅箔の反対面には前記と同様にアクリル系粘着剤層(第1接合層)を積層することにより、実施例1の遮熱シートを得た。このとき、実施例1において、ポリエステル系接着剤層の厚さ、銅箔の厚さ、アクリル系粘着剤層の厚さは、表1に示した厚さにそれぞれ設定した。
【0042】
<遮熱シートの評価方法>
筐体としてサイズ95mm×55mm、高さ20mm、厚さ2mmのABSケースを用い、剥離ライナーを剥がした遮熱シートをABSケースの内面に貼り付けた。この遮熱シートは前記実施例および比較例のものである。
一方、サイズ50mm×25mmのヒーター(日本ヒーター製)が接合されたガラスエポキシ基板を、ヒーターが遮熱シートと対面するように筐体内に配置した。このとき、ABSケース内面とヒーターとの間の空隙の距離L1を0.1mm、0.4mm、1.0mmに設定した(図1参照)。
【0043】
ABSケースにおける遮熱シートとは反対側の外面に熱電対を取り付けた状態でヒーターを発熱させ、ABSケース外面の温度測定を行い、ケース外面温度が安定してきた20〜40分経過時の平均温度を表2に示した。このとき、ヒーター出力を3W、1Wに設定した。
【0044】
また、表1に示すように、遮熱シートを設けない比較例1、銅箔にアクリル系粘着剤層のみを積層してなる遮熱シートを用いヒーター出力を3W、1Wに設定した比較例2、7、アルミニウム箔にアクリル系粘着剤層のみを積層してなる遮熱シートを用いヒーター出力を1Wに設定した比較例9についても温度測定を行い、その結果を表2に示した。
【0045】
また、各実施例および各比較例について、ABSケース内面とヒーターとの間の空隙の距離L1が0.1mm、0.4mm、1.0mmであるときの遮熱シートとヒーターとの間の隙間の距離L2を表3に示した(図1参照)。
【0046】
なお、表2において、「差」とは、比較例2の温度に対する実施例1〜9、比較例3〜6の温度差、比較例7の温度に対する実施例10、比較例8の温度差、比較例9の温度に対する実施例11および12、比較例10の温度差を意味し、これらの温度差がプラスの値であれば放熱性が劣るとして「評価」をIと記し、マイナスの値であれば放熱性が優れるとして「評価」をIIと記している。
【表1】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
<結果>
比較例1と2を比較すると、ABSケース内に遮熱シートを設けない比較例1の場合、筐体外面温度が80.0℃であるのに対し、総厚40μmの遮熱シート(接合層+金属層)を設けた比較例2の筐体外面温度は71.8℃であった。つまり、比較例2の遮熱シートによって筐体外面温度を8.2℃低く抑えることができ、構造が簡素な遮熱シートでも温度上昇の抑制に有効であることが確認できた。
【0049】
次に、比較例2を基準として、比較例2で使用した遮熱シートの金属層上に第2接合層を介して透明樹脂層を積層した実施例および比較例の結果について説明する。
【0050】
図2は実施例2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの温度変化を示すグラフであり、図3は実施例1、2、4および比較例2〜4の空隙1.0mmのときの表面層厚さと平均温度との関係を示すグラフである。
図2図3に示すように、銅箔上にアクリル系粘着剤層およびPETフィルムからなる表面層が積層された実施例1、2、4は、銅箔上に表面層を有さない比較例2よりも温度上昇の抑制効果に優れていた。また、銅箔上の表面層の厚みを10μmよりも厚くした比較例3および4は、表面層を有さない比較例2よりも温度上昇した。
【0051】
酸化されていない金属は熱線を高効率で反射するため、その金属表面に放射率の高い材料を積層すると、熱線を吸収しやすくなって温度上昇に寄与し、かつ表面層からの放射エネルギーも増大して温度低下に寄与する。すなわち、吸収エネルギーと放射エネルギーの大小で温度抑制効果が決まる。
【0052】
表面層の厚みが10μm以下と薄い実施例1、2、4の場合、吸収エネルギーよりも放射エネルギーの方が大きいため、表面層を有さない銅箔のみの比較例2よりも温度抑制効果が高くなったと考えられる。一方、表面層の厚みが10μm超と厚い比較例3および4の場合、放射エネルギーよりも吸収エネルギーの方が大きいために温度抑制効果が比較例2よりも低下したと考えられる。
【0053】
この傾向は実施例3の場合も同様であり、実施例1、2、4および比較例2〜4における空隙の距離L1が0.1mm、0.4mmの場合も同様であった。さらに、実施例5〜9および比較例5、6のように透明樹脂層、第2接合層または第1接合層の材料を変更しても同様であり、実施例10〜12および比較例7〜10のようにヒーター出力を低下させ、それに加えて金属層の材料を変更しても同様であった。
【0054】
図4は温度と低温やけどが起こる時間との関係を示すグラフである(佐々木健司「あなどれない低温やけど」『NHKきょうの健康』2003.1,102-106より)。
図4から、低温やけどが起こる時間は、熱源の温度が高いほど指数関数的に短くなり、熱源の温度が低いほど指数関数的に長くなることがわかる。
よって、薄い携帯型の電子機器の表面温度が僅か1℃低下するだけでも低温やけどの抑制には大きな利点となるため、本発明の電子機器の遮熱構造による遮熱効果は有効であると言える。
【0055】
なお、開示された実施形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の電子機器の遮熱構造は、例えば、スマートフォンやタブレット型携帯情報端末やノート型パソコンといった薄い携帯型の電子機器に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 発熱部品
3 筐体
10 遮熱シート
11 金属層
12 第1接合層
13 透明樹脂層
14 第2接合層
A 遮熱シート貼付領域
G 隙間
図1
図2
図3
図4