(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321981
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】地下構造物の構築方法および地下構造物
(51)【国際特許分類】
E21D 13/00 20060101AFI20180423BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20180423BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
E21D13/00
E21D9/06 301Z
E21D9/06 311Z
E21D11/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-20889(P2014-20889)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-148078(P2015-148078A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−256538(JP,A)
【文献】
特開2007−191979(JP,A)
【文献】
特開平08−004492(JP,A)
【文献】
米国特許第04091630(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 13/00
E21D 9/06
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の先行函体を連続して地中に配置することで先行トンネルを構築する、先行トンネル構築工程と、
前記先行トンネルに隣接して複数の後行函体を連続して地中に配置することで後行トンネルを構築する、後行トンネル構築工程と、を含む地下構造物の構築方法であって、
前記先行函体は、トンネル軸方向に沿って形成されて前記後行トンネル側に開口するガイド溝と、前記ガイド溝の内部に充填された弾性体と、を有し、
前記後行函体は、トンネル軸方向に沿って形成された突条を有しており、
前記ガイド溝は幅狭部と幅広部とを備える断面T字形状の溝に形成され、
前記弾性体は少なくとも前記幅広部に隙間なく充填されており、
前記ガイド溝と前記突条は遊嵌状態で結合され、
前記突条の先端部が、先端に向かうに従って、高さが小さくなるように傾斜しており、
前記後行トンネル構築工程では、前記弾性体を圧縮させながら前記突条を前記ガイド溝に挿入することを特徴とする、地下構造物の構築方法。
【請求項2】
複数の先行函体を連続して地中に配置することで先行トンネルを構築する、先行トンネル構築工程と、
前記先行トンネルに隣接して複数の後行函体を連続して地中に配置することで後行トンネルを構築する、後行トンネル構築工程と、を含む地下構造物の構築方法であって、
前記先行函体は、トンネル軸方向に沿って形成されて前記後行トンネル側に開口するガイド溝と、前記ガイド溝の内部に充填された弾性体と、を有し、
前記後行函体は、トンネル軸方向に沿って形成された突条を有しており、
前記突条の先端部が、曲面形状であり、
前記後行トンネル構築工程では、前記弾性体を圧縮させながら前記突条を前記ガイド溝に挿入することを特徴とする、地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記後行トンネル構築工程において、前記突条と前記弾性体との当接面に給脂することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
並設された複数の構造体を利用して築造された地下構造物であって、
隣り合う二つの前記構造体は継手構造を介して連結されており、
前記継手構造は、
一方の構造体の側面に形成されて他方の構造体側に開口するガイド溝と、
前記他方の構造体の側面に形成されて前記ガイド溝の空間内に挿入された突条と、
前記ガイド溝と前記突条との間に介在する弾性体と、を有し、
前記ガイド溝は幅狭部と幅広部とを備える断面T字形状の溝に形成されており、
前記突条はウェブと該ウェブの突端部分に頭部が形成されており、
前記ガイド溝と前記突条との間の隙間が前記弾性体により遮蔽されていることを特徴とする、地下構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の構築方法および地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
並設された複数本のトンネルを利用して築造した地下構造物が特許文献1に記載されている。この地下構造物は、複数本のトンネルを構築した後に、各トンネルの不要な覆工を撤去して大きな空間を形成しつつ、各トンネルの残置された覆工を利用して本設の頂底版や側壁等を形成することにより築造される。なお、複数のトンネルは、時間差をもって順次に構築され、しかも、後行のトンネルTは、先行のトンネルの隣に構築される。また、各トンネルは、推進工法またはシールド工法により構築される。
【0003】
ここで、推進工法とは、トンネルの覆工となる筒状の推進函体を坑口から順次地中に圧入してトンネルを構築する工法である。なお、推進函体の先端には、刃口や掘進機などが取り付けられている。推進工法の掘進機は、推進函体に反力をとって自ら推進するもの(つまり、推進ジャッキを装備しているもの)でもよいし、推進函体を介して伝達された元押しジャッキの推力により掘進するものであってもよい。一方、シールド工法とは、トンネル切羽に設置された掘削機で地山を掘削するとともに、掘進機の内部でトンネル覆工となるセグメントを組み立ててトンネルを構築する工法である。なお、シールド掘進機は、その内部で組み立てられたセグメントに反力を取って自ら掘進する。
【0004】
ところで、特許文献1の地下構造物においては、隣り合う二つのトンネルのうち、一方のトンネルの覆工(すなわち、セグメントや推進函体)には、トンネル軸方向に沿ってガイド溝が形成されており、他方のトンネルの覆工には、一方の覆工のガイド溝に係合する突条が形成されている。このようにすると、先行して構築されたトンネルの覆工をガイドして後行のトンネルの覆工を構築することが可能となるので、隣接するトンネル同士にずれが生じ難くなり、ひいては、効率良く施工することが可能となる。
【0005】
複数本のトンネルを連結して築造される地下構造物では、トンネル同士の目地部からの漏水を防止する必要がある。
特許文献1には、目地部の止水性を確保するために、突条の先端に凹部を形成しておき、トンネル掘進後にこの凹部に注入管を挿入して、この注入管を介して突条の周囲に止水材を注入する止水方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、突条の先端に発砲ポリスチレンを帯状に配置しておき、トンネル掘進後に、発砲ポリスチレンを溶解させて帯状の空洞を形成し、この空洞に止水材を充填する止水方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−090099号公報
【特許文献2】特開2011−117239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の止水方法は、継手部に裏込め材や掘削土砂が入り込んで固化してしまった場合には、突条の先端の凹部への注入管の挿入および止水材の注入に手間がかかる。
また、特許文献2の止水方法は、突条の先端部に配置された発泡ポリスチレンを、トンネル全延長にわたって完全に溶解させるのに手間がかかる。
【0009】
このような観点から、本発明は、高品質な地下構造物を簡易に構築することを可能とした地下構造物の構築方法および継手構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の地下構造物の構築方法は、複数の先行函体を連続して地中に配置することで先行トンネルを構築する、先行トンネル構築工程と、前記先行トンネルに隣接して複数の後行函体を連続して地中に配置することで後行トンネルを構築する、後行トンネル構築工程と、を含む地下構造物の構築方法であって、前記先行函体は、トンネル軸方向に沿って形成されて前記後行トンネル側に開口するガイド溝と、前記ガイド溝の内部に充填された弾性体と、を有し、前記後行函体は、トンネル軸方向に沿って形成された突条を有しており、
前記ガイド溝は幅狭部と幅広部とを備える断面T字形状の溝に形成され、前記弾性体は少なくとも前記幅広部に隙間なく充填されており、前記ガイド溝と前記突条は遊嵌状態で結合され、前記突条の先端部が、先端に向かうに従って、高さが小さくなるように傾斜しており、前記後行トンネル構築工程では、前記弾性体を圧縮させながら前記突条を前記ガイド溝に挿入することを特徴としている。
【0011】
かかる地下構造物の構築方法によれば、突条が弾性体を圧縮させながらガイド溝に挿入されるため、突条とガイド溝との間に隙間が形成されることがない。そのため、後行トンネルの構築と同時に、止水性に優れた継手構造を構築することができ、施工性に優れている。
【0012】
また、ガイド溝には、予め弾性体が充填されているため、先行トンネルの構築時にガイド溝内に入り込む土砂や裏込め材等の量を低減することができる。そのため、ガイド溝への突条の挿入が、土砂や裏込め材により妨げられることもない。
【0013】
なお、前記突条の先端部が
、曲面形状に形成されていれば、
さらに弾性体を圧縮しやすくなる。
【0014】
また、前記後行トンネル構築工程において、ガイド溝に挿入した突条を進行させる際に、前記突条と前記弾性体との当接面に給脂してもよい。このようにすると、突条と弾性体との摩擦が低減するので、弾性体の損傷を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の地下構造物は、並設された複数の構造体を利用して築造された地下構造物であって、隣り合う二つの前記構造体は継手構造を介して連結されており、
前記継手構造は、一方の構造体の側面に形成されて他方の構造体側に開口するガイド溝と、前記他方の構造体の側面に形成されて前記ガイド溝の空間内に挿入された突条と、前記ガイド溝と前記突条との間に介在する弾性体と、を有
し、前記ガイド溝は幅狭部と幅広部とを備える断面T字形状の溝に形成されており、前記突条はウェブと該ウェブの突端部分に頭部が形成されており、前記ガイド溝と前記突条との間の隙間が前記弾性体により遮蔽されていることを特徴としている。
【0016】
かかる地下構造物によれば、構造体同士の目地部における止水性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地下構造物の構築方法および継手構造によれば、高品質な地下構造物を簡易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の地下構造物を示す断面図である。
【
図4】(a)〜(c)本実施形態の地下構造物の構築方法の施工状況を示す部分断面図である。
【
図5】(a)は継手構造の施工状況を示す断面図、(b)および(c)は(a)の他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の地下構造物1は、
図1に示すように、その断面内において並設された複数本(本実施形態では6本)のトンネル(構造体)2,2,…を利用して築造したものであり、頂版1A、底版1B及び側壁1C,1Cを備えている。
並設されたトンネル2同士は、継手構造3を介して連結されている。
【0020】
継手構造3は、
図2に示すように、一方のトンネル2の覆工4に、他方のトンネル2側に開口するように、トンネル軸方向(
図2において紙面垂直方向)に沿って形成されたガイド溝10と、他方のトンネル2の覆工4に、一方のトンネル2のガイド溝10に挿入されるように形成された突条20と、ガイド溝10内において、ガイド溝10と突条20との間に介在する弾性体30とにより構成されている。
【0021】
トンネル2は、推進工法またはシールド工法により構築することができるが、本実施形態では、推進工法により構築するものとする。つまり、本実施形態においては、各トンネル2の覆工4は、トンネル軸方向に連設された複数の函体5,5,…(
図3参照)からなる。
【0022】
図3に示すように、函体5は、角筒状に形成された外殻5aと、トンネル軸方向に所定の間隔をあけて並設された複数の主桁5b,5b,…と、隣り合う主桁5b,5b間においてトンネル軸方向に沿って配置された複数の縦リブ5c,5c,…とを備えて構成されている。
なお、函体5の構成は限定されない。
【0023】
外殻5aは、溶接により接合された複数枚の鋼製のスキンプレートからなり、全体として断面矩形を呈している。
なお、
図3の右側に示す函体5の外殻5aの上面および左側面は、大小3枚のスキンプレートにより形成されており、かつ、隣り合うスキンプレート間には隙間5dが形成されている。この隙間5dは、トンネル軸方向に延在しており、ガイド溝10の開口部となっている。
【0024】
主桁5bは、外殻5aの内面に沿って枠状に配置された四枚の鋼製の板材からなり、各板材は、溶接により外殻5aの内周面に接合されている。また、
図3の右側に示す函体5の主桁5bには、ガイド溝10の断面形状に合せてT字形状の切欠きが形成されている。
【0025】
縦リブ5cは、外殻5aの内周面に溶接により接合された鋼製の板材からなる。なお、縦リブ5cの長手方向の端部は、主桁5bの側面に溶接により接合されている。
【0026】
また、函体5には、ガイド溝10および突条20の両方または一方が外殻5aの隅角部の近傍に取り付けられている。なお、ガイド溝10および突条20の位置および個数は、トンネル2の位置に応じて適宜設定する。
【0027】
ガイド溝10は、外殻5aの内周面において隙間5dに沿って配置されている。
ガイド溝10は、
図2に示すように、外殻5aの隙間5dを挟んで対向する一対の対向片11,11と、この一対の対向片11,11のそれぞれの先端部から側方に張り出す張出片12,12と、この張出片12,12に設けられた断面コ字形状(溝形)の形材13とを備えて構成されている。
【0028】
ガイド溝10は、対向片11,11と張出片12,12と形材13とを組み合わせることにより、幅狭部14と幅広部15とを備える断面T字形状の溝(いわゆるT溝)に形成されている。なお、対向片11、張出片12および形材13は鋼製の部材からなり、溶接により互いに接合されている。
なお、ガイド溝10の構成は限定されるものではない。
【0029】
突条20は、
図3に示すように、外殻5aの外周面においてトンネル軸方向に沿って配置されており、その突端部分が外殻5aの外側に突出している。また、
図2に示すように、突条20は、外殻5aの外周面に配置されたレール21と、外殻5aの内周面に配置された押えプレート22と、レール21のフランジと押えプレート22とを貫通するボルト23,23,…と、各ボルト23を締結するナット24,24,…とを備えて構成されている。
【0030】
レール21は、熱押形鋼からなり、外殻5aの外周面に固定されるフランジと、このフランジから立ち上がるウェブと、このウェブの突端部分に形成された頭部とを備えている。
【0031】
また、レール21のウェブの幅(厚さ)は、ガイド溝10の幅狭部14の幅(すなわち、ガイド溝10の開口幅)よりも小さくなっており、かつ、レール21の頭部の断面積がガイド溝10の幅広部15の断面積よりも小さくなっている。そのため、レール21とガイド溝10との間には、上下左右にクリアランスを有している。つまり、突条20は、ガイド溝10と遊嵌状態で結合することになる。また、レール21の頭部は、幅狭部14の幅(すなわち、ガイド溝10の開口幅)よりも大きい幅寸法に成形されている。このようにすると、レール21のガイド溝20からの抜け出しが阻止されることから、隣り合う函体5,5が必要以上に離間することを防ぐことができる。
【0032】
弾性体30は、ガイド溝10の幅広部15内において、ガイド溝10と突条20との間に介在している。
弾性体30は、遊嵌状態で結合されるガイド溝10と突条20との隙間の変形に追従し、ガイド溝10と突条20とに密着することで、止水性を確保する。
【0033】
なお、弾性体13を構成する材料は限定されないが、合成ゴム発砲体、ウレタン系ゴム、ポリエチレン系ゴム等により構成されている。
【0034】
次に、本実施形態の地下構造物の構築方法について説明する。
地下構造物1を築造するには、まず、その断面内の下部中央に函体5,5,…を連続して地中に配置することにより、一本目のトンネル2Aを構築する。次に、この一本目のトンネル2Aの横隣りに隣接して、複数の函体5,5,…を連続して地中に配置することにより、二本目のトンネル2Bおよび三本目のトンネル2Cを構築する(
図1参照)。
【0035】
先行するトンネル2(2A)の函体(先行函体)5には、後行のトンネル2(2B,2C等)側に開口するガイド溝10がトンネル軸方向に沿って形成されている。このガイド溝10には、
図4の(a)に示すように、弾性体30が充填されている。
【0036】
後行のトンネル2(2B,2C等)は、先行のトンネル2(2A)の隣において、複数の函体5,5,…を図示せぬ坑口から先行トンネル2に沿って順次押し出すことにより構築する。なお、トンネル2の施工中は、函体5の周囲に滑材を注入・充填しておき、トンネル2の構築が完了した後に、硬化性の裏込材に置き換える。また、図示は省略するが、各トンネル2において、トンネル軸方向に隣り合う函体5,5は、ボルト・ナット等を用いて連結される。
【0037】
後行のトンネル2(2B,2C等)を構築する際には、
図5の(a)に示すように、函体5の突条20を、ガイド溝10に挿入し、弾性体30を圧縮する(
図5の(a)参照)。
隣り合うトンネル2,2同士は、
図4の(b)に示すように、継手構造2を介して連結される。
【0038】
このとき、突条20と弾性体30との当接面に給脂してもよい。このようにすると、ガイド溝10に挿入した突条20を進行させる際に、突条20と弾性体30との摩擦が低減されるため、弾性体30の損傷を抑制することができる。
【0039】
また、
図5の(b)に示すように、突条20の先端部が先端に向かうに従って高さが小さくなるように傾斜しているか、あるいは、
図5の(c)に示すように、突条20の先端部が曲面形状に形成されていれば、弾性体を圧縮しやすくなる。
【0040】
同様に、一本目のトンネル2Aの縦(上)隣に四本目のトンネル2Dを構築し、さらに、トンネル2BおよびトンネルT2Dに隣接する位置に五本目のトンネル2Eを構築し、トンネル2Cおよびトンネル2Dに隣接する位置に六本目のトンネル2Fを構築する。なお、トンネル2A〜2Fの構築順序は、前記のものに限らず、適宜変更しても差し支えない。
【0041】
トンネル2A〜2Fの構築が完了したら、地下構造物1の断面形状に合せて、トンネル2A〜2Fの不要な覆工を撤去して大きな空間を形成する(
図1参照)。
【0042】
そして、
図1および
図4の(c)に示すように、地山との境界(すなわち、地下構造物1の外縁)に沿って残置されたトンネル2A〜2Fの覆工を利用して本設の頂版1A、底版1Bおよび側壁1C,1Cを形成すると、地下構造物1となる。なお、不要な覆工を全部撤去した後に頂版1A、底版1Bおよび側壁1C,1Cを形成してもよいし、トンネル2A〜2Fの不要な覆工の一部を撤去しつつ、地下構造物1の頂版1A、底版1Bおよび側壁1C,1Cを構築してもよい。
【0043】
本実施形態の地下構造物の構築方法および継手構造によれば、ガイド溝10内に弾性体30を充填した状態でトンネルを構築するため、先行トンネル構築時にガイド溝30内に入り込む土砂や裏込め材等を大幅に削減することができる。そのため、ガイド溝30内への突条20の挿入が、土砂や裏込め材等により妨げることがなく、施工性に優れている。
【0044】
また、弾性体30が充填されていることによりガイド溝10内へ土砂等が入り込むことが抑制されているため、ガイド溝10内の洗浄に要する手間を省略することができる。また、ガイド溝10内の洗浄時の洗浄水により周囲の地山が緩むことも防止できる。
【0045】
また、突条20は、弾性体30を圧縮させた状態でガイド溝10内に挿入されるため、ガイド溝10と突条20との間の隙間が、弾性体30により遮蔽される。つまり、継手構造3は、ガイド溝10と突条20とを係合させるのみで、止水性を確保するため、簡易に止水性に優れた地下構造物1を構築することができる。
【0046】
弾性体30は、突条20のガイド溝10内での向きや位置に応じて変形するため、函体の蛇行、ローリングまたはピッチング等が生じた場合であっても、ガイド溝10と突条20との間に空隙が形成されることがない。
また、トンネル2の施工後に函体が施工時荷重等により微動した場合であっても、弾性体30が微動に追従するため、止水性能が低下することがない。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0048】
前記実施形態では、本発明の継手構造をトンネル同士の連結に使用する場合について説明したが、継手構造が適用可能な構造物はこれに限定されるものではなく、例えば、鋼管矢板やパイプルーフ等の継手に使用してもよい。
【0049】
弾性体には、弾性体中の気泡の分布形態、発砲率に応じて、適正な止水性および圧縮性を備えた材料を使用すればよい。
また、異なる種類の材料を組み合わせて弾性体を形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 地下構造物
2 トンネル(構造体)
3 継手構造
4 覆工
5 函体
10 ガイド溝
20 突条
30 弾性体