(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記緩衝層形成用組成物が、前記エネルギー線重合性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)、及び官能基を有する重合性化合物(a3)を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の記載において、「エネルギー線」とは、例えば、紫外線、電子線等を意味し、紫外線又は電子線が好ましい。
また、本明細書の記載において、「質量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
加えて、本明細書の記載において、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の双方を意味する語であり、他の類似用語も同様である。
【0012】
[粘着シートの構成]
本発明の粘着シートは、剛性基材と、当該剛性基材の一方の面側に設けられた緩衝層と、当該剛性基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有するものであれば、特に制限されない。
図1は、本発明の粘着シートの構成の一例を示す粘着シートの断面図である。
本発明の粘着シートの構成の一例として、
図1(a)に示すように、剛性基材11の一方の面側に緩衝層12を、剛性基材11の他方の面側に粘着剤層13を有する粘着シート1aが挙げられる。
【0013】
また、本発明の粘着シートは、
図1(a)に示す粘着シート1aにおいて、緩衝層12及び粘着剤層13の少なくとも一方に、さらに剥離シートを有する粘着シートとしてもよい。
図1(b)に示す粘着シート1bは、緩衝層12及び粘着剤層13の双方の面上に、剥離シート14a、14bをそれぞれ設けた構成を有しているが、本発明の粘着シートは、緩衝層12及び粘着剤層13の一方のみに剥離シートを設けた構成であってもよい。
【0014】
また、本発明の粘着シートは、
図1(a)及び(b)に示す粘着シート1a、1bにおいて、剛性基材11と緩衝層12との間、及び剛性基材11と粘着剤層13との間の少なくとも一方に、易接着層を有する粘着シートとしてもよい。
図1(c)及び(d)に示す粘着シート1c、1dは、上記粘着シート1a、1bの構成に対して、さらに剛性基材11と緩衝層12との間、並びに剛性基材11と粘着剤層13との間に、それぞれ易接着層15a、15bを設けた構成を有している。なお、本発明の粘着シートは、易接着層15a、15bの一方のみを設けた構成であってもよい。
なお、
図1(d)に示す粘着シート1dは、緩衝層12及び粘着剤層13の双方の面上に、剥離シート14a、14bをそれぞれ設けた構成を有しているが、本発明の粘着シートは、緩衝層12及び粘着剤層13の一方のみに剥離シートを設けた構成であってもよい。
以下、本発明の粘着シートを構成する各層に関して詳述する。
【0015】
<剛性基材>
本発明の粘着シートが有する剛性基材は、ヤング率が1000MPa以上の剛性基材である。ヤング率が1000MPa未満の基材を用いた場合、得られる粘着シートを半導体ウエハに貼付した際に、当該基材の伸びが大きいため、応力が発生し易く、当該粘着シートを貼付後の半導体ウエハの反りが生じやすいため好ましくない。
そこで、本発明の粘着シートでは、ヤング率が1000MPa以上の剛性基材を用いることで、半導体ウエハに貼付した場合においても、基材の伸びが小さいため、反りの発生を抑制することができる。これは、例えば、半導体ウエハの表面に有機膜が設けられたような反りが生じやすい構成においても、粘着シート全体が剛性を有するために、半導体ウエハの反りを抑え込むことが可能となる。
【0016】
本発明で用いる剛性基材のヤング率としては、得られる粘着シートを半導体ウエハに貼付した際に、当該半導体ウエハの反りを抑制する観点、並びに、当該粘着シートを半導体ウエハに貼付する際の作業性(機械適性)を良好とする観点から、好ましくは1000〜30000MPa、より好ましくは1300〜20000MPa、更に好ましくは1600〜15000MPa、より更に好ましくは1800〜10000MPaである。
なお、本発明の剛性基材のヤング率は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0017】
剛性基材の厚さは、剛性基材のヤング率が上記範囲であれば特に制限はされないが、本発明の粘着シートを半導体ウエハに貼付する際の作業性(機械適性)を良好とする観点、並びに、粘着シートを半導体ウエハ(チップ)から剥離する際の応力を少なくする観点から、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜400μm、更に好ましくは25〜150μm、より更に好ましくは30〜120μmである。
【0018】
本発明で用いる剛性基材としては、ヤング率が上記範囲であれば特に制限はされないが、耐水性及び耐熱性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
これらの樹脂の中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、二軸延伸ポリプロピレンから選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステルがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが更に好ましい。
なお、本発明で用いる剛性基材は、上記の樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂からなる樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムを2種以上積層した積層フィルムであってもよい。
【0019】
また、本発明で用いる剛性基材には、本発明の効果を損なわない範囲において、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等を含有させてもよい。
また、基材は、透明なものであっても、不透明なものであってもよく、所望により着色又は蒸着されていてもよい。
なお、本発明で用いる剛性基材の少なくとも一方の表面には、緩衝層及び/又は粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理等の接着処理を施してもよく、後述の易接着層を設けてもよい。
【0020】
<緩衝層>
本発明の粘着シートが有する緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成されてなる層であり、先端曲率半径100nm及び稜間角115°の三角錘形状圧子の先端を10μm/分の速度で、当該緩衝層に押し込んだ際の圧縮荷重が2mNに到達するのに必要な押し込み深さ(X)(以下、単に「押し込み深さ(X)」ともいう)が2.5μm以上となるように調整された層である。
緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成されてなる層であるため、緩衝層形成用組成物の組成の選択によって粘弾性を調整することが比較的容易である。そのため、例えば、粘着シートをBGシートとして用いた場合に、半導体ウエハの研削による振動が緩和されずに、半導体ウエハに割れや欠けが生じたり、粘着シート背面が真空テーブルから浮いてしまったりする等の問題の発生を抑制することができる。
また、本発明者らは、粘着シートの構成において、上記の押し込み深さ(X)を2.5μm以上となるように調整された緩衝層を設けることで、異物吸収性を向上させ、例えば、本発明の粘着シートを半導体ウエハの研削加工のBGシートとして用いた際に、半導体ウエハの割れを効果的に防止し得ることを見出した。
一方、当該押し込み深さ(X)が2.5μm未満である緩衝層を有する粘着シートの場合、異物吸収性が十分に向上せず、当該粘着シートを半導体ウエハの研削加工のBGシートとして用いた際に、半導体ウエハの割れが生じやすくなる傾向にある。
【0021】
上記の押し込み深さ(X)は、得られる粘着シートの異物吸収性を向上させる観点から、好ましくは2.5〜20.0μm、より好ましくは2.8〜15.0μm、更に好ましくは3.0〜10.0μm、より更に好ましくは3.2〜7.0μmである。
なお、本発明において、当該押し込み深さ(X)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
また、当該押し込み深さ(X)は、緩衝層を形成する緩衝層形成用組成物中に含まれる成分の種類や含有量、緩衝層の硬化の程度等を適宜変えることで、上記範囲に属するように調整することが可能である。
【0022】
緩衝層の−5〜120℃における動的粘弾性のtanδの最大値(以下、単に「tanδの最大値」ともいう)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.2以上である。
緩衝層のtanδの最大値が0.5以上であれば、先ダイシング法において、得られる粘着シートをチップ群に貼付し、当該チップ群の裏面の研削加工する際に、砥石の振動や衝撃を緩衝層が吸収する効果がより高いため、チップ群を100μm以下になるまで研削しても、角が欠けたり、研削面が変色したりすることを抑制することができる。
なお、tanδは損失正接と呼ばれ、「損失弾性率/貯蔵弾性率」で定義され、動的粘弾性測定装置により対象物に与えた引張り応力やねじり応力等の応力に対する応答によって測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
また、この緩衝層のtanδの最大値は、上述の押し込み深さ(X)とは依存しない。
【0023】
本発明の粘着シートが有する緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成されてなる層である。
当該緩衝層形成用組成物中に含まれるエネルギー線重合性化合物としては、押し込み深さ(X)を上述の範囲となる緩衝層を形成できる化合物であれば特に制限はなく、例えば、光硬化性樹脂又はモノマー等を用いることができる。
ただし、押し込み深さ(X)を上述の範囲となるように調整する観点から、エネルギー線重合性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)、及び官能基を有する重合性化合物(a3)を含む緩衝層形成用組成物が好ましい。
また、緩衝層形成用組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤や樹脂成分を含有してもよい。
以下、緩衝層形成用組成物中に含まれる各成分について説明する。
【0024】
(ウレタン(メタ)アクリレート(a1))
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(a1)としては、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、オリゴマー、高分子量体、又はこれらの混合物のいずれであってもよいが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0025】
成分(a1)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜60,000、更に好ましくは3,000〜20,000である。
また、成分(a1)中の(メタ)アクリロイル基数(以下、「官能基数」ともいう)としては、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、単官能又は2官能であることが好ましい。
【0026】
成分(a1)は、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。
なお、成分(a1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
成分(a1)の原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。
具体的なポリオール化合物としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールがより好ましい。
【0028】
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0029】
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(a1)を得ることができる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0030】
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0031】
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60〜100℃で、1〜4時間反応させる条件が好ましい。
【0032】
緩衝層形成用組成物中の成分(a1)の含有量は、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成する観点から、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜55質量%、より更に好ましくは30〜50質量%である。
【0033】
(環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2))
本発明で用いる成分(a2)は、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物であり、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。この成分(a2)を用いることで、得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させることができる。
【0034】
成分(a2)が有する脂環基又は複素環基の環形成原子数は、好ましくは6〜20であるが、より好ましくは6〜18、更に好ましくは6〜16、より更に好ましくは7〜12である。
当該複素環基の環構造を形成する原子としては、例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
なお、本発明において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子の数を表し、環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子に結合した水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。
【0035】
具体的な成分(a2)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等の脂環基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等の複素環基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
なお、成分(a2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、脂環基含有(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0036】
緩衝層形成用組成物中の成分(a2)の含有量は、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成する観点、及び得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させる観点から、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜55質量%、より更に好ましくは30〜50質量%である。
【0037】
(官能基を有する重合性化合物(a3))
本発明で用いる成分(a3)は、水酸基、エポキシ基、アミド機、アミノ基等の官能基を含有する重合性化合物であり、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
成分(a3)は、成分(a1)との相溶性が良好であり、緩衝層形成用組成物の粘度を適度は範囲に調整し、当該組成物から形成される緩衝層の弾性率も適度な範囲とすることができる。そのため、この成分(a3)を用いることで、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成することができる。
成分(a3)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、アミド基含有化合物、アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
アミド基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、成分(a3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの中でも、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成する観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する水酸基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0040】
緩衝層形成用組成物中の成分(a3)の含有量は、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成する観点、及び得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させる観点から、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、より更に好ましくは13〜25質量%である。
【0041】
また、緩衝層形成用組成物中の成分(a2)と成分(a3)との含有量比〔(a2)/(a3)〕は、好ましくは0.5〜3.0、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.3〜3.0、より更に好ましくは1.5〜2.8である。
当該含有量比が0.5以上であれば、得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を良好とすることができる。一方、当該含有量比が3.0以下であれば、押し込み深さ(X)が上述の範囲となる緩衝層を形成することができる。
【0042】
(成分(a1)〜(a3)以外の重合性化合物)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(a1)〜(a3)以外のその他の重合性化合物を含有してもよい。
その他の重合性化合物としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル化合物:等が挙げられる。
なお、これらのその他の重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
緩衝層形成用組成物中のその他の重合性化合物の含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0044】
(光重合開始剤)
緩衝層形成用組成物には、緩衝層を形成する際、光照射による重合時間の短縮及び光照射量の低減の観点から、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
緩衝層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0046】
(その他の添加剤)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの添加剤を配合する場合、緩衝層形成用組成物中の各添加剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0047】
(樹脂成分)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂成分を含有してもよい。
樹脂成分としては、例えば、ポリエン・チオール系樹脂や、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、及びスチレン系共重合体等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
緩衝層形成用組成物中のこれらの樹脂成分の含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0048】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層を形成する粘着剤としては、半導体ウエハ等の被着体に対して、適度な再剥離性がある粘着剤であれば、その粘着剤の種類は限定されない。
このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エネルギー線硬化型粘着剤、加熱発泡型粘着剤、水膨潤型粘着剤等が挙げられる。
これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
なお、エネルギー線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報、特開昭60−223139号公報等に記載されている粘着剤が挙げられ、紫外線硬化型粘着剤が好ましい。
これらの粘着剤に含まれる樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは2万〜150万、より好ましくは5万〜120万、更に好ましくは10万〜100万である。
また、これらの粘着剤には、必要に応じて、エネルギー線硬化型樹脂、硬化剤、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等を含有してもよい。
【0050】
粘着剤層の厚さは、被着体となる半導体ウエハのバンプの形状、表面状態及び研磨方法等の条件により適宜設定されるが、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜300μm、更に好ましくは15〜100μmである。
【0051】
<易接着層>
本発明の粘着シートは、剛性基材と緩衝層及び/又は粘着剤層との密着性を向上させる観点から、剛性基材と緩衝層との間、及び剛性基材と粘着剤層との間の少なくとも一方に、易接着層を設けてもよい。
易接着層を形成する易接着層形成用組成物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物が挙げられる。
なお、当該易接着層形成用組成物には、必要に応じて、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等を含有してもよい。
易接着層の厚さとしては、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.03〜5μmである。
なお、易接着層の厚さは、剛性基材の厚さに対して小さく、材質も柔らかいため、易接着層が設けられた剛性基材のヤング率と、易接着剤層が設けられていない当該剛性基材のみのヤング率との差は、極めて小さい。
そのため、本発明においては、「易接着層が設けられた剛性基材のヤング率」=「剛性基材のヤング率」であるとみなす。
【0052】
<剥離シート>
本発明で用いる剥離シートとしては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離シート用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離シート用基材としては、樹脂フィルムが好ましく、当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜150μmである。
【0053】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、剛性基材の表面上に、剥離シート上に設けた緩衝層と、剥離シート上に設けた粘着剤層とを張り合わせれば、
図1(b)に示す粘着シート1bを製造することができる。
また、
図1(b)に示す粘着シート1bから、2枚の剥離シートを除去すれば、
図1(a)に示す粘着シート1aとすることができる。
さらに、用いる剛性基材の表面に、予め易接着層を形成した後に、剥離シート上に設けた緩衝層と、剥離シート上に設けた粘着剤層とを貼り合わせれば、
図1(a)に示す粘着シート1cを製造することができる。
【0054】
剥離シート上に緩衝層又は粘着剤層を形成する方法としては、剥離シート上に緩衝層形成用組成物又は粘着剤を、公知の塗布方法にて、直接塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥及び/又はエネルギー線を照射することで、緩衝層又は粘着剤層を形成することができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0055】
また、塗布性を向上させるために、緩衝層形成用組成物や粘着剤に対して有機溶媒を配合し、溶液の形態として、剥離シート上に塗布してもよい。
用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、組成物中に含まれる各成分の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、それ以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0056】
塗布膜を形成する緩衝層形成用組成物はエネルギー線重合性化合物を含むため、当該塗布膜に対して、エネルギー線を照射することで硬化させ、緩衝層を形成することができる。
硬化処理は、一度に完全に硬化させてもよいし、複数回に分けて硬化させてもよい。つまり、剥離シート上の塗布膜を完全に硬化させて緩衝層を形成した後に剛性基材に貼り合わせてもよく、当該塗布膜を完全に硬化させずに半硬化の状態の緩衝層形成膜を形成し、当該緩衝層形成膜を剛性基材に貼り合わせた後、再度エネルギー線を照射して完全に硬化させて緩衝層を形成してもよい。
【0057】
当該硬化処理で照射するエネルギー線としては、紫外線が好ましい。
エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって適宜変更される。例えば、紫外線を用いる場合、照射する紫外線の照度は、好ましくは50〜500mW/cm
2、より好ましくは100〜340mW/cm
2であり、紫外線の照射量は、好ましくは80〜2500mJ/cm
2、より好ましくは100〜2000mJ/cm
2である。
【0058】
本発明の粘着シートは、研削済みウエハの製造に際に、ウエハの表面側を保護するBGシートとして好適である。
本発明の粘着シートを用いた研削済みウエハの製造方法としては、例えば、下記の工程(1A)〜(3A)を有する研削済みウエハの製造方法が好ましい。
工程(1A):ウエハの表面側に、本発明の粘着シートの粘着剤層を貼付し、緩衝層付きウエハを得る工程
工程(2A):研削機のチャックテーブル上に、工程(1A)で得た緩衝層付きウエハの緩衝層を載置する工程
工程(3A):緩衝層付きウエハの緩衝層が設けられていないウエハの裏側を研削し、研削済みウエハを得る工程
本発明の粘着シートは、異物吸収性に優れている。そのため、上記研削済みウエハの製造方法の工程(2A)にて、チャックテーブル上に異物が付着していたとしても、当該緩衝層が当該異物の厚みを吸収し、当該異物の存在が原因となるウエハ裏面の盛り上がりを抑え得る。
その結果、上記製造方法によれば、当該異物の存在が原因で生じる、切削加工によるウエハの割れを防止し得、歩留まりよく、薄膜の研削済みウエハを製造することができる。
【0059】
また、本発明の粘着シートは、先ダイシング法による半導体チップの製造方法に用いられる、BGシートとしても好適である。
本発明の粘着シートを用いた半導体チップの製造方法としては、例えば、下記の工程(1B)〜(3B)を有する半導体チップの製造方法が好ましい。
工程(1B):表面に、所定の深さの溝を所定の配置で設けられたウエハの当該表面側に、本発明の粘着シートの粘着剤層を貼付し、緩衝層付きウエハを得る工程
工程(2B):研削機のチャックテーブル上に、工程(1B)で得た緩衝層付きウエハの緩衝層を載置する工程
工程(3B):緩衝層付きウエハの緩衝層が設けられていないウエハの裏側を所定の厚さになるまで研削し、個々のチップに分割する工程
上記のとおり、本発明の粘着シートが有する緩衝層は異物吸収性に優れているため、チャックテーブル上に付着していた異物が原因となる、切削加工によるウエハの割れを防止することができる。その結果、上記製造方法によれば、歩留まりよく、薄膜の半導体チップを製造することができる。
【実施例】
【0060】
以下の実施例及び比較例で用いた、各成分の質量平均分子量(Mw)、及び剛性基材のヤング率は、以下に記載の方法により測定した値を用いた。
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0061】
<剛性基材のヤング率>
剛性基材のヤング率は、引張試験機を用いて引張試験を行い、得られた引張強度と伸びのチャートから算出した。具体的には、製造例4で作製した両面易接着層付PETフィルムを幅15mm×長さ150mmの大きさに切断し、延伸可能部が100mmとなるように引張・圧縮試験機(エー・アンド・デイ社製、製品名「テンシロン」)に設置した。そして、試験スピード200mm/分で測定を行ない、得られたチャートの原点における傾きからヤング率を算出した。
【0062】
製造例1
(ウレタンアクリレート系オリゴマー(UA−1)の合成)
ポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートを反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5000の2官能のウレタンアクリレート系オリゴマー(UA−1)を得た。
【0063】
製造例2
(粘着剤層付き剥離シートの作製)
n−ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)由来の構成単位を有するアクリル系共重合体(BA/MMA/2HEA=52/20/28(質量%)、Mw=50万)を100質量部、多官能ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を6質量部、ジイソシアネート系硬化剤を1質量部、及び光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドを1質量部配合して、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度32質量%の粘着剤の溶液を調製した。
そして、剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET381031」、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:38μm)の剥離処理がされた面上に、上記の粘着剤組成物の溶液を塗布し、乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層を有する、粘着剤層付き剥離シートを作製した。
【0064】
製造例4
(両面易接着層付きPETフィルムの作製)
一方の面に易接着層(第1の易接着層)が設けられた厚さ50μmの易接着層付PETフィルム(東洋紡社製、商品名「PET50 A−4100」)の第1の易接着層が設けられているのとは反対側の面上に、ポリエステル系アンカーコート剤(荒川化学社製)を塗布し、乾燥させて、厚さ2μmの第2の易接着層を設け、厚さ52μmの両面易接着層付PETフィルムを得た。当該両面易接着層付PETフィルムのヤング率は2500MPaであった。
【0065】
実施例1〜2、比較例1〜4
(1)緩衝層形成用組成物の調製
エネルギー線重合性化合物として、製造例1で合成したウレタンアクリレート系オリゴマー(UA−1)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)を、表1に記載の配合量で配合し、さらに光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名「イルガキュア184」)を2.0質量部、フタロシアニン系顔料を0.2質量部配合し、緩衝層形成用組成物を調製した。
【0066】
(2)粘着シートの作製
剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET381031」、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:38μm)の剥離処理がされた面上に、上記の緩衝層形成用組成物を塗布し塗布膜を形成した。そして、当該塗布膜に対して、紫外線を照射して、当該塗布膜を半硬化させ、厚さ43μmの緩衝層形成膜を形成した。
なお、上記の紫外線照射は、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS−401GX」、アイグラフィクス社製)及び高圧水銀ランプ(H04−L41アイグラフィクス社製:H04−L41)を使用し、ランプ高さ150mm、ランプ出力3kW(換算出力120mW/cm)、光線波長365nmの照度120mW/cm
2、照射量100mJ/cm
2の照射条件下にて行った。
そして、形成した緩衝層形成膜の表面と、製造例4で作製した両面易接着層付きPETフィルムの第1の易接着層とを貼り合わせ、緩衝層形成膜上の剥離シート側から再度紫外線を照射して、当該緩衝層形成膜を完全に硬化させ、厚さ43μmの緩衝層を形成した。
なお、上記の紫外線照射は、上述の紫外線照射装置及び高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ150mm、ランプ出力3kW(換算出力120mW/cm)、光線波長365nmの照度160mW/cm
2、照射量500mJ/cm
2の照射条件下にて行った。
次いで、上記両面易接着層付きPETフィルムの第2の易接着層上に、製造例2で作製した粘着剤層付き剥離シートの粘着剤層を貼り合わせ、
図1(d)の粘着シート1dと同じ構成を有する粘着シートを作製した。
【0067】
以上のように作製した粘着シートについて、各種物性の測定及び特性の評価を、以下に記載の方法により行った。当該結果を表1に示す。
【0068】
<押し込み深さ(X)の測定>
ダイナミック微小硬度計(島津製作所(株)製、製品名「DUH−W201S」)、及び圧子として、先端曲率半径100nm、稜間角115°の三角錐形状圧子を使用し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で測定した。
具体的には、ダイナミック微小硬度計のガラスプレート上に、作製した粘着シートの緩衝層上の剥離シートを除去し、緩衝層が表出するように設置し、当該緩衝層に対して、上記三角錐形状圧子の先端を10μm/分の速度で押し込み、圧縮荷重が2mNに到達した際の押し込み深さ(X)の測定を行った。
【0069】
<緩衝層のtanδの最大値の測定>
上記と同じ方法で、それぞれの実施例及び比較例で用いた緩衝層形成用組成物からなる、厚さ500μmの緩衝層形成膜を第1の剥離シート上に形成し、さらに当該緩衝層形成膜上に、第2の剥離シートを貼り合わせた。なお、用いた第1、2の剥離シートは、上記の実施例及び比較例で使用した種類と同じものである。
そして、第1の剥離シート側から再度紫外線を照射して、上記緩衝層形成膜を完全に硬化させ、厚さ500μmの試験用緩衝層を形成した。なお、上記の紫外線照射は、上述の紫外線照射装置及び高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ150mm、ランプ出力3kW(換算出力120mW/cm)、光線波長365nmの照度160mW/cm
2、照射量500mJ/cm
2の照射条件下にて行った。
作製した試験用緩衝層上の両面の剥離シートを除去した後、所定の大きさに切断した試験片を用いて、動的粘弾性装置(オリエンテック社製、製品名「Rheovibron DDV−II−EP1」)により、周波数11Hzで、温度範囲−20〜150℃における、損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定した。
各温度の「損失弾性率/貯蔵弾性率」の値を、その温度のtanδとして算出し、−5〜120℃の範囲におけるtanδの最大値を、「緩衝層のtanδの最大値」として表1に記載している。
【0070】
<異物吸収性(ウエハの割れの有無)の評価>
厚さ700μmのシリコーンウエハの表面に、作製した粘着シートの粘着剤層上の剥離シートを除去し表出した粘着剤層を、BGテープ用ラミネーター(リンテック社製、製品名「ラミネーターRAD−3500m/12」)を用いて貼り合わせた。
シリコーンウエハに粘着シートを貼付後、緩衝層上の剥離シートを除去し、表出した緩衝層の表面に、擬似異物として、テープ(厚さ6μmのPETフィルム上に、厚さ3μmのアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を設けたもの、縦:1cm、横:2cm、厚さ:9μm)を5箇所貼り付けた。
そして、ウエハ裏面研削機(DISCO社製、製品名「DFG−8540」)を用いて、当該シリコーンウエハの粘着シートが貼付されていない裏面から、厚さが100μmになるまで研削した。
研削後のシリコーンウエハの割れの有無を目視で観察して、下記の基準により、粘着シートの異物吸収性を評価した。
A:ウエハの割れは見られず、粘着シートの異物吸収性は良好である。
F:ウエハの割れが見られ、粘着シートの異物吸収性が劣る。
【0071】
【表1】
【0072】
表1より、実施例1〜2で作製した粘着シートは、異物吸収性に優れていることが分かる。
一方、比較例1〜4で作製した粘着シートは、ウエハの研削加工に用いた際に、異物吸収性が劣るため、切削後にウエハの割れが生じる結果となった。