(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は
、透明積層体の好ましい形態の1つの断面図を示したものである。
透明積層体は、透明フィル
ム1の両面に透明コート層11、12を有している。以下、各構成について記載する。
【0017】
〔透明フィルム〕
透明フィルムは、可視光において無色透明なものであり、ロール状に巻くことが可能な可撓性の高いものが利用できる。透明フィルムの材料としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、環状シクロオレフィンポリマー及びコポリマー等の環状シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリレート樹脂、セルロース樹脂、透明ポリイミド樹脂等を挙げることができる。この際の透明性として、全光線透過率が88%以上、ヘイズが1.5%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明においては透明フィルムはロール状に巻かれたものであり、ロールの幅は300mm以上、長さが500m以上が好ましい。幅が広いもの、長さが長いものほど本発明の効果である剥離放電による傷の低減が顕著となる。 透明フィルムの厚みはロール状に巻くことができれば特に限定されないが、0.01〜0.4mmが好ましく、0.02〜0.3mmがより好ましい。0.4mmを超えるとロール状に巻くことが困難となる。
【0019】
〔透明コート層〕
透明コート層は、可視光において無色透明なものであり、基材に適切な機能を付与させる効果を有する。透明コート層としては、ハードコート層、屈折率調整層、及びその他の層を挙げることができる。例えば、透明フィルム側から順にハードコート層、屈折率調整層を積層する態様が好ましいが、ハードコート層と屈折率調整のいずれかのみを積層しても構わない。高い透明性と取り扱いに十分な強度を付与するために、少なくとも片面に、ハードコート層または屈折率調整層を含有することが好ましい。透明コート層は1層で用いてもよく、2層以上積層しても良い。透明コート層は透明フィルムの片面または両面に積層することができるが、複数の機能を付与できる点で両面に積層することが好ましい。
【0020】
透明コート層の積層方法としては、特に限定されないが、公知のコーティングによるウェットプロセス、真空蒸着等によるドライプロセスを用いることができる。
本発明においては、最表面のコート層の状態が凝着力に影響を与えることから、凝着力が小さくなるように両面の最表面の構成が選択される。また、コート後にプラズマ処理等の公知の表面処理法により表面状態を変化させ、凝着力を制御させることもできる。
【0021】
(A)ハードコート層
ハードコート層を積層することにより、基材の硬度及び耐擦傷性を向上することができ、剛体との接触による傷を低減することができる。
【0022】
ハードコート層の原料としては、公知の材料を用いることができ、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等からなる光または熱硬化性樹脂、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、アクリル樹脂等の無機物または有機物からなるフィラー、重合開始剤、及び上記原料を均一に混合できる溶媒から構成される。
【0023】
ハードコート層の積層方法は、通常、上記原料の混合物をウェットプロセスにてコーティングし、加熱により溶媒を除去後、光または熱を加え樹脂を硬化させる。
【0024】
ハードコート層は1層で用いてもよく、2層以上積層しても良い。ハードコート層は透明フィルムの片面または両面に積層することができる。
【0025】
ハードコート層の厚みとしては、特に限定されないが、0.05〜5μmが好ましく、0.3〜3μmがより好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。0.05μm未満では十分なハードコート性を付与できず、5μmを超えると曲げによってハードコート部が割れやすくなる傾向にある。
【0026】
最表面をハードコート層とした場合、フィラーの形状、粒径及び配合量、光または熱硬化性樹脂の骨格、硬化後分子量等により凝着力を調整することが可能である。
【0027】
(B)屈折率調整層
屈折率調整層は、特定の屈折率を有する薄層であり、複数の異なる屈折率を有する層を組み合わせることにより、積層体の反射率を大きく低減し、透過率を向上させることができる。
【0028】
屈折率調整層の原料としては、公知の材料を用いることができ、特に限定されないが、後述するウェットプロセスではアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等からなる光または熱硬化性樹脂、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の高屈折率/低屈折率フィラー、重合開始剤及び上記原料を均一に混合できる溶媒から構成される混合物を挙げることができ、後述するドライプロセスでは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化ニオブ等の金属酸化物やシリコン等の無機化合物を挙げることができる。
【0029】
屈折率調整層の積層方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、上記原料の混合物をコーティングし、加熱により溶媒を除去後、光または熱を加え樹脂を硬化させるウェットプロセス、金属酸化物等を気相蒸着法等によりコーティングするドライプロセスにより実施することができる。
【0030】
屈折率調整層の屈折率及び厚みは、通常は予め透明フィルム及び他の透明コート層を含めた積層体の光学シミュレーションを実施し、反射率が最小となるような屈折率及び厚みが選択される。屈折率は材料種ならびに高屈折率/低屈折率フィラーの配合量等により任意に調整できる。厚みは屈折率調整層を均一に積層できる範囲であれば特に限定されない。
【0031】
最表面を屈折率調整層とした場合、フィラーの形状、粒径及び配合量、光または熱硬化性樹脂の骨格、硬化後分子量等により凝着力を調整することが可能である。
【0033】
透明積層体
は、全光線透過率が88%以上、ヘイズが1.5%以下であること
が好ましい。高輝度なデバイスを提供できる点で、透明積層体の全光線透過率は88%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。全光線透過率が88%を下回るとデバイスの輝度が落ち好ましくない。高精細なデバイスを提供できる点でヘイズは1.5%以下が好ましく、1.0%以下が好ましい。ヘイズが1.5%を上回るとデバイスの精細度が落ち好ましくない。全光線透過率及びヘイズの測定方法は、JIS K 7361及びJIS K 7136等の公知の方法にて測定することができる。
【0034】
透明積層体
は、表面抵抗が両面とも10
15Ω/□以上であることを特徴とする。これは両面ともに最表面に透過率低下、ヘイズ上昇の原因となる帯電防止層等の導電性層が積層されていないことを意味しており、帯電防止層を含まなくとも剥離帯電による傷が低減でき、かつ高い透明性を有することを示している。これよりディスプレイ等デバイスの光学フィルムとして使用可能であり、高輝度、高精細なデバイスを提供することができる。
透明積層体
は、表面粗さの中心線平均粗さ(Ra)が両面とも3.0〜6.5nmであり、二乗平均平方根粗さ(rms)値が両面とも5〜11nmであることを特徴とする。
【0035】
文献(笠原章、後藤真宏、土佐正弘、吉原一紘、ステンレス鋼の摩擦係数の及ぼす表面ナノ粗さの影響、真空、Vol.45、No.4(2002)p361−364)記載の通り、
図2に示すように大気下では同一材料では表面粗さを変えても摩擦係数がほとんど変わらないのに対し、高真空下においては、表面粗さによって摩擦係数が大きく変化する傾向にあることが知られている。従って真空下での搬送において、、再現良く搬送不良や剥離放電を抑制するためには、表面粗さを一定範囲に制御することが必要となる。
【0036】
表面粗さの中心線平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(rms)値は、ディスプレイ等デバイスの画面ギラツキを抑制でき、かつ良好な搬送性を両立できる点で、それぞれ、Raは3.0〜6.5nmが好ましく、rmsは5〜11nmにすることが好ましい。Ra及び/またはrmsが3nm未満ではブロッキング性能が不十分で好ましくなく、11nmを超えるとデバイスの画面ギラツキが発生する傾向にある。表面粗さの測定方法は、触針式または干渉式の表面粗さ測定装置を用いて、公知の方法により測定することができる。
【0037】
次に、凝着力の測定方法について説明する。
凝着力は、文献(安藤泰久、石川雄一、北原時雄、微小接触面の摩擦と凝着力−凝着力が摩擦力に及ぼす影響−、トライボロジスト、39(1994)p814−820)より接触する物体間の接触面に働く垂直方向の力と定義され、該文献に記載された方法により算出することができる。具体的には、基材の両面間の摩擦力を垂直荷重を変化させながら測定し、各垂直荷重の摩擦力の値から、
図3に示すような垂直荷重−摩擦力の回帰直線を算出し、回帰直線と摩擦力がゼロになる交点の垂直荷重の値に相当する凝着力を算出する。
図4に示すように、回帰直線の傾きが同じ場合、凝着力が大きいほど垂直荷重の大小にかかわらず摩擦力が大きくなる。
【0038】
通常、JIS K7125及びISO 8295で示されるように、摩擦係数は一定の垂直荷重(錘の底面63mm×63mm、重量200g)下で測定される。本発明者らは、真空中では空気層が抜ける影響で、基材ロールに対して大気中よりも大きい垂直方向の圧縮力が働くと考え、鋭意検討の結果、前述の大気下で測定する摩擦係数ではなく、より大きい垂直荷重での摩擦力(摩擦係数)を考慮することで、前述の凝着力と真空中で発生する剥離放電との間に高い相関が見られることを見出した。
【0039】
本発明での動摩擦力−垂直荷重直線の算出方法としては、JIS K7125準拠の装置を使用して、錘の重量を変え動摩擦力を測定すればよい。動摩擦力はJIS K7125記載の方法により、静摩擦力のピークを無視し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後の最初の6cmまでの平均値から算出することができる。動摩擦力と垂直荷重は線形の関係にあるため、各垂直荷重の動摩擦力の値から最小二乗法等の公知の方法により回帰直線を算出することができる。
【0040】
剥離放電の抑制と良好な搬送性を両立できる点で、凝着力は1.3N以下が好ましく、1.2N以下がより好ましい。1.3Nを超えると剥離帯電が起きやすくなり、傷が発生する傾向となり好ましくない。また、下限値としては、0.1N以上が好ましく、0.5N以上がより好ましい。
【0041】
凝着力を上記範囲内に制御する方法は、両面の最表層の材質、フィラーの粒径や配合量等により異なるが、両面に透明コート層を有する透明積層体のうち、片面の最表層に屈折率制御層、もう片面の最表層にハードコート層からなる透明積層体の場合、
図5に示すような、透明コート層を基準として0.1〜0.2μmの高さを有する凸部が1〜20個/mm
2の割合で有するような表面形状を有する屈折率制御層および/またはハードコート層を使用することで低い凝着力となる傾向にある。
図5において、平面図の○及び断面図のピークが凸部に相当する。
図5の表面形状を達成する方法としては特に限定されないが、粒径0.1〜0.2μmのフィラー単体あるいはフィラーの凝集体を透明コート層の原料として含み、所定の割合となるように配合し、均一分散された状態で積層する方法が挙げられる。
【0042】
次に、上記の透明積層体を用いた透明電極付き積層体について記載する。
【0043】
図6は、本発明の透明電極付き積層体の好ましい形態の1つの断面図を示したものである。
図1の形態の透明積層体の最表面に、透明導電層を有している。
【0044】
〔透明導電層〕
透明導電層を最表面に有することで、透明導電フィルムとして使用することができ、タッチパネルやディスプレイ等の透明電極として利用可能となる。透明導電層は透明積層体の片面または両面に積層することができ、1層で用いてもよく、2層以上積層しても良い。
【0045】
本発明の透明導電層の積層方法としては、真空プロセスを経る物理気相成長(PVD)法、化学気相成長(CVD)法等によるドライプロセスにより実施できる。ドライプロセスによる積層により、均一に低抵抗かつ高透過率の透明電極付き積層体を得ることができる。特にスパッタリング法による積層は、公知の設備を使用してロールトゥロールかつ高い搬送速度で積層可能となることから、生産性の点でより好ましい。
【0046】
また本発明のロール状透明積層体は、減圧雰囲気下で巻き出されるプロセスを経由することを特徴とする。剥離放電はロールからの巻き出しにおいて発生するため、本発明の真空下での剥離帯電抑制の効果が有効となる。
【0047】
文献(土佐正弘、笠原章、金龍成、吉原一紘、ステンレス鋼の真空摩擦特性に及ぼす表面処理の効果、表面科学、Vol.21、No.7(2000)p434−437)には、ステンレス鋼の真空環境における摩擦特性が報告されており、
図7に示すように、大気下と減圧環境下では摩擦挙動は大きく異なり、減圧環境下において、圧力によって摩擦挙動は変わること、表面状態(
図7では表面粗さ)によって圧力を下げた場合での摩擦係数の上昇度合いが異なることが開示されている。一方、本発明で用いているような、透明フィルムの真空環境における摩擦特性は未だ報告されていないものの、透明フィルムを用いた場合にも上記のステンレス鋼に近い現象が生じる可能性がある。すなわち透明フィルムにおいて、圧力によって摩擦力(剥離帯電性)が変化し、その変化度合いは透明フィルムの表面状態に依存すると想定される。本発明において、本発明者らは鋭意検討し、タッチパネルやディスプレイ等のデバイスとして好適に使用可能な表面粗さ及び凝着力を有する透明積層体に関して、後述する通常のスパッタリング工程で用いられる圧力の範囲内で、剥離帯電を抑制する効果があることを見出している。
【0048】
本発明における巻き出し時の圧力は、通常のスパッタリング工程で用いられる範囲であれば特に限定されないが、10
−6〜10
−1Paであることが好ましく、10
−6〜10
−2Paであることがより好ましい。10
−6Pa以下までの真空度に到達するまでには長時間を要するため生産性の点で好ましくなく、10
−1Paを超える圧力では、積層体に含まれる脱ガス、脱水が不十分となり、透明導電層の均一な積層を阻害する傾向となる。
【0049】
更に本発明のロール状透明積層体は、5〜20m/分の速度で巻き出すプロセスを有することを特徴とする。巻き出し速度は、スパッタリング工程においては製膜速度に相当するため、速度が大きいほど生産性が向上する。一方、速度が大きくなるほど積層体の剥離時の帯電量が大きくなり、剥離放電の確率が高くなる。
【0050】
高生産性と剥離放電抑制を両立できる点で、巻き出し速度は2〜20m/分が好ましく、5m/分以上がより好ましい。2m/分を下回ると生産性が低く好ましくなく、20m/分を超えると剥離放電を抑制できなくなる傾向にある。
【0051】
透明導電層の原料としては、公知の導電性を有する材料を使用することができ、特に限定されないが、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化インジウム系化合物、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等を挙げることができる。
【0052】
透明導電層の厚みは、特に限定されないが、目的の抵抗値に合わせて選択でき、10〜500nmが好ましく、15〜100nmがより好ましい。10nm未満では電極として利用可能な低抵抗値を得ることが困難であり、500nmを越えると透過率が落ち透明性が不十分となる。
【0053】
本発明における透明電極付き積層体は剥離放電に由来する傷が抑制され、かつ高い透明性、低いヘイズを有するため、高精細、高輝度及び大画面化が求められるタッチパネルや有機EL、ディスプレイに好適に用いられる。特に前述の少ない傷等の外観不良と低抵抗化との両立が可能なため、静電容量方式のタッチパネルとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例、比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
片面に屈折率調整層、もう片面に酸化ケイ素フィラーを含むハードコート層を積層させた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをロール状に巻き取り、幅1100mm、長さ3000mのロールを形成した。
ロールから透明積層体の一部をシート状に切り出し、下記測定を実施した。
【0056】
〈全光線透過率、ヘイズ〉
60mm×60mmにカットしたシートについて、ヘイズメーター(日本電色工業社 NDH5000)を使用し、全光線透過率及びヘイズを測定した。
〈表面抵抗〉
85mm×85mmにカットしたシート両面について、絶縁抵抗計(Hewlett−Packard社 HP4339A)を使用し、電圧500V、1分印加後のシート抵抗を計測した。測定は温度23度、湿度50%の恒温室にて行った。
【0057】
〈表面粗さ〉
60mm×60mmにカットしたシート両面について、表面形状測定機(Zygo NewView7300)を用いて0.1mm×0.1mmの測定範囲における算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(rms)を算出した。測定は温度23度、湿度50%の恒温室にて行った。カットオフ値は0.5mmとした。
【0058】
〈動摩擦係数・凝着力〉
80mm×200mmにカットしたシート2枚を両面が接するように重ね、その上に錘を置き、万能試験機(島津製作所 EZ−S)を用いて100mm/分で上部のシートを錘ごと水平方向に引っ張り、その際に掛かる摩擦力を測定した。JIS K7125同様の200g錘を用いた際の動摩擦係数、及び錘の重量を変えて垂直荷重−動摩擦力の回帰直線を作成し、凝着力を算出した。上記測定は、温度23度、湿度50%の恒温室にて行った。上記ロールをロールトゥロールのスパッタリング装置の巻き出し室にセットし、巻き出し室圧力を4×10
−3Paまで減圧したのち、巻き出し速度5m/分で搬送させ、巻き出し時の剥離放電の有無を観察した。
【0059】
また、屈折率調整層の上に酸化インジウムスズ(ITO)のスパッタリングによる積層を経て巻き取った後に、放電痕である樹状の傷の有無を観察した。
【0060】
[実施例2]
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、巻き出し室圧力を5×10
−3Paまで減圧したのち、巻き出し速度10m/分で搬送させること以外は、実施例1と同様の積層、測定及び観察を実施した。
【0061】
[実施例3]
片面に屈折率調整層、もう片面にフィラーを含むハードコート層を積層させた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをロール状に巻き取り、幅1100mm、長さ2000mのロールとした。巻き出し室圧力を3×10
−3Paまで減圧したのち、巻き出し速度5m/分で搬送させ、このロールについて実施例1と同様の積層、測定及び観察を実施した。
【0062】
[比較例1]
片面にハードコート層及び2層の屈折率調整層、もう片面にハードコート層を積層させた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをロール状に巻き取り、幅1100mm、長さ2000mのロールとした。巻き出し室圧力を2×10
−3Paまで減圧したのち、巻き出し速度5m/分で搬送させ、このロールについて実施例1と同様の積層、測定及び観察を実施した。
【0063】
[比較例2]
片面にハードコート層及び2層の屈折率調整層、もう片面にハードコート層を積層させた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをロール状に巻き取り、幅1300mm、長さ2000mのロールとした。巻き出し室圧力を5×10
−3Paまで減圧したのち、巻き出し速度5m/分で搬送させ、このロールについて実施例1と同様の積層、測定及び観察を実施した。 得られた結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
以上の結果より、巻き出し速度が5m/分以上という高速搬送でも、表面粗さの中心線平均粗さ(Ra)が両面とも3.0〜6.5nmであり、二乗平均平方根粗さ(rms)が両面ともが5〜11nmである透明積層体において、剥離力が1.3N以下である実施例1〜3は剥離放電が見られなかったのに対し、剥離力が1.3Nを越える比較例1、比較例2は剥離放電が認められ、巻き取り後のフィルムに傷が見られた。これらの実施例1〜3では、傷等の外観不良が低減されると共に、光学特性の点でもタッチパネル用途として十分な性能を確保するものであった。