特許第6322036号(P6322036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6322036-カバーフィルム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322036
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】カバーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20180423BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20180423BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B65D85/38 S
   B65D85/38 N
   B65D73/02 B
   B65D73/02 M
   B32B27/18 D
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-81185(P2014-81185)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-199535(P2015-199535A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰
(72)【発明者】
【氏名】徳永 久次
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 貴之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和也
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/137630(WO,A1)
【文献】 特開平01−014999(JP,A)
【文献】 特開平06−238806(JP,A)
【文献】 特開平05−339559(JP,A)
【文献】 特開平03−169540(JP,A)
【文献】 特開2005−306460(JP,A)
【文献】 特開平5−339559(JP,A)
【文献】 特開平6−238806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D85/85
B65D73/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収納ポケットが長手方向に連続的に形成されたキャリアテープに、収納ポケットにチップ型電子部品が収納された状態で収納ポケットを覆ってヒートシールされるカバーフィルムにおいて、基材層(A)、中間層(B)、接着層(C)、及びキャリアテープにヒートシールされるヒートシール層(D)をこの順で含み、ヒートシール層(D)が、ケイ酸塩化合物からなる無機系帯電防止粒子を含んでなる帯電防止剤を熱可塑性樹脂に含有させて形成され、1012Ω/□以下の表面抵抗値を示し、ヒートシール層(D)の無機系帯電防止剤が、ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂100質量部に対して、無機系帯電防止粒子を400〜900質量部含む、カバーフィルム。
【請求項2】
ケイ酸塩化合物が、ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト、スメクタイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトの何れか、又はこれらの組み合わせである請求項1に記載のカバーフィルム。
【請求項3】
ケイ酸塩化合物が合成ヘクトライトである請求項2に記載のカバーフィルム。
【請求項4】
ケイ酸塩化合物が、鱗片状であり、長径と短径のアスペクト比が2〜50である請求項1から3の何れか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項5】
基材層(A)の厚みが8〜40μm、中間層(B)の厚みが10〜40μm、接着層(C)の厚みが3〜25μmであり、カバーフィルムの総厚が45〜65μmである請求項1から4の何れか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項6】
帯電防止剤がピロリン酸四ナトリウムを更に含有する請求項1から5の何れか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項7】
ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の何れか又はこれらの組み合わせである請求項1から6の何れか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項8】
中間層(B)がポリオレフィン系樹脂から形成され、接着層(C)が、スチレン−ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂とエチレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から形成される請求項1から7の何れか一項に記載のカバーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装体に使用するカバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に電子部品を自動的に実装することが行われている。表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて熱成形によりポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納される。電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーフィルムを重ね、加熱したシールバーでカバーフィルムの両側縁を長さ方向に連続的にヒートシールして包装体としている。カバーフィルム材としては、二軸延伸したポリエステルフィルムを基材に、熱可塑性樹脂のヒートシール層を積層したものなどが使用されている。前記キャリアテープとしては、主として熱可塑性樹脂のポリスチレンやポリカーボネート、ポリエステル製のものが用いられている。
【0003】
近年、コンデンサや抵抗器、トランジスタ、LEDなどの電子部品は著しい微小化、軽量化、薄型化が進んでおり、カバーフィルムを剥離する際に発生する僅かな静電気で電子部品がカバーフィルムのヒートシール層に付着し、実装不良を起こすことがある。一方で、このようなカバーフィルムの剥離の際に発生する静電気や低湿度環境下においてカバーフィルムをキャリアテープにヒートシールする際に電子部品が接触して発生する静電気のため、電子部品が劣化し、破壊が生じる危険性、基盤実装時に摩擦により帯電することでカバーフィルムのヒートシール層に付着する可能性があり、これらを防止する手段がカバーフィルムに要求されている。また、収納されている電子部品を取り出すためにカバーフィルムの剥離が容易であり、更に剥離操作中に剥離強度のバラツキが大きいことによる電子部品の振動やキャリアテープからの飛び出しを防ぐことを要求されている。更に、電子部品は包装体に収納された状態で、部品の有無、部品の収納方向、リードの欠損や曲がりが検査されることがある。そのため、電子部品の小型化に伴って、包装体に収納した部品の検査には、カバーフィルムが高い透明性を有している必要がある。
【0004】
前述のような静電気によるトラブルを防止する対策として、ヒートシール層に酸化錫や酸化亜鉛といった導電性微粒子や導電性高分子を添加することにより低湿度環境下においても部品付着を抑制するカバーフィルムが提案されている(特許文献1,2参照)。しかし、このような方法で部品付着抑制をしようとすると、その粒子が比較的大きいため透明性が低下してしまい、透明性の十分なものを得ることが困難であり、曇価が20%を超えるものが殆どであった。また、中間層とヒートシール層の間に静電気拡散層や金属蒸着層を設け、カバーフィルムをキャリアテープから剥離する際に発生する静電気を抑制する方法も提案されている(特許文献3〜5参照)。しかしながら、電子部品の小型化等によって、剥離強度のレンジを小さくすること、電子部品との摩擦により生じる帯電基盤実装時のヒートシール層への付着に関しては更に高いレベルが要求されており、前記の方法によっても未だ要求性能を満たすことができない場合があった。
【0005】
特許文献1:特開平8−258888号公報
特許文献2:特開2011−206997号公報
特許文献3:特開平7−223674号公報
特許文献4:特開平9−216317号公報
特許文献5:特開2009−23680号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等のキャリアテープとの組み合わせで用いるカバーフィルムであり、これらのキャリアテープに対して極めて短いヒートシール時間でも十分な剥離強度で熱接着することができる上、剥離強度のバラツキが少なく、かつ高透明性を有し、更にガラスエポキシ封止材を用いた電子部品に対するヒートシール層との摩擦帯電が極めて低いと共に低湿度環境下においても十分な表面抵抗率を発現するカバーフィルムを提供することを課題とする。
【0007】
本発明者等は、前記の課題について鋭意検討した結果、基材層(A)とヒートシール層(D)の間に中間層(B)と接着層(C)を順に介在させた層構成とすると共に、ヒートシール層(D)に特定の無機系帯電防止粒子を含んでなる帯電防止剤を添加することにより、本発明の課題を克服したカバーフィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は、複数の収納ポケットが長手方向に連続的に形成されたキャリアテープに、収納ポケットにチップ型電子部品が収納された状態で収納ポケットを覆ってヒートシールされるカバーフィルムにおいて、基材層(A)、中間層(B)、接着層(C)、及びキャリアテープにヒートシールされるヒートシール層(D)をこの順で含み、ヒートシール層(D)が、ケイ酸塩化合物からなる無機系帯電防止粒子を含んでなる帯電防止剤を熱可塑性樹脂に含有させて形成され、1012Ω/□以下の表面抵抗値を示す、カバーフィルムである。
【0009】
上記において、ケイ酸塩化合物は、ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト、スメクタイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトの何れか、又はこれらの組み合わせであることが好ましく、これらの中でも、合成ヘクトライトが特に好ましい。更に、基材層(A)の厚みが8〜40μm、中間層(B)の厚みが10〜40μm、接着層(C)の厚みが3〜25μmであり、カバーフィルムの総厚が45〜65μmであることが好ましい。
【0010】
また上記において、無機系帯電防止粒子は鱗片状(平面視)であり、長径と短径のアスペクト比(側面視)が2〜50であることが好ましい。また無機系帯電防止粒子は平均粒子径が1〜100nmのものが好適で、ここで、平均粒子径はD50、つまり粒径が小さい側からの質量累積(累積質量百分率)が50%に相当する粒径である。無機系帯電防止粒子の平均粒子径が100nmを超えると、カバーフィルムの透明性を阻害することがある。更に帯電防止剤はピロリン酸四ナトリウムを更に含有することが好ましい。また、前記ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の何れか又はこれらの組み合わせであることが好ましい。また、ヒートシール層(D)の無機系帯電防止剤は、ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂100質量部に対して、無機系帯電防止粒子を100〜900質量部含むことが好ましい。
【0011】
更に上記において、中間層(B)はポリオレフィン系樹脂から形成されることが好ましく、接着層(C)は、スチレン−ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0012】
上記構成の本発明に係るカバーフィルムは、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等のキャリアテープとの組み合わせで用いた場合、これらのキャリアテープに対して極めて短いヒートシール時間でも十分な剥離強度になるようにヒートシールすることができる上、剥離強度のバラツキが少なく、かつ高透明性を有し、更にガラスエポキシ封止材を用いた電子部品に対するヒートシール層との摩擦帯電が極めて低いと共に低湿度環境下においても十分な表面抵抗率を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のカバーフィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るカバーフィルムは、少なくとも基材層(A)と中間層(B)と接着層(C)と、帯電防止剤を含有するヒートシール層(D)とをこの順で含んでなる層構成を有する。
【0015】
<基材層(A)>
基材層(A)は、二軸延伸ポリエステルあるいは二軸延伸ナイロンから形成される層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)、二軸延伸6,6−ナイロン、二軸延伸6−ナイロンを特に好適に用いることができる。二軸延伸PET、二軸延伸PEN、二軸延伸6,6−ナイロン、二軸延伸6−ナイロンとしては、通常用いられているものの他に、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布又は練り込まれたもの、あるいはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることもできる。基材層(A)は、薄すぎるとカバーフィルム自体の引張り強度が低くなるためカバーフィルムを剥離する際に破断が発生しやすい。一方、厚すぎるとキャリアテープに対するヒートシール性が低下を招くだけで無く、コスト上昇を招くため、通常8〜40μm、好ましくは12〜25μmの厚みのものを好適に用いることができる。
【0016】
<中間層(B)>
中間層(B)は、基材層(A)の片面に必要に応じて接着剤層又はアンカーコート層を介して積層される熱可塑性樹脂の層である。中間層(B)を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィンを成分としてなる樹脂であって、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−エチレングラフト共重合体、スチレン−プロピレングラフト共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体、プロピレンなどを用いることができ、これらのポリオレフィンは単独あるいはそれらの二種以上を混合物として併用することも可能である。また、ポリエチレンからなる層とエチレン−1−ブテン共重合体からなる層など、異なる樹脂からなる二層以上の層から構成することも可能である。その中でも、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−1−ブテンなどを好適に用いることができ、特にメタロセン系触媒で重合されたもの(m−LLDPE)は分子量分布を狭く制御されているため、とりわけ高い引裂強度を有していることから、本発明の中間層(B)として用いることが好ましい。
【0017】
中間層(B)の厚みは、好ましくは10〜40μmである。中間層(B)の厚みが10μm未満では基材層(A)と中間層(B)の間の接着強度が不十分となる恐れがあり、また、キャリアテープにカバーフィルムをヒートシールする際のシールヘッドのヘッド圧力のバラツキを緩和する効果が得られ難いために、カバーフィルムを剥離する際の剥離強度のバラツキが大きくなりやすい。一方、40μmを超えるとキャリアテープにカバーフィルムを超高速ヒートシールする際に、キャリアテープとカバーフィルムのヒートシール界面へのシールヘッドの熱が伝達し難くなるため、ヒートシールで十分な剥離強度を得ることが困難となることがある。また、カバーフィルム自体の曲げ弾性が高くなるために、カバーフィルムの剥離において、剥離強度が低い箇所ではカバーフィルムの屈曲によってキャリアテープから離れようとする力が働くために、より剥離強度が低くなりやすい。そのため、中間層(B)が厚すぎる場合には、カバーフィルムを剥離する際の剥離強度のバラツキを生じ易く、更にはコストの上昇も招く。
【0018】
中間層(B)は、後述するように、本発明のカバーフィルムの製造方法によっては2層以上の構成となってもよい。
【0019】
<接着層(C)>
本発明のカバーフィルムは、前記中間層(B)とヒートシール層(D)の間に、熱可塑性樹脂から形成される接着層(C)を有する。この接着層(C)に用いる熱可塑性樹脂は、スチレン−ジエンブロック共重合体を主成分とするスチレン系樹脂組成物(a)と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(b)を特定の配合比率で含有していることが好ましく、接着層(C)中の(b)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体が20〜50質量%である。この接着層(C)は、スチレン−ジエンブロック共重合体を主成分とする(a)成分によってヒートシール層(D)との接着力が得られ、(b)成分を前記の量含有させることによって、その接着力を適度の値に調整することができ、キャリアテープに対してヒートシールしたカバーフィルムを剥離する際に、接着層(C)とヒートシール層(D)の層間で十分でかつ安定した剥離強度を発現させることができる。接着層中のエチレン−α−オレフィン共重合体(b)の含有量が20質量%未満の時、接着層(C)とヒートシール層(D)の層間の接着力が高くなり、剥離強度のバラツキが大きくなり、また、ヒートシール後の時間経過によって剥離強度の変化を生じる。一方、エチレン−α−オレフィンの含有量が50質量%を超えると接着層(C)とヒートシール層(D)の接着強度が低いために、十分な剥離強度を得ることが困難になる。
【0020】
接着層(C)の厚さは、通常3〜25μmであり、好ましくは5〜20μmである。接着層(C)の厚さが3μm未満の時、カバーフィルムをキャリアテープにヒートシールした時に十分な剥離強度を示さないことがある。一方、接着層(C)の厚さが25μmを越える場合には、超高速ヒートシールにおいて十分な剥離強度が得られにくく、また、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じ易く、更にはコストの上昇を招きやすい。なお、後述するように、接着層(C)は、通常は接着層を構成する樹脂組成物を押出機で熱溶融してインフレーションダイ、Tダイなどから押し出す方法によって形成することができる。
【0021】
<ヒートシール層(D)>
ヒートシール層(D)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンビニルアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の何れか又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。
【0022】
ヒートシール層(D)に含有させられる帯電防止剤は、ケイ酸塩化合物からなる無機系帯電防止粒子を含んでなるもので、ケイ酸塩化合物としては、ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトの何れか又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。ここで、上記無機系帯電防止粒子は、鱗片状(平面視)であり、長径と短径のアスペクト比(側面視での高さと径の比)が2〜50であることが好ましい。また無機系帯電防止粒子は、平均粒子径が1〜100nmのものが好適で、ここで、平均粒子径はD50、つまり粒径が小さい側からの質量累積(累積質量百分率)が50%に相当する粒径である。無機系帯電防止粒子の平均粒子径が100nmを超えると、カバーフィルムの透明性を阻害することがある。帯電防止剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、100〜900質量部が好ましい。100重量部未満では帯電防止性能が発現しなくなる一方、900重量部を超えると相対的な熱可塑性樹脂の量が減少するため、接着層(C)との密着性が悪くなることがある。
【0023】
無機系帯電防止粒子としては、上に列挙したものの中でも、天然、合成ヘクトライトが帯電防止性能に優れ、少ない添加量でも十分な表面抵抗値を発現するため好ましい。合成ヘクトライトは、1960年代初頭に初めて合成され、今や商品名ラポナイト(Laponite)(商標)のもとでサザンクレイプロダクツ社から市販されている。市販のラポナイト(商標)には多数の等級又は変異体及び同形置換体がある。市販のラポナイトの例は、ルセンタイト(Lucentite)SWN(商標)、ラポナイト(Laponite)S(商標)、ラポナイトXLS(商標)、ラポナイトRD(商標)及びラポナイトRDS(商標)である。本発明の好ましい実施形態では、以下の特徴を有するラポナイトXLS(商標)を用いる:分析(乾燥基準)SiO(59.8%)、MgO(7.2%)、NaO(4.4%)、LiO(0.8%)、構造HO(7.8%)、さらにピロリン酸四ナトリウム(6%);比重2.53;嵩密度1.0。
【0024】
ラポナイトRD(商標)のような一部の合成ヘクトライトはフッ素を含有しない。ヒドロキシル基をフッ素によって同型置換すると、ナトリウムマグネシウムリチウムフルオロシリケートと呼ばれる合成粘土が生成される。このナトリウムマグネシウムリチウムフルオロシリケートはラポナイト(商標)又はラポナイトS(商標)として市販されており、およそ10重量%までのフッ素イオンを含有することがある。またラポナイトS(商標)は、添加剤として約6%のピロリン酸四ナトリウムを含有する。
【0025】
ヒートシール層(D)の厚さは、通常0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmの範囲である。ヒートシール層(D)の厚さが、0.05μm未満では、カバーフィルムをキャリアテープにヒートシールしたときに十分な剥離強度が発現しないことがある。一方、ヒートシール層(D)の厚さが2.0μmを越える場合には、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じる恐れがあり、またコストの上昇を招き易い。なお、後述するように、ヒートシール層(D)は、通常はヒートシール層を構成する樹脂組成物をトルエンや酢酸エチルなどに溶解した溶液を塗布したり、あるいはヒートシール層を構成する樹脂のエマルジョンを塗布する方法によって形成されるが、塗布法で形成した場合、ここでいう厚みとは乾燥後の厚みである。
【0026】
<カバーフィルムの作製方法>
上記カバーフィルムを作製する方法は特に限定されるものではなく、当業者に知られている如何なる方法を用いてもよい。
例えば、接着層(C)を予めTダイキャスト法あるいはインフレーション法などの方法によって製膜しておき、基材層(A)の表面にポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンイミンなどのアンカーコート剤を塗布した二軸延伸ポリエステルフィルムを、前記接着層(C)のフィルムと更には中間層(B)となる樹脂組成物とともに、Tダイから押し出しするサンドラミネート法により、基材層(A)/中間層(B)/接着層(C)からなる三層フィルムを作製する(単層シーラントフィルム/押出ラミネート法)。そして、この三層フィルムの接着層(C)の表面に、ヒートシール層(D)を構成する樹脂組成物を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等により塗布することで目的とするカバーフィルムを得ることができる。
【0027】
他の方法として、中間層(B)を構成する樹脂組成物と、接着層(C)を構成する樹脂組成物を個別の単軸押出機から押出しし、マルチマニホールドダイで積層することにより、中間層(B)と接着層(C)からなる二層フィルムとする。更に、基材層(A)の表面にポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンなどのアンカーコート剤を塗布した二軸延伸ポリエステルフィルムを、前記二層フィルムとドライラミネート法により積層して、基材層(A)/中間層(B)/接着層(C)からなる三層フィルムを作製する(二層シーラントフィルム/ドライラミネート法)。そして、この三層フィルムの接着層(C)の表面に、ヒートシール層(D)を構成する樹脂組成物を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等により塗布することで目的とするカバーフィルムを得ることができる。
【0028】
更に他の方法として、中間層(B)を構成する樹脂組成物と接着層(C)を構成する樹脂組成物を個別の単軸押出機から押出しし、マルチマニホールドダイで積層することにより、中間層(B)の一部と接着層(C)からなる二層フィルムとする。更に、基材層(A)の表面にポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンイミンなどのアンカーコート剤を塗布した二軸延伸ポリエステルフィルムと、二層フィルムの間に、中間層(B)を構成する樹脂組成物をTダイから押し出しするサンドラミネート法により、基材層(A)/中間層(B)/接着層(C)からなる三層フィルムを作製する(二層シーラントフィルム/押出ラミネート法)。そして、この三層フィルムの接着層(C)の表面に、ヒートシール層(D)を構成する樹脂組成物を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等により塗布することで目的とするカバーフィルムを得ることができる。この方法において中間層(B)は、接着層(C)との共押出により形成された層と、サンドラミネートにより形成される層の2層構成となる。前記のサンドラミネートにより形成される層の厚みは、通常10〜20μmの範囲である。
【0029】
前記の工程に加え、必要に応じて、カバーフィルム基材層(A)の表面に帯電防止処理を行うことができる。帯電防止剤として、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、ベタイン系などの界面活性剤型帯電防止剤や、ポリスチレンスルホン酸、アクリル酸エステルと4級アンモニウムアクリレートの共重合体などの高分子型帯電防止剤や導電剤、ヒートシール層(D)の場合と同様に無機系帯電防止剤などを、グラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により塗布することができる。また、これらの帯電防止剤を均一に塗布するために、帯電防止処理を行う前に、フィルム表面にコロナ放電処理やオゾン処理することが好ましく、特にコロナ放電処理が好ましい。
【0030】
<カバーフィルムの使用>
カバーフィルムは、電子部品の収納容器であるキャリアテープの蓋材として用いる。キャリアテープとは、電子部品を収納するための窪み(収納ポケット)を有した幅8mmから100mm程度の帯状物である。カバーフィルムを蓋材としてヒートシールする場合、キャリアテープを構成する材質は特に限定されるものではないが、本発明品は特にポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートのキャリアテープに対して好適に使用することができる。キャリアテープは、カーボンブラックやカーボンナノチューブを樹脂中に練り込むことにより導電性を付与したもの、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの界面活性型の帯電防止剤やポリエーテルエステルアミドなどの持続性帯電防止剤が練り込まれたもの、あるいは表面に界面活性剤型の帯電防止剤やポリピロール、ポリチオフェンなどの導電物をアクリルなどの有機バインダーに分散した塗布液を塗布することにより、帯電防止性を付与したものを用いることができる。
【0031】
電子部品を収納した包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品を収納するための窪みに電子部品等を収納した後に、カバーフィルムを蓋材としカバーフィルムの幅方向の両側縁部を、シールヘッドを用いて長手方向に連続的にヒートシールして包装し、リールに巻き取ることで得られる。この形態に包装することで電子部品等は保管、搬送される。本発明の包装体においては、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、LEDなど各種電子部品の収納および搬送に用いることができ、特に厚みが1mm以下のサイズのLEDやトランジスタ、ダイオード、抵抗器などの電子部品において超高速ヒートシールが可能であり、電子部品を実装する際のトラブルを大幅に抑制することができる。電子部品等を収納した包装体は、キャリアテープの長手方向の縁部に設けられたキャリアテープ搬送用のスプロケットホールと呼ばれる孔を用いて搬送しながら断続的にカバーフィルムを引き剥がし、部品実装装置により電子部品等の存在、向き、位置を確認しながら取り出し、基板への実装が行われる。
【0032】
カバーフィルムを引き剥がす際には、剥離強度があまりに小さいとキャリアテープから剥がれ、収納部品が脱落してしまう恐れがあり、あまりに大きいとキャリアテープとの剥離が困難になると共にカバーフィルムを剥離する際に破断させてしまう恐れがあるため、160〜210℃のシールヘッド温度で超高速ヒートシールを行った場合において、0.20〜0.70Nの剥離強度を有することが必要であるが、好ましくは0.35〜0.60Nの範囲である。そのため、210℃のシールヘッド温度における超高速シールにおいて0.20N以上、好ましくは0.35N以上の剥離強度を発現するものを好適に使用することができる。更に、カバーフィルムを剥離する際の、キャリアテープからの電子部品の飛び出しを防ぐため、剥離強度のバラツキは0.30Nを下回るものが好ましく、より好ましくは0.20N以下である。また、キャリアテープに電子部品を収納しカバーフィルムをヒートシールした後、輸送や保管の環境において高温環境に晒されることがあり、高温環境下においても剥離強度が安定していることが重要である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例及び比較例において、基材層(A)、中間層(B)、接着層(C)及びヒートシール層(D)に、以下の原料を用いた。
【0034】
<基材層(A)の材料>
(a−1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ社製)、厚み13μm
【0035】
<中間層(B)の樹脂>
(b−1)m−LLDPE1:ハーモレックスNH745N(日本ポリエチレン社製)
(b−2)m−LLDPE2:エボリューSP3010(プライムポリマー社製)
(b−3)LDPE3:UBEポリエチレンR500(宇部丸善ポリエチレン社製)
【0036】
<接着層(C)の樹脂>
(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1:クリアレン(電気化学工業社製、スチレン比率83質量%)
(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2:TR−2000(JSR社製、スチレン比率:40質量%)
(c−a−3)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体:タフテックH1041(旭化成ケミカルズ社製、スチレン比率:30質量%)
(c−a−4)スチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体:セプトン2007(クラレ社製、スチレン比率:30質量%)
(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体:タフマーA(三井化学社製)
(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン:トーヨースチロールE640N(東洋スチレン社製)
(c−d−1)タルク、シリカマスターバッチ:PEX ABT−16(東京インキ社製、タルク含量5質量%、シリカ含量45質量%、低密度ポリエチレン50質量%)
【0037】
<ヒートシール層(D)の樹脂>
(d−a−1)無機系帯電防止剤1:Laponite S482(Rockwood Additives社製、合成ヘクトライト、鱗片状、短径1nm、長径25nm)
(d−a−2)無機系帯電防止剤2:パストラン4300(三井金属社製、酸化錫コート硫酸バリウム、球状、平均粒子径200nm)
(d−a−3)界面活性剤型帯電防止剤:SAT−6C(日本純薬社製、四級アンモニウムエチル硫酸系界面活性剤)
(d−a−4)高分子型帯電防止剤:ボンディップPM(コニシ社製、四級アンモニウムアクリレートエチル硫酸塩)
(d−a−5)導電材:SN−100D(石原産業社製、アンチモンドープ酸化錫、球状、平均粒子径100nm)
(d−b−1)アクリル樹脂1:NKポリマーMK−100EC−24(新中村化学社製、ガラス転移温度:78℃、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルのランダム共重合体のエマルジョン溶液)
(d−b−2)アクリル樹脂2:NKポリマーMK−100EC−242(新中村化学社製、ガラス転移温度:55℃、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルのランダム共重合体のエマルジョン溶液)
(d−b−3)変性オレフィン樹脂:アローベースSB1200(ユニチカ社製、融点:83℃、マレイン酸変性オレフィン樹脂のエマルジョン溶液)
(d−b−4)ラテックス樹脂:SBラテックス0602(JSR社製、ガラス転移温度:40℃、スチレン−ブタジエンラテックスのエマルジョン溶液)
【0038】
<実施例1>
(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1「クリアレン」(電気化学工業社製)42.5質量部と、(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2「TR−2000」(JSR社製)12.5質量部と、(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体「タフマーA」(三井化学社製)35質量部と、(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン「トーヨースチロールE640N」10質量部をタンブラーによってプリブレンドし、径40mmの単軸押出機を用いて210℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層用樹脂組成物を得た。この接着層用樹脂組成物と、第一中間層用の(b−2)m−LLDPE2「エボリューSP3010」(プライムポリマー社製)50質量部と(b−3)LDPE3「UBEポリエチレンR500」(宇部丸善ポリエチレン社製)50質量部の混合物を、それぞれ個別の単軸押出機から押出しし、マルチマニホールドTダイで積層押出することにより、接着層及び第一中間層の厚みが、それぞれ5μmおよび20μmの二層フィルムを得た。
一方で、基材層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み13μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤をロールコーターによって塗布しておき、当該塗布面と上述した接着層を構成するフィルムとの間に、第二中間層を構成する溶融した(b−1)m−LLDPE1「ハーモレックスNH745N」(日本ポリエチレン社製)を13μmの厚みになるように押出し、押出ラミネート法によって積層フィルムを得た。
この積層フィルムの接着層表面にコロナ処理を施した後、ヒートシール層として予め作成しておいた(d−a−1)無機系帯電防止剤「Laponite S482」(Rockwood Additives社製)の水溶液と(d−b−1)アクリル樹脂1「NKポリマーMK−100EC−24」(新中村化学社製)のエマルジョンを、無機系帯電防止剤と樹脂の質量比率が400:100になるように混合した溶液を、グラビアコーターを用いて、固形分厚みが0.5μmになるように塗布し、基材層/中間層/接着層/ヒートシール層の層構造を有するカバーフィルムを得た。カバーフィルムの特性を、表1に示す。
【0039】
<実施例2〜8、比較例3〜7>
接着層(C)及びヒートシール層(D)の原料として、表1及び表2に記載した樹脂又は樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0040】
<比較例1>
接着層を設けず、第一中間層用の(b−2)m−LLDPE2「エボリューSP3010」(プライムポリマー社製)50質量部と(b−3)LDPE3「UBEポリエチレンR500」(宇部丸善ポリエチレン社製)50質量部の混合物を、単軸押出機から押出し、厚みが25μmの単層フィルムを得た後に、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0041】
<比較例2>
中間層を設けず、接着層用の(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1「クリアレン」(電気化学工業社製)42.5質量部と、(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2「TR−2000」(JSR社製)12.5質量部と、(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体「タフマーA」(三井化学社製)35質量部と、(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン「トーヨースチロールE640N」10質量部をタンブラーによってプリブレンドし、径40mmの単軸押出機を用いて210℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層用樹脂組成物を得た後に、単軸押出機から押出し、厚みが25μmの単層フィルムを得た。続いて、基材層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤をロールコーターによって塗布しておき、当該塗布面と上述した接着層を構成するフィルムとを、ドライラミネート法によって積層フィルムを得た。それ以外は実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0042】
各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムに対して、下記に示す評価を行った。これらの結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0043】
(1)曇価
JIS K 7105:1998の測定法Aに準じて、積分球式測定装置を用いて曇価を測定した。フィルム製膜性が著しく悪くフィルムが得られず、曇価を評価できなかったものについては、「未評価」と表記した。結果を表1及び表2の曇価の欄に示す。曇価が25%未満が合格品である。
【0044】
(2)表面抵抗値
三菱化学社のハイレスタUP MCP−HT450を使用しJISK6911の方法にて、雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%R.H.および雰囲気温度23℃、雰囲気湿度20%R.H.、印加電圧500Vでヒートシール層表面の表面抵抗値を測定した。結果を表1及び表2の表面抵抗値の欄に示す。表面抵抗値は1012Ω/□以下が合格品である。
【0045】
(3)シール性
テーピング機(渋谷工業社、ETM−480)を使用し、シールヘッド幅0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力0.1MPa、送り長4mm、シール時間0.1秒×8回でシールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔で5.5mm幅のカバーフィルムを8mm幅のポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)、及びポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)にヒートシールした。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて毎分300mmの速度、剥離角度180°でカバーフィルムを剥離した。140℃及び190℃のシールコテ温度でヒートシールしたときの平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「優」とし、140℃あるいは190℃のいずれかのシールコテ温度でヒートシールしたときの平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1及び表2のシール性の欄に示す。
【0046】
(4)剥離強度のバラツキ
前記(3)シール性と同条件において、剥離強度が0.4Nとなるようにヒートシールを行った。カバーフィルムを前記(2)シール性と同条件で剥離した。剥離方向に100mm分のカバーフィルムを剥離した際に得られたチャートから剥離強度のバラツキを導き出した。剥離強度のバラツキが0.2N以下であるものを「優」、0.2から0.4Nであるものを「良」、0.4Nより大きいものを「不良」とし、剥離強度が0.4Nに満たないものについては「未評価」として標記した。結果を表1及び表2の剥離のバラツキの欄に示す。
【0047】
(5)剥離強度の経時安定性
ポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)に対する剥離強度が0.4Nとなるようにヒートシールを行った。温度60℃、相対湿度10%、及び温度60℃、相対湿度95%の環境下に7日間投入し、取り出し後温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定は前記(3)シール性と同条件にて実施した。平均剥離強度が0.4±0.1Nの範囲にあるものを「優」とし、0.4±0.2Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」とし、剥離強度が0.4Nに満たないものについては「未評価」として標記した。結果を表1及び表2の剥離強度の経時安定性の欄に示す。
【0048】
(6)摩擦帯電評価
雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%R.H.の環境下において、8mm幅の導電ポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)に幅1.0mm×長0.6mm×深0.5mmの封止材がガラスエポキシ化合物からなる電子部品を10個装填した後、カバーフィルムをヒートシールした。カバーフィルム側を下にして600rpmで5分間(3000回)振動させた後、カバーフィルムを剥離し、電圧計(MONROE ELECTRONICS ISOPROBE ELECTROSTATIC VOLTMETER MODEL 279)を用いて、電子部品表面の帯電圧を測定した。本結果は0Vに近い値であるほど帯電が少ないことを意味する。結果を表1及び表2の摩擦帯電評価の欄に示す。
【0049】
【表1】
【表2】
【0050】
表1及び表2に示した結果から分かるように、本発明の実施例1〜8に係るカバーフィルムは、曇価、表面抵抗率、シール性、剥離強度のバラツキ、剥離強度の経時安定性の全ての評価項目につき、優れた結果を示したが、本発明の構成を満たさない比較例1〜7に係るカバーフィルムは評価項目の少なくとも何れか一について、満足すべき結果を示さなかった。すなわち、所定の中間層や接着層を形成していない比較例1〜2に係るカバーフィルムは、所定の無機系帯電防止剤を用いても、シール性、剥離強度のバラツキが不良で、剥離強度の経時安定性を調べるに至らなかった。一方、無機系帯電防止剤の代わりに他の種類の帯電防止剤を使用した比較例3〜6やケイ酸塩化合物ではない無機系の帯電防止剤を使用した比較例7では、上記評価項目の何れかが満足できる結果とはならなかった。
【符号の説明】
【0051】
1 カバーフィルム
2 基材層(A)
3 アンカーコート層
4 中間層(B)
5 接着層(C)
6 ヒートシール層(D)
図1