【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例及び比較例において、基材層(A)、中間層(B)、接着層(C)及びヒートシール層(D)に、以下の原料を用いた。
【0034】
<基材層(A)の材料>
(a−1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ社製)、厚み13μm
【0035】
<中間層(B)の樹脂>
(b−1)m−LLDPE1:ハーモレックスNH745N(日本ポリエチレン社製)
(b−2)m−LLDPE2:エボリューSP3010(プライムポリマー社製)
(b−3)LDPE3:UBEポリエチレンR500(宇部丸善ポリエチレン社製)
【0036】
<接着層(C)の樹脂>
(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1:クリアレン(電気化学工業社製、スチレン比率83質量%)
(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2:TR−2000(JSR社製、スチレン比率:40質量%)
(c−a−3)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体:タフテックH1041(旭化成ケミカルズ社製、スチレン比率:30質量%)
(c−a−4)スチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体:セプトン2007(クラレ社製、スチレン比率:30質量%)
(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体:タフマーA(三井化学社製)
(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン:トーヨースチロールE640N(東洋スチレン社製)
(c−d−1)タルク、シリカマスターバッチ:PEX ABT−16(東京インキ社製、タルク含量5質量%、シリカ含量45質量%、低密度ポリエチレン50質量%)
【0037】
<ヒートシール層(D)の樹脂>
(d−a−1)無機系帯電防止剤1:Laponite S482(Rockwood Additives社製、合成ヘクトライト、鱗片状、短径1nm、長径25nm)
(d−a−2)無機系帯電防止剤2:パストラン4300(三井金属社製、酸化錫コート硫酸バリウム、球状、平均粒子径200nm)
(d−a−3)界面活性剤型帯電防止剤:SAT−6C(日本純薬社製、四級アンモニウムエチル硫酸系界面活性剤)
(d−a−4)高分子型帯電防止剤:ボンディップPM(コニシ社製、四級アンモニウムアクリレートエチル硫酸塩)
(d−a−5)導電材:SN−100D(石原産業社製、アンチモンドープ酸化錫、球状、平均粒子径100nm)
(d−b−1)アクリル樹脂1:NKポリマーMK−100EC−24(新中村化学社製、ガラス転移温度:78℃、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルのランダム共重合体のエマルジョン溶液)
(d−b−2)アクリル樹脂2:NKポリマーMK−100EC−242(新中村化学社製、ガラス転移温度:55℃、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルのランダム共重合体のエマルジョン溶液)
(d−b−3)変性オレフィン樹脂:アローベースSB1200(ユニチカ社製、融点:83℃、マレイン酸変性オレフィン樹脂のエマルジョン溶液)
(d−b−4)ラテックス樹脂:SBラテックス0602(JSR社製、ガラス転移温度:40℃、スチレン−ブタジエンラテックスのエマルジョン溶液)
【0038】
<実施例1>
(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1「クリアレン」(電気化学工業社製)42.5質量部と、(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2「TR−2000」(JSR社製)12.5質量部と、(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体「タフマーA」(三井化学社製)35質量部と、(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン「トーヨースチロールE640N」10質量部をタンブラーによってプリブレンドし、径40mmの単軸押出機を用いて210℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層用樹脂組成物を得た。この接着層用樹脂組成物と、第一中間層用の(b−2)m−LLDPE2「エボリューSP3010」(プライムポリマー社製)50質量部と(b−3)LDPE3「UBEポリエチレンR500」(宇部丸善ポリエチレン社製)50質量部の混合物を、それぞれ個別の単軸押出機から押出しし、マルチマニホールドTダイで積層押出することにより、接着層及び第一中間層の厚みが、それぞれ5μmおよび20μmの二層フィルムを得た。
一方で、基材層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み13μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤をロールコーターによって塗布しておき、当該塗布面と上述した接着層を構成するフィルムとの間に、第二中間層を構成する溶融した(b−1)m−LLDPE1「ハーモレックスNH745N」(日本ポリエチレン社製)を13μmの厚みになるように押出し、押出ラミネート法によって積層フィルムを得た。
この積層フィルムの接着層表面にコロナ処理を施した後、ヒートシール層として予め作成しておいた(d−a−1)無機系帯電防止剤「Laponite S482」(Rockwood Additives社製)の水溶液と(d−b−1)アクリル樹脂1「NKポリマーMK−100EC−24」(新中村化学社製)のエマルジョンを、無機系帯電防止剤と樹脂の質量比率が400:100になるように混合した溶液を、グラビアコーターを用いて、固形分厚みが0.5μmになるように塗布し、基材層/中間層/接着層/ヒートシール層の層構造を有するカバーフィルムを得た。カバーフィルムの特性を、表1に示す。
【0039】
<実施例2〜8、比較例3〜7>
接着層(C)及びヒートシール層(D)の原料として、表1及び表2に記載した樹脂又は樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0040】
<比較例1>
接着層を設けず、第一中間層用の(b−2)m−LLDPE2「エボリューSP3010」(プライムポリマー社製)50質量部と(b−3)LDPE3「UBEポリエチレンR500」(宇部丸善ポリエチレン社製)50質量部の混合物を、単軸押出機から押出し、厚みが25μmの単層フィルムを得た後に、実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0041】
<比較例2>
中間層を設けず、接着層用の(c−a―1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体1「クリアレン」(電気化学工業社製)42.5質量部と、(c−a−2)スチレン−ブタジエンブロック共重合体2「TR−2000」(JSR社製)12.5質量部と、(c−b−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体「タフマーA」(三井化学社製)35質量部と、(c−c−1)ハイインパクトポリスチレン「トーヨースチロールE640N」10質量部をタンブラーによってプリブレンドし、径40mmの単軸押出機を用いて210℃で混練し、毎分20mのライン速度で接着層用樹脂組成物を得た後に、単軸押出機から押出し、厚みが25μmの単層フィルムを得た。続いて、基材層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤をロールコーターによって塗布しておき、当該塗布面と上述した接着層を構成するフィルムとを、ドライラミネート法によって積層フィルムを得た。それ以外は実施例1と同様にしてカバーフィルムを作製した。
【0042】
各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムに対して、下記に示す評価を行った。これらの結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0043】
(1)曇価
JIS K 7105:1998の測定法Aに準じて、積分球式測定装置を用いて曇価を測定した。フィルム製膜性が著しく悪くフィルムが得られず、曇価を評価できなかったものについては、「未評価」と表記した。結果を表1及び表2の曇価の欄に示す。曇価が25%未満が合格品である。
【0044】
(2)表面抵抗値
三菱化学社のハイレスタUP MCP−HT450を使用しJISK6911の方法にて、雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%R.H.および雰囲気温度23℃、雰囲気湿度20%R.H.、印加電圧500Vでヒートシール層表面の表面抵抗値を測定した。結果を表1及び表2の表面抵抗値の欄に示す。表面抵抗値は10
12Ω/□以下が合格品である。
【0045】
(3)シール性
テーピング機(渋谷工業社、ETM−480)を使用し、シールヘッド幅0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力0.1MPa、送り長4mm、シール時間0.1秒×8回でシールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔で5.5mm幅のカバーフィルムを8mm幅のポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)、及びポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)にヒートシールした。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて毎分300mmの速度、剥離角度180°でカバーフィルムを剥離した。140℃及び190℃のシールコテ温度でヒートシールしたときの平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「優」とし、140℃あるいは190℃のいずれかのシールコテ温度でヒートシールしたときの平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1及び表2のシール性の欄に示す。
【0046】
(4)剥離強度のバラツキ
前記(3)シール性と同条件において、剥離強度が0.4Nとなるようにヒートシールを行った。カバーフィルムを前記(2)シール性と同条件で剥離した。剥離方向に100mm分のカバーフィルムを剥離した際に得られたチャートから剥離強度のバラツキを導き出した。剥離強度のバラツキが0.2N以下であるものを「優」、0.2から0.4Nであるものを「良」、0.4Nより大きいものを「不良」とし、剥離強度が0.4Nに満たないものについては「未評価」として標記した。結果を表1及び表2の剥離のバラツキの欄に示す。
【0047】
(5)剥離強度の経時安定性
ポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)に対する剥離強度が0.4Nとなるようにヒートシールを行った。温度60℃、相対湿度10%、及び温度60℃、相対湿度95%の環境下に7日間投入し、取り出し後温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定は前記(3)シール性と同条件にて実施した。平均剥離強度が0.4±0.1Nの範囲にあるものを「優」とし、0.4±0.2Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」とし、剥離強度が0.4Nに満たないものについては「未評価」として標記した。結果を表1及び表2の剥離強度の経時安定性の欄に示す。
【0048】
(6)摩擦帯電評価
雰囲気温度23℃、雰囲気湿度50%R.H.の環境下において、8mm幅の導電ポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)に幅1.0mm×長0.6mm×深0.5mmの封止材がガラスエポキシ化合物からなる電子部品を10個装填した後、カバーフィルムをヒートシールした。カバーフィルム側を下にして600rpmで5分間(3000回)振動させた後、カバーフィルムを剥離し、電圧計(MONROE ELECTRONICS ISOPROBE ELECTROSTATIC VOLTMETER MODEL 279)を用いて、電子部品表面の帯電圧を測定した。本結果は0Vに近い値であるほど帯電が少ないことを意味する。結果を表1及び表2の摩擦帯電評価の欄に示す。
【0049】
【表1】
【表2】
【0050】
表1及び表2に示した結果から分かるように、本発明の実施例1〜8に係るカバーフィルムは、曇価、表面抵抗率、シール性、剥離強度のバラツキ、剥離強度の経時安定性の全ての評価項目につき、優れた結果を示したが、本発明の構成を満たさない比較例1〜7に係るカバーフィルムは評価項目の少なくとも何れか一について、満足すべき結果を示さなかった。すなわち、所定の中間層や接着層を形成していない比較例1〜2に係るカバーフィルムは、所定の無機系帯電防止剤を用いても、シール性、剥離強度のバラツキが不良で、剥離強度の経時安定性を調べるに至らなかった。一方、無機系帯電防止剤の代わりに他の種類の帯電防止剤を使用した比較例3〜6やケイ酸塩化合物ではない無機系の帯電防止剤を使用した比較例7では、上記評価項目の何れかが満足できる結果とはならなかった。