特許第6322038号(P6322038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322038
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20180423BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   F02B39/00 D
   F02B39/00 U
   F02B39/00 T
   F02B37/00 301G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-84639(P2014-84639)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203401(P2015-203401A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】横嶋 悟
(72)【発明者】
【氏名】飯島 徹
(72)【発明者】
【氏名】一柳 洋平
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−004871(JP,A)
【文献】 実開昭56−165922(JP,U)
【文献】 特開2011−236906(JP,A)
【文献】 特開2010−285989(JP,A)
【文献】 特開2012−211544(JP,A)
【文献】 特開2007−278130(JP,A)
【文献】 特開2002−364373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流路(27)と、前記排気流路(27)内に配置されるタービン(3)と、前記タービン(3)を回転自在に支持するタービンハウジング(2)とを備えるターボチャージャ(1)であって、
記排気流路(27)を形成する内筒(5,5A,5B)と、
前記内筒(5,5A,5B)の排気出口側の端部(31)が摺動自在に接続される排気管(15)と、
前記内筒(5,5A,5B)に対して間隔を空け覆うように設けられる外筒(7,7B)とを備え
前記排気管(15)と前記内筒(5,5A,5B)の前記端部(31)との摺動箇所は、全周に亘って空間を空けて前記外筒(7,7B)に覆われていることを特徴とするターボチャージャ(1)。
【請求項2】
請求項1記載のターボチャージャ(1)であって、
前記内筒(5,5A,5B)の前記端部(31)は、前記タービン(3)よりも排気出口側で前記排気管(15)と接続されることを特徴とするターボチャージャ(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のターボチャージャ(1)であって、
前記内筒(5,5A,5B)は、部(31)連続して設けられる折曲部(29)備え、
前記排気管(15)の先端部(33)と前記折曲部(29)との間には、隙間が設けられていることを特徴とするターボチャージャ(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のターボチャージャ(1)であって、
前記内筒(5A,5B)は、互いに突き合わせて溶接された複数の薄板部材を有することを特徴とするターボチャージャ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より内燃機関からの排気の流れを利用し、内燃機関への吸気を増加させるターボチャージャは種々提案されている。
【0003】
例えば、図4に示すツインターボ100は、内燃機関からの排気によって回転するタービンを有するターボチャージャ101と、ターボチャージャ101の下流側に配置されて排気が流入する排気集合管102と、ターボチャージャ101内のタービンが回転することによって外部からの吸気を取り入れるコンプレッサ103と、ターボチャージャ101と排気集合管102との間に配置される蛇腹管104とを備えている。
【0004】
ターボチャージャ101には、内燃機関から高温の排気が流入するため、ターボチャージャ101が熱膨張によって変位するが、下流側に配置される蛇腹管104によって、ターボチャージャ101の熱膨張による変位を許容している。
【0005】
図4に示すツインターボ100では、図示しない内燃機関からの排気がターボチャージャ101に流入することによって、ターボチャージャ101内に配置されたタービンが回転し、この回転をシャフトを介してコンプレッサ103内に配置されるタービンを回転させて吸気を取り入れることによって内燃機関へ吸気を送っている。
【0006】
また、ターボチャージャ101に流入した排気は、蛇腹管104を介して排気集合管102へ流入し、図示しない排気管へ排気が流れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−364373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ターボチャージャ101の下流側に配置される蛇腹管104は、内燃機関からの高温の排気に耐えることのできる高性能な部材を用いらなければならないため、製造コストが非常に高くなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明では、ターボチャージャ101が熱膨張による変位を許容することができるとともに、低コストのターボチャージャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明では、排気流路27と、前記排気流路27内に配置されるタービン3と、前記タービン3を回転自在に支持するタービンハウジング2とを備えるターボチャージャ1であって、記排気流路27を形成する内筒5,5A,5Bと、前記内筒5,5A,5Bの排気出口側の端部31が摺動自在に接続される排気管15と、前記内筒5,5A,5Bに対して間隔を空け覆うように設けられる外筒7,7Bとを備え前記排気管15と前記内筒5,5A,5Bの前記端部31との摺動箇所は、全周に亘って空間を空けて前記外筒7,7Bに覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内筒5,5A,5Bの摺動部31に排気管15が摺動自在に挿入されているため、排気の熱により内筒5,5A,5Bが熱膨張した場合であっても、摺動部31が排気管15と摺動することによって、内筒5,5A,5Bの熱膨張による変位を許容することができる。
【0013】
さらに、内筒5,5A,5Bを覆うようにして外筒7,7Bが形成されているため、内筒5,5A,5Bと排気管15との隙間から排気が漏れた場合であっても、外筒7,7Bが設けられているため、外筒7,7Bの外に排気が漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態を示すターボチャージャ(タービンハウジング)の拡大断面図である。
図2】第2実施形態を示すターボチャージャ(タービンハウジング)の拡大断面図である。
図3】第3実施形態を示すターボチャージャ(タービンハウジング)の拡大断面図である。
図4】(a)ターボチャージャを備える従来のツインターボの全体図である。(b)(a)に示すツインターボの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図1〜3を用いて詳細に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1を用いて本実施形態のターボチャージャ1について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のターボチャージャ1は、図示しないセンタハウジングと、タービンハウジング2と、図示しないコンプレッサハウジングとを備えている。
【0018】
センタハウジングの一端側には、図示しないコンプレッサハウジングが固定され、他端側には、タービンハウジング2が固定されている。
【0019】
図1に示すように、タービンハウジング2は、複数の薄板部材によって排気流路27が形成される内筒5と、内筒5と所定間隔を空けて内筒5を覆うように設けられる外筒7と、内筒5が固定される内筒固定部11と、外筒7が固定される外筒固定部13と、排気流路27内に配置されるタービン3と、タービン3を支持するベアリング9を備えている。
【0020】
タービン3は、タービンハウジング2に回転自在支持されるシャフト17と、シャフト17の一端側に固定される羽根部19とを備えている。
【0021】
内筒5は、第1内筒分割体21と第2内筒分割体23とが接合することによって形成されている。
【0022】
第1内筒分割体21は、タービンハウジング2の内筒固定部11に固定される一端側21aと、第2内筒分割体23に接合される他端側21bとを備えている。
【0023】
第2内筒分割体23は、第1内筒分割体21の他端側21bに接合される一端側23aと、排気管15へ挿入される他端側23bとを備え、一端側23aと他端側23bの間には、摺動部31と折曲部29が設けられている。
【0024】
摺動部31は、第2内筒分割体23の他端側23bから直線形状に形成されている。また、摺動部31のタービンハウジング2側には折曲部29が設けられ、摺動部31から湾曲するように折曲部29が形成されている。
【0025】
また、第1内筒分割体21の他端側21bと第2内筒分割体23の一端側23aを接合することにより、内筒5の内側にスクロール室25と排気流路27とが形成される。
【0026】
図示しない内燃機関から排気が流入するスクロール室25は、上流側の断面積が広く、下流側へ向かうにつれて断面積が小さくなるように形成されており、排気流路27と連通している。
【0027】
排気流路27は、スクロール室25の下流側に設けられており、タービン3の羽根部19が配置され、排気流路27の下流側には、排気管15が配置されている。
【0028】
排気管15は、先端部33が第2内筒分割体23の他端側23bに形成される摺動部31に摺動可能に挿入されており、先端部33と第2内筒分割体23の折曲部29との間には所定の隙間Sが設けられるように挿入されている。
【0029】
なお、第2内筒分割体23は、第1内筒分割体21より大きく曲がっているため、排気熱により常にタービン3の羽根部19と反対方向へ弾性復帰しようとする力が作用する。また、排気管15と第2内筒分割体23が摺動する際、第2内筒分割体23はタービン3の羽根部19と反対方向に摺動する傾向があるため、内筒5を形成する内筒分割体21,23と羽根部19との接触を防止することができる。
【0030】
外筒7は、一端側をタービンハウジング2の外筒固定部13に固定され、他端側を図示しない下流側の排気管等に固定され、内筒5と所定の間隔を空けて内筒5を覆うように設けられている。
【0031】
次に、ターボチャージャ1の組付け方法について説明する。
【0032】
まず、図示しないセンタハウジングの一端側に図示しないコンプレッサハウジングを固定し、センタハウジングの他端側にタービンハウジング2を固定する。
【0033】
タービンハウジング2にシャフト17と羽根部19を一体に組付けたタービン3を、ベアリング9が配置されたタービンハウジング2に挿入する。
【0034】
次に、タービンハウジング2の内筒固定部11に内筒5の第1内筒分割体21の一端側21aを接合する。(内筒固定工程)そして、第1内筒分割体21の他端側21bに第2内筒分割体23の一端側23aを接合し、内筒5を形成する。
【0035】
次に、排気管15を第2内筒分割体23の他端側23bから挿入し、第2内筒分割体23に設けられた折曲部29と排気管15の先端部33との間に隙間Sを空けた状態となるように摺動自在に挿入する。(排気管挿入工程)
【0036】
そして、内筒5を覆うように所定間隔を空けて外筒7を配置し、外筒7の一端側を外筒固定部13に固定する。(外筒固定工程)
【0037】
以上の工程により、ターボチャージャ1の組付けが完了する。
【0038】
次に、ターボチャージャ1の動作について説明する。
【0039】
図示しない内燃機関から排気がスクロール室25へ流入し、スクロール室25の上流側から下流側へ排気が流れる際に、タービン3の羽根部19を回転させる。
【0040】
タービン3の羽根部19が回転することによって、羽根部19に固定されたシャフト17が回転し、図示しない他端側に配置されるコンプレッサハウジング内に配置されるタービン3を回転させている。
【0041】
タービン3を回転させた排気は、排気流路27を通り、排気管15へと排気が流れる。
【0042】
内燃機関からスクロール室25及び排気流路27へ排気が流入することによって、スクロール室25及び排気流路27を形成する内筒5が熱膨張によって変位するが、内筒5の他端側23bの摺動部31に摺動可能に下流側の排気管15が挿入されているため、摺動部31が排気管15の内周と摺動することによって内筒5の変位を許容している。
【0043】
本実施形態によれば、第2内筒分割体23の摺動部31に排気管15が挿入されているため、排気の熱により内筒5が熱膨張した場合であっても、摺動部31が排気管15と摺動することによって、内筒5の熱膨張による変位を許容することができる。
【0044】
また、本実施形態では、排気管15の先端部33と第2内筒分割体23の折曲部29との間には、所定の隙間Sが設けられているため、内筒5が熱膨張により変位した場合であっても、隙間Sが設けられているため、内筒5の熱膨張による変位を許容することができる。
【0045】
さらに、内筒5に排気管15を挿入しているため、接合を行わないため、製造工程を容易にすることができる。
【0046】
加えて、内筒5を覆うようにして外筒7が形成されているため、内筒5と排気管15との隙間から排気が漏れた場合であっても、外筒7が設けられているため、内筒5と外筒7との間に排気が充填されるので、外筒7の外に排気が漏れることを防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態において、内筒5は、第1内筒分割体21と第2内筒分割体23とから構成されていることについて説明したが、単一の部材によって内筒5を形成してもよい。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、図2を用いて本実施形態のターボチャージャ1について説明する。なお、上記した第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0049】
図2に示すように、本実施形態のターボチャージャ1では、第1内筒分割体21Aの他端側21bと第2内筒分割体23Aの一端側23aにそれぞれ突き合わせ部22A,24Aが立設するようにして設けられている。なお、第1内筒分割体21Aの他端側21b及び第2内筒分割体23Aの一端側23aは、上記した第1実施形態と同様の構成である。
【0050】
第1内筒分割体21Aに形成される突き合わせ部22Aと第2内筒分割体23Aに形成される突き合わせ部24Aとを当接し、突き合わせ部22Aの端部と,突き合わせ部24Aの端部を接合することにより内筒5Aが密閉され、内部に排気流路27とスクロール室25が形成されている。
【0051】
また、各突き合わせ部22A,24Aの端部は、外筒7の内壁に接合している。
本実施形態によれば、上記した第1実施形態の効果に加えて、突き合わせ部22A,24Aの端部が接合され、さらに外筒7の内壁と接合されるため、内筒5Aの剛性を高めることができ、内筒5Aの熱膨張による変位を摺動部31にて確実に許容することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、突き合わせ部22A,24Aの端部を接合し、さらに突き合わせ部22A,24Aの端部と外筒7とを接合しているが、突き合わせ部22A,24Aの端部及び外筒7の内壁をまとめて接合してももちろんよい。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、図3を用いて本実施形態のターボチャージャ1について説明する。なお、上述した第1,2実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、外筒7Bに内筒挿通部8Bが設けられている。
【0055】
内筒挿通部8Bは、内筒5Bを形成する第1内筒分割体21Bと第2内筒分割体23Bにそれぞれ形成される突き合わせ部22B,24Bの端部が突出するように設けられており、内筒挿通部8Bから突出した突き合わせ部22B,24Bと外筒7Bの外壁とが接合される。
【0056】
なお、内筒挿通部8Bは、外筒7Bの周方向に設けられており、突き合わせ部22B,24Bを突き合わせた厚みと同じ孔であるか、それ以上であることが好ましい。
【0057】
本実施形態によれば、上述した第1,2実施形態の効果に加えて、突き合わせ部22B,24Bの端部が外筒7Bの内筒挿通部8Bから突出するため、突き合わせ部22B,24Bの位置決めを容易に行うことができる。
【0058】
なお、本実施形態において説明した突き合わせ部22B,24Bの端部は、周方向の複数箇所で突出してもよく、突き合わせ部22B,24Bが設けられた箇所の外筒7Bに内筒挿通部8Bを設ければよい。
【0059】
なお、本実施形態及び上述した第1,2実施形態では、内筒の一端側をタービンハウジングに固定し、内筒の他端側に形成される摺動部に排気管を摺動可能に挿入したことについて説明したが、コンプレッサハウジングに適用してもよい。
【0060】
また、第1〜3実施形態において、内筒の外周に排気管が挿入されることについて説明したが、内筒の内周に排気管を挿入してももちろんよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 タービン
5,5A,5B 内筒
7,7B 外筒
15 排気管
21a 一端側
23b 他端側
27 排気流路
図1
図2
図3
図4