特許第6322040号(P6322040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322040
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】透水性付与剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/295 20060101AFI20180423BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180423BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20180423BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20180423BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   D06M13/295
   C09K3/00 R
   D06M15/53
   D06M13/224
   A61F13/511 200
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-90852(P2014-90852)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-231666(P2014-231666A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-95603(P2013-95603)
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関藤 正剛
(72)【発明者】
【氏名】若原 義幸
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−526187(JP,A)
【文献】 特開昭49−027692(JP,A)
【文献】 特開昭55−163044(JP,A)
【文献】 特開昭56−058001(JP,A)
【文献】 独国特許発明第03309530(DE,C2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0230736(US,A1)
【文献】 特開2013−075127(JP,A)
【文献】 特開2004−324025(JP,A)
【文献】 特開2007−107131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 − 15/715
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化合物(A)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(B)を含有する透水性付与剤であって、(A)が、椰子油、パーム油、落花生油、オリーブ油、ひまし油、菜種油、糠油、ヒマワリ油、牛脂及び鯨油からなる群から選択される1種以上の動植物油(A1)とグリセリンとのエステル交換反応物であり、(A)のエステル化度が33%〜67%であり、前記アルキルホスフェート塩(B)がポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩を含有する透水性付与剤。
【化1】
[式中、R1は炭素数6〜24のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、mは0〜15の整数であり、rは1又は2の整数であり、Mは、水素又はアルカリ金属である。]
【請求項2】
エステル化合物(A)の含有率が透水性付与剤の重量に基づいて、10〜70重量%である請求項1に記載の透水性付与剤。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤(C)を含有する請求項1又は2に記載の透水性付与剤。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤(C)が1価アルコール型非イオン界面活性剤及び/又は多価アルコール型非イオン界面活性剤である請求項に記載の透水性付与剤。
【請求項5】
エステル化合物(A)の含有率が透水性付与剤の重量に基づいて、10〜70重量%、アルキルホスフェート塩(B)の含有率が10〜50重量%、非イオン性界面活性剤(C)の含有率が20〜70重量%である請求項又はに記載の透水性付与剤。
【請求項6】
繊維用である請求項1〜のいずれかに記載の透水性付与剤。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の透水性付与剤が疎水性繊維の重量に基づいて、0.05〜5重量%付着されてなる透水性繊維。
【請求項8】
請求項に記載の透水性繊維を用いた不織布。
【請求項9】
請求項に記載の不織布からなる表面材を用いた吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙おむつや生理用品等の吸収性物品のトップシートに用いられる疎水性繊維に好適な透水性付与剤に関するものである。さらに詳しくは、トップシートを通して尿や体液などの水性液体の吸収特性や繰り返し透水性を改善し、一度吸収された尿や体液などが、再びトップシートから逆流して着用者に付着すること、即ち、液戻り性を改善した透水性付与剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや生理用品等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に、綿状パルプ、高吸収性高分子物質等からなる吸収体を配置した構成になっている。尿や体液はトップシートを通って吸収体に吸収される。この時、不快感を回避するために、尿や体液が完全に吸収されるまでの時間が極めて短いこと、吸収体から表面への尿や体液の液戻りが少ないことが必要である。更に僅か1回から2回の尿や体液の吸収によってトップシート上の処理剤が流出して透水性が急激に低下するのは、紙おむつや生理用品の取り替え回数が増すことになって好ましくないので、耐久性のある透水材が要求されている。
【0003】
たとえば、特許文献1ではアルキルリン酸エステル塩とポリエーテル変性シリコーンを併用する方法が提案されており、特許文献2ではデンプン及び/又はセルロース誘導体と水溶性エチレン性不飽和単量体との混合物を使用する方法が開示されている。
【0004】
紙おむつや生理用品等、繰り返し体液を吸収させる吸収体の性能向上の要望が強くなり、さらに吸収回数を増やす要望が出てきたため、これらの透水性付与剤を用いた繊維からなるトップシートでは初期透水性、繰り返し透水性、液戻り防止性が十分でないという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−82961号公報
【特許文献2】特開2002−88651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、紙おむつや生理用品等、繰り返し体液を吸収させる吸収体の性能向上の要望が強くなり、さらに吸収回数を増やす要望が出てきたため、特許文献1,2の透水性付与剤を用いた繊維からなるトップシートでは透水性、繰り返し透水性、液戻り防止性が十分でない。
本発明は、繰り返し体液等の水性液体を透過させても、水性液体の吸収がスムーズで吸収の低下が少なく、一度吸収された尿や体液などが、再びトップシートから逆流して着用者に付着することのない吸水性物品のトップシートを得ることができる、疎水性繊維用透水性付与剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すような発明に到達した。すなわち本発明は、エステル化合物(A)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(B)を含有する透水性付与剤であって、椰子油、パーム油、落花生油、オリーブ油、ひまし油、菜種油、糠油、ヒマワリ油、牛脂及び鯨油からなる群から選択される1種以上の動植物油(A1)とグリセリンとのエステル交換反応物であり、(A)のエステル化度が33%〜67%である透水性付与剤であり、前記アルキルホスフェート塩(B)がポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩を含有する。
【化1】
[式中、R1は炭素数6〜24のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、mは0〜15の整数であり、rは1又は2の整数であり、Mは、水素又はアルカリ金属である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の透水性付与剤中に含まれるエステル化合物(A)が付着された透水性繊維を使用した不織布は、初期透水性に優れていると同時に、繰り返し透水回数が従来の付与剤を用いた場合に比べて飛躍的に向上する。このため、紙おむつ、生理用ナプキンといった衛生材料の表面材としてとくに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の透水性付与剤は、繰り返し透水性向上の観点から椰子油、パーム油、落花生油、オリーブ油、ひまし油、菜種油、糠油、ヒマワリ油、牛脂及び鯨油から選択される1種以上の動植物油(A1)とグリセリンとのエステル交換反応物からなり、エステル化度が33%〜67%であるエステル化合物(A)を含有する。
【0010】
動植物油(A1)の具体例として、椰子油、パーム油、落花生油、オリーブ油、ひまし油、菜種油、糠油、ヒマワリ油、牛脂及び鯨油などから選択される天然油脂が挙げられる。 これらのうち水への繰り返し透水性と液戻り防止性との両立の観点から、菜種油及びパーム油が好ましい。
【0011】
本発明における椰子油、パーム油、落花生油、オリーブ油、ひまし油、菜種油、糠油、ヒマワリ油、牛脂及び鯨油からなる群から選択される1種以上の動植物油(A1)とグリセリンとのエステル交換反応物からなる脂肪酸部分エステル化合物(A)は、公知の方法等で製造でき、例えば、上記(A1)とグリセリンを炭酸カリウム若しくは炭酸ナトリウムなどを塩基性触媒としたエステル交換反応により製造できる。
本発明におけるエステル化合物(A)のエステル化度は33%〜67%であり、初期透水性と繰り返し透水性の両立の観点から好ましくは45%〜55%である。
エステル化度が33%未満であると親水性が強くなり、繰り返し透水性及び液戻り性が低下する。
本発明におけるエステル化度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法から求めたモノ、ジ、トリエステル体の積分面積をもとに下記数式(1)から算出する。
【0012】
GPCの条件は以下のとおりである。
装置:HLC−8220GPC [東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH−L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム: TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0013】
【数1】
【0014】
本発明の透水性付与剤中のエステル化合物(A)の含有率は透水性付与剤の重量に基づいて、繰り返し透水性の観点から、好ましくは15〜75重量%、更に好ましくは25〜65重量%、特に好ましくは35〜60重量%である。
【0015】
本発明の透水性付与剤は、一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(B)をさらに含有することが初期透水性及び繰り返し透水性の観点から好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
式中、R1は炭素数6〜24のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、mは0〜15の整数であり、rは1又は2の整数であり、Mは、水素又はアルカリ金属である。
【0018】
一般式(1)におけるR1は、好ましくは炭素数6〜24のアルキル基であり、より好ましくは炭素数が8〜20であり、特に好ましくは8〜18である。なお、アルキル基の炭素数は分布があっても良く、2種類以上のアルキルホスフェート塩の混合物でも良い。
【0019】
また、一般式(1)におけるAOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。これらのうち好ましいものはエチレンオキシ基である。
Mは水素又はアルカリ金属(ナトリウム、カリウム及びリチウム等)を表す。そして、mはアルキレンオキサイドの付加モル数を意味し、好ましくはmが0〜15の整数であり、より好ましくはmが0〜8であり、特に好ましくはmが0〜5である。rはアルキルホスフェート塩(B)が有するMの数を表し、1又は2の整数である。
【0020】
アルキルホスフェート塩(B)としては、rが1又は2であるアルキルホスフェート塩の混合物として得られ、具体的には、オクチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、2−エチルヘキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、デシルアルコールのリン酸エステルナトリウム塩、イソデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、ドデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、トリデシルアルコールのリン酸エステルナトリウム塩、イソトリデシルアルコールのリン酸エステルナトリウム塩、テトラデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、ヘキサデシルアルコールのリン酸エステルナトリウム塩、オクタデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、オクチルアルコールのエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)2モル付加物リン酸エステルカリウム塩、オクチルアルコールのエチレンオキサイド(以下、POと略記する)2モル付加物リン酸エステルカリウム塩、ドデシルアルコールのEO3モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、トリデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、イソトリデシルアルコールのEO3モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、オクタデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、等が挙げられ、初期透水性の観点から好ましくは、オクチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、デシルアルコールのリン酸エステルナトリウム塩、イソデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、オクチルアルコールのEO2モル付加物リン酸エステルカリウム塩、ドデシルアルコールのEO3モル付加物のリン酸エステルナトリウム塩であり、繰り返し透水性の観点から、オクタデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩が好ましい。
【0021】
本発明の透水性付与剤において、初期透水性の観点から炭素数が6〜24のアルキル基を有するアルキルホスフェート塩(B)の含有率は透水性付与剤の重量に基づいて、好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは25〜35重量%である。
【0022】
本発明の透水性付与剤は、非イオン界面活性剤(C)を含有していても良い。
本発明の透水性付与剤に添加する非イオン界面活性剤(C)としては、初期透水性向上の観点から1価のアルコール型非イオン界面活性剤等が挙げられ、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C1)等である。また、乳化性及び通液速度向上の観点から多価アルコール型非イオン界面活性剤等を含んでいても良い。例えば、多価アルコールとポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル(C2)等である。さらに、乳化性及び液戻り防止性向上の観点からポリオキシアルキレン付加物を含んでいても良い。例えば、ポリオキシエチレンジエステル(C3)等である。
(C)は単独でも二種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の透水性付与剤において、1価アルコールアルキレンオキサイド付加物とは、1価アルコールにアルキレンオキサイドが付加したものである。例えば、1価アルコールのアルキル基の炭素数は1〜18であり、炭素数は4〜16が好ましく、6〜14が更に好ましく、8〜12が特に好ましい。アルキル基の炭素数が18を越えると初期透水性が低下する。なお、アルキル基の炭素数は分布があっても良く、2種類以上の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物の混合でも良い。アルキレンオキサイドとしてはEO、POがブロック重合又はランダム重合したものが挙げられる。これらのうち好ましいのはEOである。また、アルキレンオキサイドの付加モル数は好ましくは1〜20の整数であり、更に好ましくは2〜15であり、特に好ましくは3〜10である。
【0024】
本発明の透水性付与剤に添加する非イオン界面活性剤において、多価アルコールとポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル(C2)としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C2−1)、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(C2−2)、ポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル(C2−3)である。
【0025】
(C2−1)を構成する多価アルコールの具体例として、炭素数3〜6の脂肪族多価(3〜6価)アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン等)等が挙げられる。
(C2−1)を構成する脂肪酸の具体例として、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)]が挙げられる。
(C2−1)を構成するポリオキシアルキレン付加物の具体例として、炭素数2〜12のオキシアルキレン基(以下、AOと略記)(エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)及びブチレンオキサイド等)が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
(C2−1)の具体例として、グリセリン牛脂脂肪酸エステルのEO15モル付加物、トリメチロールプロパントリオレイン酸エステルのEO20モル付加物、ペンタエリスリトールのテトラオレイン酸エステルのEO30モル付加物及びソルビタンテトラオレイン酸エステルのEO20モル付加物、硬化ヒマシ油のEO10モル付加物、硬化ヒマシ油のEO25モル付加物及びヒマシ油のEO43モル付加物、グリセリンとひまし油脂肪酸とのエステルのEO25モル付加物、硬化ヒマシ油EO20モル付加物のオレイン酸エステルヒマシ油EO25モル付加物の牛脂脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)及び硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とセバシン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;7000)等が挙げられる。
これらのうち乳化性の観点から、トリメチロールプロパントリオレイン酸エステルのEO20モル付加物、硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)が好ましい。また、乳化性及び繰り返し透水性向上の観点から、ひまし油のEO43モル付加物が好ましい。
【0026】
(C2−2)を構成する多価アルコールの具体例として、炭素数3〜6の脂肪族多価(3〜6価)アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン等)等が挙げられる。
(C2−2)を構成するポリオキシアルキレン付加物の具体例として、炭素数2〜12のAO基(EO、PO、ブチレンオキサイド等)が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
(C2−2)を構成する脂肪酸の具体例として、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)が挙げられる。
(C2−2)の具体例として、ヒマシ油EO43モル付加物のステアリン酸エステル、硬化ヒマシ油EO20モル付加物のオレイン酸エステルヒマシ油EO25モル付加物の牛脂脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)及び硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とセバシン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;7000)等が挙げられる。
これらのうち通液性および繰り返し透水性向上の観点から、硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)が好ましい。
【0027】
(C2−3)を構成するポリオキシアルキレン付加物の具体例として、炭素数2〜12のオキシアルキレン基(以下、AOと略記)、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)及びブチレンオキサイド等が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
(C2−3)を構成する脂肪酸の具体例として、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)、動植物油 [(ヤシ油、パーム油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、牛脂、硬化牛脂及び豚脂等)] 脂肪酸が挙げられる。
これらのうち乳化性及び液戻り防止性向上の観点から、ポリオキシエチレン(数平均分子量;400)ジオレートが好ましい。
【0028】
(C2)を二種以上併用する場合には、好ましくは(C2−1)からなる群からなる2種以上であり、さらに好ましいものは、硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物トリオレート及び硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)の併用である。
【0029】
非イオン界面活性剤(C)の含有率は、初期透水性及び乳化性及び液戻り防止性向上の観点から透水性付与剤の重量に基づいて、好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%、特に好ましくは40〜50重量%である。
【0030】
本発明の透水性付与剤は、必要に応じて添加剤(D)を含有してもよい。
添加剤(D)としては、ワックス等の潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤及び香料などが挙げられる。
本発明の透水性付与剤中の(D)の含量は、透水性付与剤の重量に基づいて、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0031】
エステル化合物(A)とアルキルホスフェート塩(B)と非イオン界面活性剤(C)の重量比[(A)/(B)/(C)]は、繰り返し透水性及び通液速度向上の観点から、(A)及び(B)及び(C)の合計重量を100とした場合、好ましくは10〜70/10〜50/20〜70、更に好ましくは30〜50/20〜40/20〜30である。
【0032】
本発明の透水性付与剤は、(A)、必要により水、(B)、(C)の各成分を配合し、常温又は必要により加熱(例えば30〜70℃)して均一に混合することにより得られる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0033】
本発明の透水性付与剤は、通常、水系エマルションとして、疎水性繊維に付与される。
水系エマルションは、透水性付与剤に20〜40℃の水を投入して希釈するか、20〜40℃の水の中に透水性付与剤を加えて乳化し、作成するのが好ましい。
【0034】
水系エマルションの濃度は、任意の濃度の選択が可能であるが、好ましくは0.05〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0035】
本発明の透水性付与剤は、繊維の用途に使用しても良い。
前記繊維としては、不織布製品特に紙おむつ、合成ナプキン等のトップシートに用いられる不織布製品が好ましい。
【0036】
疎水性繊維に透水性付与剤を付着させる方法には特に制限はなく、紡糸、延伸などの任意の工程で、オイリングロール法、浸漬法、噴霧法などの通常用いられる方法を利用することができる。
透水性付与剤の付着量は、繊維重量に基づいて、固形分として好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは、0.1〜2重量%である。
本発明の透水性付与剤を付着させることで、疎水性繊維に耐久的な透水性を付与し、本発明の透水性繊維とすることができる。
【0037】
本発明の透水性繊維の素材に用いられる疎水性繊維とは、温度25℃、相対湿度65%で吸水率が1重量%以下である繊維を意味する。
疎水性繊維としては特に限定されず、通常用いられる疎水性の合成繊維を用いることができ、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが挙げられる。
また、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、及びポリエーテルポリエステルなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、6,6−ナイロン、及び6−ナイロンなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン及びポリエステルは、おむつ用吸水素材として好ましく用いられる。
【0038】
本発明の透水性付与剤が付与されてなる透水性繊維を用いた繊維形態は、布状の形状のものが好ましく、織物、編物、不織布などが挙げられる。また、混綿、混紡、混繊、交編、交織などの方法で混合した繊維を布状として使用してもよい。これらの中では、特に不織布が好ましい。
【0039】
不織布に適用する場合、本発明の透水性付与剤を処理した短繊維を、乾式又は湿式法で繊維積層体とした後、加熱ロールで圧着したり、空気加熱で融着したり、高圧水流で繊維を交絡させ不織布としてもよいし、スパンボンド法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法などによって得られた不織布に、本発明の透水性付与剤を付着させてもよい。
【0040】
本発明の透水性繊維、及びそれを用いた不織布は、吸水性物品の表面材、とくに紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料の表面材として好適に用いられる。
また、セカンドシート、吸水体、工業用又は医療用のワイパー、吸収パッド、及び透水シートなどに利用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例1及び7は参考例である。

【0042】
製造例1<脂肪酸部分エステル化合物(A−1)の製造>
撹拌器及び温度計を備えた反応容器に、菜種油100重量部及びグリセリン10重量部を仕込み、触媒として炭酸カリウム1重量部を加え、窒素置換する。200℃まで昇温し、1時間反応させることで、脂肪酸部分エステル化合物(A−1)(エステル化度:50%)を得た。
製造例2<脂肪酸部分エステル化合物(A−2)の製造>
撹拌器及び温度計を備えた反応容器に、牛脂75重量部及びグリセリン10重量部を仕込み、触媒として炭酸カリウム1重量部を加え、窒素置換する。200℃まで昇温し、1時間反応させることで、脂肪酸部分エステル化合物(A−2)(エステル化度:40%)を得た。
【0043】
<実施例1〜11及び比較例1〜8>
表1に記載した重量部の各成分を、40℃で30分間撹拌して透水性付与剤(実施例1〜11、比較例1〜8)を作製した。
【0044】
得られた実施例1〜11及び比較例1〜8の透水性付与剤をそれぞれ25℃の温水で不揮発成分が0.5重量%となるように希釈して透水性付与剤希釈液を得た。目付20g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布に、透水性付与剤希釈液を0.5%給油した。給油は、給油浴の透水性付与剤希釈液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、その後、循風乾燥機で80℃、30分間乾燥し、室温で8時間以上放置して乾燥させ、透水性不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で性能(透水性不織布に付着する透水性付与剤の付着率、不織布への初期透水性、繰り返し透水性、通液性及び液戻り防止性)をそれぞれ評価し、結果を表1に示した。
【0045】
表1中の略称は以下のとおりである。
(A−1):菜種油とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物(エステル化度:50%)
(A−2):牛脂とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物(エステル化度:40%)
(A’−1):菜種油
(A’−2):グリセリン
(A’−3):ジオレイン酸グリセリド
(A’−4):菜種油とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物(エステル化度:20%)
(A’−5):菜種油とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物(エステル化度:30%)
(A’−6):菜種油の加水分解物(エステル化度:50%)
(B−1):オクチルアルコールEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩
(B−2):イソデシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩
(B−3):イソオクタデシルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩
(B−4):ドデシルアルコールEO3モル付加物のリン酸エステルカリウム塩
(B’−1):ブチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩
(C−1):イソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物
(C−2):オクタデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物
(C−3):硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド20モル付加物トリオレート
(C−4):硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物とマレイン酸と
ステアリン酸とのポリエステル(数平均分子量;6000)
(C−5):硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド43モル付加物
(C−6):ポリオキシエチレン(数平均分子量;400)ジオレート
【0046】
〔評価方法〕
(1)透水性不織布に付着する透水性付与剤の付着率
透水性不織布に付着する透水性付与剤の付着率は、25℃×40%RHの温湿度で24時間調湿後、直後の透水性不織布を、メタノール/n−ヘキサンを用いて、迅速残脂抽出装置R−11型(東海計器(株)製)で抽出し、抽出液をアルミ製カップに入れ、約100℃の防爆式のホットプレート上にアルミ製カップを置き、完全に溶剤を留去させ、透水性付与剤重量を求めた。そして下記の式より、透水性付与剤付着率C%を求めた。透水性不織布に対する透水性付与剤の付着率が高いほど透水性不織布への付着性に優れる。
C(%)=W2/W1×100
W1:調湿直後の透水性不織布重量(g)
W2:抽出液中の透水性付与剤重量(g)
【0047】
(2)不織布の初期透水性
不織布を濾紙(東洋濾紙、No.5)の上に重ね、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の生理食塩水を滴下して、不織布表面から水滴が消失するまでの時間を測定する。不織布表面にマーキングペンで点を20箇所うち、この20箇所で測定を行って5秒未満に生理食塩水の消失する個数を表示する。この個数が18個以上であれば初期透水性に優れる。
【0048】
(3)不織布の繰り返し透水性
不織布の初期透水性の試験方法によって、不織布表面にマーキングペンで点を20箇所うち生理食塩水の消失時間を20箇所で測定し、消失時間5秒未満の個数を表示する。試験に供した不織布について、同様の作業を繰り返して行う。この繰り返し試験では回数を重ねても生理食塩水の消失個数(消失時間5秒未満となる箇所の個数)が多い方が繰り返し透水性に優れる。
【0049】
(4)通液性
1回目測定:ろ紙(ADVANTEC製、No.424(10cm×10cm))の上に試験不織布(10cm×10cm)を置き、それに生理食塩水(NaCl溶液)5mlを通液させ、その通過時間を測定する。通液時間が短い程、通液速度が早く、通液性に優れる。
2回目以降測定:上記方法を1分間隔で2回実施し、通液時間を測定する。通液時間が短い程、通液速度が早く、通液性に優れる。
【0050】
(5)液戻り防止性
市販の紙おむつの上に不織布(10cm×10cm)を置き、さらにその上に内径60mmの円筒を置き、生理食塩水100mlを円筒内に注入して不織布を通して紙おむつに吸収させる。生理食塩水が全て紙おむつに吸収されたら円筒を取り除き、予め秤量した濾紙(東洋濾紙、No.5)を20枚重ね、これに5kgの重りを乗せる。5分間放置後、濾紙の重さを計り、重量増加分を測定して液戻り量(g)とする。液戻り量が1.2g以下を許容範囲とし、液戻り量(g)が1.0g以下であれば、液戻り防止性に優れる。
【0051】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11の透水性付与剤は、不織布への初期透水性及び繰り返し透水性が優れ、また液戻り防止性も良好である。
一方、動植物油とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物を有さない比較例1〜2、4の透水性付与剤、並びに、動植物油とグリセリンを併用使用した比較例3の透水性付与剤では乳化性が劣り、不織布への付着性が低下し、不織布への初期透水性及び繰り返し透水性がともに低下する。また、動植物油とグリセリンとの脂肪酸の部分エステル化合物であるが、エステル化度が本願の範囲から外れた比較例5〜6、8の透水性付与剤や動植物油の加水分解物である比較例7の透水性付与剤は、不織布への繰り返し透水性が劣る。
【0052】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の透水性繊維、及びそれを用いた不織布は、吸水性物品の表面材、とくに紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料の表面材として好適に用いられる。
また、セカンドシート、吸水体、工業用又は医療用のワイパー、吸収パッド、及び透水シートなどに利用することもできる。