(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベルトクッションゴムは、巾20〜25mm、厚さ1.0〜1.5mmのゴムストリップを、タイヤ周方向に巻き重ねることにより形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出による地球温暖化が進行しており、自動車の排ガスや二酸化炭素の排出量を削減することが強く求められている。そのため自動車に対する低燃費化の要求がますます強くなってきており、タイヤに関しては、軽量化とともに、その転がり抵抗を可能な限り減少させることが急務である。
【0003】
このような転がり抵抗の低減は、乗用車用タイヤはもとより、トラック、バスなどの重荷重用タイヤにも強く求められており、特に良路を高速走行する大型トラック用のタイヤの転がり抵抗を低減することは重要である。
【0004】
他方、タイヤの転がり抵抗を低減するため、従来採られてきた方策は、トレッドゴムの改良である。しかし、トレッドゴムは、耐摩耗性やグリップ性能に最も影響をおよぼす部材であるため、耐摩耗性やグリップ性能を維持したまま、転がり抵抗の低減化をはかることは、もはや技術的に限界に達しつつある。
【0005】
そこで、転がり抵抗の低減化の対象として、これまで顧みられることのなかった、トレッドゴム以外のタイヤ部材にも、目を向ける必要性が生じてきた。
【0006】
一般に、重荷重用空気入りタイヤには、ベルト層のタイヤ軸方向外端部とカーカスとの間に、ゴムボリュウムが比較的大きい断面三角形状のベルトクッションゴムが配されている。そこで本発明者は、このベルトクッションゴムに、損失正接が小なゴム組成物を用い、タイヤの転がり抵抗を減じることを提案した。
【0007】
しかし、前記ベルト層のタイヤ軸方向外端部は、トレッド部とサイドウォール部とが交わるタイヤショルダーに位置するため、走行時、ベルト層の外端部には大きな歪みが発生する。従って、前記ベルトクッションゴムに損失正接が小なゴム組成物を用いた場合、ベルト層との間及びカーカスとの間の接着性が不足し、前記歪みに起因してベルト層との間及びカーカスとの間に剥離が発生し、タイヤの耐久性を低下させるという新たな問題が発生する。
【0008】
なお下記の特許文献1には、ゴム成分、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤等を、特定比率で配合することにより、補強性と低燃費性とを兼ね備えたゴム組成物が提案されており、又このゴム組成物は、ベルトクッションゴムにも採用しうることが記載されている。しかしこの場合にも低燃費性のさらなる向上には限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ベルトクッションゴムを3層以上の多層構造とすることを基本として、隣接するベルト層及びカーカスとの剥離を抑制しながら、低燃費性をより向上しうる重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部とサイドウォール部とを経てビード部間を延びるカーカス、
このカーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されたベルト層、
及びこのベルト層のタイヤ軸方向外端部と前記カーカスとの間に配されるベルトクッションゴムを含むとともに、
前記ベルトクッションゴムは、前記ベルト層のタイヤ軸方向外端からタイヤ半径方向内方へ順に配される外層、中間層、内層からなる少なくとも3層を有し、
しかもタイヤ子午断面において、
前記外層及び内層の断面最大厚さは、0.3〜1.5mmの範囲であり、
かつ前記中間層の断面積Smは、前記ベルトクッションゴムの断面積S0の50%以上であることを特徴としている。
【0012】
また請求項2では、前記外層の断面最大厚さは、1.0mm以下であることを特徴としている。
【0013】
また請求項3では、前記中間層の断面積Smは、前記ベルトクッションゴムの断面積S0の80%以上であることを特徴としている。
【0014】
また請求項4では、前記ベルトクッションゴムは、巾20〜25mm、厚さ1.0〜1.5mmのゴムストリップを、タイヤ周方向に巻き重ねることにより形成されることを特徴としている。
【0015】
また請求項5では、前記外層と前記内層とは、複素弾性率E
*b及び損失正接tanδbを有するゴム組成物Bからなり、前記中間層は、前記複素弾性率E
*bと略同一の複素弾性率E
*c及び前記損失正接tanδbより小なる損失正接tanδcを有するゴム組成物Cからなることを特徴としている。
【0016】
本願明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、ゴム部材の損失正接tanδ及び複素弾性率E
*の値は、粘弾性スペクトロメーターを用い、温度70℃、周波数10Hz、初期伸張歪10%、動歪の振幅±2%の条件で測定した値である。
【0017】
また、本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の正規内圧状態において特定される値とする。なお前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。又前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は叙上の如く、ベルトクッションゴムを、ベルト層のタイヤ軸方向外端からタイヤ半径方向内方に向かって順に配される外層、中間層、内層を有する複数層で形成している。従って、前記中間層に損失正接が小なゴム組成物を用い、タイヤの転がり抵抗を減じた場合にも、前記外層及び内層によりベルト層及びカーカスとの間の接着性を充分確保することが可能となり、タイヤの耐久性を維持することができる。
【0019】
なお前記多層構造のベルトクッションゴムを押出し機によって押出し成形するには困難性がある。しかし、テープ状のゴムストリップをタイヤ周方向に巻き重ねる所謂ストリップワインド法を用いることにより、前記多層構造のベルトクッションゴムを容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ1は、前記トレッド部2とサイドウォール部3とを経て両側のビード部4、4間をのびるカーカス6、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7、及び該ベルト層7の各タイヤ軸方向外端部と前記カーカス6との間に配されるベルトクッションゴム8を具える。本例では、前記重荷重用空気入りタイヤ1が、大型トラック・バス用ラジアルタイヤとして形成される場合が示される。
【0022】
前記カーカス6は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るトロイド状の本体部6aと、この本体部6aに連なりかつ前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返される折返し部6bとを有する1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。
【0023】
前記カーカスプライ6Aの折返し部6bとしては、ビードエーペックスゴム9のタイヤ軸方向外面に沿ってタイヤ半径方向外方に延びる所謂巻き上げタイプ(
図1に示す。)、及びビードコア5に略1周巻き付ける巻き付けタイプ(図示しない。)などが適宜採用しうる。なお、前記ビードエーペックスゴム9は、ビードコア5のタイヤ半径方向外側に配され、ビード部4からサイドウォール部3下部までテーパ状に延び、この領域を補強しかつその曲げ剛性を高める。
【0024】
前記カーカスプライ6Aは、トッピングゴムでゴム引きされたカーカスコードからなり、カーカスコードはタイヤ赤道Cに対して例えば75〜90度の角度で配列される。カーカスコードとして、スチールコードや、芳香族ポリアミド、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどの有機繊維コードを用いることができる。なおカーカスコードとして有機繊維コードを用いる場合、複数枚のカーカスプライ6Aによりカーカス6が構成されるが、本例の如くスチールコードを用いる場合、1枚のカーカスプライ6Aによりカーカス6を形成することができる。
【0025】
次に、前記ベルト層7は、少なくとも2枚のベルトプライから形成される。本例では、
図1〜3に示されるように、前記ベルト層7が、カーカス側から半径方向外側に向かって順次重なる第1、第2、第3のベルトプライ7A、7B、7Cから形成される場合が示される。本例の第1、第2、第3のベルトプライ7A、7B、7Cは、
図3に示す如く、それぞれタイヤ赤道Cに対して15〜23゜の角度θ1、θ2、θ3で傾斜配列するゴム引きされたベルトコードからなり、ベルトコードとしてスチールコードが採用される。
【0026】
前記第1のベルトプライ7Aのベルトコード11Aは、タイヤ赤道Cに対して、例えば右上がりで角度θ1で傾斜するとともに、第2、第3のベルトプライ7B、7Cの各ベルトコード11B、11Cは、いずれも左上がりで角度θ2、θ3で傾斜しており、第1のベルトプライ7Aのそれとは逆向きをなす。
【0027】
このようにベルト層7は、各ベルトプライ7A〜7Cのコードの角度θ1、θ2、θ3を低アングルとする一方、ベルトコード11Aと、11Bとが互いに交差する強固なトラス構造を構成することで、ベルト剛性を高め、必要なタガ効果(タイヤへの拘束力)を確保している。これにより3枚構造として軽量化を図りながら、操縦安定性の維持が図られる。なお3枚構造において、前記角度θ1、θ2、θ3が15゜未満ではプライの横剛性が低下し、逆に23゜を超えると、タイヤ周方向の剛性が低下し、何れの場合にもタガ効果が減じて操縦安定性の低下を招く。
【0028】
また
図1に示す如く、本例のベルトプライ7A〜7Cのタイヤ軸方向のプライ巾W1〜W3は、W1>W2>W3の関係を充足する。最も幅広となる第1のベルトプライ7Aのプライ巾W1は、トレッド接地幅TWの0.7倍以上、さらには0.8倍以上が好ましく、これによりトレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強する。なおプライ巾W1がトレッド接地幅TWの0.7倍未満の場合には、タイヤショルダ側での拘束力が不足し、操縦安定性や耐偏摩耗性の低下を招く傾向となる。逆にプライ巾W1が大きすぎると、トレッドの更生等が困難になる。このような観点より、前記プライ巾W1の上限は、トレッド接地幅TWの例えば0.97倍以下、さらには0.95倍以下が好ましい。
【0029】
なお前記トレッド接地幅TWは、前記正規内圧状態のタイヤに正規荷重を負荷した時に接地するトレッド接地面のタイヤ軸方向最大巾を意味する。前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" を意味する。
【0030】
また第2のベルトプライ7Bのプライ巾W2は、第1のベルトプライ7Aのプライ巾W1の0.8倍以上、さらには0.9倍以上が好ましい。前記プライ巾W2がプライ巾W1の0.8倍未満であると、同様にタイヤショルダ側での拘束力が不足し、操縦安定性や耐偏摩耗性の低下を招く。逆にプライ巾W2が大きすぎると、その端部が第1のベルトプライ7Aの端部に接近して応力が集中し、プライ端剥離を誘発させる傾向となる。このような観点より、第1のベルトプライ7Aのタイヤ軸方向外端e1と、第2のベルトプライ7Bのタイヤ軸方向外端e2とのタイヤ軸方向距離Kを5mm以上確保するのが好ましい。なお第3のベルトプライ7Cのプライ巾W3は、タイヤ強度の観点から、第2のベルトプライ7Bのプライ巾W2の0.4倍以上、さらには0.5倍以上が好ましい。
【0031】
又
図2に示すように、前記第1、第2のベルトプライ7A、7Bのタイヤ軸方向外端部には、コ字状に折り返されて各外端e1、e2を被覆保護する薄いゴムからなるエッジカバー12、13が配される。これにより、第2のベルトプライ7Bのタイヤ軸方向外端部には、第1のベルトプライ7Aから徐々に離間するように傾斜する傾斜変形部が形成される。このエッジカバー12、13は、ゴム組成物Aのシートからなる。
【0032】
前記ゴム組成物Aは、フィラー(カーボンブラック)を比較的高い比率で含み、またスチールコードであるベルトコードの端部との接着性を向上させるため、ゴム成分は天然ゴムまたはイソプレンゴムを主体としさらにコバルトを含有するのが好ましい。これにより、エッジカバー12、13は、スチールコード端を覆い、隣接するゴム層との間で生じる応力を緩和しかつ接着力を高めうる。なおコバルトは、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜5.0質量部含めるのが好ましい。
【0033】
又前記カーカス6が円弧状に湾曲してのびるのに対して、前記第1のベルトプライ7Aは、その全幅に亘って、トレッドプロファイルと実質的に平行にのびる。従って、第1のベルトプライ7Aは、その外端側が、タイヤ軸方向外側に行くに従いカーカス6から徐々に離間するとともに、この離間スペースに前記ベルトクッションゴム8が配される。
【0034】
前記ベルトクッションゴム8は、前記ベルト層7の外端(本例では前記外端e1に相当する。)の位置で最大厚さを有し、この最大厚さ位置からタイヤ軸方向内外に向かって、厚さを漸減させた断面三角形状をなす。即ち、ベルトクッションゴム8は、カーカス6の半径方向外面に沿う底辺20aと、この底辺20aの両端から前記外端e1の位置である頂部までのびるタイヤ軸方向内外の斜辺20b、20cとて囲む断面三角形状をなし、前記内の斜辺20bは、前記ベルト層7の半径方向内面と隣接するとともに、外の斜辺20cは、トレッドゴム2Gと隣接している。
【0035】
そして、このベルトクッションゴム8は、ベルト層7のタイヤ軸方向外端部では3層以上の多層構造を有する。具体的には、ベルト層7のタイヤ軸方向外端e1からカーカス6に対して引いた法線Nに沿って見たとき、ベルトクッションゴム8は、少なくとも外層8o、中間層8m、内層8iの3層を有して構成される。本例では、3層構造を有する場合が示される。
【0036】
前記外層8oは、前記内の斜辺20bの全長に亘り該内の斜辺20bに沿ってのびる主部8o1を少なくとも具え、本例では、前記主部8o1に連なりかつ前記外の斜辺20cの中間位置付近で途切れる副部8o2をさらに設けた場合が示される。本例の外層8oは、前記主部8o1では略一定厚さを有し、又副部8o2では、タイヤ軸方向外側に向かって厚さが漸減している。なお前記副部8o2としては、前記外の斜辺20cの全長に亘って略一定厚さで形成することもでき、又外層8oとしては、副部8o2を設けず、前記主部8o1のみで形成することもできる。
【0037】
又前記内層8iは、前記底辺20aの全長に亘り該底辺20aに沿って略一定厚さでのびるとともに、この内層8iのタイヤ軸方向内端部と、外層8oのタイヤ軸方向内端部とは互いに接続している。そして前記外層8oと内層8iとの間には、前記中間層8mが楔状に介在している。
【0038】
ここで、前記外層8o及び内層8iにおいて、その断面最大厚さto、tiは、0.3〜1.5mmの範囲であり、又前記中間層8mの断面積Smは、前記ベルトクッションゴム8の断面積S0の50%以上としている。
【0039】
そして本例では、前記外層8oと内層8iは、複素弾性率E
*b及び損失正接tanδbのゴム組成物Bからなり、又中間層8mは、前記複素弾性率E
*bと略同一の複素弾性率E
*c及び前記損失正接tanδbより小なる損失正接tanδcを有するゴム組成物Cから形成される。
【0040】
このようにベルトクッションゴム8では、外層8o、中間層8m、及び内層8iが略同一の複素弾性率を有する。そのため、ベルトクッションゴム8は、多層構造をなすにもかかわらず、一つのゴム弾性体として弾性変形でき、ベルト層7とカーカス6とで挟まれるスペースを補強し、かつ走行時に発生するベルト層7外端部での大きな歪みを緩和させることができる。
【0041】
又ベルトクッションゴム8では、前記中間層8mが、相対的に低い損失正接を有するため、タイヤの転がり抵抗を低減することができる。しかも、前記外層8o及び内層8iが、相対的に高い損失正接を有するため、ベルト層7との間、及びカーカス6との間の接着性を確保することができ、ベルト層7との間及びカーカス6との間の剥離損傷を抑え、耐久性を従来と同レベルに維持することが可能となる。
【0042】
特に、ベルト層7が前述のごとき3層構造をなす場合、従来の4層構造のベルト層に比して、ベルト層外端部での歪み量が大きくなって剥離し易い傾向となるため、本実施形態のベルトクッションゴム8をより好ましく採用しうる。
【0043】
なお、前記複素弾性率E
*bと複素弾性率E
*cとが「略同一」とは、複素弾性率E
*bと複素弾性率E
*cとの比(E
*b/E
*c)が0.8〜1.2の範囲を意味し、この範囲で、より1.0に近いことが好ましい。
【0044】
又外層8oと内層8iの損失正接tanδbは、ベルト層7及びカーカス6との接着性確保の観点から、従来と同様の0.035以上が好ましい。しかし、前記損失正接tanδbが大き過ぎると、転がり抵抗性能に不利となり、従って、その上限は0.045以下、さらには0.042以下が好ましい。
【0045】
また、中間層82の損失正接tanδcは、転がり抵抗低減の観点から、0.035より小、さらには0.030以下が好ましい。しかし損失正接tanδcが小さ過ぎると、ゴム強度が不足して逆に耐久性の低下を招く。そのため損失正接tanδcの下限は0.020以上、さらには0.025以上が好ましい。
【0046】
なお複素弾性率を略同一としながら、損失正接を上記のように異なった値に設定するためには、ゴム組成物Bに比較して、ゴム組成物Cは、ゴム補強用のフィラー(カーボンブラックやシリカ等)の配合量を少なくし、かつ硫黄の配合量を多くすることで、達成しうる。
【0047】
又、前記効果を発揮させるためには、前述の如く、外層8oの断面最大厚さto、及び内層8iの断面最大厚さtiを、それぞれ0.3〜1.5mmの範囲、しかも前記中間層8mの断面積Smを、ベルトクッションゴム8の断面積S0の50%以上とすることが重要である。前記断面最大厚さto、tiが1.5mmを超える、及び中間層8mの断面積Smがベルトクッションゴム8の断面積S0の50%を下回る場合には、前記中間層8mによる転がり抵抗の低減効果が充分に発揮されなくなる。このような観点から、前記断面最大厚さto、tiの上限は1.0mm以下が好ましく、又中間層8mの断面積Smの下限は、ベルトクッションゴム8の断面積S0の80%以上が好ましい。又前記断面最大厚さto、tiが0.3mmを下回ると、外層8o及び内層8iが充分に機能せず、ベルト層7及びカーカス6との接着性を確保することが難しくなる。
【0048】
又
図4に示すように、前記ベルトクッションゴム8とカーカス6との間に、前記内層8iとカーカス6との接着性を高めるための接着層15を追加することができる。この接着層15は、前記内、外層8i、8oよりも薄くかつ実質的に一定厚さの層であり、ゴム組成物Dのシートからなる。該ゴム組成物Dは、前記エッジカバー12、13と同様、接着性に優れる天然ゴムまたはイソプレンゴムを主体としたゴム成分を有し、さらにカーカスコード(スチールコード)との接着性のために、コバルトを含有するのが好ましい。なおコバルトは、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜5.0質量部の含めるのが好ましい。
【0049】
又本例のトレッドゴム2Gは、前記
図2の如く、トレッド面2Sをなすキャップゴム2GCと、その半径方向内側のベースゴム2GBとの2層構造で形成している。そして転がり抵抗低減のため、前記ベースゴム2GBの損失正接を、キャップゴム2GCの損失正接よりも小(例えば0.030〜0.050)に設定するとともに、耐摩耗性や耐カット性などの観点から、キャップゴム2GCの複素弾性率を、ベースゴム2GBの複素弾性率よりも大(例えば4.5〜5.5MPa)に設定している。又接着性の観点から、前記ベースゴム2GBは、ベルトクッションゴム8の外層8oに接して終端し、キャップゴム2GCは中間層8mに接して終端している。
【0050】
次に、前記多層構造のベルトクッションゴム8は、断面形状が複雑であり、かつ外層8o、内層8iの厚さが1.5mm以下と非常に薄いため、押出し機による押出し成形によって形成するには困難性がある。従って、本実施形態のタイヤ1では、
図5(A)、(B)に示すように、未加硫のゴム組成物B、Cからなり、かつ巾Wが20〜25mm、厚さTが1.0〜1.5mmの長尺テープ状の2種類のゴムストリップPb、Pcを用い、各ゴムストリップPb、Pcを、カーカス6上にてタイヤ周方向に巻き重ねる所謂ストリップワインド法にて、前記ベルトクッションゴム8を形成している。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0052】
図1に示す基本構造をなし、かつ表1に示すベルトクッションゴムを有する重荷重用空気入りタイ(11R22.514PR)を試作するとともに、各試供タイヤの転がり抵抗性、及び耐久性をテストした。比較のため、ベルトクッションゴムが1層構造をなすタイヤを比較例1として試作した。表1に記載以外は実質的に同仕様であり、又共通仕様は以下のとおりである。
<カーカス>
プライ数:1枚
カーカスコード :スチールコード(コード径0.85mm)
<ベルト層>
ベルトコード :スチールコード(コード径1.15mm)
第1のベルトプライ:
コード角度θ1:19°(右上がり)
第2のベルトプライ:
コード角度θ2:19°(左上がり)
第3のベルトプライ:
コード角度θ3:19°(左上がり)
【0053】
外・内層は、表2に示す配合1をベースとして、また中間層は、配合2をベースとして、カーボン、硫黄、加硫促進剤の量を調整することにより、それぞれの複素弾性率E
*b、E
*c、tanδb、tanδcを調節している。また、エッジカバーの配合は、配合3である。詳細は次の通りである。
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B
カーボン:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
プロセスオイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380
老化防止剤6C:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
パラフィンワックス:大内新興化学工業(株)のサンノックワックス
ステアリン酸:日本油脂(株)製の椿
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
テスト方法は、次のとおりである。
【0054】
<転がり抵抗>
ドラム式タイヤ転がり抵抗試験機を用い、各供試タイヤを上記リム(7.50X22.5)、内圧(750kPa)、縦荷重(24.51kN)の条件にて、速度(50km/h)にて走行させ、そのときの転がり抵抗を、比較例1を100とする指数で表示した。数値が小さいほど転がり抵抗が小さく燃料消費が少ないことを意味する。
【0055】
<耐久性(接着性)>
各供試タイヤを、リム(7.50X22.5)、内圧(750kPa)の条件にて、タイヤ配置が2D4タイプの路線トラックに装着し、走行条件が同一となるようにして6ヶ月間実車走行した。その後、タイヤを解体し、ベルトクッションゴムとカーカスプライとの間の接着力、及びベルト層とベルトクッションゴムとの間の接着力を測定し、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど接着力が大きく耐久性が高いことを表している。なお、接着力の測定方法は、引っ張り試験機(INTESCO2005型)を用い、室温20℃、湿度65%、引張速度50mm/minの条件にて剥離させたときの抗力を測定した。
テストの結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
テストの結果、実施例のタイヤは、耐久性を維持しつつ転がり抵抗を減少しうるのが確認できた。なお比較例2に示すように厚さto、tiが0.3mmを下回ると、耐久性(接着性)が急激に低下するのが確認できる。