【文献】
Selective Epitaxial Growth of InP in STI Trenches on OFFF-axis Si(001) Substrates,ECS Transactions,2010年 3月24日,27.1,959-964
【文献】
Integration of InGaAs Channel n-MOS Devices on 200mm Si Wafers Using the Aspect-Ratio-Trapping Technique,ECS Transactions,2012年 7月21日,45.4,115-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のIII−V族二元化合物は、InAs,InP,GaAs,GaP,GaSbおよびInSbからなるグループから選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種々のバッファ層が、シリコン基板とIII−V族デバイス層との間の格子不整合によって誘起される歪みを軽減する試みで使用されており、これによりデバイス層の有害な欠陥密度を低減している。広いトレンチ(または100nmより大きい幅を持つトレンチ)内にIII−V族材料を成長させるために、実行可能な手法が開発されている。しかしながら、Si基板上のIII−V族デバイスの連続的スケーリングによって要求されるサブ50nmのトレンチ内に、高品質の結晶性III−V族材料を形成することは、未解決の重要な挑戦のままである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、IV族半導体基板の上にIII−V族半導体デバイスを製造する方法に関する。詳細には、本発明は、III−V族半導体デバイスとシリコン基板との間に層を形成する方法に関する。
【0006】
本発明は、III−V族デバイスを製造する方法に関する。該方法は、下記のステップを含む。
・少なくとも凹部エリアを含む半導体基板を用意するステップ。
・凹部エリアにある半導体基板の上に位置するバッファ層を形成するステップ。
・バッファ層は、キャリアガスの存在下でIII族前駆体およびV族前駆体からの選択エピタキシャル成長によって第1成長温度で形成された二元III−V族化合物を含む。
・第1成長温度は、III族前駆体およびV族前駆体の各々のクラッキング温度と等しいか、それより僅かに高い。
【0007】
本発明の異なる実施形態において、該方法は、下記のステップを含む。
・バッファ層を形成した後、前記凹部エリアにスタック層を形成するステップ。各スタック層は、III−V族化合物を含む。
・スタック層の各々の成長温度は、第1成長温度より高い。
【0008】
異なる実施形態において、スタック層は、下記の構成を含む。
・高移動度チャネル層を形成するのに適した第3のIII−V族化合物を含む上部層。
・上部層の下に位置し、バッファ層の上に位置する、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層。
【0009】
一実施形態において、スタック層およびバッファ層は、有機金属化学気相エピタキシー成長(MOVPE)によって、好ましくは、その場(in-situ)で選択的に成長される。こうしてバッファ層およびスタック層は、好ましくは、制御された環境下、好ましくは、同じ生産ツールまたは同じ堆積チャンバで形成される。
【0010】
異なる実施形態において、キャリアガスは、N
2またはArである。
【0011】
異なる実施形態において、第1のIII−V族二元化合物は、InAs,InP,GaAs,GaP,GaSbおよびInSbからなるグループから選択される。
さらに、第1のIII−V族二元化合物を形成するために用いられるIII族前駆体は、TMIn,TMGaおよびTEGaからなるグループから選択され、略語は詳細な説明で説明している。
【0012】
さらに、第1のIII−V族二元化合物を形成するために用いられるV族前駆体は、TBAs,TBP,TBBDMAP,TMSbおよびTDMASbからなるグループから選択され、略語は詳細な説明で説明している。
【0013】
特定の実施形態において、第1のIII−V族二元化合物は、InAsまたはInPであり、第1成長温度は、350℃より低いか、これと等しい。
【0014】
特定の実施形態において、バッファ層の上に位置するスタック層の各々の成長温度は、少なくとも450℃である。
【0015】
異なる実施形態において、トレンチは、50nmより小さい幅を有する。しかしながら、本発明の方法は、より広いトレンチ、または50nmより大きい幅を有するトレンチにも上手く適用できる。
【0016】
第2態様において、本発明は、IV族半導体基板の上にあるIII−V族半導体デバイスに関する。詳細には、本発明は、下記の構成を備えるIII−V族デバイスを開示する。
・少なくとも凹部エリアを含む半導体基板。
・半導体基板の上に位置し、InAs,InP,GaAs,GaP,GaSbおよびInSbからなるグループから選択された第1のIII−V族二元化合物を含む、前記凹部エリアにあるバッファ層。第1のIII−V族二元化合物は、高い結晶性であり、X線回折(XRD)によって測定された700arcsec未満、好ましくは500arcsec未満の半値全幅(FWHM)を持つロッキングカーブによって特徴付けられる。
【0017】
異なる実施形態において、スタック層が、前記凹部エリア内の前記バッファ層の上に位置して、これと接触しており、下記の構成を含む。
・高移動度チャネル層を形成するのに適した第3のIII−V族化合物を含む上部層。
・上部層の下に位置し、バッファ層の上に位置する、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層。
【0018】
一実施形態において、スタックの上部層の第3のIII−V族材料は、In
xGa
(1−x)As(x>0.5),InAs,GaSb,InSbおよびIn
xGa
(1−x)Sb(x<0.4)からなるグループから選択される。
【0019】
一実施形態において、スタックの中間層の第2のIII−V族材料は、In
xAl
(1−x)As(x>0.5)およびIn
xAl
(1−x)Sb(x<0.4)からなるグループから選択される。
【0020】
一実施形態において、本発明のIII−V族デバイスは、バッファ層の下に位置し、これと接触しており、かつ、基板の上に位置し、これと接触しているシード(seed)層をさらに備えてもよい。
【0021】
好ましくは、シード層は、Geを含む。特定の実施形態において、シード層は、シリコンよりもIII−V層との格子不整合が少ないGeで製作される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、シリコン基板の上にIII−V族半導体デバイスを集積化することに関する。詳細には、本発明は、III−V族半導体デバイスとシリコン基板との間の界面における層に関する。
【0025】
さらに本発明は、半導体基板の上の狭いトレンチ内に、改善した結晶性を有するIII−V族材料を形成するための方法に関する。さらに本発明は、改善した結晶性を持つ前記III−V族材料の上に位置し、チャネル層を有するIII−V族デバイスを形成する方法に関する。
【0026】
本開示は、特定の実施形態に関して一定の図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されない。記載した図面は、概略的に過ぎず、非限定的なものである。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のために誇張したり、縮尺どおり描写していないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の具体化に対応していない。
【0027】
さらに、説明での用語「第1」「第2」などは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも時間的、空間的、ランキングまたは他の手法での順番を記述するためではない。ここで使用した用語は、適切な状況下で交換可能であり、ここで説明した本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0028】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(under)等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した本発明の実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0029】
ここで提供した説明では、多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施してもよいことは理解されよう。別の例では、本説明の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造、および技法は詳細には示していない。
【0030】
ここで、特定の化学名または化学式が与えられた場合、該材料は、化学名によって識別される化学量論的に正確な式の非化学量論的な変動を含んでもよい。式中の元素の近くの数の添字の喪失が、化学量論的に数字(1)を意味する。本目的では、正確な化学量論的な数の+/−20%の範囲内の変動が化学名または化学式に含まれる。代数的な添字が与えられた場合、約+/−20%の範囲内の変動が各添字の値に対して相対的に含まれる。こうした変動した値の合計は必ずしも整数にならず、この逸脱は想定される。こうした変動は、プロセス条件の意図した選択および制御、あるいは意図しないプロセス変動に起因して生ずることがある。
【0031】
本開示において、用語「III−V族化合物」または「III−V族材料」は、元素周期表のIII族からの少なくとも1つの元素と、元素周期表のV族からの少なくとも1つの元素とを含む半導体材料を表す。典型的には、III−V族化合物半導体は、III/V元素を含む二元、三元または四元の合金である。本発明で使用できるIII−V族化合物半導体の例が、これに限定されないが、GaAs,InP,InSb,InGaAs,AlGaAs,InAIAs,InAlAsSb,InAlAsPおよびInGaAsPの合金を含む。
【0032】
本発明において、用語「バンドギャップ」は、価電子帯の上部と伝導帯の下部との間のエネルギー差を参照する。一般に、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、1eVより大きい、好ましくは、2eVより大きい電子バンドギャップを持つ半導体材料である。一般に、ナローバンドギャップ(NBG)半導体は、1eVより小さい、好ましくは、0.6eVより小さい電子バンドギャップを持つ半導体材料である。しかしながら、上述した絶対範囲は参考のためだけであり、本発明において、デバイスの良好な作動を決定するのは、バンドギャップの実際の絶対値ではなく、むしろWBGとNBGとの間の相対的な差である。
【0033】
本発明において、用語「半導体」は、約10
5Ω・cmの抵抗率(例えば、真性Siは約240kΩ・cmの抵抗率)を持つ材料を表し、一方、「半絶縁体」は、約10
9Ω・cmのより高い抵抗率の値を持つ材料を表す。
【0034】
第1態様において、本発明は、下記のステップを含むIII−V族デバイスを製造する方法を開示する。
・少なくとも凹部エリアを含む半導体基板を用意するステップ。
・凹部エリアにある半導体基板の上に位置するバッファ層を形成するステップ。
・バッファ層は、キャリアガスの存在下でIII族前駆体およびV族前駆体からの選択エピタキシャル成長によって第1成長温度で形成された二元III−V族化合物を含む。
・第1成長温度は、III族前駆体およびV族前駆体の各々のクラッキング温度と等しいか、それより僅かに高い。
【0035】
本開示の実施形態において、半導体基板が、IV元素(例えば、シリコン、ゲルマニウム、錫)、またはIV元素もしくはIII−V族化合物の合金で製作された半導体材料を含む任意の基板である。異なる実施形態において、半導体基板は、任意の直径のシリコンウエハ、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板、またはゲルマニウム・オン・インシュレータ(GeOI)基板とすることができる。さらに、半導体基板は、例えば、石英、グラス、III−窒化物スタック層など、半導体製造と適合した追加の層または材料を含んでもよい。特定の例において、半導体基板は、(001)配向を持つシリコンで製作された上面を有する。
【0036】
凹部エリアの断面は、平坦形状、丸い形状または、好ましくはV字形状を有する。本開示の特定の実施形態において、半導体基板での前記凹部エリアは、前記半導体基板上のSTI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)パターンの能動領域から半導体基板を除去することによって形成されるトレンチである。本開示の方法は、狭いトレンチ、例えば、50nmより小さい幅を有するトレンチにとって、特に好都合である。こうした狭いトレンチにおいて、既知の方法は、良くない結果、即ち、劣った結晶性、トレンチを充填する非平坦なIII−V族材料を生じさせる。本開示の方法は、これに限定されないが、大きなトレンチ、例えば、50nmより大きい、または100nmより大きい幅を有するトレンチに上手く適用できることから、狭いトレンチについてこの問題を解決する。
【0037】
狭いトレンチ内のMOVPE成長を含む従来の方法の限界を説明するために、我々自身の比較結果を
図1に示す。この写真は、キャリアガスとしてH
2を用いてトリブチルホスフィン(TBP)およびトリメチルインジウム(TMIn)から420℃で選択エピタキシャルプロセスによって成長したInP層についての断面TEMを示す。
図1は、左側に150nmトレンチ内で成長したInPを示し、右側に40nmトレンチ内で成長したInPを示す。
【0038】
MOVPEにおいて、超純粋ガスが反応器内に注入され、精密に投与されて、極めて薄い原子層を半導体ウエハの上に堆積する。必要な化学元素を含む有機化合物または有機金属および水素化物の表面反応が、材料および化合物半導体の結晶成長またはエピタキシーのための条件を生成する。伝統的なシリコン半導体とは異なり、これらの半導体は、III族元素とV族元素、II族元素とVI族元素、IV族元素または、IV族元素、V族元素およびVI族元素の組合せを含んでもよい。例えば、第1ステップにおいてトリメチルインジウム((CH
3)
3In)およびホスフィン(PH
3)を導入することによって、リン化インジウムが、加熱された基板上に反応器内で成長できる。加熱された有機前駆体分子は、熱分解として知られ、酸素プロセスの不在において分解する。熱分解は、第2ステップにおいて原子を基板表面に残す。原子は基板表面と結合し、新しい結晶層が最後のステップで成長する。このエピタキシャル層の形成は基板表面で生ずる。
【0039】
分解温度またはクラッキング温度とも称される必要な熱分解温度は、前駆体の化学結合強度の増加とともに増加する。
【0040】
観察できるように、150nmトレンチについては、平坦なプロファイルを持つ良好な品質のInPが成長した。40nmトレンチでは、InP層は、貧弱な結晶性および制御不能のファセット形成を示す。狭いトレンチでのInPの多欠陥成長は、不均一なヘテロエピタキシーを導き、その上に成長するIII−Vスタック層にまで伝搬する。この多欠陥密度は、溝の過成長の後に適用される化学機械研磨(CMP)工程によって解消できない。我々は、驚異なことに、狭いトレンチでのIII−V族材料の貧弱な結晶性が、成長プロセスの第1段階に割り当て可能であることを見出した。従来の成長プロセスは、クラッキング温度よりかなり高い温度(クラッキング温度より100℃以上高い)で生じており、高温成長とも称される。理論に縛られることは意図していないが、提案することは、広いトレンチ内の高温成長が、高密度のアイランド形成によって特徴付けられる核生成(nucleation)段階に分割できることであり、これに続いて合体段階、3D成長段階、最後に2D(平面)成長段階が生じ、これにより、
図2aに示すように、良好な結晶性および平坦な表面を持つIII−V族材料が得られる。
【0041】
図2bは、提案したように、小さいトレンチ内の成長プロセスの段階を示しており、従来の成長プロセス(または高温成長とも称する)を用いて得られるIII−V族材料の貧弱な結晶性を説明する。理論に縛られることは意図していないが、狭いトレンチでの高温成長プロセスは、低密度のアイランド形成によって特徴付けられるアイランド成長段階に分割でき、これに続いてアイランド成長、合体、続いて3D成長段階が生ずる。トレンチは、2D段階に到達する前に充填され、非平坦で貧弱な品質のIII−V族材料をもたらす。
【0042】
本発明の方法において、半導体基板上で低温でのバッファ層の成長は、アイランドサイズを減少させ、狭いトレンチ内でのアイランド成長段階のアイランド密度を増加させる。
【0043】
本開示において、「高温」と称する場合、前駆体のクラッキング温度よりかなり高い温度、例えば、クラッキング温度より100℃以上高い温度を意味する。さらに、「低温」と称する場合、前駆体のクラッキング温度と等しいか、これより僅かだけ高い温度、例えば、クラッキング温度より50℃以下の高い温度、好ましくは、クラッキング温度より30℃以下の高い温度、より好ましくは、クラッキング温度より20℃以下の高い温度、を意味する。
【0044】
バッファ層の成長温度は、使用する前駆体のクラッキング温度の近傍の値に減少させる。さらに、バッファ層の形成のために、低いクラッキング温度の前駆体が選択される。これにより改善した結晶性および平坦な表面を持つIII−V族材料が得られる。改善した結晶性は、XRDで測定される対応のロッキングカーブから定量化できる。ロッキングカーブは、薄膜およびバルク単結晶での完全性を研究するのに有用な方法である。検出器を予想されるブラッグ反射の中心に固定し、サンプルが独立に回転(または「揺動」)しつつ、回折強度に追従することによって、有益な情報を取得できる。半値全幅強度(FWHM)は、膜内の転位密度およびサンプルの曲率に関連している。
【0045】
本発明の方法に係る成長プロセスについて可能性ある機構を
図3に概略的に示す。核生成段階において、高密度の小さいアイランドが最初に形成され、これに続いて合体段階、3D成長段階、最後に2D(平面)成長段階が生じ、高い結晶性で平坦なIII−V族材料を導く。
【0046】
本発明の異なる実施形態において、本発明の方法は、下記のステップをさらに含む。
・バッファ層を形成した後、前記凹部エリアにスタック層を形成するステップ。各スタック層は、III−V族化合物を含む。
・スタック層の各々の成長温度は、第1成長温度より高い。
【0047】
本開示の実施形態において、スタック層は、複数の層を含み、スタックの各層はIII−V族材料を含んでもよい。
【0048】
本開示の実施形態において、スタック層は、下記の構成を備えてもよい。
・III−V族デバイス(例えば、トランジスタ)のための高移動度チャネル層を形成するのに適した第3のIII−V族化合物を含む上部層。
・高移動度チャネル層の下に位置し、バッファ層の上に位置する、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層。
【0049】
本開示の特定の実施形態において、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層は、高移動度チャネル層の下に位置し、これと接触しており、かつ、バッファ層の上に位置し、これと接触している。
【0050】
スタック層およびバッファ層は、MOVPEによって選択的に成長される。好ましくは、層は、同じプロセスチャンバ内(in-situ)で成長し、または同じツール上で異なるプロセスチャンバで成長し、その結果、1つのプロセスチャンバから他のプロセスチャンバへの移送が、制御された環境下で行われる。制御された環境は、基板が曝される環境の圧力および組成に言及する。
【0051】
本開示の実施形態において、第1のIII−V族化合物の第1成長温度は、350℃より低いか、これと等しく、好ましくは、325℃より低い。
【0052】
さらに、第1のIII−V族化合物の第1成長温度は、スタック層のいずれかの成長温度よりかなり低い。特に、第1成長温度は、第2のIII−V族化合物の成長温度および第3のIII−V族化合物の成長温度より低い。
【0053】
本開示の特定の実施形態において、第2のIII−V族化合物の成長温度および第3のIII−V族化合物の成長温度の両方は、少なくとも450℃である。
【0054】
本開示の両態様の特定の実施形態において、半導体基板は、バッファ層の下に位置し、これと接触しているシード(seed)層をさらに含んでもよい。一例では、こうしたシード層は、GeまたはGeAsを含み、あるいはGeまたはGeAsからなり、格子不整合の低減を可能にする。
【0055】
本開示の両態様の異なる実施形態において、トレンチは、50nmより小さい幅を有する。
【0056】
本開示の両態様の実施形態において、第1のIII−V族化合物は、キャリアガスの存在下で、III族元素の前駆体およびV族元素の前駆体からMOVPEによって形成された二元III−V族化合物であり、ここで前駆体の各々が、350℃より低いか、これと等しい成長温度で低い有機金属クラッキング効率を有する。好ましくは、キャリアガスは、H
2より重いガスである。特定の例では、キャリアガスはN
2またはArである。
【0057】
第1のIII−V族化合物を形成するために用いた前駆体のクラッキング温度と等しいか、それより僅かに高い第1温度でバッファ層の成長を行うこと。第1温度は、クラッキング温度と等しいか、それより僅かに高いため、前駆体による半導体基板の改善された濡れ性が得られ、これにより第1のIII−V族化合物のアイランド合体プロセスを促進する。こうして平坦で高い結晶性のバッファ層が得られる。
【0058】
本発明の両態様の特定の実施形態において、第1のIII−V族材料は、二元III−V族化合物である。より好ましくは、第1のIII−V族材料は、InAs,InP,GaAs,GaP,GaSb,InSbからなるグループから選択される。
【0059】
III族元素の前駆体は、トリメチルインジウム(TMIn),トリメチルガリウム(TMGa)およびトリエチルガリウム(TEGa)からなるグループから選択される。さらに、V族元素の前駆体は、トリブチルアルセニド(TBAs),トリブチルホスフィン(TBP),テルチアリブチルビス(ジメチルアミノ)ホスフィン(TBBDMAP),テトラメチルアンチモニド(TMSb)およびトリス(ジメチルアミノ)アンチモニド(TDMASb)からなるグループから選択される。異なる前駆体のクラッキング温度は、例えば、有機金属気相エピタキシーに関するハンドブック/マニュアルにおいて当業者は容易に検索できる。
【0060】
第1例では、InAsからなるバッファ層が、シリコンウエハ内で予め画定されたSTIトレンチ(凹部エリア)内で成長した。前記トレンチは、40nmの幅を有する。使用した前駆体は、TMInおよびTBAsであった。
【0061】
第1のテストでは、InAs核生成層(バッファ層)が、トレンチ内で、高温(375℃、H
2中)で、トレンチの底部に露出したシリコン基板の上に、あるいは代替として、シリコン基板の上に事前に形成したゲルマニウムシード層の上に直接に成長した。狭いトレンチ内で375℃で得られたInAs層は、ファセット化され、これは、
図4aにおいて原子間力顕微鏡(AFM)写真およびライン像に示すように、3D成長の明確な表示である。
【0062】
第2のテストでは、InAs核生成層(バッファ層)が、トレンチ内で、低温(例えば、325℃またはそれ以下、H
2中)で、シリコン基板の上に、あるいは代替として、トレンチ内に露出したシリコン基板の上に事前に形成したゲルマニウムシード層の上に直接に成長した。325℃では、
図4bにおいてAFM画像およびラインプロファイルに示すように、狭いトレンチ内での2D成長が得られる。
【0063】
図5は、40nm幅のトレンチ内で成長した第1例のInAsバッファ層のラインプロファイルスキャンをトレンチ長(ミクロン)の関数として示す。高温(1)では、低温(2)と比べて、かなり大きな不均一性が観察される。
【0064】
第2の例では、InPからなるバッファ層が、40nmの幅を有するSTIトレンチ内で成長した。TMInおよびTBPを前駆体として使用し、成長温度は350℃、キャリアガスはN
2であった。
【0065】
図6(a)と
図6(b)は、80nmおよび40nmのトレンチ内で成長したInPの断面TEM写真をそれぞれ示す。両方の場合、成長したInPの結晶性および平坦性は極めて良好であった。
【0066】
改善された結晶性は、X線パターンによって、詳細には、
図7に示すように、(004)InPピークのFWHM値によって確認される。鋭いピークが得られ、0.15°または540arcsecのFWHM値を有しており、これは、例えば、420℃、H
2下で形成されたInPバッファ層について得られる0.509°または1832arcsecよりかなり狭い。低温350℃、キャリアガスN
2でInPを用いた第2のテストでは、450arcsecのFWHM値が得られ、より良好な結晶性を示した。
【0067】
本開示の両態様の実施形態において、中間層の第2のIII−V族化合物は、In
xAl
(1−x)As(x>0.5)またはIn
xAl
(1−x)Sb(x<0.4)を含むか、あるいはこれらからなる。両方の組成が、高移動度チャネルと比較して、より広いバンドギャップによって特徴付けられ(伝導帯オフセットまたは価電子帯オフセットで、>0.2eV)、その結果、チャネルは電気的に隔離され、キャリアがチャネル内に閉じ込められる。
【0068】
本発明の実施形態において、中間層は、In
xAl
(1−x)As(x>0.5)を含み、同じIn濃度、例えば、In
xGa
(1−x)As(x>0.5)を有する第3のIII−V族化合物で製作されたチャネル層の下方に位置する。特定の実施形態において、第2および第3のIII−V族化合物のIn濃度は、x=0.7である。
【0069】
本開示の両態様の実施形態において、第3のIII−V族材料は、高移動度チャネル層を形成するのに適した、In
xGa
(1−x)As(x>0.5),InAs,GaSb,InSb,In
xGa
(1−x)Sb(x<0.4)を含むか、あるいはこれらからなる。
【0070】
第2態様において、本発明は、下記の構成を備えるIII−V族デバイスに関するものである。
・少なくとも凹部エリアを含む半導体基板。
・半導体基板の上に位置し、InAs,InP,GaAs,GaP,GaSbおよびInSbからなるグループから選択された第1のIII−V族二元化合物を含む、前記凹部エリアにあるバッファ層。第1のIII−V族二元化合物は、高い結晶性の品質を有し、これはX線回折(XRD)によって測定された700arcsec未満のロッキングカーブFWHMによって特徴付けられる。
【0071】
X線回折の解析は、X線配置を垂直ラインに対して垂直に整列させる際に設定されたマスクにおいて、長さ5mm長のラインで、500nmから40nmまで変化する幅で構成されたエリアを走査することによって行った。
【0072】
さらに、本発明のIII−V族デバイスは、前記凹部エリアにある前記バッファ層の上に位置するスタック層を備える。スタック層はさらに、下記の構成を含む。
・高移動度チャネル層を形成するのに適した第3のIII−V族化合物を含む上部層。
・高移動度チャネル層の下に位置し、バッファ層の上に位置する、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層。
【0073】
特定の実施形態において、ワイドバンドギャップ(WBG)を有する第2のIII−V族化合物を含む中間層は、高移動度チャネル層の下に位置し、これと物理的に接触している。さらに、中間層は、バッファ層の上に位置し、これと物理的に接触している。
【0074】
本開示の特定の実施形態において、バッファ層は、XRDによって測定された540arcsecのFWHMを持つロッキングカーブによって特徴付けられたInPからなる。
【0075】
本開示のIII−V族デバイスの利点は、InAsで製作されたバッファ層を使用した場合、より高いIn濃度を有する中間層および上部層(チャネル層)の両方が、容易に集積化できることである。より高いIn濃度、例えば、約70%のInの利点は、電子移動度がさらに増加することである。
【0076】
こうした集積化機構の一例を、
図8に示しており、STI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)エリアが、Si(001)基板の上に形成されたトレンチの境界を定めている。中間層の第2のIII−V族化合物は、高いIn濃度のInAlAs、例えば、In
0.7Al
0.3Asからなる。高いIn濃度(例えば、In
0.7Ga
0.3As)を持つ第3のIII−V族化合物は、その上に、チャネル層として形成される。
【0077】
代替として、本開示の方法に従ってInPがバッファ層として成長した実施形態において、In
0.53Ga
0.47Asで製作された高移動度チャネルおよびIn
0.52Al
0.48Asで製作された中間層を用いて、良好な格子整合が得られる。ヘテロ構造のバンドオフセットを調整して静電気を改善するために、全体厚さをシステムの臨界厚さ未満に維持することによって、より高いIn含量層が成長できる。