(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の回路基板支持部には、該回路基板支持部の外形寸法より細い外形寸法をもって前記端面から前記軸線方向の前記一方側に向けて突出する軸部を備えた第1回路基板支持部が含まれ、
前記回路基板には、前記軸部が嵌る第1貫通部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
前記回路基板において前記センサと前記第1電子部品との間には、前記センサと前記第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に沿って複数のスルーホールが配置されていることを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載のセンサ装置。
前記回路基板において前記センサと前記第1電子部品との間には、前記センサと前記第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に沿って複数の検査端子が配置されていることを特徴とする請求項1乃至19の何れか一項に記載のセンサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサは、温度によって検出結果が変化することが多い。例えば、磁気センサ装置に用いられる磁気抵抗素子やホール素子に用いられる感磁膜は、温度によって抵抗値が変化する。このため、感磁膜によってブリッジ回路を構成することにより、温度変化に起因する抵抗値変化が発生しても、かかる変化が等しければ、出力に変化は発生しないはずである。しかしながら、基板に形成された感磁膜を利用した磁気センサ装置では、たとえ、感磁膜によってブリッジ回路を構成した場合でも、温度が変化すると、検出誤差が発生する。かかる原因は明確になっていないが、素子基板と感磁膜とでは熱膨張係数が相違することに起因する応力の影響が素子基板の位置によって異なることや、感磁膜の膜質が素子基板の位置によって異なることに起因するものと推測される。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることのできるセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るセンサ装置は、回路基板と、該回路基板に実装されたセンサと、前記回路基板に実装された第1電子部品と、を有し、前記センサは、センサ素子と、該センサ素子の温度を検出する感温部と、該感温部での検出結果に基づいて前記センサ素子の温度が一定になるように当該センサ素子を加熱するヒータと、を有し、前記回路基板には、前記センサと前記第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に延在するスリットが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、センサに感温部およびヒータが構成されており、ヒータは、感温部での検出結果に基づいてセンサ素子の温度が一定になるようにセンサ素子を加熱する。このため、センサの検出結果は環境温度の影響を受けにくい。また、センサが実装された回路基板には、第1電子部品も実装されているとともに、回路基板には、センサと第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に延在するスリットが形成されている。このため、回路基板において、センサが実装されている領域と、第1電子部品が実装されている領域との間には、スリットを利用した遮熱部が設けられているので、センサが実装されている領域と第1電子部品が実装されている領域との間の熱伝導が抑制されている。従って、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。それ故、本発明を適用したセンサ装置
によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【0008】
本発明は、前記センサ素子が、素子基板と、該素子基板に形成された感磁膜と、を有している場合に適用すると効果的である。センサ素子が、素子基板に感磁膜が形成された磁気センサ素子の場合、感磁膜自身が温度によって抵抗値が変化するとともに、素子基板と感磁膜との熱膨張係数の差に起因する応力が素子基板の位置によって異なること等に起因して温度の影響を受けやすいが、本発明によれば、かかる温度変化の影響を抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記スリットは、前記センサの周りに前記回路基板を一部残して当該センサを囲むように延在していることが好ましい。かかる構成によれば、センサが実装されている領域と第1電子部品が実装されている領域との間の熱伝導がより抑制される。このため、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0010】
本発明において、前記回路基板を軸線方向の一方側の端部で保持するホルダを有し、前記一方側の端部には、
前記軸線方向の前記一方側に向けて突出して当該一方側の端面で前記回路基板において
前記軸線方向の他方側に向く面を支持する複数の回路基板支持部を有していることが好ましい。かかる構成によれば、ホルダの軸線方向の一方側の端面全体で回路基板を支持する構造に比して、ホルダと回路基板との接触面積が狭い。このため、回路基板とホルダとの間の熱伝導を抑制することができるので、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくい。従って、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0011】
本発明において、前記複数の回路基板支持部には、該回路基板支持部の外形寸法より細い外形寸法をもって前記端面から前記軸線方向の前記一方側に向けて突出する軸部を備えた第1回路基板支持部が含まれ、前記回路基板には、前記軸部が嵌る第1貫通部が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、回路基板を軸部と第1貫通部とによって位置決めしても、回路基板とホルダとの間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0012】
本発明において、前記軸部および前記第1貫通部を複数備え、前記ホルダに対して、前記回路基板の表裏が予め定めた向きとなり、且つ、前記回路基板が前記軸線回りで予め定めた回転位置となるように位置決めされると、前記複数の前記軸部の全てが前記第1貫通部と嵌合可能となり、前記予め定めた回転位置は、360度の範囲内で1箇所のみであり、当該予め定めた回転位置を除く回転位置では、前記複数の前記軸部の少なくとも1つが、前記第1貫通部と嵌合不能であることが好ましい。このように、本発明では、複数の回路基板支持部と第1貫通部が360度を除く回転角度で回転対称にならないように配置されている。かかる構成によれば、ホルダに対して回路基板を固定する時に、その表裏を間違えることがない。また、軸線回りで正しい回転位置に位置決めしたときだけ、回路基板をホルダに固定することが可能である。よって、回路基板を間違った姿勢で固定してしまうおそれがなく、高い位置精度で固定できる。また、製造時の管理項目を削減できるので、安価に製造することが可能である。
【0013】
本発明において、前記複数の回路基板支持部には、前記一方側の端面から前記軸部が突出していない第3回路基板支持部が含まれ、前記回路基板には、前記第3回路基板支持部の前記一方側の端面に対して前記軸線方向の他方側から当接する当接部が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、第1回路基板支持部で支持されない箇所を第3回路基板支持部で支持することができる。従って、軸部と第1貫通部が回転対称にならない
ようにするため、軸部を軸線回りの周方向で偏った配置にしていても、回路基板の支持については、軸線回りの周方向で荷重を分散して支持することが可能である。よって、固定時の回路基板の変形を抑制でき、残留応力が経時で解放されることによる回路基板の形状変化を抑制できる。従って、回路基板の変形による検出精度の低下を抑制できる。
【0014】
本発明において、前記第1貫通部に嵌合された前記軸部は、前記回路基板に弾性接着剤で接着されていることが好ましい。かかる構成によれば、モータ回転時の振動や外部からの振動が加わった場合に、回路基板への振動の影響を小さくすることができる。よって、センサの検出出力への振動の影響を小さくすることができ、検出精度の低下を抑制できる。
【0015】
本発明において、前記複数の回路基板支持部には、該回路基板支持部の外形寸法より細い外形寸法をもって前記一方側に向けて突出する筒部を備えた第2回路基板支持部が含まれ、前記回路基板には、前記筒部が嵌る第2貫通部が形成され、前記回路基板は、該回路基板に対して前記ホルダとは反対側から前記第2貫通部を通って前記筒部に止められたネジによって前記ホルダに固定されている構成を採用することができる。かかる構成によれば、ネジ止め時に、ネジ頭が必要以上に回路基板に食い込むことを筒部によって妨げることができる。従って、回路基板の破壊やネジ山の破壊を抑制できる。
【0016】
本発明において、
前記複数の回路基板支持部には、該回路基板支持部の外形寸法より細い外形寸法をもって前記一方側に向けて突出する筒部を備えた第2回路基板支持部が含まれ、前記回路基板には、前記筒部が嵌る第2貫通部が形成され、前記回路基板は、該回路基板に対して前記ホルダとは反対側から前記第2貫通部を通って前記筒部に止められたネジによって前記ホルダに固定され、前記軸部と前記第1貫通部の内周面との隙間は、前記筒部と前記第2貫通部の内周面との隙間より大きいことが好ましい。かかる構成によれば、第2回路基板支持部を位置決め基準として、回路基板の位置決めを行うことができる。
【0017】
本発明において、前記複数の回路基板支持部には、前記一方側の端面に固定穴が形成された第2回路基板支持部が含まれ、前記回路基板には、前記ホルダとは反対側から前記固定穴にネジ止めされるネジが挿通される第2貫通部が形成され、前記回路基板は、前記ネジによって前記ホルダに固定されていることが好ましい。また、この構成において、前記軸部と前記第1貫通部の内周面との隙間は、前記ネジと前記第2貫通部の内周面との隙間より小さいことが好ましい。かかる構成によれば、第2貫通部の開口面積を小さくすることができるので、ネジ頭を受ける面積を広くすることができる。従って、ネジ締め時に加わる力によってネジ頭が回路基板に食い込むことを抑制できる。また、第2回路基板支持部と回路基板との当接面積が広いので、回路基板を安定して支えることができる。また、第1回路基板支持部を位置決め基準として、回路基板の位置決めを行うことができるので、ネジ締め箇所の変形などによって、回路基板の位置精度が低下することを抑制できる。
【0018】
本発明において、前記第2貫通部は、前記回路基板の外縁に形成された切り欠きであることが好ましい。かかる構成によれば、回路基板をネジによって固定しても、かかる固定位置が回路基板の外縁であるため、センサが実装されている領域とネジによる固定位置とが離間している。このため、回路基板においてセンサが実装されている領域とホルダとの間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0019】
本発明において、前記ホルダの
前記軸線方向の前記他方側の端部には、周方向の複数個所から
前記軸線方向の前記他方側に突出したセンサ装置固定用の突部が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、センサ装置固定用の突部を利用してセンサ装置をモータケース等に固定した場合でも、ホルダとモータケース等との接触面積が狭い。このため、ホルダを介しての回路基板とモータケース等との間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0020】
本発明において、前記ホルダは樹脂製であることが好ましい。かかる構成によれば、ホルダの熱伝導性が低いので、ホルダを介しての回路基板とモータケース等との間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0021】
本発明において、前記ホルダは、筒状胴部を備え、当該筒状胴部の内側には前記センサによって物理量が検出される検出対象部が配置されることが好ましい。かかる構成によれば、検出対象部の移動によって筒状胴部内の空気を撹拌することができる。このため、温度分布の偏りの発生を抑制させることができるので、ヒータによってセンサ素子を均等に加熱することができる。従って、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0022】
本発明において、前記回路基板では、前記スリットに対して前記センサが配置されている側に発熱性の第2電子部品が実装され、前記第2電子部品は、前記回路基板の前記センサが実装されている側とは反対側の面に実装されていることが好ましい。かかる構成によれば、スリットに対してセンサが配置されている側に発熱性の第2電子部品を実装しなければならないという制約がある場合でも、センサと第2電子部品との間の熱伝達を抑制することができる。従って、センサの温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0023】
本発明において、前記回路基板において前記センサと前記第1電子部品との間には、前記センサと前記第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に沿って複数のスルーホールが配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、スルーホールを利用して遮熱を行うことができるので、センサが実装されている領域と第1電子部品が実装されている領域との熱伝導が抑制される。このため、回路基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。
【0024】
本発明において、前記第1電子部品はマイクロコンピュータであり、前記スルーホールは、例えば、前記マイクロコンピュータへの情報の書き込み用である。かかるスルーホールであれば、リード線等の接続が行われないので、スルーホールを利用して遮熱を行うことができる。
【0025】
本発明では、前記回路基板において前記センサと前記第1電子部品との間には、前記センサと前記第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に沿って複数の検査端子が配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、センサが実装されている領域と第1電子部品が実装されている領域とを離間させることができる。従って、センサと第1電子部品との間の熱伝導を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、センサに感温部およびヒータが構成されており、ヒータは、感温部での検出結果に基づいてセンサ素子の温度が一定になるようにセンサ素子を加熱する。このため、センサの検出結果は環境温度の影響を受けにくい。また、センサが実装された回路基板には、第1電子部品も実装されているとともに、回路基板には、センサと第1電子部品とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に延在するスリットが形成されている。このため、回路基板において、センサが実装されている領域と、第1電子部品が実装されている領域との間には、スリットを利用した遮熱部が設けられているので、センサが実装されている領域と第1電子部品が実装されている領域との間の熱伝導が抑制されている。従って、回路
基板においてセンサが実装されている領域の温度が変化しにくいので、センサ素子の温度をヒータによって精度よく制御することができる。それ故、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したセンサ装置として、モータにおいて磁気式のロータリエンコーダに用いた磁気センサ装置を中心に説明する。なお、以下の説明では、モータの軸線L方向のうち、出力軸120が突出している側とは反対側(反出力側)を一方側L1とし、出力軸120が突出している側(出力側)を他方側L2としてある。
【0029】
(モータの構成)
図1は、本発明を適用したロータリエンコーダ1を搭載したモータ100の説明図であり、
図1(a)、(b)、(c)は、モータ100を出力側からみた斜視図、モータ100を出力側と反対側(反出力側)からみた斜視図、およびモータ100からエンコーダケース140を外した状態を反出力側からみた斜視図である。また、
図2は磁気センサ装置10を軸線L方向の一方側L1からみた斜視図であり、
図3はその分解斜視図である。なお、
図1(c)では、回路基板50の軸線L方向の一方側L1の面に実装された部品等の図示を省略してある。また、
図2、
図3では、後述するコネクタ94を除き、回路基板50の軸線L方向の一方側L1の面に実装された部品等の図示を省略してある。
【0030】
図1に示すモータ100は、モータ本体110と、モータ本体110の反出力側に設けられた磁気式のロータリエンコーダ1とを有しており、ロータリエンコーダ1はエンコーダケース140で覆われている。本形態において、ロータリエンコーダ1は、モータ100の出力軸120と一体に回転する磁石(図示せず)と、磁石に対してモータ軸線方向の反出力側で対向する磁気センサ装置10とを有している。
【0031】
図1(c)、および
図2、
図3に示すように、磁気センサ装置10は、モータケース130に固定されたホルダ6と、ホルダ6に固定された回路基板50とを有しており、回路基板50において、軸線L方向の他方側L2の面には磁気センサ3が実装されている。かかる磁気センサ装置10およびホルダ6の詳細な構成は後述する。
【0032】
(ロータリエンコーダの構成)
図4は、本発明を適用した磁気センサ装置10を備えたロータリエンコーダ1の説明図である。
図5は、本発明を適用したロータリエンコーダ1の検出原理等を示す説明図であり、
図5(a)、(b)、(c)、(d)は、A相用の感磁膜の電気的な接続構造を示す説明図、B相用の感磁膜の電気的な接続構造を示す説明図、磁気センサ3から出力される信号の説明図、およびかかる信号と磁石20(出力軸120)の角度位置(電気角)との関係を示す説明図である。
【0033】
図4に示すように、磁石20は、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面21を軸線L方向の一方側L1に向けている。磁気センサ装置10は、磁石20の着磁面21に対して軸線L方向の一方側L1で対向する磁気抵抗素子4(センサ素子)を備えた磁気センサ3を有している。磁気センサ装置10は、磁気センサ3からの出力を増幅するアンプ部90(アンプ部90(+A)、アンプ部90(−A)、アンプ部90(+B)、アンプ部90(−B))、およびA/D変換部97を備えた半導体装置92を有している。また、磁気センサ装置10には、半導体装置92でA/D変換された信号に基づいて、磁石20の回転角度位置や回転速度等を検出する信号処理部を備えたマイクロコンピュータ91が設けられている。また、磁気センサ装置10は、磁石20に対向する位置に、第1ホール素子81と、第1ホール素子81に対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子82とを備えており、半導体装置92には、第1ホール素子81に対するアンプ部95や、第2ホール素子82に対するアンプ部96が設けられている。
【0034】
磁気センサ3は磁気抵抗素子4を有している。磁気抵抗素子4は、素子基板40と、磁石20の位相に対して互いに90°の位相差を有する2相の感磁膜(A相(SIN)の感磁膜、およびB相(COS)の感磁膜)とを備えている。かかる磁気抵抗素子4において、A相の感磁膜は、180°の位相差をもって出力軸120の移動検出を行う+A相(SIN+)の感磁膜43、および−A相(SIN-)の感磁膜41を備えており、B相の感磁膜は、180°の位相差をもって出力軸120の移動検出を行う+B相(COS+)の感磁膜44、および−B相(COS-)の感磁膜42を備えている。
【0035】
+A相の感磁膜43および−A相の感磁膜41は、
図5(a)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子Vccに接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。+A相の感磁膜43の中点位置には、+A相が出力される出力端子(+A)が設けられ、−A相の感磁膜41の中点位置には、−A相が出力される出力端子(−A)が設けられている。また、+B相の感磁膜44および−B相の感磁膜42も、+A相の感磁膜43および−A相の感磁膜41と同様、
図5(b)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。+B相の感磁膜44の中点位置には、+B相が出力される出力端子(+B)が設けられ、−B相の感磁膜42の中点位置には、−B相が出力される出力端子(−B)が設けられている。なお、
図5では便宜上、A相用の電源端子VccおよびB相用の電源端子Vccの各々を記載したが、A相用の電源端子VccとB相用の電源端子Vccとが共通になっていてもよい。また、
図5では便宜上、A相用のグランド端子GNDおよびB相用のグランド端子GNDの各々を記載したが、A相用のグランド端子GNDとB相用のグランド端子GNDとが共通になっていてもよい。
【0036】
磁気センサ3は、
図4に示すように、磁石20および出力軸120の中心を通る軸線L(回転中心軸線)上に配置されており、各感磁膜41〜44の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度で、着磁面21の面内方向で向きが変化する回転磁界を検出する。
【0037】
本形態の磁気センサ装置10においては、磁気センサ3から出力される正弦波信号sin、cosに補間処理や各種演算処理を行う信号処理を行うマイクロコンピュータ91が
設けられており、磁気抵抗素子4、第1ホール素子81、および第2ホール素子82からの出力に基づいて、磁石20(出力軸120)の回転角度位置が求められる。
【0038】
より具体的には、ロータリエンコーダにおいて、磁石20(出力軸120)が1回転すると、磁気センサ3の磁気抵抗素子4からは、
図5(c)に示す正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、正弦波信号sin、cosをアンプ部90(アンプ部90(+A)、90(−A)、90(+B)、90(−B))により増幅した後、デジタル信号化し、かかるデジタル信号をマイクロコンピュータ91に出力すると、マイクロコンピュータ91は、
図5(d)に示すリサージュ図を求める。従って、正弦波信号sin、cosからθ=tan-1(sin/cos)を求めれば、磁石20(出力軸120)の角度位置θが分かる。また、本形態では、磁石20(出力軸120)の回転中心軸(軸線L)からみて90°ずれた位置に第1ホール素子81および第2ホール素子82が配置されている。このため、第1ホール素子81および第2ホール素子82の出力の組合せにより、現在位置が正弦波信号sin、cosのいずれの区間に位置するかが分かる。従って、ロータリエンコーダ1は、磁気抵抗素子4での検出結果、第1ホール素子81での検出結果、および第2ホール素子82での検出結果に基づいて磁石20(出力軸120)の絶対角度位置情報を生成することができ、アブソリュート動作を行うことができる。
【0039】
(磁気抵抗素子4の平面構成)
図6は、本発明を適用した磁気センサ装置10に用いた磁気センサ3の説明図であり、
図6(a)、(b)、(c)は、磁気センサ3の平面構成を示す説明図、断面構成を示す説明図、および断面構成の変形例を示す説明図である。なお、
図6(b)、(c)では、磁気抵抗素子4(感磁膜41〜44)、温度監視用抵抗膜47、および加熱用抵抗膜48の層構造を模式的に示してある。また、
図6(a)では、温度監視用抵抗膜47については右下がりの斜線を付し、加熱用抵抗膜48については右上がりの斜線を付してある。
【0040】
図6(a)に示すように、磁気センサ3において、磁気抵抗素子4は、素子基板40と、素子基板40の一方面40aに形成された感磁膜41〜44とを備えており、感磁膜41〜44は、互いに折り返しながら延在している部分によって、素子基板40の中央に円形の感磁領域45を構成している。本形態において、素子基板40は四角形の平面形状を有するシリコン基板である。
【0041】
感磁膜41〜44からは配線部分が一体に延在しており、配線部分の端部には、A相用の電源端子VccA、A相用のグランド端子GNDA、+A相出力用の出力端子+A、−A相出力用の出力端子−A、B相用の電源端子VccB、B相用のグランド端子GNDB、+B相出力用の出力端子+B、および−B相出力用の出力端子−Bが設けられている。
【0042】
また、本形態の磁気センサ3は、素子基板40の一方面40aに温度監視用抵抗膜47(感温部)および加熱用抵抗膜48(ヒータ)が形成されている。ここで、加熱用抵抗膜48は、素子基板40の辺に沿って四角枠状に延在して閉ループを構成した状態で、感磁膜41〜44が形成されている領域の全体を囲んでいる。このため、加熱用抵抗膜48と感磁膜41〜44とは、素子基板40の面内方向でずれた領域に形成されており、平面視で重なっていない。また、加熱用抵抗膜48の相対向する2つの辺部分の一方からは配線部分481が延在し、その端部には、加熱用抵抗膜48に対する給電用の電源端子VccHが形成されている。これに対して、2つの辺部分の他方から延在する配線部分482の端部は、A相用のグランド端子GNDAに接続している。このため、A相用のグランド端子GNDAは、加熱用抵抗膜48に対するグランド端子GNDHとしても利用されている。ここで、配線部分481と加熱用抵抗膜48との接続位置と、配線部分482と加熱用抵抗膜48との接続位置は、感磁領域45に対して点対称位置にある。このため、配線部分481と加熱用抵抗膜48との接続位置から配線部分482と加熱用抵抗膜48との接
続位置に向かって右回りした際の加熱用抵抗膜48の長さと、配線部分481と加熱用抵抗膜48との接続位置から配線部分482と加熱用抵抗膜48との接続位置に向かって左回りした際の加熱用抵抗膜48の長さが等しい。
【0043】
温度監視用抵抗膜47は、加熱用抵抗膜48の内側領域のうち、加熱用抵抗膜48の4つの角の1つの角付近に設けられており、感磁領域45と加熱用抵抗膜48との間に位置する。温度監視用抵抗膜47は、複数回、折り返しながら延在した平面形状になっている。このため、占有面積が狭くても、温度監視用抵抗膜47を長く形成することができる。ここで、温度監視用抵抗膜47は、感磁膜44の配線部分と部分的に重なっているが、感磁領域45とは素子基板40の面内方向でずれた領域に形成されており、感磁領域45とは重なっていない。温度監視用抵抗膜47一方の端部には、温度監視用の電源端子VccSが形成されている。また、温度監視用抵抗膜47の他方の端部は、B相用のグランド端子GNDBに接続している。このため、B相用のグランド端子GNDBは、温度監視用抵抗膜47に対するグランド端子GNDSとしても利用されている。
【0044】
(磁気センサ3の断面構成)
本形態の磁気センサ3は、
図6(b)に示す断面構造、あるいは
図6(c)に示す断面構造をもって構成されている。具体的には、
図6(b)に示すように、まず、素子基板40の一方面40aには、シリコン酸化膜からなる第1絶縁膜401、シリコン酸化膜からなる第2絶縁膜402、およびポリイミド樹脂等からなる第3絶縁膜403が形成されている。本形態において、感磁膜41〜44はスパッタ法等により形成されたパーマロイ膜であり、温度監視用抵抗膜47および加熱用抵抗膜48はいずれも、スパッタ法等により形成されたチタン膜等、磁気抵抗効果を示さない導電膜である。
【0045】
ここで、感磁膜41〜44、温度監視用抵抗膜47、および加熱用抵抗膜48のうち、感磁膜41〜44が最も素子基板40の側(下層側)に形成されている。より具体的には、感磁膜41〜44は、素子基板40と第1絶縁膜401との層間に形成されている。温度監視用抵抗膜47は、第1絶縁膜401と第2絶縁膜402との層間に形成されている。加熱用抵抗膜48は、感磁膜41〜44と同様、素子基板40と第1絶縁膜401との層間に形成されている。このため、感磁膜41〜44は、加熱用抵抗膜48と同一の層に形成され、温度監視用抵抗膜47とは第1絶縁膜401を介して別の層に形成されている。
【0046】
図6(c)に示す形態でも、感磁膜41〜44は、素子基板40と第1絶縁膜401との層間に形成されている。温度監視用抵抗膜47は、第1絶縁膜401と第2絶縁膜402との層間に形成されている。加熱用抵抗膜48は、温度監視用抵抗膜47と同様、第1絶縁膜401と第2絶縁膜402との層間に形成されている。このため、感磁膜41〜44は、温度監視用抵抗膜47および加熱用抵抗膜48とは第1絶縁膜401を介して別の層に形成され、温度監視用抵抗膜47と加熱用抵抗膜48とは同一の層に形成されている。
【0047】
(磁気センサ3の温度調節)
図7は、本発明を適用した磁気センサ装置10の半導体装置92に構成した温度制御部の概略構成を示す説明図である。
図7に示すように、本形態の磁気センサ装置10には、温度監視用抵抗膜47の抵抗変化に基づいて加熱用抵抗膜48への給電を制御する温度制御部が構成されている。より具体的には、温度監視用抵抗膜47の温度監視用の電源端子VccSには抵抗84が接続されており、抵抗84において温度監視用抵抗膜47が接続されている側と反対側は電源端子VccS0に接続されている。温度監視用抵抗膜47において抵抗84が接続されている側と反対側には温度監視用のグランド端子GNDSが設けられており、温度監視用抵抗膜47と抵抗84は、電源端子VccS0とグランド端子
GNDSとの間で直列に接続されている。
【0048】
加熱用抵抗膜48の加熱用の電源端子VccHにはバイポーラトランジスタからなるスイッチング素子83が接続されており、スイッチング素子83において加熱用抵抗膜48が接続されていると反対側は電源端子VccH0に接続されている。加熱用抵抗膜48においてスイッチング素子83が接続されている側と反対側には加熱用のグランド端子GNDHが設けられており、加熱用抵抗膜48とスイッチング素子83とは、電源端子VccH0とグランド端子GNDHとの間で直列に接続されている。
【0049】
ここで、温度監視用抵抗膜47と抵抗84との接続部分は、オペアンプ85の一方の端子に接続されており、オペアンプ85の他方の端子にはスイッチング素子83をオンオフするための閾値となる電圧Voが入力されている。この状態で、素子基板40の温度が下がると、温度監視用抵抗膜47の抵抗値が低下し、抵抗84とで分圧された接続点の電圧が下がる。そのときオペアンプ85の他方の端子に入力されている閾値Voより低くなるとオペアンプ85がオン状態となりスイッチング素子83をオンするので加熱用抵抗膜48へ給電される。
【0050】
この状態で、素子基板40の温度が上がると、温度監視用抵抗膜47の抵抗値が上昇し、抵抗84との接続点の電圧が上昇する。そのときオペアンプ85の他方の端子に入力されている閾値Voより高くなるとオペアンプ85がオフ状態となりスイッチング素子83をオフするので加熱用抵抗膜48への給電が停止される。それ故、磁気センサ3(感磁膜41〜44)の温度は、温度監視用抵抗膜47および抵抗84の抵抗値等によって規定された所定の温度に維持される。
【0051】
(回路基板5の詳細構成)
図8は、本発明を適用した磁気センサ装置10に用いた回路基板50の説明図であり、
図8(a)、(b)は、回路基板5を軸線L方向の一方側L1からみた平面図、および回路基板5を軸線L方向の他方側L2からみた底面図である。
【0052】
図8に示すように、回路基板50には、磁気センサ3、マイクロコンピュータ91(第1電子部品)、半導体装置92(第2電子部品)、トランジスタ93、およびコネクタ94等が実装されている。本形態において、マイクロコンピュータ91、半導体装置92、トランジスタ93およびコネクタ94は、回路基板50の一方面501(モータ100の反出力側に向く面)に実装され、磁気センサ3は、回路基板50の他方面502(モータ100の出力側に向く面)に実装されている。
【0053】
回路基板50は、フェノール基板やガラス−エポキシ基板等に配線が形成されたプリント配線基板である。ここで、回路基板50には、回路基板50の中央領域の周りに回路基板50の一部50e、50fを残して延在する2本のスリット52、53が形成されており、回路基板50の中央領域はスリット52、53に囲まれた内側実装領域50aになっている。本形態において、スリット52、53は、相対向してX方向に延在する2つの辺部分52a、53aと、相対向してY方向に延在する2つの辺部分52c、53cと、斜めに延在する辺部分52b、53bとを備えており、内側実装領域50aは略6角形である。
【0054】
本形態では、内側実装領域50aに磁気センサ3および半導体装置92が実装されており、磁気センサ3と半導体装置92とは、軸線L方向で重なっている。また、回路基板50は、回路基板50の外縁50cとスリット52、53とによって挟まれた領域が外側実装領域50bになっている。外側実装領域50bには、マイクロコンピュータ91(第1電子部品)、トランジスタ93、およびコネクタ94等が実装されている。スリット53
は、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に延在している。
【0055】
より具体的には、外側実装領域50bでは、回路基板50のY方向の一方側の端部に沿ってコネクタ94が実装され、内側実装領域50aに対してコネクタ94とは反対側には、マイクロコンピュータ91とトランジスタ93とがX方向で離間する位置に配置されている。また、外側実装領域50bにおいて、マイクロコンピュータ91とトランジスタ93とによってX方向で挟まれた領域に対して内側実装領域50aとは反対側の領域には複数のスルーホール54がX方向に配列されている。かかるスルーホール54は、マイクロコンピュータ91に対する情報の書き込み用である。また、回路基板50の一方面501において、外側実装領域50bには、スリット53の辺部分53b、53cに対して内側実装領域50aとは反対側に複数の検査端子55が形成されている。
【0056】
図3、
図8に示すように、回路基板50の外側実装領域50bには、複数の第1貫通部56a、56b、56dが形成されている。第1貫通部56bは、第1貫通部56aに対してX方向で離間する位置に形成され、第1貫通部56dは、第1貫通部56aに対してY方向で離間する位置に形成されている。本形態において、複数の第1貫通部56a、56b、56dは、回路基板50の外縁50cから離間する穴として形成されている。
【0057】
また、回路基板50の外側実装領域50bには、第1貫通部56a、56dの間に第2貫通部57aが形成され、内側実装領域50aに対して第2貫通部57aとは反対側にも第2貫通部57bが形成されている。本形態において、複数の第2貫通部57a、57bは、回路基板50の外縁50cで円弧状に凹む切り欠きとして形成されている。
【0058】
かかる第1貫通部56a、56b、56dおよび第2貫通部57a、57bは、以下に説明するホルダ6に回路基板50を位置決め固定する際に利用される。
【0059】
(ホルダ6の構成)
図9は、本発明を適用した磁気センサ装置10に用いたホルダ6の説明図であり、
図9(a)、(b)、(c)は、ホルダ6を軸線L方向の一方側L1からみた平面図、ホルダ6を軸線L方向の他方側L2からみた底面図、およびホルダ6のA−A′断面図である。
図3、
図9に示すように、ホルダ6は、軸線Lと同心状の円形穴を備えた筒状胴部60を有しており、筒状胴部60の一方側L1の端部で回路基板50を保持する。ここで、ホルダ6の筒状胴部60の一方側L1の端部には、軸線L方向の一方側L1に向けて突出して一方側L1の端面で回路基板50の他方面502を支持する複数の回路基板支持部66a、66b、66c、66dが形成されている。回路基板支持部66a、66b、66c、66dは、軸線L回りで略等角度間隔に形成されている。
【0060】
また、ホルダ6の筒状胴部60の一方側L1の端部には、回路基板支持部66a、66dの間にも、軸線L方向の一方側L1に向けて突出して一方側L1の端面で回路基板50の他方面502を支持する回路基板支持部68aが形成され、回路基板支持部66b、66cの間にも、軸線L方向の一方側L1に向けて突出して一方側L1の端面で回路基板50の他方面502を支持する回路基板支持部68bが形成されている。
【0061】
図3、
図9に示すように、回路基板支持部66a、66b、66c、66d、および回路基板支持部68a、68bのうち、回路基板支持部66a、66b、66dは、回路基板支持部66a、66b、66dの外形寸法より細い外形寸法をもってその端面661から軸線L方向の一方側L1に向けて突出する軸部67a、67b、67dが形成された第1回路基板支持部になっている。かかる回路基板支持部66a、66b、66d(第1回路基板支持部)において、軸部67a、67b、67dは各々、回路基板50の第1貫通
部56a、56b、56dに嵌っている。従って、回路基板支持部66a、66b、66dが回路基板50の他方面502に当接して回路基板50を軸線L方向の他方側L2で支持し、軸部67a、67b、67dは回路基板50を軸線Lに直交する方向で位置決めしている。
【0062】
なお、回路基板支持部66cは、軸線L方向を向いた端面661から軸部が突出していない第3回路基板支持部になっている。それ故、回路基板50において回路基板支持部66c(第3回路基板支持部)と重なる位置には貫通部が形成されていない。このため、回路基板支持部66cの軸線L方向の一方側L1の端面は、回路基板50の他方面502において回路基板支持部66cと対向する領域である当接部503に当接し、回路基板50を軸線L方向の他方側L2で支持しているだけである。
【0063】
回路基板支持部68a、68bには、回路基板支持部68a、68bの外形寸法より細い外形寸法をもって軸線L方向の一方側L1に向けて突出する筒部69a、69bが形成された第2回路基板支持部になっており、筒部69a、69bは、回路基板50の第2貫通部57a、57b(切り欠き)の内側に位置する。
【0064】
ここで、筒部69a、69bには、
図3に示すように、回路基板50に対してホルダ6とは反対側(軸線L方向の一方側L1)から第2貫通部57a、57bを通ってネジ58、59が止められており、ネジ58、59のネジ頭58a、59aは、回路基板50を回路基板支持部68a、68bに押し付けている。また、ネジ58、59の軸部58b、59bは、第2貫通部57a、57b(切り欠き)に嵌って回路基板50をX方向の両側から位置決めしているとともに、回路基板50をY方向で位置決めしている。
【0065】
磁気センサ装置10では、ホルダ6に形成された回路基板支持部66a、66b、66d、および、これらと重なる位置に形成された回路基板50の第1貫通部56a、56b、56dは、3組の嵌合部を構成している。これらの嵌合部は、回路基板50の4隅(軸線L回りで略等角度間隔に設定された4箇所)のうちの3箇所に配置されている。一方、回路基板50の4隅のうちの残り1箇所は、回路基板支持部66cに軸部がないため、貫通部が形成されておらず、回路基板支持部66cの端面661と当接する当接部503となっている。また、ホルダ6に形成された回路基板支持部68a、68b、および、これらと重なる位置に形成された回路基板50の第2貫通部57a、57b(切り欠き)は、2組の嵌合部を構成しており、これらは、回路基板50のX方向の両側の端縁に配置されている。以上の5組の嵌合部は、ホルダ6に対し、回路基板50を軸線Lに直交する方向で位置決めしている。
【0066】
図10は本発明を適用した磁気センサ装置10に用いた回路基板50の平面図であり、軸線L方向の一方側L1から見た状態を示す。ここで、ホルダ6に設けられた回路基板支持部66a、66b、66dの軸部67a、67b、67dと、回路基板50に設けられた第1貫通部56a、56b、56dの内周面との隙間は、いずれも寸法D1である。また、回路基板支持部68a、68bの筒部69a、69bと、第2貫通部57a、57bの内周面との隙間は、いずれも寸法D2である。本形態では、D1>D2となるように両隙間の寸法が設定されている。従って、回路基板支持部68a、68b(第2回路基板支持部)を位置決め基準として、回路基板50の位置決めがなされる。
【0067】
ホルダ6において、軸線L方向の他方側L2の端部には、周方向の複数個所から軸線L方向の他方側L2に突出したセンサ装置固定用の突部63a、63b、63cが形成されており、突部63a、63b、63cは、筒状胴部60から径方向の外側にも突出している。突部63a、63b、63cにおいて、筒状胴部60から径方向外側に突出した部分には穴64a、64b、64cが形成されている。
【0068】
突部63a、63b、63cは、センサ装置固定用であり、突部63a、63b、63cおよび穴64a、64b、64cは、
図1に示すモータケース130にホルダ6を固定する際に用いられる。より具体的には、突部63a、63b、63cにおいて、軸線L方向の他方側L2の端面がモータケース130に接し、この状態で、モータケース130には、穴64a、64b、64cを介してネジ190(
図1(c)および
図2参照)が止められる。なお、ホルダ6の軸線L方向の他方側L2の面にはホルダ6を樹脂成形する際のヒケを抑制するための凹部62が形成されている。
【0069】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置10(センサ装置)は、回路基板50と、回路基板50に実装された磁気センサ3(センサ)と、回路基板50に実装されたマイクロコンピュータ91(第1電子部品)とを有している。また、磁気センサ3には、温度監視用抵抗膜47(感温部)および加熱用抵抗膜48(ヒータ)が形成されており、加熱用抵抗膜48は、温度監視用抵抗膜47での検出結果に基づいて磁気抵抗素子4の温度が一定になるように磁気抵抗素子4を加熱する。このため、磁気センサ3の検出結果は環境温度の影響を受けにくい。
【0070】
ここで、回路基板50には、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91とを結ぶ仮想線に対して交差する方向に延在するスリット53が形成されている。このため、回路基板50において、磁気センサ3が実装されている領域と、マイクロコンピュータ91が実装されている領域との間には、スリット53を利用した遮熱部が設けられている。従って、磁気センサ3が実装されている領域とマイクロコンピュータ91が実装されている領域との間の熱伝導が抑制されている。また、回路基板50には、磁気センサ3の周りに回路基板50を一部残して磁気センサ3を囲むように延在している。このため、磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aとマイクロコンピュータ91等が実装されている外側実装領域50bとの間の熱伝導がより抑制される。従って、回路基板50において磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aの温度が外側実装領域50bの影響を受けにくいので、磁気抵抗素子4の温度を加熱用抵抗膜48によって精度よく制御することができる。それ故、本形態の磁気センサ装置10によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。また、磁気センサ3において、磁気抵抗素子4を加熱用抵抗膜48によって加熱した場合でも、かかる熱がマイクロコンピュータ91に伝わりにくい。それ故、マイクロコンピュータ91での誤作動等の信頼性低下を防止することができる。
【0071】
特に本形態では、センサ装置が、センサ素子として磁気抵抗素子4を備えた磁気センサ装置10である。かかる磁気抵抗素子4では、感磁膜41〜44自身が温度によって抵抗値が変化するとともに、素子基板40と感磁膜41〜44との熱膨張係数の差に起因する応力が素子基板40の位置によって異なること等に起因して温度の影響を受けやすいが、本形態によれば、かかる温度変化の影響を抑制することができる。
【0072】
また、ホルダ6において回路基板50を支持する部分は、軸線L方向の一方側L1に向けて突出した複数の回路基板支持部66a、66b、66c、66d、68a、68bである。また、回路基板50を回路基板支持部66a、66b、66dの軸部67a、67b、67dで位置決めしている。従って、ホルダ6と回路基板50との接触面積が狭いので、ホルダ6と回路基板50との間の熱伝導を抑制することができる。また、回路基板50においてネジ58、59が止められた第2貫通部57a、57bは、回路基板50の外縁50cに形成された切り欠きであるため、磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aとネジ58、59による固定位置とが離間している。このため、回路基板50において磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aとホルダ6との間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板50において磁気センサ3が実装されている内側実
装領域50aの温度が変化しにくいので、磁気抵抗素子4の温度を加熱用抵抗膜48によって精度よく制御することができる。それ故、本形態の磁気センサ装置10によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【0073】
ここで、磁気センサ装置10は、素子基板40に感磁膜41〜44や端子を配置した磁気抵抗素子4を搭載した回路基板50を備えているが、回路基板50をホルダ6に固定する際に回路基板50の形状が変化すると、回路基板50の形状は残留応力を解放するように経時変化し、その形状変化に伴って抵抗値が変わるため、検出出力が経時によって変化してしまうという問題点がある。
【0074】
かかる問題点に対しては、回路基板50が固定される固定面の精度と、回路基板50の固定位置精度を高めることが望ましい。例えば、本形態では、ホルダ6と回路基板50との接触面積が狭い(小さい)ため、回路基板50を支持する固定面の精度管理ポイントが少ない。よって、固定面の精度管理が容易であり、固定面の精度が高いホルダを安価に製造できる。
【0075】
また、回路基板支持部66a、66b、66c、66dは軸線L回りで略等角度間隔で配置され、回路基板50を4箇所で均等に支持する。さらに、ネジ締め箇所となる回路基板支持部68a、68bについても、回路基板50の両側に対称に配置されている。このような均等配置により、固定時の回路基板50の変形を抑制でき、固定時の変形による残留応力が経時で解放されることによる回路基板50の形状変化を抑制できる。従って、回路基板50の変形による検出精度の低下を抑制できる。なお、回路基板支持部66a、66b、66c、66dを軸線L回りで略等角度間隔に配置することが望ましいが、略等角度間隔でなくても良く、軸線L回りの周方向で分散配置していれば良い。このような配置であっても、回路基板50の荷重を軸線L回りの周方向で分散して支持できるので、回路基板50の形状変化を抑制できる。
【0076】
また、回路基板50は、ホルダ6に対し、複数の軸部(軸部67a、67b、67d)と複数の第1貫通部(第1貫通部56a、56b、56d)が3箇所で嵌合することによって、軸線Lに直交する方向で位置決めされている。これら3組の嵌合部は、回路基板50の4隅のうちの3箇所に設けられ、4隅のうちの残り1箇所は、貫通部が形成されておらず、単なる当接部503となっている。従って、回路基板50の表裏が正しい向きで、且つ、回路基板50の軸線L回りの回転位置が予め定めた正しい回転位置のときにだけ、3箇所の軸部の全てを第1貫通部と嵌合させることが可能である。そして、3箇所の軸部の全てが第1貫通部と嵌合される回転位置は、360度の範囲内で1箇所のみである。従って、ホルダ6に対して回路基板50を固定する時に、その表裏および回転位置を間違えることがない。よって、回路基板50を間違った姿勢で固定してしまうおそれがなく、高い位置精度で固定できる。また、製造時の管理項目を削減できるので、安価に製造することが可能である。
【0077】
また、ホルダ6には、回路基板支持部68a、68b(第2回路基板支持部)に筒部69a、69bが形成され、これを位置決め基準として回路基板50が位置決めされ、ネジ締め固定されている。このように、ネジ締め箇所に筒部69a、69bがあると、ネジ頭58a、59aが筒部69a、69bに当接した位置でネジ58、59が止まり、それ以上ネジ頭58a、59aが回路基板50に食い込むことがない。従って、ネジ締め時に厳密なトルク管理を行わなくても、ネジ締め時に回路基板50が破壊されたり、ネジ山が破壊されることを防止できる。
【0078】
また、ホルダ6はセンサ装置固定用の突部63a、63b、63cによってモータケース130に固定されているため、ホルダ6とモータケース130との接触面積が狭い。ま
た、ホルダ6は樹脂製である。このため、ホルダ6を介しての回路基板50とモータケース130との間の熱伝導を抑制することができる。従って、回路基板50において磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aの温度が変化しにくいので、磁気抵抗素子4の温度を加熱用抵抗膜48によって精度よく制御することができる。それ故、本形態の磁気センサ装置10によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【0079】
また、磁気センサ装置10によって磁束密度(物理量)が検出される磁石20(検出対象部)が出力軸120の回転に伴って回転する状態でホルダ6の筒状胴部60の内側に配置されているので、筒状胴部60内の空気を撹拌させることができる。このため、温度分布の偏りの発生を抑制させることができるので、磁気抵抗素子4に加熱用抵抗膜48の熱を均等に行き渡らせることができる。従って、回路基板50において磁気センサ3が実装されている内側実装領域50aの温度が変化しにくいので、磁気抵抗素子4の温度を加熱用抵抗膜48によって精度よく制御することができる。それ故、本形態の磁気センサ装置10によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【0080】
また、回路基板50では、内側実装領域50aに半導体装置92(第2電子部品)が実装され、かかる半導体装置92は発熱性を有している。但し、半導体装置92は、回路基板50において磁気センサ3が実装されている側とは反対側の面に実装されている。このため、半導体装置92と磁気センサ3との間の熱伝達を抑制することができる。従って、磁気センサ3の温度が変化しにくいので、磁気抵抗素子4の温度を加熱用抵抗膜48によって精度よく制御することができる。それ故、本形態の磁気センサ装置10によれば、環境温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる。
【0081】
(遮熱効果に対する評価結果)
まず、磁気センサ装置10をオフ状態にした状態でモータ100の側面に向けて熱風機から熱風を送って加熱した後、加熱を停止した以降の温度を各部位で計測した。その結果を表1に示す。なお、環境温度は30℃である。
【0083】
表1から分かるように、加熱終了時(0分)、モータケース130の温度は51.7℃であったが、ホルダ6の温度は37.7℃であり、半導体装置92の温度は35.6℃であった。それ故、モータケース130から磁気センサ装置10への熱伝達性が低いことが分かる。なお、加熱終了からら10分後および20分後でも同様の結果であった。
【0084】
次に、磁気センサ装置10の加熱用抵抗膜48に通電して磁気センサ3の温度を70℃とした状態における半導体装置92、トランジスタ93およびマイクロコンピュータ91の温度を計測した。その結果を表2に示す。なお、環境温度は30℃である。
【0086】
表2から分かるように、半導体装置92の温度は、68.1℃であり、磁気センサ3の温度より1.9℃低い結果であった。また、外側実装領域50bに実装したトランジスタ93の温度は50.0℃であり、磁気センサ3の温度より20.0℃低い結果であった。また、外側実装領域50bに実装したマイクロコンピュータ91の温度は51.6℃であり、磁気センサ3の温度より18.4℃低い結果であった。
【0087】
(回路基板50の別の実施の形態)
図11は、本発明を適用した磁気センサ装置10に用いた別の回路基板150の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、
図7を参照して説明した形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0088】
図11に示すように、本形態では、回路基板150の外側実装領域50bにおいて、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91(第1電子部品)との間には、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91(第1電子部品)とを結ぶ仮想線に対して交差するX方向に沿って複数のスルーホール54が配置されている。かかるスルーホール54は、マイクロコンピュータ91への情報の書き込み用であり、リード線等の接続が行われていない。
【0089】
かかる構成によれば、磁気センサ3が実装されている領域とマイクロコンピュータ91が実装されている領域との間の熱伝導をスルーホール54によって抑制することができる。
【0090】
また、回路基板150の外側実装領域50bにおいて、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91(第1電子部品)との間には、磁気センサ3とマイクロコンピュータ91(第1電子部品)とを結ぶ仮想線に対して交差するX方向に沿って複数の検査端子55が配置されている。かかる検査端子は、磁気センサ装置10単体での検査用であり、リード線等の接続が行われていない。その他の構成は、
図8を参照して説明した回路基板50と略同様である。かかる構成によれば、磁気センサ3が実装されている領域とマイクロコンピュータ91が実装されている領域とを離間させることができるので、磁気センサ3が実装されている領域とマイクロコンピュータ91が実装されている領域との間の熱伝導をスルーホール54によって抑制することができる。
【0091】
(回路基板50の固定構造が異なる別の実施の形態)
(1)上記各形態において、回路基板支持部66a、66b、66d(第1回路基板支持部)の軸部67a、67b、67dと、第1貫通部56a、56b、56dの内周面との隙間の寸法D1、および、回路基板支持部68a、68b(第2回路基板支持部)の筒部69a、69bと、第2貫通部57a、57bの内周面との隙間の寸法D2の大小関係を、上記形態とは逆のD1<D2となるように両隙間の寸法を設定しても良い。この場合、回路基板支持部66a、66b、66d(第1回路基板支持部)を位置決め基準として
、回路基板50の位置決めがなされる。従って、ネジ締め時のネジ締め箇所の変形などによって、回路基板50の位置精度が低下することを抑制できる。
【0092】
(2)
図12は別の形態の第2回路基板支持部を備えた磁気センサ装置の分解斜視図である。ホルダ206には、上記形態の回路基板支持部68a、68bの筒部69a、69bを除去して根元側の部分のみを残した形状の回路基板支持部268a、268b(第2回路基板支持部)が設けられている。回路基板支持部268a、268bの先端面270(軸線L方向の一方側L1の端面)には固定穴269a、269bが開口している。一方、回路基板250には、固定穴269a、269bと重なる位置に第2貫通部257a、257b(切り欠き)が形成されている。
【0093】
第2貫通部257a、257bは、上記形態の第2貫通部57a、57bよりも切り欠き幅が小さい。筒部69a、69bを形成しない場合、第2貫通部257a、257bは、ネジ58、59の軸部58b、59bを挿通可能な切り欠き幅であればよい。このような構成では、第2貫通部257a、257bの切り欠き幅が狭い分だけ、ネジ頭58a、59aを受ける面積を広くすることができる。従って、ネジ締め時に加わる力によってネジ頭58a、59aが回路基板250に食い込むことを抑制できる。また、回路基板支持部268a、268bの先端面270と回路基板250との当接面積が広いので、回路基板250を安定して支えることができる。
【0094】
また、
図12の形態では、第2貫通部257a、257bの内周面と、ネジ58、59の軸部58b、59bとの隙間の寸法をD3(図示省略)としたとき、D3>D1である。すなわち、回路基板支持部66a、66b、66d(第1回路基板支持部)を位置決め基準として、回路基板250の位置決めがなされる。従って、ネジ締め箇所の変形などによって、回路基板250の位置精度が低下することを抑制できる。
【0095】
(3)上記各形態において、回路基板支持部66a、66b、66d(第1回路基板支持部)の軸部67a、67b、67dを回路基板50に弾性接着剤で接着してもよい。接着箇所は、3箇所のうちの少なくとも1箇所であってもよい。
図13は第1回路基板支持部と回路基板50との接着箇所の断面図である。
図13では、軸部67aの箇所を示すが、他の軸部67b、67dについても同様に接着することができる。
図13に示すように、第1貫通部56aに挿入された軸部67aの先端の回りに、回路基板50の上から弾性接着剤300を垂らして接着する。弾性接着剤300としては、例えば、ポッティング材などの樹脂を用いる。
図13では、弾性接着剤300は第1貫通部56aの内周面と軸部67aの外周面との隙間にまで入り込んでいないが、入り込んでいてもよい。
【0096】
このように接着することで、弾性体(弾性接着剤300)によって回路基板50が支持される。磁気センサ装置10にモータ回転時の振動や外部からの振動が加わると、ネジ締め箇所以外の回路基板50の端部が共振を発生させる場合があるが、軸部67a/67b/67dを接着することにより、回路基板50をネジ以外でも固定することができる。従って、回路基板50への振動の影響を小さくすることができ、センサの検出出力への影響も小さくできる。よって、振動による検出精度の低下を抑制できる。
【0097】
(固定構造に対する評価結果)
回路基板50を平面に載せて固定するベタ付け構造(従来構造)の場合、回路基板が固定時に変形して、残留応力が経時で解放されることに起因するセンサ検出出力値の経時変化は、20mV以上になっていた。これに対し、
図3等に図示した本発明の形態では、センサ検出出力値の経時変化は、0.5mV程度であることが確認された。
【0098】
(その他の形態)
上記各形態では、センサ装置として磁気センサ装置10を例示したが、光センサ装置等、他のセンサ装置に本発明を適用してもよい。