(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322087
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-172193(P2014-172193)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-45180(P2016-45180A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】林 義典
(72)【発明者】
【氏名】若葉 博之
(72)【発明者】
【氏名】井筒 紀
(72)【発明者】
【氏名】関 勝利
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋子
(72)【発明者】
【氏名】権藤 隆徳
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−83628(JP,A)
【文献】
国際公開第98/29709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材片が設けられて透光性を有する第1板状体の当該部材片が設けられた面に透光性を有する接着剤によって透光性を有する第2板状体を貼り合わせてなる貼り合わせ板状体の検査装置であって、
前記第1板状体の表面を斜め上方から照明する照明器と、
該照明器により照明される前記貼り合わせ板状体を撮影するカメラと、
前記第2板状体を透過する光を反射する反射部材と、
前記照明器により前記第1板状体の表面が照明されている状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、
該撮影画像取得手段にて取得された撮影画像上での、前記第1板状体を介して前記照明器により照明される前記部材片に対応した第1画像部分と、照明される前記部材片の影が前記接着剤の層及び前記第2板状体を介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得手段と、
該画像ずれ量取得手段にて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて、前記接着剤の層の厚さまたは厚さ変動を求める処理ユニットとを有する検査装置。
【請求項2】
前記カメラは、ラインセンサを備えたラインセンサカメラであって、
前記ラインセンサカメラと前記照明器との相対位置を保持しつつ、前記ラインセンサカメラと前記貼り合わせ板状体とを前記ラインセンサの延びる方向を横切る方向に相対移動させる移動機構を有する請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
部材片が設けられて透光性を有する第1板状体の当該部材片の設けられた面に透光性を有する接着剤によって透光性を有する第2板状体を貼り合わせてなる貼り合わせ板状体の検査方法であって、
前記第1板状体の表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記貼り合わせ板状体を撮影するカメラと、前記第2板状体を透過する光を反射する反射部材とを用い、
前記照明器により前記第1板状体の表面が照明されている状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、
該撮影画像取得ステップにて取得された撮影画像上での、前記第1板状体を介して前記照明器により照明される前記部材片に対応した第1画像部分と、照明される前記部材片の影が前記接着剤の層及び前記第2板状体を介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得ステップと、
該画像ずれ量取得ステップにて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて、前記接着剤の層の厚さまたは厚さ変動を求めるステップとを有する検査方法。
【請求項4】
回路素子が配列形成されたセンサパネルの当該回路素子の形成された面に透光性を有する接着剤にてカバーガラスを貼り付けてなるセンサパネルアッセンブリの検査装置であって、
前記センサパネルの表面を斜め上方から照明する照明器と、
該照明器により照明される前記センサパネルアッセンブリを撮影するカメラと、
前記カバーガラスを透過する光を反射する反射部材と、
前記照明器により前記センサパネルの表面が照明される状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、
該撮影画像取得手段にて取得された撮影画像上での、前記センサパネルを介して前記照明器により照明される前記回路素子に対応した第1画像部分と、照明される前記回路素子の影が前記接着剤の層及び前記カバーガラスを介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得手段と、
該画像ずれ量取得手段にて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて前記接着剤の層の厚さまたは厚さ変動を求める処理ユニットとを有する検査装置。
【請求項5】
前記カメラは、ラインセンサを備えたラインセンサカメラであって、
前記ラインセンサカメラと前記照明器との相対位置を保持しつつ、前記ラインセンサカメラと前記センサパネルアッセンブリとを前記ラインセンサの延びる方向を横切る方向に相対移動させる移動機構を有する請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
回路素子が配列形成されたセンサパネルの当該回路素子の形成された面に透光性を有する接着剤にてカバーガラスを貼り付けてなるセンサパネルアッセンブリの検査方法であって、
前記センサパネルの表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記センサパネルアッセンブリを撮影するカメラと、前記カバーガラスを透過する光を反射する反射部材とを用い、
前記照明器により前記センサパネルの表面が照明される状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、
該撮影画像取得ステップにて取得された撮影画像上での、前記センサパネルを介して前記照明器により照明される前記回路素子に対応した第1画像部分と、照明される前記回路素子の影が前記接着剤の層及び前記カバーガラスを介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得ステップと、
該画像ずれ量取得ステップにて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて前記接着剤の層の厚さまたは厚さ変動を求めるステップとを有する検査方法。
【請求項7】
透光性を有する接着剤によって透光性を有する第1板状体と透光性を有する第2板状体を貼り合わせてなる貼り合わせ板状体の検査装置であって、
前記第1板状体の表面を斜め上方から照明する照明器と、
前記第1板状体と前記照明器との間に固定配置され、規則的に形成された目印が設けられた基準板状体と、
該照明器により照明される前記貼り合わせ板状体を撮影するカメラと、
前記第2板状体を透過する光を反射する反射部材と、
前記照明器により前記第1板状体の表面が照明されている状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、
該撮影画像取得手段にて取得された撮影画像上での、前記照明器により照明される前記目印の第1の影に対応した第1画像部分と、照明される前記目印の前記第1の影の影である第2の影が前記接着剤の層及び前記第2板状体を介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該第2の影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得手段と、
該画像ずれ量取得手段にて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて前記接着剤の層の厚さまたは厚さ変動を求める処理ユニットとを有する検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子が配列形成されたセンサパネルとカバーガラスとを透光性を有する接着剤にて貼り合わせてなるセンサパネルアッセンブリ等の貼り合わせ板状体を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル式の液晶表示パネルには、例えば、
図1A及び
図1Bに示すようなセンサパネルアッセンブリ10(貼り合わせ板状体)が用いられる。なお、
図1Aは、センサパネルアッセンブリ10の構造を示す断面図であり、
図1Bは、センサパネルアッセンブリ10の構造を示す平面図である。このセンサパネルアッセンブリ10は、透光性を有するセンサパネル11(第1板状体)と透光性を有するカバーガラス12(第2板状体)とが、透光性を有する接着剤13(レジン)によって貼り合わされた構造となっている。センサパネル11の接着剤13に接する面には透明電極等のセンサ素子(回路素子、部材片)が配列形成されている。また、カバーガラス12は、周辺部が所定の幅の不透光領域12b(黒色領域)になって、その内側の領域が透光領域12aになっている。
【0003】
このような構造のセンサパネルアッセンブリ10は、
図1Cに示すように、液晶パネルアッセンブリ20(液晶パネル、色フィルタ、偏光板等で構成される)に透光性を有する接着剤15によって接着されている。このように形成されたタッチパネル式の液晶表示パネルでは、液晶パネルアッセンブリ20によって画像表示がなされるとともに、指でタッチされたカバーガラス12上の位置に対応するセンサパネル11のセンサ素子(透明電極)の応動(例えば、容量の変化)に基づいた信号が発生するようになっている。そして、このセンサパネル11の各センサ素子の応動に基づいた信号によって液晶パネルアッセンブリ20による画像表示を制御することができる。
【0004】
ところで、上述したような液晶表示パネルに用いられるセンサパネルアッセンブリ10(貼り合わせ板状体)を製造する工程において、センサパネル11とカバーガラス12との間に介在される接着剤13の層の厚さ(以下「層厚」ともいう)の変動を所定の範囲内に維持させることが重要である。このため、透光性を有する接着剤13の層の厚さ変動を貼り合わせ面に沿った複数個所にて検出することで、接着剤13の層厚を管理する必要性が生じる。
【0005】
従来、複数の層で形成された透明体の各層の厚さを検出する厚み測定装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−222506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような厚み測定装置では、透明体に含まれる複数層の各厚みを求めるために、各層の屈折率を正確に知る必要がある。また、1つの層の厚さは均一であるとの前提に基づくものであるから、先に示したセンサパネルアッセンブリ10などの貼り合わせ板状体において、貼り合わせ面に沿った接着剤の厚さ変動を管理するといったことの示唆もない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透光性を有する2つの板状体、そして両板状体に挟まれた接着剤の屈折率を用いなくても、接着剤の層の厚さ変動を評価することができる検査装置及び検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査装置は、部材片が設けられて透光性を有する第1板状体の当該部材片が設けられた面に透光性を有する接着剤によって透光性を有する第2板状体を貼り合わせてなる貼り合わせ板状体の検査装置であって、前記第1板状体の表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記貼り合わせ板状体を撮影するカメラと、前記第2板状体を透過する光を反射する反射部材と、前記照明器により前記第1板状体の表面が照明されている状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、該撮影画像取得手段にて取得された撮影画像上での、前記第1板状体を介して前記照明器により照明される前記部材片に対応した第1画像部分と、照明される前記部材片の影が前記接着剤の層及び前記第2板状体を介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得手段と、該画像ずれ量取得手段にて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて、前記接着剤の層の厚さ
または厚さ変動を
求める
処理ユニットとを有する構成となる。
【0013】
このような構成により、
貼り合わせ板状体の第1板状体の表面が照明器によって照明されると、その第1板状体を介して前記照明器により当該第1板状体の接着剤に接する面に設けられた部材片が照明され、更に、その照明される部材片の影が接着剤の層及び第2板状体を介して反射部材に投影される。この状態でカメラが前記貼り合わせ板状体を撮影すると、そのカメラによる撮影画像には、照明される前記部材片に対応した第1画像部分と、前記反射部材に投影されて反射されるその部材片の影に対応した第2画像部分とが含まれており、それら第1画像部分と第2画像部分とのずれ量が取得される。そして、撮影画像上での部材片に対応した第1画像部分と該部材片の影に対応した第2画像部分とのずれ量に基づいて接着剤の層の厚さが演算され、その演算により得られた接着剤の層の厚さに基づいた検査結果情報が出力される。
【0014】
本発明に係る検査装置において、前記カメラは、ラインセンサを備えたラインセンサカメラであって、前記ラインセンサカメラと前記照明器との相対位置を保持しつつ、前記ラインセンサカメラと前記貼り合わせ板状体とを前記ラインセンサの延びる方向を横切る方向に相対移動させる移動機構を有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、移動機構が、ラインセンサカメラと照明器との相対位置を保持しつつ、ラインセンサカメラと貼り合わせ板状体とを移動させる過程で、ラインセンサカメラは、ラインセンサに対応したラインごとに前記貼り合わせ板状体を撮影する。そして、1ラインごとの画像を集積した撮影画像が得られる。この撮影画像には、部材片に対応した第1画像部分と該部材片の影に対応した第2画像部分とが含まれる。
【0016】
本発明に係る検査方法は、部材片が設けられて透光性を有する第1板状体の当該部材片の設けられた面に透光性を有する接着剤によって透光性を有する第2板状体を貼り合わせてなる貼り合わせ板状体の検査方法であって、前記第1板状体の表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記貼り合わせ板状体を撮影するカメラと、前記第2板状体を透過する光を反射する反射部材とを用い、前記照明器により前記第1板状体の表面が照明されている状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、該撮影画像取得ステップにて取得された撮影画像上での、前記第1板状体を介して前記照明器により照明される前記部材片に対応した第1画像部分と、照明される前記部材片の影が前記接着剤の層及び前記第2板状体を介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得ステップと、該画像ずれ量取得ステップにて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて、前記接着剤の層の厚さ
または厚さ変動を
求めるステップとを有する構成となる。
【0017】
また、本発明の検査装置は、回路素子が配列形成されたセンサパネルの当該回路素子の形成された面に透光性を有する接着剤にてカバーガラスを貼り付けてなるセンサパネルアッセンブリの検査装置であって、前記センサパネルの表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記センサパネルアッセンブリを撮影するカメラと、前記カバーガラスを透過する光を反射する反射部材と、前記照明器により前記センサパネルの表面が照明される状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、該撮影画像取得手段にて取得された撮影画像上での、前記センサパネルを介して前記照明器により照明される前記回路素子に対応した第1画像部分と、照明される前記回路素子の影が前記接着剤の層及び前記カバーガラスを介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得手段と、該画像ずれ量取得手段にて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて前記接着剤の層の厚さ
または厚さ変動を
求める
処理ユニットとを有する構成となる。
【0018】
このような構成により、センサパネルアッセンブリのセンサパネルの表面が照明器によって照明されると、そのセンサパネルを介して前記照明器により当該センサパネルの接着剤に接する面に設けられた回路素子が照明され、更に、その照明される回路素子の影が接着剤の層及びカバーガラスを介して反射部材に投影される。この状態で、カメラが前記センサパネルアッセンブリを撮影すると、そのカメラによる撮影画像には、照明される前記回路素子に対応した第1画像部分と、前記反射部材に投影されて反射されるその回路素子の影に対応した第2画像部分とが含まれており、それら第1画像部分と第2画像部分とのずれ量が取得される。そして、そのずれ量に基づいた検査結果情報が出力される。
【0020】
また、本発明に係る検査方法は、回路素子が配列形成されたセンサパネルの当該回路素子の形成された面に透光性を有する接着剤にてカバーガラスを貼り付けてなるセンサパネルアッセンブリの検査方法であって、前記センサパネルの表面を斜め上方から照明する照明器と、該照明器により照明される前記センサパネルアッセンブリを撮影するカメラと、前記カバーガラスを透過する光を反射する反射部材とを用い、前記照明器により前記センサパネルの表面が照明される状態での前記カメラによる撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、該撮影画像取得ステップにて取得された撮影画像上での、前記センサパネルを介して前記照明器により照明される前記回路素子に対応した第1画像部分と、照明される前記回路素子の影が前記接着剤の層及び前記カバーガラスを介して前記反射部材に投影されて該反射部材により反射される当該影に対応した第2画像部分とのずれ量を取得する画像ずれ量取得ステップと、該画像ずれ量取得ステップにて取得された前記撮影画像上での前記第1画像部分と前記第2画像部分とのずれ量に基づいて前記接着剤の層の厚さ
または厚さ変動を
求めるステップとを有する構成となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検査装置及び検査方法によれば、透光性を有する第1板状体(例えば、センサパネル)及び第2板状体(例えば、カバーガラス)に挟まれた接着剤の層の厚さ変動を、両板状体、接着剤の各屈折率を用いなくても評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】貼り合わせ板状体の一例であるセンサパネルアッセンブリの構造を示す断面図である。
【
図1B】貼り合わせ板状体の一例であるセンサパネルアッセンブリの構造を示す平面図である。
【
図1C】
図1A及び
図1Bに示すセンサパネルアッセンブリと液晶アッセンブリとを接着剤により貼り合わせた構造のタッチパネル式の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の一形態に係る検査装置の側方から見た基本的な構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の一形態に係る検査装置の処理系の基本構成を示すブロック図である。
【
図4】検査処理の流れを表すフローチャートである。
【
図5】照明されるセンサパネルアッセンブリの撮影画像が形成される原理を示す図である。
【
図6】照明されるセンサパネルアッセンブリの撮影画像の一例を示す図である。
【
図7】照明されるセンサパネルアッセンブリについての撮影画像S上での素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとの関係(その1)を示す図である。
【
図8A】照明されるセンサパネルアッセンブリについて、接着剤を介さずに撮像画像S上に形成される素子部分Irと素子影画像部分Ivとの関係を示す図である。
【
図8B】照明されるセンサパネルアッセンブリについて、既知の厚さの接着剤を介して撮像画像S上に形成される素子部分Irと素子影画像部分Ivとの関係を示す図である。
【
図9】ずれ量と接着剤の厚さとの相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る検査装置は、
図2に示すように構成される。この検査装置は、前述したように(
図1A、
図1B及び
図1C参照)、センサパネル11(第1板状体)とカバーガラス12(第2板状体)とを接着剤13にて貼り合わせた構造となるセンサパネルアッセンブリ10(貼り合わせ板状体)の接着剤13の層の厚さを評価するための検査を行う。
【0025】
図2において、この検査装置は、ラインセンサカメラ50、照明ユニット51(照明器)、鏡などの反射板52(反射部材)、及び移動機構60を有している。センサパネルアッセンブリ10は、センサパネル11を上方に、カバーガラス12を下方にそれぞれ向けて反射板52に載置されている。移動機構60は、センサパネルアッセンブリ10を載せた反射板52を所定の方向(
図2における方向A)に延びる移動経路上を直線移動させる。
【0026】
照明ユニット51は、複数のLED(発光ダイオード)を有しており、その複数のLEDがセンサパネルアッセンブリ10(反射板52)の移動経路(
図2における方向A)を横切る方向(例えば、直交する方向:
図2の紙面に直交する方向)に所定数の列になって配列されている。照明ユニット51は、前記移動経路を反射板52とともに直線移動するセンサパネルアッセンブリ10のセンサパネル11の表面を斜め上方から照明するように、具体的には、各LEDが、センサパネルアッセンブリ10の移動方向(
図2のA方向)の下流側から上流側に向けてセンサパネル11の表面の法線nに対して角度αでセンサパネル11の当該表面を照明するように固定設置されている。
【0027】
ラインセンサカメラ50は、例えば、CCD素子列にて構成されたラインセンサ50a及びレンズ等の光学系(図示略)を含み、照明ユニット51の上流側で移動経路上のセンサパネルアッセンブリ10のセンサパネル11に対向するように固定配置されている。そして、ラインセンサカメラ50の姿勢は、ラインセンサ50aの延びる方向がセンサパネルアッセンブリ10の移動方向(
図2の方向A)を横切り(例えば、直交する方向:
図2の紙面に直交する方向)、かつ、照明ユニット51の照明方向(法線nに対して角度α)に対するセンサパネルアッセンブリ10での正反射の方向(法線nに対して前記照明方向と逆側に角度α)から移動経路上のセンサパネルアッセンブリ10を臨むように、即ち、センサパネルアッセンブリ10にて反射する照明ユニット51からの光がラインセンサ50aに入射するように調整される。
【0028】
前述した構造の検査装置では、移動機構60により反射板52とともにセンサパネルアッセンブリ10が移動経路上を方向Aに移動することにより、ラインセンサカメラ50と照明ユニット51との相対的な位置関係が維持されつつ、ラインセンサカメラ50が前記移動方向Aと逆方向Bにセンサパネルアッセンブリ10を光学的に走査する。この走査により、ラインセンサカメラ50によるセンサパネルアッセンブリ10の撮影がなされる。なお、ラインセンサ50aの長さの制約から、ラインセンサカメラ50の一回の方向Bへの走査によってセンサパネルアッセンブリ10の全面を走査することができない場合は、撮影領域を走査方向Bと直交する方向にステップ的に移動させつつ、複数回走査することによって、センサパネルアッセンブリ10の全面についての撮影がなされる。
【0029】
なお、反射板52は、センサアッセンブリ10の移動経路中の所定位置(照明ユニット51と対向する位置)に固定配置するようにしてもよい。
【0030】
検査装置の処理系は、
図3に示すように構成される。
【0031】
図3において、ラインセンサカメラ50、表示ユニット71及び操作ユニット72が処理ユニット70に接続されている。また、処理ユニット70は、移動機構60による反射板52(センサパネルアッセンブリ10)の移動に同期してセンサパネルアッセンブリ10を光学的に走査するラインセンサカメラ50からの映像信号に基づいてセンサパネルアッセンブリ10の画像を表す画像情報を生成する。そして、処理ユニット70は、前記画像情報に基づいてセンサパネルアッセンブリ10の検査画像を表示ユニット71に表示させる。この検査画像には、後述するようにセンサパネル11の回路素子が現れ得る。
【0032】
処理ユニット70は、
図4に示す手順に従って、センサパネルアッセンブリ10の接着剤13の層の厚さ変動についての評価を行うための検査処理を行う。
【0033】
図4において、処理ユニット70は、照明ユニット51を点灯させる(S11)。この状態で、処理ユニット70は、反射板52とともにセンサパネルアッセンブリ10を移動経路に沿って方向A(
図2参照)に移動させる(S12)。これにより、ラインセンサカメラ50(ラインセンサ50a)が照明ユニット51によって照明されるセンサパネルアッセンブリ10におけるセンサパネル11の表面を方向B(
図2参照)に順次走査することになる。その過程で、処理ユニット70は、ラインセンサカメラ50から順次出力される映像信号から画像情報を1ラインずつ生成する(S13)ことを、ラインセンサカメラ50によるセンサパネルアッセンブリ10の全面の走査が終了する(S14)まで繰り返し行う。
【0034】
ラインセンサカメラ50によるセンサパネルアッセンブリ10の全面の走査が終了する(S14でYES)と、処理ユニット10は、センサパネルアッセンブリ10の全面についての1ラインずつの画像情報からセンサパネルアッセンブリ10についての撮影画像を表す撮影画像情報を取得する(S15:S12〜S14とともに撮影画像取得手段を構成)。なお、処理ユニット70は、この撮影画像情報に基づいて、センサパネルアッセンブリ10についての撮影画像を表示ユニット71に表示させることができる。
【0035】
ところで、
図5及び
図8Aに示すように、センサパネル11の接着剤13側(つまり貼り合わせ面側)の表面には、複数個のセンサ素子111(部材片)が規則的に形成されている。センサパネルアッセンブリ10において、センサパネル11に形成された透明電極等のセンサ素子111の光透過率と、センサパネル11、接着剤13及びカバーガラス12それぞれの光透過率とに差がある。このため、センサパネルアッセンブリ10についての撮影画像には、センサパネル11を介して照明ユニット51によって照明されるセンサ素子111と、この照明されるセンサ素子111の影が接着剤13の層及びカバーガラス12を介して反射板52に投影されてその反射板52で反射される当該影とが写り込む。このため、
図5及び
図6に示すように、センサパネルアッセンブリ10についての撮影画像Sには、センサ素子111に対応した素子画像部分Ir(第1画像部分)と、そのセンサ素子111の影121(虚像121´)に対応した素子影画像部分Iv(第2画像部分)とが含まれる。
図7に示すように、撮影画像S上における素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとのずれ量Lは、接着剤13の層の厚さhと、カバーガラス12の厚さT2とに起因している。
【0036】
センサパネル11、接着剤13及びカバーガラス12のそれぞれの厚さが小さいこと、及び屈折率が大きく異なっていないこと等を考慮して、センサパネル11、接着剤13及びカバーガラス12の屈折率が同じであると仮定すると、センサパネルアッセンブリ10のラインセンサカメラ50での撮影に関して、
図7に示すような、幾何光学的なモデルが考えられる。この
図7に示すモデルにおいて次の関係が成り立つ。
【0037】
△ABDにおいて、
(h+T2)/x=sinθ ・・・(1)
が成り立つ。
△ABCにおいて、
L/x=sin (π―2θ) ・・・(2)
が成り立つ。
(1)式より
x=(h+T2)/sinθ ・・・(3)
(2)式より
L=x・{sin(π−2θ)}
=x・(2sinθ・cosθ) ・・・(4)
(4)式に(3)式を代入して、
L={(h+T2)/sinθ}・(2sinθ・cosθ)
=h・2cosθ+2・T2cosθ ・・・(5)
(5)式において、カバーガラス12の厚さT2と照明の方向(θ)は既知であり、一定とすると、ずれ量Lは、接着剤13の層の厚さhの変化によって変動することがわかる。
そこで、本実施の形態では、センサパネル11に規則的に形成された複数個のセンサ素子111を順次用いてこのずれ量Lを取得することで、接着剤の層の厚さ変動を評価するようにしている。つまり、貼り合わせ面に沿って接着剤13の厚みが均一である限り、センサパネルアッセンブリ10におけるラインセンサカメラ50の走査方向に沿って同じ量のずれ量Lが検出される。接着剤13の層の厚さhが均一でない場合、このずれ量Lも均一でなくなる。すなわち、接着剤13の層の厚さhが厚くなる箇所のずれ量Lは大きくなり、薄くなる箇所のずれ量Lは少なくなる。このずれ量Lの変化をみることにより、接着剤13の均一性を容易に評価することができる。ずれ量Lの変化は、表示ユニット71に表示される撮影画像から目視で確認してもよいし、具体的にずれ量Lの数値を計測し、それぞれの位置でのずれ量Lの数値の変化を確認してもよい。あるいは、それぞれの位置でのずれ量Lの数値の変化が予め設定した閾値を超えていないかを判断してセンサパネルアッセンブリの良否判断を行うようにしてもよい。
【0038】
図4に戻って、処理ユニット70は、照明されるセンサパネルアッセンブリ10についての撮影画像情報を取得すると(S15)、その撮影画像情報の画像処理を行って、撮影画像上の素子画像部分Ir及び素子影画像部分Iv(
図5及び
図6参照)を特定する(S16)。その後、処理ユニット70は、撮影画像上において素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとのずれ量Lを計測する(S17:画像ずれ量取得手段)。撮影画像上での長さと実空間での長さとの関係が予め取得されており、処理ユニット70は、前記関係に基づいて撮影画像上での素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとのずれ量Lを実空間での距離として演算する(S18)。
【0039】
そして、処理ユニット70は、センサパネル11に規則的に形成された複数個のセンサ素子111を順次用いて計測されたずれ量Lに基づいた検査結果情報を生成し、その検査結果情報を表示ユニット71に表示させる(S19:検査結果出力手段)。この検査結果情報は、複数個のセンサ素子111に対応したずれ量Lそのものであっても、演算されたずれ量の値と予め設定した基準値あるいは許容値との比較結果に基づいた接着剤13の層の厚さ変動の良否判定結果に係る情報であってもよい。
【0040】
なお、ずれ量Lを実空間での距離として演算することなく、撮影画像上において求められたずれ量Lの値をそのまま検査結果として用いてもよい。すなわち、このずれ量について予め設定した基準値あるいは許容値を準備しておき、実空間での距離に変換することなく、検査によって得られたずれ量Lに基づいてセンサパネル11の良否判断などを行うようにしてもよい。
【0041】
上述したような検査装置では、照明ユニット51によって斜め上方から照明されるセンサパネルアッセンブリ10におけるセンサパネル11の表面をラインセンサカメラ51によって走査し、その過程で得られた撮影画像上における素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとのずれ量Lが演算される。そして、そのずれ量Lに基づいた検査結果情報が出力される。このような検査装置では、透光性を有する第1板状体(例えばセンサパネル)及び第2板状体(例えばカバーガラス)に挟まれた接着剤の層の厚さ変動を、両板状体、接着剤の各屈折率を用いなくても評価することができる。
【0042】
さらに、センサパネル11の接着剤13側の表面に形成されたセンサ素子111を利用して接着剤13の厚み変動を容易に評価することができる。しかも、均一性を欠く場合でも、厚みに変化が表れる箇所がどこの部分であるか、規則的に形成されたセンサ素子の位置から容易に知ることができる。
【0043】
また、照明ユニット51は、ラインセンサカメラ50にて撮影できる程度に、センサ素子111がセンサパネル11を介して照明されるとともに、接着剤13の層及びカバーガラス12を介して反射板52に当該センサ素子111の影121が投影されるものであればよく、特にコヒーレントな光を投射するものでなくてもよい。また、ラインセンサカメラ50にてセンサ素子11と反射板52に投影される当該センサ素子111の影121とが撮影できるように、照明ユニット51及びラインセンサカメラ51を含む光学系を調整すればよく、センサパネル11の両面、接着剤13の層の両面、及びカバーガラス12の両面にて適正にコヒーレントな光線が反射及び屈折するように調整する等の面倒な光学系の調整は必要ない。
【0044】
更に、本実施の形態では、センサパネル11にもともと備えられたセンサ素子111を利用することによって、1つのセンサパネルアッセンブリ10の厚みの変動を検査する例を説明したが、これに限らない。部材片を有していない貼り合わせ板状体であっても、規則的に配列される部材片に代わる目印が形成された基準板状体を貼り合わせ板状体と照明器との間に固定配置する(例えば、貼り合わせ板状体の上面に貼りつける)ことによって、その貼り合わせ板状体を容易に検査することもできる。この場合、目印の影(第1の影)と、この第1の影の影(第2の影)が撮像画像に現れる。この2つの影のずれ量を求め、上記実施形態と同様の手法で接着剤の厚み変動を検出することができる。
【0045】
なお、前述した検査装置では、素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとのずれ量Lに基づいた検査結果情報を出力するものであったが、それに限られない。例えば、前記ずれ量Lを用いて接着剤13の層の厚さhを求め、求めた厚さhそのものや、厚さhの良否判定結果を、接着剤13の層を評価し得る検査結果情報として出力するようにしてもよい。
ずれ量Lを用いた接着剤13の層の厚さhは、たとえば次のようにして求めることができる。
【0046】
図8Aのように、センサパネル11とカバーガラス12との間に接着剤を介在させない状態で、前述したのと同様の光学系(
図2参照)を用い、前述したのと同様の手法に従って、撮影画像上の素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとの間のずれ量L1を求める。次に、
図8Bに示すように、センサパネル11とカバーガラス12とを厚みが既知(h1)の接着剤13を介在させた貼り合わせ体(センサパネルアッセンブリ10)を用意する。この場合、センサパネル11とカバーガラス12との間に、高さが既知(h1)のブロックゲージGを介在させるようにしてもよい。この貼り合わせ体について、前述したのと同様の光学系(
図2参照)を用いて、前述したのと同様の手法に従って、撮影画像上の素子画像部分Irと素子影画像部分Ivとの間のずれ量L2を求める。
【0047】
これらのずれ量L1、L2を用いて、
図9に示すような、ずれ量Lと、接着剤13の層厚hとの関係を表す相関図を作成する。前記式(5)で表されるように(θ、T2は定数)、ずれ量Lと層厚hとの関係が一次関数であることを考慮すると、L(ずれ量)−h(層厚)平面において、(L=L1、h=0)の点と、(L=L2、h=h1)の点とを結ぶ直線Qが、ずれ量Lと接着剤Lの層厚hとの相関関係を表す。
【0048】
処理ユニット70は、前述した手法に従ってずれ量Liが得られると、
図9に示す相関関係(直線Q)を用いて、ずれ量Liに対応する接着剤13の層厚hiを取得する(層厚演算手段)。
【0049】
なお、層厚を取得する場合においても、得られたずれ量を実空間における距離に変換した値との相関関係を用いてもよいし、ずれ量の値そのものとの相関関係を用いるようにしてもよい。
【0050】
なお、ラインセンサカメラ50の取付け角度は、照明ユニット51の照明方向(α、θ)に対して正確に正反射の関係(
図2、
図5参照)になっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 センサパネルアッセンブリ
11 センサパネル
12 カバーガラス
13、15 接着剤
20 液晶パネルアッセンブ
リ
50 ラインセンサカメラ
50a ラインセンサ
51 照明ユニット
52 反射板
60 移動機構
70 処理ユニット
71 表示ユニット
72 操作ユニット
111 センサ素子
121 影