特許第6322114号(P6322114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322114
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】検体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20180423BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   G01N35/02 G
   G01N35/10 C
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-201079(P2014-201079)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-70802(P2016-70802A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】大淵 仁史
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕介
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−235037(JP,A)
【文献】 特開2009−204386(JP,A)
【文献】 特開2008−151594(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089966(WO,A1)
【文献】 特開平11−287811(JP,A)
【文献】 特開2005−201769(JP,A)
【文献】 特開2011−252728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重複領域および非重複領域を含む第1動作範囲を移動可能で、検体を収容する容器に対して第1処理を行うための第1機構部と、
前記重複領域を含むとともに前記非重複領域とは重複しない第2動作範囲を移動可能で、前記第1処理が完了した前記容器に対し、第2処理を行うための第2機構部と、
前記第1機構部の動作を検出するための動作検出部と、
前記動作検出部の検出結果に基づいて前記第1機構部の異常を検出すると、前記第1処理を中止させて前記第1機構部を前記非重複領域の所定位置まで移動させ、前記第1機構部が前記所定位置に移動したことを検出すると、前記第2機構部に前記第2処理を継続させる制御を行う制御部と、を備える、検体処理装置。
【請求項2】
前記第1機構部は、前記容器への試薬の分注処理を行うための第1試薬分注機構を含み、
前記第2機構部は、前記分注処理が完了した前記容器の移送処理を行うための容器移送機構を含む、請求項1に記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記第1試薬分注機構は、前記重複領域で前記容器への試薬の分注処理を行う、請求項2に記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記分注処理後の前記容器を保持して、前記容器内の検体と試薬とを反応させるための反応部と、
前記容器から、検体と試薬との未反応成分を分離するための分離処理部とをさらに備え、
前記第2機構部は、前記分注処理後の前記容器を前記反応部に移送し、反応後の前記容器を、前記反応部から前記分離処理部に前記重複領域を通過する経路で移送する、請求項2又は3に記載の検体処理装置。
【請求項5】
前記容器への試薬の分注処理を行うための第2試薬分注機構をさらに備え、
前記第2機構部は、前記第2試薬分注機構による試薬の分注処理を行った後の前記容器を、前記分離処理部に移送し、前記分離処理部による分離処理を行った後の前記容器を、前記重複領域に移動し、
前記第1試薬分注機構は、前記第2機構部により前記分離処理部から前記重複領域に移送された前記容器への試薬の分注処理を行う、請求項4に記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記第2機構部は、前記第2試薬分注機構により試薬の分注処理を行った後の前記容器を、前記反応部に移送し、反応後の前記容器を、前記分離処理部に前記重複領域を通過する経路で移送する、請求項5に記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記第1機構部は、前記試薬を分注するためのピペットと、前記ピペットを上下方向に移動させるための昇降機構とを含み、
前記動作検出部は、前記ピペットの衝突を検出するための衝突検出センサを含み、
前記制御部は、前記衝突検出センサの検出結果に基づき、前記ピペットの衝突を検出する、請求項2〜6のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記第1機構部は、前記試薬を分注するためのピペットと、前記ピペットを上下方向に移動させるための昇降機構とを含み、
前記動作検出部は、前記ピペットの上下方向の上側原点位置を検出するための第1原点センサを含み、
前記制御部は、前記第1原点センサの検出結果に基づき、前記第1機構部における前記上側原点位置への原点復帰に関する異常を検出する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記第1機構部は、前記重複領域と前記非重複領域との間を移動するためのモータを含み、
前記動作検出部は、前記モータの回転位置を検出するためのエンコーダを含み、
前記制御部は、前記エンコーダの検出結果に基づき、前記第1機構部による前記重複領域と前記非重複領域との間の移動に関する異常を検出する、請求項2〜8のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記動作検出部は、前記非重複領域において前記第1機構部の水平方向の水平原点位置を検出する第2原点センサを含み、
前記制御部は、前記第1機構部の異常を検出すると、前記第2原点センサの検出結果に基づいて前記第1機構部を前記水平原点位置に退避させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記第1機構部は、前記容器への試薬の分注処理を行うための第1試薬分注機構であり、
前記水平原点位置に設けられ、前記分注処理後の前記第1機構部の洗浄を行うための洗浄部をさらに備える、請求項10に記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1機構部の前記非重複領域への退避動作中に前記第1機構部の異常を検出すると、前記第1機構部および前記第2機構部の両方の動作を停止させる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記第1機構部は、前記容器への移送処理を行うための第1容器移送機構を含み、
前記第2機構部は、前記第1容器移送機構による前記移送処理が完了した前記容器の移送処理を行うための第2容器移送機構を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項14】
前記第2機構部により前記第2処理が行われた検体を測定する測定部をさらに備え、
前記第1機構部及び前記第2機構部は、第1階層に配置されており、
前記測定部は、前記第1階層より下方の第2階層に配置されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体処理装置の異常処理に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上流側の処理工程を行う第1機構部と、下流側の処理工程を行う第2機構部とを備えた検体処理装置が開示されている。この検体処理装置は、第1機構部に異常が発生した場合に、第1機構部を停止させて第2機構部の動作を継続させる異常処理を行う。第1機構部と第2機構部とは、互いの動作範囲が重複しないように離間して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1機構部の異常停止時の動作干渉を回避するために、第1機構部と第2機構部とを離間させて互いの動作範囲を重複しないようにする必要がある。その結果、第1機構部および第2機構部を含む検体処理装置の各部のレイアウトが制約されるので、レイアウトの自由度を向上させることが望まれている。
【0005】
この発明は、上流側の処理工程において異常が発生した場合にも下流側の処理工程を継続させることが可能で、かつ、各処理工程を行うための機構部のレイアウトの自由度を向上させることが可能な検体処理装置に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この検体処理装置は、重複領域および非重複領域を含む第1動作範囲を移動可能で、検体を収容する容器に対して第1処理を行うための第1機構部と、重複領域を含むとともに非重複領域とは重複しない第2動作範囲を移動可能で、第1処理が完了した容器に対し、第2処理を行うための第2機構部と、第1機構部の動作を検出するための動作検出部と、動作検出部の検出結果に基づいて第1機構部の異常を検出すると、第1処理を中止させて第1機構部を非重複領域の所定位置まで移動させ、第1機構部が所定位置に移動したことを検出すると、第2機構部に第2処理を継続させる制御を行う制御部と、を備える。

【発明の効果】
【0007】
上流側の処理工程において異常が発生した場合にも下流側の処理工程を継続させることができ、かつ、各処理工程を行うための機構部のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による検体処理装置の概要を示した模式的な平面図である。
図2】一実施形態による検体処理装置の第1階層を示した模式的な平面図である。
図3図2における容器移送機構および試薬分注機構のそれぞれの動作範囲を説明するための部分拡大図である。
図4】一実施形態による検体処理装置の第2階層を示した模式的な平面図である。
図5】一実施形態による検体処理装置の階層構造を説明するための模式的な側面図である。
図6】一実施形態による検体処理装置の試薬分注機構を示した斜視図である。
図7】測定処理動作を説明するためのフロー図である。
図8】R3試薬分注処理動作を説明するためのフロー図である。
図9】制御部の異常処理動作を説明するためのフロー図である。
図10】退避動作を説明するためのフロー図である。
図11】異常検出時に停止させる機構の範囲を説明するための模式図である。
図12】第1機構部および第2機構部の他の例を示した模式的な平面図である。
図13】第1機構部および第2機構部の他の例を示した模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1図13を参照して、本実施形態による検体処理装置100の構成について説明する。
【0011】
[検体処理装置の概要]
図1に示すように、検体処理装置100は、第1機構部11と、第2機構部12と、動作検出部13と、制御部14とを備える。検体処理装置100は、検体を収容する容器15に対して複数の処理を順次実施することにより、検体の分析を行うための装置である。
【0012】
第1機構部11は、検体を収容する容器15に対して第1処理を実行できる。第2機構部12は、第1処理が完了した容器15に対し、第2処理を実行できる。すなわち、第1機構部11が第2機構部12よりも上流側の処理工程を実施し、第2機構部12が第1機構部11よりも下流側の処理工程を実施する。
【0013】
第1機構部11は、重複領域16および非重複領域17aを含む第1動作範囲11aを移動できる。第2機構部12は、重複領域16を含むとともに非重複領域17aとは重複しない第2動作範囲12aを移動できる。
【0014】
第1動作範囲11aと第2動作範囲12aとは、重複領域16において重複する。一方、第1動作範囲11aの非重複領域17aと第2動作範囲12aの非重複領域17bとは、重複しない。このため、重複領域16には、第1機構部11および第2機構部12の一方のみが進入できる。
【0015】
動作検出部13は、第1機構部11の動作を検出できる。動作検出部13は、各種のセンサを含むことができる。動作検出部13は、第1動作範囲11aの所定位置に第1機構部11が移動したことを検出する位置センサやスイッチを含んでいてもよい。また、動作検出部13は、第1処理の動作に伴って第1機構部11が物体に衝突(接触)したことを検出するための検出部を含んでいてもよい。動作検出部13には、第1機構部11の実施する第1処理に応じた構成が採用される。
【0016】
制御部14は、第1機構部11および第2機構部12の動作を制御する。制御部14は、動作検出部13の検出信号を取得し、動作検出部13の検出結果に基づいて第1機構部11の異常を検出できる。制御部14は、第1機構部11の異常を検出すると、第1処理を中止させて第1機構部11を重複領域16から退避させ、第2機構部12に第2処理を継続させる制御を行うことができる。その結果、第1機構部11に異常が発生した場合でも、異常発生時点で既に第1処理が完了している容器15については、第2処理を含む下流工程の処理が実施され、分析の対象となる。
【0017】
これにより、第1機構部11と第2機構部12とを互いの動作範囲が重複するように配置した場合でも、第1機構部11の異常発生時に第1機構部11を重複領域16から非重複領域17aへ退避させることができる。その結果、上流側の処理工程において異常が発生した場合にも下流側の処理工程を継続させることができる。また、干渉の発生を防ぐために第1機構部11と第2機構部12とを離間させる必要がないので、各処理工程を行うための第1機構部11および第2機構部12のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0018】
好ましくは、制御部14は、第1機構部11の非重複領域17aへの退避動作中に第1機構部11の異常を検出すると、第1機構部11および第2機構部12の両方の動作を停止させる。すなわち、第1機構部11の異常検出に伴う第1機構部11の退避動作の実行時に、退避動作を正常に完了できない異常が発生した場合、制御部14は、第1機構部11および第2機構部12の両方の動作を停止させる。これにより、非重複領域17aへの退避動作を完了できないような異常の発生時には、第1機構部11のみならず第2機構部12も動作を停止させて、第1機構部11および第2機構部12と、第1機構部11および第2機構部12に関わる他の機構との動作干渉を確実かつ速やかに防げる。
【0019】
[検体処理装置の詳細な構成]
以下、図2以降を参照して、図1に示した検体処理装置100の詳細な構成について具体的に説明する。
【0020】
検体処理装置100は、好ましい実施形態においては、測定対象の検体に含まれる抗原や抗体などを測定するための免疫分析装置である。検体は、血清などの血液試料である。なお、検体処理装置100は、免疫分析装置以外の他の検体処理装置であってもよい。説明は省略するが、検体処理装置100は、たとえば、血液凝固測定装置、尿中有形成分分析装置、遺伝子増幅測定装置または生化学分析装置などの臨床検査用検体分析装置でもよい。
【0021】
検体処理装置100は、図2に示すように、筐体21と、検体搬送機構22と、検体分注機構23と、チップ供給機構24と、容器供給機構25と、容器搬送部26と、試薬保持部27と、複数の反応部28a〜28cと、第1試薬分注機構31、第2試薬分注機構30および第3試薬分注機構29と、1つの分離処理部32と、R4/R5試薬分注機構33と、階層間搬送部34とを備えている。また、検体処理装置100は、これらの各部に容器15を搬送する容器移送機構35、36および37を備えている。
【0022】
好ましい実施形態では、第1機構部11は、第1試薬分注機構31を含み、第2機構部12は、容器移送機構36を含む。これにより、第1試薬分注機構31において異常が発生した場合にも、異常発生前に既に分注処理が完了している容器15については、容器移送機構36によって処理工程の下流側に移送することができる。第1機構部11および第2機構部12は、他の機構を含んでもよく、第1機構部11および第2機構部12の他の具体例については後述する。
【0023】
筐体21は、平面視において長方形状を有する。筐体21は、第1機構部11および第2機構部12などの検体処理装置100の各部を収容している。筐体21は、第1階層21a(図2参照)と、第1階層21aの下側にある第2階層21b(図4参照)と、第2階層21bの下側にある第3階層21c(図5参照)とを含んでいる。つまり、筐体21は、上下方向に複数の階層が設けられた階層構造を有している。なお、筐体21は、1階層または2階層で構成されていてもよいし、4階層以上の階層が設けられるように構成されていてもよい。以下では、便宜的に、筐体21の長辺に沿う水平方向をX方向とし、筐体21の短辺に沿う水平方向をY方向とする。X方向およびY方向と直交する上下方向をZ方向とする。
【0024】
まず、図2を参照して、第1階層21aに設置された各部の構成について説明する。
【0025】
検体搬送機構22は、検体を収容した試験管22aが複数設置されたラック22bを所定の検体吸引位置まで搬送できる。検体分注機構23は、試験管22a中の検体を吸引し、吸引した検体を検体分注位置26aに配置された容器15に分注できる。容器15は、容器15内の検体と試薬とを反応させるための反応容器(キュベット;cuvette)である。検体分注機構23は、検体の分注に際して、チップ供給機構24により供給された使い切りのピペットチップ(図示せず)を装着する。
【0026】
容器供給機構25は、多数の容器15を収容し、容器搬送部26に容器15を1つずつ供給できる。容器搬送部26は、容器供給機構25から供給された容器15を保持して、検体分注位置26aと、R1試薬分注位置26bと、容器取出位置26cとに搬送できる。
【0027】
試薬保持部27は、円筒形状のケース27aと、円環状の試薬設置部27bおよび27cと、を含んでいる。試薬保持部27は、断熱機能を有するケース27a内に設置した試薬を冷却機構によって冷却する保冷庫である。
【0028】
円環状の試薬設置部27bおよび27cは、同心状に配置されていて、互いに独立して回転できる。外周側の試薬設置部27bは、試薬容器27dを複数保持できる。試薬容器27dには、R2試薬が収容されている。R2試薬は、捕捉抗体に結合する磁性粒子を含む。内周側の試薬設置部27cは、試薬容器27eを複数保持できる。試薬容器27eは、内部の試薬収容空間が2つに区画されていて、2つの試薬収容空間に、それぞれR1試薬とR3試薬とが収容されている。R1試薬は、検体に含まれる抗原と結合する捕捉抗体を含む。R3試薬は、抗原、捕捉抗体および磁性粒子の複合体に結合する標識抗体を含む。試薬設置部27bおよび27cの回転によって、複数の試薬容器27dおよび27eがそれぞれ所定の試薬吸引位置に位置付けられる。ケース27aの上面には、開閉可能な吸引口27f、27gおよび27hが、R1試薬〜R3試薬のそれぞれの吸引用に3つ設けられている。
【0029】
3つの反応部28a〜28cは、それぞれ、容器15を保持して容器15に収容された検体と試薬とを反応させる機能を有する。具体的には、反応部28a〜28cは、それぞれ複数の容器保持孔28dを有し、容器保持孔28dにセットされた容器15に収容された試料を加温できる。
【0030】
反応部28aは、検体およびR1試薬分注後の容器15内の試料の1次反応処理と、R2試薬分注後の試料に対する2次反応処理とを行う。反応部28aと反応部28bとの間には、保持孔内に容器15を保持して、容器15内の試料中の磁性粒子を磁石により集める集磁ポート38がある。集磁ポート38は、容器移送機構35の動作範囲35aと、容器移送機構36の第2動作範囲12aとの重複領域にある。集磁ポート38において、容器移送機構35と容器移送機構36との間の容器15の受け渡しが行われる。
【0031】
反応部28bは、反応部28aと分離処理部32との間の位置にある。反応部28bは、R3試薬分注後の試料に対する3次反応処理を行う。反応部28bと試薬保持部27との間には、R2分注ポート39がある。反応部28bと分離処理部32との間には、R3分注ポート40がある。R2分注ポート39は、容器移送機構35の動作範囲35aと、第2試薬分注機構30の動作範囲との重複領域にある。R3分注ポート40は、容器移送機構36の第2動作範囲12aと、第1試薬分注機構31の第1動作範囲11aとの重複領域16(図3参照)にある。
【0032】
反応部28cは、後述するR4試薬およびR5試薬分注後の試料に対する4次反応処理を行う。
【0033】
第1試薬分注機構31、第2試薬分注機構30および第3試薬分注機構29は、容器15への試薬の分注処理を行う機能を有する。第3試薬分注機構29は、試薬吸引位置である吸引口27fと試薬分注位置26bとの間を移動できる。第3試薬分注機構29は、試薬の吸引および吐出を行うためのピペット29aを含む。ピペット29aは、試薬保持部27の試薬容器27eからR1試薬を吸引し、R1試薬分注位置26bの容器15にR1試薬を分注する。
【0034】
第2試薬分注機構30は、試薬吸引位置である吸引口27gと、試薬分注位置であるR2分注ポート39との間を移動できる。第2試薬分注機構30は、試薬の吸引および吐出を行うためのピペット30aを含む。ピペット30aは、試薬保持部27の試薬容器27dからR2試薬を吸引し、R2分注ポート39に搬送された容器15にR2試薬を分注する。
【0035】
図3に示すように、第1試薬分注機構31は、試薬吸引位置である吸引口27hと、試薬分注位置であるR3分注ポート40との間の第1動作範囲11aを移動できる。第1試薬分注機構31は、試薬の吸引および吐出を行うためのピペット31aを含む。ピペット31aは、試薬保持部27の試薬容器27e(図2参照)からR3試薬を吸引し、R3分注ポート40に搬送された容器15にR3試薬を分注する。吸引口27hとR3分注ポート40との間には、洗浄部41がある。洗浄部41には、洗浄液が供給される。洗浄部41では、分注処理後のピペット31aの内部および外部を洗浄が行われる。吸引口27hおよび洗浄部41は非重複領域17aにある。
【0036】
図2に戻り、分離処理部32は、反応部28bと反応部28cとの間に配置されている。分離処理部32は、容器15から、検体と試薬との未反応成分とを分離するBF分離処理を実行する機能を有する。分離処理部32は、それぞれ容器15を設置可能な複数の処理ポート32aを含む。本実施形態では、処理ポート32aは4つ設けられている。反応部28b側の2つの処理ポート32aでは、R2試薬分注後の容器15に対する1次BF分離処理が実施される。反応部28c側の2つの処理ポート32aでは、R3試薬分注後の容器15に対する2次BF分離処理が実施される。
【0037】
分離処理部32と反応部28cとの間には、中継部42が設けられている。ある。中継部42は、容器15を保持できる保持孔を有する。中継部42には、2次BF分離処理後の容器15が搬送される。中継部42は、容器移送機構36の第2動作範囲12aと、容器移送機構37の動作範囲37aとの重複領域にある。中継部42において、容器移送機構36と容器移送機構37との間の容器15の受け渡しが行われる。
【0038】
R4/R5試薬分注機構33は、R4試薬ノズル33aおよびR5試薬ノズル33bを含む。R4試薬ノズル33aおよびR5試薬ノズル33bは、それぞれ、R4試薬およびR5試薬を容器15内に吐出する。R4試薬は分散液を含み、R5試薬は発光基質を含む。
【0039】
階層間搬送部34は、容器15を保持できる保持孔を有する。階層間搬送部34は、後述する昇降装置44によって、第1階層21aと第2階層21bとの間を昇降される。階層間搬送部34と昇降装置44とによって、第1階層21aと第2階層21bとの間の容器15の移送ができる。
【0040】
容器移送機構35、36および37は、それぞれ、容器15を保持して各部に搬送する機能を有する。容器移送機構35、36および37は、いずれも、水平2軸および上下1軸の直交3軸への移動が可能な直交ロボット機構である。容器移送機構35、36および37の構造は基本的の同様であり、公知の構成を採用することができる。ここでは、容器移送機構36についてのみ説明して容器移送機構35および37については省略する。
【0041】
容器移送機構36は、図3に示すように、X方向の移動機構51、Y方向の移動機構52および上下方向(Z方向)の移動機構53を含む。移動機構51、移動機構52および移動機構53は、それぞれX軸用のモータ54、Y軸用のモータ55およびZ軸用のモータ56を有する。また、容器移送機構36は、容器15を把持するキャッチャ57を含む。キャッチャ57は、移動機構51、移動機構52および移動機構53によってXYZの3軸方向に移動できる。容器移送機構36は、第2動作範囲12aで水平移動できる。
【0042】
第2動作範囲12aには、反応部28b、集磁ポート38、R3分注ポート40、分離処理部32および中継部42が含まれる。第2動作範囲12aのうち、R3分注ポート40を含む領域が、第1試薬分注機構31の第1動作範囲11aとの重複領域16である。その他の領域は、第1動作範囲11aとの非重複領域17bである。
【0043】
容器移送機構36は、好ましくは、R3試薬の分注処理後の容器15を反応部28bに移送し、反応後の容器15を、反応部28bから分離処理部32に重複領域16を通過する経路で移送する。このように容器移送機構36が重複領域16を通過して反応部28bと分離処理部32とを往復する移送経路を採用すれば、重複領域16を避ける移送経路を実現するために反応部28bと分離処理部32とを隣接させたり、反応部28bおよび分離処理部32を複数設けたりする必要がなくなるので、反応部28bおよび分離処理部32や、第1試薬分注機構31などのレイアウトの自由度を向上させることができる。そして、重複領域16で第1試薬分注機構31に異常が発生した場合でも、第1試薬分注機構31を非重複領域17aまで退避させることができるので、容器移送機構36による移送処理を継続させることができる。
【0044】
また、好ましい実施形態では、容器移送機構36は、第2試薬分注機構30によるR2試薬の分注処理を行った後の容器15を、分離処理部32に移送し、分離処理部32による分離処理を行った後の容器15を、重複領域16に移動する。そして、第1試薬分注機構31は、容器移送機構36により分離処理部32から重複領域16に移送された容器15へのR3試薬の分注処理を行う。これにより、重複領域16を避ける移送経路を実現するために第2試薬分注機構30と分離処理部32とを隣接させる必要がなくなる。
【0045】
また、好ましい実施形態では、容器移送機構36は、第2試薬分注機構30によりR2試薬の分注処理を行った後の容器15を、反応部28bに移送し、反応後の容器15を、分離処理部32に重複領域16を通過する経路で移送する。これにより、第2試薬分注機構30、反応部28b、分離処理部32および第1試薬分注機構31の各部のレイアウトの自由度を向上させることができる。この結果、容器移送機構36は重複領域16を反復して通過することになるが、その場合でも、重複領域16で第1試薬分注機構31に異常が発生した場合に容器移送機構36による反復的な移送処理を継続させることができる。
【0046】
なお、図2に戻って、容器移送機構35は、容器15を保持して動作範囲35aを移動できる。動作範囲35aには、反応部28a、R2分注ポート39および集磁ポート38が含まれる。容器移送機構37は、容器15を保持して動作範囲37aを移動できる。動作範囲37aには、中継部42、反応部28c、R4/R5試薬分注機構33および階層間搬送部34が含まれる。
【0047】
次に、図4を参照して、第2階層21bに設置された各部の構成について説明する。
【0048】
検体処理装置100は、筐体21の第2階層21bにおいて、測定部43、昇降装置44、容器搬送部45、容器廃棄口46および制御部14を備える。このように、好ましい実施形態では、測定部43は、第1階層21aより下方の第2階層21bに配置されている。第1機構部11(第1試薬分注機構31)および第2機構部12(容器移送機構36)を第1階層21aに配置し、測定部43を第2階層21bに配置することによって、検体処理装置100の設置面積を小さくすることができる。その場合でも、第1機構部11および第2機構部12の各動作範囲に重複領域16を持たせることができるので、十分なレイアウトの自由度を確保することができる。
【0049】
容器搬送部45は、第2階層21bに下降された階層間搬送部34と、測定部43と、容器廃棄口46との間で容器15を搬送する。
【0050】
測定部43は、光電子増倍管などの光検出器43aを含む。測定部43は、各種処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光検出器43aで取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定する。
【0051】
制御部14は、CPU14aや記憶部14bなどを含むPC(パーソナルコンピュータ)を備える。PCは、記憶部14bに記憶された制御プログラム14cをCPU14aが実行することにより、検体処理装置100の制御部として機能する。制御部14は、上述の通り、動作検出部13の検出結果に基づいて第1機構部11の異常を検出する制御、第1機構部11を非重複領域17aへ退避させる制御、第2機構部12に第2処理を継続させる制御を行う。また、制御部14は、上述した検体処理装置100の各部の動作を制御する。
【0052】
なお、図5に示すように、検体処理装置100は、筐体21の第3階層21cにおいて、容器収容部47を備える。容器収容部47には、洗浄液を収容する洗浄液容器47aが設置されている。洗浄液容器47a内の洗浄液は、図示しない流体回路を経由して、第1階層21aの洗浄部41に供給される。容器収容部47には、洗浄液容器47a以外の他の液体容器を設置してもよい。
【0053】
[試薬分注機構の構造]
次に、図6および図3を参照して、第1試薬分注機構31の詳細な構造について説明する。なお、第3試薬分注機構29および第2試薬分注機構30の構造も、基本的に第1試薬分注機構31の構造と同様である。
【0054】
図6に示すように、第1試薬分注機構31は、試薬を分注するためのピペット31aと、ピペット31aを上下方向に移動させるための昇降機構61と、試薬吸引位置(すなわち、吸引口27h)と試薬分注位置(すなわち、R3分注ポート40)との間で直線移動するための水平移動機構62とを含む。
【0055】
ピペット31aは、保持部材63に取り付けられている。ピペット31aの上端部は、図示しない流体回路に接続されている。昇降機構61は、保持部材63の昇降を案内するためのレール61aと、保持部材63に連結された伝達機構61bと、昇降用のモータ61cとを含む。伝達機構61bは、たとえばベルト−プーリ機構であり、環状のベルトの一部に保持部材63が連結されている。モータ61cは、たとえばステッピングモータであり、伝達機構61bのプーリに接続されている。モータ61cの駆動力によって伝達機構61bのベルトを上下に移動させることにより、保持部材63がピペット31aと共に昇降する。昇降機構61は、保持部材64に設けられている。
【0056】
水平移動機構62は、保持部材64の水平移動を案内するためのレール62aと、保持部材64に連結された伝達機構62bと、伝達機構62bに駆動力を与える水平移動用のモータ62cとを含む。モータ62cは、第1試薬分注機構31が重複領域16(図3参照)と非重複領域17a(図3参照)との間を移動するためのモータである。伝達機構62bは、たとえばベルト−プーリ機構であり、モータ62cは、たとえばステッピングモータである。モータ62cの駆動力によって伝達機構62bのベルトを水平方向に移動させることにより、保持部材64、保持部材63およびピペット31aが一体的に水平方向に直線移動する。水平移動機構62は、支持部材65に設けられている。
【0057】
第1試薬分注機構31の動作を検出するための動作検出部13は、好ましくは、ピペット31aの衝突を検出するための衝突検出センサ66を含む。衝突検出センサ66は、たとえばフォトインタラプタである。衝突検出センサ66は保持部材63に固定される。保持部材63は、保持部材63に対して所定範囲66a内で上下方向に相対移動できるようにピペット31aを支持している。ピペット31aは、図示しない付勢部材によって下方に付勢され、所定範囲66aの下端位置にある。ピペット31aには、衝突検出センサ66を遮光する検出部材66bが設けられる。衝突検出センサ66は、通常、遮光状態となる。保持部材63の下降中にピペット31aの先端が何らかの物体と衝突すると、ピペット31aを所定範囲66aの範囲内で上方へ押し上げられる。その結果、検出部材66bが遮光位置から上方に外れて、衝突検出センサ66が透光状態に切り替わる。
【0058】
また、動作検出部13は、好ましくは、ピペット31aの上下方向の上側原点位置を検出するための第1原点センサ67を含む。第1原点センサ67は、上側原点位置に配置される。第1原点センサ67は、たとえば、保持部材64に設けられたフォトインタラプタである。保持部材63には、上側原点位置で第1原点センサ67を遮光する検出部材67aが設けられる。Z1方向に上昇中の保持部材63が上側原点位置に到達すると、第1原点センサ67が透光状態から遮光状態に切り替わる。第1原点センサ67の検出信号の変化に基づき、制御部14は保持部材63およびピペット31aが上側原点位置に到達したことを検出する。
【0059】
また、動作検出部13は、好ましくは、モータ62cの回転位置を検出するためのエンコーダ68を含む。エンコーダ68は、モータ62cに取り付けられ、モータ62cを駆動した際の実回転量を検出する。エンコーダ68の検出信号に基づき、制御部14は、試薬吸引位置および試薬分注位置にピペット31aを水平移動させる。
【0060】
また、動作検出部13は、好ましくは、非重複領域17aにおいて第1試薬分注機構31の水平方向の水平原点位置69aを検出する第2原点センサ69を含む。第2原点センサ69は、たとえば、保持部材64に設けられたフォトインタラプタである。支持部材65には、検出部材69bが設けられる。水平移動中の保持部材64が水平原点位置69aに到達すると、検出部材69bによって第2原点センサ69が透光状態から遮光状態に切り替わる。第2原点センサ69の検出信号の変化に基づき、制御部14は保持部材64、保持部材63およびピペット31aが水平原点位置69aに到達したことを検出する。なお、水平原点位置69aは、非重複領域17aに配置されている。
【0061】
好ましくは、水平原点位置69aは、異常発生時の退避位置である。すなわち、制御部14は、第1試薬分注機構31の異常を検出すると、第2原点センサ69の検出結果に基づいて第1試薬分注機構31を水平原点位置69aに退避させる。これにより、第1試薬分注機構31に異常が検出された場合にも、第1試薬分注機構31が非重複領域17aの水平原点位置69aに退避したことを検出できる。その結果、退避動作が正常に完了して干渉が発生しないことを確認した上で、容器移送機構36の移送処理を継続させることができる。
【0062】
より好ましくは、図3に示すように、水平原点位置69aには、分注処理後の第1試薬分注機構31の洗浄を行うための洗浄部41が設けられる。これにより、異常検出時の退避位置を、正常動作時の洗浄位置と兼ねさせることができるので、異常検出時の退避動作のための専用の原点センサを別途設ける必要がない。その結果、異常検出時に退避動作を実行させる場合にも、位置検出のための部品点数が増加するのを抑制できる。
【0063】
[検体処理装置の測定処理動作]
次に、図2および図7を参照して、検体処理装置100の測定処理動作について説明する。
【0064】
まず、測定動作の概要について説明する。検体処理装置100は、まず、抗原抗体反応によって検体に含まれる抗原に捕捉抗体を結合させ、抗原に結合した捕捉抗体に磁性粒子を結合させる。次に、検体処理装置100は、結合した抗原、捕捉抗体および磁性粒子の複合体を磁気により捕集し、未反応の捕捉抗体を除去する1次BF分離処理を行う。次に、検体処理装置100は、標識抗体を複合体に結合させた後、結合した磁性粒子、抗原および標識抗体の複合体を磁気により捕集し、未反応の標識抗体を除去する2次BF分離処理を行う。次に、検体処理装置100は、分散液および発光基質を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。検体処理装置100は、このような工程を経て、検体に含まれる、標識抗体に結合した抗原を定量的に測定することにより、検体に対して複数の異なる分析項目に対応する分析ができる。
【0065】
次に、検体処理装置100の測定処理動作を図7のフローチャートを用いて説明する。なお、検体処理装置100の動作制御は、制御部14(図4参照)により実行される。実際には、複数の容器15内の各検体に対する処理動作が並行して連続的に実施されるが、以下では1つの容器15の検体に対する分析処理のみを説明する。以下、検体処理装置100の各部は、図2または図4を参照するものとする。
【0066】
まず、ステップS1において、容器供給機構25が新規の容器15を容器搬送部26にセットする。ステップS2において、容器搬送部26が容器15をR1試薬分注位置26bに搬送し、第3試薬分注機構29がR1試薬を容器15に分注する。ステップS3において、容器搬送部26が容器15を検体分注位置26aに搬送し、検体分注機構23が試験管22aから吸引した検体を容器15に分注する。
【0067】
ステップS4において、容器搬送部26が容器15を容器取出位置26cに搬送し、容器移送機構35が容器15を取り出して反応部28aにセットする。この状態で、容器15内の検体およびR1試薬が所定時間、所定温度に加温される1次反応処理が行われる。
【0068】
ステップS5において、容器移送機構35が容器15を反応部28aからR2分注ポート39に搬送し、第2試薬分注機構30がR2試薬を容器15に分注する。ステップS6において、容器移送機構35が容器15をR2分注ポート39から取り出して反応部28aにセットする。この状態で、容器15内の検体、R1試薬およびR2試薬が所定時間、所定温度に加温される2次反応処理が行われる。
【0069】
ステップS7において、1次BF分離処理が行われる。具体的には、容器移送機構35が容器15を反応部28aから集磁ポート38に搬送する。集磁ポート38では、磁石により容器15内の磁性粒子が集磁される。次に、容器移送機構36が、容器15を集磁ポート38から分離処理部32に搬送する。分離処理部32は、容器15内の抗原、R1試薬およびR2試薬の複合体を磁気により捕集するとともに、未反応のR1試薬を除去する。
【0070】
ステップS8において、容器移送機構36が容器15を分離処理部32からR3分注ポート40に搬送する。第1試薬分注機構31が、R3分注ポート40に移動して、R3試薬を容器15に分注する。分注後、第1試薬分注機構31は洗浄部41に移動する。
【0071】
ステップS9において、容器移送機構36が容器15をR3分注ポート40から取り出して反応部28bにセットする。この状態で、容器15内の検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が所定時間、所定温度に加温される3次反応処理が行われる。
【0072】
ステップS10において、2次BF分離処理が行われる。具体的には、容器移送機構36が容器15を反応部28bから集磁ポート38に搬送し、容器15内の磁性粒子を集磁する。次に、容器移送機構36が容器15を集磁ポート38から分離処理部32に、重複領域16を通過して搬送する。分離処理部32は、容器15内の抗原、R1試薬、R2試薬およびR3試薬の複合体を磁気により捕集するとともに、未反応のR3試薬を除去する。
【0073】
ステップS11において、容器移送機構36が容器15を分離処理部32から中継部42に搬送する。
【0074】
ステップS12において、R4試薬およびR5試薬の分注が行われる。容器移送機構37が容器15を中継部42から取り出してR4/R5試薬分注機構33に搬送する。R4/R5試薬分注機構33がR4試薬およびR5試薬を順次容器15に分注する。
【0075】
ステップS13において、容器移送機構37が容器15を反応部28cにセットする。この状態で、容器15内の検体およびR1試薬〜R5試薬が所定時間、所定温度に加温される4次反応処理が行われる。この4次反応処理によって、測定用試料の調製処理が完了する。
【0076】
ステップS14において、容器移送機構37が容器15を反応部28cから取り出して階層間搬送部34にセットする。そして、昇降装置44が階層間搬送部34を下降させて容器15を第2階層21b(図4参照)に搬送する。
【0077】
ステップS15において、光学検出が行われる。具体的には、容器搬送部45が容器15を階層間搬送部34から取り出して測定部43に搬送する。測定部43が検体に含まれる抗原の量を測定する。光学検出終了後、ステップS16において、容器搬送部45が測定済みの容器15を測定部43から取り出して、容器廃棄口46に廃棄する。以上により、検体処理装置100の測定処理動作が行われる。
【0078】
[検体処理装置の異常検出動作]
次に、検体処理装置100の異常検出動作を説明する。ここでは、図8を参照して、第1試薬分注機構31の分注動作における制御部14による異常検出について説明する。図8に示したR3試薬分注動作の処理は、図7のステップS8において実施される第1試薬分注機構31の処理である。以下、第1試薬分注機構31の各部は図6を参照し、第1試薬分注機構31の移動に関する各位置は図3を参照するものとする。
【0079】
ステップS21において、制御部14は、第1試薬分注機構31を試薬吸引位置(すなわち、吸引口27h)に水平移動させる。
【0080】
ステップS22において、制御部14は、ピペット31aを所定の試薬吸引高さ位置に下降させる。ステップS23において、制御部14は、ピペット31aにR3試薬を吸引させる。
【0081】
ステップS24において、制御部14は、ピペット31aを上側原点位置に上昇させる。
【0082】
ステップS25において、制御部14は、第1試薬分注機構31をR3試薬の試薬分注位置(R3分注ポート40)に水平移動させる。このとき、第1試薬分注機構31は第1動作範囲11aの重複領域16に進入する。
【0083】
ステップS26において、制御部14は、ピペット31aを所定の試薬吐出高さ位置に下降させる。ステップS27において、制御部14は、ピペット31aからR3試薬を吐出させる。ステップS28において、制御部14は、ピペット31aを上側原点位置に上昇させる。
【0084】
ステップS29において、制御部14は、第1試薬分注機構31を水平原点位置69a(洗浄部41)に水平移動させる。ステップS30において、制御部14は、ピペット31aを所定の洗浄高さ位置に下降させる。ステップS31において、制御部14は、ピペット31aに洗浄動作を実施させる。
【0085】
ステップS32において、制御部14は、ピペット31aを上側原点位置に上昇させる。以上により、第1試薬分注機構31の分注動作が行われる。
【0086】
制御部14は、ステップS21、S25およびS29の各々において、エンコーダ68の検出値が許容範囲外である場合に異常を検出する。すなわち、制御部14がモータ62cに与えた指令値(すなわち、指令パルス数)に対して、モータ62cの実際の駆動量(すなわち、実回転パルス数)が許容範囲から外れた場合、制御部14は、第1試薬分注機構31による重複領域16と非重複領域17aとの間の移動に関する異常として検出する。これにより、分注処理に伴う重複領域16と非重複領域17aとの間の移動が正常に行えなくなる異常を検出して、速やかに第1試薬分注機構31を非重複領域17aに退避させることができる。
【0087】
また、制御部14は、ステップS22、S26およびS30の各々において、衝突検出センサ66の検出信号の変化に基づき、ピペット31aの衝突を第1試薬分注機構31の異常として検出する。ピペット31aの衝突は、たとえば、誤ってピペット31aの下降位置に物体が置かれた場合、ピペット31aの水平方向の位置が下降位置からずれた場合、ピペット31aが曲げられた場合、保持部材63が傾いた場合などの要因によって発生する異常である。これにより、第1試薬分注機構31が正常に分注処理を実行できなくなる異常を検出して、速やかに第1試薬分注機構31を非重複領域17aに退避させることができる。
【0088】
また、制御部14は、ステップS24、S28およびS32の各々において、第1原点センサ67の検出信号に基づいて上側原点位置への原点復帰異常を検出する。ピペット31aの上昇動作を行ってもピペット31aが上側原点位置に到達しない場合や、ピペット31aの上側原点位置への到達タイミングが許容範囲よりも早いかまたは遅い場合を、制御部14は、ピペット31aの上側原点位置への原点復帰に失敗したとして検出する。これにより、分注処理に付随する第1試薬分注機構31の昇降動作が正常に行えなくなる異常を検出して、速やかに第1試薬分注機構31を非重複領域17aに退避させることができる。
【0089】
上記のように、異常判定はそれぞれのステップの実行時に行われる。制御部14は、いずれかのステップにおいて異常を検出した場合、以降のステップを中断して後述する異常処理を実行する。したがって、制御部14は、現在のステップの動作において異常が検出されなかった場合にのみ、次のステップの処理を実施する。
【0090】
なお、動作検出部13は、第1試薬分注機構31による試薬の吐出を検出するセンサを含んでもよい。この場合、制御部14は、第1試薬分注機構31による試薬の吐出の検出結果に基づいて第1試薬分注機構31が正常に分注処理を実行できなくなる異常を検出してもよい。
【0091】
[検体処理装置の異常処理]
次に、検体処理装置100の異常処理を図9および図10のフローチャートを用いて説明する。図9に示した異常処理は、図8の各ステップにおいて示したように、制御部14が異常を検出した場合に割り込みで実行される処理である。ここでは、第1試薬分注機構31の異常を検出した場合の異常処理を説明する。
【0092】
図9のステップS41において、制御部14は、今回検出した異常が退避動作中の異常であるか否かを判断する。今回検出した異常が、図8に示したような検体処理装置100における通常の分析動作中に検出した異常である場合、制御部14はステップS42に処理を進める。
【0093】
ステップS42において、制御部14は、異常を検出した機構の退避動作を開始させる。図10のステップS51において、制御部14は、ピペット31aを上側原点位置に上昇させる。次に、ステップS52において、制御部14は、第1試薬分注機構31を水平原点位置69aに水平移動させる。この結果、第1試薬分注機構31が重複領域16から出て非重複領域17aの水平原点位置69aに退避する(図3参照)ので、容器移送機構36は移送処理を継続する。
【0094】
図9のステップS42で退避動作を開始させた後、制御部14は、ステップS43に処理を進める。ステップS43において、制御部14は、異常が発生した機構により測定を継続できない容器15をエラー扱いに設定する。
【0095】
異常が発生した機構により測定を継続できない容器15とは、異常が発生した機構が実行する処理の対象となった容器15である。第1試薬分注機構31の分注処理中に異常が検出された場合、R3試薬を分注するためにR3試薬の試薬分注位置(R3分注ポート40)に配置された容器15が、エラー扱いとなる。エラー扱いに設定された容器15は、以降の測定処理の対象外となる。
【0096】
この場合、異常検出時点でR3試薬の分注処理が完了していた容器15は、測定対象となる。すなわち、異常検出時点で反応部28bや分離処理部32に設置されたR3試薬分注済みの容器15については、第1試薬分注機構31が水平原点位置69aに退避した状態で、容器移送機構36により継続して移送される。その結果、異常検出時点でR3試薬分注済みの容器15については、下流工程のR4試薬およびR5試薬の分注処理などを経て、測定部43における測定処理まで完了する。
【0097】
ここで、ステップS42において退避動作を開始させた場合に、制御部14は、図10に示したステップS51およびS52の退避動作中にも、異常検出を行う。制御部14は、ステップS51において第1原点センサ67の検出信号に基づいて上側原点位置への原点復帰異常を検出する。制御部14は、ステップS52において第2原点センサ69の検出信号に基づいて水平原点位置への原点復帰異常を検出する。この結果、退避動作中に退避動作を行う第1試薬分注機構31の異常を検出した場合、制御部14は、図9のステップS41からステップS44に処理を進める。
【0098】
ステップS44において、制御部14は、異常検出により退避に失敗した機構と、その機構に干渉しうる機構との動作を停止させる。すなわち、第1試薬分注機構31の退避動作が失敗した場合、第1機構部11である第1試薬分注機構31と、第2機構部12である容器移送機構36との両方が停止される。この場合、動作を停止する機構について、制御部14は、退避動作中の異常を検出した時点で、退避動作を実行させることなくその場に停止させる。
【0099】
なお、退避に失敗した機構に干渉しうる機構の範囲は、容器移送機構の動作範囲に対応付けて設定してもよい。すなわち、図11に示すように、処理工程の段階に応じて各機構群をグループ71からグループ76に分類する。検体処理装置100において容器移送機構35が移送を担当する機構群、容器移送機構36が容器移送を担当する機構群、容器移送機構37が容器移送を担当する機構群を、それぞれグループ73、74、75とする。退避に失敗した機構が存在する場合、その機構が属するグループに含まれる全ての機構の動作を停止してもよい。
【0100】
この場合、第1試薬分注機構31の退避動作が失敗した場合には、第1機構部11である第1試薬分注機構31と、第2機構部である容器移送機構36との両方が停止されるのみならず、第1試薬分注機構31が属するグループ74の各機構が一括して停止される。具体的には、第1試薬分注機構31の退避動作中に異常が検出された場合、第1試薬分注機構31、容器移送機構36、反応部28bおよび分離処理部32が停止される。グループ74の停止に伴い、上流側のグループ71〜73も停止される。
【0101】
次に、図9のステップS45において、制御部14は、停止した各機構により測定を継続できない全ての容器15をエラー扱いに設定する。すなわち、第1機構部11である第1試薬分注機構31と、第2機構部である容器移送機構36との停止によって、測定を継続できなくなる容器15がエラー扱いとなる。つまり、第1試薬分注機構31の退避動作中に異常が検出された場合、容器移送機構36によって移送される各容器15がエラー扱いに設定される。
【0102】
つまり、測定を継続できない容器15の範囲は、図11に示したグループ74内にある容器15となる。具体的には、第1試薬分注機構31の分注処理対象の容器15、反応部28bに設置された反応処理中の容器15、分離処理部32に設置された容器15、集磁ポート38の容器15、および、中継部42の容器15が、エラー扱いに設定される。
【0103】
この場合、容器移送機構36よりも下流側で、容器移送機構37によって移送される容器15については、測定動作が継続される。その結果、異常検出時点で下流側のグループ75および76にある容器15については、下流工程のR4試薬およびR5試薬の分注処理などを経て、測定部43における測定処理まで完了する。
【0104】
[第1機構部および第2機構部の他の構成例]
本実施形態では、第1機構部11が第1試薬分注機構31を含み、第2機構部12が容器移送機構36を含む例について具体的に説明したが、第1機構部11および第2機構部12は、他の機構を含んでもよい。
【0105】
具体的には、図12に示すように、第1機構部11は、容器15への移送処理を行うための第1容器移送機構111を含み、第2機構部12は、第1容器移送機構111による移送処理が完了した容器15の移送処理を行うための第2容器移送機構121を含む。第1容器移送機構111は、たとえば容器移送機構35を含み、第2容器移送機構121は、たとえば容器移送機構36を含む。
【0106】
この場合、容器移送機構35の第1動作範囲112と、容器移送機構36の第2動作範囲122とは、互いに重複する重複領域161を含む。容器移送機構35の第1動作範囲112と、容器移送機構36の第2動作範囲122とは、互いに重複しない非重複領域113と123とをそれぞれ含む。この場合、動作検出部13は、水平方向駆動用のモータ114および115のそれぞれのエンコーダ116を含む。制御部14は、エンコーダ116検出結果に基づいて、容器移送機構35の異常検出を行う。そして、制御部14は、容器移送機構35の異常を検出すると、容器移送機構35を非重複領域113に退避させ、容器移送機構36の移送処理を継続させる。
【0107】
容器移送機構35の退避位置は、好ましくは、非重複領域113に配置された原点位置である。より好ましくは、原点位置には原点センサ117が設けられており、制御部14が退避動作の完了を確認できる。このような構成により、たとえば容器移送機構35が重複領域161のR2分注ポート39や集磁ポート38に容器15を移送する際に異常が発生した場合でも、容器移送機構35を非重複領域113に退避させることができる。その結果、容器移送機構35との干渉なく、容器移送機構36の移送処理を継続させることができる。
【0108】
また、図13に示すように、第1容器移送機構111は、容器移送機構36を含み、第2容器移送機構121は、容器移送機構37を含んでもよい。容器移送機構36の第1動作範囲132と、容器移送機構37の第2動作範囲142とは、互いに重複する重複領域162を含み、互いに重複しない非重複領域133と143とをそれぞれ含む。動作検出部13は、水平方向駆動用のモータ54および55のそれぞれのエンコーダ134を含む。制御部14は、エンコーダ134の検出結果に基づいて容器移送機構36の異常を検出すると、容器移送機構36を非重複領域133に退避させ、容器移送機構37の移送処理を継続させる。容器移送機構36の退避位置は、好ましくは、非重複領域133に配置された原点位置である。原点位置には、原点センサ135が設けられている。
【0109】
このような構成により、容器移送機構36が重複領域162の中継部42に容器15を移送する際に異常が発生した場合でも、容器移送機構36を非重複領域133に退避させることができる。その結果、容器移送機構36との干渉なく、容器移送機構37の移送処理を継続させることができる。
【0110】
この他、図12に示したように、第1機構部11が第2試薬分注機構30を含み、第2機構部12が容器移送機構35を含んでもよい。この場合、重複領域にあるR2分注ポート39において第2試薬分注機構30に異常が発生した場合でも、第2試薬分注機構30を非重複領域に退避させて、容器移送機構35の移送処理を継続させることができる。
【0111】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0112】
11:第1機構部、11a:第1動作範囲、12:第2機構部、12a:第2動作範囲、13:動作検出部、14:制御部、15:容器、16:重複領域、17a、17b:非重複領域、28b:反応部、30:第2試薬分注機構、31:第1試薬分注機構、31a:ピペット、32:分離処理部、36:容器移送機構、41:洗浄部、62:昇降機構、66:衝突検出センサ、67:第1原点センサ、68:エンコーダ、69:第2原点センサ、111:第1容器移送機構、121:第2容器移送機構
図1
図2
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図9
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図13