特許第6322182号(P6322182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322182
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】保持装置および接着シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180423BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20180423BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20180423BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20180423BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H01L35/30
   H01L35/32 A
   C04B37/00 A
   F25B21/02 R
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-252758(P2015-252758)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-117971(P2017-117971A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−102135(JP,A)
【文献】 特開2015−8287(JP,A)
【文献】 特開2003−17223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C04B 37/00
F25B 21/02
H01L 35/30
H01L 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状のセラミックス板と、
第3の表面を有する板状であり、前記第3の表面が前記セラミックス板の前記第2の表面に対向するように配置されたベース板と、
前記セラミックス板の前記第2の表面と前記ベース板の前記第3の表面との間に配置され、前記セラミックス板と前記ベース板とを接着する接着層と、
を備え、前記セラミックス板の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記接着層は、
第1の波形表面を有する第1の接着層と、
前記第1の波形表面に対向する第2の波形表面であって前記第1の波形表面の形状に対応する形状の第2の波形表面を有する第2の接着層と、
を含み、
前記保持装置は、さらに、前記第1の波形表面と前記第2の波形表面との間に配置され、複数のp型熱電変換素子と複数のn型熱電変換素子とを含み、前記p型熱電変換素子と前記n型熱電変換素子とが交互に直列に接続された熱電変換モジュールを備えることを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記セラミックス板の内部、または、前記セラミックス板と前記接着層との間に配置されたヒータを備え、
前記複数のp型熱電変換素子と前記複数のn型熱電変換素子との少なくとも1つは、前記接着層の厚さ方向視で前記ヒータと重ならない位置に配置されていることを特徴とする、保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記第1の接着層および前記第2の接着層は、シリコーン樹脂を含むことを特徴とする、保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の接着層および前記第2の接着層は、付加硬化型樹脂を含むことを特徴とする、保持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の接着層および前記第2の接着層は、付加硬化型シリコーン樹脂を含むことを特徴とする、保持装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の保持装置において、
各前記熱電変換素子は、第1の接続部分と、前記第1の接続部分より前記ベース板側に位置する第2の接続部分と、を有し、
p型とn型との一方の型の各前記熱電変換素子において、前記第1の接続部分は、電極を介して、他方の型の前記熱電変換素子の前記第1の接続部分と接続され、前記第2の接続部分は、電極を介して、他の他方の型の前記熱電変換素子の前記第2の接続部分と接続されていることを特徴とする、保持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の接着層の表面と、前記第2の接着層の表面との内、前記セラミックス板の前記第2の表面または前記ベース板の前記第3の表面と対向する領域は、平坦形状であることを特徴とする、保持装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記ベース板の内部に、冷媒流路が形成されていることを特徴とする、保持装置。
【請求項9】
接着シートにおいて、
第1の波形表面を有する第1の接着層と、
前記第1の波形表面に対向する第2の波形表面であって前記第1の波形表面の形状に対応する形状の第2の波形表面を有する第2の接着層と、
前記第1の波形表面と前記第2の波形表面との間に配置され、複数のp型熱電変換素子と複数のn型熱電変換素子とを含み、前記p型熱電変換素子と前記n型熱電変換素子とが交互に直列に接続された熱電変換モジュールと、
を備えることを特徴とする、接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置において、ウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えば、セラミックス板と、ベース板と、セラミックス板とベース板とを接着する接着層とを備える。静電チャックは、内部電極を有しており、内部電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス板の表面(以下、「吸着面」という)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックにおいて、セラミックス板とベース板との間に、複数のp型熱電変換素子と複数のn型熱電変換素子とを含み、p型熱電変換素子とn型熱電変換素子とが交互に直列に接続された熱電変換モジュールを設けた構成が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。この構成によれば、熱電変換モジュールに通電した際に各熱電変換素子において発生する発熱反応または吸熱反応を利用して、セラミックス板の吸着面の温度制御を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−102135号公報
【特許文献2】特開2015−8287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の静電チャックの構成では、熱電変換モジュールに含まれる各熱電変換素子が、セラミックス板の厚さ方向に立てられた状態で、吸着面に平行な方向に互いに間隔を開けて並べて配置されているため、熱電変換素子同士の間に空隙が形成される。すなわち、上記従来の構成では、セラミックス板とベース板との間に空隙が存在する。セラミックス板とベース板との間に空隙が存在すると、例えば、押圧力によって空隙がつぶれて吸着面の位置や角度の精度が低下したり、ベース板とセラミックス板との間の伝熱性が低下して吸着面の温度分布の均一性が低下したりするおそれがあるため、好ましくない。また、上記従来の静電チャックの構成では、熱電変換モジュールが硬い素子からできているため、ベース板とセラミックス板との間の熱膨張率差に起因する熱応力を緩和することができず、使用中に熱電変換モジュールが破損したりセラミックス板が変形したりするおそれがあるため、好ましくない。
【0006】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、セラミックス板と、ベース板と、セラミックス板とベース板とを接着する接着層とを備え、セラミックス板の表面上に対象物を保持する保持装置に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状のセラミックス板と、第3の表面を有する板状であり、前記第3の表面が前記セラミックス板の前記第2の表面に対向するように配置されたベース板と、前記セラミックス板の前記第2の表面と前記ベース板の前記第3の表面との間に配置され、前記セラミックス板と前記ベース板とを接着する接着層と、を備え、前記セラミックス板の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記接着層は、第1の波形表面を有する第1の接着層と、前記第1の波形表面に対向する第2の波形表面であって前記第1の波形表面の形状に対応する形状の第2の波形表面を有する第2の接着層と、を含み、前記保持装置は、さらに、前記第1の波形表面と前記第2の波形表面との間に配置され、複数のp型熱電変換素子と複数のn型熱電変換素子とを含み、前記p型熱電変換素子と前記n型熱電変換素子とが交互に直列に接続された熱電変換モジュールを備える。本保持装置によれば、接着層が、第1の波形表面を有する第1の接着層と、第1の接着層の第1の波形表面の形状に対応する形状の第2の波形表面を有する第2の接着層とを含み、第1の接着層の第1の波形表面と第2の接着層の第2の波形表面との間に熱電変換モジュールが配置されているため、熱電変換モジュールを用いてセラミックス板の第1の表面の温度制御を実行したり、セラミックス板とベース板との間の温度差を利用した発電を実現したりすることができる。また、熱電変換モジュールを上下から挟む第1の接着層および第2の接着層は柔軟な接着剤により形成されているため、熱電変換モジュールと第1の接着層および第2の接着層との間に空隙が形成されることが抑制され、セラミックス板とベース板との間に熱電変換モジュールを配置しても、セラミックス板とベース板との間に空隙が形成されることが抑制されるため、押圧力によって空隙がつぶれて第1の表面の位置や角度の精度が低下したり、ベース板とセラミックス板との間の伝熱性が低下して第1の表面の温度分布の均一性が低下したりすることを抑制することができる。
【0010】
(2)上記保持装置において、前記セラミックス板の内部、または、前記セラミックス板と前記接着層との間に配置されたヒータを備え、前記複数のp型熱電変換素子と前記複数のn型熱電変換素子との少なくとも1つは、前記接着層の厚さ方向視で前記ヒータと重ならない位置に配置されている構成としてもよい。本保持装置によれば、ヒータが配置されていない位置においても、熱電変換モジュールを用いてセラミックス板の第1の表面の温度制御を実行することができ、セラミックス板の第1の表面の温度制御の精度を向上させることができる。
【0011】
(3)上記保持装置において、前記第1の接着層および前記第2の接着層は、シリコーン樹脂を含む構成としてもよい。本保持装置によれば、シリコーン樹脂は、比較的耐熱性が高く、かつ、柔らかいため、接着層の耐熱性を向上させることができると共に、セラミックス板とベース板との熱膨張差に起因する応力を接着層によって緩和して歪みや剥離、割れの発生を抑制することができる。
【0012】
(4)上記保持装置において、前記第1の接着層および前記第2の接着層は、付加硬化型樹脂を含む構成としてもよい。本保持装置によれば、第1の接着層および第2の接着層を硬化させる際における副生成物の発生と、副生成物に起因する泡の混入や伝熱性の不均一化を抑制することができる。
【0013】
(5)上記保持装置において、前記第1の接着層および前記第2の接着層は、付加硬化型シリコーン樹脂を含む構成としてもよい。本保持装置によれば、第1の接着層および第2の接着層を硬化させる際における副生成物の発生を抑制することができるとともに、接着層に高い耐熱性と柔軟性を付与することができる。
【0014】
(6)上記保持装置において、各前記熱電変換素子は、第1の接続部分と、前記第1の接続部分より前記ベース板側に位置する第2の接続部分と、を有し、p型とn型との一方の型の各前記熱電変換素子において、前記第1の接続部分は、電極を介して、他方の型の前記熱電変換素子の前記第1の接続部分と接続され、前記第2の接続部分は、電極を介して、他の他方の型の前記熱電変換素子の前記第2の接続部分と接続されている構成としてもよい。本保持装置によれば、熱電変換モジュールを用いた温度制御や発電を実現することができる。
【0015】
(7)上記保持装置において、前記第1の接着層の表面と、前記第2の接着層の表面との内、前記セラミックス板の前記第2の表面または前記ベース板の前記第3の表面と対向する領域は、平坦形状である構成としてもよい。本保持装置によれば、セラミックス板とベース板との間に熱電変換モジュールを配置しつつ、セラミックス板やベース板の各表面の平坦性および平行性を確保することができる。
【0016】
(8)上記保持装置において、前記ベース板の内部に、冷媒流路が形成されている構成としてもよい。本保持装置によれば、冷媒流路に冷媒が流されることにより、ベース板が冷却され、接着層を介したベース板からセラミックス板への熱伝達によりセラミックス板が冷却され、セラミックス板の第1の表面が冷却される際に、ベース板とセラミックス板との間の伝熱性が低下して第1の表面の温度分布の均一性が低下したりすることを抑制することができる。
【0017】
(9)本明細書に開示される接着シートは、第1の波形表面を有する第1の接着層と、前記第1の波形表面に対向する第2の波形表面であって前記第1の波形表面の形状に対応する形状の第2の波形表面を有する第2の接着層と、前記第1の波形表面と前記第2の波形表面との間に配置され、複数のp型熱電変換素子と複数のn型熱電変換素子とを含み、前記p型熱電変換素子と前記n型熱電変換素子とが交互に直列に接続された熱電変換モジュールと、を備えることを特徴とする。本接着シートによれば、2つの部材が接着され、かつ、2つの部材の間に熱電変換モジュールが配置された装置をより容易に製造することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図4】第1実施形態の静電チャック100における接着層300付近の詳細構成を示す説明図である。
図5】薄膜熱電変換モジュール70の構成を概略的に示す説明図である。
図6】第2実施形態における静電チャック100aにおける接着層300a付近の詳細構成を示す説明図である。
図7】第3実施形態における静電チャック100bにおける接着層300b付近の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A−1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。図2には、図3のII−IIの位置におけるXZ断面構成が示されており、図3には、図2のIII−IIIの位置におけるXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0021】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス板10およびベース板20を備える。セラミックス板10とベース板20とは、セラミックス板10の下面(以下、「セラミックス側接着面S2」という)とベース板20の上面(以下、「ベース側接着面S3」という)とが上記配列方向に対向するように配置されている。静電チャック100は、さらに、セラミックス板10のセラミックス側接着面S2とベース板20のベース側接着面S3との間に配置された接着層300を備える。セラミックス板10のセラミックス側接着面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、ベース板20のベース側接着面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0022】
セラミックス板10は、例えば円形平面の板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス板10の直径は例えば200mm〜500mm程度(通常、200mm〜330mm)であり、セラミックス板10の厚さは例えば1mm〜10mm程度である。
【0023】
セラミックス板10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された一対の内部電極40が設けられている。一対の内部電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス板10の上面(以下、「吸着面S1」という)に吸着固定される。セラミックス板10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。
【0024】
また、セラミックス板10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された抵抗発熱体で構成されたヒータ50が設けられている。ヒータ50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ50が発熱することによってセラミックス板10が温められ、セラミックス板10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。なお、図3に示すように、ヒータ50は、セラミックス板10の吸着面S1をできるだけ満遍なく温めるため、Z方向視で略同心円状に配置されている。
【0025】
ベース板20は、例えばセラミックス板10より径が大きい円形平面の板状部材であり、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース板20の直径は例えば220mm〜550mm程度(通常、220mm〜350mm)であり、ベース板20の厚さは例えば20mm〜40mm程度である。
【0026】
ベース板20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素化液や水等)が流されると、ベース板20が冷却され、接着層300を介したベース板20からセラミックス板10への熱伝達によりセラミックス板10が冷却され、セラミックス板10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。
【0027】
接着層300は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤を含んでおり、セラミックス板10とベース板20とを接着している。接着層300の厚さは例えば0.1mm〜1mm程度である。
【0028】
A−2.接着層300付近の詳細構成:
図4は、第1実施形態の静電チャック100における接着層300付近の詳細構成を示す説明図である。図4には、静電チャック100における接着層300付近の一部のXZ断面構成が示されている。なお、図4には、説明の便宜上、X方向に直交する第1の仮想平面VS(1)および第2の仮想平面VS(2)も示されている。
【0029】
図4に示すように、接着層300は、セラミックス板10に隣接するセラミックス側接着層310と、ベース板20に隣接するベース側接着層320とを備える。セラミックス側接着層310の上面311(セラミックス板10に対向する表面)は平坦形状であり、セラミックス側接着層310の下面312は波形である。一方、ベース側接着層320の上面321は波形であり、ベース側接着層320の下面322(ベース板20に対向する表面)は平坦形状である。ここで、波形とは、輪郭曲線のうねりの振幅が0.1mm以上の形状を意味する。また、平坦形状とは、輪郭曲線のうねりの振幅が0.1mm未満(望ましくは0.05mm未満、より望ましくは0.02mm未満)の形状を意味する。換言すると、平坦形状とは、平面度が0.2mm未満(望ましくは0.1mm未満、より望ましくは0.04mm未満)の形状を意味する。第1実施形態の静電チャック100において、セラミックス側接着層310とベース側接着層320との組合せは、特許請求の範囲における第1の接着層と第2の接着層との組合せに相当し、セラミックス側接着層310の下面312とベース側接着層320の上面321との組合せは、特許請求の範囲における第1の波形表面と第2の波形表面との組合せに相当する。
【0030】
ベース側接着層320の上面321の波形は、セラミックス側接着層310の下面312の波形に対応した形状である。具体的には、図4に示す第1の仮想平面VS(1)の位置において、ベース側接着層320の上面321における凸部は、Z方向視でセラミックス側接着層310の下面312の凹部と重なっている。また、第2の仮想平面VS(2)の位置において、ベース側接着層320の上面321における凹部は、Z方向視でセラミックス側接着層310の下面312の凸部と重なっている。このように、ベース側接着層320の上面321の波形はセラミックス側接着層310の下面312の波形に対応した形状であるため、セラミックス側接着層310の下面312とベース側接着層320の上面321との間には、Z方向の厚さが略一定で、断面が波形の空間が存在する。なお、ベース側接着層320の上面321の波形やセラミックス側接着層310の下面312の波形における振幅や周期は、接着層300の平面的な大きさや厚さに応じて適宜設定すればよく、例えば、振幅は0.1mm〜0.5mm程度に設定され、周期は1mm〜30mm程度に設定される。
【0031】
セラミックス側接着層310の下面312とベース側接着層320の上面321との間に存在する上述の空間には、薄膜熱電変換モジュール70が配置されている。図5は、薄膜熱電変換モジュール70の構成を概略的に示す説明図である。図5には、薄膜熱電変換モジュール70の一部のXY平面構成が、図4に示された第1の仮想平面VS(1)および第2の仮想平面VS(2)と共に示されている。
【0032】
図5に示すように、薄膜熱電変換モジュール70は、複数のp型薄膜熱電変換素子76pと、複数のn型薄膜熱電変換素子76nとを含む。以下の説明では、p型薄膜熱電変換素子76pおよびn型薄膜熱電変換素子76nを、まとめて「薄膜熱電変換素子76」という。薄膜熱電変換素子76は、ゼーベック効果およびペルチェ効果を利用して、熱エネルギーから電気エネルギーへの変換、および、電気エネルギーから熱エネルギーへの変換を行う素子であり、2種類の異なる金属または半導体、例えばビスマス・テルルや鉛・テルル、シリコン・ゲルマニウム等の熱電変換材料を薄膜状に製膜し、接続したものである。なお、薄膜とは、厚さ0.1mm以下の膜を意味する。
【0033】
p型薄膜熱電変換素子76pとn型薄膜熱電変換素子76nとは交互に直列に接続されている。具体的には、p型薄膜熱電変換素子76pにおける一方の端部である第1の接続部分71pは、導電性材料を薄膜化した電極78を介して、n型薄膜熱電変換素子76nにおける一方の端部である第1の接続部分71nと接続されている。また、該p型薄膜熱電変換素子76pにおける他方の端部である第2の接続部分72pは、電極78を介して、他のn型薄膜熱電変換素子76nにおける他方の端部である第2の接続部分72nと接続されている。
【0034】
図4および図5に示すように、薄膜熱電変換モジュール70に含まれる各薄膜熱電変換素子76は、セラミックス側接着層310の下面312およびベース側接着層320の上面321の波形に沿って配置されている。具体的には、各p型薄膜熱電変換素子76pは、第1の接続部分71pが第1の仮想平面VS(1)側に位置し、第2の接続部分72pが第2の仮想平面VS(2)側に位置するような姿勢で配置されている。すなわち、各p型薄膜熱電変換素子76pは、第1の接続部分71pがセラミックス板10側に位置し、第2の接続部分72pがベース板20側に位置するように、XY平面に対して斜めの姿勢で配置されている。
【0035】
同様に、各n型薄膜熱電変換素子76nは、第1の接続部分71nが第1の仮想平面VS(1)側に位置し、第2の接続部分72nが第2の仮想平面VS(2)側に位置するような姿勢で配置されている。すなわち、各n型薄膜熱電変換素子76nは、第1の接続部分71nがセラミックス板10側に位置し、第2の接続部分72nがベース板20側に位置するように、XY平面に対して斜めの姿勢で配置されている。
【0036】
薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76や電極78は厚さが極めて薄い膜状であり、また、薄膜熱電変換モジュール70を上下から挟むセラミックス側接着層310およびベース側接着層320は柔軟な接着剤により形成されているため、薄膜熱電変換モジュール70とセラミックス側接着層310およびベース側接着層320との間には、空隙はほぼ存在しない。
【0037】
薄膜熱電変換モジュール70に電力を供給して、直列に接続された複数の薄膜熱電変換素子76に一方向の電流を流すと、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71側(各p型薄膜熱電変換素子76pの第1の接続部分71p側および各n型薄膜熱電変換素子76nの第1の接続部分71n側)において発熱作用が発生し、第2の接続部分72側(各p型薄膜熱電変換素子76pの第2の接続部分72p側および各n型薄膜熱電変換素子76nの第2の接続部分72n側)において吸熱作用が発生する。上述したように、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71はセラミックス板10側に位置し、第2の接続部分72はベース板20側に位置している。そのため、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71側で発生した発熱作用によってセラミックス板10が温められ、セラミックス板10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。
【0038】
また、直列に接続された複数の薄膜熱電変換素子76に逆方向の電流を流すと、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71側において吸熱作用が発生し、第2の接続部分72側において発熱作用が発生する。そのため、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71側で発生した吸熱作用によってセラミックス板10が冷却され、セラミックス板10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。
【0039】
このようにして、薄膜熱電変換モジュール70を用いて、セラミックス板10の吸着面S1の温度制御(ウェハWの温度制御)を実現することができる。なお、本実施形態では、薄膜熱電変換モジュール70に含まれる複数のp型薄膜熱電変換素子76pと複数のn型薄膜熱電変換素子76nとの少なくとも1つは、Z方向視でヒータ50と重ならない位置(図3に示す領域NA内の位置)に配置されている。そのため、ヒータ50が配置されていない位置においても、薄膜熱電変換モジュール70を用いてセラミックス板10の吸着面S1の温度制御を実行することができ、セラミックス板10の吸着面S1の温度制御の精度を向上させることができる。
【0040】
また、一般に、静電チャック100の使用中には、ヒータ50の発熱やプラズマ熱の影響によりセラミックス板10は高温になりやすく、反対に、冷媒流路21を流れる冷却媒体の作用によってベース板20は低温になりやすいため、セラミックス板10とベース板20との間に温度差が発生する。セラミックス板10とベース板20との間に温度差が発生すると、薄膜熱電変換モジュール70に含まれる各薄膜熱電変換素子76のセラミックス板10に近い側(第1の接続部分71側)とベース板20に近い側(第2の接続部分72側)との間にも温度差が発生するため、各薄膜熱電変換素子76において発電反応が起こる。このようにして、薄膜熱電変換モジュール70を用いて、発電を行うこともできる。
【0041】
A−3.静電チャック100の製造方法:
次に、第1実施形態における静電チャック100の製造方法を説明する。はじめに、セラミックス板10とベース板20とを準備する。なお、セラミックス板10およびベース板20は、公知の製造方法によって製造可能であるため、ここでは製造方法の説明を省略する。
【0042】
次に、ベース板20のベース側接着面S3に、ベース側接着層320を形成するために、ペースト状接着剤を塗布する。ペースト状接着剤は、接着成分(例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等)と粉末成分(例えばアルミナやシリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等)とを混合して作製したペースト状の接着剤である。ペースト状接着剤は、カップリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。ペースト状接着剤のベース側接着面S3側の表面は、ベース側接着面S3の形状に合わせて平坦形状になる。ベース板20のベース側接着面S3にペースト状接着剤を塗布した後、塗布済みのペースト状接着剤の表面を、例えばブレードを用いて波形に整える。
【0043】
次に、塗布済みのペースト状接着剤の波形の表面に、蒸着や印刷等によって薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76や電極78を形成する。その後、塗布済みのペースト状接着剤および薄膜熱電変換モジュール70の上に、セラミックス側接着層310を形成するために、ペースト状接着剤を再塗布する。ペースト状接着剤は比較的粘度が高いため、再塗布された分のペースト状接着剤(セラミックス側接着層310)における塗布済みのペースト状接着剤(ベース側接着層320)側の表面は、塗布済みのペースト状接着剤の表面の波形に対応した波形となる。なお、再塗布されたペースト状接着剤の反対側の表面は、平坦形状に成形する。
【0044】
次に、再塗布されたペースト状接着剤の平坦形状の表面にセラミックス板10を配置して、ペースト状接着剤を硬化させる硬化処理を行うことにより、接着層300を形成する。硬化処理の内容は、使用する接着剤の種類に応じて異なり、熱硬化型の接着剤であれば硬化処理として熱を付与する処理が行われ、水分硬化型の接着剤であれば硬化処理として加湿などの方法により水分を付与する処理が行われる。以上の工程により、静電チャック100の製造が完了する。
【0045】
A−4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の静電チャック100では、接着層300が、波形の下面312を有するセラミックス側接着層310と、セラミックス側接着層310の下面312の形状に対応する波形の上面321を有するベース側接着層320とを含み、セラミックス側接着層310の下面312とベース側接着層320の上面321との間に薄膜熱電変換モジュール70が配置されている。そのため、薄膜熱電変換モジュール70を用いてセラミックス板10の吸着面S1の温度制御を実行したり、セラミックス板10とベース板20との間の温度差を利用した発電を実現したりすることができる。また、薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76や電極78は厚さが極めて薄い膜状であり、また、薄膜熱電変換モジュール70を上下から挟むセラミックス側接着層310およびベース側接着層320は柔軟な接着剤により形成されているため、薄膜熱電変換モジュール70とセラミックス側接着層310およびベース側接着層320との間には空隙はほぼ存在しない。そのため、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しても、セラミックス板10とベース板20との間に空隙が形成されることが抑制される。そのため、押圧力によって空隙がつぶれて吸着面S1の位置や角度の精度が低下したり、ベース板20とセラミックス板10との間の伝熱性が低下して吸着面S1の温度分布の均一性が低下したりすることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の静電チャック100では、薄膜熱電変換モジュール70に含まれる複数のp型薄膜熱電変換素子76pと複数のn型薄膜熱電変換素子76nとの少なくとも1つが、Z方向視でヒータ50と重ならない位置に配置されているため、ヒータ50が配置されていない位置においても、薄膜熱電変換モジュール70を用いてセラミックス板10の吸着面S1の温度制御を実行することができ、セラミックス板10の吸着面S1の温度制御の精度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス側接着層310とベース側接着層320との表面の内、セラミックス板10のセラミックス側接着面S2またはベース板20のベース側接着面S3と対向する領域、すなわち、セラミックス側接着層310の上面311の全域およびベース側接着層320の下面322の全域が平坦形状である。そのため、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しつつ、セラミックス板10やベース板20の各表面の平坦性および平行性を確保することができる。
【0048】
なお、接着層300を構成するセラミックス側接着層310およびベース側接着層320は、接着成分としてシリコーン樹脂を含むことが好ましい。シリコーン樹脂は、比較的耐熱性が高く、かつ、柔らかいため、セラミックス側接着層310およびベース側接着層320がシリコーン樹脂を含むように構成すれば、接着層300の耐熱性を向上させることができると共に、セラミックス板10とベース板20との熱膨張差に起因する応力を接着層300によって緩和して歪みや剥離、割れの発生を抑制することができる。
【0049】
また、接着層300を構成するセラミックス側接着層310およびベース側接着層320は、接着成分として付加硬化型樹脂を含むことが好ましい。このようにすれば、セラミックス側接着層310およびベース側接着層320の硬化処理中における副生成物の発生と、副生成物に起因する泡の混入や伝熱性の不均一化を抑制することができる。
【0050】
また、接着層300を構成するセラミックス側接着層310およびベース側接着層320は、接着成分として付加硬化型シリコーン樹脂を含むことが好ましい。このようにすれば、セラミックス側接着層310およびベース側接着層320の硬化処理中における副生成物の発生を抑制することができるとともに、接着層300に高い耐熱性と柔軟性を付与することができる。
【0051】
また、セラミックス側接着面S2およびベース側接着面S3は平坦かつ互いに平行であること、すなわち、接着層300の厚さが均一であることが好ましい。この構成によれば、セラミックス板10とベース板20との間の伝熱を均等にすることができる。
【0052】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態における静電チャック100aにおける接着層300a付近の詳細構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態における静電チャック100aの構成の内、上述した第1実施形態における静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0053】
第2実施形態における静電チャック100aでは、接着層300aが、セラミックス側接着層310およびベース側接着層320に加えて、セラミックス側接着層310とベース側接着層320との間に配置された中間接着層330を備える。中間接着層330の上面331は、セラミックス側接着層310の下面312の波形に対応した波形形状である。そのため、セラミックス側接着層310の下面312と中間接着層330の上面331との間には、Z方向の厚さが略一定で、断面が波形の空間が存在する。また、中間接着層330の下面332は、ベース側接着層320の上面321の波形に対応した波形形状である。そのため、中間接着層330の下面332とベース側接着層320の上面321との間にも、Z方向の厚さが略一定で、断面が波形の空間が存在する。
【0054】
これらの波形の空間には、薄膜熱電変換モジュール70が配置されている。すなわち、第2実施形態の静電チャック100aは、2つの薄膜熱電変換モジュール70を備える。各薄膜熱電変換モジュール70の構成は、第1実施形態の薄膜熱電変換モジュール70と同様である。すなわち、各薄膜熱電変換モジュール70は、複数のp型薄膜熱電変換素子76pと複数のn型薄膜熱電変換素子76nとを備えており、p型薄膜熱電変換素子76pとn型薄膜熱電変換素子76nとは交互に直列に接続されている。また、各薄膜熱電変換モジュール70において、各薄膜熱電変換素子76の第1の接続部分71はセラミックス板10側に位置し、第2の接続部分72はベース板20側に位置している。そのため、第2実施形態の静電チャック100aにおいても、各薄膜熱電変換モジュール70を用いて、セラミックス板10の吸着面S1の温度制御(ウェハWの温度制御)を実現することができると共に、発電を行うことができる。第2実施形態における静電チャック100aのその他の構成は、第1実施形態における静電チャック100の構成と同様である。
【0055】
なお、第2実施形態の静電チャック100aにおいて、セラミックス側接着層310と中間接着層330との組合せは、特許請求の範囲における第1の接着層と第2の接着層との組合せに相当し、セラミックス側接着層310の下面312と中間接着層330の上面331との組合せは、特許請求の範囲における第1の波形表面と第2の波形表面との組合せに相当する。また、第2実施形態の静電チャック100aにおいて、中間接着層330とベース側接着層320との組合せは、特許請求の範囲における第1の接着層と第2の接着層との組合せに相当し、中間接着層330の下面332とベース側接着層320の上面321との組合せは、特許請求の範囲における第1の波形表面と第2の波形表面との組合せに相当する。
【0056】
第2実施形態の静電チャック100aでは、接着層300aが、波形の下面312を有するセラミックス側接着層310と、波形の上面331および下面332を有する中間接着層330とを含み、セラミックス側接着層310の下面312と中間接着層330の上面331との間に薄膜熱電変換モジュール70が配置されている。また、接着層300aが、さらに、波形の上面321を有するベース側接着層320を含み、中間接着層330の下面332とベース側接着層320の上面321との間にも薄膜熱電変換モジュール70が配置されている。そのため、静電チャック100の平面形状(Z方向に直交する方向の形状)を大きくすることなく、複数の薄膜熱電変換モジュール70を配置することができ、薄膜熱電変換モジュール70による吸着面S1の温度制御能力を向上させたり、薄膜熱電変換モジュール70による発電能力を向上させたりすることができる。
【0057】
また、第2実施形態の静電チャック100aでは、第1実施形態における静電チャック100と同様に、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しても、セラミックス板10とベース板20との間に空隙が形成されることが抑制され、押圧力によって空隙がつぶれて吸着面S1の位置や角度の精度が低下したり、ベース板20とセラミックス板10との間の伝熱性が低下して吸着面S1の温度分布の均一性が低下したりすることを抑制することができる。
【0058】
また、第2実施形態の静電チャック100aでは、セラミックス側接着層310とベース側接着層320と中間接着層330との表面の内、セラミックス板10のセラミックス側接着面S2またはベース板20のベース側接着面S3と対向する領域、すなわち、セラミックス側接着層310の上面311の全域およびベース側接着層320の下面322の全域が平坦形状であるため、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しつつ、セラミックス板10やベース板20の各表面の平坦性および平行性を確保することができる。
【0059】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態における静電チャック100bにおける接着層300b付近の詳細構成を示す説明図である。以下では、第3実施形態における静電チャック100bの構成の内、上述した第1実施形態における静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0060】
第3実施形態における静電チャック100bでは、ヒータ50bが、セラミックス板10の内部ではなく、セラミックス板10と接着層300bとの間に配置されている。第3実施形態における静電チャック100bのその他の構成は、第1実施形態における静電チャック100の構成と同様である。
【0061】
第3実施形態の静電チャック100bでは、第1実施形態における静電チャック100と同様に、接着層300bが、波形の下面312を有するセラミックス側接着層310bと、波形の上面321を有するベース側接着層320とを含み、セラミックス側接着層310bの下面312とベース側接着層320の上面321との間に薄膜熱電変換モジュール70が配置されているため、薄膜熱電変換モジュール70を用いてセラミックス板10の吸着面S1の温度制御を実行したり、セラミックス板10とベース板20との間の温度差を利用した発電を実現したりすることができる。
【0062】
また、第3実施形態の静電チャック100bでは、第1実施形態における静電チャック100と同様に、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しても、セラミックス板10とベース板20との間に空隙が形成されることが抑制され、押圧力によって空隙がつぶれて吸着面S1の位置や角度の精度が低下したり、ベース板20とセラミックス板10との間の伝熱性が低下して吸着面S1の温度分布の均一性が低下したりすることを抑制することができる。
【0063】
また、第3実施形態の静電チャック100bでは、セラミックス側接着層310bとベース側接着層320との表面の内、セラミックス板10のセラミックス側接着面S2またはベース板20のベース側接着面S3と対向する領域、すなわち、セラミックス側接着層310bの上面311の内のヒータ50bに対向する領域以外の領域、および、ベース側接着層320の下面322の全域が平坦形状である。そのため、セラミックス板10とベース板20との間に薄膜熱電変換モジュール70を配置しつつ、セラミックス板10やベース板20の各表面の平坦性および平行性を確保することができる。
【0064】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
上記各実施形態における70の構成はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態では、薄膜熱電変換モジュール70において、各p型薄膜熱電変換素子76pおよび各n型薄膜熱電変換素子76nが電極78を介して接続されているが、各p型薄膜熱電変換素子76pおよび各n型薄膜熱電変換素子76nが電極78を介さずに直接接続されるとしてもよい。また、薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76の配置は、図4および図5等に示された配置に限られない。
【0066】
また、上記各実施形態では、静電チャック100が1つまたは2つの薄膜熱電変換モジュール70を備えるとしているが、静電チャック100が3つ以上の薄膜熱電変換モジュール70を備えるとしてもよい。静電チャック100が3つ以上の薄膜熱電変換モジュール70を備えるとしても、各薄膜熱電変換モジュール70が波形表面を有する2つの接着層の間に配置される構成とすれば、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、上記各実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。また、上記各実施形態において、必ずしも静電チャック100がヒータ50を備える必要は無く、また、必ずしもベース板20に冷媒流路21が形成されている必要は無い。また、上記各実施形態では、セラミックス板10の内部に一対の内部電極40が設けられた双極方式が採用されているが、セラミックス板10の内部に1つの内部電極40が設けられた単極方式が採用されてもよい。
【0068】
また、上記各実施形態における100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態では、ベース板20のベース側接着面S3にペースト状接着剤を塗布した後に表面を波形に成形し、その上に薄膜熱電変換モジュール70を形成し、ペースト状接着剤を再塗布し、セラミックス板10を配置して硬化処理を行うとしているが、反対に、セラミックス板10のセラミックス側接着面S2にペースト状接着剤を塗布した後に表面を波形に成形し、その上に薄膜熱電変換モジュール70を形成し、ペースト状接着剤を再塗布し、ベース板20を配置して硬化処理を行うとしてもよい。上記第2実施形態や第3実施形態においても、同様の変形が可能である。
【0069】
また、上記各実施形態では、塗布済みのペースト状接着剤の波形の表面に、蒸着や印刷等によって、薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76や電極78を形成するとしているが、例えばフィルム上に薄膜熱電変換モジュール70を構成する各薄膜熱電変換素子76や電極78を予め形成しておき、形成された各薄膜熱電変換素子76や電極78を、フィルムごと、あるいはフィルムから剥離させて、ペースト状接着剤の波形の表面に貼り付けるものとしてもよい。
【0070】
また、内部に薄膜熱電変換モジュール70が配置された接着シートを予め製造し、該接着シートを用いてセラミックス板10とベース板20とを接着するものとしてもよい。具体的には、例えばフィルム上にペースト状接着剤を塗布し、その表面を波形に成形した後、薄膜熱電変換モジュール70を配置し、その上にさらにペースト状接着剤を塗布し、硬化処理よって半硬化させたものを接着シートして製造する。該接着シートをセラミックス板10とベース板20との間に配置し、接着シートに対する硬化処理によって接着シートを完全硬化させることにより、接着層300を形成するものとしてもよい。このような接着シートを用いることにより、2つの部材が接着され、かつ、2つの部材の間に薄膜熱電変換モジュール70が配置された装置(例えば、上記各実施形態の静電チャック100)を、より容易に製造することができる。
【0071】
本発明は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、セラミックス板と、ベース板と、セラミックス板とベース板とを接着する接着層とを備え、セラミックス板の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10:セラミックス板 20:ベース板 21:冷媒流路 40:内部電極 50:ヒータ 70:薄膜熱電変換モジュール 71n,71p:第1の接続部分 72n,72p:第2の接続部分 76n:n型薄膜熱電変換素子 76p:p型薄膜熱電変換素子 78:電極 100:静電チャック 300:接着層 310:セラミックス側接着層 311:上面 312:下面 320:ベース側接着層 321:上面 322:下面 330:中間接着層 331:上面 332:下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7