特許第6322300号(P6322300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6322300
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】白金加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20180423BHJP
   C23C 8/64 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   A44C27/00
   C23C8/64
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-1104(P2017-1104)
(22)【出願日】2017年1月6日
【審査請求日】2017年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510319649
【氏名又は名称】株式会社エーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(72)【発明者】
【氏名】小田切 雅彦
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−346222(JP,A)
【文献】 米国特許第03429753(US,A)
【文献】 特開平08−114680(JP,A)
【文献】 特開平03−002364(JP,A)
【文献】 特開平02−298251(JP,A)
【文献】 特公平04−001064(JP,B2)
【文献】 特開平08−104974(JP,A)
【文献】 特開2003−200207(JP,A)
【文献】 特開2006−002248(JP,A)
【文献】 特開2004−353036(JP,A)
【文献】 特公昭61−061599(JP,B2)
【文献】 特開2008−156709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00−12/02
A44C 1/00−27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ホウ素、炭化ケイ素及び石膏を含む処理剤を製造する工程と、
容器に溶岩を収納する工程と、
前記溶岩上に、前記処理剤を載置する工程と、
前記処理剤上に第1の白金製の部材を載置する工程と、
前記第1の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、
前記処理剤上を溶岩で覆う工程と、
前記処理剤上を前記溶岩で覆った後に、前記容器を所定の時間加熱する工程と、
前記容器を所定の時間加熱した後に、前記容器を所定の時間冷却する工程と、
を有する白金加工品の製造方法。
【請求項2】
前記第1の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、前記溶岩で覆う工程との間に、
前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、前記第1の白金製の部材を覆った前記処理剤上に第2の白金製の部材を載置する工程と、
前記第2の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、
をさらに有し、
前記溶岩で覆う工程において、前記第2の白金製の部材の上に載置された前記処理剤上を前記溶岩で覆う、
請求項1に記載の白金加工品の製造方法。
【請求項3】
前記処理剤を製造する工程において、9.1重量%の炭化ホウ素、18.2重量%の炭化ケイ素、及び72.7重量%の前記石膏を含む前記処理剤を製造する、
請求項1又は2に記載の白金加工品の製造方法。
【請求項4】
炭化ホウ素、炭化ケイ素及び溶岩を含む処理剤を製造する工程と、
前記処理剤を容器に収納する工程と、
前記容器に収納した前記処理剤上に第1の白金製の部材を載置する工程と、
前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、
前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆った後に、前記容器を所定の時間加熱する工程と、
前記容器を所定の時間加熱した後に、前記容器を所定の時間冷却する工程と、
を有する白金加工品の製造方法。
【請求項5】
前記処理剤で覆う工程の後に、
前記第1の白金製の部材を覆った前記処理剤上に第2の白金製の部材を載置する工程と、
前記第2の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、
をさらに有する、
請求項4に記載の白金加工品の製造方法。
【請求項6】
前記処理剤を製造する工程において、14.3重量%の炭化ホウ素、28.6重量%の炭化ケイ素、及び57.1重量%の前記溶岩を含む前記処理剤を製造する、
請求項4又は5に記載の白金加工品の製造方法。
【請求項7】
前記処理剤を製造する工程において、9.1重量%の炭化ホウ素、18.2重量%の炭化ケイ素、及び72.7重量%の前記溶岩を含む前記処理剤を製造する、
請求項4又は5に記載の白金加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、又は非金属を拡散浸透させることで、金属の表面を硬化する処理が行われている。特許文献1には、炭化ホウ素、ほう砂の混合物に、塩化ナトリウム、塩化カリウムの塩類を添加して、るつぼ内にて混合し、その混合物内に白金(Pt)を投入して、電気炉内で加熱することにより、白金(Pt)の表面を硬化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−104974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、塩化ナトリウムや塩化カリウムの塩類を用いるため、るつぼや炉が劣化しやすいという問題が生じていた。そこで、他の材料を用いて白金の表面を硬化する方法が求められていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを使用することなく、白金の表面を硬化する白金加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、炭化ホウ素、炭化ケイ素及び石膏を含む処理剤を製造する工程と、容器に溶岩を収納する工程と、前記溶岩上に、前記処理剤を載置する工程と、前記処理剤上に第1の白金製の部材を載置する工程と、前記第1の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、前記処理剤上を溶岩で覆う工程と、前記処理剤上を前記溶岩で覆った後に、前記容器を所定の時間加熱する工程と、前記容器を所定の時間加熱した後に、前記容器を所定の時間冷却する工程と、を有する白金加工品の製造方法を提供する。
【0007】
また、前記第1の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、前記溶岩で覆う工程との間に、前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、前記第1の白金製の部材を覆った前記処理剤上に第2の白金製の部材を載置する工程と、前記第2の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、をさらに有し、前記溶岩で覆う工程において、前記第2の白金製の部材の上に載置された前記処理剤上を前記溶岩で覆ってもよい。
【0008】
また、前記処理剤を製造する工程において、9.1重量%の炭化ホウ素、18.2重量%の炭化ケイ素、及び72.7重量%の前記石膏を含む前記処理剤を製造してもよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、炭化ホウ素、炭化ケイ素及び溶岩を含む処理剤を製造する工程と、前記処理剤を容器に収納する工程と、前記容器に収納した前記処理剤上に第1の白金製の部材を載置する工程と、前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、前記第1の白金製の部材を前記処理剤で覆った後に、前記容器を所定の時間加熱する工程と、前記容器を所定の時間加熱した後に、前記容器を所定の時間冷却する工程と、を有する白金加工品の製造方法を提供する。
【0010】
また、前記処理剤で覆う工程の後に、前記第1の白金製の部材を覆った前記処理剤上に第2の白金製の部材を載置する工程と、前記第2の白金製の部材を前記処理剤で覆う工程と、をさらに有していてもよい。
【0011】
また、前記処理剤を製造する工程において、14.3重量%の炭化ホウ素、28.6重量%の炭化ケイ素、及び57.1重量%の前記溶岩を含む前記処理剤を製造してもよい。また、前記処理剤を製造する工程において、9.1重量%の炭化ホウ素、18.2重量%の炭化ケイ素、及び72.7重量%の前記溶岩を含む前記処理剤を製造してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを使用することなく、白金の表面を硬化させた白金加工品を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法の手順を示す。
図2】第1の実施形態に係る白金加工品を製造するための容器の内部の状態を模式的に示す。
図3】第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法における炉の加熱・除熱の手順を示す。
図4】第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法の手順を示す。
図5】第2の実施形態に係る白金加工品を製造するための容器の内部の状態を模式的に示す。
図6】第2の実施形態に係る複数の白金加工品を製造するための容器の内部の状態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
[製造方法の手順]
図1は、第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法の手順を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る白金加工品を製造するための容器の内部の状態を示す模式図である。図3は、第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法における炉の加熱・除熱の手順を示す図である。第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、白金製の部材が硬化された白金加工品を製造する方法である。第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、白金製の部材を加工する際に用いられる処理剤に、パウダー状に粉砕された溶岩(以下、「溶岩パウダー」という場合がある)が混合された方式であり、以下の説明においては「混合方式」という場合がある。
【0015】
溶岩は、火山が噴火した時に火口から噴き出たマグマに基づいて生成された物質のうち、流体として流れ出た溶融物質が固まって生成された岩石である。溶岩の成分の詳細については後述するが、約50%の重量を占める主成分は二酸化ケイ素(SiO)であり、その他の成分として、少なくとも酸化アルミニウム(Al)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化鉄(Fe)を含む。
【0016】
白金製の部材には、表1に示されるような種類がある。また、それぞれの処理前の硬度を示す。白金製の部材は、例えば、指輪等のリングである。硬度は、ビッカーズ硬度(HV)である。
【表1】
【0017】
Duro 999−Ptは、99.92重量%の白金(Pt)、0.02重量%のチタン(Ti)、及び0.06重量%のインジウム(In)を含む、当社プラチナ合金の新地金である。Pt 950 RuPdは、95.0重量%の白金(Pt)、5.0重量%のルテニウム(Ru)とパラジウム(Pd)を含む。Pt 900 RuPdは、90.0重量%の白金(Pt)、10.0重量%のルテニウム(Ru)とパラジウム(Pd)を含む。
【0018】
以下、図1及び図2を参照しながら、第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法について説明する。
まず、溶岩をパウダー状に粉砕する(ステップS1)。次に、炭化ホウ素(BC)、炭化ケイ素(SiC)及びパウダー状に粉砕された溶岩を混合して処理剤Aを製造する(ステップS2)。次に、図2(a)に示すように、製造された処理剤Aを容器に収納する(ステップS3)。容器は、例えば、セラミックス製のるつぼ(30ml程度)である。
【0019】
次に、図2(b)に示すように、容器に収納した処理剤A上に、第1の白金製の部材を載置する(ステップS4)。次に、図2(c)に示すように、第1の白金製の部材を処理剤Aで覆う(ステップS5)。そして、第1の白金製の部材を処理剤Aで覆った後に、容器に蓋をする(ステップS6)。
【0020】
続いて、白金製の部材を処理剤Aで覆い蓋をした容器を、空気に満たされた炉内に設置し、空気に満たされた状態で所定の時間加熱する(ステップS7)。図3に示されるように、例えば、容器を40分所定の温度になるまで加熱して、その後、900℃で2.5時間、恒温状態を保持するよう加熱する。
【0021】
そして、図3に示されるように、容器を所定の時間加熱した後に、加熱を中止し容器を所定の時間(例えば、12時間)炉内で自然冷却する(ステップS8)。その後、炉を開け、容器を取り出し、例えば、空気中に容器を放置して常温になるまで自然冷却する(ステップS9)。そして、常温に冷却した容器より、白金製の部材を取り出す(ステップS10)。以上の手順で白金製の部材を加工することにより、白金製の部材の硬度を大きくすることができる。
【0022】
なお、上記の実施形態では、るつぼ内に配置される白金製の部材は、1つであったが、るつぼ内に配置される白金製の部材は、複数であってもよい。例えば、ステップS5において第1の白金製の部材を処理剤Aで覆った後に、図2(d)に示すように、第2の白金製の部材を載置する工程を実行し、その後、図2(e)に示すように、第2の白金製の部材を処理剤Aで覆う工程を実行してもよい。
【0023】
[実施例]
次に、混合方式によって白金製の部材を硬化させた試作結果を示す。試作に用いられた溶岩の成分を以下の表2に示す。
【表2】
【0024】
表3は、混合方式によって白金製の部材を硬化させた結果である。
【表3】
【0025】
表3に示されるように、実施例1では、14.3重量%の炭化ホウ素(BC)、28.6重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び57.1重量%の溶岩を含む処理剤Aを製造する。実施例1では、表3に示されるように、白金製の部材は、Duro 999−Ptである。表3に示されるように、実施例1では、白金製の部材は硬度が204となった。また、実施例1によって製造された白金製の部材は、肌あれが大きいものであった。肌あれとは、白金製の部材の表面に形成される微小な凹凸形状である。
【0026】
実施例1から実施例3は、14.3重量%の炭化ホウ素(BC)、28.6重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び57.1重量%の溶岩を含む処理剤Aを製造した。14.3重量%の炭化ホウ素(BC)、28.6重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び57.1重量%の溶岩を含む処理剤Aを製造した場合には、他の実施例に比べて硬度が最も向上したが、他の実施例に比べて肌あれが大きくなった。
【0027】
実施例4から実施例6は、9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の溶岩を含む処理剤Aを製造した。9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の溶岩を含む処理剤Aを製造した場合には、実施例1から実施例3に比べて、硬度は小さくなったが、肌あれも小さくなった。ゴマスは、実施例4では無くなり、実施例5及び実施例6では、極少なくなった。ゴマスとは、白金製の部材の表面に形成される無数の極小の空洞である。
【0028】
参考例1として、実施例7は、12.5重量%の炭化ホウ素(BC)、25.0重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び62.5重量%の石膏(CaSO・2HO)を含む処理剤A1を製造した。実施例7は、他の実施例に比べて硬度は小さく、ゴマスが多い。一方、肌が実施例4から実施例6よりも勝るものであった。
【0029】
参考例2として、実施例8から実施例10は、9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の石膏(CaSO・2HO)を混合して処理剤A1を製造した場合の実施例である。実施例8から実施例10は、実施例4から実施例6と比べて硬度は小さくなった。
【0030】
[第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法による効果]
第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、炭化ホウ素(BC)、炭化ケイ素(SiC)及び溶岩を含む処理剤Aを製造し、白金製の部材を処理剤Aで覆う工程を有する。
【0031】
第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、このように、溶岩を用いた処理剤Aで白金製の部材を覆うことで、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを使用することなく、白金製の部材を効果的に硬化させることができる。したがって、第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、るつぼや炉が劣化することを防ぐことができる。なお、表1の地金硬度に比べ、本実施形態は200%以上の硬度を達成している。硬化後の白金製の部材の加工を考慮して、硬化処理後の白金製の部材のゴマスの有無及び肌あれを評価すると、肌あれの少ない実施例4〜6のうち、ゴマスが発生しないものは、実施例4であり当該実施例は好適といえる。
【0032】
<第2の実施形態>
[製造方法の手順]
図4は、第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法の手順を示す図である。図5は、第2の実施形態に係る白金加工品を製造するための容器の内部の状態を示す模式図である。第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、第1の実施形態に係る白金加工品の製造方法と同様に、白金製の部材が硬化された白金加工品を製造する方法である。第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、白金製の部材を加工する際に用いられる処理剤に石膏が混合され、リングを覆った処理剤をパウダー状に粉砕された溶岩で上下から覆った方式であり、以下の説明においては「サンドウイッチ方式」という場合がある。
【0033】
まず、溶岩をパウダー状に粉砕する(ステップS21)。次に、炭化ホウ素(BC)、炭化ケイ素(SiC)及び石膏(gypsum:CaSO・2HO)を密閉容器に入れ、混合攪拌することにより処理剤Bを製造する(ステップS22)。次に、図5(a)に示すように、容器の底に溶岩パウダーを収納する(ステップS23)。容器は、例えば、セラミックス製のるつぼ(30ml程度)である。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、溶岩パウダー上に、処理剤Bを収納する(ステップS24)。次に、図5(c)に示すように、処理剤B上に第1の白金製の部材を載置する(ステップS25)。次に、図5(d)に示すように、第1の白金製の部材の上に、当該白金製の部材が隠れる程度に処理剤Bを載置する(ステップS26)。次に、図5(e)に示すように、処理剤B上を溶岩パウダーで覆う(ステップS27)。次に、処理剤B上を溶岩パウダーで覆った後に、容器に蓋をする(ステップS28)。
【0035】
白金製の部材を処理剤Bで覆い蓋をした容器を、空気に満たされた炉内に設置し、空気に満たされた状態で所定の時間加熱する(ステップS29)。図3に示されるように、例えば、容器を40分所定の温度(例えば、900℃)になるまで加熱して、その後、例えば900℃で2.5時間、恒温状態を保持するよう加熱する。
【0036】
そして、図3に示されるように、容器を所定の時間加熱した後に、加熱を中止し容器を所定の時間(例えば、12時間)炉内で自然冷却する(ステップS30)。その後、炉を開け、容器を取り出し、例えば、空気中に容器を放置して常温になるまで自然冷却する(ステップS31)。そして、常温に冷却した容器より、白金製の部材を取り出す(ステップS32)。以上の手順で白金製の部材を加工することにより、白金製の部材の硬度を大きくすることができる。
【0037】
図6は、第2の実施形態に係る複数の白金加工品を製造するための容器の内部の状態を示す模式図である。図6(a)〜図6(d)は、図5(a)〜図5(d)と同一である。複数の白金加工品を製造する場合、図6(d)の状態において、図6(e)に示すように、第2の白金製の部材を載置する工程を実行し、その後、図6(f)に示すように、第2の白金製の部材を処理剤Bで覆う工程を実行し、その後、図6(g)に示すように、処理剤B上を溶岩パウダーで覆う工程を実行してもよい。
【0038】
[実施例]
次に、サンドウイッチ方式によって白金製の部材を硬化させた試作結果を示す。表4で示されるように、サンドウイッチ方式では、実施例11から実施例13の結果が得られた。
【表4】
【0039】
実施例11から実施例13は、9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の石膏(CaSO・2HO)を含む処理剤Bを製造した。9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の石膏(CaSO・2HO)を含む処理剤Bを製造した場合には、混合方式における実施例8から実施例10に比べて、硬度が大きくなった。
【0040】
特に、9.1重量%の炭化ホウ素(BC)、18.2重量%の炭化ケイ素(SiC)、及び72.7重量%の石膏(CaSO・2HO)を含む処理剤Bを製造した実施例11では、白金製の部材の硬度は、135.4となった。実施例11から実施例13によって製造された白金製の部材の肌は、混合方式における実施例7よりもやや劣るが、混合方式における実施例4から実施例6よりも良いものであった。また、白金製の部材の表面に形成されるゴマスは消えた。このように、実施例11から実施例13の白金製の部材は、硬度が向上し、かつ、肌あれは小さく、ゴマスを消すことができた。
【0041】
[第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法による効果]
第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、炭化ホウ素(BC)、炭化ケイ素(SiC)及び石膏(CaSO・2HO)を含む処理剤Bを製造し、白金製の部材を処理剤Bで覆い、さらに、処理剤Bで覆われた白金製の部材を溶岩パウダーで覆う工程を有する。
【0042】
第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、このように白金製の部材を処理剤Bで覆った上に、さらに処理剤Bを溶岩パウダーで覆うことで、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを使用することなく、白金製の部材を効果的に硬化させることができ(例えば、Duro999−Ptにおいては、原素材の218パーセント)、かつゴマスも発生せず、肌あれを小さくすることができる。したがって、第2の実施形態に係る白金加工品の製造方法は、るつぼや炉が劣化することを防ぐことができる。また、硬化処理を依頼するユーザは、溶岩を所望の場所で容易に入手することができる。
【0043】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【要約】
【課題】塩化ナトリウム及び塩化カリウムを使用することなく、白金の表面を硬化させた白金加工品を製造する。
【解決手段】白金加工品の製造方法は、炭化ホウ素、炭化ケイ素及び石膏を含む処理剤を製造する工程と、容器に溶岩を収納する工程と、前記溶岩上に、前記処理剤を載置する工程と、前記処理剤上に第1の白金製の部材を載置する工程と、前記第1の白金製の部材の上に前記処理剤を載置する工程と、前記処理剤上を溶岩で覆う工程と、前記処理剤上を前記溶岩で覆った後に、前記容器を所定の時間加熱する工程と、前記容器を所定の時間加熱した後に、前記容器を所定の時間冷却する工程と、を有する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6