(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査用電極が、前記ディスタール側の外周面において周方向で実質的に環状とされていると共に、軸方向に離隔して複数設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載のガイディングカテーテル。
前記治療用カテーテルが挿通される中央ルーメンの外周側に配線用ルーメンが形成されており、前記検査用電極に接続されたリード線が該配線用ルーメンに配線されている請求項1〜5の何れか一項に記載のガイデンィグカテーテル。
前記治療用カテーテルが挿通される中央ルーメンの外周壁に補強ブレードが固着されていると共に、前記検査用電極に接続されたリード線が該補強ブレードに編み込まれて配線されている請求項1〜5の何れか一項に記載のガイディングカテーテル。
【背景技術】
【0002】
従来から、直径数ミリ以下のカテーテルを血管内に挿入し、カテーテルのプロキシマル側において体外から操作することで、カテーテルのディスタル側において血管内の所定部位に処置を施すカテーテル治療が知られている。そして、腎動脈に対するカテーテル治療として、例えば腎除神経カテーテル術などがある。
【0003】
腎除神経カテーテル術は、腎交感神経アブレーションとも言われており、腎動脈の表面を通る交感神経が血圧を調整する信号を伝える機能を担っていることに着目し、かかる交感神経を加温処置することで、治療抵抗性高血圧を降圧治療等するものである。その治療に際しては、アブレーションカテーテルを、人体の大腿等の動脈から大動脈を経て腎動脈に差し入れ、カテーテル先端から高周波電圧を発して腎動脈血管壁の外側に位置する交感神経を加温することで焼灼するようにされる。
【0004】
ところで、腎除神経カテーテル術は、特表2010−509032号公報(特許文献1)や特表2013−510689号公報(特許文献2)等に記載されている焼灼カテーテルを用いて行われることとなるが、腎除神経カテーテル術の施術後に、目的とする神経に対してどの程度の除神経措置が施されたのかという施術結果を直接に観察することが極めて困難であった。
【0005】
すなわち、本発明者は、例えば腎神経の活動電位を測定することで腎除神経処置の効果確認を行うことも検討した。しかし、腎除神経カテーテル術では、施術後の血管狭窄などの副作用を回避するために、腎動脈の周上で局部的に焼灼処置が施されることから、除神経された特定箇所の活動電位を測定することは極めて難しかった。しかも、腎交感神経は腎動脈の周囲を複雑に絡み合うように走行していることから、除神経された箇所を狙って腎神経の活動電位を測定することが一層困難となっており、測定位置のずれに起因して比較的大きな誤差が生ずることから、除神経状態を十分な信頼性をもって測定できないのが現状であった。
【0006】
また、腎動脈は細いことから、焼灼カテーテルと検査用カテーテルを併せて腎動脈内に挿入することすら困難であり、焼灼カテーテルと検査用カテーテルとを交換して焼灼処置と検査を行うことは、施術者と患者の双方にとって大きな負担を強いることになってしまうという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、腎動脈の周囲を複雑に絡み合うように走行している腎交感神経の活動電位を、優れた精度と信頼性をもって且つ容易に測定することが可能とされて、例えば腎交感神経アブレーションの治療効果も施術後速やかに且つ直接的に確認することを可能と為し得る、新規な構造のガイディングカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
本発明の第一の態様は、
大動脈を経て腎動脈の分岐部分にまで挿し入れられることにより、治療用カテーテルを
該大動脈から
該腎動脈へ導くガイディングカテーテルにおいて、
該腎動脈における該大動脈からの分岐部分に位置せしめられるディスタール側の外周面に検査用電極が設けられていることを、特徴とする。
【0011】
本発明を完成するに際して、本発明者は、先ず、腎動脈の周囲では複雑に絡み合うように走行している腎交感神経が、大動脈からの腎動脈入口近傍において次第に収束して、大動脈部の所定部位にある節にまとまっている、腎交感神経の特徴的な態様に着目した。また、本発明者は、治療用カテーテルを治療部位近くまで導くために用いられるガイディングカテーテルにも、併せて着目した。
【0012】
すなわち、腎動脈は、
図1に示されているように、大動脈から側方に向って略直角に近い傾斜角度で分岐している。それ故、腎動脈にアブレーション等の処置を施す場合には、一般にガイディングカテーテルを用いて、そのディスタール側を腎動脈における大動脈からの分岐部分に位置せしめることにより、大動脈から腎動脈へ治療用カテーテルを案内して導き入れるようにされる。従って、かかるガイディングカテーテルは、治療部位に直接アクセスして処置を施すアブレーションカテーテル等の治療用カテーテルとは異なり、腎動脈内の治療部位までは達しないが、腎交感神経が収束してまとまる節の付近までは達することとなる。
【0013】
ここにおいて、本発明の第一の態様では、ガイディングカテーテルにおけるディスタール側の外周面に検査用電極を設けたことにより、腎動脈の周囲でアブレーション等の処置を施された腎交感神経における活動電位を、かかる腎交感神経がまとまって存在する節の付近で測定することが可能になる。それ故、腎動脈の周囲でアブレーション等の処置を施された腎交感神経の位置を特定することができない状況でも、処置を施された腎交感神経の経路上で且つ処置位置の近くで活動電位を測定することができる。
【0014】
これにより、処置を施された腎交感神経について、その処置位置を正確に特定する必要なく、活動電位の測定による直接的な効果確認を容易に行うことが可能になるのであり、処置が施されていない腎交感神経を間違って測定することに起因する効果の誤った判断も可及的に回避することができる。
【0015】
しかも、ガイディングカテーテルによって腎交感神経の活動電位を測定できることから、かかる測定に際して、アブレーションカテーテル等の治療用カテーテルを抜き取る必要もない。それ故、目的とする測定を速やかに且つ一層容易に行うことが可能になる。また、例えばアブレーションカテーテル等の治療用カテーテルで腎動脈への処置を施しつつ、当該治療用カテーテルを挿通したままのガイディングカテーテルを用いて、処置と同時に或いは交互に間欠的に測定を行うこともできる。これにより、例えば、腎動脈への処置を監視して、所望の効果が確認できるまで腎動脈への処置を必要なだけ施すことも可能になる。
【0016】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記ディスタール側にバルーンが設けられており、該バルーンの外周面に前記検査用電極が設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、バルーンを拡張させることでディスタール側の端部付近を大動脈や腎動脈に対して一層安定して位置決めすることが可能になる。その結果、治療用カテーテルを大動脈から腎動脈へ一層効率的に案内することができると共に、バルーンの外周面に検査用電極を設けたことで、かかる検査用電極を血管の内壁面に対して一層安定して接触保持させることができて、検査用電極よる測定精度の向上などが図られ得る。
【0018】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記バルーンの長さ方向の両側を相互に連通する灌流ルーメンが設けられているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、バルーンを血管内で拡張させた状態でも、灌流ルーメンを通じて、血管内の血流が維持され得ることから、比較的長時間に亘る施術や測定を、血流遮断による弊害を回避して行うことも可能になる。
【0020】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れか一つの態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記検査用電極が、前記ディスタール側の外周面において周方向で実質的に環状とされていると共に、軸方向に離隔して複数設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、検査用電極が周方向で実質的に環状とされていることにより、処置が施された腎交感神経が腎動脈や大動脈の周上で何れの位置に存在する場合でも、当該腎交感神経を殆ど外すことなく、より高い信頼性をもって効果確認することが可能になる。なお、本態様において、カテーテル軸方向に離隔して設けられた複数の検査用電極は、例えば各少なくとも一つの刺激用電極および検出用電極とされて、刺激用電極から測定用電圧を発した際の生体反応としての電圧変化を検出用電極において測定するようにされる。
【0022】
本発明の第五の態様は、前記第一〜三の何れか一つの態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記検査用電極が、前記ディスタール側の外周面において周方向で離隔して複数設けられているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、複数の検査用電極が略同じ周上に配されることから、カテーテル軸方向の短い領域に、各少なくとも一つの刺激用電極および検出用電極を効率的に配することが可能になる。
【0024】
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れか一つの態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記治療用カテーテルが挿通される中央ルーメンの外周側に配線用ルーメンが形成されており、前記検査用電極に接続されたリード線が該配線用ルーメンに配線されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、検査用電極へ給電したり検出電圧を取り出すリード線が配線用ルーメン内に配線されることから、ガイディングカテーテルへの治療用カテーテルの挿通に際してリード線が治療用カテーテルに干渉したり、ガイディングカテーテルの血管内への挿し入れに際してリード線が血管内面に干渉して邪魔になるような不具合が防止され得る。
【0026】
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れか一つの態様に係るガイディングカテーテルにおいて、前記治療用カテーテルが挿通される中央ルーメンの外周壁に補強ブレードが固着されていると共に、前記検査用電極に接続されたリード線が該補強ブレードに編み込まれて配線されているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされたガイディングカテーテルでは、検査用電極へ給電したり検出電圧を取り出すリード線が、ガイディングカテーテルの補強ブレードを利用して配線されることにより、リード線の配線用ルーメンを特別に設けることなく、治療用カテーテルや血管内面への干渉を効果的に防止しつつリード線をガイディングカテーテル内に効率的に配線することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、腎動脈の周囲を複雑に絡み合うように走行して大動脈からの分岐部近傍に収束する腎交感神経の特徴的な態様に着目し、且つ腎動脈のカテーテル治療に際して用いられるガイディングカテーテルを巧く利用することによって、アブレーション等の処置位置を正確に特定せずとも、腎交感神経の活動電位等を優れた精度と信頼性をもって且つ容易に測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。先ず、
図2には、本発明の第一の実施形態としてのガイディングカテーテル10の概略構造が示されている。本実施形態のガイディングカテーテル10は、腎除神経カテーテル術に用いられて、腕や脚の動脈から大動脈を経て腎動脈の分岐部分にまで挿し入れられることにより、治療用カテーテルであるアブレーションカテーテルを腎動脈にまで導くものである。なお、
図2では、血管に挿し入れられる先端部を有するディスタール側が図中の左側に示されており、体外での操作部を有するプロキシマル側が図中の右側に示されている。
【0031】
より詳細には、本実施形態のガイディングカテーテル10は、カテーテルシャフト12のプロキシマル側にルアハブ14が設けられていると共に、ルアハブ14からY字状に分岐して配線コネクタ16が設けられている。
【0032】
カテーテルシャフト12は、それぞれ円形チューブ形状の内シャフト18と外シャフト20からなる二重管構造とされている。これら内外シャフト18,20からなるカテーテルシャフト12は、血管に挿入され得るように、弾性的に撓み変形可能な樹脂チューブから構成されている。
【0033】
なお、内外シャフト18,20を形成する樹脂材料は、特に限定されるものでないが、人体に無害で耐蝕性を有することや適度な弾性および強度を有すること、加工が容易なこと等を考慮して、例えばウレタン樹脂やポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリアミドなどが好適に採用される。
【0034】
また、カテーテルシャフト12の長さや太さは、体外から血管への挿入位置などの条件を考慮して、ディスタール側の先端開口部が、
図1に示されているように大動脈から腎動脈の分岐点付近に達して位置せしめられるように設定される。例えば腕の付根付近の動脈から挿入される場合には、一般に、その長さが400〜1500mm程度とされると共に、その外径寸法すなわち外シャフトの外径寸法が0.5〜5mm程度とされる。
【0035】
更にまた、内シャフト18の内径寸法は、治療用カテーテルを挿通可能な大きさで中央ルーメンとしての本体ルーメン22が形成され得るように設定される。例えば腎除神経用のアブレーションカテーテルを用いる場合には、一般にその内径寸法が0.3〜3mm程度とされる。
【0036】
さらに、内シャフト18の外径寸法と外シャフト20の内径寸法は、それら内外シャフト18,20間に形成される円環状断面の配線用ルーメン24が、後述するリード線32を挿通配線可能な大きさとなるように設定される。具体的には、配線用ルーメン24の径方向寸法が0.1〜1mm程度となるように、内シャフト18の外径寸法と外シャフト20の内径寸法との差が設定される。
【0037】
なお、配線用ルーメン24は、カテーテルシャフト12のディスタール側の端部において封止されており、配線用ルーメン24が血管内へ開放されることがないようにされている。
【0038】
そして、このカテーテルシャフト12のプロキシマル側の端部には、ルアハブ14が設けられている。このルアハブ14は、カテーテルシャフト12よりも大径で硬質とされており、指先で持って操作し易くなっている。また、ルアハブ14内には、カテーテルシャフト12の本体ルーメン22に連通された内孔が軸方向に延びて貫通している。このルアハブ14の内孔の基端側開口部26から、直接に又は適切なコネクタを介して、治療用カテーテルとしてのアブレーションカテーテルを挿し入れることにより、本体ルーメン22へ挿通させることができるようになっている。
【0039】
なお、アブレーションカテーテルの挿入部分には、一般に、ルアハブ14の内部やルアハブ14に接続されるコネクタ等の適切な箇所に逆止弁が配設されて、本体ルーメン22の外部空間への開放が防止されることとなる。
【0040】
さらに、ルアハブ14の側壁部には、Y字状の分岐チューブ28が設けられている。かかる分岐チューブ28は、一端側の開口部がルアハブ14内において、カテーテルシャフト12の配線用ルーメン24に接続されている。また、分岐チューブ28の他端側の開口部には、配線コネクタ16が設けられている。
【0041】
分岐チューブ28内は、本体ルーメン22から独立して、配線用ルーメン24へ連通されており、配線用ルーメン24に配線されるリード線32が、かかる分岐チューブ28を経て、配線コネクタ16内の端子に接続されている。そして、この配線コネクタ16に対して、外部リード線の端部に設けられた嵌合コネクタが着脱可能とされることにより、ガイディングカテーテル10のリード線32が外部リード線に導通されるようになっている。
【0042】
一方、カテーテルシャフト12のディスタール側には、検査用電極30が設けられている。かかる検査用電極30は、外シャフト20の外周面を周方向の全周に亘って所定幅で連続して延びる円環の帯形状とされており、外シャフト20の軸方向(長さ方向)で相互に離隔して複数形成されている。なお、各検査用電極30は、接着や溶着、嵌着等によって外シャフト20に対して固着されている。そして、検査用電極30は、実質的に周方向の全周に亘って連続して露出された電極面を構成している。
【0043】
この検査用電極30は、外周面に露出する電極面を構成するように通電材で形成されており、好適には白金(Pt)や白金イリジウム合金(Pt−Ir)、金などの安定性が高く電気抵抗が小さい金属等の材料で形成される。
【0044】
また、各検査用電極30には、リード線32が接続されている。各リード線3
2は、例えば配線用ルーメン24から外シャフト20の周壁を径方向に貫通して検査用電極30の内面に導通されている。そして、各リード線3
2は、配線用ルーメン24を通じて、カテーテルシャフト12のプロキシマル側に延びており、前述のように分岐チューブ28を経て配線コネクタ16に接続されている。
【0045】
このような構造とされたガイディングカテーテル10は、腎除神経カテーテルの施術に際して、アブレーションカテーテルの挿入に先立って血管へ挿入され、大動脈を経て腎動脈の分岐部分にまで挿し入れられる。そして、
図1に示されているように、アブレーションカテーテル34を腎動脈にまで導くようにされる。なお、
図1に示されているように、カテーテルシャフト12のディスタール側の端部付近は、大動脈から腎動脈への分岐方向に応じて、適宜に湾曲されて用いられる。
【0046】
ここにおいて、アブレーションカテーテル34を腎動脈へ案内するカテーテルシャフト12のディスタール側は、必然的に、腎動脈における大動脈からの分岐部分に位置せしめることにより、腎交感神経が収束してまとまる節の付近にまで達して位置せしめられることとなる。それ故、ガイディングカテーテル10のディスタール側の外周面に設けた検査用電極30により、腎交感神経がまとまって存在する領域で活動電位や生体電位を測定することが可能になる。
【0047】
具体的には、例えば複数の検査用電極30の幾つかを刺激用電極30aとし、かかる刺激用電極30aに対して、リード線32を通じてパルス状電圧変化等の測定用電圧を血管内面へ与える。一方、複数の検査用電極30の残りを検出用電極30bとし、刺激用電極30aで測定用電圧が与えられたことによる生体反応としての電圧変化を検出する。
【0048】
そして、この電圧変化の程度や速度などの検出結果から、腎交感神経の状態を把握することができるのであり、例えばアブレーションカテーテル34による腎交感神経の焼灼処置を施す前と施した後で、検出結果情報を比較することにより、腎交感神経への施術効果を把握することが可能になる。
【0049】
なお、活動電位や生体電位を測定するに際して刺激用電極や検出用電極と対を成す参照用電極は、被験者である生体の体内外の適切な部位に導通状態で装着されることとなる。
【0050】
特に上述の如きガイディングカテーテル10によれば、腎交感神経がまとまって存在する節の付近で測定することが可能になることから、腎動脈の周囲でアブレーション等の処置を施された腎交感神経の位置を特定することができない状況でも、処置を施された腎交感神経における活動電位等を測定することができる。それ故、腎交感神経における焼灼位置を正確に特定することなく直接的な効果確認を容易に行うことが可能になるのであり、処置が施されていない腎交感神経を間違って測定することに起因する効果の誤った判断も回避することができる。
【0051】
しかも、ガイディングカテーテル10によって腎交感神経の活動電位を測定できることから、アブレーションカテーテル34を血管内へ挿し入れたままで測定を行うことも可能になる。それ故、例えば、腎動脈への焼灼処置を監視して、所望の効果が確認できるまで腎動脈への処置を必要なだけ施すことも可能になる。
【0052】
次に、
図4〜5には、本発明の第二の実施形態としてのガイディングカテーテル36が示されている。なお、本実施形態では、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位について、それぞれ第一の実施形態と同一の符号を図中に付することにより、それらの詳細な説明を割愛する。また、
図5におけるガイディングカテーテル36では、バルーン40が省略して図示されている。
【0053】
すなわち、本実施形態のガイディングカテーテル36では、カテーテルシャフト38のディスタール側にバルーン40が設けられている。かかるバルーン40自体の構造は、従来公知の各種治療用カテーテルに採用されているものと同様であり、小径の収縮状態と大径の拡張状態とを選択的に取り得る中空の拡縮構造体であって、例えば折畳みと展張によって収縮および拡張するノンコンプライアントバルーンや、弾性変形するコンプライアントバルーンなどが適宜に採用可能である。
【0054】
なお、本実施形態では、バルーン40の拡縮制御を外部から行うことができるように、カテーテルシャフト38にインフレーションルーメン42が設けられている。即ち、本実施形態のカテーテルシャフト38は、比較的厚肉の周壁を備えた単管構造とされており、周壁内部には、周上でそれぞれ部分的に延びる配線用ルーメン44とインフレーションルーメン42が、互いに周方向に離隔して相互に独立して且つ中央ルーメンとしての本体ルーメン46からも独立して形成されている。
【0055】
インフレーションルーメン42は、一方の端部がバルーン40に接続されていると共に、他方の端部がルアハブ14から側方に突設されたインフレーションポート48に接続されている。そして、このインフレーションポート48に対して外部から圧力流体管路が接続されることにより、インフレーションルーメン42を通じて給排される圧力流体により、バルーン40が拡張状態と収縮状態とに適宜に制御可能とされている。
【0056】
そして、本実施形態では、かかるバルーン40の外周面に、検査用電極30が設けられている。特に本実施形態では、バルーン40の周方向で離隔して複数の検査用電極30が設けられており、それぞれ外周面に露出された電極面を構成している。なお、各検査用電極30に接続されたリード線32は、バルーン40の壁部内に埋め込まれて又はバルーン40の内部空間を利用して配線されており、配線用ルーメン44を通じて配線コネクタ16に接続されている。
【0057】
さらに、本実施形態のガイディングカテーテル36のカテーテルシャフト38には、バルーン40よりも基端側に位置して、周壁を貫通して内外に延びる灌流孔50が設けられている。この灌流孔50は、周方向においてインフレーションルーメン42と配線用ルーメン44を避ける位置で本体ルーメン46に連通されており、バルーン40の拡張状態で血管がバルーン40で遮断された状態でも、バルーン40の長さ方向の両側、即ち血管の上流側と下流側を常時連通状態に保つ灌流ルーメンを構成している。
【0058】
このような構造とされたガイディングカテーテル36は、前記実施形態と同様に、大動脈を経て腎動脈の分岐部分にまで挿し入れられた状態で、検査用電極30で電位測定を行うようにされる。ここにおいて、例えば複数の検査用電極30の幾つかを刺激用電極30aとすると共に、複数の検査用電極30の残りを検出用電極30bとすることにより、前記実施形態と同様に生体反応としての電圧変化を検出することができる。
【0059】
特に、本実施形態のガイディングカテーテル36では、バルーン40の外周面に検査用電極30が配されていることから、検査の実施に際してバルーン40を拡張させることにより、各検査用電極30を血管内面へ押し付けるようにして接触状態を安定して保持することが可能になり、その結果、測定精度や信頼性の更なる向上を図ることができる。
【0060】
なお、本実施形態のようにバルーン40の外周面に検査用電極30を設けるに際しては、バルーン40の周方向における検査用電極30の配設間隔を小さくすることが、測定精度や信頼性の向上につながる。かかる観点から、検査用電極30の配設パターンとして、別の好適例を、
図6,7および
図8,9に示す。
【0061】
すなわち、
図6,7に示された検査用電極の配置構造においては、周方向に並べられた複数の検査用電極30a,30bが、ガイディングカテーテル52の軸方向で交互にずれて千鳥状に配置されている。
【0062】
このような千鳥状配置構造とすることで、周方向における検査用電極30の配置間隔を十分に小さくしつつ、バルーン40が十分に開かないような状況でも、周方向で隣り合う検査用電極30,30間の接触による電気的短絡が防止され得る。
【0063】
図8,9に示された検査用電極の配置構造では、ガイディングカテーテル54の軸方向一方の側で幅寸法が大きく、他方の側で幅寸法が小さくされた異形状の刺激用電極56aおよび検出用電極56bが採用されており、幅寸法の大小が交互に反転するように、周方向で並べられている。
【0064】
このようなガイディングカテーテル54の軸方向で異形状とされた検査用電極56を、ガイディングカテーテル54の周方向で交互反転して並べた構造とすることにより、各検査用電極56において幅寸法が大きい側でリード線32の安定した接続状態を確保しつつ、周方向で隣り合う検査用電極56,56間の電気的短絡の防止と配設ピッチの減少とを、両立して高度に達成することが可能になる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の実施形態の記載によって限定的に解釈されるものでない。
【0066】
例えば、第一の実施形態では、周方向に連続して延びる帯状の検査用電極30が採用されていたが、電極の具体的形状は限定されるものでない。例えば、螺旋状に延びる検査用電極を採用することも可能であり、それによって、電極の総面積を確保しつつ電極の幅寸法を小さくすることで、カテーテルシャフトの曲げに対して柔軟に追従可能な電極構造を実現することも可能になる。
【0067】
また、前記実施形態では、少なくとも各一つの刺激用電極30a(56a)と検出用電極30b(56b)とからなる検査用電極を用いて、外的な電気刺激に対する電気的な生体反応を検出するようになっていたが、外的な電気刺激を与えることなく生体電位を検出する測定にも、本発明を適用することが可能である。その場合には、刺激用電極は不要となり、一つ又は複数の電極の全てを検出用電極として構成することもできる。
【0068】
更にまた、前記実施形態では、検査用電極30(56)に接続されたリード線を配線するために、カテーテルシャフト12(38)の周壁部分に配線用ルーメン24(44)が設けられていたが、そのような配線用ルーメンを設けることなく、本体ルーメンの周壁内面やカテーテルシャフトの外周面に固着してリード線を配線したり、本体ルーメンの周壁内へリード線を埋設して配線することも可能である。
【0069】
さらに、
図10に示されているように、カテーテルシャフト58の周壁内部にメッシュ構造や螺旋構造などをもって補強ブレードとしての補強体60を埋設状態で設ける場合には、かかる補強体60に対して複数のリード線を相互に絶縁構造をもって一体的に設けることにより、補強体60と共にカテーテルシャフト58の周壁内部にリード線を埋設配置することも可能である。なお、
図10は、カテーテルシャフト58において中央ルーメンとしての本体ルーメン62の外周壁を切欠き状態で示す説明図であり、かかる外周壁が、内層64と外層66を一体的に被着せしめた積層構造とされており、それら内外層64,66間にメッシュ状の補強体60が埋設配置されていることを示している。そして、かかる補強体60のメッシュ構造を構成する線状体の複数本として、検査用電極と配線コネクタとを接続するリード線が編み込まれている。このように、カテーテルシャフトの周壁内部にリード線が配線される場合には、配線用ルーメンを別途設ける必要がなく、ガイディングカテーテルの外径を小さくしたり、中央ルーメンの内径を大きくしたりすることができる。なお、かかる場合でも補強体は必須ではなく、リード線のみがカテーテルシャフトの周壁内部にメッシュ構造や螺旋構造などをもって配線されてもよい。