特許第6322413号(P6322413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6322413改善されたがん治療のための局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322413
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】改善されたがん治療のための局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20180423BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20180423BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180423BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20180423BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   A61K45/06
   A61K31/352
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   A61P35/04
   A61P43/00 121
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-557888(P2013-557888)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2014-510728(P2014-510728A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2012028412
(87)【国際公開番号】WO2012122444
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月2日
【審判番号】不服2016-19675(P2016-19675/J1)
【審判請求日】2016年12月28日
(31)【優先権主張番号】61/451,395
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510293969
【氏名又は名称】プロヴェクタス ファーマテック,インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ ジェイ.イーグル
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ エイチ.ディーズ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー.ワクター
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー シンガー
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 阪野 誠司
【審判官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/081173(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/011027(WO,A1)
【文献】 Melanoma Research,2008年,Vol.18,No.6,p405−411
【文献】 Melanoma Research,2010年,Vol.20,No.1,p48−51
【文献】 Journal of Clinical Oncology,2009年,Vol.27,No.15 Suppl.,9060, <URL:http://meeting.ascopubs.org/cgi/content/abstract/27/15S/9060?sid=a8062a5c−77c9−450a−a274−47f788b4bedc> <URL:http://pvct.com/publications/ASCO_Poster−2009.pdf>
【文献】 Journal of Clinical Oncology,2010年,Vol.28,No.15 Suppl.,8534, <URL:http://meeting.ascopubs.org/cgi/content/abstract/28/15_suppl/8534?sid=c12906e4−9151−40ba−a998−2cde5ea6887> <URL:https://www.pvct.com/publications/ASCO_Poster−2010.pdf>
【文献】 Pigment Cell & Melanoma Research,2010年,Vol.23,No.6,22,Melanoma 2010 Congress, <URL:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1755−148X.2010.00767.x/full>
【文献】 News Medical,2011年 1月27日,[online],[平成27年12月10日検索],インターネット, <URL:http://www.news−medical.net/news/20110127/Provectus−announces− completion−of−PV−10−Phase−1−trial−in−patients−with−liver−cancer.aspx>
【文献】 New England Journal of Medicine,2010年,Vol.363,No.8,p711−723
【文献】 癌と化学療法,2011年 1月,Vol.38,No.1,p31−35
【文献】 福岡医学雑誌,2010年,Vol.101,No.10,p207−214
【文献】 Journal of Immunology,2009年,Vol.183,No.1,p332−339
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-45/08
CA(STN)、Biosis(STN)、
Medline(STN)、Embase(STN)、
JSTplus、JMEDplus、JST7580
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんを治療するための医薬の製造における、治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤と組み合わせた治療有効量の病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物の使用方法であって、
前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんのアブレーションのために用いられ、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤、を含み、
前記全身性免疫修飾抗がん剤は、免疫系下方制御に対する全身性阻害剤であり、
前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの前記悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんの病巣内へ投与され、
前記全身性免疫修飾抗がん剤は、別途全身投与され、
前記医薬組成物のpHは、4〜10であり、
前記全身性免疫修飾抗がん剤は、イピリムマブ及びトレメリムマブを含む抗CTLA−4抗体を含むことを特徴とする、医薬組成物の使用方法。
【請求項2】
請求項1に記載の使用方法であって、前記ローズベンガルはローズベンガル二ナトリウムである、ことを特徴とする使用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の使用方法であって、前記ローズベンガルの濃度は、0.1%〜20%(w/v)であり、前記医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、前記電解質の濃度は0.1%(w/v)〜2%(w/v)である、ことを特徴とする使用方法。
【請求項4】
請求項に記載の使用方法であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物中の前記電解質の濃度は0.5%(w/v)〜1.5%(w/v)である、ことを特徴とする使用方法。
【請求項5】
請求項1に記載の使用方法であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧は、100mOsm/kgより大きい、ことを特徴とする使用方法。
【請求項6】
請求項に記載の使用方法であって、前記電解質は塩化ナトリウムである、ことを特徴とする使用方法。
【請求項7】
請求項1に記載の使用方法であって、前記医薬組成物は親水性賦形剤を含む、ことを特徴とする使用方法。
【請求項8】
請求項1に記載の使用方法であって、前記医薬組成物のpHは、5〜7である、ことを特徴とする使用方法。
【請求項9】
少なくとも一つのがん性の腫瘍のアブレーションを誘起する治療有効量の病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物と、免疫系下方制御に対する全身性阻害剤である、治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤とを含む、ヒトのがん治療用医薬組成物であって、
前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤、を含み、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの前記がん性の腫瘍の病巣内へ0.1mL/cc病変体積から2mL/cc病変体積投与され
免疫系下方制御に対する全身性阻害剤である前記全身性免疫修飾抗がん剤は、イピリムマブ及びトレメリムマブを含む抗CTLA−4抗体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項10】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記ローズベンガルはローズベンガル二ナトリウムである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記ローズベンガルの濃度は、0.1%〜20%(w/v)であり、前記医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、前記電解質の濃度は0.1%(w/v)〜2%(w/v)である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物中の前記電解質の濃度は0.5%(w/v)〜1.5%(w/v)である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧は、100mOsm/kgより大きい、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の医薬組成物であって、前記電解質は塩化ナトリウムである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は親水性賦形剤を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは、4〜10である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは、5〜7である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
請求項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、悪性黒色腫、原発性または転移性肝がんとから選択されるがんを治療するためのものである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
少なくとも一つの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍のアブレーションを誘起する治療有効量の病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物と、免疫系下方制御に対する全身性阻害剤である、治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤とを含む、ヒトの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん治療用医薬組成物であって、
前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤、を含み、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの前記悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍の病巣内へ0.1mL/cc病変体積から2mL/cc病変体積投与され
免疫系下方制御に対する全身性阻害剤である前記全身性免疫修飾抗がん剤は、イピリムマブ及びトレメリムマブを含む抗CTLA−4抗体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記ローズベンガルはローズベンガル二ナトリウムである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記ローズベンガルの濃度は、0.1%〜20%(w/v)であり、前記医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、前記電解質の濃度は0.1%(w/v)〜2%(w/v)である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬組成物であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物中の前記電解質の濃度は0.5%(w/v)〜1.5%(w/v)である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧は、100mOsm/kgより大きい、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の医薬組成物であって、前記電解質は塩化ナトリウムである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項25】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は親水性賦形剤を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項26】
請求項19に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは、4〜10である、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは、5〜7である、ことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学の分野、ひいては改善された治療レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、がん治療のための薬理学的アプローチは、各種の単剤による全身治療(モノセラピー)を利用することに依存していた。その典型例は化学療法で、これはダカルバジン(DTIC)もしくはテモゾロミド(TMZ)などのアルキル化剤、またはパクリタキセルなどの有糸分裂阻害剤を含む、広い細胞毒性を有し、急速に分裂する細胞を標的化する薬剤を使用して、がんに特徴的な急速に成長する細胞を阻害する、または殺す化学療法である。
【0003】
このようなモノセラピーでは、付随する高い全身毒性により投与量を少量もしくは治療量以下にする必要があるため、またはモノセラピー用薬剤の活性を回避する腫瘍の耐性が発達するため、腫瘍を完全に消失させることができない恐れがある。より進歩的な化学療法ストラテジーは、複数の生化学的経路から腫瘍を同時に攻撃する併用療法において、複数の薬剤を使用することを前提に開発された。
【0004】
ホジキンリンパ腫に用いられる、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびDTICの組み合わせなど、これらのレジメンの多くは実験的(empirical)試験を通じて開発された。これらの個々の薬理成分には本質的な制限があるので、このようなアプローチは、高い副作用(morbidity)に対して比較的非特異的なままであり、ここに有効性と安全性改善の面における大きな改良の余地がある。
【0005】
がんの標的化を、特定の細胞表面受容体の選択的な過剰発現、または、特定のシグナリングもしくは代謝経路、特に特定のがんに存在する異常経路への依存性に基づいて行うことで、別の攻撃ポイントがもたらされる。例えば、いくつかのがんでは、細胞シグナリングと過剰増殖性成長とに関与してがん遺伝子の役割を果たすセリン/スレオニン−プロテインキナーゼB−Raf遺伝子(BRAF)によりコードされるプロテインキナーゼなど、特定のプロテインキナーゼに変異が見られることが分かっている。
【0006】
阻害剤を用いてこれらの経路を標的化することは、少なくとも初期において、腫瘍崩壊シグナリングの回避により、がんを制御するには魅力的であることが証明されている。上皮成長因子受容体(EGFR)または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの特定の受容体の過剰発現を標的化することに基づく類似のアプローチは、例えば標的化された受容体に対する抗体の使用(またはこれらの受容体により刺激されるシグナリングを阻害する薬剤の使用)により、これらの受容体の腫瘍崩壊活性を減衰させるための基盤をもたらす。
【0007】
残念ながら従来の化学療法の場合、これらの受容体および経路が、腫瘍周辺で標的に毒性をもたらしうる重要な生理学的機能を果たす一方で、標的細胞もまた、代替的な生化学的プロセスを利用することにより、またはがん細胞の抗クローナル亜集団を選択し繁殖することにより、耐性を発達させる可能性があった。したがって、この種の標的療法による障害は、実質的に従来の化学療法による障害と類似している。
【0008】
ますます多くの腫瘍学的示唆から、がん腫瘍が様々な方法を用いて異常組織として検出されることを回避し、免疫系の能力を低減し、それにより患者の免疫系に同定および破壊されることを回避することが、現在では明らかとなっている。このため、がんを検出および破壊する患者の免疫系の能力を高めるための、多くのアプローチが開発された。例えば、抗CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)抗体であるイピリムマブおよびトレメリムマブは、CTLA−4の活性をブロックすることにより免疫系の下方制御に対抗し、がんに対するT細胞の反応を増強する。
【0009】
代替的なアプローチでは、(インターロイキン1、2、または6、「IL−1」、「IL−2」、または「IL−6」;インターフェロン−アルファまたはガンマ、「IFN−α」、「IFN−γ」;および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子「GM−CSF」などの)非特異的サイトカインを含む、免疫系の特定の要素を刺激する(即ち、上方制御する)薬剤、または、樹状細胞ワクチンおよび特定のがん抗原に対する抗体、ひいては養子T細胞治療など、特定の腫瘍抗原に対する腫瘍特異的な反応を引き起こそうとする薬剤が使用されうる。
【0010】
追加的なアプローチでは、例えばGM−CSFをコードする遺伝子を有する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス、または、ヒト白血球抗原−B7およびベータ−2ミクログロブリン剤をコードする遺伝子を有し、同種の主要組織適合複合体(MHC)クラスI抗原を発現させるよう設計されたプラスミド、を含む病巣内ワクチンなどの特定の免疫刺激剤を用いて、反復的ながんワクチン接種後の全身反応を引き出そうと試みた。
【0011】
これらの免疫修飾剤の潜在的な全身毒性、標的部位の差次的発現、またはクローン亜集団の反応性、療法導入中におけるがん負担の増大、および選択された攻撃方法に対する耐性の発達などを非限定的に含む様々な理由から、現在のレジメンでは、望ましい強力な免疫反応が得られないかもしれず、ここにまた有効性と安全性の面で大きな改善の余地がある。
【0012】
全身性免疫修飾剤を、全身化学療法剤またはキナーゼ阻害剤と併用することは、例えばJure−KunkelおよびLee(WO2010/014784)により提案されたが、このようなアプローチが臨床的に有意義であるか否かを判定するためのデータは限られている。基本的に、このアプローチは(化学療法または代謝阻害剤を用いた)標的療法の特徴を、併用療法において免疫修飾と組み合わせたものであり、また一般的な化学療法的併用療法の場合と同様に、いくつかの異なる経路を介してがんを同時に攻撃する手段をもたらし、これにより耐性が生じる可能性を低減しながら、有効性を増強する。
【0013】
化学療法は免疫学的な結果として、免疫修飾剤の活性を少なくとも部分的に打ち消す可能性があり、またそれぞれの全身性副作用は相加的または相乗的でありうるから、このようなモダリティの組み合わせには潜在的に重大な欠陥がある。Jure−KunkelおよびLeeの主題ではないが、標的療法も免疫修飾剤と組み合わされると、これらの負の効果をもたらす恐れがある。
【0014】
恐らく最も重要なことに、免疫学的利益に関して、これらの可能な(potential)組み合わせが相加的または相乗的な殺腫瘍力をもたらしうるとは思えない。なぜなら化学療法も、代謝もしくは異常遺伝子の標的化も、抗がん免疫反応を大幅に活性化することは見込めず、提案された抗CTLA−4の標的化も、組み合わされる(companion)化学療法またはがん特異的アプローチに対する、がん細胞の感受性を増大させるとは思えないからである。免疫修飾療法の導入中に腫瘍負担が増大するという可能性が、状況をさらに複雑にしており、レジメンの初期段階において疾患が許容不可能な進行状態まで進む可能性を高めている。
【0015】
治療学的障害をさらに複雑にすることに、これら従来の全身療法のいずれかに反応して、長期間にわたり次第に縮小しつつ、徐々に免疫反応性腫瘍物質を放出する腫瘍は、強力な保護反応を引き起こすのを妨げ、そのかわりに抗がん免疫の低減を容易にする恐れがある。この現象は、低量の抗原性物質を宿主に対して長期間に渡って反復的に曝露し、継続的で「背景的な」抗原を「自己(即ち、宿主の普通の一部分)」であると免疫系に認識させることで寛容性を引き出す、アレルギーに対する低容量治療に類似している。
【0016】
同様の仕組みにより、多くの全身治療への反応として、がん抗原が免疫系に対して徐々に低量ずつ放出されると、免疫系が誤認してがん抗原への寛容性を生じ、これにより起こりうる抗がん反応を低減して、または不能にして、潜在的にがんの生存を長引かせ、転移拡散の継続を可能にしてしまう恐れがある。
【0017】
代替的な療法の種類には、病巣組織への治療モダリティ送達を物理的に制限することを前提とするものもある。これらの局所療法は全身性曝露を低減しながら、療法による腫瘍組織内での効果を最大化しようとするものである。そのアプローチには、例えば経皮的エタノール注入療法(PEIT)および高周波(RF)アブレーションなどの、病巣内的方法を用いた腫瘍の物理的または化学的破壊、および、例えばメルファラン(アルキル化剤)または類似の薬剤を用いる分離式肢灌流(ILP)、四肢分離注入(ILI)または経皮的肝灌流(PHP)などの、強力な細胞毒性剤の局所領域への送達が含まれる。
【0018】
これらのアプローチは、治療される(treated)腫瘍に対する薬理活性を最大化するには概して非常に効果的だが、全身療法と同じ多くの欠陥を有する。これらの欠陥は、強力な局所領域的毒性を伴うが、標的がんへの特異性が低いこと、および、特に治療される腫瘍に対する免疫賦活機構を有さないアプローチの場合には、全身性疾患に対する効果が僅かであることを含む、基盤の治療モダリティの本質的な欠陥によるものである。
【0019】
病巣内(IL)ルートで送達されるがん特異的細胞毒性剤の使用(即ち、IL化学アブレーション)は、本発明者により(例えば、本願にその全体が組み込まれる、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に)記載された、新たな混成アプローチである。このアプローチは、患者に対する注入剤の全身性曝露と、その結果として生じうる全身性副作用とを最小限にするとともに、注入がなされた腫瘍に対する局所有効性を最大化するものである。
【0020】
本発明者は、ある特定の薬剤(例えば「PV−10」とよばれる、生理食塩水中にローズベンガル二ナトリウムを10%(w/v)含有する溶液、および悪性黒色腫、乳がん、および肝細胞がん治療のための実施中の臨床試験に代表される、特定のハロゲン化キサンテン製剤)クラスのIL使用によって、注入がなされた病巣部位に対する高特異的なアブレーションが可能となるだけでなく、注入がなされた腫瘍内における局所有効性を増強し、注入がなされていない腫瘍の自発的退縮を誘導する抗がん免疫反応(「バイスタンダー効果」)をも引き出すことができる、ということを示した。
【0021】
非臨床的証拠では、(好塩基球、好酸球、および肥満細胞などの)顆粒球が腫瘍周辺組織において高いレベルで発現しうることが示されており、これは宿主が腫瘍組織に対して非特異的免疫反応を開始しようとしていることを意味する。PV−10を用いた腫瘍治療は、この反応による修飾を、(例えば、単核の腫瘍浸潤リンパ球であるTIL、またはマクロファージを、腫瘍の内部または周囲に補充することで、)より特異的で効果的なものにすることができる。
【0022】
PV−10を用いたILケモアブレーションによる急激な腫瘍破壊により、隔絶された(sequested)無傷の腫瘍抗原が、局所抗原提示細胞(APC)に放出され、これが免疫反応の修飾と、TおよびB細胞への適切な抗原性標的の提示とを容易にする。腫瘍周辺で付随的に起こる顆粒球の破壊はケモカイン放出および局所炎症を誘発する可能性があり、特定の抗がん反応の促進においてはアジュバントの役割を果たす可能性がある。
【0023】
注入がなされた腫瘍のインサイチュでの破壊は、確実に自然な環境で腫瘍抗原を提示できるようにし、これにより治療される腫瘍、および同じ免疫シグネチャを有する腫瘍に対する免疫系の潜在的な反応を最大化する。免疫反応は、宿主への損傷の強度および持続時間に比例するため、ILケモアブレーションにより達成される急激な曝露は、長期間にわたり拡大する、全身療法により生じる強度の低い損傷と比較して、免疫学的に有利である。またこの急激な曝露は、潜在的には治療される腫瘍を患者に接種したことになる。
【0024】
注入がなされた腫瘍の急激なアブレーションはまた、一度の治療セッションにおいてであれ、あるいは数日又は数週間に分けて行なわれる連続した治療においてであれ、患者の腫瘍を全て、または大部分を注入することで増強されうる腫瘍負担を、急速に低減することができる。これはまた、患者の腫瘍塊による免疫抑制のレベルを低減し、その免疫系の能力を向上させて、残存するがん組織に対して奏功性のある攻撃を仕掛けることを可能にする。
【0025】
ILケモアブレーションは、大きな、または複数のがん病巣があるとき、これに対して使用するのに本質的に適しているため、腫瘍成長および転移の間に生じうる、異なる腫瘍(または個々の腫瘍内)における潜在的に顕著(distinct)なクローン亜集団に対するインサイチュでの接種が容易となり、転帰を改善することが可能となりうる。
【0026】
ILケモアブレーションは、従来の治療モダリティの欠陥の多くを(例えば腫瘍負担を急速に低減し、適切な環境において無傷の腫瘍抗体の急激な曝露を最大化し、起こりうる全身性副作用の最小化に寄与することにより)解消するが、本発明者は、これが全てのがんの場合に理想的であるとは限らず、特に、腫瘍が急速に過剰増殖するものである場合、疾患が広く拡散している場合、およびIL製剤を十分に浸潤させることが困難な形で存在する場合など、ある程度進行した場合においては、理想的でないと考えた。したがって、腫瘍学の分野におけるさらなる進歩、ひいては改善された治療レジメンが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第7648695号
【特許文献2】米国特許出願第11/951800号
【特許文献3】米国特許出願第12/315781号
【発明の概要】
【0028】
本発明は、治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物、またはその組成物の変種を、全身性免疫修飾抗がん剤と組み合わせて投与することを含む、がんの治療方法を対象とする。
【0029】
本発明はまた、がん治療用の医薬組成物であって:治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物と;治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤とを含む組成物も対象とする。
【0030】
上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性免疫修飾抗がん剤には、イピリムマブおよびトレメリムマブを含む、抗CTLA−4抗体が含まれる。
【0031】
上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性免疫修飾抗がん剤は、インターロイキン−1、インターロイキン−2、またはインターロイキン−6(IL−1、IL−2、またはIL−6)およびアルデスロイキンなどの非特異的サイトカイン;インターフェロン−アルファまたはインターフェロン−ガンマ(IFN−α、IFN−γ)、インターフェロンアルファ−2bおよび(ペグインターフェロンアルファ−2aおよびペグインターフェロンアルファ−2bを含む)ペグインターフェロン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF、モルグラモスチム、またはサルグラモスチム);GM−CSFをコードする遺伝子を有する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(Onco Vex(登録商標))、またはヒト白血球抗原−B7およびベータ−2ミクログロブリン剤をコードする遺伝子を有し、同種のMHCクラスI抗原を発現させるよう設計されたプラスミド(Allovectin−7(登録商標))を含む病巣内ワクチンを含めた、樹状細胞ワクチン、およびその他の同種または自己がんワクチン;および特定のがん抗原に対する抗体;からなる群より選択される。
【0032】
本発明はまた、がんを治療する方法も対象とする。この方法は、治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物、またはその組成物の変種を、治療有効量の全身性標的抗がん剤と組み合わせて投与することを含む。
【0033】
本発明はまた、がん治療用の医薬組成物であって:治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物と;治療有効量の全身性標的抗がん剤と;を含む組成物も対象とする。
【0034】
上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性標的抗がん剤は、アファチニブ(BIBW2992)、べバシズマブ、セツキシマブ、ダサチニブ、E7080、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、およびバンデタニブを含む、プロテインキナーゼおよびこれらを活性化する受容体を標的化する薬剤;(PLX4032、RG7204またはRO5185426としても知られる)ベムラフェニブ、GSK2118436およびGSK1120212などを含む、B−Raf/MEK/ERK経路を標的化するものを含む、セリン/スレオニン選択的プロテインキナーゼ阻害剤;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、ファドロゾール、フォルメスタン、レトロゾール、テストラクトン、およびボロゾールを含むアロマターゼ阻害剤;ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェンを含むエストロゲン受容体拮抗剤;セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブを含むCOX−2阻害剤;IFN−α、IL−12、スラミン、および(スロンボスポンディン1、ABT−510、およびABT−898を含む)スロンボスポンディンを含む血管新生阻害剤(blocker);養子T細胞移入および自己免疫細胞療法を含む免疫細胞療法;からなる群より選択される。
【0035】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、病巣内ケモアブレーション用医薬組成物は、ハロゲン化キサンテンまたはその混合物、またはハロゲン化キサンテンの生理的に許容可能な塩を、0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液を含む、適切な医薬組成物中にハロゲン化キサンテンを主成分として含有するILケモアブレーション用薬剤を含む。
【0036】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンはローズベンガル(4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)である。
【0037】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンはローズベンガル二ナトリウムである。
【0038】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンは、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7−ペンタクロロ−4’,5’,7’−トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7−ペンタクロロ−2’,5’,7’−トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’−ヘキサクロロ−4’,5’−ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7−ヘキサクロロ−2’,7’−ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7−ヘキサクロロ−4’,7’−ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’−トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,7’−トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,5’−トリヨードフルオレセイン、および4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,7’−トリヨードフルオレセイン、からなる群より選択される。
【0039】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンの濃度は約0.1%〜約20%(w/v)である。また、医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、この電解質の濃度は約0.1%(w/v)〜約2%(w/v)である。
【0040】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ILケモアブレーション用医薬組成物中の電解質の濃度は0.5〜1.5%(w/v)である。
【0041】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧は、約100mOsm/kgより高い。
【0042】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、電解質は塩化ナトリウムである。
【0043】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、医薬組成物は親水性賦形剤を含む。
【0044】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、医薬組成物のpHは、約4〜約10である。
【0045】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、医薬組成物のpHは、約5〜約7である。
【0046】
上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、これらの方法および医薬組成物は、悪性黒色腫、乳がん、原発性または転移性肝がん、前立腺がん、および小細胞ならびに非小細胞肺がん、より選択されるがんを治療するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[現時点における好ましい実施形態の詳細]
本発明は、特定の局所治療モダリティ、具体的には、例えばPV−10またはその他のハロゲン化キサンテン薬剤を用いるILケモアブレーションなどの局所免疫修飾療法を、特定の全身治療モダリティと組み合わせることによる、予期せぬ相乗効果の結果としての側面を有する。この組み合わせは、両方の治療モダリティの治療活性を高めることができ、またそれぞれの療法を別々に用いた場合に通常生じる副作用(morbidity)を大幅に増大させる恐れがなく、むしろこれを全体的に低減する可能性がある。
【0048】
本発明者は、ILケモアブレーションが、患者の腫瘍負担を急速に低減することで、腫瘍により誘導される免疫抑制の可能性、疾患の範囲と重症度、および、患者の免疫およびその他の生理的機能に対する持続的障害を低減する、ということを示した。結果的に無傷の腫瘍抗原を患者の免疫系に対して、適切な生物学的環境において急激に曝露することになるが、これはがん抗原を免疫系に対して、最良でも徐々に低いレベルで長期間にわたり、そしてしばしば不適切な環境において曝露する全身化学療法、全身性標的療法、またはその他いかなる局所治療モダリティによって達成されるものとも画期的に異なるものである。
【0049】
腫瘍の全部または腫瘍の略全部のケモアブレーション、および、特に複数の腫瘍のケモアブレーションは、患者の免疫系に対する、存在しうるあらゆる顕著な腫瘍細胞のクローン亜集団の曝露を増やすことで、インサイチュでの抗がんワクチン接種に対する全体的な反応を最大化する。そのため、従来の治療的アプローチを用いた場合よりも、範囲および有効性の面で優れた免疫修飾効果が達成されうる。
【0050】
しかしながら、疾患が急速に増殖する場合、または広く拡散している場合、またはILケモアブレーション用薬剤を十分に浸潤させることが難しい形で存在している場合には、補完的治療モダリティ、特にILケモアブレーションによる免疫刺激(即ち、免疫修飾)の補完に寄与するモダリティを使用すると、相加的または相乗的な利益が得られる。
【0051】
このような補完的な免疫修飾療法の使用にはさらに、片方または両方の療法を、高い有効性を維持しながら、(それぞれ単剤療法で個別に用いられた場合に必要な量と比べて)少ない投与量で利用できるようにし、これにより望ましくない副作用を低減することができるという、相加的または相乗的な免疫学的相互作用における効果がありうる。
【0052】
特に、例えばPV−10またはその他のハロゲン化キサンテン薬剤を用いるILケモアブレーションなどの強力な局所免疫修飾療法を、1つ以上の全身療法(特に免疫系の上方制御を促すもの、または腫瘍誘導免疫系の下方制御に対向するもの)と組み合わせて用いることは、特に(uniquely)健康に良い組み合わせを生じる非常に魅力的である:患者の強化された免疫系を、ILケモアブレーションにより生じた強い抗原性「傷害(insult)」に対して曝露することになるのである。
【0053】
このような組み合わせの効果は、ケモアブレーション時またはケモアブレーション後における免疫系の強化により高められうる。ILケモアブレーションは治療を繰り返すのに適しているので、実施形態としては、例えば全身性免疫修飾療法を継続的に実施しながら、ILケモアブレーションを1回以上実施することにより、患者の免疫系を継続的に強化することが好ましい。代替的な実施形態としては、ILケモアブレーション後、例えば数週間以上が経過して、局所炎症またはその他の非特異的免疫学的効果が低減したときに、全身性免疫修飾療法が開始されることが望ましい。
【0054】
局所免疫修飾療法を全身性免疫修飾療法のレジメンと組み合わせることで得られる利益によって、これ以外の方法では望ましくないとされる全身性免疫修飾療法が、実施できるようになる可能性がある:併用療法における全身療法による効果が結果的に増強されることで、全身投与量を低減したレジメンが可能となり、これに比例する全身療法による副作用を低減することも可能となりうる。
【0055】
さらに、局所免疫修飾療法(即ち、ILケモアブレーション)の副作用プロファイルは、ほとんどの全身性免疫修飾療法の副作用プロファイルと全く異なる(orthogonal)ので、局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせは、望ましくない相加的または相乗的な副作用を生じうる従来の組み合わせよりも、本質的に安全でより魅力的である。
【0056】
この環境において、ILケモアブレーションによる腫瘍負担の低減と、腫瘍抗原の大量曝露との組み合わせは特に魅力的である。なぜならこれは、潜在的な免疫の下方制御および腫瘍塊からの生理的要求を減少させながら、潜在的な免疫活性を最大化するからである。免疫の上方制御をさらに促進する、または下方制御をさらに抑制する全身療法と組み合わせると、アブレーションを行なった病巣と、注入がなされた部位の隣接部から遠隔部までを含む、注入がなされていない部位との双方において、抗腫瘍免疫に対する効果は相加的または相乗的になるであろう。
【0057】
局所免疫修飾療法を全身性免疫修飾療法と組み合わせることで生まれる利益の多くは、例えばILケモアブレーションと標的キナーゼ阻害剤(targeted kinase inhibitor)との組み合わせなど、局所免疫修飾療法と全身性標的療法との類似の組み合わせによっても得られる。
【0058】
ILケモアブレーションは腫瘍組織に対して特異的破壊効果を有するから、このモダリティを、例えば腫瘍の過剰増殖に関与する異常成長シグナリングまたは受容体の過剰発現などを標的化するアプローチなど、全く異なる経路を介して腫瘍の生存能力(viability)を標的化するアプローチと組み合わせると、治療される腫瘍により高い効果をもたらすことができる。
【0059】
例えばILケモアブレーション後に、全身性標的療法を用いて腫瘍へのストレスを増大させる、または腫瘍の生存能力を低減することにより、IL治療時においてIL治療の細胞毒性を高めることができる;全身療法が、ケモアブレーションによる免疫反応の発達を阻害することなく、残存腫瘍組織の増殖を抑制するため、あらゆる残存腫瘍組織の反応が増強されて、IL治療による免疫活性が可能となる。
【0060】
これらのアドバンテージは、ILケモアブレーションによる腫瘍負担の急速な低減により、免疫抑制、および腫瘍組織からの生理的要求が低減されることで、さらに増強される。この環境において全身性標的療法に求められるのは、潜在する腫瘍塊の完全な制御および根絶を達成することではなく、むしろ局所免疫修飾療法の活性を増強する役割を果たすことであるから、投与量を低減して全身療法を実施することが可能となりうる。そうすると潜在的な副作用が最小化され、併用療法は従来の全身療法の組み合わせよりも安全で魅力的なものになる。
【0061】
BRAF阻害剤を用いる療法など、多くの全身性標的療法では、特に疾患への制御を長期にわたり維持するために持続的な全身性標的療法が必要とされるときに、耐性問題が障害となっていたが、局所免疫修飾療法による免疫反応を増大させることは、この耐性問題に対抗する手段をもたらす。これは長期制御が、全身性標的療法に絶えず依存することによってではなく、免疫反応によってなされるためである。
【0062】
疾患負担が非常に大きいか、広く拡散しているとき、または疾患が急速に増殖するもので、局所免疫修飾療法の効果的な実施を困難にしたり、効果を低減させたりする可能性があるときなど、局所免疫修飾療法に先立ち、全身性標的療法を開始することが望ましい場合もありうる。このように、全身性標的療法は、局所免疫修飾療法に対する疾患の反応性を高めるべく、局所免疫修飾療法に先立ち、腫瘍負担を制御または低減するのに使用することもできる。
【0063】
このようなアプローチは、局所免疫修飾療法の開始に先立つ疾患の「ダウンステージング」に相当する。例えば特定のBRAF阻害剤については、進行期の転移性悪性黒色腫に対し、一時的に腫瘍負担を低減するには効果的だが、数ヶ月以内に耐性が生じることが多く、長期転帰では効果が打ち消される(negating)ことが判明している。標的療法の制御下にある間に、IL化学療法などの局所免疫修飾療法により残存疾患を治療することは、刺激により長期免疫を回復させ、最終的な転帰を改善するとともに、残存腫瘍負担を除去する(eliminate)ための手段をもたらす。
【0064】
がん治療ワクチンの開発および使用の試みに支障をきたす問題も、このようなワクチンを局所免疫修飾療法と組み合わせることで、軽減または解決されうる。特に、進行期がんに対するこのようなワクチンの臨床試験、例えばIII期またはIV期の悪性黒色腫に対するカンバキシンの臨床試験などにおいて生存利益が認められないのは、接種時に患者体内に存在する腫瘍負担を、ワクチン接種で克服できないこと、および、ワクチン接種から免疫反応の発達までに必要な誘導期間中に、疾患のレベル(disease level)が進行しつづけることが一因であると思われる。
【0065】
全身性標的療法と用いた場合と同様に、ILケモアブレーションによる急速な腫瘍負担の低減は、ワクチン接種から免疫反応開始までに必要な最低限の時間(critical time)をもたらすとともに、患者の疾患負担による免疫系の抑制を緩和することができ、それによって、局所免疫修飾療法と全身ワクチン接種の組み合わされた作用(action)により局所および全身における抗腫瘍効果を最大化させる。
【0066】
本発明における療法および治療方法の組み合わせの例は、以下を非限定的に含む:
局所免疫修飾療法と、イピリムマブおよびトレメリムマブを非限定的に含む抗CTLA−4抗体などの、1つ以上の免疫系下方制御に対する全身性阻害剤との組み合わせ;
【0067】
局所免疫修飾療法と、以下の1つ以上の全身性免疫上方制御剤:インターロイキン−1、−2、または−6(IL−1、IL−2、またはIL−6)およびアルデスロイキンなどの非特異的サイトカイン;インターフェロン−アルファまたはガンマ(IFN−α、IFN−γ);インターフェロンアルファ−2bおよび(ペグインターフェロンアルファ−2aおよびペグインターフェロンアルファ−2bを含む)ペグインターフェロン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF、モルグラモスチムまたはサルグラモスチム);GM−CSFをコードする遺伝子を有する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(OncoVex(登録商標))、またはヒト白血球抗原−B7およびベータ−2ミクログロブリン剤をコードする遺伝子を有し、同種のMHCクラスI抗原を発現させるよう設計されたプラスミド(Allovectin−7(登録商標))を含む病巣内ワクチンを含めた、樹状細胞ワクチン、およびその他の同種または自己がんワクチン;および特定のがん抗原に対する抗体;との組み合わせ;
【0068】
局所免疫修飾療法と、以下の1つ以上の全身性標的療法剤:アファチニブ(BIBW2992)、べバシズマブ、セツキシマブ、ダサチニブ、E7080、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、およびバンデタニブを非限定的に含む、プロテインキナーゼおよびこれを活性化する受容体を標的化する薬剤;(PLX4032、RG7204またはRO5185426としても知られる)ベムラフェニブ、GSK2118436およびGSK1120212などの、B−Raf/MEK/ERK経路を標的化するものを非限定的に含む、セリン/スレオニン選択的プロテインキナーゼ阻害剤;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、ファドロゾール、フォルメスタン、レトロゾール、テストラクトン、およびボロゾールを非限定的に含むアロマターゼ阻害剤;ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェンを非限定的に含むエストロゲン受容体拮抗剤;セレコキシブ、バルデコキシブ、およびロフェコキシブを非限定的に含むCOX−2阻害剤;IFN−α、IL−12、スラミン、および(スロンボスポンディン1、ABT−510、およびABT−898を含む)スロンボスポンディンを含む血管新生阻害剤(blocker);および養子T細胞移入および自己免疫細胞療法を非限定的に含む免疫細胞療法;との組み合わせ。
【0069】
モノセラピーの投与計画は、早期臨床試験における最大耐性量(MTD)の決定により設定されるのが典型的である。MTD(またはそのバリエーションである近似の量)は、有効性の評価と、安全性のより詳細な評価のために、後期臨床試験にも適用される(promulgated)。これらのMTDは、臨床試験が完了すると、確立された治療量となることが多い。表1に、本発明において局所免疫修飾療法と組み合わされうる各種の全身性薬剤の投与計画例を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明の併用療法および治療方法では、相加的または相乗的効果によって、全身性薬剤を上記のような局所免疫修飾療法と組み合わせて使用するとき、これを、表1に記載されているような全身性薬剤の典型的な投与計画のレベル以下で使用することが一般的に可能となる。
【0072】
局所免疫修飾療法は、ローズベンガルの濃度0.1%(w/v)以上の水溶液(即ち、PV−10)、またはその他のハロゲン化キサンテンの同等な溶液、またはそれらの混合物を含め、適切な医薬組成物中、ローズベンガル(4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)、または、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7−ペンタクロロ−4’,5’,7’−トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7−ペンタクロロ−2’,5’,7’−トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’−ヘキサクロロ−4’,5’−ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7−ヘキサクロロ−2’,7’−ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7−ヘキサクロロ−4’,7’−ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’−トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,7’−トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,5’−トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7−テトラブロモ−2’,4’,7’−トリヨードフルオレセインを含むその他のハロゲン化キサンテン、を主成分として含むILケモアブレーション用薬剤、を使用する病巣内ケモアブレーションを非限定的に含む。生理的に許容可能なハロゲン化キサンテン塩も、組成物において使用されうる。
【0073】
本発明は、例えば病巣内のローズベンガルを非限定的に含む免疫修飾剤を、1つ以上の全身性免疫修飾剤と組み合わせて病巣内送達するにあたり、免疫介在性の抗腫瘍反応を高めるために、大量の腫瘍抗原を患者の免疫系に曝露することを含む、免疫治療手順を含む。
【0074】
好ましいILケモアブレーション用薬剤について:
局所免疫修飾療法は、好ましい実施形態として、ローズベンガルまたはその他のハロゲン化キサンテンを使用する病巣内ケモアブレーションを含む。好ましい分子形態であるローズベンガル二ナトリウムは、以下の化学式で表される:
【0075】
【化1】
【0076】
この局所用免疫修飾組成物に関する好ましい実施形態の詳細は、その全体が本明細書に組み込まれる出願人の同時係属出願、特許文献3に一部記載されている。本明細書では、この本発明の好ましい実施形態を、特に悪性黒色腫との関係において記載する。しかし本発明は、乳がん、原発性または転移性肝がん、前立腺がん、小細胞および非小細胞肺がんを非限定的に含むその他の過剰増殖性疾患の治療にも適用できると分かる可能性もあり、またこれらに限定されるべきものでもない。
【0077】
悪性黒色腫は皮膚がんの最も深刻な種類であり、皮膚がんによる死亡原因の80%を占めている。
【0078】
疾患の拡大の程度を病期ごとに記載する。0期の悪性黒色腫はごく初期の疾患で、上皮内黒色腫として知られる。上皮内黒色腫の患者はTis(tumor in situ)として分類される。腫瘍は上皮に限局されており、周辺組織、リンパ節、または遠隔部への浸潤はない。上皮内黒色腫については、疾患再発、またはリンパ節もしくは遠隔部への拡大のリスクは非常に低いと考えられる。治療は、正常な皮膚をマージンとする外科的切除により行なわれる。
【0079】
I期の悪性黒色腫では、腫瘍は皮膚に1mm未満で浸潤しているが、拡大してはいない。治療は広範囲局所切除により行なわれ、5年無病生存率は90〜95%である。
【0080】
II期の悪性黒色腫には、腫瘍が皮膚に1mmを超えて浸潤しているが、拡大してはいない、という特徴がある。治療としては広範囲局所切除が好ましい。しかしこの病期での切除は、I期の腫瘍の切除に比べて大幅にリスクが高く、予後が悪い。
【0081】
III期の悪性黒色腫は、1つ以上のリンパ節転移、in−transitもしくは衛星転移の存在により特徴付けられるが、遠隔部または内蔵部には拡大していない。in−transit転移は、原発性腫瘍から離れているものの、所属リンパ節領域(draining nodal basin)には到達していない。衛星転移は原発性腫瘍がリンパ内へ進展したものであり、典型的にはin−transit転移よりも原発性腫瘍の近くで発見される。III期の患者の5年生存率は約24%(肉眼的結節性疾患)〜80%(顕微鏡的結節性疾患)である。
【0082】
IV期の悪性黒色腫は、疾患が遠隔部にも拡がった状態である。IV期悪性黒色腫の場合の生存率は約10%にまで減少する。
【0083】
類似の病期分類システムは、全ての主要ながんについて存在し、一般的には、疾患の臨床所見と組織病理学的詳細、および、これらの因子がどのように生存に影響すると見られるかに基づいている。
【0084】
容易に除去できるIII期の腫瘍に対する標準的治療は、リンパ節の除去を伴う広域切除である。補助的治療、例えば放射線療法、化学療法、および局部的な(regional)四肢転移の場合にはメルファランもしくはその他の化学療法薬剤の局所注入、なども行なわれうる。しかし、腫瘍の数および/または位置により外科手術が禁忌となり、他の治療選択肢を考慮しなければならない場合もある。
【0085】
残念ながら、これらの他の選択肢に対する反応レベルは高くない。例えば、悪性黒色腫は大抵の場合、放射線療法に耐性を示す。全身化学療法でも、悪性黒色腫に対する奏効率は僅かである。現在最も効果的な化学療法レジメンは、ダカルバジン単剤であるが、これも10〜15%のケースでしか奏功しない。進行期悪性黒色腫の患者の治療に一般的に使用される2つの併用化学療法レジメンは、シスプラチン、ビンブラスチン、およびDTIC(CVD)を組み合わせるレジメンと、シスプラチン、DTIC、カルムスチンおよびタモキシフェンの組み合わせであるダートマスレジメンである。
【0086】
悪性黒色腫が四肢(extremities)で発症した場合、化学療法剤は温熱分離式肢灌流(ILP)により送達されうる。この技術では、血管に外科的にアクセスし、四肢への、および四肢からの血流を止血帯で止め、温めた化学療法剤の溶液を直接四肢血中に投与するので、全身治療の場合よりも、投与する薬剤の容量を高くすることができる。
より侵襲性の低い局部的な療法には、鼠径部で経皮的ルートを介して血管にアクセスする四肢分離注入(ILI)がある。
【0087】
別の治療選択肢には、化学療法剤を直接腫瘍に注入する病巣内療法がある。カルメットゲラン桿菌(BCG)はIL療法に使用された最初の試薬の1つであった。15の試験から得られたデータを検証すると、III期の患者の19%で完全奏功(CR)、26%で部分奏功(PR)、13%で生存期間の延長が見られた。
【0088】
ILインターフェロン(IFN)に関しては、客観的奏効率が45%(ORR、31%CR+14%PR)であるというIFN−αについての報告から、奏功が無いか一時的(transient response)であるというIFN−γについての報告まで、様々な結果が出ている。いずれの方法でも重大な細胞毒性および副作用が生じた。
【0089】
ILインターロイキン−2は、現在最も有望なIL療法であると思われ、毎週2〜3回のIL治療を受けた患者におけるORRは83%(62%CR+21%PR)である。患者の中にはインフルエンザ様症状を訴える者もいた。また報告者(auther)の中には、治療コース中に新たな病巣が発現したが、新たな皮膚病巣の発現が顕著に減速した患者もいた、と述べている者もいる。
【0090】
シスプラチンまたはILシスプラチンを、電気穿孔法と組み合わせたIL療法では、ORR38%(CR19%+PR19%)〜ORR53%(CR47%+PR7%)という結果が出ている。しかし、中央径0.6cmの病巣について報告されたORRは53%だが、中央径3.0cmの病巣の場合では44%に減少する。
ILブレオマイシン単剤を用いた電気化学療法治療についても実質的な有効性が報告されている。しかし、シスプラチンの場合と同様、大きな腫瘍では総じて反応が低減する。
【0091】
過剰増殖性疾患、特にIII期およびIVの悪性黒色種を治療するための代替的方法が依然必要とされていることが理解されるであろう。
【0092】
本発明の好ましい実施形態は、転移性悪性黒色腫などの、患者体内のがんを治療する方法をもたらす。この方法は、局所免疫修飾療法と、1つ以上の全身性免疫修飾療法または全身性標的療法との組み合わせによるがん患者の治療を含み、局所免疫修飾療法は、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン(即ち、ローズベンガル)またはその他特定のハロゲン化キサンテン、またはそれらの生理的に許容可能な塩を含有する親水性賦形剤、を含むケモアブレーション用医薬組成物の病巣内投与を含む。
【0093】
好ましくは、ハロゲン化キサンテンは約0.1%(w/v)〜約20%(w/v)の濃度で医薬組成物に含有され、また医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、この電解質の濃度は約0.1%(w/v)〜約2%(w/v)である。また好ましくは、医薬組成物のpHは約4〜約10である。
【0094】
「生理的に許容可能な塩」という語句は、当業界で周知の方法により調整可能な、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛塩を含め、製薬業界で一般的に使用される、あらゆる非毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩を指す。好ましくは、塩は一塩基塩または二塩基塩形態の、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウムである。
【0095】
ILケモアブレーション用医薬組成物として特に好ましいのは、ローズベンガル二ナトリウム塩である。本発明者の以前の成果(WO 02/05812)では、ローズベンガルは、がん細胞には優先的に取り込まれるが、正常細胞からは基本的に排除される、という発見が報告されている。
【0096】
本発明者はまた、ハロゲン化キサンテン、またはその生理的に許容可能な塩を含む(administered)賦形剤の性質が、がん細胞中への分配(partitioning)の度合いに重大な影響を及ぼす、という発見を報告した。具体的には、本発明者は、電解質濃度が約0.1%(w/v)〜約2%(w/v)であるとき、がん細胞中への分配が急激に増大しうるという驚くべき発見を報告した。
【0097】
薬剤の組織内蓄積能の近似値は分配係数Kpに基づいて推定できる。このインビトロでのパラメータは、細胞レベルにおけるインビトロでの送達に関する予測値とされる。具体的には、1より大きい値は、薬剤が組織に局在する能力を有し、それによりこのような組織内で高い化学療法的有効性を発揮できることを示すと考えられる。
【0098】
本発明者は、約50〜100より大幅に大きな値は、望ましい水性(即ち、親水性の)製剤中の薬剤の送達に支障をきたす過度な親油性(有機的環境に蓄積する傾向)を示している可能性がある、と推測する。Kpは、親水性相と接触する親油性相(n−octanol)における、薬剤の平衡濃度比率を測定して決定される。
【0099】
本発明者はまた、ハロゲン化キサンテンの水性賦形剤への溶解度を最大化し、生体組織への親和性を確保するには、ILケモアブレーション用医薬組成物のpHは、好ましくは約4〜約10であり、より好ましくは約5〜約9である、という発見を報告している。特に好ましいpHは、約4〜約7であり、好ましくは約5〜約7であり、より好ましくは約6〜約7の間である。これらのpH値においてハロゲン化キサンテンは通常、pHが低いときに形成される水不溶性ラクトンではなく、二塩基塩の形態のままである。
【0100】
ILケモアブレーション用医薬組成物のpHは、当業者に周知のあらゆる適切な手段により制御または調整される。組成物は、酸または塩基などの追加により、中和されるか、またはpH調整される。ハロゲン化キサンテンまたはその生理的に許容可能な塩は弱酸であるから、ハロゲン化キサンテンの濃度および/または電解質の濃度によっては、組成物のpHのために中和剤および/またはpH調整剤を使用せずにすむかもしれない。特に好ましくは、投与されてから生体環境に適合できるよう、組成物はいかなる中和剤も含まない。
【0101】
本発明者はまた、Kpは電解質濃度に依存しており、その値は電解質濃度に比例して増大する、という発見を報告した。ILケモアブレーション用医薬組成物の中の電解質濃度として特に好ましいのは、約0.5〜1.5%(w/v)であり、さらにより好ましいのは約0.8〜1.2%(w/v)であり、最も好ましいのは約0.9%(w/v)であり、この最後に挙げた濃度は、ほぼ等張液に相当するので特別に好ましい。
【0102】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ILケモアブレーション用医薬組成物中の電解質は塩化ナトリウムである。
【0103】
このような電解質レベルでは、ILケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧が増大する。このように、電解質濃度の範囲を特定するかわりに、浸透圧を、組成物の電解質レベルをある程度特徴付けるために、用いることができる。好ましくは、組成物の浸透圧は約100mOsm/kgより大きく、より好ましくは組成物の浸透圧は約250mOsm/kgより大きく、最も好ましくは300〜500mOsm/kgである。
【0104】
本発明者はまた、好ましいハロゲン化キサンテンの濃度および/またはILケモアブレーション用医薬組成物の投与量は、腫瘍の大きさ、数、および位置を非限定的に含む因子に依存することを発見した。肝がんなど、内臓またはその他の体内病巣に対する病巣内投与は、経皮的投与または術中投与により行うことができる。
【0105】
本発明者はまた、濃度が低いと、標的組織の破壊を直接引き起こすには一般的に不十分であるから、ILケモアブレーション用医薬組成物中のハロゲン化キサンテンの濃度が、約1%(w/v)〜3%(w/v)より高いと、ケモアブレーションへの使用に特に有益である、ということを発見した。
【0106】
そのため、好ましい実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は、約3%(w/v)〜約20%(w/v)である。別の実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は約3%(w/v)〜約10%(w/v)である。別の実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は約10%(w/v)〜約20%(w/v)である。さらに別の実施形態では、ハロゲン化キサンテンの濃度は約10%(w/v)である。
【0107】
本発明者はまた、これらの濃度においては有効な(efficient)治療反応が得られるだけでなく、溶液の安定性が高く、製造および使用の双方において簡単に取り扱える、という驚くべき発見をした。これらの好ましい濃度は、重量対体積(w/v)で表現できるが、重量対重量(w/w)で表現しても実質的には同等である。
【0108】
IL投与される、ILケモアブレーション用医薬組成物の典型的な投与量は、0.1mL/cc病変体積(lesion volume)〜約2mL/cc病変体積の間であり、最も好ましくは約0.25mL/cc〜約0.75mL/cc病巣体積である。このような投与量は、一般的に、約10mg〜約1500mgのハロゲン化キサンテンによる患者線量(patient dose)(肝臓の診断テストに使用されるよりも大幅に高容量である)に相当する。
【0109】
医薬組成物は体内ルートであるIL投与用であるから、さらに好ましくは、米国薬局方(USP)試験法<71>の適合に求められるように滅菌されており、さらに含有される発熱性物質のレベルは、USP<85>(リムルス変形細胞分解産物アッセイ)、またはUSP<151>(ウサギ発熱性試験)、またはこれらと実質的に同等な要件に適合するような無視できるレベルであり、発熱物質またはエンドトキシンのレベルは1mLあたり10エンドトキシン単位(EU)以下である。
【0110】
また医薬組成物は、USP<788>に規定される微粒子含有量の制限要件(即ち、容器当たり、10ミクロンを超える大きさの微粒子が3000個以下、25ミクロンを超える大きさの微粒子が300個以下)または実質的に同等の要件に適合すべきである。USPからのこれらの参照情報はそれぞれ、本明細書に参照により組み込まれる。
【0111】
さらに、本発明者は、ハロゲン化キサンテンのがん組織への分配性を最大化するためには、親水性賦形剤が医薬組成物として適している、ということを発見した。したがって、このような分配を妨害しうる非親水性成分の、医薬組成物中の含有量を最小限にすることが好ましい。好ましくは親水性賦形剤は水であり、最も好ましくは、この医薬組成物は実質的に水からなる。
【0112】
本発明者は、医薬組成物が有利には(optimally)約1〜10mLの、より有利には5mLの容量のガラス製バイアルに封入される、ということを発見した。このような容量は、IL治療のユニドーズ形式(Unidose form)(即ち、1回使い切りの分包)によく適している。
【0113】
好ましい実施形態において、医薬組成物の製剤は中和されない。この場合好ましくは、包装容器は、USPタイプI(低溶出性の、または化学的抵抗性のあるホウケイ酸ガラス)またはUSPタイプII(低溶出性のソーダライム)ガラスで製造されており、またこのようなガラスの内表面は、pHまたは長期安定性に悪影響を及ぼしうる容器表面のアルカリ度を、低減する処理がなされている。
【0114】
このような容器に適用できる典型的な表面処理は、USP<661>に記載されている。このような表面処理のあらゆる残留物を除去するため、充填に先立ち、表面処理されたガラス容器の内部を、蒸留水などの適切な溶媒で1回以上すすがなくてはならない。また充填に先立ち、容器を例えば250℃以上で数時間以上加熱して、発熱性物質を除去しなくてはならない。また充填に先立ち、容器が滅菌されているか、または当業界における普通の方法により滅菌されることが、必要である。
【0115】
このような容器の首径は、好ましくは例えば10mm未満、より好ましくは5mm以下など最小限にし、閉鎖部の表面領域を減少させること(またそれにより閉鎖部への薬剤の露出を減少させること)が好ましい。
【0116】
本発明者はさらに、好ましくはテフロン(登録商標)または類似の内部コーティングが施された、製薬グレードのエラストマー材料で構成されたセプタムタイプの閉鎖部は、容器内容物との相互作用(interaction)が生じる可能性を最小限にしつつ、薬剤を投与量取り出すために容器内へ針を挿入することを容易にするため、ILケモアブレーション用医薬組成物に特に適している、ということを発見した。
【0117】
好ましくは、医薬組成物はいかなる防腐剤も含まない。本発明者は、防腐剤は、その多くが医薬組成物またはその製剤を有害にも妨害する、または、ハロゲン化キサンテン活性成分の送達を複雑にするか、相互作用を生じるか、または妨害するものであり、使用を避けることが好ましい、ということを発見した。本発明者は、防腐剤を用いる限りにおいては、イミド尿素が、医薬組成物においても投与においても、ハロゲン化キサンテンと相互作用を起こさないので好ましい、ということを発見した。
【0118】
この記載は、例示のみを目的として提示したもので、本発明を限定することを意図したものではない。