特許第6322422号(P6322422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322422
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   F16H19/04 E
   F16H19/04 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-4299(P2014-4299)
(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-132336(P2015-132336A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】木本 政志
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−297796(JP,A)
【文献】 特開平01−093660(JP,A)
【文献】 特開2003−307216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/00−37/16
B66B 13/00−13/30
E05F 15/00−15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延設された軌道部材と、
前記軌道部材に沿って直線運動可能に組み付けられる一対の移動部材と、
前記軌道部材の前記長手方向と直交する幅内に回転軸が配置された歯車を回転駆動せしめる駆動部材と、
前記歯車の回転運動を前記一対の移動部材を近接又は離間せしめる直線運動に変換する伝達部材を備えるアクチュエータであって、
前記伝達部材は、前記軌道部材の前記長手方向と平行に延びる略中心軸上に配置されて前記移動部材に取り付けられる取付部と、前記取付部と平行に配置されるとともに、前記歯車の上端又は下端のいずれか一方に噛み合う直線状の歯部が形成された係合部と、前記取付部と前記係合部を連絡する連続部を備え、
前記係合部は、前記歯車の上端及び下端とそれぞれ噛み合うことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記係合部の前記歯車と噛み合う面の反対面を支持する支持部材を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクチュエータにおいて、
前記軌道部材及び前記駆動部材は、基板部材に組み付けられ、
前記基板部材は、固定対象に取付けられるとともに、前記基板部材の前記固定対象と対向する側に前記駆動部材が取り付けられ、前記対向する側の反対面に前記歯車および前記軌道部材が取り付けられることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアクチュエータにおいて、
前記軌道部材は、一対の前記移動部材が組み付けられるとともに、固定対象に取り付けられ、前記軌道部材の前記固定対象と対向する側に前記駆動部材が取り付けられ、前記対向する側の反対面に前記歯車が取り付けられることを特徴とするアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を案内するアクチュエータに係り、特に、一対の対象物を相対的に近接・離間するように直線的に案内するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばエレベータのドアのように対象物たるドアを相対的に近接・離間させてドアの開閉を行うアクチュエータとして種々の構造が知られている。
【0003】
このようなアクチュエータは種々の構造が知られており、例えば、以下の特許文献1に示すように、ベルトやラック・ピニオンを用いて対象物を相対的に近接・離間させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−217338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のアクチュエータによると、ベルトやラック・ピニオンなどを用いて対象物の相対的な近接・離間動作は実現することができるものの、ドアのような重量物を案内するために別途レールなどの案内手段が必要であり、装置全体の大型化を招き、大型化や部品点数の増加に伴う製造コストの抑制を図ることが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、案内構造を一体に構成することで、アクチュエータの小型化及び製造コストの抑制を図ることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、長手方向に沿って延設された軌道部材と、前記軌道部材に沿って直線運動可能に組み付けられる一対の移動部材と、前記軌道部材の前記長手方向と直交する幅内に回転軸が配置された歯車を回転駆動せしめる駆動部材と、前記歯車の回転運動を前記一対の移動部材を近接又は離間せしめる直線運動に変換する伝達部材を備えるアクチュエータであって、前記伝達部材は、前記軌道部材の前記長手方向と平行に延びる略中心軸上に配置されて前記移動部材に取り付けられる取付部と、前記取付部と平行に配置されるとともに、前記歯車の上端又は下端のいずれか一方に噛み合う直線状の歯部が形成された係合部と、前記取付部と前記係合部を連絡する連続部を備え、前記係合部は、前記歯車の上端及び下端とそれぞれ噛み合うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伝達部材は、移動部材に取り付けられる取付部と、取付部と平行に配置されるとともに、歯車の上端又は下端のいずれか一方に噛み合う直線状の歯部が形成された係合部と、取付部と係合部を連絡する連続部を備え、係合部は、歯車の上端及び下端とそれぞれ噛み合うように構成しているので、移動部材を駆動せしめる駆動構造と、対象物の案内に伴う荷重を負荷する案内構造とを一体に構成することができ、アクチュエータ全体の小型化及び製造コストの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータを説明するための斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る案内装置説明する側面図。
図3】本発明の実施形態に係る基板部材を説明するための斜視図。
図4】本発明の実施形態に係る伝達部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアクチュエータの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータを説明するための斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る案内装置を説明する側面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る基板部材を説明するための斜視図であり、図4は、本発明の実施形態に係る伝達部材の斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ1は、長手方向に沿って延設された軌道部材11と、該軌道部材11に沿って直線運動可能に組み付けられる移動部材12とを備える案内装置10が左右に一組配置され、該案内装置10,10の間において軌道部材11の長手方向と直交する軌道部材11の幅内に回転軸が配置されるように取り付けられた歯車21と、該歯車21を回転駆動せしめる駆動部材20とを備えている。また、案内装置10,10、歯車21及び駆動部材20は、基板部材40に取り付けられており、基板部材40は、固定対象に取付けられるとともに、基板部材40の固定対象と対向する側に駆動部材20が取り付けられ、対向する側の反対面に歯車21および軌道部材11が取り付けられている。駆動部材20は電動のモータなど種々の要素を用いることができる。
【0013】
駆動部材20によって回転駆動される歯車21は、上下端に係合する直線状の歯部33を備える伝達部材30,30に噛み合って、回転運動を直線運動に変換しており、伝達部材30が移動部材12,12に夫々組み付けられることで、一対の移動部材12,12を近接・離間するように同期して移動させることができる。なお、本明細書において上端、下端とは、図1における紙面の上下方向に沿った端部として以下の説明を行う。
【0014】
伝達部材30は、伝達部材30の直線運動を支持する支持部材46が直線状の歯部33の形成された面の反対面に当接している。さらに、移動部材12の位置を検出する検知部材50を備えており、移動部材12が検知部材50の位置を越えて移動することがないように制御可能とされている。
【0015】
図2に示すように、案内装置10は、帯状金属板の上下端部(幅方向端部)を内向き円弧状に湾曲させて成形した内面長手方向に転動体転走溝11aを有する断面略C字状の軌道部材11と、帯状金属板の上下端部(幅方向端部)を外向き円弧状に湾曲させて成形した外面長手方向に転動体転走溝12aを有する断面略C字状の移動部材12と、軌道部材11の転動体転走溝11aと移動部材12の転動体転走溝12aの間に配列された複数の転動体13とを備えている。
【0016】
なお、図1に示すように、移動部材12は、軌道部材11の長手方向に往復運動するため、移動部材12の長さは、軌道部材11の長さよりも短く形成されている。また、軌道部材11及び移動部材12は、帯状金属板をプレス成型等によって形成されており、容易かつ安価に製造することができる。
【0017】
転動体13は、転動体13の直径よりも若干小さな直径の孔が形成された保持器14によって軌道部材11の転動体転走溝11aと移動部材12の転動体転走溝12aの間に回転自在に保持されている。なお、軌道部材11の転動体転走溝11aと移動部材12の転動体転走溝12aは、転動体13の曲率半径よりも若干曲率の大きな単一の円弧に形成されている。また、保持器14は、軌道部材11の長手方向に沿って配置されると共に、移動部材12よりも長く形成されている。
【0018】
また、案内装置10,駆動部材20及び歯車21は、基板部材40に組み付けられており、基板部材40に軌道部材11を取り付けているので軌道部材11,11同士の平行を別途とる必要なく、容易かつ高精度に基台などに固定設置することができる。
【0019】
図3に示すように、基板部材40は、略中央部に形成された駆動部材取付部42と、駆動部材取付部42から左右方向に沿って延設された一対の軌道部材取付部41,41を備えている。
【0020】
駆動部材取付部42は、その中央部に歯車21の回転軸が挿通されて駆動部材20を取り付ける駆動部材取付孔47が形成されている。また、軌道部材取付部41の延設方向と略鉛直方向に延びる一対の支持部材取付部45,45を備えている。該支持部材取付部45,45には、円柱状の支持部材46,46が夫々組み付けられる。
【0021】
また、軌道部材取付部41の一端には、固定部44が形成されており、該固定部44を固定部44に形成した取付孔を介して基台等の固定対象に螺合等することでアクチュエータ1を取付固定することができる。また、軌道部材取付部41には、検知部材50を取り付ける検知部材取付部43が形成されている。検知部材50は所謂位置センサを用いると好適であり、光センサや磁気センサなど、種々のセンサを適用することができる。
【0022】
伝達部材30は、軌道部材11の長手方向と平行に延びる略中心軸上に配置されて移動部材12に取り付けられる取付部31と、歯車21の上端または下端の一方の噛み合う直線状の歯部33が形成されると共に、取付部31に対して幅方向に水平移動するように取付部31と平行に形成された係合部32と、取付部31と係合部32を連絡する連続部34を備えている。また、伝達部材30は、歯車21の上端または下端と噛み合うように一対設けられており、歯車21の回転軸を対称点とする点対称に配置されている。このように、伝達部材30は、軌道部材11の略中心軸上に配置された取付部31と、歯車21と噛み合うように中心軸から水平移動した係合部32を備え、取付部31と係合部32を一体に連結する連続部34によって鉤状に形成されているので、案内構造と駆動構造とを一体に且つ小型に構成することができる。
【0023】
なお、図4に示すように、取付部31には、移動部材12に伝達部材30を組み付けるための固定孔35と、案内する対象物を取り付ける取付孔36が夫々設けられており、端部に検知部37が形成されている。このように構成されることで、検知部材50の位置に移動部材12が至ると検知部材50が検知部37を検知し、当該情報を図示しない制御装置などにその情報を送る。
【0024】
また、伝達部材30は、合成樹脂で構成されると好適である。この場合、合成樹脂の反りや変形によって歯車21と直線状の歯部33の噛み合いが解除されないように、係合部32の直線状の歯部33が形成された面の反対面32aに支持部材46が当接している。支持部材46は伝達部材30の直線運動を阻害しないように円柱状に形成されると好適である。なお、支持部材46が反対面32aを支持する位置は反対面32aと接していれば長手方向のどこを支持しても構わないが、より確実に直線状の歯部33と歯車21の噛み合いを保持するために歯車21の回転軸と支持部材46の中心軸は鉛直方向に一直線となるように配置することが好ましい。
【0025】
また、伝達部材30は左右の移動部材12,12に夫々組み付けられているが、伝達部材30は同一形状とすると好適である。このように、伝達部材30を同一形状とすることで、製造コストの更なる抑制を図ることができる。
【0026】
以上、説明したアクチュエータ1は、歯車21の上下端と噛み合う伝達部材30によって移動部材12を近接及び離間自在に運動させて回転運動を直線運動に変換しているので、アクチュエータ全体の小型化を図ることができる。また、軌道部材11と駆動部材20とが同一線上に並んで配置されており、単一の駆動部材20で一対の移動部材12,12を移動せしめていると共に、移動部材12を駆動せしめる駆動構造と、対象物の案内に伴う荷重を負荷する案内構造とを一体に構成しているので、アクチュエータ全体を小型化することができ、製造コストの抑制を図ることができる。
【0027】
さらに、係合部32の直線状の歯部33と歯車21の噛み合いを保持するように係合部32に当接して支持する支持部材46を備えているので、負荷した荷重によって伝達部材30が変形するなどすることによる直線状の歯部33と歯車21の噛み合いの解除を防止することができる。
【0028】
また、移動部材12の移動の始端又は終端の少なくとも一方を検知する検知部材50を備えているので、移動部材12の移動可能な範囲を越えて駆動部材20が回転することで、直線状の歯部33と歯車21の噛み合いが外れることを防止することができる。
【0029】
また、軌道部材11や駆動部材20を一体に組み付ける基板部材40に構成部品を組み付けているので、左右に取り付けられた軌道部材11,11の水平だしなどを別途行うことなく、基台などに簡便且つ精度よく組み付けを行うことができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、軌道部材11を左右にそれぞれ配置した実施形態について説明を行ったが、単一の軌道部材11を長手方向に一連に配置し、この軌道部材に一対の移動部材が組み付けられるとともに、固定対象に取り付けられ、軌道部材の固定対象と対向する側に駆動部材を取り付け、対向する側の反対面に歯車組み付けるように構成しても構わない。この場合、軌道部材11に駆動部材20を取り付ける駆動部材取付孔47を設け、軌道部材11と一体に駆動部材取付部42や支持部材取付部45を形成することで、基板部材40を設けることなくアクチュエータを構成することができ、部品点数の削減による製造コストの抑制を図ることができる。また、この場合、単一の軌道部材11に構成部品を組付けてアクチュエータを構成しているので、アクチュエータを固定対象に固定する場合の水平だしを行う必要がない。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、案内装置10として軌道部材11、移動部材12を備える所謂スライドレールを例に説明を行ったが、案内装置10はこれに限られず、例えば軌道部材に鞍乗状に組み付けられた移動ブロックを備えた直動案内装置を用いても構わない。
【0032】
また、本実施形態では、案内装置10を転動体13が長手方向に沿って配置された形式について説明を行ったが、転動体13を有さない摺動式又は転動体13が有限又は無限循環する循環式を用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 アクチュエータ, 11 軌道部材, 12 移動部材, 20 駆動部材, 21 歯車, 30 伝達部材, 31 取付部, 32 係合部, 33 直線状の歯部, 34 連続部, 40 基板部材, 46 支持部材, 50 検知部材。
図1
図2
図3
図4