(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322425
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】冷媒を自然循環させるシステム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20180423BHJP
F24F 11/76 20180101ALI20180423BHJP
F28D 15/06 20060101ALI20180423BHJP
F24F 11/871 20180101ALI20180423BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20180423BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20180423BHJP
F25D 9/00 20060101ALI20180423BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20180423BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20180423BHJP
F24F 110/00 20180101ALN20180423BHJP
F24F 130/00 20180101ALN20180423BHJP
【FI】
F24F11/02 F
F28D15/02 105B
F24F11/02 102X
F24F11/02 102F
F28D15/02 K
F28D15/02 E
F25D9/00 D
F24F11/02 103A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-6682(P2014-6682)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-135207(P2015-135207A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100164415
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥一
(72)【発明者】
【氏名】大木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】江澤 直史
【審査官】
町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−002456(JP,A)
【文献】
特開2009−231529(JP,A)
【文献】
特開平11−237095(JP,A)
【文献】
実開昭60−099419(JP,U)
【文献】
特開2005−337540(JP,A)
【文献】
特開昭56−012967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/62
F24F 11/76
F24F 11/84
F24F 11/871
F24F 11/88
F24F 11/89
F24F 110/00
F24F 130/00
F25D 9/00
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器との間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換器と、
前記室外熱交換器の冷却能力を、前記室外熱交換器から出力される冷媒の出口温度が、前記室内熱交換器における冷媒の室内温度が室内目標温度になることを予測した室外目標温度であって、前記室内目標温度に対するオフセット値を含む前記室外目標温度になるように制御する第1の制御ユニットと、
前記出口温度が前記室外目標温度に制御された後であって、前記配管システムを介して冷媒が前記室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間が少なくとも経過した後の、前記室外熱交換器の状態が安定しているタイミングにおける前記室内温度と前記室内目標温度との差分により、前記オフセット値を含む前記室内目標温度と前記室外目標温度との相関関係を更新する第2の制御ユニットとを有するシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の制御ユニットは、前記室外熱交換器の器内圧に基づき前記室内温度を判断する機能を含む、システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2の制御ユニットは、前記室内熱交換器に流入する冷媒の入口温度に基づいて前記室内温度を判断する機能を含む、システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第2の制御ユニットは、定期的に、前記出口温度を強制的に短時間だけ変動させ、その影響が前記室内温度に表れるまでの時間を計測することにより前記遅れ時間を定期的に測定する機能を含む、システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記第1の制御ユニットにより前記室外熱交換器を通過する風量が連続的または間欠的に制御される外気ファン、前記第1の制御ユニットにより冷媒の循環量が制御される流量調節ユニット、および前記第1の制御ユニットにより前記室外熱交換器の熱交換面積が制御される熱交換面積調節ユニットの少なくともいずれかを有する、システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記室内熱交換器および前記配管システムを有する、システム。
【請求項7】
室内熱交換器との間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換器を有するシステムを制御する方法であって、
前記室外熱交換器の冷却能力を、前記室外熱交換器から出力される冷媒の出口温度が、前記室内熱交換器における冷媒の室内温度が室内目標温度になることを予測した室外目標温度であって、前記室内目標温度に対するオフセット値を含む前記室外目標温度になるように制御することと、
前記出口温度が前記室外目標温度に制御された後であって、前記配管システムを介して冷媒が前記室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間が少なくとも経過した後の、前記室外熱交換器の状態が安定しているタイミングにおける前記室内温度と前記室内目標温度との差分により、前記オフセット値を含む前記室内目標温度と前記室外目標温度との相関関係を更新することとを有する、方法。
【請求項8】
請求項7おいて、
前記更新することは、前記室外熱交換器の器内圧に基づき前記室内熱交換器における冷媒の温度を判断することを含む、方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記更新することは、前記室内熱交換器に流入する冷媒の入口温度に基づいて前記室内熱交換器における冷媒の温度を判断することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外熱交換器と室内熱交換器との間で冷媒を自然循環させるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筐体の外部温度が極低温となる場合であっても、筐体内の温度変化を小さくする。また、加熱器によって筐体内を加熱する場合に生じる熱損失を防止する技術が開示されている。特許文献1の沸騰冷却装置は、冷媒と内部空気との間での熱交換により、冷媒を沸騰気化させることで、筐体の内部空気を冷却する蒸発器、冷媒と外部空気との熱交換により、冷媒を凝縮させることで、冷媒の熱を筐体の外部空気に放出する凝縮器および蒸発器と凝縮器との間で冷媒を循環させる経路を構成する冷媒配管を、それぞれ有し、互いに独立して構成される第1、第2冷媒回路を備える。この沸騰冷却装置において、第1、第2冷媒回路に冷媒の循環を停止する電磁バルブをそれぞれ設け、筐体の内部空気温度を検出する内気温度検出手段を設け、制御基板に、内気温度検出手段の検出温度が低下した場合に、電磁バルブによって、第1、第2冷媒回路の一方の冷媒循環を停止させる制御を実行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−241232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の沸騰冷却装置は、蒸発器で室内空気(内部空気)との熱交換により沸騰気化された冷媒が冷媒配管で循環され、凝縮器で外気(外部空気)との熱交換により凝縮される、いわゆる自然循環型の冷却装置であり、コンプレッサなどの動力が不要で低コストで外気を用いた冷房が行える。この自然循環型の冷房装置(冷房システム)を、たとえばサーバルームに適用する場合、結露防止のために室内側の蒸発器(室内熱交換器)に供給される冷媒の温度を露点以上に保つなどの温度制御が行われる。したがって、冷媒の温度を制御するためには、外気との熱交換の状態をさらに安定して精度よく制御することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、室内熱交換器との間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換器と、室外熱交換器の冷却能力を、室外熱交換器から出力される冷媒の出口温度が、室内熱交換器における冷媒の
室内温度が室内目標温度になることを予測した室外目標温度であって、室内目標温度に対するオフセット値を含む室外目標温度になるように制御する第1の制御ユニットとを有するシステムである。
【0006】
このシステムにおいては、室内熱交換器における冷媒の温度、たとえば入口温度が変化したり、設定値に対して差分があると、それにより室外熱交換器の冷却能力を制御するのではなく、まず、室外熱交換器の冷媒の出口温度の設定値を、室内熱交換器における冷媒の温度を予測した目標温度に設定し、室外熱交換器の冷却能力を冷媒の出口温度により制御する。
【0007】
室内熱交換器における冷媒の温度が低下する要因の1つは、外気温度が低下することであり、それに対して冷媒温度を一定に保つための方策として、たとえば、外気ファンの回転数を低下することが考えられる。しかしながら、配管システムを介して冷媒が供給されるので、外気温度が低下して冷媒温度が低下しても室内熱交換器入口冷媒温度が低下するのは一定の時間が経過した後である。このため、配管システムの全長が長い等の原因により、温度変化の遅延時間が長い場合は、室内熱交換器の冷媒の入口温度を目標に室外熱交換器の冷却能力を制御すると、冷媒の入口温度を所定の範囲内に制御することが難しくなる。一方、室外熱交換器の出口冷媒温度を一定に保持する制御では、配管システムを流れる冷媒が外気や室内の温度により影響をうけるので、室内熱交換器の冷媒の入口温度を目標の温度に保持することは難しい。
【0008】
上記のシステムにおいては、冷媒の室外熱交換器の出口温度を一定ではなく、室内熱交換器における冷媒の温度を予測した目標温度になるように制御する。したがって、配管システムによる遅延が大きなシステムであっても、室内熱交換器における冷媒の温度が安定して制御できる。室内熱交換器における冷媒の温度を予測した目標温度は、外気、冷媒の流量、システムの器内圧などを要素として、予めシミュレーションしたり、事前にさまざまな条件を設定して計測を繰り返すことにより求めてもよい。
【0009】
このシステムは、
出口温度が室外目標温度に制御された後であって、配管システムを介して冷媒が室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間が少なくとも経過した後の、室外熱交換器の状態が安定しているタイミングにおける室内温度と室内目標温度との差分により、オフセット値を含む室内目標温度と室外目標温度との相関関係を更新する第2の制御ユニットを有
する。第2の制御ユニットは、配管システムを介して冷媒が室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間を考慮して室内熱交換器における温度を判断
する。出口温度を目標温度に制御することにより配管システムによる遅延時間が長いシステムであっても、外気の変化などに即時対応して室内の入口温度を安定に制御できる。室外の出口温度を目標温度に制御した場合の室内の入口温度と、目標とする室内の入口温度との間に温度差がある場合は、第2の制御ユニットにより配管システムによる遅延時間またはそれ以上の遅れはあるが、簡単にその温度差を補正した目標温度に更新できる。
【0010】
第2の制御ユニットは、室外熱交換器の状態が安定しているタイミングに対する室内熱交換器における温度を判断する機能を
含む。判断する機能は、室外熱交換器の状態が安定しているタイミングに対する遅れ時間を考慮して室内熱交換器における温度を判断する機能を含
む。室外交換器の制御が安定したタイミングに対応した室内熱交換器における冷媒の温度を測定して補正することにより室外熱交換器をさらに精度よく制御できる。
【0011】
第2の制御ユニットは、室外熱交換器の器内圧に基づき室内熱交換器における冷媒の温度を判断する機能を含んでいてもよい。室外熱交換器の器内圧と室内熱交換器の器内圧とはほぼ同一になるので、器内圧を飽和蒸気圧とする冷媒の温度を室内熱交換器における冷媒温度として求めることができる。このため、室内熱交換器側との通信を省略したり通信量を削減できる。第2の制御ユニットは、室内熱交換器に流入する冷媒の入口温度に基づいて室内熱交換器における冷媒の温度を判断してもよい。第2の制御ユニットは、さらに、遅れ時間を定期的に測定する機能を含んでいてもよい。
【0012】
室外熱交換器の冷却能力を制御する手段の一例は、第1の制御ユニットにより室外熱交換器を通過する風量が連続的または間欠的に制御される外気ファン、第1の制御ユニットにより冷媒の循環量が制御される流量調節ユニット、第1の制御ユニットにより室外熱交換器の熱交換面積が制御される熱交換面積調節ユニットであり、システムは、これらのうち少なくともいずれかを有することが望ましい。
【0013】
このシステムは、室外熱交換器を中心とするシステムとして流通してもよく、また、室内熱交換器および配管システムを有するシステムとして設置あるいは施工されてもよい。さらに、システムは、室外熱交換器、室内熱交換器および配管システムを含むサーバルーム、コンテナ、建屋などの設備(建築設備)であってもよい。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、室内熱交換器との間で配管システムを介して冷媒が自然循環される室外熱交換器を有するシステムを制御する方法である。この方法は、以下のステップを含む。
1.室外熱交換器の冷却能力を、室外熱交換器から出力される冷媒の出口温度が、室内熱交換器における冷媒の
室内温度が室内目標温度になることを予測した室外目標温度であって、室内目標温度に対するオフセット値を含む室外目標温度になるように制御すること。
【0015】
さらにこの方法は以下のステップを含む。
2.
出口温度が室外目標温度に制御された後であって、配管システムを介して冷媒が室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間が少なくとも経過した後の、室外熱交換器の状態が安定しているタイミングにおける室内温度と室内目標温度との差分により、オフセット値を含む室内目標温度と室外目標温度との相関関係を更新すること。
【0016】
このステップ2は、配管システムを介して冷媒が室内熱交換器に供給されることによる遅れ時間を考慮して、室内熱交換器における冷媒の温度と目標温度との相関関係を更新
する。室外熱交換器の状態が安定しているタイミングに対する遅れ時間を考慮して室内熱交換器における冷媒温度を判断
する。また、このステップ2では、室外熱交換器の器内圧に基づき室内熱交換器における冷媒の温度を判断してもよく、室内熱交換器に流入する冷媒の入口温度に基づいて室内熱交換器における冷媒の温度を判断してもよい。また、遅れ時間を定期的に測定するステップを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】サーバルームと冷却システムとを含む建屋の概要。
【
図2】制御ユニットによる制御の概要を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、サーバルームと冷却システムとを含む建屋の概要を示している。この建屋1は、1階にサーバルーム2が設けられており、サーバルーム2には、サーバ5と屋内ユニット(室内ユニット)10とが設置されている。建屋1の屋上3には屋外ユニット(室外ユニット)20が設置されており、屋外ユニット20と屋内ユニット10とは冷媒39が循環する配管システム30により接続されている。
【0019】
屋内ユニット10は、室内熱交換器(屋内熱交換器(室外ファン)、室内熱交換ユニット)11と、室内温度を設定するパネル12とを含む。室内熱交換器11は、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる複数のチューブ15と、複数のチューブ15の下端が繋がった入口ヘッダー(下部ヘッダー)16と、複数のチューブの上端が繋がった出口ヘッダー(上部ヘッダー)17とを含む。液状の冷媒39が下部の入口ヘッダー16から流入し、チューブ15内で沸騰した後、気化した冷媒39が上部の出口ヘッダー17から出力される。屋内ユニット10は、さらに入口ヘッダー16に流入する冷媒39の温度(室内の入口温度)Eiwを測定する温度計13を含む。
【0020】
屋外ユニット20は、室外熱交換器(屋外熱交換器、室外熱交換ユニット)21と、室外熱交換器21に外気を強制的に供給する外気ファン(室外ファン)22とを含む。室外熱交換器21は、外気と冷媒との間で熱交換が行われる複数のチューブ25と、複数のチューブ25の上端が繋がった入口ヘッダー(上部ヘッダー)26と、複数のチューブの下端が繋がった出口ヘッダー(下部ヘッダー)27とを含む。気化した冷媒39が上部の入口ヘッダー26から流入し、チューブ25内で液化した後、液状の冷媒39が下部の出口ヘッダー27から出力される。屋外ユニット20は、さらに出口ヘッダー27から流出する冷媒39の温度(室外の出口温度)Eowを測定する温度計23と、流出する冷媒量を制御する制御弁24と、室外熱交換器21の器内圧を測定する圧力計29と、屋外ユニット20に含まれる機器を制御する制御ユニット(制御パネル)50とを含む。この例では、圧力計29は入口ヘッダー26に取り付けられている。
【0021】
配管システム30は、室外熱交換器21の出口ヘッダー27と室内熱交換器11の入口ヘッダー16とを連通する液冷媒管31と、室内熱交換器11の出口ヘッダー17と室外熱交換器21の入口ヘッダー26とを連通するガス冷媒管32とを含む。室外熱交換器21は、配管31および32で接続された室内熱交換器11よりも高い位置に配置されており、室外熱交換器21で外気と熱交換して液化された冷媒39は、液冷媒管31を介して重力および器内圧差で室内熱交換器11に供給される。室内熱交換器11において室内熱負荷により気化したガス冷媒は、ガス冷媒管32を介して比重差で室外熱交換器21に供給され、外気により液化される。
【0022】
したがって、室外熱交換器21、配管システム30および室内熱交換器11とを含む空調システム(冷房システム)60においては、冷媒39が室内熱交換器11および室外熱交換器21を自然循環する。このため、コンプレッサは不要であり、コンプレッサを稼働するために必要な電力を省くことができる。また、室外熱交換器21の熱負荷が小さい場合や、風速が十分である場合は外気ファン22を減速または停止することにより外気ファン22を稼働するために必要な電力も省くことができる。したがって、外気の条件によってはほとんど電力消費なしに室内(サーバールーム)2を、外気導入せずに、冷媒を介して間接的に冷房できる。
【0023】
屋外ユニット20を制御する制御ユニット50は、外気ファン22および/または制御バルブ(制御弁)24により冷却能力を制御する第1の機能(第1の制御ユニット、冷却能力制御ユニット)51と、第1の機能51に設定されるターゲットの温度(目標温度)Eotを制御する第2の機能(第2の制御ユニット、目標温度制御ユニット)52とを含む。第1の機能51は、設定される目標温度Eotを目標に、温度計23から得られる冷媒39の出口温度Eowを制御対象として、外気ファン22の回転数を制御したり、オンオフを制御することにより屋外ユニット20に含まれる室外熱交換器21の冷却能力を制御する温度制御機能53を含む。温度制御機能53は、PID制御、P制御、PI制御、ファジー制御などの公知の制御手法のいずれを備えていてもよく、それらを組み合わせて使用してもよい。温度制御機能53は、制御弁24により冷媒39の循環量を調整することにより室外熱交換器21の伝熱面積を変えて室外熱交換器21の冷却能力を制御してもよい。
【0024】
第2の機能52は、室内熱交換器11における冷媒39の温度、たとえば、冷媒39の室内熱交換器11の入口温度Eiwの設定値(室内の目標温度)Eitに対して以下の式(1)により、目標温度Eotを求める温度設定機能(温度設定ユニット)57と、室外熱交換器21の出口の冷媒温度変化に対する室内熱交換器11の入口の冷媒温度変化の遅延時間tdを判断する遅延時間更新機能(遅延時間設定ユニット)55と、室内熱交換器11における冷媒の温度(入口温度)Eiw(Eit)と室外熱交換器21の出口温度Eow(Eot)との相関関係(本例ではオフセット値β)を求め、室内熱交換器11における冷媒温度Eowを予測した目標温度Eotを算出可能とするオフセット値更新機能(オフセット値設定ユニット)56とを含む。オフセット値更新機能56は、室外熱交換器21の運転状況を判断する機能56aを含み、室外熱交換器21の運転状況が外乱、たとえば、外気温の急激な変化、風量の急激な変化、天候の急激な変化による過渡的な状態ではなく、外乱からある程度の時間が経過して冷媒の出口温度Eowが安定し、外気ファン22の運転状況が安定していることを確認する。オフセット値更新機能56は、室外熱交換器21の運転状況が安定し、かつ、室外熱交換器21の出口冷媒温度Eowが目標温度Eotに安定した後で、さらに遅延時間tdが経過した後に室内熱交換器11の入口温度Eiwと室内の目標温度Eitとの差分ΔEに基づいて、オフセット値βを求める。
Eot = Eit+β ・・・・・(1)
【0025】
制御ユニット50の一例はCPUとメモリとを含むコンピュータであり、以下に示す制御を行うプログラム(プログラム製品)をロードして実行することにより上記の機能を制御ユニット50に実装することができる。
【0026】
図2に、屋外ユニット20の制御ユニット50による制御の概要をフローチャートにより示している。空調システム60がスタートまたはリセットされると、ステップ71において初期のパラメータが設定される。この際、初期の室内熱交換器11における冷媒温度(室内目標温度)Eitが初期設定され、オフセット値βも初期設定される。ステップ72において、空調システム60の運用中に、屋内ユニット10の制御パネル12などで室内の温度設定が変更されると、ステップ73において室内目標温度Eitも再設定される。ステップ74において、温度設定機能57が、室内目標温度Eitおよびオフセット値βにより、式(1)に基づいて室外熱交換器21の出口温度の目標値(目標温度、室外目標温度)Eotを計算し、第1の機能51にセットする。この室外目標温度Eotは、その温度の冷媒39が室外熱交換器21から出力され、配管システム30を介して室内熱交換器11に至ったときに室内熱交換器11の入口における温度(入口温度)Eiwが室内目標温度Eitになることを予測した温度である。
【0027】
ステップ76において、第1の機能51の温度制御機能53が、室外熱交換器21の出口冷媒温度Eowを室外目標温度Eotになるように外気ファン22の回転数を制御する。温度制御機能53は、外気ファン22をオンオフ制御してもよく、制御弁24を用いて冷媒39の循環量を調整して室外熱交換器21の伝熱面積を制御してもよい。室外熱交換器21が外気に触れる面積を制御するダンパー、その他の伝熱面積を制御する手段が屋外ユニット20に用意されていれば、温度制御機能53はそれらの機能を制御してもよい。典型的には、温度制御機能53は、外気ファン22の回転数をPID制御する。
【0028】
ステップ77において、室外熱交換器21の出口冷媒温度Eowが室外目標温度Eotに一致する、または所定の範囲内になるように制御が繰り返される。出口冷媒温度Eowが室外目標温度Eotに一致または所定の範囲内になり、ステップ77aにおいて、運転状況を判断する機能56aが室外熱交換器21に関する制御が安定していると判断すると、遅延時間tdが経過した後のオフセット値(差分)βを求めて更新する作業を開始する。
【0029】
まず、ステップ78において、所定の時刻になったり、所定の運転時間が経過して遅延時間tdの測定が必要であると、遅延時間更新機能55が判断すると、遅延時間更新機能55は、ステップ79において遅延時間tdを測定する。測定方法の1つは、外気ファン22を短時間停止することにより、出口冷媒温度Eowを意図的または強制的に短時間だけ上昇し、その影響が室内熱交換器11の冷媒入口温度Eiwに表れるまでの時間を計測することである。冷媒入口温度Eiwを温度計13により計測する代わりに、室外熱交換器21に設けられた圧力計29により器内圧が上昇する時間を計測することにより遅延時間tdを求めてもよい。また、本ステップについては、想定される最大遅延時間を予め計測する等しておくことで、遅延時間tdが最大遅延時間より大きな値となる固定値として、初期設定して定数として制御に使用しても良い。
【0030】
出口冷媒温度Eowが室外目標温度Eotに一致または所定の範囲内となりステップ80において、十分な時間が経過した後、冷媒温度の制御が安定しているとオフセット値更新機能56が判断すると、オフセット値更新機能56が、ステップ81において、室内冷媒温度Eiwが室内目標温度Eitに一致または所定の範囲内にあるか否かを判断する。オフセット値更新機能56は、室内冷媒温度Eiwの値を、室内熱交換器11の冷媒入口に設けられた温度計13から取得してもよいし、室外熱交換器21に設けられた圧力計29により冷媒39の器内圧を測定し、その飽和温度を計算したり、ルックアップテーブルから求めてもよい。
【0031】
オフセット値の変更時には、冷媒39の温度が安定制御できている必要がある。このため、ステップ80においては、冷媒39の温度が安定していることを、例えば、以下の2つの条件を同時に満たすか否かにて判定する。
1.出口冷媒温度Eowと室外目標温度Eotが等しいこと。
2.室外ファン22の回転数の変更がないこと。
上記の冷媒温度の安定条件は一例であり、冷媒温度の安定を確認する条件はこれらに限定されない。
【0032】
ステップ80において、オフセット値更新機能56は、遅延時間tdを積極的に取り入れてもよい。この場合、冷媒39の温度は、配管システム30による遅延があるので、オフセット値更新機能56は、時刻tiの室外目標温度Eot(ti)を目標として室内目標温度Eit(ti)と、時刻tiから遅延時間td後の室内冷媒温度Eiw(ti+td)とを比較する。このため、オフセット値更新機能56は、室内目標温度Eitまたは室外目標温度Eotおよびオフセット値βの履歴を保存するメモリを備えていることが望ましく、少なくとも遅延時間td分の履歴を記憶しておくことが望ましい。あるいは、適当なインターバル、たとえば20分間隔で20分前の室内目標温度Eitと、室内冷媒温度Eiwとを比較してもよい。更新の要否を判断するタイミングが遅延時間tdよりも十分に長くとれる場合は遅延時間tdの経過を特に考慮しなくてもよい。
【0033】
オフセット値更新機能56は、室内目標温度Eitと室内冷媒温度Eiwとに差があれば、ステップ82においてその差分ΔEiを求め、ステップ83において以下の式(2)を用いてオフセット値βを更新する。
β = β0+K×ΔEi ・・・・・(2)
0<K≦1
なお、係数Kは上記の範囲でシステムの応答性に合わせて決定され、たとえば1/2である。また、係数β0は、前回算出した係数βを示す。
【0034】
発明者らの測定によると、配管システム30の長さが20m程度で150秒程度の遅れ(遅延時間)tdがあり、40m程度になると遅延時間tdは400秒程度になる。自然循環型の冷房システム60において、配管システム30の長さは80mまたはそれ以上になるケースがあり、遅延時間は10分程度またはそれ以上になる可能性がある。
【0035】
応答遅れが数10秒を超えるとシステムが安定するのに10分から数10分がかかり、応答遅れが5分を超えるとシステムを安定して制御することが非常に難しくなる。冷房システム60においては、室内熱交換器11における冷媒温度Eiwと、設定値である室内目標温度Eitとの間に差があると、それにより室外熱交換器21の冷却能力を制御するのではなく、まず、室外熱交換器21の冷媒出口温度Eowの設定値である室外目標温度Eotを、室内目標温度Eitを予測した温度に設定し、室外熱交換器の冷却能力を冷媒の出口温度Eowをターゲットに制御する。冷媒の出口温度Eowは制御対象である室外熱交換器21の出口温度であるので応答時間は短く、たとえば、数10秒以下であり、システム、この場合は、室外熱交換器21を含む屋外ユニット20を極めて安定して制御できる。
【0036】
図3および
図4に、冷房システム60における冷媒温度の変化の一例を示している。
図3では、時刻t0に、冷房システム60が異なる運転モードから室外目標温度Eotを用いた制御に切り替わったとする。初期のオフセット値βは「0」であり、時刻t0に、ターゲットの室内目標温度Eitに対して同じ値の室外目標温度Eotが設定される。屋外ユニット20においては、温度制御機能53は、室外熱交換器21の冷媒出口温度Eowが室外目標温度Eotになるように外気ファン22を制御する。
【0037】
時刻t0から遅延時間td後の時刻t1に、室内熱交換器11の冷媒入口温度Eiwが変化し、室内熱交換器11の状態が変わる。その後、時刻t0から遅延時間tdに対して十分な時間的余裕を持った時刻t2に、上述した冷媒温度の安定条件を確認する。冷媒温度の安定条件が確認されると、室内冷媒温度Eiwと室内目標温度Eitの乖離を計測し、オフセット値βを更新する。これにより室外目標温度Eotが変化し、出口冷媒温度Eowが変化する。続いて、遅延時間tdが経過した時刻t3に室内冷媒温度Eiwが変化し、室内目標温度Eitに近づく。
【0038】
図4では、時刻t10に、冷房システム60の室内側の設定値が変わった場合を示している。初期のオフセット値βは「0」であり、時刻t10に、ターゲットの室内目標温度Eitに対して同じ値の室外目標温度Eotが設定される。屋外ユニット20においては、温度制御機能53は、室外熱交換器21の冷媒出口温度Eowが室外目標温度Eotになるように外気ファン22を制御する。
【0039】
時刻t10から遅延時間td後の時刻t11に、室内熱交換器11の冷媒入口温度Eiwが変化し、室内熱交換器11の状態が変わる。その後、時刻t10から遅延時間tdに対して十分な時間的余裕を持った時刻t12に、上述した冷媒温度の安定条件を確認する。冷媒温度の安定条件が確認されると、室内冷媒温度Eiwと室内目標温度Eitの乖離を計測し、オフセット値βを更新する。これにより室外目標温度Eotが変化し、出口冷媒温度Eowが変化する。続いて、遅延時間tdが経過した時刻t13に室内冷媒温度Eiwが変化し、室内目標温度Eitに近づく。
【0040】
以上に説明したように、室内外機を接続する中継配管(配管システム)30が長くなるにつれて、室外機熱交換量の調整や冷媒流量の調整の結果としての冷媒回路温度の反応が遅れる挙動を示し、冷却能力の制御がオーバーシュー卜して安定しなくなる傾向が見られる。また、この冷媒回路温度の反応時間は、室内外機の中継配管長、および室内外機の温度差によって変化するため、世の中の全ての設置環境において合致する、現実的に使用可能な固有の制御パラメータは存在せず、そのような方法で対応するには、非常に大きな冗長性を持たせた制御とする必要がある。また、能力制御の安定化のために、制御パラメータに非常に大きな冗長性をもたせることは、外気温度の変化や自然風による室外機熱交換性能の変化などの外乱に対しての応答性を遅らせることになり、そもそもの目的である、安定した能力制御のための応答性が犠牲になるという問題がある。
【0041】
上記の冷房システム60においては、主たる能力制御手段を備える室外機(屋外ユニット)20の出口冷媒回路上に、冷媒状態を検出する手段、本例では温度計23を設け、室外熱交換器21から室内熱交換器11に戻る冷媒39の状態を検出し、その室外熱交換器21の側の温度を制御することで、室内熱交換器11と室外熱交換器21とを接続する配管システム30の中継配管の長さに関わらず、室外熱交換器21側での熱交換能力を安定して制御する。その上で、室内熱交換器11の入口での冷媒の状態を温度計13または器内圧29から予測、計算し、室外熱交換器21での能力制御に補正を加えることで安定的に能力を制御する構成としている。
【0042】
冷媒状態を検出する手段としては、上記では、主に配管外周部に取り付けた温度センサを想定しているが、冷媒状態を検出可能であれば、圧力、密度、比重等、その他のセンサによる検出であってもよい。また、室内熱交換器11の入口の冷媒状態(冷媒温度)Eiwを予測計算する手段としては、室内熱交換器の入口冷媒回路上に冷媒状態を検出する手段を設け、直接計測により冷媒状態を計算する方法が確実である。また、冷媒の状態を冷媒圧力または密度によって検出することも可能であり、冷媒の飽和温度(沸騰温度)を直接計算することにより、室内熱交換器11の入口の冷媒状態を検出する必要がなくなるというメリットがある。もちろん、これら複数の手段により冷媒の状態を測定あるいは推定してもよい。
【0043】
室内熱交換器11の入口冷媒状態の遅れは、一定時間毎に室外熱交換器21の側の制御を変えて、室内熱交換器11の側の冷媒温度の応答時間を計測することで更新できる。冷媒温度の応答遅れ時間tdを、配管システム30の配管長、外気温、日射などのパラメータに基づいて計算することで、室内熱交換器11の側の冷媒状態を予測し、室外熱交換器21の冷却能力制御を最適化してもよい。いずれにしても、室外熱交換器21の短時間の制御は、室外熱交換器21の側でクローズした制御にすることにより、制御を安定化でき、室外熱交換器21から室内熱交換器11に戻される冷媒39の状態(温度)を安定して制御することが可能となる。その際に、能力制御と冷媒温度の応答には制御上問題になるような遅れ時間は発生しない。このため、室内熱交換器11と室外熱交換器21とを接続する中継配管の長さに関わらず安定した能力制御を実施することが可能となる。
【0044】
また、室外熱交換器21と室内熱交換器11とをつなぐ配管システム30の中継配管の長さに応じて、室外熱交換器21を出た冷媒39の温度が室内熱交換器11に戻る際に、配管周囲の温度の影響を受けても、それを補償した状態で室内側の冷媒温度を安定して制御できる。
【0045】
また、上記の式(1)は、室外熱交換器21の冷媒状態から室内熱交換器11の入口冷媒状態を予測計算する方法の一例であり、上記の式に限られない。関数は、中継配管の長さを含んだものであってもよく、外気温を含んだものであってもよく、関数の代わりに予め計算あるいはシミュレーションにより得られたオフセット値をルックアップテーブルなどで制御機器に設定しておいてもよい。
【0046】
また、中継配管長と室内外温度差から、室外熱交換器21の冷媒出口温度Eowと室内熱交換器11の冷媒入口温度Eiwとの温度ズレ分を補正するテーブルを別途制御装置内に組み込んでおいてもよい。また、遅れ時間tdについても、配管システム30の中継配管の長さから予測される値をあらかじめ制御機器に入力しておいてもよい。中間配管の長さ、室内外温度差などから応答遅れ時間tdを予測するテーブルを別途制御装置内に組み込んでおいてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 サーバルーム、 11 室内熱交換器、 21 室外熱交換器
50 制御ユニット