(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322431
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキのキャリパボディ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20180423BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20180423BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20180423BHJP
F16D 125/04 20120101ALN20180423BHJP
F16D 125/16 20120101ALN20180423BHJP
【FI】
F16D65/18
F16D65/02 A
F16D121:04
F16D125:04
F16D125:16
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-22825(P2014-22825)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-148319(P2015-148319A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】熱田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】浦島 祐毅
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−124117(JP,A)
【文献】
特開2013−139057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータの側部に配置される作用部に、ピストンを収容するシリンダ孔をディスクロータ側へ開口して設け、前記作用部に、前記シリンダ孔の底部と前記ピストンとの間に設けられる液圧室へ昇圧した作動液を導入するユニオン孔と、作動液中の混入エアを排出するブリーダ孔とを備えた、鋳造にて形成された車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記シリンダ孔の底壁の外面に、鋳造時の湯口を切削加工することによって形成された平面状の切削加工面を外面に備えた厚肉部が設けられ、該厚肉部は、前記キャリパボディの中心を通るディスク半径方向線を中心に線対称となる形状に形成され、前記厚肉部に、前記液圧室に連通する前記ユニオン孔とブリーダ孔とを形成したことを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪自動車や自動二輪車等の車両に搭載される車両用ディスクブレーキのキャリパボディに関し、詳しくは、シリンダ孔の底壁に、ユニオン孔とブリーダ孔とを備えた車両用ディスクブレーキのキャリパボディに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ディスクブレーキに用いられるキャリパボディとして、ディスクロータの一側部に配置される作用部に、ユニオンボス部とブリーダボス部とが突設され、ユニオンボス部に、シリンダ孔の底部に設けられてた液圧室に昇圧した作動液を導入するユニオン孔が、ブリーダボス部に、作動液中の混入エアを排出するブリーダ孔がそれぞれ穿設され、ユニオン孔には、液圧配管がユニオンボルトを介して取り付けられ、ブリーダ孔には、ブリーダスクリュが螺着されるものがあった(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−54850号公報
【特許文献2】特開2013−11323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1及び2のものでは、キャリパボディに、大きさや高さの異なるユニオンボス部とブリーダボス部とを形成しなければならないことから、キャリパボディの形状が複雑になっていた。さらに、大きさや高さの異なるユニオンボス部とブリーダボス部にユニオン孔とブリーダ孔とをそれぞれ加工することから、加工作業が煩雑になると共に、加工工数も増えていた。
【0005】
そこで本発明は、キャリパボディの形状をシンプルにすると共に、ユニオン孔とブリーダ孔を容易に形成することができる鋳造にて形成される車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータの側部に配置される作用部に、ピストンを収容するシリンダ孔をディスクロータ側へ開口して設け、前記作用部に、前記シリンダ孔の底部と前記ピストンとの間に設けられる液圧室へ昇圧した作動液を導入するユニオン孔と、作動液中の混入エアを排出するブリーダ孔とを備えた、鋳造にて形成された車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記シリンダ孔の底壁の外面に、鋳造時の湯口を切削加工することによって形成された平面状の切削加工面を外面に備えた厚肉部が設けられ、
該厚肉部は、前記キャリパボディの中心を通るディスク半径方向線を中心に線対称となる形状に形成され、前記厚肉部に、前記液圧室に連通する前記ユニオン孔とブリーダ孔とを形成したことを特徴とし
ている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用ディスクブレーキのキャリパボディによれば、シリンダ孔の底壁の外面に、鋳造時の湯口を切削加工することによって形成された平面状の切削加工面を備えた厚肉部が形成され、前記厚肉部にユニオン孔とブリーダ孔とを形成したことにより、従来のようにキャリパボディにユニオンボス部やブリーダボス部を設ける必要がない。これにより、キャリパボディの形状を極力シンプルにすることができると共に、同一平面上にユニオン孔とブリーダ孔とを開口させることから、少ない加工工数で容易にユニオン孔とブリーダ孔とを形成することができ、コストの削減化を図ることができる。
【0008】
さらに、厚肉部を、キャリパボディの中心を通るディスク半径方向線を中心に線対称となる形状に形成したことにより、車両の右側に取り付けられるキャリパボディと左側に取り付けられるキャリパボディに応じて、作動液中の混入エアを排出するのに良好な位置にブリーダ孔を形成させることができることから、車両の左右に取り付けられるキャリパボディの鋳造体を共用でき、コストの削減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの正面図である。
【
図2】同じく車両用ディスクブレーキの一部断面平面図である。
【
図3】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの一部断面背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図5は本発明の一形態例を示す図で、矢印Aは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。また、矢印Bは、本発明の車両用ディスクブレーキを車体に取り付けた際の車体上方を示す。
【0011】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、自動車用のディスクブレーキで、図示しない車輪と一体に回転するディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3に一対のスライドピン4,4を介してディスクロータ軸方向へ移動可能に支持されるピンスライド型のキャリパボディ5と、前記ディスクロータ2の両側部に対向配置される一対の摩擦パッド6,6とを備えている。
【0012】
キャリパブラケット3は、ディスクロータ2の一側部に沿って配設される板状部3aと、キャリパブラケット3の両側部から、キャリパボディ5のブリッジ部5cの両側を挟みながらディスクロータ2の外縁をディスク軸方向に跨いで、ディスクロータ2の他側方に突出する一対のパッド支持腕3b,3bを備えている。各パッド支持腕3bは、スライドピン4を収容するのガイド孔3cがそれぞれ形成され、また、双方のパッド支持腕3bには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う断面コ字状の4つのパッドガイド部3dが設けられている。
【0013】
キャリパボディ5は、重力鋳造等の鋳造にて製造されたもので、ディスク回出側を上方に、ディスク回入側を下方に向けた状態で、キャリパブラケット3を介して車体の右側に取り付けられる。キャリパボディ5は、ディスクロータ2の一側部に配設される作用部5aと、ディスクロータ2の他側部に配置される反作用部5bと、これらをディスクロータ2の外側を跨いで連結する前記ブリッジ部5cとを備え、作用部5aのディスク回入側とディスク回出側とには、取付腕5d,5dが突設されている。各取付腕5dの先端には前記スライドピン4が取付ボルト4aによって取り付けられ、該スライドピン4を、パッド支持腕3bのガイド孔3cにそれぞれ挿入させることにより、キャリパボディ5がキャリパブラケット3にディスク軸方向に移動可能に支持される。
【0014】
作用部5aには、シリンダ孔5eがディスクロータ2側を開口して設けられ、反作用部5bには反力爪5fが設けられている。シリンダ孔5eには、コップ状のピストン7が開口部をディスクロータ2側に向けて移動可能にそれぞれ収容されており、ピストン7の底部とシリンダ孔5eとの間には、液圧室8が画成されている。
【0015】
キャリパボディ5は、鋳造時にシリンダ孔5eの底壁5gに湯口Pが設けられ、該湯口Pを介して、溶湯をキャビティ内に注入することにより鋳造され、鋳造後に、湯口Pが切削加工される。これにより、シリンダ孔5eの底壁5gの外面には、切削加工面5hを外面に備えた厚肉部5iが形成されている。厚肉部5iは、シリンダ孔5eの底壁5gのディスク半径方向外側に形成されると共に、キャリパボディ5の中心を通るディスク半径方向線CL1を中心に線対称となる形状に形成されいている。
【0016】
厚肉部5iのディスク半径方向線CL1上には、液圧室8に連通するユニオン孔9が形成されると共に、該ユニオン孔9よりもディスク回出側で、且つ、ディスク半径方向内側には、液圧室8に連通するブリーダ孔10が形成され、ユニオン孔9にはユニオンボルト11が、ブリーダ孔10にはブリーダスクリュ12がそれぞれ螺着される。切削加工面5hには、これらユニオン孔9とブリーダ孔10とがそれぞれ開口すると共に、ユニオン孔9よりもディスクロータ回出側で、且つ、ディスク半径方向外側には、ホースバンジョー14の回り止め孔5jが開口している。
【0017】
ユニオン孔9は、
図5に示されるように、切削加工面5hの開口部に形成される座面9aと、該座面9aに連続して、ユニオンボルト11の雄ねじ部11aを螺着する雌ねじ孔9bと、液圧室8に開口する小径孔9cとを有している。ブリーダ孔10は、
図4に示されるように、切削加工面5hに開口し、ブリーダスクリュ12の雄ねじ部12aを螺着する雌ねじ孔10aと、液圧室8に開口する小径孔10bと、雌ねじ孔10aと小径孔10bとを繋ぐテーパ状のシール部10cを備えた中径孔10dとを有している。
【0018】
ユニオンボルト11は、雄ねじ部11aと六角頭部11bとを備え、雄ねじ部11aの内部には液通孔11cが形成され、ユニオンボルト11を介して、液圧配管13がユニオン孔9に連結される。液圧配管13は、基端部が周知の液圧マスタシリンダに繋がれ、先端部にホースバンジョー14が固着されている。このホースバンジョー14は、液圧配管13の他端部にカシメ固定される連結管14aと、両側面を2枚のワッシャ14b,14bで挟まれ、ユニオンボルト11によってユニオン孔9に固定されるリング体14cと、連結管14aとリング体14cとを繋ぐ頸部管14dと、リング体14cの頸部管14dと対向する周壁から突出するL字状の回り止め部材14eとを備えている。液圧配管13は、ホースバンジョー14のリング体14cを、一方のワッシャ14bを介してユニオンボルト11の雄ねじ部11aの基部まで差し込み、該雄ねじ部11aの先端側を、他方のワッシャ14bを介して雌ねじ孔9bに螺着してユニオン孔9に連結され、さらに、回り止め部材14eの先端を回り止め孔5jに挿入することにより、リング体14cの回り止めを図る。
【0019】
ブリーダスクリュ12は、雄ねじ部12aと、該雄ねじ部12aの一端から突出する排気管12bと、雄ねじ部12aの他端から突出する小径軸部12cとを備えている。ブリーダスクリュ12の内部には、排気管12bの端面と小径軸部12cの外周面とに開口する通孔12dが形成されており、また、小径軸部12cの先端部は円錐状に形成されている。このブリーダスクリュ12は、雄ねじ部12aを雌ねじ孔10aに螺着してブリーダ孔10に取り付けられ、常時は小径軸部12cの先端部を、シール部10cに圧着させてメタルシールし、雌ねじ孔10aと小径孔10bとの連通を遮断して液圧室8を液封している。
【0020】
各摩擦パッド6は、裏板6aの両側部に耳片6b,6bが突設され、また、裏板6aの一側面にはライニング6cが貼着される。各耳片6bは、パッドリテーナ15を介してパッドガイド部3d,3dに挿入され、ディスク軸方向に移動可能に支持される。
【0021】
上述のように形成されたキャリパボディ5は、ブリーダ孔10を上方に配置した状態で、例えば車両右側のディスクロータ2を跨いでキャリパブラケット3を介して車体に取り付けられる。運転者の制動操作によって、図示しない液圧マスタシリンダで昇圧された作動液は、液圧配管13からホースバンジョー14のリング体14c内に入り、さらにユニオンボルト11の液通孔11cからユニオン孔9の雌ねじ孔9bと小径孔9cとを通って、液圧室8に供給される。この作動液の供給によって、ピストン7がシリンダ孔5eを前進して、作用部5a側の摩擦パッド6をディスクロータ2の一側面に押圧する。次に、この反力によって、キャリパボディ5がスライドピン4,4に案内されながら、作用部5a方向へ移動し、反作用部5bに設けられた反力爪5fが反作用部5b側の摩擦パッド6をディスクロータ2の他側面へ押圧する。
【0022】
また、液圧マスタシリンダから液圧室8までのブレーキ系統内の作動液に混入するエアを抜く際には、ブリーダスクリュ12を緩める方向に回し、小径軸部12cの先端部をブリーダ孔10のシール部10cから離間させることにより、ブリーダ孔10の小径孔10bがブリーダスクリュ12の通孔12dと連通し、液圧室8内の作動液と、これに混入するエアとを外部に排出できるようになる。
【0023】
本形態例は、上述のように、シリンダ孔5eの底壁5gの外面に、鋳造時の湯口Pを切削加工することによって形成された平面状の切削加工面5hを備えた厚肉部5iが形成され、この厚肉部5iにユニオン孔9とブリーダ孔10とを形成したことにより、従来のようにキャリパボディ5にユニオンボス部やブリーダボス部を設ける必要がなくなる。これにより、キャリパボディ5の形状を極力シンプルにすることができると共に、切削加工面5h上にユニオン孔9とブリーダ孔10とを開口させることから、少ない加工工数で容易にユニオン孔9とブリーダ孔10とを形成することができ、コストの削減化を図ることができる。
【0024】
さらに、厚肉部5iを、キャリパボディ5の中心を通るディスク半径方向線CL1を中心に線対称となる形状に形成したことにより、車両の右側に取り付けられるキャリパボディと左側に取り付けられるキャリパボディに応じて、作動液中の混入エアを排出するのに良好な位置にブリーダ孔10を形成させることができることから、車両の左右に取り付けられるキャリパボディの鋳造体を共用でき、コストの削減化を図ることができる。
【0025】
尚、本発明は上述の形態例に限るものではなく、キャリパボディの車体への取付位置に応じて、ブリーダ孔は厚肉部の任意の位置に形成すればよ
い。また、切削加工面に、回り止め孔を形成していないものでもよい。さらに、本発明は、ピストンを複数備えたキャリパボディにも適用でき、また、ディスクロータの両側部に作用部が設けられるピストン対向型のキャリパボディにも適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、3a…板状部、3b…パッド支持腕、3c…ガイド孔、3d…パッドガイド部、4…スライドピン、4a…取付ボルト、5…キャリパボディ、5a…作用部、5b…反作用部、5c…ブリッジ部、5d…取付腕、5e…シリンダ孔、5f…反力爪、5g…底壁、5h…切削加工面、5i…厚肉部、5j…回り止め孔、6…摩擦パッド、6a…裏板、6b…耳片、6c…ライニング、7…ピストン、8…液圧室、9…ユニオン孔、9a…座面、9b…雌ねじ孔、9c…小径孔、10…ブリーダ孔、10a…雌ねじ孔、10b…小径孔、10c…シール部、10d…中径孔、11…ユニオンボルト、11a…雄ねじ部、11b…六角頭部、11c…液通孔、12…ブリーダスクリュ、12a…雄ねじ部、12b…排気管、12c…小径軸部、12d…通孔、13…液圧配管、14…ホースバンジョー、14a…連結管、14b…ワッシャ、14c…リング体、14d…頸部管、14e…回り止め部材、15…パッドリテーナ