特許第6322432号(P6322432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーソー株式会社の特許一覧 ▶ ユーイル コーポレーション カンパニー,リミテドの特許一覧 ▶ ウィンテック コリア インクの特許一覧

<>
  • 特許6322432-3次元立体形状織物及びその製造方法 図000002
  • 特許6322432-3次元立体形状織物及びその製造方法 図000003
  • 特許6322432-3次元立体形状織物及びその製造方法 図000004
  • 特許6322432-3次元立体形状織物及びその製造方法 図000005
  • 特許6322432-3次元立体形状織物及びその製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322432
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】3次元立体形状織物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 11/00 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   D03D11/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-22932(P2014-22932)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-148034(P2015-148034A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509284071
【氏名又は名称】ユーイル コーポレーション カンパニー,リミテド
(73)【特許権者】
【識別番号】508003435
【氏名又は名称】ウィンテック コリア インク
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】張 后成
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジュン サン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソン クン
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144838(JP,A)
【文献】 特表2010−523838(JP,A)
【文献】 特開2002−054050(JP,A)
【文献】 特開平04−308268(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/127030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、裏面層と、前記表面層及び前記裏面層を連結する中間層とを備え、
前記表面層は、表面経糸及び表面緯糸からなる表面部と、前記表面経糸及び前記表面緯糸と前記中間層を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた表面接結部と、前記表面接結部と次の表面部との間に表面緯糸を前記表面部の表面緯糸より太くし密集させて形成された表面高密部とを順次繰り返すことにより形成され、
前記裏面層は、裏面経糸及び裏面緯糸からなる裏面部と、前記裏面経糸及び前記裏面緯糸と前記中間層を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた裏面接結部と、前記裏面部と前記裏面接結部との間に裏面緯糸を前記裏面部の裏面緯糸より太くし密集させて形成された裏面高密部とを順次繰り返すことにより形成され、
前記中間層は、中間経糸及び中間緯糸で織られて前記表面接結部及び前記裏面接結部に順次繰り返し連結され、
前記表面層又は前記裏面層に前記中間層を構成する中間経糸のうち前記表面接結部及び前記表面高密部間に位置する中間経糸により、この中間経糸を切断し得る切断用緯糸と交差して外部に露出した被切断部が形成され、
記被切断部が前記切断用緯糸で切断されることにより前記表面層及び前記裏面層を前記中間層が連結する3次元立体形状が具現化される3次元立体形状織物であって、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎又は2本以上毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなることを特徴とする3次元立体形状織物。
【請求項2】
前記表面層の表面経糸の綜絖番号を3・9・6・12とし、前記裏面層の裏面経糸の綜絖番号を4・10・7・13とし、前記中間層の中間経糸の綜絖番号を5・11・8・14とするとき、前記表面層の表面部の表面経糸は3・9・6・12で織られ、前記裏面層の裏面部の裏面経糸は4・10・7・13で織られ、前記中間層の中間経糸は5・11・8・14で織られ、前記表面層の表面接結部の表面経糸及び中間経糸は3・9・6・12・5・11・8・14で織られ、前記裏面層の裏面接結部の裏面経糸及び中間経糸は4・10・7・13・5・11・8・14で織られ、前記表面高密部の表面経糸は3・9・6・12で織られ、前記裏面高密部の裏面経糸は4・10・7・13で織られ、前記表面層の被切断部が前記表面層又は前記裏面層の外部に露出する前記中間層の連結経糸であり、この被切断部が前記切断用緯糸で切断されることにより3次元立体形状が具現化される請求項1記載の3次元立体形状織物。
【請求項3】
表面経糸及び表面緯糸で表面層の表面部を織り、同時に裏面経糸及び裏面緯糸で裏面層の裏面部を織り、更に同時に中間経糸及び中間緯糸で中間層を織る第1工程と、
中間経糸及び中間緯糸と表面経糸及び表面緯糸で前記表面層の表面接結部を織り、同時に裏面経糸及びこの裏面経糸より太い裏面緯糸で密集した裏面高密部を織る第2工程と、
前記表面層の表面接結部に前記中間層を構成する中間経糸がこの中間経糸を切断し得る切断用緯糸と交差して外部に露出した被切断部を形成する第3工程と、
表面経糸及びこの表面経糸より太い表面緯糸で密集した表面高密部を織り、同時に中間経糸及び中間緯糸と裏面経糸及び裏面緯糸で前記裏面層の裏面接結部を織る第4工程と、
前記第1〜第4工程を予め設計された長さ分だけ順次繰り返す第5工程と、
前記表面層の外部に露出した被切断部を前記切断用緯糸で切断する第6工程と
を含む3次元立体形状織物の製造方法であって、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎又は2本以上毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなることを特徴とする3次元立体形状織物の製造方法。
【請求項4】
前記表面層の経糸の綜絖番号を3・9・6・12とし、前記裏面層の経糸の綜絖番号を4・10・7・13とし、前記中間層の中間経糸の綜絖番号を5・11・8・14とするとき、前記表面層の表面部の表面経糸を3・9・6・12で織り、前記裏面層の裏面部の裏面経糸を4・10・7・13で織り、前記中間層の中間経糸を5・11・8・14で織り、前記表面層の表面接結部の表面経糸及び中間経糸を3・9・6・12・5・11・8・14で織り、前記裏面層の裏面接結部の裏面経糸及び中間経糸を4・10・7・13・5・11・8・14で織り、前記表面高密部の表面経糸を3・9・6・12で織り、前記裏面高密部の裏面経糸を4・10・7・13で織り、前記表面層の被切断部が前記表面層又は前記裏面層の外部に露出する前記中間層の連結経糸であり、この被切断部を前記切断用緯糸で切断することにより3次元立体形状を具現化する請求項3記載の3次元立体形状織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面層及び裏面層を中間層が連結する3次元立体形状を具現化できる織物とその織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面層、裏面層、及び表面層と裏面層を連結する中間層から形成された3次元立体形状織物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この3次元立体形状織物の第1の構成では、中間層は第1中間層と第2中間層から形成される。また表面層は、基本的に表面経糸だけからなる表面部と、表面経糸及び中間層を構成する経糸で織られた表面接結部が順次繰り返し形成され、裏面層は、基本的に裏面経糸だけからなる裏面部と、裏面経糸及び中間層を構成する経糸で織られた裏面接結部が順次繰り返し形成される。また中間層は、経糸だけで織られて表面接結部及び裏面接結部に順次繰り返し連結される。更に裏面部の表面には中間層を構成する経糸が緯糸と交差せずに製織されて外部に露出し、製織後、上記露出した経糸を剪毛することにより、3次元立体形状織物が形成される。具体的には、表面経糸の綜絖番号を1・3とし、裏面経糸の綜絖番号を2・4とし、第1中間経糸の綜絖番号を5・7とし、第2中間経糸の綜絖番号を6・8とするとき、表面部は基本的に1・3で織られ、裏面部は基本的に2・4で織られ、表面層の第1及び第3接結部は1・3・5・7で織られ、第2接結部は1・3・6・8で織られる。また裏面層の第1及び第3接結部は2・4・6・8で織られ、第2接結部は2・4・5・7で織られる。更に、第1中間層は5・7で織られ、第2中間層は6・8で織られる。
【0003】
一方、3次元立体形状織物の第2の構成では、中間層は第1中間層と第2中間層から形成される。また表面層は、基本的に表面経糸だけからなる表面部と、表面経糸及び中間層を構成する経糸で織られた表面接結部が順次繰り返し形成され、裏面層は、基本的に裏面経糸及び中間層を構成する経糸から形成された裏面部及び裏面接結部が順次繰り返し形成される。また中間層は、経糸だけで織られて表面接結部及び裏面接結部に順次繰り返し連結される。更に表面層には中間層を構成する経糸が別の緯糸と交差して織物の表面に露出した突出部が形成され、製織後、上記突出部を除去することにより、3次元立体形状の発現が具現化されて、3次元立体形状織物が形成される。具体的には、表面層の経糸の綜絖番号を1・3とし、裏面層の経糸の綜絖番号を2・4とし、第1中間層の経糸の綜絖番号を5・7とし、第2中間層の経糸の綜絖番号を6・8とするとき、表面層の表面部は基本的に1・3で織られ、表面層の第1及び第3接結部は1・3・5・7で織られ、第2接結部は1・3・6・8で織られる。また、裏面層は、第1裏面接結部までは裏面部と接結部が2・4・6・8で織られ、第2裏面接結部までは裏面部と接結部が2・4・5・7で織られ、第3裏面接結部までは裏面部と接結部が再び2・4・6・8で織られ、このような過程が順次繰り返される。更に、第1中間層は5・7で織られ、第2中間層は6・8で織られる。
【0004】
このように構成された3次元立体形状織物では、従来の織物の製織方法で製織しながらも、2次元的形状に過ぎなかった織物を3次元的立体形状に形状変化できるとともに、2次元形状から3次元形状に変換させることで、織物のデザイン、深色性、遮光効果をそれぞれ違ったものにすることができる。また、粘着剤や接着剤を使用せず、かつ表面コーティング工程を経ずに形態安定性を維持でき、たった1回織るだけで3次元立体形状を具現化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−523838号公報(請求項1、請求項22、段落[0090]〜[0092]、[0106]、[0122]、図1図3図9図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1に示された3次元立体形状織物の第1の構成では、表面部が基本的に1・3で織られ、裏面部が基本的に2・4で織られるため、表面部と裏面部の経糸の密度が同一であるけれども、裏面部の表面に中間層を構成する経糸が緯糸と交差せずに製織されて外部に露出し、製織後、この露出した経糸を剪毛するため、剪毛した跡が残り、見栄えを損なう不具合があった。また、上記従来の特許文献1に示された3次元立体形状織物の第2の構成では、製織後、突出部を除去することにより、3次元立体形状の発現が具現化されて、3次元立体形状織物が形成されるため、剪毛が不要になり、剪毛した跡の残らないけれども、表面部は基本的に1・3で織られ、裏面部は2・4・6・8又は2・4・5・7で織られるため、表面部の経糸と裏面部の経糸の密度が異なり、見栄えを損なう問題点があった。
【0007】
本発明の第1の目的は、剪毛した跡を残さないように剪毛を不要にすることにより、見栄えを損なわず、また目ずれを抑制できるとともに、引き裂き強度を向上できる、3次元立体形状織物及びその製造方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、表面部の経糸と裏面部の経糸の密度を同一にすることができ、これにより見栄えを更に損なわない、3次元立体形状織物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、図1及び図2に示すように、表面層101と、裏面層102と、表面層101及び裏面層102を連結する中間層103とを備え、表面層101は、表面経糸及び表面緯糸からなる表面部101aと、表面経糸及び表面緯糸と中間層103を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた表面接結部101bと、表面接結部101bと次の表面部101aとの間に表面緯糸を表面部101aの表面緯糸より太くし密集させて形成された表面高密部101cとを順次繰り返すことにより形成され、裏面層102は、裏面経糸及び裏面緯糸からなる裏面部102aと、裏面経糸及び裏面緯糸と中間層103を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた裏面接結部102cと、裏面部102aと裏面接結部102bとの間に裏面緯糸を裏面部102aの裏面緯糸より太くし密集させて形成された裏面高密部102cとを順次繰り返すことにより形成され、中間層103は、中間経糸及び中間緯糸で織られて表面接結部101b及び裏面接結部102cに順次繰り返し連結され、表面層101又は裏面層102に中間層103を構成する中間経糸のうち表面接結部101b及び表面高密部101c間に位置する中間経糸により、この中間経糸を切断し得る切断用緯糸104と交差して外部に露出した被切断部101dが形成され、被切断部101dが切断用緯糸104で切断されることにより表面層101及び裏面層102を中間層103が連結する3次元立体形状が具現化される3次元立体形状織物100であって、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎又は2本以上毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1及び図2に示すように、表面層101の表面経糸の綜絖番号を3・9・6・12とし、裏面層102の裏面経糸の綜絖番号を4・10・7・13とし、中間層103の中間経糸の綜絖番号を5・11・8・14とするとき、表面層101の表面部101aの表面経糸は3・9・6・12で織られ、裏面層102の裏面部102aの裏面経糸は4・10・7・13で織られ、中間層103の中間経糸は5・11・8・14で織られ、表面層101の表面接結部101bの表面経糸及び中間経糸は3・9・6・12・5・11・8・14で織られ、裏面層102の裏面接結部102cの裏面経糸及び中間経糸は4・10・7・13・5・11・8・14で織られ、表面高密部101cの表面経糸は3・9・6・12で織られ、裏面高密部102cの裏面経糸は4・10・7・13で織られ、表面層101の被切断部101dが表面層101又は裏面層の外部に露出する中間層103の連結経糸であり、この被切断部101dが切断用緯糸104で切断されることにより3次元立体形状が具現化されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、図1及び図2に示すように、表面経糸及び表面緯糸で表面層101の表面部101aを織り、同時に裏面経糸及び裏面緯糸で裏面層102の裏面部102aを織り、更に同時に中間経糸及び中間緯糸で中間層103を織る第1工程と、中間経糸及び中間緯糸と表面経糸及び表面緯糸で表面層101の表面接結部101bを織り、同時に裏面経糸及びこの裏面経糸より太い裏面緯糸で密集した裏面高密部102cを織る第2工程と、表面層101の表面接結部101bに中間層103を構成する中間経糸がこの中間経糸を切断し得る切断用緯糸104と交差して外部に露出した被切断部101dを形成する第3工程と、表面経糸及びこの表面経糸より太い表面緯糸で密集した表面高密部101cを織り、同時に中間経糸及び中間緯糸と裏面経糸及び裏面緯糸で裏面層102の裏面接結部102cを織る第4工程と、上記第1〜第4工程を予め設計された長さ分だけ順次繰り返す第5工程と、表面層101の外部に露出した被切断部101dを切断用緯糸104で切断する第6工程とを含む3次元立体形状織物100の製造方法であって、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎又は2本以上毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、更に図1及び図2に示すように、表面層101の経糸の綜絖番号を312とし、裏面層102の経糸の綜絖番号を41013とし、中間層103の中間経糸の綜絖番号を51114とするとき、表面層101の表面部101aの表面経糸を312で織り、裏面層102の裏面部102aの裏面経糸を41013で織り、中間層103の中間経糸を51114で織り、表面層101の表面接結部101bの表面経糸及び中間経糸を3121114で織り、裏面層102の裏面接結部102cの裏面経糸及び中間経糸を410131114で織り、表面高密部101cの表面経糸を3・9・6・12で織り、裏面高密部102cの裏面経糸を4・10・7・13で織り、表面層101の被切断部101dが表面層101又は裏面層の外部に露出する中間層103の連結経糸であり、この被切断部101dを切断用緯糸104で切断することにより3次元立体形状を具現化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点の3次元立体形状織物では、表面層又は裏面層に中間層を構成する中間経糸が切断用緯糸と交差して外部に露出した被切断部を形成し、製織状態で被切断部を切断用緯糸で切断することにより、表面層及び裏面層を中間層が連結する3次元立体形状が具現化されて、3次元立体形状織物を形成したので、剪毛を不要にすることができ、剪毛した跡が残らない。この結果、3次元立体形状織物の見栄えを損なわない。また表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間に所定の本数毎に織り込まれた複数本の熱融着糸とからなるので、熱処理により熱融着糸がレギュラー糸に接着されて、表面部や裏面部等の目ずれを防止できる。この結果、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸を全てレギュラー糸で織った場合と比較して、目ずれを抑制できるとともに、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸を全て熱融着糸で織った場合と比較して、3次元立体形状織物の引き裂き強度を向上できる。
【0013】
本発明の第2の観点の3次元立体形状織物では、表面部の表面経糸を3・9・6・12で織り、裏面部の裏面経糸を4・10・7・13で織ったので、表面部の経糸と裏面部の経糸の密度を同一にすることができる。この結果、3次元立体形状織物の見栄えを更に損なわない。
【0014】
本発明の第3の観点の3次元立体形状織物の製造方法では、中間経糸が表面層又は裏面層の外部に露出して切断用緯糸と織られて被切断部を形成し、表面層又は裏面層の外部に露出した被切断部を切断用緯糸で切断するので、表面層及び裏面層を中間層が連結する3次元立体形状が具現化されて、3次元立体形状織物が形成される。この結果、剪毛を不要にすることができ、剪毛した跡が残らないので、3次元立体形状織物の見栄えを損なわない。また表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間に所定の本数毎に織り込まれた複数本の熱融着糸とからなるので、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸を全てレギュラー糸で織った場合と比較して、目ずれを抑制できるとともに、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸を全て熱融着糸で織った場合と比較して、3次元立体形状織物の引き裂き強度を向上できる。
【0015】
本発明の第4の観点の3次元立体形状織物の製造方法では、表面部の表面経糸を3・9・6・12で織り、裏面部の裏面経糸を4・10・7・13で織ったので、表面部の経糸と裏面部の経糸の密度を同一にすることができる。この結果、3次元立体形状織物の見栄えを更に損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明第1実施形態の3次元立体形状織物の展開した状態を(a)では各部に符号を付し(b)では各部に綜絖番号を付して示した断面概念図である。
図2】その3次元立体形状織物の展開した状態を符号及び綜絖番号とともに示した斜視概念図である。
図3】本発明第2実施形態の3次元立体形状織物の展開した状態を各部に符号を付して示した断面概念図である。
図4】その3次元立体形状織物の展開した状態を各部に綜絖番号を付して示した断面概念図である。
図5】その3次元立体形状織物の展開した状態を符号及び綜絖番号とともに示した斜視概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1及び図2に示すように、3次元立体形状織物100は、表面層101と、裏面層102と、表面層101及び裏面層102を連結する中間層103とを備える。表面層101は、表面経糸及び表面緯糸からなる表面部101aと、表面経糸及び表面緯糸と中間層103を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた表面接結部101bとを順次繰り返すことにより形成される。但し、この実施の形態では、表面接結部101bと次の表面部101aとの間に、表面緯糸を表面部101aの表面緯糸より太くして密集させた表面高密部101cが所定の幅、即ち表面接結部101bと略同一の幅で形成される。このため、この実施の形態では、表面層101は、表面部101aと表面接結部101bと表面高密部101cとを順次繰り返すことにより形成される。また、この実施の形態では、表面部101aは向こう側が透けて見えるレース状に織られ、表面接結部101bは表面経糸及び中間経糸が密集した状態で織られる。
【0019】
また裏面層102は、裏面経糸及び裏面緯糸からなる裏面部102aと、裏面経糸及び裏面緯糸と中間層103を構成する中間経糸及び中間緯糸とで織られた裏面接結部102cとを順次繰り返すことにより形成される。但し、この実施の形態では、裏面部102aと裏面接結部102cとの間に、裏面緯糸を裏面部102aの裏面緯糸より太くして密集させた裏面高密部102bが所定の幅、即ち裏面接結部102cと略同一の幅で形成される。このため、この実施の形態では、裏面層102は、裏面部102aと裏面高密部102bと裏面接結部102cとを順次繰り返すことにより形成される。また、この実施の形態では、裏面部102aは向こう側が透けて見えるレース状に織られ、裏面接結部102cは裏面経糸及び中間経糸が密集した状態で織られる。
【0020】
更に中間層103は、表面部101aと裏面部102aとの間に位置するように中間経糸及び中間緯糸で織られる。そして中間層103は、表面接結部101bで表面部101aと連結され、裏面接結部102cで裏面部102aに連結される。即ち、表面経糸及び表面緯糸と中間経糸及び中間緯糸とで表面接結部101bが織られ、裏面経糸及び裏面緯糸と中間経糸及び中間緯糸とで裏面接結部102cが織られる。これにより中間層103は、表面接結部101b及び裏面接結部102cに順次繰り返し連結される。なお、表面接結部101bに隣接して表面高密部101cを形成し、裏面接結部102cに隣接して裏面高密部102bを形成したのは、後述する被切断部101dが切断用緯糸104により確実に切断されるようにするためである。また、この実施の形態では、中間層103は中間緯糸を太くして密集した状態で織られる。
【0021】
具体的には、表面層101、裏面層102及び中間層103の緯糸を無視して経糸のみを考慮した場合、表面層101の表面経糸の綜絖番号を3・9・6・12とし、裏面層102の裏面経糸の綜絖番号を4・10・7・13とし、中間層103の中間経糸の綜絖番号を5・11・8・14とするとき、表面層101の表面部101aの表面経糸は3・9・6・12で織られ、裏面層102の裏面部102aの裏面経糸は4・10・7・13で織られ、中間層103の中間経糸は5・11・8・14で織られ、表面層101の表面接結部101bの表面経糸及び中間経糸は3・9・6・12・5・11・8・14で織られ、裏面層102の裏面接結部102cの裏面経糸及び中間経糸は4・10・7・13・5・11・8・14で織られる。なお、表面層101の表面高密部101cの表面経糸は、表面部101aの表面経糸より太いため密集しているけれども、表面部101aの表面経糸と同様に、3・9・6・12で織られ、裏面層102の裏面高密部102bの裏面経糸は、裏面部102aの裏面緯糸より太いため密集しているけれども、裏面部102aの裏面経糸と同様に、4・10・7・13で織られる。
【0022】
一方、表面層101には、中間層103を構成する中間経糸が切断用緯糸104と交差して外部に露出した被切断部101dが形成され、製織状態で被切断部101dが切断用緯糸104で切断されることにより、表面層101及び裏面層102を中間層103が連結する3次元立体形状が具現化される。また、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸は、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなる。この熱融着糸は、分子構造の改質、共重合、ブレンド、紡糸工程の制御、複合紡糸等によって意図的に融点を低くし、120〜190℃の温度範囲内で熱処理を加える場合、表面が微細に融着し得る物性を有する原糸である。具体的に、テレフタル酸又はエステル形成誘導体とエチレングリコールとネオペンチルグリコールを共重合させて製造したコポリエステル系バインダ繊維を使用することができる。ここで、熱融着糸を用いるのは、熱処理を施すことにより、熱融着糸がレギュラー糸に接着されて、向こう側が透けて見えるレース状の表面部101aや裏面部102aの目ずれを防止するためである。なお、上記熱処理は、織り上がって積層状態の3次元立体形状織物100を織機から下ろし、ヒートセット装置により上記積層状態の3次元立体形状織物100を横方向に引っ張った状態で190℃程度の熱をかけることにより行われる。これにより熱融着糸がレギュラー糸に接着される。このとき接着してほしくない部分も接着されるが、この部分は、被切断部101dを切断用緯糸104で切断した後に、棒等を挿入して剥がす。
【0023】
このように構成された3次元立体形状織物100の製造方法を説明する。先ず、表面経糸及び表面緯糸で表面層101の表面部101aを織り、同時に裏面経糸及び裏面緯糸で裏面層102の裏面部102aを織り、更に同時に中間経糸及び中間緯糸で中間層103を織る(第1工程)。次いで、中間経糸及び中間緯糸と表面経糸及び表面緯糸とで表面層101の表面接結部101bを織り、同時に裏面経糸及び太い裏面緯糸で密集した裏面高密部102bを織った後に(第2工程)、表面層101の表面接結部101bに中間層を構成する中間経糸が切断用緯糸104と交差して外部に露出した被切断部101dを形成する(第3工程)。次に、表面経糸及び太い表面緯糸で密集した表面層101の表面高密部101cを織り、同時に中間経糸及び中間緯糸と裏面経糸及び裏面緯糸とで裏面層102の裏面接結部102cを織る(第4工程)。更に、上記第1〜第4工程を予め設計された長さ分だけ順次繰り返した後に(第5工程)、表面層101の外部に露出した被切断部101dを切断用緯糸104で切断する(第6工程)。
【0024】
このように製造された3次元立体形状織物100では、製織状態で被切断部101dを切断用緯糸104で切断することにより、表面層101及び裏面層102を中間層103が連結する3次元立体形状が具現化されて、3次元立体形状織物100を形成したので、剪毛を不要にすることができ、剪毛した跡が残らない。また表面部101aの表面経糸を3・9・6・12で織り、裏面部102aの裏面経糸を4・10・7・13で織ったので、表面部101aの経糸と裏面部102aの経糸の密度を同一にすることができる。この結果、3次元立体形状織物100の見栄えを損なわない。なお、図1では、3次元立体形状織物100を展開した状態を示しているにも拘らず、切断用緯糸104が残りかつ被切断部101dが切断されていないが、実際には、表面層101、裏面層102及び中間層103が重なった状態で、切断用緯糸104が存在しかつ被切断部101dが切断されていない状態となっており、図1に示すように3次元立体形状織物100を展開した状態では、切断用緯糸104が除去されかつ被切断部101dが切断された状態になっている。一方、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間に所定の本数毎に織り込まれた複数本の熱融着糸とからなるので、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸を全てレギュラー糸で織った場合と比較して、目ずれを抑制できるとともに、表面層101、裏面層102及び中間層103をそれぞれ織る経糸を全て熱融着糸で織った場合と比較して、3次元立体形状織物100の引き裂き強度を向上できる。
【0025】
<第2の実施の形態>
図3図5は本発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態では、3次元立体形状織物200が、表面層201と、裏面層202と、表面層201と裏面層202との間にこれらと平行に設けられた内面層203と、表面層201及び裏面層202を内面層203を介して連結する中間層204とを備える。中間層204は、表面層201及び内面層203を連結する第1中間層204aと、裏面層202及び内面層203を連結する第2中間層204bとを有する(図3及び図5)。上記表面層201、裏面層202、内面層203及び中間層204は、経糸の一部を順次入れ換えながら織られる。
【0026】
具体的には、表面層201は、経糸及び緯糸で表面部201aが織られ、この表面部201aを織った経糸及び緯糸と第1中間層204aを織った経糸及び緯糸とにより表面接結部201bが織られた後に、後述の被切断部201cを形成した表面部201aの一部の経糸が裏面層202に移行して裏面部202aの経糸の一部となって織られると同時に、第1中間層204aの経糸が表面部201aの経糸の一部となって織られる。また、裏面層202は、経糸及び緯糸で裏面部202aが織られ、この裏面部202aを織った経糸を太くして密度を高くした裏面高密部202bが織られた後に、被切断部201cを形成した表面部201aの一部の経糸が裏面層202に移行して裏面部202aの経糸の一部となって織られると同時に、裏面部202aの経糸の一部が第2中間層204bの経糸となって織られる。更に、内面層203は、経糸及び緯糸で内面部203aが織られ、この内面部203aを織った経糸及び緯糸と第2中間層204bを織った経糸及び緯糸とにより内面接結部203bが織られた後に、被切断部201cを形成した表面部201aの一部の経糸が裏面層202に移行するときに、内面部203aの経糸の一部が第1中間層204aの経糸となって織られる。
【0027】
このため、表面部201a及び表面接結部201bは、図4及び図5に示すように、それぞれ経糸を替えた8通りの織り方となり、隣接する被切断部201c間を1工程とすると、織り方の異なる表面部201a及び表面接結部201bを8工程作製した後に再び上記8工程がそれぞれ繰り返される。なお、図4及び図5において『・』で結合した番号は綜絖番号である。また、裏面部202a及び裏面高密部202bも上記表面部201a及び表面接結部201bと同様に8工程毎に繰り返され、内面部203a及び内面接結部203bも上記表面部201a及び表面接結部201bと同様に8工程毎に繰り返される。
【0028】
一方、この実施の形態では、表面部201aは向こう側が透けて見えるレース状に織られ、表面接結部201bは表面部を織った経糸と第1中間層204aを織った経糸とにより密集した状態で織られる。また、裏面部202aは向こう側が透けて見えるレース状に織られ、裏面高密部202bは裏面部202aを織った緯糸を太くすることにより密集した状態で織られる。更に、内面部203aは向こう側が透けて見えるレース状に織られ、内面接結部203bは内面部203aを織った経糸と第2中間層204bを織った経糸により密集した状態で織られる。
【0029】
一方、表面層201には、表面部201aの一部の経糸が切断用緯糸206と交差して外部に露出した被切断部201cが形成され、製織状態で被切断部201cが切断用緯糸206で切断されることにより、表面層201及び内面層203を第1中間層204aが連結し、かつ裏面層202及び内面層203を第2中間層204bが連結する3次元立体形状が具現化される。また、表面層201、裏面層202、内面層203、第1中間層204a及び第2中間層204bをそれぞれ織る経糸は、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなる。
【0030】
このように構成された3次元立体形状織物200では、製織状態で被切断部201cを切断用緯糸206で切断することにより、表面層201及び内面層203を第1中間層204aが連結し、かつ裏面層202及び内面層203を第2中間層204bが連結する3次元立体形状が具現化される。上記以外の動作は第1の実施の形態と略同様であるので、繰り返しの説明を省略する。また、図3及び図4では、3次元立体形状織物200を展開した状態を示しているにも拘らず、切断用緯糸206が残りかつ被切断部201cが切断されていないが、実際には、表面層201、裏面層202、内面層203及び中間層204が重なった状態で、切断用緯糸206が存在しかつ被切断部201cが切断されていない状態となっており、図3及び図4に示すように3次元立体形状織物200を展開した状態では、切断用緯糸206が除去されかつ被切断部201cが切断された状態になっている。
【0031】
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、表面層側に被切断部を形成し、切断用緯糸を被切断部と交差させたが、裏面層側に被切断部を形成し、切断用緯糸を被切断部と交差させてもよい。また、第1及び第2の実施の形態では、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸1本毎に1本ずつ織り込まれた複数本の熱融着糸とからなるとしたが、表面層、裏面層及び中間層をそれぞれ織る経糸が、複数本のレギュラー糸と、これらのレギュラー糸の間にレギュラー糸2本毎又は3本毎或いは4本以上毎に織り込まれた複数本の熱融着糸とからなってもよい。更に、上記第1及び第2の実施の形態では、表面高密部及び裏面高密部を形成したが、熱融着糸の接着力と、表面部及び裏面部の緯糸の密集度合いをある程度高くすることにより、被切断部を切断用緯糸で確実に切断できれば、表面高密部及び裏面高密部を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0032】
100,200 3次元立体形状織物
101,201 表面層
101a,201a 表面部
101b,201b 表面接結部
101d,201c 被切断部
102,202 裏面層
102a,202a 裏面部
102b 裏面接結部
103,204 中間層
104,206 切断用緯糸
図1
図2
図3
図4
図5