(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の、前記共重合体における比率が、5質量%〜50質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物及びこれを用いた成形体について詳細に説明する。
本発明の難燃性樹脂組成物は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体をアルカリけん化してなる重合体けん化物(A)と、金属水酸化物(B)と、ダイマー酸(C)と、を用いて構成されている。また、本発明の難燃性樹脂組成物は、必要に応じて、更に、添加剤等の他の成分を用いて構成することができる。
【0018】
従来から、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は難燃剤として知られているが、一般に粒子状のフィラーとして含有されるため、樹脂中に偏在しやすく、所望の難燃効果が期待できないことがある。また、難燃効果を期待して樹脂中に多量に含有させると、曲げ応力や引張力等が加わった場合に割れ等を生じる等、機械的特性を損なうことがある。このような事情に鑑み、本発明においては、
エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体をアルカリけん化した重合体けん化物を金属水酸化物及びダイマー酸(C)とともに含有する。これにより、けん化物が金属水酸化物の分散性を高める作用を担い、この分散性をダイマー酸がより高める作用を発現することで、けん化物及びダイマー酸を含まない組成に比べ、金属水酸化物を含むことによる難燃効果が飛躍的に向上する。そのため、金属水酸化物を多量に含めることなく、優れた難燃効果が得られ、優れた難燃効果を確保しながら機械的特性に優れたものとなる。
【0019】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
−(A)重合体けん化物−
本発明の難燃性樹脂組成物は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(以下、「エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体」ともいう。)をアルカリけん化してなる重合体けん化物(以下、単に「重合体けん化物」ともいう。)の少なくとも一種を含有する。
樹脂組成物を構成する樹脂成分として、重合体けん化物を選択的に含有することで、粒子状物である金属水酸化物を良好な分散状態で含有させることができる。これにより、優れた難燃効果が発現する。
【0020】
本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸とを共重合させた共重合体であり、重合体構造は、少なくとも、エチレンに由来の構造単位と、不飽和カルボン酸エステルに由来の構造単位と、で構成されている。
【0021】
本発明における重合体けん化物は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとを共重合させた共重合体中に存在するエステル成分を、アルカリ金属によりけん化することでエステル成分を部分的にカリウム塩としたものである点において、分子構造がアイオノマーと異なる。重合体けん化物は、分子内に酸の部位が存在しない化合物である。これに対して、アイオノマーは、共重合構造に酸が存在し、分子中の酸の一部がアルカリ金属により中和されて塩となるが、構造中に酸が存在している化合物である。
【0022】
本発明における不飽和カルボン酸エステルとしては、1種単独のみならず、複数種を組み合わせて含んでもよい。すなわち、
不飽和カルボン酸エステルを1種単独で用いる場合、本発明の難燃性樹脂組成物は、重合体けん化物として、エチレンと1種の不飽和カルボン酸エステルとを共重合させた2元共重合体のけん化物を含有していてもよい。
また、2種以上の不飽和カルボン酸エステルを用いる場合、本発明の難燃性樹脂組成物は、重合体けん化物として、エチレンと2種の不飽和カルボン酸エステルとを共重合させた3元共重合体のけん化物を含有していてもよい。
【0023】
本発明おける重合体けん化物としては、例えば、エチレンと、不飽和カルボン酸のアルキルエステルと、を共重合させた2元共重合体が好適に挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよい。
【0024】
不飽和カルボン酸エステルの不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、又は無水イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、中でも、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方であることが好ましい。
【0025】
アルキルエステルのアルキル部位としては、炭素数1〜12のアルキルを挙げることができる。アルキル部位の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等を例示することができる。アルキルエステルのアルキル部位としては、炭素数1〜8のアルキルが好ましい。
【0026】
不飽和カルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0027】
上記のうち、本発明における不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、ノルマルブチルエステル、又はイソブチルエステルが特に好ましい。
【0028】
本発明においては、不飽和カルボン酸が1分子中に複数のカルボキシ基(酸基)を有する場合、全てのカルボキシ基がアルキルエステル化された不飽和カルボン酸エステルを含む。したがって、けん化度が100%でない場合でも酸基は存在せず、エステル基が存在する。そのため、他の樹脂を併用する場合には、重合体けん化物(A)と、各種の熱可塑性樹脂(例えばスチレン系樹脂等)との相溶性が向上するという効果が得られる。
【0029】
重合体けん化物を構成するエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、ランダム共重合体が好ましく、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させてなる2元ランダム共重合体が特に好ましい。
このような2元ランダム共重合体の例としては、エチレン・アクリル酸メチルランダム共重合体、エチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体、エチレン・アクリル酸ノルマルブチルランダム共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチルランダム共重合体、エチレン・メタクリル酸メチルランダム共重合体、エチレン・メタクリル酸エチルランダム共重合体、エチレン・メタクリル酸ノルマルブチルランダム共重合体、エチレン・メタクリル酸イソブチルランダム共重合体等が挙げられる。
【0030】
けん化前のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の含有比率は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する全構成単位に対して、5質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜35質量がより好ましい。不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の含有比率が上記範囲にあると、金属水酸化物の分散性の向上効果が大きい点で好ましく、ダイマー酸との混和性に優れる。
【0031】
けん化前のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のメルトフローレート(MFR;JIS K7210−1999準拠(190℃、2160g荷重))は、1g/10分〜1300g/10分の範囲が好ましい。
【0032】
けん化前のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、1種単独で用いるほか、2種以上を混合して重合体けん化物としてもよい。
【0033】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、例えば高圧ラジカル共重合により製造することができる。
【0034】
本発明における重合体けん化物は、エチレ・不飽和カルボン酸エステル共重合体をアルカリけん化して得られるものである。けん化に用いる苛性アルカリの金属種としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等を挙げることができる。これらのうち、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが好ましく、吸湿性や原料の入手の容易さから、ナトリウム、カリウムが好ましく、吸湿性に特に優れる点でカリウムが好ましい。
【0035】
本発明における重合体けん化物のメルトフローレート(MFR;230℃、10kg荷重、JIS K7210−1999に準拠)は、成形性、加工性の点で、0.01g/10分〜100g/10分が好ましく、0.1g/10分〜50g/10分がより好ましく、0.1g/10分〜5g/10分がより好ましい。MFRは、0.01g/10分以上であると、成形加工がより良好になり、100g/10分以下であると、機械強度がより良好になる。
【0036】
重合体けん化物としては、けん化前のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体中の不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の全モル量に対し、けん化後に存在するアルカリ金属のモル量の割合が0.1〜0.6であること、すなわち、けん化度が10%〜60%であることが好ましい。より好ましいけん化度は、20%〜50%である。
けん化度が上記範囲内であると、金属水酸化物の分散や機械物性の点で有利であると共に、ダイマー酸を併用した際のダイマー酸との混和性に優れる。
【0037】
共重合体中のエステル成分はアルカリによるけん化反応により部分的にアルカリ塩成分に変化しているため、けん化物は、エチレン由来の構成単位、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位、不飽和カルボン酸アルカリ塩由来の構成単位を有する共重合体となり、遊離のカルボキシル基は含まれない。
【0038】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアルカリけん化は、苛性アルカリ等を用いて公知の方法により行なえる。例えば、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体と所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリとを、混練装置(例えば押出機、ニーダー、バンバリーミキサ等)により例えば100℃〜250℃の温度下にて溶融混合することで行なうことができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を、上記の混練装置で溶融均質化した後、所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリを加えることによりエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体のエステル部分と苛性アルカリを反応させてけん化物としてもよい。
【0039】
重合体けん化物の難燃性樹脂組成物中における含有量としては、難燃性樹脂組成物の全固形分質量に対して、33質量%〜90質量%が好ましい。重合体けん化物の含有量が33質量%以上であることで、良好な機械強度が得られる。また、重合体けん化物の含有量が90質量%以下であることで、難燃性樹脂組成物としての溶融流動性を確保できるうえ、溶融流動性を良好に維持することができる。重合体けん化物の含有量としては、難燃性樹脂組成物の全固形分質量に対して、40質量%〜80質量%がより好ましく、50質量%〜70質量%が更に好ましい。
【0040】
−(B)金属水酸化物−
本発明の難燃性樹脂組成物は、金属水酸化物の少なくとも一種を含有する。金属水酸化物は、難燃化作用を有しており、既述の重合体けん化物と共に含有することで、その難燃化作用がより効果的に発現する。
【0041】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0042】
金属水酸化物の難燃性樹脂組成物中における含有量としては、難燃性樹脂組成物の全質量に対して、20質量%〜70質量%が好ましく、30質量%〜50質量%がより好ましい。金属水酸化物の含有量が20質量%以上であることで、所望の難燃化効果が期待でき、既述の重合体けん化物と併用したときの難燃化(酸素指数)の向上効果に優れる。金属水酸化物の含有量が70質量%以下であると、加工の点で有利である。
【0043】
金属水酸化物(B)の重合体けん化物(A)に対する含有比率(B/A[質量比])としては、10質量%〜200質量%であることが好ましい。B/Aが10質量%以上である、すなわち金属水酸化物の量が少なすぎない範囲であることで、良好な難燃効果が期待できる。また、B/Aが200質量%以下である、すなわち金属水酸化物の量が多過ぎない範囲であると、機械的強度を損なわずに、良好な難燃効果が得られる。
中でも、B/Aとしては、10質量%〜100質量%がより好ましく、20質量%〜70質量%が更に好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0044】
−(C)ダイマー酸−
本発明の難燃性樹脂組成物は、ダイマー酸の少なくとも一種を含有する。ダイマー酸を更に含有することで、ダイマー酸自体は可燃性を有するが、金属水酸化物の重合体けん化物中における分散性をより高めるので、結果としてより優れた難燃性が得られる。
【0045】
ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の2分子又はそれ以上の分子が重合反応して得られる多価カルボン酸であって、通常、不飽和脂肪酸のモノマー(1分子)を含む2種類以上の混合物として得られ、混合物として各種の用途に供されている。
また、ダイマー酸は、炭素原子数8〜22の直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られるものであり、その誘導体も含まれる。ダイマー酸の誘導体としては、水素添加物などを挙げることができる。具体的には、前記ダイマー酸に水添して、含有される不飽和結合を還元した水添ダイマー酸などが使用できる。
ダイマー酸を重合体けん化物(A)とともに含有することにより、重合体けん化物(A)の流動性が向上する。
【0046】
ダイマー酸は、例えば、3−オクテン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、リノール酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、あるいはこれらの2種以上の混合物等を、あるいは工業的に入手可能なこれら不飽和カルボン酸の混合物であるトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸などを原料としたものであってもよい。これらダイマー酸としては、モノマー酸やトリマー酸を少量含有するものであってもよい。
【0047】
従来から、ダイマー酸は、通常、モンモリロナイト系白土を触媒として用い、トール油脂肪酸などの不飽和脂肪酸を高温下で二量化して製造することができる。
【0048】
ダイマー酸の具体例としては、下記構造式(1)で表される鎖状ダイマー酸、下記構造式(2)又は(3)で表される環状ダイマー酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
ダイマー酸は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、ハリダイマー200、同300〔ハリマ化成(株)製〕、ツノダイム205、同395〔築野食品工業(株)製〕、エンポール1026、同1028、同1061、同1062〔コグニス(株)製〕、水素添加ダイマー酸として例えば、エンポール1008、同1012〔コグニス(株)製〕などが挙げられる。
【0051】
本発明の難燃性樹脂組成物は、重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)との合計質量に対するダイマー酸(C)の含有率(C/(A+C))が、1質量%〜50質量%であることが好ましい。
重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)との合計質量に対するダイマー酸(C)の含有率が1質量%以上であることで、難燃性樹脂組成物中の重合体けん化物(A)による金属水酸化物の分散性がより高められ、樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)との合計質量に対するダイマー酸(C)の含有率が50質量%以下であることで、重合体けん化物(A)の溶融流動性を成形加工に適切な範囲とすることができる。
重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)との合計質量に対するダイマー酸(C)の含有率は、2質量%〜30質量%がより好ましく、更に好ましくは3質量%〜15質量%である。
ダイマー酸(C)の含有率が上記範囲にあることで、金属水酸化物(B)の含有比率を高めることができ、重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)との合計量に対する金属水酸化物(B)の含有比(質量比)として、B:(A+C)=40:100〜70:100の範囲に調整することが可能である。より好ましくは、B:(A+C)=45:100〜65:100の範囲である。
【0052】
重合体けん化物(A)とダイマー酸(C)とを溶融混合する場合、重合体けん化物中のアルカリ金属と、ダイマー酸中のカルボキシ基の一部又は全部と、が反応してダイマー酸のアルカリ金属塩の構造を形成することができる。このため、ダイマー酸には、ダイマー酸アルカリ金属塩の形で重合体けん化物と配合する態様、あるいはダイマー酸とダイマー酸アルカリ金属塩の混合形態で配合する態様を含むことができる。
【0053】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、重合体けん化物中のアルカリ金属とダイマー酸中のカルボキシ基の一部又は全部とが反応して得られるダイマー酸アルカリ金属塩のみならず、これとは別のダイマー酸アルカリ金属塩を含ませてもよい。アルカリ金属以外のダイマー酸金属塩を含んでいてもよい。
上記反応を経由しないダイマー酸金属塩は、市販のダイマー酸と金属化合物を接触、加熱することで製造可能である。金属化合物を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛等が例示できる。金属化合物としては、例示したこれらの金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物などが使用できる。ダイマー酸と金属化合物を接触反応させることで、ダイマー酸のカルボキシル基の一部又は全部が金属塩となる。ダイマー酸アルカリ金属塩としては、ダイマー酸リチウム塩(部分塩を含む)、ダイマー酸ナトリウム塩(部分塩を含む)、ダイマー酸カリウム塩(部分塩を含む)、ダイマー酸ルビジウム塩(部分塩を含む)、ダイマー酸セシウム塩(部分塩を含む)を例示できる。
【0054】
−各種添加剤−
本発明の難燃性樹脂組成物には、更に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、粘着剤、無機充填剤、ガラス繊維、カーボン繊維などの強化繊維、顔料、染料、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤などを含有してもよい。また、樹脂用添加剤と知られている他の帯電防止剤を配合することもできる。
【0055】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジt−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系;フェニルサリチレート及びp−オクチルフェニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系のものが挙げられる。
前記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系のものが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものが挙げられる。
【0056】
本発明の成形体は、既述の本発明の難燃性樹脂組成物を用いて成形したものである。本発明の成形体としては、押出し成形品、プレス成形品、射出成形品等が好適に挙げられる。
【0057】
本発明の成形体の製造方法は、既述の本発明の難燃性樹脂組成物を供給し、加圧下で成形する構成とすることができる。例えば、難燃性樹脂組成物を供給して成膜し、得られた膜を圧着して成形体を作製することができる。
成膜に際して難燃性樹脂組成物を供給する方法としては、難燃性樹脂組成物を溶融して供給できる方法であれば制限はなく、例えば射出成形法、溶融押出成形法などが挙げられる。また、加圧下で成形する方法としては、所望の金型等に圧入したり、成膜された膜の上から熱板を押圧する等により加熱プレスする方法などが挙げられる。
【0058】
本発明の難燃性樹脂組成物は、既述の通り、難燃性に優れたものであり、これを用いた本発明の成形体も難燃性を有している。したがって、天井材、床材等の建築材料もしくは土木材料、自動車部品、OA機器、家電製品部品、又はこれらの材料、部品等の保管ケースもしくは収納ケース、文具、あるいは日用品などに広く使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0060】
なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、2160g荷重にて測定した。
【0061】
1.原料の準備
−A.エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体及びそのけん化物−
(1)EEA1:エチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体
(アクリル酸エチル(EA)含量:34質量%、MFR(190℃、2160g荷重):25g/10分)
(2)EEA2:エチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体
(アクリル酸エチル(EA)含量:25質量%、MFR(190℃、2160g荷重):25g/10分)
【0062】
(3)重合体けん化物A1−A
前記EEA1(エチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体)の50モル%カリウムけん化物(MFR(230℃、10kg荷重):0.6g/10分)
【0063】
以下、上記の重合体けん化物A1−Aの製造例を示す。
(重合体けん化物A1−Aの製造)
ベース樹脂としてエチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体(EEA1)10kgと水酸化カリウム(KOH)1.14kgとを混練装置にフィードし、混練装置中でEEA1と水酸化カリウム(KOH)とを溶融、反応させ、押し出すことにより、重合体けん化物A1−Aを得た。この重合体けん化物中にアクリル酸カリウム塩の形で存在するカリウムイオン濃度(Kイオン量)は2.04モル/kgで、けん化前のエチレン・アクリル酸エチルランダム共重合体(EEA1)の全アクリル酸エステル基単位のモル量に対するけん化物中に存在するアルカリ金属イオンのモル量の割合(けん化率)は、50%であった。
【0064】
−B.金属水酸化物−
水酸化マグネシウム[Mg(OH)
2](粉体、粒子径:1.0μm、脂肪酸処理品)
【0065】
−C.ダイマー酸−
ダイマー酸(C1):ツノダイム395〔築野食品工業社製〕
(成分組成:ダイマー酸76.2質量%、モノマー酸10質量%、トリマー酸13.8質量%)
【0066】
2.難燃評価用シート・機械強度測定サンプルの作製
容量500cm
3の加圧ニーダー(ミックスラボML−500、株式会社モリヤマ社製)を用い、その原料投入口に下記表1に示す組成の成分を投入して混合し、温度:230℃、回転数:50min
−1にて10分間混練して混練物を調製した。続いて、得られた混練物を順次用い、プレス成形機にて200℃の温度条件でプレス成形することにより、厚さ3mmの難燃評価用シートと、機械強度測定サンプルとして厚さ1mmの引張強度測定用シートと、をそれぞれ作製した。
【0067】
3.評価
上記で得られた難燃評価用シート及び引張強度測定用シートの各々について、下記の測定及び評価を行なった。測定及び評価の結果は、下記表1に示す。
【0068】
(難燃性)
難燃評価用シートの各々に対して、キャンドル法燃焼試験機(D−2型:株式会社東洋精機製作所製)にて、JIS K7201−1995に準拠した方法で燃焼試験を行ない、酸素指数を測定した。測定された酸素指数を指標として、難燃性を評価した。
酸素指数は、例えば酸素指数25では酸素濃度25%で可燃であることを示し、したがって値が大きいほど難燃性に優れる(すなわち難燃性が高い)ことを示す。
【0069】
(引張特性)
引張強度測定用シートの各々に対して、JIS K6251−2010 ダンベル3号形にて試験片を打ち抜き、得られた試験片を200mm/minの速度で引っ張ったときの、切断時の引張強さ(切断時引張強さ;[MPa])、及び切断時の伸び(切断時伸び; [%] )を測定した。
なお、350%を超える伸び率は、実用性に極めて優れていることを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
前記表1に示すように、実施例1では、けん化物以外の共重合体を樹脂成分として含む比較例に比べ、酸素指数が大きく、優れた難燃性を示した。また、実施例1は、ダイマー酸を含有しない比較例5に比べ、より優れた難燃性、伸びを達成することができた。
なお、比較例6では、金属水酸化物を比較的多く含むが、ダイマー酸を含まないために各成分を混合した際の粘性が極めて高くなり混練物を調製することが不可能であった。