特許第6322437号(P6322437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧

特許6322437プレキャストコンクリート部材の施工方法
<>
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000002
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000003
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000004
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000005
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000006
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000007
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000008
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000009
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000010
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000011
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000012
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000013
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000014
  • 特許6322437-プレキャストコンクリート部材の施工方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322437
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/24 20060101AFI20180423BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20180423BHJP
   B28B 7/16 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B28B7/24
   E02B3/14 301
   B28B7/16 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-34378(P2014-34378)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157453(P2015-157453A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安永 正道
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−061525(JP,A)
【文献】 特開昭51−049219(JP,A)
【文献】 特開平05−050420(JP,A)
【文献】 特開2007−216527(JP,A)
【文献】 特開2007−223032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00− 1/54
B28B 7/00− 7/46
B28B11/00−19/00
E02B3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域に複数のプレキャストコンクリート部材を配置するプレキャストコンクリート部材の施工方法であって、
前記所定領域に対応する平面形状の外周部型枠の内側に中仕切り型枠を設け、コンクリートを打設して製作した複数のプレキャストコンクリート部材を、前記外周部型枠内における配置に従って前記所定領域の同じ位置に配置し、
前記中仕切り型枠の設置と前記コンクリートの打設を複数段にわたって繰り返し、
一の段で製作された前記プレキャストコンクリート部材の配置される領域は、前記領域における前記プレキャストコンクリート部材の配列方向の面を見たときに、他の段で製作された前記プレキャストコンクリート部材の配置される領域とは異なることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項2】
前記中仕切り型枠で仕切られた各箇所のコンクリートに、前記外周部型枠内における配置に関する情報を記録することを特徴とする請求項記載のプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項3】
前記中仕切り型枠で仕切られた箇所の一部に先にコンクリートの打設を行い、その後、残りの箇所にコンクリートの打設を行うことを特徴とする請求項1または請求項に記載のプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項4】
前記中仕切り型枠の下部に、凹凸を有する底型枠を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項5】
前記底型枠による凹凸が形成された前記プレキャストコンクリート部材を、凹凸を下にして配置することを特徴とする請求項4記載のプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項6】
前記外周部型枠の高さは、前記複数段のコンクリートの高さに対応することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の製作方法および施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の構築時には、例えばコンクリートを施工現場まで搬送して打設を行う。しかしながら、斜面に構造物を構築する場合など、施工条件によってはコンクリートを打設することが難しい場合もある。また、コンクリートを施工現場まで搬送する際、搬送時間の経過に伴う品質低下等の問題も生じる。特に僻地や遠隔地での工事を行う場合には搬送時間が長くなる。
【0003】
そのため、工場で製作したプレキャストコンクリート部材(ピース)を施工現場まで搬送し、これを組立てて施工を行うプレキャストコンクリート工法(PCa工法)も多く行われている(特許文献1、2等参照)。
【0004】
PCa工法は一般的に以下の手順で行われる。すなわち、まず目的の構造物を、運搬可能な大きさ、重さを考慮して同じ形状のピースに分割して製作図面を作成し、製作図面に従って必要な金型を製作する。そして、同じ金型でピースを繰り返し製作する。ピースの製作は、金型内に配筋、コンクリート打設、蒸気養生、脱型後仮置き等の工程により行い、製作したピースを施工現場に搬送し組立て、構造物を構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−326061号公報
【特許文献2】特開平11−300717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PCa工法は同じ形状のピースを多数製作し、組立てることで成り立つ施工方法である。組立てをスムーズに行うため、ピースには非常に厳しい寸法精度が求められる。特に接合面に関する要求精度は厳しく、精度が悪いとピース間に隙間ができる等の問題が生じる。
【0007】
そのため、金型には厳しい製作精度が要求されるとともに、多数の繰り返し使用、特にコンクリートの打設、振動締固め、金型の組立て、解体時に変形しない丈夫さが求められ、非常に高価である。
【0008】
また、効率性の観点から金型を短時間で繰り返し転用可能とするため、養生時には、蒸気を使用した促進養生が行われる。そのため、蒸気養生設備が必要であり、養生のためのコストもかかる。また、ピースの脱型は必要最小限の強度が得られる材齢(2日程度)で行うので、所望の強度から少しでも不足する場合には、ピースに角部の欠けやひび割れの発生などの破損が生じやすい。
【0009】
また、上記のように金型を短時間で繰り返し転用しても、1個のピースを2日程度で製作する場合、一般的に行われている200〜300回の金型転用の場合、ピースの製作に1年〜1年半程度の長い時間を必要とする。コンクリートの養生後は、金型を解体してピースを取りだし仮置きヤードへ移動するが、製作したピースを保管するために広い仮置きヤードが長期間必要になる問題もある。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、容易にピースが製作でき、ピースの施工も容易なプレキャストコンクリート部材の製作方法および施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するための第1の発明は、所定領域に複数のプレキャストコンクリート部材を配置するプレキャストコンクリート部材の施工方法であって、前記所定領域に対応する平面形状の外周部型枠の内側に中仕切り型枠を設け、コンクリートを打設して製作した複数のプレキャストコンクリート部材を、前記外周部型枠内における配置に従って前記所定領域の同じ位置に配置し、前記中仕切り型枠の設置と前記コンクリートの打設を複数段にわたって繰り返し、一の段で製作された前記プレキャストコンクリート部材の配置される領域は、前記領域における前記プレキャストコンクリート部材の配列方向の面を見たときに、他の段で製作された前記プレキャストコンクリート部材の配置される領域とは異なることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の施工方法である。
【0012】
第1の発明によれば、構造物の一領域分のピースを平面上で一体的に作るため、これらのピースを製作時と同じ配置で当該領域に敷き詰めれば、中仕切り型枠に若干の位置ずれ、傾斜などの誤差があってピースの形状に差異があったとしても、ピースをスムーズに隙間なく設置することができる。従って、中仕切り型枠には大きな剛性は必要なく、また精度もあまり厳しくする必要は無いので容易に製作できる。
【0013】
また、構造物の一領域に設置する多数のピースが1度に製作できるので、その分養生期間を長くとることができ、打設したコンクリートをその位置に仮置きして通常の散水養生を行うことで十分な強度が得られる。従って蒸気養生などの促進養生が必要でなく、養生設備、蒸気の製造などの費用も不要である。さらに、施工現場内、あるいは施工現場近傍の空地などでピースを製作することもでき、ピースの運搬コストを格段に安くできる利点もある。
【0014】
また従来のPCa工法のように金型も使用せず日々の脱型作業も不要であり、製作コストは通常のコンクリートあるいは鉄筋コンクリートと同程度となり、従来のPCa工法に比べてかなり安くなる。また、工場製作のように専門の職人も必要としない。
【0015】
中仕切り型枠の設置とコンクリートの打設を複数段にわたって繰り返すことにより、各段のコンクリートを打ち重ね、1段のコンクリートを構造物の一領域分のピースとして数領域分のピースを同じ場所で順次製作できる。各段の打ち重ねは1〜2週間程度の間隔でできることから短時間で大量のピースを製作できる。また、各段のコンクリートはその位置でそのまま仮置き、養生することができ、大きな仮置きヤードは不要である。
【0016】
前記中仕切り型枠で仕切られた各箇所のコンクリートに、前記外周部型枠内における配置に関する情報を記録することが望ましい。
これにより、製作時の配置に従って施工現場にてピースを設置するのが容易になる。
【0017】
前記中仕切り型枠で仕切られた箇所の一部に先にコンクリートの打設を行い、その後、残りの箇所にコンクリートの打設を行うことが望ましい。
これにより、中仕切り型枠の転用が容易になり、低コストにピースが製作できる。
【0018】
前記中仕切り型枠の下部に、凹凸を有する底型枠を設けることが望ましい。
これによりピースに凹凸を設け、施工現場での設置時に下層と噛み合わせて一体性を高めたり、ピースに意匠を施したりできる。
【0019】
前記底型枠による凹凸が形成された前記プレキャストコンクリート部材は、例えば凹凸を下にして配置する
前記外周部型枠の高さは、前記複数段のコンクリートの高さに対応することも望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、容易にピースが製作でき、ピースの施工も容易なプレキャストコンクリート部材の製作方法および施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】防潮堤2を示す図
図2】製作ヤード21を示す図
図3】型枠等の配置を示す図
図4】コンクリート50の打設について説明する図
図5】中仕切り型枠24の除去について説明する図
図6】コンクリート50の打設について説明する図
図7】各段のコンクリート50の打設について説明する図
図8】ピース1の設置を示す図
図9】ピース1aを示す図
図10】中仕切り型枠24a、24bを示す図
図11】中仕切り型枠24cを示す図
図12】コンクリート50の打設について説明する図
図13】底型枠21bを示す図
図14】擁壁2aを示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(1.ピースを用いて構築した構造物)
図1に、プレキャストコンクリート部材であるピース1を用いて構築した構造物の例である防潮堤2を示す。図1(a)は防潮堤2の鉛直方向断面、図1(b)は防潮堤2の正面を示す。
【0024】
防潮堤2では、地盤法面の縁石コンクリート11で囲まれた矩形状の領域10(所定領域)内に、矩形状の複数のピース1が敷き詰められる。領域10の大きさは、例えば図1(b)の縦方向に対応する法幅を15m、図1(b)の横方向に対応する法長を30mなどとし、これを多数のピース1の組み合わせで形成する。ただし、領域10の大きさはこれに限らない。
【0025】
(2.ピースの製作方法)
次に、図2図7を参照してピース1の製作方法について説明する。
【0026】
本実施形態では、防潮堤2の施工現場やコンクリート製造現場の位置を勘案して適当な地点にピース1の製作地点を定める。そして、当該製作地点においてピース1を製作するための製作ヤードを構築する。図2は製作ヤード21を示す図であり、図2(a)は製作ヤード21の鉛直方向断面図、図2(b)は製作ヤード21を上から見た図である。図2(a)は図2(b)の線A−Aにおける断面を示す。以下の図3〜6においても同様である。
【0027】
ここでは、製作ヤード21をコンクリートにより地盤200の水平面に造成し、基盤面(コンクリート表面)の不陸は1〜2cm以下とする。
【0028】
次に、製作ヤード21に型枠等の配置を行う。本実施形態では、図3(a)、(b)に示すように、製作ヤード21の基盤面に外周部型枠22を設置する。外周部型枠22の平面形状は、領域10に対応するものとする。
【0029】
また、外周部型枠22の内側で基盤面に剥離シートや剥離剤などによる剥離層21aを形成し、剥離層21aの上に矩形格子状の中仕切り型枠24を配置する。
【0030】
必要に応じて、外周部型枠22の内側面や中仕切り型枠24の側面などに上記と同様の剥離層(不図示)を形成することも可能である。また、ピース1を鉄筋コンクリート製とする場合には中仕切り型枠24内の必要箇所に配筋を行う。
【0031】
外周部型枠22についてはある程度厳しい精度が必要なことから、外周部型枠22の外側に鋼材等で組立てた支保工23を設け、支保工23によって外周部型枠22を支持する。これにより外周部型枠22を剛性の大きい変形し難い型枠とし、精度を向上させる。中仕切り型枠24には外周部型枠22ほどの精度は不要なので、それ程大きい剛性を求めなくてもよい。
【0032】
次に、図4(a)、(b)に示すように、中仕切り型枠24で仕切られた箇所の一部にコンクリート50を打設する。ここでは奇数列の格子内にコンクリート50を打設するものとする。コンクリート50はバイブレータにより締め固め、表面は金鏝仕上げとする。その後、一般的な養生である湿潤養生を行う。湿潤養生としては、例えばコンクリート50の上面に養生用のマットを敷いて散水養生を行う。養生期間は例えば1週間程度とする。
【0033】
コンクリート50の養生後、図5(a)、(b)に示すように、奇数列の格子側面の中仕切り型枠24を除去して、代わりに剥離シートや剥離剤による剥離層25を形成する。除去した中仕切り型枠24は、後述する2段目以降のコンクリート50の打設時に転用可能である。なお、中仕切り型枠24を残置することも可能である。
【0034】
次いで、図6(a)、(b)に示すように、残りの箇所にコンクリート50を打設する。上記と同じくコンクリート50はバイブレータにより締め固め、表面は金鏝仕上げとする。
【0035】
その後、新たに打設した1段目のコンクリート50の養生を追加して行う。養生については、前記と同様に行うことができる。
【0036】
1段目の全てのコンクリート50の養生完了後、図7(a)に示すようにコンクリート50の上面に先程と同様の剥離層21aを形成する。そして図7(b)に示すように、上記の剥離層21aの上に1段目と同様の中仕切り型枠24を設置する。
【0037】
次いで、1段目と同様の手順で2段目のコンクリート50を打設し、養生を行う。コンクリート50の養生完了後、2段目のコンクリート50の上面に剥離層21aを形成する。この状態を図7(c)に示す。
【0038】
上記の手順を繰り返し、必要な段数分のコンクリート50を打設して養生を行う。ここでは、図7(d)に示すように3段目のコンクリート50まで打設するものとする。作業性の関係から、段数は10段程度以下、全段の高さは5m程度以下とするとよい。なお、本実施形態では、最初に全段のコンクリート50の高さ分の外周部型枠22を設置し、その内側で複数段にコンクリート50を打設したが、各段のコンクリート50を打設する際に都度各段の外周部型枠22を積み上げることも可能である。
【0039】
最後に、外周部型枠22や残った中仕切り型枠24、及び必要に応じて剥離層21a、25等をピース搬出時に除去すると、コンクリート50により製作された、領域10に敷き詰める複数のピース1が得られる。ここでは3段にコンクリート50を打設したので、3つの領域10分のピース1が得られる。
【0040】
なお、ピース1の製作時には、中仕切り型枠24で区切られた各箇所のコンクリート50の上面等に、ピース1の識別番号の他、外周部型枠22内での位置や向きなど配置に関する情報を記して記録しておく。なお、配置に関する情報は上記に限らず、外周部型枠22内での配置に関係づけられる情報、および必要な場合には、ピース1を設置する領域10に関係づけられる情報であればよい。
【0041】
(3.ピース1の施工方法)
前記した防潮堤2の構築時には、ピース1を施工現場まで搬送し、コンクリート50によるピース1の製作時の配置(図6(b)等参照)に従って、各ピース1を領域10内に敷き詰めて設置する。すなわち、各ピース1は、前記した配置に関する情報を参照し、製作時の平面上の位置および向きと同じ位置と向きで、領域10内に配置される。
【0042】
このように製作時のピース1の配置と設置時のピース1の配置を合わせる場合、図8(a)に示すようにピース1の製作時にコンクリート50を打設する際、中仕切り型枠24が多少変形していても、設置時には図8(b)に示すように隣り合うピース1同士が噛みあい、設置作業や構造物としての強度に支障はない。一方、これらの配置を合わせない場合、図8(c)に示すようにピース1を設置する際に隙間ができたりして設置作業や構造物の強度に支障が生じる恐れがある。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、防潮堤2の一領域10分のピース1を平面上で一体的に作るため、これらのピース1を製作時と同じ配置で防潮堤2の領域10に敷き詰めれば、中仕切り型枠24に若干の位置ずれ、傾斜などの誤差があってピース1の形状に差異があったとしても、ピース1をスムーズに隙間なく設置することができる。従って、中仕切り型枠24には大きな剛性は必要なく、また精度もあまり厳しくする必要は無いので容易に製作できる。
【0044】
また領域10に設置する多数のピース1が1度に製作できるので、その分養生期間を1週間程度と長くとることができ、打設したコンクリート50をその位置に仮置きして通常の散水養生を行うことで十分な強度が得られる。従って蒸気養生などの促進養生が必要でなく、養生設備、蒸気の製造などの費用も不要である。さらに、施工現場内、あるいは施工現場近傍の空地などでピース1を製作することもでき、運搬コストを格段に安くできる利点もある。
【0045】
また従来のPCa工法のように金型も使用せず日々の脱型作業も不要であり、製作コストは通常のコンクリートあるいは鉄筋コンクリートと同程度となり、従来のPCa工法に比べてかなり安くなる。また、工場製作のように専門の職人も必要としない。
【0046】
また、本実施形態では中仕切り型枠24の設置とコンクリート50の打設を繰り返して複数段にコンクリートを打ち重ねるので、1段のコンクリート50を防潮堤2の一領域10分のピース1として数領域10分のピース1を同じ場所で順次製作できる。各段の打ち重ねは1〜2週間程度の間隔でできることから短時間で大量のピース1を製作できる。また、各段のコンクリート50はその位置でそのまま仮置き、養生することができ、大きな仮置きヤードは不要である。
【0047】
また、本実施形態では、中仕切り型枠24で仕切られた各箇所のコンクリート50に、外周部型枠22内における位置や向きなど配置に関する情報を記録することで、製作時の配置に従って施工現場にてピース1を設置するのが容易になる。上記の情報は、コンクリート50に直接記載するほか、図9に示すように、コンクリート50を打設する際にこれらの情報を入力したICタグ14を埋め込んでピース1aを製作してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、中仕切り型枠24で仕切られた箇所の一部で先にコンクリート50の打設を行い、その後、残りの箇所でコンクリート50の打設を行う。これにより、中仕切り型枠24の転用が容易になりさらに低コストにピース1を製作できる。しかしながら、中仕切り型枠24で仕切られた全箇所に同時にコンクリート50を打設することも可能である。
【0049】
また、本実施形態ではピース1を矩形状とし、中仕切り型枠24を矩形格子状としたが、ピースの形状はこれに限らず、中仕切り型枠はピースの形状に合わせて様々な平面形状、鉛直面形状の物を適用可能である。
【0050】
例えば図10(a)の中仕切り型枠24aは鉛直面において凹凸を有する例であり、図10(b)の中仕切り型枠24bは鉛直面をかぎ状に形成した例である。これにより、ピースの鉛直面に凹凸形状やかぎ形状を形成することができる。
【0051】
さらに、図11の中仕切り型枠24cは平面において凹凸を有する例である。この場合では、ピースの平面に凹凸形状を形成することができる。
【0052】
このようにしてピースの鉛直面や平面に凹凸形状やかぎ形状を形成することで、ピースの設置時に隣り合うピース同士を噛みあわせて強固な構造とできる。
【0053】
この他、中仕切り型枠をひし形や三角形等各種の多角形格子状とし、ピースの平面を各種多角形状に形成することも可能である。また、中仕切り型枠を曲線状に配置を行うものとし、ピースの平面に円孤状や螺旋状の曲線を持たせることもできる。また、中仕切り型枠の格子形状を各箇所で変化させ、ピースの平面形状を1個1個異ならせることも可能である。
【0054】
また、本実施形態では、中仕切り型枠24において先に奇数列の格子内にコンクリート50を打設し、その後残りの箇所にコンクリート50を打設したが、これに限ることはない。例えば図12(a)に示すように、最初に中仕切り型枠24で千鳥状の位置にある格子内にコンクリート50を打設してもよい。この場合、コンクリート50の養生後、図12(b)に示すように全ての中仕切り型枠24を除去して代わりに剥離層25を形成し、図12(c)に示すように残った箇所にコンクリート50を打設する。
【0055】
さらに、本実施形態のピース1の下面や上面は平滑な面であるが、図13に示すように、中仕切り型枠24の下部の剥離層21aの代わりに、上面に凹凸を設けた底型枠21bを使用し、ピースの下面に凹凸を形成してもよい。ピースの下面に凹凸を形成することで、施工現場における設置時に下層と噛み合わせて一体性を高めることができるほか、ピースを上下逆に据え付けることで、凹凸を表面の意匠とするなど目的に応じた表面形状を与えることが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、構造物として防潮堤2の領域10の法面被覆コンクリートを構築する例を示したが、その適用対象はこれに限られず、様々な構造物に適用可能である。例えば図14に示す擁壁2aのように、コンクリート等で構築した基礎12上の地盤側面の領域10に、多数のピース1を敷き詰めるようなケースにも適用することも可能である。
【0057】
本発明は同じサイズの領域に、同じ厚さのピースを多数敷き詰めるような構造物の構築時に特に有利な方法であり、上記の他、それ程厳しい精度を求められない、直方体形状など同じ形状寸法の配管基礎等を大量に作るような場合にも適用可能である。
【0058】
また、施工現場にてピースの設置を行う際に吊り冶具等が必要な場合には、例えばコンクリート50の打設前に中仕切り型枠24内の必要箇所に上記治具を配置するとよい。また、ピースにプレストレスを導入するようなケースでは、緊張材を通すためのシース管等を中仕切り型枠24内に先に配置したうえでコンクリート50を打設することも可能である。
【0059】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0060】
1、1a:ピース
2:防潮堤
2a:擁壁
10:領域
14:ICタグ
21:製作ヤード
21a、25:剥離層
21b:底型枠
22:外周部型枠
23:支保工
24、24a、24b、24c:中仕切り型枠
50:コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14