(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の車両において、外部電源によりバッテリを充電している状態は、車両の走行準備が整っていない状態であると考えることができる。このような状態では、安全確保の観点から車両の発進を制限することが好ましい。特に勾配がある路面上で車両のバッテリを充電する際には、車両のずり下りによって車両が発進することが考えられるため、予め車両の発進を制限しておくことが望ましい。この点、上述したような走行インターロックシステムでは、平坦な路面での駐車を想定しているため、勾配がある路面上での車両のずり下がりの防止が十分でなく、車両の発進を適切に制限できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、外部電源によるバッテリの充電時において車両の発進を適切に制限することができる車両の走行インターロックシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両の走行インターロックシステムは、外部電源により充電可能なバッテリと、駆動源としてのモータと、を具備する車両において、走行インターロックを実施する走行インターロックシステムであって、バッテリが外部電源により充電中であることを検出する充電検出部と、車両が存在する路面の勾配を検出するための勾配検出部と、少なくとも充電検出部の検出結果及び勾配検出部の検出結果に基づいて、モータを制御するモータ制御部と、を備え、モータ制御部は、充電検出部でバッテリが充電中と検出され、且つ勾配検出部で勾配があると検出された場合、モータの駆動力を車両の車輪に伝達可能な駆動可能状態にて当該モータの回転数を0とする。
【0007】
この車両の走行インターロックシステムでは、例えば、坂道で外部電源によりバッテリを充電した際、充電検出部でバッテリが充電中と検出され、且つ勾配検出部で勾配があると検出されて、モータの駆動力を車両の車輪に伝達可能な駆動可能状態(以下、単に「駆動可能状態」ともいう)にてモータの回転数が0とされる。これにより、車輪の回転を制限し、車両のずり下がりを抑制することができる。すなわち、外部電源によるバッテリの充電時において車両の発進を適切に制限することが可能となる。
【0008】
また、車両の盗難に係る異常を検出する異常検出部をさらに備え、モータ制御部は、充電検出部でバッテリが充電中と検出され、且つ勾配検出部で勾配がないと検出された場合であって異常検出部で異常が検出された場合、駆動可能状態にて当該モータの回転数を0としてもよい。この場合、例えば、平坦な路面上において外部電源によるバッテリの充電中に盗難に係る異常が検出されると、車両が盗難されるおそれがあるとして、駆動可能状態にてモータの回転数が0とされ、車輪の回転が制限される。これにより、外部電源によるバッテリの充電時において車両の盗難防止効果を得ることができる。
【0009】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、モータは、自動変速機を介して車輪に接続されており、自動変速機の減速比を制御する自動変速機制御部をさらに備え、自動変速機制御部は、駆動可能状態として、モータと車輪との間の減速比が1より大きい減速比になるように自動変速機の減速比を設定してもよい。この場合、モータと車輪との間の減速比が1より大きい減速比になるように自動変速機の減速比が設定された駆動可能状態にて、モータの回転数が0とされる。よって、モータのトルクは自動変速機を介して増幅されて車輪に伝達されることから、車輪の回転を制限するためのモータのトルクが小さくなる。その結果、モータでの電力消費を抑えながら、車両の発進を適切に制限することが可能となる。
【0010】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、モータは、クラッチ部を介してエンジンに接続されており、クラッチ部のクラッチ接続を制御するクラッチ制御部をさらに備え、クラッチ制御部は、駆動可能状態として、クラッチ部のクラッチ接続を接続状態としてもよい。この場合、クラッチ部のクラッチ接続が接続状態とされた駆動可能状態にて、モータの回転数が0とされる。よって、エンジンに係る回転抵抗が車両の車輪に伝達されることから、車輪の回転を制限するためのモータのトルクが小さくなる。その結果、モータでの電力消費を一層抑えながら、車両の発進を適切に制限することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部電源によるバッテリの充電時において車両の発進を適切に制限することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る車両の走行インターロックシステムを示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行インターロックシステム100は、外部電源10によるバッテリ5の充電中において車両Vの発進を制限するためのシステムである。走行インターロックシステム100は、Gセンサ8と、イモビライザ9と、ECU(Electronic Control Unit)20とを備えている。
【0015】
車両Vは、駆動源としてのエンジン1及びモータ2と、エンジン1及びモータ2の駆動力を伝達する自動変速機3及びクラッチ部4と、バッテリ5と、充電器6と、インバータ7とを具備し、プラグインハイブリッド車両として構成されている。適用される車両Vとしては、例えばバスやトラック等の商用車が挙げられる。なお、車両Vは、特に限定されるものではなく、例えば大型車両や中型車両、普通乗用車、小型車両又は軽車両等の何れであってもよい。
【0016】
エンジン1は、車両Vの車輪14を駆動するほか、発電機としてのISG(Integrated Starter Generator、図示せず)を駆動する機能を有する。エンジン1としては、例えばディーゼルエンジンやガソリンエンジン等が採用されている。エンジン1は、車両Vの状況等に基づいて適宜運転又は停止され、例えばバッテリ5が外部電源10により充電中(以下、単に「バッテリ5が充電中」ともいう)には停止される。エンジン1の出力軸には、クラッチ部4が接続されている。
【0017】
モータ2は、車両Vの車輪14を駆動する電動機としての機能を有している。モータ2は、インバータ7を介してバッテリ5及び充電器6と電気的に接続されている。このモータ2は、バッテリ5又は外部電源10からの電力が利用されて作動する。モータ2は、ECU20に電気的に接続されており、その作動がECU20により制御される。モータ2は、クラッチ部4を介してエンジン1に接続されている。また、モータ2は、自動変速機3、プロペラシャフト11、デファレンシャルギア12及びドライブシャフト13を介して、車輪14と接続されている。
【0018】
自動変速機3及びクラッチ部4は、機械式自動変速装置(AMT:Automated Manual Transmission)を構成するものであり、自動変速機3のギア位置の変更及びクラッチ部4のクラッチ接続の制御等の変速動作を自動で行う。自動変速機3は、モータ2とプロペラシャフト11との間に配置されており、エンジン1及びモータ2の駆動力(トルク)を増幅して車輪14に伝達する。自動変速機3は、ECU20に電気的に接続されており、そのギア位置がECU20により自動で制御される。
【0019】
自動変速機3は、入力軸の駆動力が出力軸に伝達されるギア位置として、前進用のギア位置と、後進用のギア位置とを有している。また、自動変速機3は、入力軸の駆動力が出力軸に伝達されない中立ギア位置を有している。自動変速機3のギア位置としては、例えば、1速、2速、3速、4速、5速(前進用のギア位置)、バック(後進用のギア位置)及びニュートラル(中立ギア位置)等がある。
【0020】
自動変速機3において、前進用及び後進用の各ギア位置では、入力軸の駆動力が出力軸に伝達可能となる。このように、自動変速機3のギア位置が前進用及び後進用のギア位置に設定されている場合には、モータ2の駆動力が車輪14に伝達可能な駆動可能状態となる。また、前進用及び後進用の各ギア位置では、自動変速機3の入力軸の回転数と出力軸との回転数の比(減速比)が1より大きい減速比に設定される。このような減速比では、出力軸の回転数は、入力軸の回転数未満となり、入力軸でのトルクは、自動変速機を介して増幅されて出力軸に伝達される。
【0021】
クラッチ部4は、エンジン1とモータ2との間に配置されており、エンジン1の駆動力を伝達又は切断する機械要素である。クラッチ部4は、例えば複数の円板状のクラッチディスクを有している。クラッチ部4は、ECU20に電気的に接続されており、そのクラッチ接続がECU20により自動で制御される。このクラッチ部4は、クラッチ部4のクラッチ接続として、接続状態と切断状態とを有している。
【0022】
バッテリ5は、電力を蓄える二次電池である。バッテリ5としては、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池及び電気二層コンデンサが挙げられる。バッテリ5は、充電器6と電気的に接続されており、外部電源10により充電可能に構成されている。また、バッテリ5は、インバータ7を介してモータ2と電気的に接続されている。バッテリ5は、外部電源10による充電中でない場合、バッテリ5が蓄えている電力をモータ2に供給可能とされている。
【0023】
充電器6は、ECU20に電気的に接続されており、バッテリ5が充電中である場合、その旨の信号をECU20に送信する。バッテリ5が充電中である場合としては、例えば充電プラグ10bが車両側プラグ10cに接続された場合や、充電器6において充電に係る電流が検出された場合が含まれる。
【0024】
Gセンサ8は、車両Vに作用する加速度を検出する加速度センサであり、ここでは、車両Vの前後方向の加速度を検出する。Gセンサ8は、ECU20に電気的に接続されており、その検出値をECU20へ出力する。なお、Gセンサ8は、例えば車両Vの上下方向の加速度を検出してもよい。
【0025】
イモビライザ9は、例えば車両Vに不正なキーが用いられる場合等に、盗難に係る異常がある旨を判定する。具体的には、イモビライザ9は、IDコードが書き込まれたトランスポンダを内蔵するキーを認識し、そのIDコードと車両V側のIDコードとを電子的に照合し、互いのIDコードが一致しない場合には、盗難に係る異常があると判定する。イモビライザ9は、ECU20に電気的に接続されており、盗難に係る異常があると判定した場合には、その旨の信号をECU20へ送信する。
【0026】
外部電源10は、バッテリ5を充電する電源であり、充電設備10aと充電プラグ10bとを備えている。外部電源10では、充電プラグ10bが車両側プラグ10cに接続されることで、充電設備10aと充電器6とが電気的に接続される。このようにして、外部電源10は、充電設備10aから充電器6を介してバッテリ5に電力を供給する。外部電源10は、バッテリ5を充電している場合、充電設備10aからモータ2に電力を直接供給することができる。
【0027】
ECU20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータにより構成されている。ECU20は、モータ2、自動変速機3及びクラッチ部4に電気的に接続されており、外部電源10によるバッテリ5の充電中において、車両Vの発進を制限するための制御(詳しくは、後述)を実行する。ECU20は、その機能的構成として、充電検出部21と、勾配検出部22と、異常検出部23と、モータ制御部24と、自動変速機制御部25と、クラッチ制御部26とを含んでいる。
【0028】
充電検出部21は、バッテリ5が充電中であることを検出する。ここでの充電検出部21は、バッテリ5が充電中である旨の信号を充電器6から受信することにより、バッテリ5が充電中であると検出する。充電検出部21の検出結果に係る信号は、モータ制御部24と、自動変速機制御部25と、クラッチ制御部26とに出力される。
【0029】
勾配検出部22は、車両Vが存在する路面(以下、単に「路面」ともいう)の勾配を検出する。ここでの勾配検出部22は、車両Vに作用する加速度の検出値をGセンサ8から受信し、当該検出値に基づいて車両Vの車体の傾斜(車体の姿勢)を検出することにより、路面に勾配があるか否かを検出すると共に、路面の勾配が上り勾配か下り勾配かを検出する。勾配検出部22の検出結果に係る信号は、モータ制御部24と、自動変速機制御部25と、クラッチ制御部26とに出力される。
【0030】
異常検出部23は、車両Vの盗難に係る異常を検出する。ここでの異常検出部23は、車両Vの盗難に係る異常がある旨の信号をイモビライザ9から受信することにより、車両Vの盗難に係る異常を検出する。異常検出部23の検出結果に係る信号は、モータ制御部24と、自動変速機制御部25と、クラッチ制御部26とに出力される。
【0031】
モータ制御部24は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配があると検出された場合、駆動可能状態にて当該モータ2の回転数を0とする制御を実施する。また、モータ制御部24は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配がないと検出された場合であって異常検出部23で異常が検出された場合、駆動可能状態にて当該モータ2の回転数を0とする制御を実施する。モータ制御部24は、モータ2の回転数を0とする制御として、例えばモータ2へ出力する回転指令値を0とする制御を実行する。なお、モータ2の回転数を0とするとは、厳密に回転数が0となっている態様に限られず、例えば、モータ2の回転数がほぼ0となっている態様や、モータ制御部24によってモータ2の回転数が0となるようにモータ2が制御されている状況も含まれる。
【0032】
自動変速機制御部25は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配があると検出された場合、自動変速機3のギア位置を前進用のギア位置(例えば1速)又は後進用のギア位置(バック)に設定する。ここでの自動変速機制御部25は、路面の勾配が上り勾配である場合、自動変速機3のギア位置を前進用のギア位置に設定し、路面の勾配が下り勾配である場合、自動変速機3のギア位置を後進用のギア位置に設定する。また、自動変速機制御部25は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配がないと検出された場合であって異常検出部23で異常が検出された場合、自動変速機3のギア位置を前進用のギア位置(例えば1速)に設定する。
【0033】
クラッチ制御部26は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配があると検出された場合、駆動可能状態として、クラッチ部4のクラッチ接続を接続状態とする。また、クラッチ制御部26は、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配がないと検出された場合であって後述する異常検出部23で異常が検出された場合、駆動可能状態として、クラッチ部4のクラッチ接続を接続状態とする。なお、クラッチ部4におけるクラッチ接続の接続状態では、エンジン1の駆動力が車輪14に伝達可能であればよく、例えばクラッチディスクが互いに滑りながら駆動力が伝達されるいわゆる半クラッチ状態も含まれる。
【0034】
次に、走行インターロックシステム100における発進の制限の処理について、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、車両Vの走行インターロックシステム100の動作を説明するフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態では、ECU20により以下の処理が実行される。
【0035】
すなわち、まず、バッテリ5が充電中であるか否かが判定される(S1)。上記S1では、充電検出部21においてバッテリ5が充電中である旨の信号について充電器6から受信されたか否かによって判定される。上記S1にてバッテリ5が充電中でないと判定された場合、そのまま処理が終了される。
【0036】
上記S1にてバッテリ5が充電中であると判定された場合、路面に勾配があるか否かが判定される(S2)。上記S2では、勾配検出部22で検出された車両Vの車体の傾斜に基づいて、路面に勾配があるか否かが判定される。上記S2にて路面に勾配があると判定された場合、路面の勾配が上り勾配か下り勾配かが判定される(S3)。
【0037】
上記S3にて路面の勾配が下り勾配であると判定された場合、自動変速機制御部25により自動変速機3のギア位置が後進用のギア位置(バック)に設定され、クラッチ制御部26によりクラッチ部4のクラッチ接続が接続状態とされる駆動可能状態にて、モータ2の回転数が0とされ、車両Vの発進が制限される(S4)。上記S4の後、処理が終了される。
【0038】
一方、上記S3にて路面の勾配が上り勾配であると判定された場合には、自動変速機制御部25により自動変速機3のギア位置が前進用のギア位置(例えば1速)に設定され、クラッチ制御部26によりクラッチ部4のクラッチ接続が接続状態とされる駆動可能状態にて、モータ2の回転数が0とされ、車両Vの発進が制限される(S5)。上記S5の後、処理が終了される。
【0039】
上記S2にて路面に勾配がないと判定された場合には、車両Vの盗難に係る異常が検出されているか否かが判定される(S6)。上記S6では、異常検出部23の検出結果に基づいて上記判定が行われる。上記S6にて車両Vの盗難に係る異常が検出された場合、上記S5の処理が実行され、その後、処理が終了される。一方、上記S6にて車両Vの盗難に係る異常が検出されていないと判定された場合、そのまま処理が終了される。
【0040】
なお、上記S4及びS5の後には、モータ制御部24によってモータ2の回転数が0に維持(ロック)されて車両Vの発進の制限が維持されるが、例えば車両Vのブレーキペダルが踏まれた場合や車両Vのパーキングブレーキが作動とされた場合等、モータ2によらないで車両Vの発進が制限される場合には、モータ2の回転数を0とする制御をモータ制御部24により解除(終了)してもよい。
【0041】
以上、本実施形態では、坂道で外部電源10によりバッテリ5を充電した際、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配があると検出されて、駆動可能状態にてモータ制御部24によってモータ2へ出力される回転指令値が0と制御され、モータ2の回転数が0とされる。これにより、モータ2によって車輪14の回転が制限され、車両Vのずり下がりが抑制される。すなわち、坂道で外部電源10によるバッテリ5の充電時において車両Vの発進を適切に制限することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、平坦な路面上において外部電源10によるバッテリ5の充電中に盗難に係る異常が検出されると、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配がないと検出されると共に異常検出部23で異常が検出される。この場合、車両Vが盗難されるおそれがあるとして、駆動可能状態にてモータ制御部24によってモータ2への回転指令値が0と制御され、モータ2の回転数が0とされる。これにより、モータ2によって車輪14の回転が制限され、外部電源10によるバッテリ5の充電時において車両Vの盗難防止効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、モータ2は、自動変速機3を介して車輪14に接続されている。この場合、充電検出部21でバッテリ5が充電中と検出され、且つ勾配検出部22で勾配があると検出された場合、自動変速機3のギア位置が前進用のギア位置(例えば1速)又は後進用のギア位置(バック)に設定される。すなわち、自動変速機3の減速比が1より大きい減速比に設定された駆動可能状態にてモータの回転数が0とされる。モータ2のトルクは自動変速機3を介して増幅されて車輪14に伝達されることから、モータ2の回転数が0とされる際、車輪14の回転を制限するためのモータ2のトルクが小さくなる。その結果、モータ2での電力消費を抑えながら、車両Vの発進を適切に制限することが可能となる。
【0044】
なお、上述のように、例えば勾配検出部22によって車両Vが存在する路面の勾配が上り勾配であると判定された場合には、自動変速機3のギア位置は前進用のギア位置に変更される。この場合、自動変速機3を介してモータ2のトルクを増幅する観点からは、自動変速機3の減速比が大きいほど、モータ2のトルクが大きく増幅されて車輪14に伝達されるため有利である。よって、この場合、自動変速機3における前進用のギア位置として、自動変速機3における減速比が最も大きな前進用のギア位置(例えば1速)が設定されると、上記作用効果が一層好適に奏される。
【0045】
また、本実施形態では、モータ2は、クラッチ部4を介してエンジン1に接続されている。この場合、クラッチ部4のクラッチ接続が接続状態とされた駆動可能状態にてモータの回転数が0とされることで、停止されたエンジン1に係る回転抵抗も車両Vの車輪14に伝達されることから、モータ2の回転数が0とされる際、車輪14の回転を制限するためのモータ2のトルクが小さくなる。その結果、モータ2での電力消費を一層抑えながら、車両Vの発進を適切に制限することが可能となる。
【0046】
なお、例えば坂道で車両Vのずり下がりを抑制する場合、モータ2の回転数を0とするためには、モータ2では一定の消費電力が発生する。この点、本実施形態では、バッテリ5が外部電源10により充電されて電力がモータ2に供給されることから、外部電源10からの電力を利用してモータ2を作動できるため、バッテリ5に蓄えられた電力の消費が抑制される。その結果、バッテリ5に蓄えられた電力の残量にかかわらず、上記作用効果が好適に奏される。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態のモータ2は、自動変速機3を介して車輪14に接続されていると共にクラッチ部4を介してエンジン1に接続されているが、モータ2が配置される箇所は上記実施形態に限られない。例えば、モータ2は、自動変速機3を介さずに車輪14を駆動する箇所に配置されてもよいし、エンジン1のように自動変速機3及びクラッチ部4を介して車輪14に接続されていてもよい。要は、モータ2の回転数が0とされる際に、モータ2の駆動力を車両Vの車輪14に伝達可能な駆動可能状態が実現できれば、モータ2は様々な箇所に配置されてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、外部電源10は充電プラグ10bを備えており、有線の形態による充電が行われるものであったが、例えば、外部電源10は充電プラグ10bを備えず、無線の形態により遠隔的に充電が行われるものであってもよい。また、上記実施形態では、外部電源10による充電中において外部電源10からの電力がモータ2に直接的に供給されるが、例えば、外部電源10からの電力が一旦バッテリ5に供給され、その電力がバッテリ5からモータ2に供給されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、自動変速機制御部25により設定される自動変速機3の前進用のギア位置の例として1速を示したが、そのギア位置は上記実施形態での例に限られない。要は、モータ2と車輪14との間の減速比(総減速比)が1より大きい減速比となるギア位置であれば、前進用のギア位置として1速以外のギア位置が設定されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、自動変速機3として機械式自動変速装置(AMT)が用いられていたが、他の種類の自動変速機を用いてもよい。例えば、オートマチックトランスミッション(AT)であってもよいし、無段変速機(CVT)であってもよい。また、クラッチ部4は、複数の円板状のクラッチディスクを有する機械要素に限られない。クラッチ部4は、クラッチ部4のクラッチ接続として接続状態と切断状態とを有していればよく、例えば直結用クラッチを有するトルクコンバータであってもよい。
【0052】
また、上記S6にて車両Vの盗難に係る異常が検出されていると判定された場合の駆動可能状態として、自動変速機3のギア位置が前進用のギア位置(例えば1速)に設定される例を示したが、この場合、上記S2にて路面に勾配がないと判定されているため、自動変速機3のギア位置が後進用のギア位置(バック)に設定されてもよい。