(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)>
塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)としては、MgSO
4・5Mg(OH)
2・3H
2Oで表されるウイスカ状繊維を用いることができる。塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の平均繊維長は、8〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の平均繊維径は、0.3〜1.0μmであることが好ましく、0.5〜0.8μmであることがより好ましい。ここで、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の平均繊維長及び平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による拡大画像から測定した繊維長及び繊維径の平均値を意味する。
【0010】
塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の市販品としては、宇部マテリアルズ株式会社製のモスハイジ(登録商標)が挙げられる。
【0011】
<高級脂肪酸(B)>
高級脂肪酸(B)とは、炭素数12以上の飽和又は不飽和脂肪酸をいう。高級脂肪酸(B)は、一塩基酸でも二塩基酸でもよいが、一塩基酸が好ましい。高級脂肪酸(B)の炭素数は、12〜24であることが好ましく、14〜20であることがより好ましく、16〜18であることがさらに好ましく、18であることが特に好ましい。
【0012】
高級脂肪酸(B)の具体例としては、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)等の飽和脂肪酸;パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、バクセン酸(11−オクタデセン酸)、リノール酸(cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸)、α−リノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸)、γ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸)、エレオステアリン酸(9,11,13−オクタデカトリエン酸)、8,11−エイコサジエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、アラキドン酸(5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、ネルボン酸(cis−15−テトラドコサン酸)等の不飽和脂肪酸が挙げられる。なかでも、ステアリン酸又はリノレン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。高級脂肪酸(B)は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0013】
<ジエン系重合体(C)>
ジエン系重合体(C)としては、ブタジエン、イソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系モノマーを重合して得られる重合体を用いることができる。ジエン系重合体(C)は、ジエン系モノマーの単独重合体でもよく、2種以上のジエン系モノマーの共重合体でもよく、1種又は2種以上のジエン系モノマーと1種又は2種以上の他のモノマーとの共重合体でもよい。ジエン系重合体(C)は、未変性の状態でもよく、二塩化二硫黄、一塩化一硫黄、その他硫黄化合物、有機過酸化物、t−ブチルクロライド等で変性されていてもよい。
【0014】
ジエン系重合体(C)の具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系モノマー単独重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−クロロプレン共重合体等のスチレン−ジエン系モノマー共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体等のアクリロニトリル−ジエン系モノマー共重合体が挙げられる。なかでも、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のブタジエン含有重合体が好ましく、ポリブタジエンがより好ましい。ジエン系ゴム(C)は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0015】
ジエン系重合体(C)の数平均分子量(Mn)は、5.0×10
4〜30.0×10
4であることが好ましく、10.0×10
4〜25.0×10
4であることがより好ましく、15.0×10
4〜23.0×10
4であることがさらに好ましい。ジエン系重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、30.0×10
4〜75.0×10
4であることが好ましく、35.0×10
4〜65.0×10
4であることがより好ましくジエン系重合体(C)の、40.0×10
4〜55.0×10
4であることがさらに好ましい。ジエン系重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、2.00〜4.00であることが好ましく、2.40〜3.60であることがより好ましく、2.50〜3.20であることがさらに好ましい。なお、ジエン系重合体(C)のMn、Mw、及びMw/Mnは、GPC法(東ソー社製、商品名:HLC−8220)により、標準ポリスチレン換算により算出することができる。溶媒はテトラヒドロフランを用い、カラムはShodex製KF−805L(商品名)を2本直列に接続し、検出器は示唆屈折計(RI)を用いることができる。
【0016】
ジエン系重合体(C)中のシス構造の割合は、93.0〜99.0モル%以下であることが好ましく、94.0〜98.5ル%であることがより好ましく、95.0〜98.3モル%であることがさらに好ましい。ジエン系重合体(C)中のトランス構造の割合は、2.0モル%以下であることが好ましく、1.6モル%以下であることがより好ましく、1.3モル%以下であることがさらに好ましい。ジエン系重合体(C)中のトランス構造の割合はできるだけ少ない方が好ましいが、例えば1.0モル%以上でもよい。ジエン系重合体(C)中のビニル構造の割合は、2モル%以下であることが好ましく、1.8モル%以下であることがより好ましく、1.6モル%以下であることがさらに好ましい。なお、ジエン系重合体(C)中のビニル構造の割合はできるだけ少ない方が好ましいが、例えば1.0モル%以上でもよい。なお、ジエン系重合体(C)中のミクロ構造の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって算出することができる。具体的には、ミクロ構造に由来するピーク位置(cis:740cm
−1、vinyl:910cm
−1、trans:967cm
−1)の吸収強度比から、ポリマーのミクロ構造を算出することができる。
【0017】
ジエン系重合体(C)の5重量%トルエン溶液粘度(Tcp)は、30〜220cpであることが好ましく、35〜180cpであることがより好ましく、40〜120cpであることがさらに好ましい。なお、ジエン系重合体(C)のTcpは、ジエン系重合体(C)2.28gをトルエン50mlに溶解させた後、キャノンフェンスケ粘度計No.400を用いて25℃で測定することができる。標準液としては、粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用いることができる。
【0018】
ジエン系重合体(C)のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、36〜65であることが好ましく、38〜55であることがより好ましく、40〜45であることがさらに好ましい。なお、ジエン系重合体(C)のML
1+4,100℃は、JIS−K6300に準拠して100℃にて測定することができる。
【0019】
ジエン系重合体(C)は、例えば、遷移金属触媒、有機アルミニウム化合物、及び水からなる触媒系により製造できる。
【0020】
遷移金属触媒としては、コバルト触媒が好適である。コバルト触媒としては、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸(エチルヘキサン酸)コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩;コバルトビスアセチルアセトネート、コバルトトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、コバルト塩のピリジン錯体及びピコリン錯体等の有機塩基錯体又はエチルアルコール錯体などが挙げられる。なかでも、オクチル酸(エチルヘキサン酸)コバルトが好ましい。なお、上記の物性を持つポリブタジエンが得られるのであれば、ネオジム触媒やニッケル触媒等の他の触媒を用いることもできる。
【0021】
遷移金属触媒の使用量に関しては、所望の特性を持ったジエン系重合体(C)が得られるように適宜調整することができる。
【0022】
有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイド等のハロゲン含有有機アルミニウム化合物;ジアルキルアルミニウムハイドライド、アルキルアルミニウムセスキハイドライト等の水素化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。有機アルミニウム化合物は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0023】
トリアルキルアルミニウムの具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどが挙げられる。
【0024】
ジアルキルアルミニウムクロライドとしては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。ジアルキルアルミニウムブロマイドとしては、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキクロライドとしては、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキブロマイドとしては、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムジクロライドとしては、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムジブロマイドとしては、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドなどが挙げられる。
【0025】
ジジアルキルアルミニウムハイドライドとしては、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。アルキルアルミニウムセスキハイドライトとしては、エチルアルミニウムセスキハイドライド、イソブチルアルミニウムセスキハイドライドなどが挙げられる。
【0026】
有機アルミニウム化合物と水との混合比に関しては、所望の特性を持ったジエン系重合体(C)が得られやすいことから、アルミニウム/水(モル比)で1.0〜3であることが好ましく、1.05〜2.5であることがより好ましい。
【0027】
さらに、所望の特性を持ったジエン系重合体(C)を得るため、シクロオクタジエン、アレン、メチルアレン(1,2−ブタジエン)等の非共役ジエン類;エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン類などの分子量調節剤を用いることもできる。分子量調節剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0028】
重合方法には特に制限はなく、1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物モノマーを重合溶媒としながらモノマーを重合する塊状重合(バルク重合)や、モノマーを溶媒に溶解させた状態で重合する溶液重合等を適用できる。溶液重合で用いる溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素;ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶媒;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。なかでも、トルエン、シクロヘキサン、又はシス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合溶媒が好適に用いられる。
【0029】
重合温度は、−30〜150℃の範囲が好ましく、30〜100℃の範囲がより好ましく、所望の特性を持ったジエン系重合体(C)が得られやすいことから、70〜80℃がさらに好ましい。重合時間は、1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間の範囲がより好ましい。
【0030】
重合反応が所定の重合率に達した後、必要に応じて酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)等のフェノール系酸化防止剤、トリノニルフェニルフォスファイト(TNP)等のリン系酸化防止剤、並びに4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール及びジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。酸化防止剤の添加量は、ポリブタジエン100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましい。
【0031】
所定時間の重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、さらに酸化防止剤除去工程、洗浄工程、乾燥工程等の後処理を行うことで、所望の特性を持ったジエン系重合体(C)を製造することができる。
【0032】
<塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体>
塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と、高級脂肪酸(B)と、ジエン系重合体(C)とを含有するものである。このように高級脂肪酸(B)が存在するジエン系重合体(C)のマトリックス中に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)を分散させることで、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)が均一に分散した塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体を得ることができる。
【0033】
塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用可能であることが好ましい。すなわち、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)を高濃度で含有し、それをゴム成分や他の成分により希釈して塩基性硫酸マグネシウム含有ゴム組成物を製造可能なものであることが好ましい。この場合、その目的に応じて、ジエン系重合体(C)に対する塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)及び高級脂肪酸(B)の含有量を適宜調整することが好ましい。
【0034】
塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の含有量は、ジエン系重合体(C)100重量部に対して、1〜300重量部とすることが好ましく、10〜100重量部とすることがより好ましく、30〜70重量部とすることがさらに好ましく、40〜60重量部とすることが特に好ましい。塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の含有量を1重量部以上とすることで、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用しやすくなる。一方、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の含有量を300重量部以下とすることで、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)が高度に分散しやすくなる。
【0035】
高級脂肪酸(B)の含有量は、ジエン系重合体(C)100重量部に対して、0.01〜20重量部とすることが好ましく、0.1〜10重量部とすることがより好ましく、0.5〜5重量部とすることがさらに好ましく、1〜3重量部とすることが特に好ましい。高級脂肪酸(B)の含有量を0.01重量部以上とすることで、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)が高度に分散しやすくなる。一方、高級脂肪酸(B)の含有量を20重量部以下とすることで、ゴム組成物としたときの補強効果が得られやすくなる。
【0036】
塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。ただし、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用することを考慮すると、塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、ジエン系ゴムや、上記3成分以外で通常ゴム業界で用いられる配合剤を含まないことが好ましい。上記3成分以外で通常ゴム業界で用いられる配合剤としては、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華等が挙げられる。すなわち、塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と、高級脂肪酸(B)と、ジエン系重合体(C)とからなることが好ましい。
【0037】
塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体は、ジエン系ゴムと、必要に応じてシランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華等の常ゴム業界で用いられる配合剤と混合することで、ゴム組成物とすることができる。こうすることで、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)が均一に分散したゴム組成物を得ることができる。
【0038】
<塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体の製造方法>
塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体の製造方法としては、ジエン系重合体中に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維が均一に分散できる方法を適宜選択することができる。その具体例としては、(a)塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と高級脂肪酸(B)とジエン系重合体(C)とを溶媒(S)に分散・溶解させた混合液(M)を調製する工程と、(b)混合液(M)から塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体を単離する工程とを有する方法が挙げられる。
【0039】
塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)は、含水無機短繊維凝集体(ケーキ)の状態のものを用いることもできる。含水無機短繊維凝集体は、無機短繊維を水に分散させて調製した原料スラリーを、濾過などの通常の脱水操作を用いることにより得ることができる。含水無機短繊維凝集体の形状には特に制限はなく、シート状であっても、塊状であってもよい。なお、含水無機短繊維凝集体内の塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の配向は、二次元的に揃っている必要はなく、三次元的にランダムであってよい。
【0040】
工程(a)で用いる溶媒(S)としては、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と高級脂肪酸(B)とジエン系重合体(C)を分散又は溶解させるものであればよいが、脂肪族炭化水素溶媒若しくは極性溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることが好ましい。脂肪族炭化水素溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の飽和脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒等のプロトン性極性溶媒が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素溶媒又はプロトン性極性溶媒が好ましく、ヘキサン又はテトラヒドロフランが好ましい。溶媒(S1)は、1種を単独で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0041】
溶媒(S)の使用量は、適宜設定することができるが、ジエン系重合体(C)の濃度が1〜20重量%となる量とすることが好ましく、3〜15重量%となる量とすることがより好ましく、5〜10重量%となる量とすることがさらに好ましい。
【0042】
特に、工程(a)として、(a1)塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と高級脂肪酸(B)とを溶媒(S1)に分散・溶解させた混合液(M1)を調製する工程と、(a2)混合液(M1)とジエン系重合体(C)とを混合した混合液(M)を調製する工程とを有することが好ましい。
【0043】
工程(a1)では、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)と高級脂肪酸(B)とを溶媒(S1)に分散・溶解させる。より具体的には、溶媒(S1)に高級脂肪酸(B)を投入して撹拌した後、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)を混合することが好ましい。このように、高級脂肪酸(B)の存在下で塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)を溶媒(S1)に分散・溶解させることで、塩基性硫酸マグネシウムの繊維が折れたりすることなく、均一に分散するようになる。
【0044】
溶媒(S1)としては、溶媒(S)と同様のものを用いることができる。ただし、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)の分散性を考慮すると、脂肪族炭化水素溶媒と極性溶媒との混合溶媒が好ましく、ヘキサンとテトラヒドロフランの混合溶媒がより好ましい。溶媒(S1)の使用量は、最終的な混合液(M)におけるジエン系重合体(C)の濃度が所定の値となるように、適宜設定することができる。
【0045】
工程(a2)では、上記で得られた混合液(M1)とジエン系重合体(C)とを混合する。また、高級脂肪酸(B)の一部を混合してもよい。このように高級脂肪酸(B)の存在下で塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)を溶媒(S1)に分散・溶解させた混合液(M1)をジエン系重合体(C)と混合することで、ジエン系重合体(C)中に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(A)が均一に分散した塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体が得られる。
【0046】
ジエン系重合体(C)は、そのまま混合液(M1)と混合してもよく、溶媒(S2)に溶解させた状態で混合液(M1)と混合してもよい。溶媒(S2)としては、溶媒(S)と同様のものを用いることができる。溶媒(S2)の使用量は、最終的な混合液(M)におけるジエン系重合体(C)の濃度が所定の値となるように、適宜設定することができる。
【0047】
工程(b)では、上記で得られた混合液(M)から塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体を単離する。具体的には、上記で得られた混合液(M)中の少なくとも溶媒(S)を分離・除去する。溶媒(S1)を用いた場合は、上記で得られた混合液(M)中の少なくとも溶媒(S1)を分離・除去する。溶媒(S1)及び溶媒(S2)を用いた場合は、上記で得られた混合液(M)中の少なくとも溶媒(S1)及び溶媒(S2)を分離・除去する。分離・除去の方法としては、遠心分離、真空乾燥、再沈殿等が挙げられるが、再沈殿による方法が好ましい。
【0048】
再沈殿では、例えば混合液(M)を、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールに添加することで、塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体を沈殿させることができる。その後は、濾過等により塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体を分離することができる。この方法によれば、ジエン系重合体中に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維がより均一に分散した塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体が得られる。また、ジエン系重合体(C)中に、製造時に用いられた酸化防止剤が残存している場合でも、それを再沈殿により除去することができる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。
【0050】
<実施例1>
まず、シクロヘキサン500mlにポリブタジエン(宇部興産株式会社製、商品名:BR150L、Mn:20.7×10
4、Mw:51.6×10
4、Mw/Mn:2.50、シス構造:トランス構造:ビニル構造=98.1:1.0:0.9(モル比)、Tcp:101cp、ML
1+4,100℃:42)43gを溶解させたポリブタジエン溶液(ポリブタジエン濃度:10重量%)を調製した。一方、シクロヘキサン230mlにステアリン酸0.86gを溶解させたステアリン酸溶液を調製した。その後、ポリブタジエン溶液にステアリン酸溶液を投入し、さらにケーキ状の塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(平均繊維長:15μm、平均繊維径:0.5μm)21.5gを投入し、1時間撹拌した。得られた混合液(ポリブタジエン濃度:7重量%)を105℃で2時間真空乾燥することで、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用可能な塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンを得た。
【0051】
なお、ケーキ状の塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(含水無機短繊維凝集体)は、次のように製造した。まず、塩基性硫酸マグネシウム短繊維を水に分散させて、濃度20mg/mLの原料スラリーを調製した。次いで、その原料スラリーを、真空濾過装置を用いて濾過して含水率87重量%の塊状濾過ケーキを得た。この濾過ケーキを連続加圧式ロール脱水機(高速フェルトフィルタSP−10型、月島機械(株)製)の搬送フェルトの上に置いて、30m/分の速度で搬送しながら、搬送フェルト上でロール加圧によりプレス線圧41kg/cmの条件で加圧処理して、含水率50重量%にした後、箱型乾燥機を用いて180℃の温度で乾燥した。得られた塩基性硫酸マグネシウム短繊維凝集体は粒状であり、その相対密度は22%(かさ密度は0.52g/cc)であった。
【0052】
<実施例2>
まず、実施例1と同様にして、ポリブタジエン溶液(ポリブタジエン濃度:10重量%)及びステアリン酸溶液を調製した。次いで、ステアリン酸溶液に、さらにケーキ状の塩基性硫酸マグネシウム無機繊維(平均繊維長:15μm、平均繊維径:0.5μm)21.5gを投入し、1時間撹拌することで、塩基性硫酸マグネシウム含有ステアリン酸溶液を得た。その後、ポリブタジエン溶液に塩基性硫酸マグネシウム含有ステアリン酸溶液を投入し、1時間撹拌した。得られた混合液(ポリブタジエン濃度:7重量%)を105℃で2時間真空乾燥することで、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用可能な塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンを得た。
【0053】
<実施例3>
実施例2と同様にして混合液(ポリブタジエン濃度:7重量%)を得た後、その混合液をエタノール1.5lに投入した。析出した沈殿を取り出し、60℃で2〜3時間乾燥させることで、ゴム組成物用塩基性硫酸マグネシウムマスターバッチとして利用可能な塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンを得た。なお、内部まで十分乾燥させるために、乾燥1時間後に一旦沈殿を取り出し、ロールで1mmの厚さに薄くして、再度乾燥させた。
【0054】
<比較例1>
ステアリン酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンを得た。得られた塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンにおいて、塩基性硫酸マグネシウムとポリブタジエンは完全に分離していた。
【0055】
<評価>
実施例1〜3で得られた塩基性硫酸マグネシウム分散ジエン系重合体の動的粘弾性特性を測定した。具体的には、粘弾性測定装置RPA−2000(商品名、アルファテクノロジーズ社製)を用い、予熱温度50℃で5分間予熱し、測定温度50℃、周波数1.67Hz、歪み振幅0.7%の条件で弾性率G
*(kPa)を測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例1で得られた塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンの動的粘弾性特性の測定も試みたが、歪みを与えた時点で崩れてしまい測定することができなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
この結果から、ステアリン酸を含む塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンでは、ポリブタジエン中に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維が均一に分散していることが分かる。また、先にステアリン酸と塩基性硫酸マグネシウム無機繊維を混合した実施例2の方が、ステアリン酸とポリブタジエンの混合物に塩基性硫酸マグネシウム無機繊維を混合した実施例1より、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維の分散性が高かった。塩基性硫酸マグネシウム分散ポリブタジエンをエタノール再沈殿により単離した実施例3では、さらに塩基性硫酸マグネシウム無機繊維の分散性が高かった。