特許第6322459号(P6322459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322459
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】農業用フィルム
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20180423BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20180423BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20180423BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   A01G13/02 E
   A01G9/14 S
   A01G13/02 D
   C08L23/00
   C08K5/34
【請求項の数】4
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-76557(P2014-76557)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-195776(P2015-195776A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137956
【氏名又は名称】三菱ケミカルアグリドリーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】市村 拓野
(72)【発明者】
【氏名】木下 一也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−233274(JP,A)
【文献】 特表2009−540810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0186294(US,A1)
【文献】 特開平06−046685(JP,A)
【文献】 特開昭49−084829(JP,A)
【文献】 特開平02−180932(JP,A)
【文献】 特開昭61−170322(JP,A)
【文献】 特開2001−231381(JP,A)
【文献】 特開平09−275822(JP,A)
【文献】 特開昭62−236861(JP,A)
【文献】 特開2011−115073(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0307055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00 − 13/10
A01G 9/14 − 9/26
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 −101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソインドリノン顔料を含み、イソインドリノン顔料の含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.01〜3.0重量%である、農業用フィルム。
【請求項2】
ジオキサジンバイオレットを更に含み、ジオキサジンバイオレットの含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.005〜1.0重量%である、請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
イソインドリノン顔料を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであって、イソインドリノン顔料の含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.01〜3.0重量%である、該農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物がジオキサジンバイオレットを含み、ジオキサジンバイオレットの含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.005〜1.0重量%である、請求項3に記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R/B比が調整された農業用フィルム、より詳細には、特定の顔料を含むR/B比が調整された農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関る。また、本発明は、特定の顔料の組み合わせを含むR/B比及びR/G比が調整された農業用フィルムに関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、国内農業人口は高齢化に伴い減少の一途を辿っており、農業生産の新たな担い手が、安定的な所得を得る仕組みが求められている。食料安全保障の観点からも、農業生産方法を改善し、単位面積あたりの収量を増やし、安定的かつ効率的に農業生産可能な仕組みを構築する必要性に迫られている。
【0003】
そんななか、いわゆる完全制御型植物工場と呼ばれる、建築物の中で人工光源を照射して作物を栽培する農業生産形態が注目されてきている。完全制御型植物工場では、単位面積当たりの収量を上げるため、多段式の栽培方式となり、背の高くなる作物が栽培しにくい上、初期投資額が膨大になる。このような制約条件により、栽培期間が短く回転率の高い、葉菜類栽培を中心に利用されてきた。この栽培形態では、最適な温湿度、光環境、養液等環境管理により、極めて短期間で作物栽培可能であるが、栽培作物が非常に限定され、果菜類や花卉類には使用出来ない。また、一度病害虫が発生すると、その防除に膨大な手間と費用が発生する難点があった。このため、病害虫の発生原因を無菌の施設内に持ち込ませないように、エアシャワー等の高額な設備を準備する必要があった。
【0004】
一方で、樹脂フィルム等を使用した施設園芸による栽培形態は、露地栽培と比較して、農業所得を安定的に得られる為、様々な作物の栽培形態に合わせて進化してきた。単位面積当たりの収量増には、作業効率上や栽培環境管理上の観点から、農業用ハウスの大型化が効果的であり、このような大型ハウスをフィルムで覆うためのフィルム展張作業は多くの人手を要するようになってきている。しかしながら、農業従事者の数は年々減少すると共に高齢化が進行しており、毎年の展張作業に人手を確保することは容易ではない状況にある。この様な状況に鑑み、太陽光利用型植物工場に使用されるハウスに展張するフィルムとして、展張作業が容易で極力張り替えまでの使用期間の長いフィルム、言いかえれば、2年以上の長寿命を有し、長期間にわたり当初性能を保持できる高性能な農業用被覆資材の開発のみならず、内部資材の劣化保護により、例えば内部使用される内張り資材についても長期間使用可能である事が求められてきている。
【0005】
また、病害菌やカビの繁殖抑制、害虫防除性をハウス内環境に付与することにより減農薬栽培を行なう試みがなされてきている。灰色カビ病や菌核病はハウス内で発生する代表的な病害であり、様々な農作物の茎、葉、花、実等を枯死させる被害を与えている。オンシツコナジラミ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマは、トマト、キュウリ、メロン、イチゴ、花卉類等ハウス内で広く栽培されている作物の代表的な害虫であり、食害、葉や果実の変色、変形の外にも、排泄物へのすす病菌寄生、トマト黄化えそウイルス病などのウイルス病を媒介等、多大な被害を発生させている。近年の農作物への安全要求から、減農薬栽培を行ううえで、これら病虫害の具体的抑制方法が望まれており、これら病害虫対策は、施設園芸において非常に重要な問題となっている。
【0006】
品質リスクを低減しながら単位面積当たりの収量を増加する方法として、曇天時、補光により光合成に必要な光量を補う方法が注目されてきている。例えば、栽培上の日照不足を補うための照明装置として、白熱電球、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)などが用いられることもあるが、これらの照明装置は、太陽光と比較すると照度が低い事が多く、照度を得る為には多量のエネルギーを必要とし、経済効率が悪くなるデメリットがあった。更に、光源からの光は局所的照射となる為、照射効果を栽培面積全体の植物体に及ぼす事が困難であった。一方、栽培作物全体を照射しようと照射装置の数を多くするとその装置自体の影響で非効率となり問題となっていた。
【0007】
このような電気エネルギーコストの問題や局所照射の問題を解決する手段として、例えば特開平7−123870号公報(特許文献1)の様な波長変換フィルムが挙げられている。これら波長変換フィルムは、蛍光物質を用いて、短波長のエネルギーの高い光を、長波長の特に光合成時に光受容体が吸収するような光に変換する事により、栽培性改良を狙ったものである。中でも、600〜700nmの赤色光を増光する検討例が多く、波長変換により積み増しされる光量は、補光装置を用いた場合に比較すると極端に小さいが、照射面積は逆に補光装置を用いた場合よりも著しく大きくなるために、植物体全体で見た場合の使用効果の大小は、いかに波長変換効率を高く且つ長く持続させるかに依存する。しかしながら従来技術を用いた波長変換フィルムは、商品化されたものであっても、波長変換効果が十分でない上、4ヶ月程度で波長変換効果が消失し、フィルム単価が高い割に効果が持続しない事が問題となっていた。その他、特開2007−135583号公報(特許文献2)にも同様の波長変換資材が提案されているが、実際には実施例で使用されているペリレン系波長変換物質は効果持続性が低い上に、ポリエステル系の樹脂には相溶するものの、ポリオレフィン系樹脂には相溶せず、幅広フィルムが作成できない等実用上の問題があった。
【0008】
本発明者らは、特定の蛍光物質が長期間に亘って効果的に補光することができることを見出し、更に、この蛍光物質は、意外にも、防曇剤と拮抗作用を有することを知見した。そして、更なる検討の結果、この拮抗作用の回避可能な手段を見出すことができた(特許文献3)。
【0009】
このような波長変換フィルムは、短波長のエネルギーの高い光(例えば青色光)を吸収して、長波長の光(600〜700nmの赤色光)を発光することにより、植物にとって有効な波長を増光するものであるが、青色光が減光することによるリスクについて更なる検証が必要とされる。また、上記波長変換フィルムでは、特定の蛍光顔料が使用されるが、かかる蛍光顔料は一般に入手しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−123870号公報
【特許文献2】特開2007−135583号公報
【特許文献3】特開2011−115073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、植物にとって理想的な光質バランスを与えることが可能な農業用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、短波長の光を吸収して長波長の光を発光する波長変換という手段を用いることなく、所定の波長域の光を吸収することでR/B比を調整することにより、植物にとって理想的な光質バランスを与えることが可能ではないかと考え、鋭意検討したところ、特定の顔料を用いることによりRBバランスを調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、更に、特定の顔料の組み合わせを用いることにより、R/B比に加えて、R/G比も調整することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、波長変換フィルムの使用により、赤色光の強い光環境が得られ、栽培性が向上することは前記特許文献3に記載した通りであるが、本発明は、耐久性の高い顔料を用いることにより、波長変換フィルム使用時と類似した赤色光の強い光環境が得られることを技術的特徴としている。
【0013】
即ち、本発明は、
[1]イソインドリノン顔料を含む農業用フィルム。
[2]ジオキサジンバイオレットを更に含む[1]に記載の農業用フィルム。
[3]イソインドリノン顔料を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂組成物がジオキサジンバイオレットを含む、[3]に記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
に存するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施態様により、R/B比を調整した農業用フィルムを提供することができる。
また、本発明の一実施態様により、R/B比に加えて、R/G比を調整した農業用フィルムを提供することができる。
本発明の農業用フィルムにより、植物にとって理想的な光質バランスを与えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1〜3及び比較例4の全光線透過率測定データ
図2】実施例4〜6及び比較例4の全光線透過率測定データ
図3】実施例7〜9及び比較例4の全光線透過率測定データ
図4】比較例1〜4の全光線透過率測定データ
図5】実施例1〜3及び比較例3の分光放射計測定データ
図6】実施例4〜6及び比較例3の分光放射計測定データ
図7】実施例7〜9及び比較例3の分光放射計測定データ
図8】比較例1〜4の分光放射計測定データ
図9】各フィルムのRB比、RG比及び可視光透過率の比較
図10】実施例10及び比較例5の初期全光線透過率
図11】実施例10及び比較例5の耐堅牢性試験後の全光線透過率
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明に使用し得る農業用フィルムの材料(基材樹脂)としては、一般に150〜250℃程度で溶融成形しうるフィルム形成能のあるものであって、一般に農業用被覆材用に用いられているものはいずれのものでも使用することができるが、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が好ましい。
【0018】
本発明において塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニルのほか、塩化ビニルが主成分を占める共重合体をいう。塩化ビニルと共重合しうる単量体化合物としては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等が挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の従来公知の製造法のうち、いずれの方法によって製造されたものであってもよい。
【0019】
また、本発明においては、上記塩化ビニル樹脂として、平均重合度が1000以上2500以下、好ましくは1100以上2000以下のものを用いることができるが、異なる平均重合度のものを用いて2種混合してもよい。この混合方法としては、フィルム製膜加工時に2種類の樹脂を混合する方法が一般的であるが、塩化ビニル樹脂の重合時に重合条件のコントロールによって、見掛け上2種類の平均重合度の異なる樹脂が混合されたことになる方法であってもよい。
【0020】
塩化ビニル系樹脂フィルムには、柔軟性を付与するために、この樹脂100重量部に対して、30〜60重量部、好ましくは、40〜55重量部の可塑剤が配合される。30重量部未満では、低温時での柔軟性に乏しいため、充分な低温物性が得られない。また、60重量部を越えると、常温下での取り扱い性(べたつき性等)が悪化したり、製膜加工時の作業性が低下するので好ましくない。
【0021】
使用しうる可塑剤としては、例えば、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体;ジオクチルフタレート等のイソフタル酸誘導体;ジ−n−ブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸誘導体;ジ−n−ブチルマレート等のマレイン酸誘導体;トリ−n−ブチルシトレート等のクエン酸誘導体;モノブチルイタコネート等のイタコン酸誘導体;ブチルオレエート等のオレイン酸誘導体;グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸誘導体;その他、エポキシ化大油、エポキシ樹脂系可塑剤等が挙げられる。また、樹脂フィルムに柔軟性を付与するために、上述の可塑剤に限られるものでなく、例えば熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル等を使用することもできる。
【0022】
また、塩化ビニル系樹脂として、ポリ塩化ビニルと塩素化ポリエチレンをブレンドしたものも使用することができる。塩素化ポリエチレンとしては、原料となるポリエチレンが、エチレンの単独重合、もしくは、エチレンと30重量%以下(好ましくは、20重量%以下)の炭素数が12個以下(好ましくは、3〜9個)のα−オレフィンを共重合することによって得られるものが好ましい。
【0023】
α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。原料となるポリオレフィンとしては、特にエチレンを単独重合したものが好ましい。塩素化ポリエチレンは、ポリエチレンの粉末または粒子を水性懸濁液中で塩素化するか、あるいは有機溶剤中に溶解したポリエチレンを塩素化する方法が採用される。
【0024】
塩素化ポリエチレンの塩化ビニル系樹脂への配合量は、通常0.5〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部がよい。塩素化ポリエチレンのメルトインデックスは、0.5〜150g/10分の範囲で適宜選択することができる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体などがあげられ、例えば高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を使用することができる。
【0026】
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、例えば下記の(A法)(特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号等)や(B法)(特開平6−9724号、特開平6−136195号、特開平6−136196号等)により得られる。
【0027】
フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点では上記(A)法、(B)法に拘泥されることなく、メタロセン化合物を用いて重合されたポリオレフィン系樹脂、即ち、メタロセンポリエチレンを用いることが出来る。
【0028】
これらメタロセンポリエチレンを始めとするポリエチレン樹脂は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)、MFR、密度、分子量分布、その他各種物性の測定によって分類される。温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journal of Applied Polymer Science.Vol 126,4,217−4,231(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示す。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。また、本発明のポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.880〜0.920g/cmの値を示す。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じ実用性に乏しくなる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示す。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。
【0030】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、酢酸ビニル含有量が通常10〜25重量%の範囲であり、好ましくは12〜20重量%の範囲のものを使用することができる。酢酸ビニル含有量がこの範囲より小さいと、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが出来やすく、防曇性に悪影響が出るため実用性に乏しく、また、酢酸ビニル含有量がこの範囲より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風でばたつきハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
【0031】
本発明の一つの実施態様は、イソインドリノン顔料を含む農業用フィルムである。イソインドリンを含むことにより、青色光を吸収する一方、赤色光を透過するようにR/B比を調整することが可能となる。本明細書において、青色光と赤色光のR/B比とは、660nmにおける透過光量と460nmにおける透過光量の比を意味する。
本発明の農業用フィルムにおいて、R/B比は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7以上である。
【0032】
本発明の農業用フィルムにおいて、イソインドリノン顔料の含有量は、農業用フィルム全体の重量に対して、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%、更に好ましくは0.1〜1.5重量%である。イソインドリノン顔料の含有量を上記の範囲とすることにより、R/B比を上記の好ましい範囲とすることができると共に、可視光領域(400〜700nm)において高い光透過性を確保することができる。本発明の農業用フィルムにおいて、400〜700nmにおける平均透過率は、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上である。
【0033】
本発明のもう一つの実施態様は、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレット(8,18−ジクロロ−5,15−ジエチル−5,15−ジヒドロジインドロ[3,2−b:3’,2’−m]トリフェノジオキサジン)を含む農業用フィルムである。イソインドリン及びジオキサジンバイオレットを含むことにより、R/B比を調整することに加え、緑色光の吸収を調節することでR/G比を調整することが可能となる。本明細書において、緑色光と赤色光のR/G比とは、660nmにおける透過光量と555nmにおける透過光量の比を意味する。
【0034】
LEDや着色蛍光灯を使用した栽培実験に於いて、極端な赤色光の増強は必ずしも生育性向上につながらず、赤色光、緑色光、青色光のバランスが必要であることが判りつつある。特に、蛍光灯を使用した実験で、赤色光の強い環境であっても、ある程度、青色光、緑色光が存在した方が栽培環境上好ましいことが判明しつつあり、通常、着目されがちなR/B比のみならず、R/G比についても関心が高まっていた。このような状況から、高いR/B比はもとより、太陽光よりも高いR/G比を有する光環境における栽培性の改良、更に、実使用に耐えうる形で、具体的にこのような光環境を得るための方法が待ち望まれていた。本実施態様の発明は、特定の顔料の組み合わせを用いることにより、R/B比を調整することに加え、R/G比を調整することを可能としたものである。
【0035】
本実施態様の農業用フィルムにおいて、R/B比は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7以上である。また、R/G比は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。
【0036】
本発明の農業用フィルムにおいて、ジオキサジンバイオレットの含有量は、農業用フィルム全体の重量に対して、0.005〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.75重量%、更に好ましくは0.02〜0.5重量%である。ジオキサジンバイオレットの含有量を上記の範囲とすることにより、R/G比を上記の好ましい範囲とすることができると共に、可視光領域(400〜700nm)において高い光透過性を確保することができる。本発明の農業用フィルムにおいて、400〜700nmにおける平均透過率は、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上である。
【0037】
本発明の1つの好ましい実施態様は、イソインドリノン顔料を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムである。
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、R/B比は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7以上である。
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおけるイソインドリノン顔料の含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%、更に好ましくは0.1〜1.5重量%である。
【0038】
本発明のもう1つの好ましい実施態様は、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレットを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムである。
本実施態様の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、R/B比は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7以上である。また、R/G比は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、ジオキサジンバイオレットの含有量は、フィルム全体の重量に対して、0.005〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.75重量%、更に好ましくは0.02〜0.5重量%である。
【0039】
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、イソインドリノン顔料を全層に添加してもよいが、また一部の層(中間層、又は中間層及び外層等)に添加することもできる。
また、本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレットを全層に添加してもよいが、また一部の層(中間層、又は中間層及び外層等)に添加することもできる。
【0040】
発明の農業用フィルム及び農業用ポリオレフィン系樹脂中には、農業用フィルムに通常使用される各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤としては、例えば、防曇剤、防霧剤、耐候性向上剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤等)、耐候剤、赤外線吸収剤、保温剤、充てん剤、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、硫黄系、フェノール系およびホスファイト系などの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、などがあげられる。
【0041】
防曇剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価
アルコール部分エステル系のもの、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適である。このような防曇剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
【0042】
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤、具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤を使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。
【0043】
ヒンダードアミン光安定剤としては、農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光耐候剤を使用することができ、例えば、分子中にピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物(以下、「ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物」ともいう)を好適に使用することができる。
【0044】
上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などがあげられる。
【0045】
また、市販のヒンダードアミン系化合物、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、TINUVIN NOR 371、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57、LA−900、LA−81、NO−Alkyl−1(以上、ADEKA社製)、UV−3346、UV−3529、UV−3581、UV−3853(以上、サイテック社製)、ホスタビンN20、ホスタビンN24、ホスタビンN30、ホスタビン845、ホスタビンNOW、サンデュボアPR−31、ナイロスタッブS−EED(以上、クラリアント・ジャパン社製)、UVINUL5050H(以上、BASFジャパン社製)等を使用することができる。これらのピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物は、一種又は二種以上で用いられる。
【0046】
上記ヒンダードアミン系化合物の含有量は、農業用フィルムの基材樹脂100重量%に対して、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。該含有量が0.001重量%未満では十分な効果が得られず、5重量%よりも多くても効果の向上がみられないばかりか、フィルムの物性を低下させるなどの悪影響を与える。
【0047】
また、本発明の農業用フィルムには、エチレン(A)と下記式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体を添加することもできる。
【化1】

式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは、R1及びR2はそれぞれメチル基であり、R3は水素原子である。
【0048】
式(1)で表されるビニル化合物(B)は、公知の方法、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
【0049】
式(1)で表されるビニル化合物(B)の代表例としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
【0050】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
【0051】
また、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、該共重合体中に(B)が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が(B)の総量に対して83%以上、好ましくは90%以上であるものが好ましい。
【0052】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、フィルムを構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。この含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
【0053】
使用可能な市販のエチレン・環状アミノビニル共重合体としては、ノバテック LD・XJ100H(日本ポリケム(株)製)等が挙げられる。
【0054】
本発明においては、紫外線吸収剤を含有させることにより、実質上、紫外線カットすることにより、好ましい光質バランスを長期間保持できる上に、病虫害防除効果も期待できる。
【0055】
紫外線吸収剤として、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4,6−ジ(tert−ペンチル)フェノール等のベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン類等があげられる。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
本発明においては、特に、(2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4,6−ジ(tert−ペンチル)フェノール)を単独で、もしくは、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールと組み合わせて用いることにより、耐ブリードアウト特性を付与しながら、長期間、好ましい光質バランスと病虫害防除効果を期待できる。
【0056】
紫外線吸収剤は、農業用フィルムの基材樹脂100重量%に対し好ましくは0.001重量%より多く2重量%未満、更に好ましくは0.01〜1重量%で添加することができる。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると、ブリードアウトによる透明性低下等問題がある。
【0057】
本発明における農業用フィルムに、赤外線吸収剤を添加することにより、良好な保温性を付与することも出来る。赤外線吸収剤は、保温剤として有効なMg、Ca、Al、Si及びLiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類等)を使用できる。
【0058】
なかでも、下記の式(2)で表されるハイドロタルサイト類赤外線吸収剤を用いた場合に、安価で成形性良好なフィルムを得ることが出来る。
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO(2)
【0059】
なかでも、下記の式(3)で表される赤外線吸収剤を用いた場合に、安価で成形性良好なフィルムを得ることが出来る。
[Al(Li(1−x)・M(x+y))(OH)6+y(An2(1+x)/n・mHO(3)(式中、MはMg及び/又はZnで、Aはn価のアニオン、mは0又は正の数、x及びyは0≦x<1、0≦y≦0.5の範囲である。)
【0060】
上記式(3)で表される赤外線吸収剤(保温剤)の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができ、例えば、DHT4A、SYHT−3(協和化学(株)製)、HT−P(堺化学(株)製)、オプティマ(戸田工業(株)製)やミズカラック(水澤化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0061】
赤外線吸収剤(保温剤)は、赤外線吸収能を有する無機微粒子であり、これらは一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機微粒子は特に制限はないが、成分:Si,Al,Mg,Caから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
【0062】
上記無機微粒子は天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機微粒子は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
【0063】
上記無機微粒子の含有量は、農業用フィルムの基材樹脂100重量%に対し好ましくは0.1重量%より多く15重量%未満、更に好ましくは1〜12重量%である。含有量が上記範囲未満では保温性改良効果が低く、上記範囲を超えると透明性低下等問題がある。
【0064】
上記の金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられる。
【0065】
上記充てん剤としては、フィルムのベタツキを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリンクレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充てん剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等があげられる。
【0067】
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
【0068】
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト等があげられる。
【0069】
上記着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0070】
本発明の農業用フィルムは、上述した成分が組合わされて含有することができ、更に下記の任意成分を、必要に応じて含有させることができる。任意成分とは、その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
【0071】
本発明の農業用フィルムは、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機その他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
【0072】
本発明の農業用フィルムの厚みについては、強度やコストの点で0.01〜1mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.5mmのものがより好ましく、更に好ましくは0.05〜0.2mmである。厚みがこの範囲であれば強度的、成形上、展張作業性の問題のない農業用フィルムを得ることができる。
【0073】
また、本発明の農業用フィルムが農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの場合は、3層から5層の多層フィルムとすることもできる。3層フィルムを構成する層比としては、成形性や透明性及び強度の点から1/0.5/1〜1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1〜1/4/1の範囲がより好ましい。また、外層と内層の比率としては、特に規定されるものではないが、得られるフィルムのカール性から同程度の比率とするのが好ましい。
また、ポリオレフィン系多層フィルムの場合は、上記の耐候性向上剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤等)、耐候剤、赤外線吸収剤、保温剤等の各種添加剤は、全層に添加してもよく、また一部の層(中間層、又は中間層及び外層等)に添加することもできる。
【0074】
また、本発明の農業用フィルムは、防曇性塗膜及びそれ以外の塗膜を形成することが出来る。例えば、農業用フィルムをハウスに被覆した際に内側になる面に防曇性塗膜を、外側になる面に防塵性塗膜を形成しても良い。
【0075】
防曇性塗膜としては、無機質コロイドゾル及び/又は熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂を主成分とする組成物等が挙げられる。好ましくは無機コロイド物質と親水性有機化合物を主成分とした防曇性塗膜や無機コロイド物質とアクリル系樹脂を主成分とする防曇性塗膜を用いることができる。又、バインダー樹脂は添加しなくても良く、コロイダルシリカやコロイダルアルミナ等の無機物を積層しても良い。
【0076】
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
【0077】
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜100nmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径をこの範囲にすることで被膜が白く失透したりすることがなく、無機質コロイドゾルの安定性においても良好である。
【0078】
無機質コロイドゾルは、その配合量をバインダー樹脂組成物の固形分重量の合計に対して、固形分としての重量比で0.2以上5以下、好ましくは0.5以上4以下にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0079】
バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、ポリオレフィン系フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂、及び/又はウレタン系樹脂を用いることが好ましく、更に好ましくは後述する(a)親水性アクリル系重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるもの、(e)疎水性アクリル系樹脂と、ポリウレタンエマルジョンからなるもの、が各々の特質を持ち、好ましい。
【0080】
アクリル系樹脂としては、(a)親水性アクリル系重合体からなるもの、(b)一分子内に疎水性分子鎖ブロックと親水性分子鎖ブロックとを含むブロック共重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、特に(a)が、初期の防曇濡れが早い点で基材フィルムとの相性に優れており好ましく、一方(c)については、基材フィルムとの相性に優れており好ましい。
【0081】
(a)の親水性アクリル系重合体としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%〜99.9重量%、更に好ましくは65重量%〜95重量%とし)、酸基含有ビニル単量体成分を0.1〜30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類があげられ、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられるが、これらに限定されない。これらは単独重合体であってもよく、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を主成分とし、これらと共重合しうる他の単量体との共重合体であってもよい。
【0082】
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類と共重合しうる酸基含有単量体としては、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類が挙げられ、特に好ましくは、カルボン酸に属する(メタ)アクリル酸である。
【0083】
その他の共重合体成分としては、たとえばスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酸化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等があげられる。
【0084】
(c)の疎水性アクリル系樹脂としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
【0085】
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いられるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0086】
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0087】
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。
【0088】
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
【0089】
疎水性アクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な塗膜を得るのが困難となりやすい。
【0090】
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
【0091】
一方、(d)ウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、防曇性塗膜の基材フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇性塗膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
【0093】
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分重量比で疎水性アクリル系樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐傷付き性の向上が見られにくく、また、防曇性を発現するまでの時間が長く、十分な防曇効果が発揮しにくい。また、多すぎるときは、耐傷付き性が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させやすく、また、コスト面でも不利であり好ましくない。
【0094】
防曇性塗膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。このような界面活性剤は、以下のものを使用することができる。
【0095】
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
【0096】
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0097】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
【0098】
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
【0099】
界面活性剤の添加は、バインダー樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
【0100】
防曇性塗膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、特にアクリル系樹脂同士を架橋させ、塗膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
【0101】
本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。
【0102】
防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。また、アクリル系樹脂以外のバインダー成分として、たとえばポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系の水分散性ウレタン樹脂などを混合していてもよい。
【0103】
基材フィルムの表面に防曇性塗膜を形成するには、一般に防曇性組成物の溶液または分散液をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法、及び紫外線硬化法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0104】
防曇性塗膜の厚さは、基材フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。塗膜の厚さが基材フィルムの1/10より大であると、基材フィルムと塗膜とでは屈曲性に差があるため、塗膜が基材フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、塗膜に亀裂が生じて基材フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
【0105】
また、基材フィルムと防曇剤組成物に由来する塗膜との接着性が充分でない場合には、基材フィルムに表面処理を施しておいてもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、ナトリウム処理、サンドブラスト処理等の方法が挙げられる。コロナ放電処理法は、針状あるいはナイフエッジ電極と対極間で放電を行わせ、その間に試料を入れて処理を行い、フィルム表面にアルデヒド、酸、アルコールパーオキサイド、ケトン、エーテル等の酸素を含む官能基を生成させる処理である。スパッタエッチング処理は、低気圧グロー放電を行っている電極間に試料を入れ、グロー放電によって生じた正イオンの衝撃によりフィルム上に多数の微細な突起を形成するものである。サンドブラスト処理は、フィルム面に微細な砂を吹きつけて、表面上に多数の微細な凹凸を形成するものである。これら表面処理の中では、塗布層との密着性、作業性、安全性、コスト等の点から、コロナ放電処理が好適である。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0107】
(1)ポリオレフィン系樹脂多層フィルムの調製
3層インフレーション成形装置として3層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機はチューブ外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、外内層押出し機温度180℃、中間層押し出し機温度170℃、ダイス温度180〜190℃、ブロー比2.0〜3.0、引取り速度3〜7m/分、厚さ0.10mmにて表1に示した成分からなる3層の積層フィルムを得た。なお、これらのフィルムは、ハウス展張時にチューブの端部を切り開いて使用するため、展開した際に製膜時のチューブ外層が展張時にはハウスの内層(内面)となる。
基材の配合を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
〔配合〕 添加量は各表記載の通りである。
HP−LDPE:高圧ラジカル法触媒で製造した分岐状ポリエチレン(MFR:0.7g/10分、密度0.924)日本ポリケム製ノバテックLD「LF240」
メタロセンPE:メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2.0g/10分、密度0.913)日本ポリケム製カーネル「KF270」
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
【0110】
キマソーブ944:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光安定剤
合成ハイドロタルサイトA:協和化学(株)製「DHT4A」
エチレン・環状アミノビニル共重合体:日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・XJ100H」MFR=3g/10分(190℃、JIS−K6760) 密度=0.931g/cm(JIS−K6760)環状アミノビニル化合物含量=5.1重量%(0.7モル%)孤立して存在する環状アミノビニル化合物の割合=90モル% 融点=111℃
【0111】
顔料マスターバッチA:イソインドリノン系顔料A(橙色顔料)を30重量%含有するPE系マスターバッチ(大日精化工業(株)製)を使用
顔料マスターバッチB:イソインドリノン系顔料B(黄色顔料)を30重量%含有するPE系マスターバッチ(大日精化工業(株)製)を使用
顔料マスターバッチC:ジオキサジンバイオレットを1重量%含有するPE系マスターバッチ(大日精化工業(株)製)を使用
蛍光物質A:SMART LIGHT RL1000(波長変換蛍光物質)(BASF製)
【0112】
(2)フィルムの表面処理
得られたチューブ状フィルムの外層表面を、放電電圧120V、放電電流4.7A、ラインスピード10m/minでコロナ放電処理を行い、JIS−K6768による「濡れ指数」を測定し、その値を確認した。
【0113】
(3)防曇性塗膜の形成(防曇塗膜塗布タイプ)
表1に示した主成分(シリカゾル及び/又はアルミナゾル)と熱可塑性樹脂と架橋剤及び液状分散媒とを配合して防曇剤組成物を得た。
防曇剤組成物配合は以下の配合とした。
無機質コロイドゾル(コロイダルシリカ) 4.0
熱可塑性樹脂(サンモールSW−131) 3.0
架橋剤(T.A.Z.M) 0.1
分散媒(水/エタノール=3/1) 93
(注)無機質コロイドゾルの配合量は、無機質粒子量で示し熱可塑性樹脂の配合量は重合体固形分量で示す。
コロイダルシリカ:日産化学社製スノーテックス30、平均粒子径15mμ
サンモールSW−131:三洋化成社製アクリルエマルジョン
T.A.Z.M:相互薬工社製アジリジン系化合物
(2)で表面処理した基材フィルムの表面に、上記の防曇剤組成物を#5バーコーターを用いて各々塗布した。塗布したフィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して、液状分散媒を揮発させ防曇性塗膜を形成した。得られた各フィルムの塗膜の厚みは約1μmであった。
【0114】
今回、防曇性塗膜を設けたタイプ(フィルム厚100μm)を用いて試験を行ったが、防曇剤を練り混んだタイプでも同様の効果が得られる。また、今回用いた樹脂、添加剤以外の組み合わせ、又は今回と異なるフィルム厚みでも、その要旨を変えない限り、同様の効果が得られる。
【0115】
[実施例1〜2]
表1で示した多層フィルムの配合において、顔料マスターバッチAを中間層に5重量%、2.5重量%を添加し、夫々、実施例1〜2の多層フィルムを調製した。
【0116】
[実施例3]
表1で示した多層フィルムの配合において、顔料マスターバッチBを中間層に5重量%添加し、実施例3の多層フィルムを調製した。
【0117】
[実施例4]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチAを1重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例4の多層フィルムを調製した。
【0118】
[実施例5]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチAを2重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例5の多層フィルムを調製した。
【0119】
[実施例6]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチAを3重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例6の多層フィルムを調製した。
【0120】
[実施例7]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチBを1重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例7の多層フィルムを調製した。
【0121】
[実施例8]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチBを1.25重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例8の多層フィルムを調製した。
【0122】
[実施例9]
表1で示した多層フィルムの配合において、中間層に顔料マスターバッチBを1.5重量%、顔料マスターバッチCを5重量%添加し、実施例9の多層フィルムを調製した。
【0123】
[比較例1]
表1で示した多層フィルムの配合において、顔料マスターバッチCを中間層に5重量%添加し、比較例1の多層フィルムを調製した。
【0124】
[比較例2]
表1で示した多層フィルムの配合において、蛍光物質Aを中間層に2.5重量%添加し、比較例2の多層フィルムを調製した。
【0125】
[比較例3]
表1で示した多層フィルムの配合において、蛍光物質Aを中間層に1.25重量%添加し、比較例3の多層フィルムを調製した。
[実施例10]
【0126】
表1で示した多層フィルムの配合において、顔料マスターバッチAを中間層に1.5重量%、顔料マスターバッチCを中間層に5重量%添加し、紫外線吸収剤としてseesorb740(シプロ化成(株)製)を中間層に1.2重量%、tinuvin326(BASF社製)を中間層に0.3重量%添加し、実施例10の多層フィルムを調製した。
【0127】
各々のサンプルについて次のような光学特性測定を行った。
【0128】
(1)全光線透過率
3層インフレーション成形により得られた多層フィルム(ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)を分光光度計(島津製作所製、UV−2450型:積分球ユニット装着)により測定し、各波長におけるその値を示した。
【0129】
(2)分光放射計による各波長の照度測定
3層インフレーション成形により得られた多層フィルム(ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)を30cm四方サンプリングし、分光放射計(英弘精機(株)製、MS−720型)の受光部を覆う状態で測定し、各波長における透過光量(Irradiance(μmol/m/s/μm))を示した。測定は、名古屋市内において、晴天時、2014年3月31日に実施した。測定の際には、各測定毎に、サンプルフィルムを覆わない状態で測定し、照度が安定している(光源の照度が同じ)状態であることを確認しながら、注意深く測定を行い比較を行った。
更に、当該測定データを用いて400〜700nmの可視光平均透過光量、R/B比(660nmの透過光量/460nmの透過光量)、R/G比(660nmの透過光量/555nmの透過光量)、を測定した。
【0130】
実施例1〜3及び比較例4(三菱樹脂アグリドリーム(株)製の一般農業用ポリオレフィン系フィルムアグリスター)についての200〜700nmの全光線透過率を図1に示す。図1から、イソインドリノン顔料を含有する実施例1〜3の多層フィルムは、460nm付近の青色光を吸収する一方、660nm付近の赤色光の透過率が一般の農業用ポリオレフィン系フィルムと同等程度であることが示される。
【0131】
実施例4〜6及び比較例4についての200〜700nmの全光線透過率を図2に示す。図2から、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレットを含有する実施例4〜6の多層フィルムは、460nm付近の青色光を吸収すると共に、550nm付近の緑色光も吸収する一方、660nm付近の赤色光の透過率が比較例4と同等程度であることが示される。
【0132】
実施例7〜9及び比較例4についての200〜700nmの全光線透過率を図3に示す。図3から、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレットを含有する実施例7〜9の多層フィルムは、460nm付近の青色光を吸収すると共に、550nm付近の緑色光も吸収する一方、660nm付近の赤色光の透過率が比較例4と同等程度であることが示される。
【0133】
比較例1〜4の全光線透過率の測定データを図4に示す。図4から、ジオキサジンバイットのみを顔料として添加した比較例1は、550nm付近の緑色光を吸収するが、460nm付近の光は比較例4(一般の農業用ポリオレフィン系フィルム)と同様に殆ど吸収しないことが示されている。
【0134】
図5に、実施例1〜3及び比較例3についての350〜700nmの分光放射計測定データを示す。図6に、実施例4〜6及び比較例3についての350〜700nmの分光放射計測定データを示す。図7に、実施例7〜9及び比較例3についての350〜700nmの分光放射計測定データを示す。図8に、比較例1〜4についての350〜700nmの分光放射計測定データを示す。
また、表2〜5に、夫々、実施例1〜3、実施例4〜6、実施例7〜9、比較例1〜4について、400〜700nmの平均透過光量、R/B比、R/Gを示す。また、各フィルムについてこれらの数値を比較したグラフを図9に示す。
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】

【0135】
表2〜5から、実施例1〜9の多層フィルムは、R/B比が1.5以上であり、更に、実施例4〜9の多層フィルムは、R/G比が1.2以上であることが示される。
【0136】
次に、実施例10及び比較例5(一般の農業用ポリオレフィン系UVカットフィルム(イースターUVカット))について、耐堅牢性試験は次の条件で行った。
(a)60℃、湿度70%の条件下、295〜780nmの波長分布の光を80mW/cmの照射強度で5時間
(b)30℃、98%(シャワーによる水噴霧あり)の条件下、照射無しで1時間
のサイクルで、230時間、負荷試験を実施した。
図10及び11に、実施例10及び比較例5の初期の全光線透過率及び耐堅牢性試験後の全光線透過率を示す。図10及び11より、実施例10の多層フィルムは、耐堅牢性試験後においても青色光及び緑色光の吸収に大きな変化がないことが示される。
【0137】
上記実施例で示したように、イソインドリノン顔料を含有する農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム(実施例1〜3)は、青色光を吸収する一方、赤色光については一般農業用ポリオレフィン系フィルムと同程度に透過し、1.5以上のR/B比を示す。
また、イソインドリノン顔料及びジオキサジンバイオレットを含有する農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム(実施例4〜9)は、青色光を吸収すると共に緑色光も吸収する一方、赤色光については一般農業用ポリオレフィン系フィルムと同程度に透過し、1.5以上のR/B比を示し、更に1.2以上のR/G比を示す。
ここで、実施例のデータ測定時において、晴天時の分光放射計の太陽光のR/B比、R/G比は、1.33、1.05程度であった。一方、波長変換フィルム(比較例2及び3)使用環境下でのR/B比、R/G比は、夫々、1.7〜2.2、1.2〜1.3程度と、太陽光対比、R/B比及びR/G比が高い光環境になっている(表5)。
従って、本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムを使用することにより、波長変換フィルム使用時と同様に、太陽光対比、R/B比及びR/G比が高い光環境が得ることができ、植物にとって理想的な光質バランスを与えることが可能である。
また、本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、耐堅牢性試験後においても青色光及び緑色光の吸収に大きな変化はなく、屋外で展張後もR/B比、R/G比の光質バランスを保持することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11