特許第6322465号(P6322465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322465
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】内部冷却型ロール及び高温材の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/128 20060101AFI20180423BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20180423BHJP
   B21B 27/08 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B22D11/128 340D
   C21D1/00 115A
   B21B27/08
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-84786(P2014-84786)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-202520(P2015-202520A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 敏史
(72)【発明者】
【氏名】原田 一則
(72)【発明者】
【氏名】葉山 正信
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−001834(JP,U)
【文献】 実開昭51−048117(JP,U)
【文献】 特開平02−247053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/128,
B21B 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却通路を内部に有するロール本体、及び該ロール本体を回転可能に支持する一対の軸受体を備える内部冷却型ロールにおいて、
前記複数の冷却通路は前記ロール本体の軸方向に沿って、かつ環状に配置され、各前記冷却通路が流体の入口及び出口を有し、
前記ロール本体の軸を基準とした所定方向に位置する領域Aに存在する前記冷却通路のみに、各前記冷却通路の入口から前記流体として冷却用の流体aを供給する流体供給手段を備え、
しかも、前記流体供給手段が、前記領域Aとは異なる領域Bに存在する前記冷却通路に、各前記冷却通路の入口から前記流体として前記流体aとは異なる流体bを供給することを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項2】
請求項1記載の内部冷却型ロールにおいて、前記流体aが水であり、前記流体bが空気であることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の内部冷却型ロールにおいて、前記流体供給手段は、前記冷却通路の各入口と摺動可能に接した状態で固定された端面αを有し、前記流体を前記冷却通路に供給する供給口が前記端面αに設けられ、前記供給口が前記領域Aに存在する前記冷却通路に前記流体aを供給する供給口Aを含むことを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項4】
請求項1又は2記載の内部冷却型ロールにおいて、前記流体供給手段は、前記冷却通路の各入口と摺動可能に接した状態で固定された端面αを有し、前記流体を前記冷却通路に供給する供給口が前記端面αに設けられ、前記供給口が前記領域Aに存在する前記冷却通路に前記流体aを供給する供給口A、及び前記領域Bに存在する前記冷却通路に前記流体bを供給する供給口Bを含むことを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項5】
請求項3又は4記載の内部冷却型ロールにおいて、前記供給口の周囲にはシール材が設けられていることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各入口は前記ロール本体の外周面端部に設けられていることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各入口は前記ロール本体の端面に設けられていることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各出口と摺動可能に接する端面βを有し、前記冷却通路の各出口から排出される前記流体を回収する回収口が前記端面βに設けられている流体回収手段を備えることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の内部冷却型ロールにおいて、前記各冷却通路は、入口側から出口側にかけて外側に傾斜していることを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の内部冷却型ロールにおいて、前記ロール本体の回転により高温材を搬送し、前記領域Aは前記高温材との接触位置を含むことを特徴とする内部冷却型ロール。
【請求項11】
複数の冷却通路を内部に有するロール本体、及び該ロール本体を回転可能に支持する一対の軸受体を備える内部冷却型ロールを用いた高温材の搬送方法において、
前記ロール本体に前記高温材を接触させた状態で前記ロール本体を回転させることにより、前記高温材を搬送する工程を有し、
前記工程において、前記高温材との接触位置を含む前記ロール本体の領域Aに存在する前記冷却通路のみに冷却用の流体aを供給し、前記領域Aとは異なる前記ロール本体の領域Bに存在する前記冷却通路に、各前記冷却通路の入口から前記流体aとは異なる流体bを供給することを特徴とする高温材の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部冷却型ロール及びこれを用いた高温材の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備や熱間圧延設備には、ガイドロール、ピンチロール、圧下ロール等の各種ロールが設けられている。これらのロールは、使用の際、外周面が高温の鋼材等と接触して高温となる。そのため、熱負荷の軽減のために内部冷却型のロールが用いられる。内部冷却型ロールとしては、複数の冷却水通路が設けられたスリーブを軸本体に嵌合して用いる構造のものがある(特許文献1、2参照)。
【0003】
従来の内部冷却型ロールにおいては、外周面の内側に設けられた複数の冷却水通路に水を流すことで、温度上昇が抑えられる。しかし、回転方向位相に関係なく、常にロールの外周面全周が均一に冷やされることとなる。すなわち、高温材と接触する位置から離れた部分にも冷却水が流されているため、高温材から離れた位置の温度低下が大きい。すなわち、ロール外周面において、高温材との接触位置とその他位置との温度差が大きくなる。このように、ロール外周面において温度差が大きいと、ロール曲がりが生じやすくなる。また、ロールの軸中心に大口径冷却水通路を設けることや、ロールを多重構造とすることは、強度低下の面から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61−21162号公報
【特許文献2】特開平6−277808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ロール外周面における高温材との接触位置とその他位置との温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる内部冷却型ロール及び高温材の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る内部冷却型ロールは、複数の冷却通路を内部に有するロール本体、及び該ロール本体を回転可能に支持する一対の軸受体を備える内部冷却型ロールにおいて、前記複数の冷却通路は前記ロール本体の軸方向に沿って、かつ環状に配置され、各前記冷却通路が流体の入口及び出口を有し、前記ロール本体の軸を基準とした所定方向に位置する領域Aに存在する前記冷却通路のみに、各前記冷却通路の入口から前記流体として冷却用の流体aを供給する流体供給手段を備え、しかも、前記流体供給手段が、前記領域Aとは異なる領域Bに存在する前記冷却通路に、各前記冷却通路の入口から前記流体として前記流体aとは異なる流体bを供給する。
【0007】
第1の発明に係る内部冷却型ロールによれば、流体供給手段により、ロール本体の軸を基準とした所定方向に位置する領域A(例えば、高温材との接触位置及びその近傍)に存在する冷却通路のみに冷却用の流体aを供給する。このため、ロール本体外周面における領域A以外の領域については、冷却が積極的には行われないこととなる。従って、高温材との接触位置とその他位置との温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる。また、ロール本体中央(中心軸)に大口径冷却通路を設けない構造とすることで、強度の低下を抑制することもできる。ここで、「ロール本体の軸方向に沿って」とは、軸方向と完全に平行であることに限定されるものではなく、ロール本体の一方側から他方側へ実質的に直線状に配置されていれば良い。「ロール本体の軸」を基準とした所定方向とは、軸の上方向、下方向、横方向、各斜め方向などをいう。例えば、領域Aが軸の上方向に位置する領域であるとした場合、この軸の上方向に位置する領域Aに存在する冷却通路は、ロール本体の回転に伴い、順次変わっていくことになる。すなわち、流体供給手段は領域Aに入ってくる新たな冷却通路に順次流体aを供給することとなる。また、「所定方向に位置する領域」は幅を持った領域をいう。例えば軸の上方向に位置する領域とは、軸真上の外周面上の一直線に限定されず、その近傍(回転方向前後)を含む概念である。
【0008】
さらに、流体供給手段が、領域Aとは異なる領域Bに存在する冷却通路に、各冷却通路の入口から流体として流体aとは異なる流体bを供給することで、領域A以外の冷却させたくない領域に位置した冷却通路においては、流体bにより流体aを強制的に排出することができる。従って、領域A以外の領域の温度低下をより抑制することができる。なお、領域Bも、ロール本体の軸を基準とした(領域Aとは異なる)所定方向に位置する領域である。流体bの熱伝導率は、流体aの熱伝導率より小さいことが好ましい。流体bの温度は流体aの温度より高いことが好ましい。流体bの温度は、流体aの温度以下であってもよいが、この場合、流体bとして、熱伝導率が流体aの熱容量よりも小さい流体が用いられる。
【0009】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記流体aが水であり、前記流体bが空気であることが好ましい。水と空気を用いることで、経済性を高めることができる。また、水と比して熱伝導率が十分に小さい空気を流体bに用いることで、領域A以外の領域の温度低下をより抑制することができる。
【0010】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記流体供給手段は、前記冷却通路の各入口と摺動可能に接した状態で固定された端面αを有し、前記流体を前記冷却通路に供給する供給口が前記端面αに設けられ、前記供給口が前記領域Aに存在する前記冷却通路に前記流体aを供給する供給口Aを含むことが好ましい。流体供給手段が具体的にこのような構造となっていることで、領域Aに存在する冷却通路に効率的に流体aを供給することができる。
【0011】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記流体供給手段は、前記冷却通路の各入口と摺動可能に接した状態で固定された端面αを有し、前記流体を前記冷却通路に供給する供給口が前記端面αに設けられ、前記供給口が前記領域Aに存在する前記冷却通路に前記流体aを供給する供給口A、及び前記領域Bに存在する前記冷却通路に前記流体bを供給する供給口Bを含むことが好ましい。流体供給手段が具体的にこのような構造となっていることで、領域Aに存在する冷却通路に流体aを、領域Bに存在する冷却通路に流体bをそれぞれ効率的に供給することができる。
【0012】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記供給口の周囲にはシール材が設けられていることが好ましい。供給口の周囲にシール材を設けることで、流体供給手段から回転している冷却通路へ流体を供給する際の流体漏れを低減することができる。
【0013】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各入口は前記ロール本体の外周面端部に設けられていることが好ましい。このようにすることで、冷却通路を設けることによるロール本体の強度低下が抑えられる。また、温度が比較的低いロール端部にシール材を接触させることができるため、シール材等の劣化が抑制できる。
【0014】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各入口は前記ロール本体の端面に設けられていることが好ましい。このようにすることで、外周から中心方向への穿孔が不要となるため、製造コスト(穿孔に係るコスト)が低減でき、ロール本体の強度低下もより抑えられる。また、温度が比較的低いロール端部にシール材を接触させることができるため、シール材等の劣化がより抑制できる。
【0015】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記冷却通路の各出口と摺動可能に接する端面βを有し、前記冷却通路の各出口から排出される前記流体を回収する回収口が前記端面βに設けられている流体回収手段を備えることが好ましい。出口側にこのような流体回収手段を設けることで、冷却通路へ供給された流体の排出、回収を効率的に行うことができる。
【0016】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記各冷却通路は、入口側から出口側にかけて外側に傾斜していることが好ましい。この場合、ロール本体における外周面から冷却通路までの距離(肉厚)が、入口側から出口側にかけて小さくなる。このようにすることで出口側に向かうほど熱伝導性が高まり、温度が出口側に向かうほど上昇するために生じる流体aの冷却能力の低下とのバランスをとり、冷却能力の均一化を図ることができる。
【0017】
第1の発明に係る内部冷却型ロールにおいて、前記ロール本体の回転により高温材を搬送し、前記領域Aは前記高温材との接触位置を含むことが好ましい。高温材を搬送する際のロール周面における温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる。
【0018】
前記目的に沿う第2の発明に係る高温材の搬送方法は、複数の冷却通路を内部に有するロール本体、及び該ロール本体を回転可能に支持する一対の軸受体を備える内部冷却型ロールを用いた高温材の搬送方法において、前記ロール本体に前記高温材を接触させた状態で前記ロール本体を回転させることにより、前記高温材を搬送する工程を有し、前記工程において、前記高温材との接触位置を含む前記ロール本体の領域Aに存在する前記冷却通路のみに冷却用の流体aを供給し、前記領域Aとは異なる前記ロール本体の領域Bに存在する前記冷却通路に、各前記冷却通路の入口から前記流体aとは異なる流体bを供給する。第2の発明に係る高温材の搬送方法によれば、高温材を搬送する際、ロール外周における高温材との接触位置とその他位置との温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明に係る内部冷却型ロール及び第2の発明に係る高温材の搬送方法によれば、ロール外周面における高温材との接触位置とその他位置との温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる。従って、第1の発明に係る内部冷却型ロール及び第2の発明に係る高温材の搬送方法は、例えば連続鋳造設備や熱間圧延設備に設けられるガイドロール、ピンチロール、圧下ロール等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る内部冷却型ロールを示す模式的断面図である。
図2】(a)は同内部冷却型ロールのX1−X1矢視模式的断面図であり、(b)はY1−Y1矢視模式的断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る内部冷却型ロールを示す模式的断面図である。
図4】(a)は同内部冷却型ロールのX2−X2矢視模式的断面図であり、(b)はY2−Y2矢視模式的断面図である。
図5】(a)〜(d)は、実施例における冷却水入側スラブ端部より100mmの位置の温度分布を示すグラフである。
図6】実施例における冷却水入側スラブ端部より100mmの位置の温度分布を示す表である。
図7】(a)〜(d)は、実施例における冷却水出側スラブ端部より100mmの位置の温度分布を示すグラフである。
図8】実施例における冷却水出側スラブ端部より100mmの位置の温度分布を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しながら本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る内部冷却型ロール10は、ロール本体11、一対の軸受体12、流体供給手段13及び流体回収手段14を備えている。なお、高温材60の搬送は、一対の内部冷却型ロール10、110により行われる。以下、一方の内部冷却型ロール10を中心に説明し、他方の内部冷却型ロール110については、内部冷却型ロール10と異なる点について後に説明する。
【0022】
ロール本体11は円柱状であり、通常、金属製である。ロール本体11は、中心軸が水平に配置されている。ロール本体11は、複数の冷却通路15を内部に有する。
【0023】
複数の冷却通路15は、流体(液体、気体等)が流れる通路であり、流体の入口16及び出口17が設けられている。複数の冷却通路15は、ロール本体11の軸方向に沿って、環状かつ等角度間隔に配置されている。冷却通路15はロール本体11の軸と略平行である。冷却通路15の本数は、図2の16本に限定されるものではなく、例えば6〜30本、好ましく10〜20本程度である。
【0024】
各冷却通路15の入口16は、ロール本体11の外周面端部18(図1においては左側端部)に設けられている。すなわち、各冷却通路15の入口16近傍は、外周面端部18から中心軸方向に向かって形成されている。ロール本体11の外周面端部18は、他の外周面よりも径が小さくなっている。
【0025】
各冷却通路15の出口17は、入口16とは反対側のロール本体11の外周面端部19(図1においては右側端部)に設けられている。すなわち、各冷却通路15の出口17近傍は、外周面端部19から中心軸方向に向かって形成されている。ロール本体11の外周面端部19は、他の外周面よりも径が小さくなっている。
【0026】
各冷却通路15は、入口16側から出口17側にかけて(流れ方向に沿って)外側に若干傾斜している。この結果、ロール本体11の冷却通路15配設部分における外周面から冷却通路15までの距離(肉厚)が、入口側から出口側にかけて小さくなっている。
【0027】
一対の軸受体12は、ロール本体11を回転可能に、ロール本体11左右の軸受20で支持している。軸受体12は、公知のベアリング等から構成される。
【0028】
流体供給手段13(流体供給装置)は、ロール本体11の軸を基準とした所定方向に位置する領域Aに存在する冷却通路15のみに、各冷却通路15の入口16から冷却用の流体aを供給し、領域Aとは異なる領域Bに存在する冷却通路15に、各冷却通路15の入口16から流体aとは異なる流体bを供給するように構成されている。流体供給手段13は、入口側の軸受体12に対して固定されており、ロール本体11と共に回転しないように構成されている。
【0029】
ここで、図2(a)、(b)を参照しつつ、ロール本体11、流体供給手段13及び流体回収手段14における領域A、領域B、領域Cについて定義する。ロール本体11の軸に垂直な断面でロール本体11を三分割した3領域のうち、領域Aはロール本体11の軸を基準とした下方(高温材60と接触する側)に位置する領域であり、領域Bは図2においてロール本体11の軸を基準とした右上方(領域Aの回転方向下流)に位置する領域であり、領域Cは図2においてロール本体11の軸を基準とした左上方(領域Bの回転方向下流)に位置する領域である。なお、領域A〜Cは三等分されている必要はない。例えば、ロール本体11の軸に垂直な断面における領域A外周面の円弧の円周角としては、1°以上180°未満とすることができる。
【0030】
流体供給手段13は、環状体21(環状管)と、環状体21に連結される2つのパイプ22、23とを備えている。また、流体供給手段13は、2つのパイプ22、23を介して、環状体21に2種の流体を供給するポンプ(図示しない)を有する。
【0031】
環状体21は、ロール本体11の入口16側の外周面端部18に嵌めこまれて、固定されている。環状体21が、ロール本体11の外周面端部18(各冷却通路15の入口16)と接する環状(円筒状)の面が端面α24となる。端面α24は、冷却通路15の各入口16(外周面端部18)と摺動可能に接した状態で固定されている(回転しない)。
【0032】
環状体21には分離された2つの中空部25、26を有している。中空部25は、環状体21を軸方向視にて三分割した部分のうちの、下方に位置した部分(領域Aに対応する位置)に設けられる。中空部25は、環状体21の外側でパイプ22と連結している。中空部26は、環状体21を軸方向視にて三分割した部分のうちの、中空部25の下流(ロール本体11の回転方向下流)に位置した部分(領域Bに対応する位置)に設けられる。中空部26は、環状体21の外側でパイプ23と連結している。なお、環状体21の領域Cに対応する部分は中実である。
【0033】
中空部25、26の内側はそれぞれ開口しており、この開口が供給口A28、供給口B29となっている。すなわち、環状体21の内側(端面α24)には、流体を冷却通路15に供給する2つの供給口27(供給口A28、供給口B29)が設けられている。供給口A28は領域Aに存在する冷却通路15に流体aを供給し、供給口B29は領域Bに存在する冷却通路15に流体bを供給する。すなわち、流体aは、パイプ22、中空部25、供給口A28、及び領域Aに存在する冷却通路15の入口16の順に流れる。流体bは、パイプ23、中空部26、供給口B29、及び領域Bに存在する冷却通路15の入口16の順に流れる。
【0034】
端面α24における各供給口27の周囲(ロール本体11と環状体21との間)にはシール材30が設けられている。具体的には、環状の端面α24における両端部分に環状にそれぞれシール材30が設けられている。シール材30には公知のUパッキン、Oリング等のパッキンなどを用いることができる。
【0035】
流体回収手段14(流体回収装置)は、出口側の軸受体12に対して固定されており、ロール本体11と共に回転しないように構成されている。流体回収手段14は、環状体31(環状管)と、環状体31に連結される2つのパイプ32、33とを備えている。パイプ32、33は、流体を強制的に排出する吸引装置などと連結されていてもよい。
【0036】
環状体31は、ロール本体11の出口17側の外周面端部19に嵌めこまれて、固定されている。環状体31が、ロール本体11の外周面端部19(各冷却通路15の出口17)と接する環状(円筒状)の面が端面β34となる。端面β34は、冷却通路15の各出口17(外周面端部19)と摺動可能に接した状態で固定されている(回転しない)。
【0037】
環状体31には1つの中空部35を有している。中空部35は、領域A及び領域Bに対応する位置に設けられている。すなわち、流体供給手段13の環状体21においては、2つの中空部25、26が区切られているが、流体回収手段14の環状体31においては、一体となっている。中空部35は、環状体31の外側下方(領域Aに対応する位置)でパイプ32と連結しており、図2における環状体31の右上方(領域Bに対応する位置)でパイプ33と連結している。なお、環状体31の領域Cに対応する部分は中実である。
【0038】
環状体31の内側(端面β34)には、冷却通路15の各出口17から排出される流体(流体a、流体b)を回収する回収口36が設けられている。すなわち、中空部35の内側は開口しており、この開口が回収口36となっている。回収口36から回収された流体のうちの一方である流体a(例えば水)は、下側のパイプ32から回収され、流体b(例えば空気)は、上側のパイプ33から回収される。端面β34における各回収口36の周囲(ロール本体11と環状体31との間)には、供給口27側と同様にシール材37が設けられている。
【0039】
他方の内部冷却型ロール110は、以下の点を除き、内部冷却型ロール10を上下反転させた構造である。内部冷却型ロール110の流体回収手段114の環状体131は、領域Aに対応する位置に設けられた中空部135aと、領域Bに対応する位置に設けられた中空部135bとを有する。環状体131においては、区切られた2つの中空部135a、135bとを有する。なお、内部冷却型ロール110における領域A、B、Cの位置も、内部領域型ロール10を上下反転させた位置である。
【0040】
次いで、内部冷却型ロール10の使用方法(高温材の搬送方法)を説明する。内部冷却型ロール10の使用方法(高温材の搬送方法)は、図1図2に示すように、ロール本体11に高温材60を接触させた状態でロール本体11を回転させることにより、高温材60を搬送する搬送工程を有する。高温材60としては、連続鋳造や熱間圧延に供される鋼材等が挙げられる。
【0041】
この搬送工程において、流体供給手段13により、パイプ22から流体aとして水を、パイプ23から流体bとして空気を供給する。このようにすることで、高温材60との接触位置を含むロール本体11の領域Aに存在する冷却通路15のみに冷却用の流体a(水)が供給される。一方、領域Aに対して回転方向下流に位置する領域Bに存在する冷却通路15には、流体b(空気)が供給される。すなわち、ロール本体11の回転により高温材60に近づき領域Aに入った冷却通路15には水が供給され、ロール本体11を冷却させる。次いで回転により領域Bに移動した冷却通路15には空気が供給されるため、水は出口17から押し出され、領域Bに移動した冷却通路15内は空気で満たされる。さらに回転により領域Cに移動した冷却通路15は流体が供給及び排出されない状態なので、空気が満たされたままである。用いる流体a(水)及び流体b(空気)の温度としては限定されず、常温でよい。また、冷却した流体a、及び加温した流体bを用いてもよい。
【0042】
このような方法により、高温材60との接触位置及びその近傍(領域A)のみを積極的に冷却させることができる。従って、高温材60との接触位置とその反対位置との温度差を低減し、ロール曲がりの発生を抑制することができる。なお、冷却通路15から排出される流体a、bは、流体回収手段14、114を介して回収される。ここで、上側の内部冷却型ロール10の流体回収手段14は、環状体31の中空部35が一つのみであるが、比重の大きい水は下側のパイプ32から排出(回収)され、残水と空気は上側のパイプ33から排出(回収)される。一方、下側の内部冷却型ロール110の流体回収手段114においては、水は中空部135aを介して上側のパイプ132から排出(回収)され、残水と空気は中空部135bを介して下側のパイプ133から排出(回収)される。
【0043】
図3図4(a)、(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る内部冷却型ロール210は、ロール本体211、一対の軸受体212、流体供給手段213及び流体回収手段214を備えている。第2の実施の形態に係る内部冷却型ロール210は、第1の実施の形態に係る内部冷却型ロール10と比べて、ロール本体211が有する複数の冷却通路215の入口216及び出口217の位置並びにこれに対応する流体供給手段213の環状体221及び流体排出手段214の環状体231の構造が異なる。以下、上記の点を説明する。また、説明を省略する部分については内部冷却型ロール10を参照できる。
【0044】
各冷却通路215の入口216は、ロール本体211の端面218(図3においては左側端面)に設けられている。各冷却通路215の出口217は、ロール本体211の端面219(図3においては右側端面)に設けられている。すなわち、各冷却通路215は入口216から出口217まで一直線に形成(穿孔)されている。
【0045】
流体供給手段213の環状体221は、ロール本体211の端面218(各冷却通路215の入口216)と接する平面的な環状の端面α224を有する。端面α224は、冷却通路215の各入口216(端面218)と摺動可能に接した状態で固定されている(回転しない)。環状体221の端面α224には、流体aを領域Aの冷却通路215に供給する供給口A228と、流体bを領域Bの冷却通路215に供給する供給口B229とが設けられている。すなわち、中空部225、226のロール本体211側(端面218側)はそれぞれ開口しており、この開口が供給口A228、供給口B229となっている。流体aは、パイプ222、中空部225、供給口A228、及び領域Aに存在する冷却通路215の入口216の順に流れる。流体bは、パイプ223、中空部226、供給口B229、及び領域Bに存在する冷却通路215の入口216の順に流れる。
【0046】
流体回収手段214の環状体231は、ロール本体211の端面219(各冷却通路215の出口217)と接する平面的な環状の端面β234を有する。端面β234は、冷却通路215の各出口217(端面219)と摺動可能に接した状態で固定されている(回転しない)。端面β234は、平面状である。端面β234には、複数の回収口236が設けられている。流体aは、領域Aに位置する回収口236から中空部235及び下側のパイプ232を介して回収される。流体bは、領域Bに位置する回収口236から中空部235及び上側のパイプ233を介して回収される。
【0047】
内部冷却型ロール210の対となる内部冷却型ロール310については、内部冷却ロール210を上下反転させた基本構造である。但し、第1の実施の形態と同様に、流体回収手段314の環状体331が、区切られた2つの中空部335a、335bを有することが異なる。
【0048】
第2の実施の形態に係る内部冷却型ロール210、310の使用方法は、第1の実施の形態に係る内部冷却型ロール10、110と同様である。内部冷却型ロール210、310においては、冷却通路215が一直線に形成されているため、冷却通路215を設けたことによるロール本体211の強度低下が抑えられる。また、温度が比較的低いロール本体211の端部にシール材230を接触させることができるため、シール材230等の劣化が抑制できる。
【0049】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、流体aと流体bとの組み合わせとしては、水と空気に限定されず、二種の流体(液体又は気体)を適宜組み合わせて用いればよい。例えば、流体aとして冷水を、流体bとして温水を用いることもできる。また、流体回収手段には一つのパイプのみを設け、2種類の流体a、bをまとめて回収するようにしてもよい。さらには、3種以上の流体を供給する構造としてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の比較例1、2及び実施例1、2の条件で、内部冷却型ロールを冷却しながらスラブを搬送した。ロール外周面上の各位置における温度を測定した。
[a:比較例1]
冷却通路を中心軸のみに設けた中心孔ロールをロール本体に用いた内部冷却型ロールとした(流量60L/min)。
[b:比較例2]
16本の冷却通路を環状に設けた表層冷却ロールをロール本体に用いた内部冷却型ロールとした。但し、全冷却通路に水を供給した(流量60L/min)。
[c:実施例1]
16本の冷却通路を環状に設けた表層冷却ロールをロール本体に用いた内部冷却型ロールとした。但し、高温材(スラブ)との接触位置を中心に約60°の領域Aに位置する冷却通路のみに水を供給した(流量60L/min)。他の領域には何も供給しなかった。他の領域には領域Aで供給した水が残っていることが確認できた。
[d:実施例2]
16本の冷却通路を環状に設けた表層冷却ロールをロール本体に用いた内部冷却型ロールとした。但し、高温材(スラブ)との接触位置を中心に約60°の領域Aに位置する冷却通路のみに水を供給した(流量60L/min)。他の領域には空気を供給、封入した。他の領域には残水が確認されなかった。
【0051】
[結果]
測定結果を図5図8に示す。図5(a)〜(d)及び図6は、冷却水入側高温材端部より100mmの位置の温度分布を示すグラフ及び表である。図7(a)〜(d)及び図8は、冷却水出側高温材端部より100mmの位置の温度分布を示すグラフ及び表である。
【0052】
図5図8に示されるように、接触点位置における温度については、実施例1、2は全周を冷却している比較例2と同様に十分に冷却が行われている。一方、接触点位置とその反対側の位置との温度差(T0°−T180°)は、比較例1、2と比して、実施例1、2は小さく、特に実施例2においては更に小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0053】
10:内部冷却型ロール、11:ロール本体、12:軸受体、13:流体供給手段、14:流体回収手段、15:冷却通路、16:入口、17:出口、18、19:外周面端部、20:軸受、21:環状体、22、23:パイプ、24:端面α、25、26:中空部、27:供給口、28:供給口A、29:供給口B、30:シール材、31:環状体、32、33:パイプ、34:端面β、35:中空部、36:回収口、37:シール材、60:高温材、110:内部冷却型ロール、114:流体回収手段、131:環状体、132、133:パイプ、135a、135b:中空部、210:内部冷却型ロール、211:ロール本体、212:軸受体、213:流体供給手段、214:流体回収手段、215:冷却通路、216:入口、217:出口、218、219:端面、221:環状体、222、223:パイプ、224:端面α、225、226:中空部、228:供給口A、229:供給口B、230:シール材、231:環状体、232、233:パイプ、234:端面β、235:中空部、236:回収口、310:内部冷却型ロール、314:流体回収手段、331:環状体、335a、335b:中空部、A:領域A、B:領域B、C:領域C、a:流体a、b:流体b
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8