特許第6322470号(P6322470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルファの特許一覧

<>
  • 特許6322470-ロータリースイッチ装置 図000002
  • 特許6322470-ロータリースイッチ装置 図000003
  • 特許6322470-ロータリースイッチ装置 図000004
  • 特許6322470-ロータリースイッチ装置 図000005
  • 特許6322470-ロータリースイッチ装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322470
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】ロータリースイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/02 20060101AFI20180423BHJP
   H01H 1/48 20060101ALI20180423BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180423BHJP
   B60R 25/021 20130101ALN20180423BHJP
【FI】
   H01H19/02 E
   H01H1/48
   B60R16/02 645A
   !B60R25/021
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-91444(P2014-91444)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-210933(P2015-210933A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 高裕
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−245040(JP,A)
【文献】 特開昭64−089222(JP,A)
【文献】 特開2003−242858(JP,A)
【文献】 特開平09−147673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/02
B60R 16/02
B60R 25/021
H01H 1/06
H01H 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点上で可動接点を回転させて固定接点と可動接点とを断接するロータリースイッチ装置であって、
前記両接点は帯状で防蝕用導電加工が施された接触面を有し、双方の接触面には、接触開始から所定の接続操作角の間に他方に対する接触点が一端部から他端部に向けて移動する過渡接触領域が設けられるとともに、
前記固定接点、および電源端子を所定の接触方向線に向けて露出させて保持するスイッチケースと、
前記スイッチケースに対して、前記接触方向線に沿う軸周りに回転自在で、前記可動接点を前記接触方向線に向けて進退自在に保持する接点ホルダとを有し、
前記可動接点は、所定厚を有して板状に形成され、圧縮スプリングにより材端を電源端子に常時接触させるとともに、導通時に固定接点に各々所定接触圧で接触させ、
かつ、前記固定接点の辺縁に面取り部を形成するとともに、電源端子と固定接点を前記接触方向線方向に異なった高さに配置して前記可動接点を傾斜姿勢に保持し、可動接点を固定接点に線接触させて導通が取られるロータリースイッチ装置。
【請求項2】
前記スイッチケースには、固定接点の接触開始点を終点とし、かつ、終点を傾斜面により形成した可動接点の乗り上げ突条が設けられる請求項1記載のロータリースイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチケースには、前記固定接点と電源端子間を隔てる緩衝凹部が設けられる請求項1または2記載のロータリースイッチ装置。
【請求項4】
前記固定接点の過渡接触領域は、接触開始点近傍において可動接点上での移動速度が低速となる形状に形成される請求項1、2または3記載のロータリースイッチ装置。
【請求項5】
前記固定接点の過渡接触領域は、接触開始位置近傍において可動接点の回転中心との間隔が最大となる形状に形成される請求項1、2、3または4記載のロータリースイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリースイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動接点を回転操作することにより固定接点に短絡させ、スイッチの断接を行うロータリースイッチ装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例におけるロータリースイッチ装置は高電流仕様として構成されており、両接点は、接触開始時のアーク放電を考慮して無メッキの銅合金等の導電金属により形成され、接触面に発生する酸化皮膜を接触面同士を高接触圧で摺接させることで剥離して接点間を清浄に保ち、接触不良が防止される。
【0003】
一方、かかる高電流用接点は、高接点圧で摺接させることによる摩耗を少なくするために所定の機械的性質が求められることから、接触抵抗が大きくなる傾向があり、そのままでは低電流用として使用に適さないために低電流用の接点を別途設定する必要がある。
【0004】
この低電流仕様の接点は、低接点圧での接触抵抗を小さくし、さらに高接点圧による接触面のクリーニング作用を期待できないために、表面に防蝕用導電メッキが施されるが、高電流用に使用した場合には、アーク放電によるメッキ膜の損傷が発生するために、高電流仕様を兼用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−238434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、高電流、低電流の双方で使用可能なロータリースイッチ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
固定接点1上で可動接点2を回転させて固定接点1と可動接点2とを断接するロータリースイッチ装置であって、
前記両接点は帯状で防蝕用導電加工が施された接触面を有し、双方の接触面には、接触開始から所定の接続操作角の間に他方に対する接触点が一端部から他端部に向けて移動する過渡接触領域3が設けられる構成を含む
【0008】
本発明において、ロータリースイッチ装置の固定接点1、および可動接点2の接触面は防蝕用導電加工により腐食が防止され、高接点圧での摺動によるクリーニング作用に頼ることなく接触面が清浄に保持されるために、低電流用として使用した場合にも、接触面腐食が発生することなく、絶縁性皮膜の発生による接触不良の発生が防がれる。
【0009】
また、両接点は細長帯形状に形成されて可動接点2の回転とともに双方の接触点が一端部から他端部に移動するために、アーク放電による接解部膜損傷が発生しても、接続操作角においては、双方の接触面は清浄な表面状態が維持されるために接触不良が発生することはない。
【0010】
防蝕用導電加工面は、銅等の導電金属の表面に銀メッキを施したり、あるいはクラッド加工、ディスク加工を施すことにより得ることができる。
【0011】
したがって本発明において、同一の構造を高電流用としても使用することも可能になるために、定格電流毎に複数種のロータリースイッチを設定する必要がなくなる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記固定接点1の過渡接触領域3は、接触開始点近傍において可動接点2上での移動速度が低速となる形状に形成される。
【0013】
過渡接触領域3の形成は、例えば、短冊状の可動接点2を、可動接点2の回転中心との距離が変化するように傾斜配置された短冊状の固定接点1上で移動させることにより実現可能であるが、固定接点1の可動接点2との接触開始点近傍の傾斜を緩やかにすると、可動接点2を所定の角速度で回転操作した際の可動接点2上の固定接点1との接触点の移動速度が低速となる。
【0014】
このように、低速移動領域を両電極の接触初期に設けると、可動接点2上のアーク放電による接解部損傷領域を狭域に限定することが可能になる。
【0015】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記固定接点1の過渡接触領域3は、接触開始位置近傍において可動接点2の回転中心との間隔が最大となる形状に形成される。
【0016】
本態様において、可動接点2を所定の角速度で回転操作した場合、固定接点1上の可動接点2の周速度は、回転中心からの間隔が最大となる接触開始位置で最大となるために、通過時間が最小となる。この結果、固定電極のアーク放電による影響距離が最小になり、電極の劣化を効果的に防止することが可能になる。
【0017】
さらに、本発明は、
前記固定接点1、および電源端子4を所定の接触方向線に向けて露出させて保持するスイッチケース5と、
前記スイッチケース5に対して、前記接触方向線に沿う軸周りに回転自在で、前記可動接点2を前記接触方向線に向けて進退自在に保持する接点ホルダ6とを有し、
前記可動接点2は、所定厚を有して板状に形成され、圧縮スプリング7により材端を電源端子4に常時接触させるとともに、導通時に固定接点1に各々所定接触圧で接触させる構成を含む
【0018】
本態様において、可動接点2は接点圧付加方向に付勢力を与えたフローティング構造を有しているために、固定接点1に対する追随性が高くなり、接続信頼性が向上し、さらに、構造も簡単になる。
【0019】
また、本発明において
前記固定接点1の辺縁に面取り部8を形成するとともに、電源端子4と固定接点1を前記接触方向線方向に異なった高さに配置して前記可動接点2を傾斜姿勢に保持し、可動接点2を固定接点1に線接触させて導通が取られる。
【0020】
本態様において、固定接点1の辺縁には面取りが形成され、フローティング状態の可動接点2は面取り部8の稜線に線接触することにより、各移動点での均質な接触品質が確保される。
【0021】
また、固定接点1に面取りを形成し、可動接点2を稜線に接触させると、固定接点1が摩耗した場合、接触点が摩耗量に対応して接触点が移動するために、可動接点2に対して常に清浄な接触点を提供することができる。
【0022】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記スイッチケース5には、固定接点1の接触開始点を終点とし、かつ、終点を傾斜面9により形成した可動接点2の乗り上げ突条10が設けられる。
【0023】
本態様において、可動接点2は非接触回転位置において乗り上げ突条10に乗り上げており、接触開始は乗り上げ突条10の終点に形成された傾斜面9を下りながら徐々に可動接点2の接触面全面が固定接点1表面に接触して行われる。この結果、可動接点2が同一平面上で接触開始する場合には、固定接点1の端縁が接続開始点となり、エッジ効果による放電集中が発生して接点への損傷が大きくなるが、本態様においては、可動接点2が固定接点1上にランディングする状態で接触開始するために、エッジ効果による接点への損傷を軽減することが可能になる。
【0024】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記スイッチケース5には、前記固定接点1と電源端子4間を隔てる緩衝凹部11が設けられる。
【0025】
本態様において、固定接点1を電源端子4との間に設けられる緩衝凹部11は、アーク放電による粒子等の貯留スペースとなって固定接点1と電源端子4との間に導電性粒子が連続状に堆積することを防止する緩衝帯となるために、固定接点1を電源端子4との間に連続した導電性粒子層が形成されて固定端子と電源端子4間が短絡することを防止する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば高電流、低電流の双方で使用可能なロータリースイッチ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ステアリングロック装置を示す断面図である。
図2】ロータリースイッチ装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はスイッチケースの固定接点は一面を示す図である。
図3】ロータリースイッチ装置の分解斜視図である。
図4】ロータリースイッチ装置の動作を示す図で、(a)は非導通状態を示す図、(b)はIGN1固定接点、およびIGN2固定接点が電源端子に接続した直後の状態を示す図、(c)はIGN1固定接点、およびST固定接点が電源端子に接続した状態を示す図、(d)は(b)の斜視図である。
図5】ロータリースイッチ装置の断面図で、(a)は図4(a)の5A-5A線断面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は(b)の要部をさらに拡大した図、(d)は(a)の5D-5D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1以下にステアリングロック装置に使用されるイグニッションスイッチとして構成された本発明のロータリースイッチを示す。本例のステアリングロック装置は、ハウジング12内に収容されるシリンダ錠13、シリンダ錠13のプラグ13aの終端に連結されるカム部材14を有し、図外のステアリングカラムに固定される。
【0029】
ハウジング12にはカム部材14の回転軸方向に直交する方向に進退してステアリングカラム内に突出するロック位置と、ハウジング内に収容されるアンロック位置との間を移動するロックピース15が装着される。ロックピース15は圧縮スプリング15aによりロック位置方向に付勢されており、シリンダ錠のプラグ13aをロック回転位置から回転操作すると、ロック位置からアンロック位置に移動し、ステアリングシャフトへの操作が可能になる。
【0030】
上記カム部材14の終端には、プラグ13aの回転に伴って所定の接点間を導通させ、車両の電装系への給電状態を変更するイグニッションスイッチ(A)が連結される。
【0031】
このイグニッションスイッチ(A)は、図2、3に示すように、スイッチケース5と、スイッチケース5に対して回転中心周りに回転自在な接点ホルダ6と、スイッチケース5に連結されて接点ホルダ6を覆うスイッチカバー16とを有し、絶縁材料により円柱状に形成されるスイッチケース5には円形の電源端子4と固定接点1とが接点ホルダ6との回転境界面に露出した状態で配置される。
【0032】
図3に示すように、接点ホルダ6は、一端部に上記カム部材14との連結孔6aを備えたプラグ連結部6bを備え、トーションスプリング17により初期回転位置に付勢される。また、接点ホルダ6は、クリックスプリング18により付勢されるクリックボール19をスイッチケース5内壁に押し当てることにより適宜の接続操作角で節度回転する。
【0033】
さらに接点ホルダ6には、所定板厚を有する板状の可動接点2が板厚面をスイッチケース5に向けて収容される。後述するように、可動接点2は回転軸方向に移動自在であり、接点ホルダ6に収容される圧縮スプリング7によりスイッチケース5表面側に付勢される。
【0034】
図2(c)に示すように、上記電源端子4は、図外の電源に接続され、スイッチケース5の中心部、すなわち、接点ホルダ6の回転中心位置に配置される。また、上記固定接点1は、表面に腐食を防止するための銀メッキ等が施されて細長帯状に形成され、電源端子4周囲を囲むように配置され、上記接点ホルダ6に保持された可動接点2は、表面に銀メッキ等が施され、電源端子4と固定接点1とを橋渡すように配置される。図4に示すように、可動接点2は、上記圧縮スプリング7により付勢されていずれの回転位置においても常時電源端子4に圧接されて接続され、さらに、固定接点1上を移動した際の固定接点1への擦過傷の発生を防止するために、可動接点2の固定接点1との接触面は、曲率面として形成される(図5(d)参照)。
【0035】
上記可動接点2を時計回りに回転させて”OFF”状態から”ON”状態に遷移させる本例において、図2(c)に示すように、スイッチケース5には、各固定接点1の接続開始点から反時計回り方向に延びる乗り上げ突条10が設けられ、該乗り上げ突条10の終点領域には、先端に行くに従って漸次低背となる傾斜面9が設けられる。
【0036】
また、固定接点1は、上述した接続操作角での可動接点2の接触位置の手前に過渡接触領域3を設けて形成される。過渡接触領域3は、可動接点2との接続開始点から接続操作角での接触位置に行くに従って漸次接点ホルダ6の回転中心に向かうように傾斜状に配置することによって構成される。
【0037】
さらに、図5(c)に示すように、上記固定接点1の回転中心側辺縁は面取りされ、一端が電源電極上に圧接される可動接点2は、上述した面取り部8の稜線に接触して導通が取られる。
【0038】
可動接点2を面取り部8の稜線に接触させるために、図5(b)に示すように、固定接点1は、電源電極が設けられる面に比して高い位置(高低差δ)に配置され、高低差による傾斜による電源電極との鋭利接触を防止するために、可動接点2の電源電極側の隅角部にはアール面取り部2aが形成される(図5(c)参照)。
【0039】
したがって本例において、図4(a)に示す非導通状態から接点ホルダ6を時計回りに回転させると、可動接点2はスイッチケース5に形成される乗り上げ突条10上を移動し、傾斜面9を経由して図4(b)に示すように、固定接点1の接触開始点上に着地する。固定接点1上への可動接点2の接触により対応する固定接点1(本例においてはIG1端子、およびIG2端子)への給電が開始される。
【0040】
この後、さらに、上述した接続操作角まで可動接点2を回転操作すると、固定接点1上の可動接点2との接触点が順次移動するとともに、可動接点2上の固定接点1との接触点も順次電源端子4との接触点側に移動する。この結果、特に高電流用として使用され、導通開始初期にアーク放電が発生しても、図4(c)に示す接続操作角においては、常に清浄な接触状態が得られる。
【0041】
なお、図4(c)は、IG1端子、およびST端子接続操作角まで可動接点を回転操作したときの接点の接続状態を示す。
【0042】
また、図2(c)に示すように、過渡接触領域3の初期、すなわち、固定接点1の接触開始点近傍は後続の領域に比して傾斜角度が小さいために、可動接点2上での固定接点1の相対移動速度は小さくなり、固定接点1上でのアーク放電領域を限定し、接続操作角における清浄な接触状態が確保される。
【0043】
さらに、上述したように、可動接点2は一端が電源端子4上に支承されて固定接点1の面取り部8の稜線に接触して導通が取られるために、接触点が摩耗した場合には、接触点は順次電源端子4方向に移動し、常に清浄な接触状態が確保される。
【符号の説明】
【0044】
1 固定接点
2 可動接点
3 過渡接触領域
4 電源端子
5 スイッチケース
6 接点ホルダ
7 圧縮スプリング
8 面取り部
9 傾斜面
10 乗り上げ突条
11 緩衝凹部
図1
図2
図3
図4
図5