特許第6322474号(P6322474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6322474疎水性シリカ粉末、それを含むゴム成型用組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322474
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】疎水性シリカ粉末、それを含むゴム成型用組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/159 20060101AFI20180423BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180423BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180423BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20180423BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   C01B33/159
   C08K3/36
   C08L21/00
   C08K9/06
   C08K7/18
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-96969(P2014-96969)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-214433(P2015-214433A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】若宮 義憲
(72)【発明者】
【氏名】西田 広泰
(72)【発明者】
【氏名】小柳 嗣雄
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−330328(JP,A)
【文献】 特開2004−102236(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018704(WO,A1)
【文献】 特開2013−216506(JP,A)
【文献】 特開2013−082584(JP,A)
【文献】 特開平05−085716(JP,A)
【文献】 特開2012−031306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程1〜工程4を含むことを特徴とする、動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.01〜0.40μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が70%以上で標準偏差が0.50μm以下である疎水性シリカ粉末の製造方法。
工程1:平均粒子径(D1)が0.01〜0.20μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルに陽イオンの脱離処理および陰イオンの脱離処理をする工程。
工程2:前工程に続き、前記シリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末を得る工程。
工程3:前工程に続き、水分存在下、前記シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程4:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
【請求項2】
前記工程4に続けて、次の工程5と工程6を複数回反復させることを特徴とする請求項記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
工程5:水分存在下、疎水性シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程6:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性シリカ粉末、それを含むゴム成型用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ粉末は種々の技術分野において使用されている。例えば低燃費タイヤの原料としてシリカ粉末が用いられている。低燃費タイヤの原料として用いる場合、シリカ粉末は疎水性および分散性の程度が高いことが望まれる。
【0003】
このような疎水性シリカ粉末を製造する際、原料として、珪素化合物へ気相法(火炎加水分解法や火炎燃焼法)を適用して得られるシリカ(一般にフュームドシリカといわれる)や湿式シリカが、従来、広く用いられている。これに関する従来法として、例えば特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。また、原料として水系シリカゾルを用いて疎水性シリカ粉末を得る方法についても提案されている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−67475号公報
【特許文献2】国際公開第2004/060803号パンフレット
【特許文献3】特開2011−236089号公報
【特許文献4】特開2006−169096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1〜4に記載の従来法によって得られる疎水性シリカ粉末は、分散性に改善の余地があった。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、分散性に優れる疎水性シリカ粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。また、その疎水性シリカ粉末を含み、良好な転がり性を備えるタイヤを得ることができるゴム成型用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(8)である。
(1)動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.01〜0.40μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が70%以上で標準偏差が0.50μm以下である疎水性シリカ粉末。
(2)前記疎水性シリカ粉末が球状シリカ微粒子の集合体であることを特徴とする、上記(1)に記載の疎水性シリカ粉末。
(3)前記球状シリカ微粒子の短径/長径比が0.8〜1.2の範囲内にある上記(2)に記載の疎水性シリカ粉末。
(4)前記球状シリカ微粒子がスルフィド基を有する疎水性球状シリカ微粒子であることを特徴とする上記(2)又は上記(3)記載の疎水性シリカ粉末。
(5)前記球状シリカ微粒子が更にスルフィド基以外の有機基を有する疎水性球状シリカ微粒子であることを特徴とする上記(4)記載の疎水性シリカ粉末。
(6)次の工程1〜工程4を含むことを特徴とする上記(1)〜上記(5)の何れかに記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
工程1:平均粒子径(D1)が0.01〜0.20μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルに陽イオンの脱離処理および陰イオンの脱離処理をする工程。
工程2:前工程に続き、前記シリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末を得る工程。
工程3:前工程に続き、水分存在下、前記シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程4:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
(7)前記工程4に続けて、次の工程5と工程6を複数回反復させることを特徴とする上記(6)記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
工程5:水分存在下、疎水性シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程6:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
(8)上記(1)〜(5)の何れかに記載の疎水性シリカ粉末を含有するゴム成型用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分散性に優れる疎水性シリカ粉末およびその製造方法を提供することができる。また、その疎水性シリカ粉末を含み、良好な転がり性を備えるタイヤを得ることができるゴム成型用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について説明する。
本発明は、動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.01〜0.40μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が70%以上で標準偏差が0.50μm以下である疎水性シリカ粉末である。
このような疎水性シリカ粉末を、以下では「本発明のシリカ粉末」ともいう。
【0009】
また、本発明は、次の工程1〜工程4を含むことを特徴とする、本発明のシリカ粉末の製造方法である。
工程1:平均粒子径(D1)が0.01〜0.20μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルに陽イオンの脱離処理および陰イオンの脱離処理をする工程。
工程2:前工程に続き、前記シリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末を得る工程。
工程3:前工程に続き、水分存在下、前記シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程4:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
このような疎水性シリカ粉末の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0010】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法が備える工程1〜工程4について説明する。
【0011】
<工程1>
本発明の製造方法が備える工程1では、初めに、特定のシリカゾルを用意する。このシリカゾルは、珪酸ナトリウム又は有機珪素化合物を原料として調製されるものである。また、平均粒子径(D1)が0.01〜0.20μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が95%以上で標準偏差が0.10μm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散しているものである。
【0012】
このようなシリカゾルは、一例として本願出願人による特開昭63−045114号公報に記載の方法や、特開昭63−64911号公報に記載の、シード粒子として用いられる比較的小さな粒子径を有するシリカ粒子の分散液の製造方法によって得ることができる。
【0013】
また、珪酸ナトリウムを原料として調製されるシリカゾルは、例えば、カレットを溶解等して得た珪酸ナトリウム水溶液について、陽イオン交換樹脂等を用いて陽イオン成分を除去して酸性珪酸液を得た後、この一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性(例えばpHを11〜12)に調整し、さらに好ましくは80〜90℃程度に保持し、ここへ、好ましくは1〜20℃とした前記フィード液を徐々に添加して得ることができる。
また、有機珪素化合物を水やアルカリで加水分解して得られるシリカゾルや、ケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを混合して得られるシリカ系ゾル(シリカゾル)でも使用できる。
【0014】
工程1において用いるシリカゾルは、例えば上記のような方法によって得られるものであってシリカ微粒子が溶媒(好ましくは水)に分散してなるものである。
【0015】
ここでシリカ微粒子の平均粒子径(D1)は0.01〜0.20μmの範囲であるが、0.020μm以上であることが好ましい。また、0.10μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。
【0016】
シリカ微粒子の粒度分布における頻度(体積基準)は、その95%(体積%)以上が0.01〜0.20(好ましくは0.01〜0.10)μmの範囲内である。この範囲内にある上記頻度は95%以上であることが好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。
【0017】
シリカ微粒子の粒度分布における頻度(体積基準)は、その標準偏差(SD)が0.10μm以下であり、0.07μm以下であることが好ましい。
【0018】
前記シリカ微粒子の平均粒子径(D1)、粒度分布の頻度および標準偏差は、次のような方法で粒度分布を測定して得る値を意味するものとする。
初めに、シリカ微粒子が分散してなるシリカゾルに純水を添加して、シリカ微粒子の質量濃度を1質量%に調整し、10分超音波にて分散した後、従来公知の動的光散乱粒子径測定装置(例えば、日機装社製、マイクロトラック)にて、粒度分布を測定する。測定条件は、粒子屈折率:1.45、密度:2.2g/cm3、溶媒屈折率:1.333、測定時間:60秒とする。そして、粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から平均粒子径(メジアン径、μm)、頻度(体積%)および標準偏差を読み取る。
なお、後述する実施例および比較例においても、シリカ微粒子の平均粒子径(D1)、粒度分布および標準偏差の頻度は、このような方法によって測定した。
【0019】
シリカ微粒子の比表面積は特に限定されないが、20〜250m2/gであることが好ましく、50〜220m2/gであることがさらに好ましい。
【0020】
なお、本発明において比表面積は、連続流動法によるBET1点法測定で求める値とする。この測定方法について具体的に説明する。初めに、シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とする。そして、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30体積%/ヘリウム70体積%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、比表面積を算出する。このようなBET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置(例えば、ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて測定することができる。
【0021】
シリカ微粒子の形状は球状粒子であることが好ましい。
ここで、球状のシリカ微粒子は、走査型電子顕微鏡を用いて25万から50万倍に拡大した画像から、粒子200個を計測して短径/長径比を求めてその値が0.8〜1.2の範囲内にあるものを意味するものとする。
【0022】
シリカゾルに含まれるシリカ微粒子の濃度(固形分濃度)は特に限定されないが、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0023】
シリカゾルのpHは特に限定されないが、8〜11であることが好ましく、9〜10.5であることがより好ましい。
【0024】
シリカゾルは、H2SO4、HCl等のpH調整剤やNaOH等の従来公知の安定化剤を含むことができる。
【0025】
工程1では、上記のようなシリカゾルについて陽イオンの脱離処理および陰イオンの脱離処理を施す。
陽イオンの脱離処理と陰イオンの脱離処理とを施す順番は特に限定されないが、前記シリカゾルに陽イオンの脱離処理を施した後に陰イオンの脱離処理を施すことが好ましい。
【0026】
陽イオンの脱離処理は、前記シリカゾルに含まれる陽イオン成分の少なくとも一部(好ましくはほとんど全て)を除去できる処理であれば特に限定されず、例えば従来公知の処理を適用することができる。陽イオンの脱離処理は陽イオン交換処理であることが好ましい。陽イオン交換処理としては、例えば陽イオン交換樹脂とシリカゾルとを接触させる処理が挙げられる。
【0027】
陰イオンの脱離処理は、前記シリカゾルに含まれる陰イオン成分の少なくとも一部(好ましくはほとんど全て)を除去できる処理であれば特に限定されず、例えば従来公知の処理を適用することができる。陰イオンの脱離処理は陰イオン交換処理であることが好ましい。陰イオン交換処理としては、例えば陰イオン交換樹脂とシリカゾルとを接触させる処理が挙げられる。
【0028】
<工程2>
工程2では、工程1の処理を施された後のシリカゾルを噴霧乾燥し、シリカ粉末乾燥品を得る。
【0029】
噴霧乾燥は、シリカゾルをノズルからチャンバー内に噴霧し、チャンバー内で熱風と接触させ、瞬間的に乾燥させる方法である。噴霧乾燥法は、乾燥時間が短いため、比較的熱に弱い物質を用いる場合にも適しており、また、連続的に大量生産できるため低コストでシリカ粉末乾燥品を得ることができる。
【0030】
噴霧乾燥のための各条件は、得られるシリカ粉末乾燥品の粒子径等を考慮しながら、適宜調整することができる。例えば、熱風気流中に1〜3リットル/分の速度で噴霧することによって行われる。ここでノズル噴霧圧は0.2〜0.6MPaとすることが好ましい。また、この際、熱風の温度を、入口温度が好ましくは70〜400℃、より好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは220〜240℃の範囲内、出口温度が好ましくは40〜60℃の範囲にあるように調整する。また、前記シリカゾルは、前記固形分濃度が1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%となるように予め調整した後、これをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することが好ましい。
【0031】
ここで出口温度を40〜60℃(好ましくは50〜60℃)とすると、得られるシリカ粉末乾燥品に適量の水分が残存し、次の工程において水分量を適切な範囲に調整する処理を省略することができるので好ましい。
【0032】
<工程3>
工程3では、工程2において得られたシリカ粉末乾燥品について、水分存在下、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る。
【0033】
スルフィド基含有シランカップリング剤は、YSiX3やY2SiX2(Yがスルフィド基)の一般式を持つものである。ここでXはアルコキシ基などの加水分解性の置換基で無機質と反応するものである。
【0034】
スルフィド基含有シランカップリング剤として、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス‘2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフォィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
【0035】
工程3では、前述のように、前記シリカ粉末乾燥品にスルフィド基含有シランカップリング剤を加え、さらに、スルフィド基含有シランカップリング剤以外のシラン化合物を加えることが好ましい。
【0036】
シラン化合物としてジシラザン化合物が好ましい。ジシラザン化合物として、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、1,3−Bis(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3−Bis(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
ジシラザン化合物は1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(ビス(トリメチルシリル)アミン、以下「HMDS」ともいう)が好ましい。HMDSは、通常、無色透明の液体として存在する。
【0037】
また、シラン化合物として、スルフィド基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤を用いることができる。すなわち、前記シラン化合物は、スルフィド基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤を含む。
これに対して、シラン化合物には、後述するスルフィド基含有シランカップリング剤は含まれないものとする。
【0038】
シランカップリング剤は、YSiX3やY2SiX2の一般式を持つものであり、Xはアルコキシ基などの加水分解性の置換基で無機質と反応し、Yは有機質と反応しやすいメルカプト基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、グリキシド基、ニトロ基、クロロ基などである。
【0039】
スルフィド基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロプルメチルジメトシキシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトシキシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトシキシラン、p-スチリルトリメトシキシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトシキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの炭酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。特に、正電荷の疎水性シリカ粉末を得たい場合は、3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0040】
スルフィド基含有シランカップリング剤のシリカ粉末乾燥品への添加量は特に限定されないが、シリカ粉末乾燥品100質量部(ドライベース)に対して、15質量部以下であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。
【0041】
シラン化合物(好ましくはHMDS)のシリカ粉末乾燥品への添加量は特に限定されないが、シリカ粉末乾燥品100質量部(ドライベース)に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、4〜60質量部であることがより好ましい。
【0042】
シラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加える際には、予め、シリカ粉末乾燥品の水分を含んでいる状態とする。すなわち、水分存在下にて、シリカ粉末乾燥品へシラン化合物および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を加える。前述のように、工程2によって得られたシリカ粉末乾燥品に適量の水分が残存している場合は、その状態のまま、シリカ粉末乾燥品へシラン化合物および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を加えてよいが、工程2によって得られたシリカ粉末乾燥品の水分量が不足している場合は水を加えて調整する。具体的にはシリカ粉末乾燥品の水分量が1〜30質量%である場合、水分量が適量であるとしてよい。この水分量は5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0043】
シラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加え、混合する際は、高速撹拌装置等を用いて強撹拌することでシリカ粉末乾燥品とシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤との接触を促すことが好ましい。
【0044】
シラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤をシリカ粉末乾燥品へ加える際は、所定量のシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を複数回に分けてシリカ粉末乾燥品へ加えることが好ましい。具体的には5回程度に分けて加えることが好ましい。すなわち、シリカ粉末乾燥品へ所定量のシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を加えた後、撹拌し、その後、再び、所定量のシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を加えて撹拌する操作を繰り返すことが好ましい。シリカ粉末乾燥品とシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤との接触をより促すことができ、得られる疎水性シリカ粉末における疎水性の程度が高まる傾向があるからである。
【0045】
シリカ粉末乾燥品へシラン化合物(好ましくはHMDS)および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合した後、乾燥処理を施すことが好ましい。例えば100〜200℃程度(好ましくは130〜160℃)の温度にて1〜5時間程度、乾燥処理することが好ましい。本発明の製造方法によって得られる疎水性シリカ粉末における疎水性の程度が高まる傾向があるからである。また、余剰のシラン化合物またはシランカップリング剤や副生成のメタノールやアンモニアを除去できるからである。
【0046】
シラン化合物(ここではスルフィド基含有シランカップリング剤を含まないものとする)とシランカップリング剤(スルフィド基を含むシランカップリング剤および/またはスルフィド基含有シランカップリング剤)とをシリカ粉末乾燥品へ加える際には、先にシランカップリング剤を加え、その後、シラン化合物を加えることが好ましい。シラン化合物(好ましくはHMDS)を加えた後にシランカップリング剤を加えると、シラン化合物の立体障害の影響を受け、所定量のシランカップリング剤を粉末に付与することが比較的難しいからである。また、スルフィド基を含むシランカップリング剤は、シリカとゴムとの連結を加速し、ゴムの強度を高める効果を与えるために優れている。
【0047】
<工程4>
工程4では、工程3において得られた疎水化シリカ粉末を粉砕する。
粉砕は、高圧ガス(空気等)をミル内に噴射し原料を粉砕する高速旋回粉砕装置(ジェットミル)を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法では、上記のような工程4に続けて、次の工程5と工程6を複数回(好ましくは1〜6回、より好ましくは1〜3回)、反復させることが好ましい。
工程5:水分存在下、疎水性シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る工程。
工程6:前工程に続き、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する工程。
【0049】
ここで工程5は前記工程3と同じ処理であってよい。すなわち、工程3では、水分存在下、前記シリカ粉末に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得たが、工程5では、水分存在下、疎水性シリカ粉末に、工程3と同様に、スルフィド基含有シランカップリング剤を加え、混合し、疎水化シリカ粉末を得る。
また、工程6は前記工程4と同じ処理であってよい。すなわち、工程4では、前記疎水化シリカ粉末を粉砕したが、工程6では、同様に、前記疎水化シリカ粉末を粉砕する。
例えば、本発明の製造方法における工程1、工程2、工程3および工程4を行った後に得られた疎水性シリカ粉末の平均粒子径(D2)や粒度分布が所望のものではなかった場合、工程5および工程6を反復して行うことができる。すなわち、工程5および工程6を1セットとし、このセットを繰り返して行うことができる。したがって、工程4を行った後、得られた疎水性シリカ粉末の粒度分布を測定して、平均粒子径(D2)や粒度分布が所望の範囲内であるかを確認する操作を行うことが好ましい。
なお、工程5〜工程6を複数回反復して行った後、再度、工程3を行うことが好ましい。
【0050】
このような本発明の製造方法によって、本発明のシリカ粉末を得ることができる。ただし、本発明のシリカ粉末は、珪酸ナトリウム又は有機珪素化合物を原料として調製されるのであれば、その製造方法は限定されない。
【0051】
<本発明のシリカ粉末>
本発明のシリカ粉末は、動的光散乱法によって測定された平均粒子径(D2)が0.01〜0.40μmの範囲にあり、かつ、同範囲の粒度分布の頻度が70%以上で標準偏差が0.50μm以下である疎水性シリカ粉末である。
【0052】
本発明のシリカ粉末の平均粒子径(D2)は0.01〜0.40μmの範囲であるが、0.02μm以上であることが好ましい。また、0.30μm以下であることが好ましい。
【0053】
本発明のシリカ粉末の粒度分布における頻度(体積基準)は、その70%(体積%)以上が0.01〜0.20μm(好ましくは0.01〜0.10μm)の範囲内である。この範囲内にある上記頻度は80%以上であることが好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明のシリカ粉末の粒度分布における頻度(体積基準)は、その標準偏差(SD)が0.50μm以下であり、0.30μm以下であることが好ましい。
【0055】
本発明のシリカ粉末の平均粒子径(D2)、粒度分布の頻度および標準偏差は、次のような方法で粒度分布を測定して得る値を意味するものとする。
初めに、測定粉末0.3gを秤量し、30gのメタノールで1%に希釈し、10分超音波にて分散した後、従来公知の動的光散乱粒子径測定装置(例えば、日機装社製、マイクロトラック)にて、粒度分布を測定する。測定条件は、粒子屈折率1.45、密度2.2g/cm3、溶媒屈折率1.329、測定時間60秒とする。そして、粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から平均粒子径(メジアン径、μm)を算出し、さらに上記範囲内の頻度(体積%)を読み取る。
なお、後述する実施例および比較例においても、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)の平均粒子径(D2)、粒度分布および標準偏差の頻度は、このような方法によって測定した。
【0056】
本発明のシリカ粉末の比表面積は特に限定されないが、20〜250m2/gであることが好ましく、50〜220m2/gであることがさらに好ましい。
【0057】
本発明のシリカ粉末の比表面積は、前述のBET1点法によって測定して得る値を意味するものとする。
【0058】
本発明のシリカ粉末の形状は特に限定されないが、球状粒子であることが好ましい。すなわち、本発明のシリカ粉末は球状シリカ微粒子の集合体であることが好ましい。球状の定義は、前述のシリカ微粒子の場合と同様とする。
本発明のシリカ粉末は球状であると、本発明のシリカ粉末を低燃費タイヤの原料として利用したときに、分散効果と反応性向上によって本発明のシリカ粉末がゴム成分と反応して脱落し難くなり、転がり抵抗の低減性、グリップ性能が向上し好ましい。
【0059】
本発明のシリカ粉末は、球状粒子であって、かつ、スルフィド基を有する疎水性球状シリカ微粒子であることが好ましい。また、さらに、スルフィド基以外の有機基を有する疎水性球状シリカ微粒子であることが好ましい。
本発明のシリカ粉末が、本発明の製造方法によって得られる場合、工程3、工程5によって用いるスルフィド基含有シランカップリング剤に由来するスルフィド基が付いた疎水性球状シリカ微粒子が得られる。また、工程3、工程5においてスルフィド基含有シランカップリング剤以外のシラン化合物を用いる場合、これに由来する、スルフィド基以外の有機基を有する疎水性球状シリカ微粒子が得られる。
【0060】
本発明のシリカ粉末は疎水性を呈する。その程度は、次に説明する疎水性評価方法によって得られる値が40〜70%となることが好ましく、45〜65%となることがより好ましく、49〜62%となることがさらに好ましい。
【0061】
疎水性評価方法について説明する。
初めに、ガラス容器に純水50.0mlを加えた後、回転子を入れ、測定粉末0.5gを加える。そして、回転数600rpmにて撹拌しながらガラス容器内の純水の表面へメタノールを滴下し、液上部に浮いている粉末が全て分散された時点のメタノール量を確認し、以下の式1にて疎水性を算出する。
式1:疎水性(%)=メタノール量(ml)÷(純水量(ml)+メタノール量(ml))×100
なお、後述する実施例および比較例においても、本発明のシリカ粉末(疎水性シリカ粉末)の疎水性の程度は、このような方法によって測定した。
【0062】
本発明のシリカ粉末は、低燃費タイヤの原料として使用出来る。本発明のシリカ粉末の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは、60質量部以上である。10質量部未満であると、シリカ配合による十分な効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは110質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴム成分への分散が困難となり、混練加工性が悪化する傾向がある。
【0063】
従来品は気相法(スプレー法)で粉体シリカを得ている。このシリカ粉体がゴム成分と表面処理剤と同時に混合してタイヤ用ゴムを形成している。この場合、シリカの表面処理を行う上で多量の表面処理剤が必要であり、高価格のタイヤとなっている。シリカとゴムの均一な結合が不足していると考えられる。本発明は、予め個々のシリカを表面処理してゴム成分との反応を効率的に行わせるものであり、少ない表面処理剤で目的とする良好な転がり性やグリップ性能を備えるタイヤを得ることができる。
本発明のシリカ粉末は、前述のように低燃費タイヤの原料として好ましく利用でき、その他にもフィルムやコート材として好ましく利用することができる。
【実施例】
【0064】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
以下の実施例および比較例における物性の測定方法および評価方法について説明する。
比表面積は、測定装置としてユアサアイオニクス製、マルチソーブ12を用い、前述の方法で測定した。
シリカ微粒子(シリカゾル)の平均粒子径(D1)および頻度、ならびに、疎水性シリカ粉末の平均粒子径(D2)および頻度は、動的光散乱粒子径測定装置として日機装社製、マイクロトラックを用い、前述の方法によって測定した。
疎水性シリカ粉末の疎水性の評価は、前述の方法によって測定し、値を算出した。
【0066】
<実施例1> 球状120nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状120nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Spherical Slurry(登録商標)、SS−120)20kgに陽イオン交換樹脂5.4Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.36Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品19kgを得た。
工程B:陰イオン交換品2.2kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧して、シリカ粉末乾燥品243.8gを得た。このシリカ粉末乾燥品の水分含有率は10〜20質量%と考えられる。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、TESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を11.8g(0.022モル)加え、ミキサー粉砕による表面処理を行った。そして、ミキサー粉砕した後、TESPTを加えて表面処理を行う操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品109gを得た。本操作を2回実施し、合計218gの表面処理品を得た。
工程D:表面処理品134gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品121gを得た。
【0067】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.16μm、頻度100%の1ピークを示し、標準偏差(SD)は0.019であった。また、短径/長径の比は1.0で疎水性は60%であった。
【0068】
<実施例2> 球状80nm疎水性シリカ粉末の製法
工程A:球状80nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−80P)2.5kgに純水2.5kgを加えて20%へ希釈し、陽イオン交換樹脂0.6Lを加えて30分陽イオン交換を行った後、樹脂を分離して得た陽イオン交換品に、陰イオン交換樹脂0.13Lを加えて30分撹拌し、樹脂を分離して、陰イオン交換品4.9kgを得た。
工程B:陰イオン交換品4.7kgを、NIROスプレー装置にて、スラリー流量2L/Hr、ノズル噴霧圧0.4MPa、入口温度220〜240℃の条件で噴霧して、シリカ粉末乾燥品686gを得た。
工程C:得られたシリカ粉末乾燥品100gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、TESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を23.1g(0.043モル)を加え、ミキサー粉砕による表面処理を行った。そして、ミキサー粉砕した後、TESPTを加えて表面処理を行う操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ表面処理品117.5gを得た。
工程D:表面処理品28gをアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50にて、処理量2g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行い、粉砕品23.5gを得た。
工程E:本粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.16μmで、0.11μmのピーク頻度が84%で、0.35μmのピークの頻度が16%であったため、本粉砕品19gを高速ミキサーへ投入し、10分ミキサー粉砕を行った後、TESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を4.8g(0.009モル)を加え、ミキサー粉砕による再表面処理を行い、本操作を合計5回繰り返したのち、150℃で3Hr乾燥させ、再表面処理品16.4gを得た。
【0069】
得られた再表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.12μm、頻度100%の1ピークを示し、標準偏差(SD)は0.026であった。また、短径/長径の比は1.0で疎水性は60%であった。
【0070】
<実施例3> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を43.0g(0.08モル)を加えたこと以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施し、さらに工程D、Eを実施した。
【0071】
得られた表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.09μmで、0.06μmのピーク頻度が90%で、0.85μmのピーク頻度が10%を示し、標準偏差(SD)は0.080であった。また、短径/長径の比は1.1で疎水性は62%であった。
【0072】
<実施例4> 球状25nm疎水性シリカ粉末の製法
球状25nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−50)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を75.3g(0.14モル)を加えたこと以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施し、さらに工程D、Eを3回繰り返し実施した。
【0073】
得られた表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.08μmで、0.03μmのピーク頻度が81%で、0.92μmのピーク頻度が19%を示し、標準偏差(SD)は0.082であった。また、短径/長径の比は1.2で疎水性は61%であった。
【0074】
<実施例5> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を43.0g(0.08モル)を加えたこと以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程D、Eを実施した。
【0075】
得られた表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.32μmで、0.08μmのピーク頻度が72%で、0.32μmのピーク頻度が7%、1.07μmのピークの頻度が21%を示し、標準偏差(SD)は0.408であった。また、短径/長径の比は0.9で疎水性は59%であった。
【0076】
<比較例1> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を43.0g(0.08モル)を加え、工程Cを実施した。
【0077】
得られた表面処理品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は2.53μm、頻度100%の1ピークを示し、標準偏差(SD)は0.48であった。また、短径/長径比は1.1で疎水性は58%であった。
【0078】
<比較例2> 球状45nm疎水性シリカ粉末の製法
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を43.0g(0.08モル)を加えたこと以外は同様とした工程Cを行い、その後、工程Dを実施した。
【0079】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.63μmで、0.06μmのピーク頻度が50%で、1.01μmのピークの頻度が40%を示し、標準偏差(SD)は0.41であった。また、短径/長径比は1.3で疎水性は57%であった。
【0080】
<比較例3>
球状45nmシリカゾル(日揮触媒化成株式会社製、Cataloid(登録商標)、SI−45P)を用いて、実施例2と同様に工程A、Bを行い、シリカ粉末乾燥品100gに対してTESPT(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ダイソー社製)を43.0g(0.08モル)を加えたこと以外は同様とした工程Cを実施した。その後、工程Dは、実施例1のアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50での処理量を1g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.4MPaにて粉砕を行った。
【0081】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.35μmで、0.06μmのピーク頻度が62%で、0.98μmのピークの頻度が38%を示し、標準偏差(SD)は0.43であった。また、短径/長径比は1.1で疎水性は60%であった。
【0082】
<比較例4>
工程Dにおいて、実施例1のアイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−50での処理量を1g/min、押込み圧1.5MPa、粉砕圧0.8MPaにて粉砕を行った他は、比較例3と同様に実施した。
【0083】
得られた粉砕品の動的光散乱粒子径測定装置による平均粒子径(D2)は0.28μmで、0.06μmのピーク頻度が75%で、0.82μmのピークの頻度が25%を示し、標準偏差(SD)は0.55であった。また、短径/長径比は1.1で疎水性は61%であった。
【0084】
実施例1〜5および比較例1〜4における出発原料、工程の特徴および製品の特長について、第1表に示す。
【0085】
<耐摩耗性試験・引張試験>
次に、上記の実施例1〜5および比較例1〜4の各々において得られたもの(粉砕品、再表面処理品または表面処理品。第1表においては「シリカ」と示す。)を原料として用いて試験用タイヤおよび試験片を作成し、耐摩耗性試験および引張試験を行った。以下に詳しく説明する。
【0086】
上記の実施例1〜5および比較例1〜4の各々において使用した各種薬品について説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のSBR Nipol NS210
カーボンブラック(CB):三菱化学(株)製のダイアブラックI(N2SA:114m2/g)
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のX140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学(株)製の硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0087】
(第一ベース練り工程)
第1表に示す配合にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で3分間混練りし、混練物1を得た。
【0088】
(第二ベース練り工程)
次に、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、上記混練物1に老化防止剤、ステアリン酸および酸化亜鉛を添加し、150℃の条件下で2分間混練りし、混練物2を得た。
【0089】
(仕上げ練り工程)
さらに、オープンロールを用いて、上記混練物2に硫黄および加硫促進剤を添加し、60℃の条件下で4分間混練りして未加硫ゴム組成物を得た。
【0090】
(加硫工程)
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃で12分間加硫することにより、試験用タイヤ(カートタイヤ、タイヤサイズ:11×7.10−5)を製造した。
【0091】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0092】
(耐摩耗性)
上記評価後の試験用タイヤの摩耗状態を目視で確認し、耐摩耗性を評価した。評価結果は、実施例1を3点とし、5点満点で表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0093】
(引張り試験)
得られた加硫ゴム組成物から試験片を作製しJIS−K6251に準じて3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、破断強度(TB)と破断時伸び(EB)を測定した。そして、TB×EB/2の値をゴム強度として、実施例1のゴム強度を105とし、結果を指数表示した。指数が大きいほどゴム強度に優れることを示す。
【0094】
【表1】