【実施例1】
【0024】
第1 フロート式スチームトラップ100の構成
本願発明に係るフロート式スチームトラップの一実施例であるフロート式スチームトラップ100について
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、フロート式スチームトラップ100の一部断面を示している。
図2は、
図1に示すフロート式スチームトラップ100の弁ケーシング101の断面図を示している。また、
図3は、
図1に示すフロート式スチームトラップ100のオリフィス清掃部材107の取付部を拡大して示した図である。なお、
図3においては、トラップ状態取得センサSを取り外した状態を示している。
【0025】
図1に示すように、フロート式スチームトラップ100は、弁ケーシング101、フロート11、弁座部材9、及び、オリフィス清掃部材107を有している。また、フロート式スチームトラップ100には、トラップ状態取得センサSが取り付けられている。トラップ状態取得センサSは、フロート式スチームトラップ100の動作状態を示すフロート式スチームトラップ100の温度、具体的には弁ケーシング101(後述)の温度を取得するセンサである。
【0026】
図2に示すように、弁ケーシング101は、本体1と蓋2とをボルト3で結合することによって形成される。弁ケーシング101は、弁室4、入口5、本体1に形成される出口通路6(以下、第1出口通路6)、出口7、蓋2に形成される出口通路10(以下、第2出口通路10)、オリフィス清掃部材取付空間127、及び、弁座部材取付空間129を有している。
【0027】
弁室4は、弁ケーシング101の内部に位置する空間として形成される。入口5は、弁室4と連通するように形成される。入口5は、弁ケーシング101の外部から流入する蒸気やドレンを受け入れる。出口7は、入口5から弁ケーシング101の内部に流入した蒸気やドレンを、弁ケーシング101の外部に流出させる。第1出口通路6は、出口7と連通するように形成される。第2出口通路10は、第1出口通路6及び弁座部材取付空間129(後述)と連通する。
【0028】
オリフィス清掃部材取付空間127及び弁座部材取付空間129は、蓋2に形成される。オリフィス清掃部材取付空間127及び弁座部材取付空間129は、連続して形成される。オリフィス清掃部材取付空間127は、外部と連通するように形成され、一方、弁座部材取付空間129は、弁室4と連通するように形成される。
【0029】
なお、弁ケーシング101の本体1には、トラップ状態取得センサSを取り付けるためのセンサ取付孔Saを有している。また、トラップ状態取得センサSは、センサ取付孔Saの底面PSを介して弁ケーシング101の温度を取得する。
【0030】
図1に戻って、フロート11は、弁室4に遊置される球状物体である。フロート11は、弁室4に貯留されるドレンの量によって、弁室4を上下に移動する。
【0031】
弁座部材9は、蓋2の弁座部材取付空間129(
図2参照)に取り付けられる。これにより、弁座部材9は、弁室4の下部に配置される。
【0032】
図3に示すように、弁座部材9は、オリフィス109a及び排出通路8を有している。なお、弁室4は、オリフィス109aを介して排出通路8と連通する。また、排出通路8は、弁座部材取付空間129、第2出口通路10、第1出口通路6を介して、出口7と連通している。つまり、弁室4は、オリフィス109aを介して出口7と連通している。
【0033】
オリフィス109aは、弁室4に貯留するドレンの量に基づくフロート11の弁室4における位置によって開閉する。具体的には、弁室4に貯留するドレンが所定量以下のときは、フロート11(点線)が弁座部材9に着座し、オリフィス109aは閉じられる。一方、弁室4に貯留するドレンが所定量より多いときは、フロート11(一点鎖線)が弁座部材9から離座し、オリフィス109aは開放される。
【0034】
オリフィス洗浄部材107は、ケース13、バイメタルバネ14、操作部材115、位置調節部材16、保護キャップ117、及び、応答調整バネ119を有している。ケース13は、蓋2のオリフィス清掃部材取付空間127(
図2参照)に取り付けられる。なお、ケース13は、弁座部材9と互いの軸心が一致するように取り付けられる。ケース13は、一端が閉じられ、一端が開放されている円筒形状を有している。ケース13の閉じられている端部には、操作部材115を弁座部材9の軸心方向に摺動案内する案内孔13aが形成されている。ケース13の開放されている端部には、位置調節部材16が取り付けられる。
【0035】
位置調節部材16は、ケース13の軸心方向に沿って移動可能なように、ケース13にねじ結合される。調整部材16は、操作部材115を弁座部材9の軸心方向に摺動案内する案内孔16aを有している。なお、操作部材115は、案内孔13a及び案内孔16aによって支持され、弁座部材9の軸心方向に沿って位置する。
【0036】
バイメタルバネ14は、バイメタルによって形成した螺旋形状を有している。バイメタルバネ14が形成する螺旋の内部には、操作部材115が配置される。バイメタルバネ14の一端は、操作部材115の当接板115d(後述)に固定される。また、バイメタルバネ14の当接板115dに取り付けられる端部とは異なる端部は、ケース13との当接部分において固定される。但し、通常時において、バイメタルバネ14の固定されていない端部がケース13の閉じられている端部に接するように、位置調節部材16によって操作部材115の位置が調整されている。
【0037】
バイメタルバネ14は、温度応動部材である。バイメタルバネ14は、高温になると、螺旋状の半径が小さくなり、結果として、バイメタルバネ14の操作部材115に沿った長さが長くなるように形成されている。一方、低温になると、螺旋状の半径が大きくなり、結果として、バイメタルバネ14の操作部材115に沿った長さが短くなるように形成されている。
【0038】
操作部材115は、棒状部材である。操作部材115は、オリフィス109a側の先端部115a(以下、洗浄端部115a)、洗浄端部115aとは異なる端部である保持端部115b、洗浄端部115aと保持端部115bとの間に位置する操作軸部115c、及び、操作軸部115cに固定される当接板115dを有している。洗浄端部115aは、オリフィス109aの直径より若干小さい直径を有している。一方、保持端部115bは、洗浄端部115aよりも大きな直径を有している。
【0039】
当接板115dは、中心に孔を有する円環形状を有している。当接板115dの中心の孔を貫通するように、操作軸部115cが配置される。当接板115dは、所定の位置で操作軸部115cに、接着、溶接等によって、固定される。操作軸部115cに固定された当接板115dの洗浄端部115a側の面には、バイメタルバネ14の一端が固定される。また、操作軸部115cに固定された当接板115dの保持端部115b側の面には、応答調整バネ119の一端が固定される。
【0040】
バイメタルバネ14と応答調整バネ119とは、当接板115dを介して、ケース13の内部、具体的には、ケース13の閉じられた端部と、ケース13に取り付けられた位置調整部材16の端部との間に位置する固定された空間に、配置される。このため、バイメタルバネ14と応答調整バネ119とは、一方が伸びれば一方が縮む関係にある。
【0041】
保護キャップ117は、ケース13、バイメタルバネ14、操作部材115、位置調整部材16を覆うように、弁ケーシング101に取り付けられる。
【0042】
応答調整バネ119は、一般的なコイルバネを用いて形成されている。応答調整バネ119が形成する螺旋の内部には、操作部材115が配置される。応答調整バネ119の一端は、当接板115dに固定される。また、応答調整バネ119の当接板115dに取り付けられる端部とは異なる端部は、保護キャップ113との当接部分において固定される。但し、通常時において、応答調整バネ119の固定されていない端部は、位置調節部材16に接するように調整されている。
【0043】
第2 オリフィス洗浄部材107の動作
オリフィス洗浄部材107の動作について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4に示すように、フロート式スチームトラップ100が正常に動作している状態では、高温のドレンが、入口5を介して弁室4に流入する。弁室4に十分なドレンが貯留し、フロート11が弁座部材9から離座し、オリフィス109aが開放され、高温のドレンが、オリフィス109aを介してケース13にも流入する。このため、バイメタルバネ14も高温状態となり、操作部材115は、弁座部材9の排出通路8内に埋入した状態となる。
【0044】
バイメタルバネ14は、高温では、操作部材115に沿った長さが長くなる。ケース13は固定されているため、バイメタルバネ14は、当接板115dを介して、操作軸部115cを洗浄端部115aから保持端部115bに向かう矢印a51方向に押し込む。結果として、応答調整バネ119は、操作部材115に沿った長さが短くなり、圧縮状態となる。なお、バイメタルバネ14及び応答調整バネ119の特性は、フロート式スチームトラップ100が正常に動作している状態、つまり、高温状態で、バイメタルバネ14が応答調整バネ119を圧縮するように調整されている。
【0045】
また、フロート式スチームトラップ100が正常に動作している状態で、フロート11が弁座部材9に着座し、オリフィス109aが閉じられている状態でも、弁室4には、高温のドレンや高温の蒸気の流入があるため、弁ケーシング101が高温に維持される。このため、バイメタルバネ14も高温状態となり、操作部材115は、排出通路8内に埋入した状態となる。つまり、フロート式スチームトラップ100が正常に動作している状態では、操作部材115は、排出通路8内に埋入した状態となる。このとき、バイメタルバネ14は、操作部材115に沿った長さが長くなる一方、応答調整バネ119は、操作部材115に沿った長さが短くなり、圧縮状態となる。
【0046】
一方、
図5に示すように、オリフィス109aに堆積物が付着し、ドレンを全く排出できない、又は、必要な量のドレンを排出できない状態では、いずれドレンが弁室4を満たし、さらには、入口5までも満たし、弁室4、入口5にドレンが滞留することになる。滞留したドレンは温度が低下し、ひいては、弁ケーシング101の温度を低下させる。そして、バイメタルバネ14の温度が低下し、操作部材115は弁室4に向かって移動し、操作部材115の洗浄端部15aがオリフィス109aから弁室4に向かって突出する。これにより、オリフィス109aに付着する堆積物を除去する。なお、ドレンを排出できない状態においては、弁室4に必要以上のドレンが滞留しているため、フロート11は弁座部材9から離座している。
【0047】
バイメタルバネ14は、低温では、操作部材115に沿った長さが短くなり、収縮状態となる。バイメタルバネ14の収縮に連動して、圧縮されていた応答調整バネ119が伸張する。応答調整バネ119は、当接板115dを介して、バイメタルバネ14を保持端部115bから洗浄端部115aに向かう矢印a53方向に押し込む。このように、高温状態から低温状態に移行する際に、バイメタルバネ14は、自らが収縮する力に、応答調整バネ119が伸張する力を加えて、操作部材115を保持端部115bから洗浄端部115aに向かう矢印a53方向に押し出すため、操作部材115のより早く移動させることができる。つまり、操作部材115の温度応答をより早くすることができる。また、操作部材115をより早く移動させることができるので、より大きな力で、オリフィスに堆積した堆積物を除去できる。
【0048】
[他の実施例]
(1)トラップ作動状態情報の種類:前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報として、弁ケーシング101の温度を用いたが、フロート式スチームトラップ100の動作状態を示すものであれば、例示のものに限定されない。例えば、弁室4の圧力であってもよい。
【0049】
(2)バイメタルバネ14:前述の実施例1においては、温度応動部材としてバイメタルバネ14を用いたが、温度に応じて移動部材を移動させることができる部材であれば、例示のものに限定されない。例えば、バイメタル以外の部材を用いるようにしてもよい。この場合、温度応動部材として、高温時に長さが短くなり、低温時に長さが長くなる形状記憶合金製部材を用いるようにしてもよい。
【0050】
(3)応答調整バネ119:前述の実施例1においては、調整部材としてコイルバネによって形成される応答調整バネ119を用いたが、バイメタルバネ14による操作部材115の動作を補助するものであれば、例示のものに限定されない。例えば、応答調整バネをバイメタルにより形成するようにしてもよい。この場合、温度応動部材として用いられるバイメタルバネ14の温度による動作と相反する動作をするように、調整部材として用いるバイメタルバネを形成するようにすればよい。
【0051】
(4)バイメタルバネ14及び応答調整バネ119の位置:前述の実施例1においては、バイメタルバネ14を洗浄端部115a側に、応答調整バネ119を保持端部115b側に配置したが、バイメタルバネ14を保持端部115b側に、応答調整バネ119を洗浄端部115a側に配置するようにしてもよい。この場合、バイメタルバネ14を、低温時において伸張するように、形成すればよい。さらに、応答調整バネ119を、通常作動時、つまり高温時において、伸張状態となるように、形成することにより、低温時におけるバイメタルバネ14の伸張力と応答調整バネ119の伸張状態からの開放による収縮力とによって、操作部材115の応答を早くすることができる。
【0052】
(5)当接板115d:前述の実施例1においては、当接板115dに、バイメタルバネ14及び応答調整バネ119を固定するとしたが、当接板115dを用いずに、バイメタルバネ14と応答調整バネ119とを直接に接続するようにしてもよい。
【0053】
(6)バイメタルバネ14、応答調整バネ119の固定:前述の実施例1では、バイメタルバネ14の当接板115dに取り付けられる端部とは異なる端部を、ケース13との当接部分において固定したが、バイメタルバネ14の長さや強さ等の条件により、固定しなくともよい。また、応答調整バネ119の当接板115dに取り付けられる端部とは異なる端部も、保護キャップ113との当接部分において固定するとしたが、応答調整バネ119の長さや強さ等の条件により、固定しなくともよい。