特許第6322484号(P6322484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322484
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】工作機械の工具折損検知装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20180423BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALN20180423BHJP
【FI】
   B23Q3/155 E
   !B23Q17/09 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-112907(P2014-112907)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-226942(P2015-226942A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】島崎 琢也
(72)【発明者】
【氏名】星 隆史
(72)【発明者】
【氏名】安村 亮祐
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−219627(JP,A)
【文献】 特開2001−138180(JP,A)
【文献】 特開2005−138242(JP,A)
【文献】 特開平11−090786(JP,A)
【文献】 特開2002−283163(JP,A)
【文献】 実開昭60−134537(JP,U)
【文献】 実開昭62−050007(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09,3/155−3/157,
B23B 41/00,43/00−43/02,
47/00,49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着された工具を工具マガジンの保持部に戻すと共に、該工具マガジンの保持部に保持された工具を主軸に装着するようにした工作機械の工具折損検知装置において、
前記工具マガジンに、折損検知を要する工具の保持位置に対応して取り付けられ、前記工具の工具マガジンの保持部への戻り動作により折損検知状態又は非折損検知状態となる検知ユニットと、
工具交換位置に設けられ、前記検知ユニットが折損検知状態又は非折損検知状態となったことを検知するセンサとを備え、
前記検知ユニットは、軸方向位置及び軸線回りの角度位置を調整可能に取り付けられ、前記工具の前記工具マガジンの保持部への戻り動作により回動駆動される回動部材と、該回動部材に前記工具の長手方向に平行に延びる伝達部材を介して連結され、前記回動部材が、回動駆動されていないとき非検知位置に位置し、回動駆動されたとき検知位置に移動する検知部材と、該検知部材を前記非検知位置に付勢する付勢部材と、前記工具マガジンに着脱可能に設けられ、前記検知部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記検知位置に保持する回り止め部材とを有し、
前記センサは、前記検知部材が、前記検知位置に移動したとき前記非折損検知状態であることを検知し、前記非検知位置に位置しているとき前記折損検知状態であることを検知する
ことを特徴とする工作機械の工具折損検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸側の工具を工具マガジンの保持部に戻し、工具マガジン側の工具を主軸に装着するようにした工作機械の工具折損検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の工具の折損を検知するようにした従来装置として、例えば、工具交換アームに、工具が正常なときは該工具に接触して移動させられ、工具が折損しているときには該工具と非接触となるプローブを設け、該プローブが移動したか否かをセンサで検知するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、工具の軸方向に移動可能の検知バーに、チェックピンを工具に対向するように、かつチェックピン長さを選択可能に取り付け、前記検知バーの軸方向位置を近接スイッチで検出するようにしたものもある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2698936号公報
【特許文献2】実開昭63−100136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の従来装置では、工具毎に長さが異なる場合は、前記プローブの位置を工具の先端位置に合わせる必要があり、検知に時間を要する問題がある。プローブを工具の基部側に当接するように配置すれば長さの異なる工具に対応できるが、工具の先端部が折れた場合には折損を検知できない。
【0006】
また前記特許文献2に記載されているような調整機構を設けると折損検知装置の占有容積が大きくなり、被加工ワークの可動範囲に影響を与えるという問題が懸念される。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、長さの異なる工具に対応でき、ワークの可動範囲に影響を与えることのない工作機械の工具折損検知装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、主軸に装着された工具を工具マガジンの保持部に戻すと共に、該工具マガジンの保持部に保持された工具を主軸に装着するようにした工作機械の工具折損検知装置において、
前記工具マガジンに、折損検知を要する工具の保持位置に対応して取り付けられ、前記工具の工具マガジンの保持部への戻り動作により折損検知状態又は非折損検知状態となる検知ユニットと、
工具交換位置に設けられ、前記検知ユニットが折損検知状態又は非折損検知状態となったことを検知するセンサとを備え、
前記検知ユニットは、軸方向位置及び軸線回りの角度位置を調整可能に取り付けられ、前記工具の前記工具マガジンの保持部への戻り動作により回動駆動される回動部材と、該回動部材に前記工具の長手方向に平行に延びる伝達部材を介して連結され、前記回動部材が、回動駆動されていないとき非検知位置に位置し、回動駆動されたとき検知位置に移動する検知部材と、該検知部材を前記非検知位置に付勢する付勢部材と、前記工具マガジンに着脱可能に設けられ、前記検知部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記検知位置に保持する回り止め部材とを有し、
前記センサは、前記検知部材が、前記検知位置に移動したとき前記非折損検知状態であることを検知し、前記非検知位置に位置しているとき前記折損検知状態であることを検知する
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、検知ユニットを、折損検知を要する工具の保持位置に対応して取り付けたので、各検知ユニットを各工具の長さや径等に対応した状態に調整しておくことができ、工具毎に長さや径が異なる場合にも対応できる。
【0012】
また、検知ユニットは工具マガジンに配置されており、かつセンサは工具交換位置に配置されているので、ワークの可動範囲に影響を与えることはない。
【0013】
また、工具が折損していない場合は、前記戻り動作に伴って工具により回動部材が回動駆動され、該回動部材の回動が伝達部材を介して検知部材に伝達され、該検知部材が検知位置に移動し、該検知部材が検知位置に位置していることを前記センサが検知する。一方、工具が折損している場合は、回動部材が回動されないため検知部材は検知位置に移動せず、従って、センサが検知部材を検知することはなく、その結果、工具が折損していることを検知できる。
【0014】
さらにまた、前記工具の長手方向に平行に延びる伝達部材に、回動部材を、軸方向位置及び伝達部材の軸線回りの角度位置を調整可能に取り付けたので、工具の長さ、径に応じて回動部材の工具長手方向位置、角度位置を調整することで、長さ,径の異なる各種の工具の折損検知に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る工具折損検知装置を備えた工作機械の正面図である。
図2】前記工作機械の側面図である。
図3】前記工作機械の工具マガジンの正面斜視図である。
図4】前記前記工具マガジンに装着された工具折損検知装置の正面斜視図である。
図5】前記工具折損検知装置単体の正面斜視図である。
図6】前記工具折損検知装置単体の背面斜視図である。
図7】前記工具折損検知装置単体の側面図である。
図8】前記工具折損検知装置の回動部材部分の変形例を示す断面正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1図7は、本発明の実施例1に係る工作機械の工具折損検知装置を説明するための図である。
【0018】
図において、1は工具主軸であり、該工具主軸1には、工具マガジン4に保持された各種の工具7から所望の工具が装着され、該工具主軸1に装着された工具7をワーク主軸(図示せず)に把持され、旋回駆動されるワークに作用させることで該ワークの機械加工が行われる。
【0019】
前記工具7は、ホルダ部7aと、該ホルダ部7aに固定された刃部7bとを有する。前記ホルダ部7aは、前記工具マガジン4の後述する工具把持爪4cに把持される溝部7c及び前記工具主軸1に係合固定される係合部7dを有する
前記工具主軸1は機械正面から見て左右方向(X軸方向),上下方向(Y軸方向)及び軸方向(Z軸方向)に移動可能に構成されており、かつZ軸回りに回転駆動される。
【0020】
前記工具マガジン4は、機械固定部に支持され、前記Z軸と平行な軸線回りに回転駆動される円盤4aの外周部に多数の工具保持部4bを備えており、該各工具保持部4bを工具交換位置Aに割り出し位置決め可能に構成されている。なお、前記工具保持部4bは、開閉可能に、かつ閉状態に付勢して配置された一対の把持爪4c、4cで構成されている。
【0021】
前記工具交換位置Aに位置決めされた工具保持部4b内に工具主軸1に装着された工具7がY軸方向に進入すると、該工具保持部4bの把持爪4c,4cが前記溝部7cを把持することにより該工具7は工具マガジン4の所定の工具保持部4bに保持される。また工具交換位置Aにある工具保持部4bに保持された工具7の係合部7dを工具主軸1が係合固定してY軸方向に移動することで該工具7は工具主軸1に装着される。
【0022】
本実施例では、検知ユニット5と近接スイッチ(センサ)6とを有する折損検知装置12が設けられている。
【0023】
前記検知ユニット5は、前記工具マガジン4の、前記刃部7bが細長いため折損し易い等の理由から折損検知を要する工具7を保持する各工具保持部4bに対応して取り付けられている。
【0024】
前記検知ユニット5は、工具7が工具保持部4bに戻される戻り動作により、該工具7の刃部7bが折損していることを検知した折損検知状態又は該刃部7bが折損していないことを検知した非折損検知状態の何れかとなる。
【0025】
また前記近接スイッチ6は、前記検知ユニット5が前記折損検知状態又は非折損検知状態となったことを検知するためのものであり、工具交換位置Aに対応するように機械固定部に配設されている。従ってこの近接スイッチ6は全ての検知ユニット5に共用されている。
【0026】
前記検知ユニット5は、工具7の刃部7bが折損していない場合は、前記戻り動作に伴って刃部7bにより回動駆動される回動部材8と、該回動部材8を支持する伝達部材9と、該伝達部材9に固定された検知部材10とを備えている。
【0027】
前記回動部材8は、L字形の板片からなる測定子8aと、該測定子8aがボルト締め固定された測定子ブロック8bとを有する。この測定子ブロック8bは前記伝達部材9のロッド9aに嵌合する取付け孔8cと、該取付け孔8cに達するスリット8dと、該スリット8dを狭める方向に締め付ける蝶ボルト8eとを有する。前記回動部材8は、前記蝶ボルト8eを緩めることで前記ロッド9aに対してその軸方向位置及び角度位置を調整可能となっている。
【0028】
前記伝達部材9のロッド9aは前記刃部7bと略平行に延びており、該ロッド9aの基端部は取付けブラケット9cに回動可能に支持されている。この取付けブラケット9cは前記工具マガジン4の円盤4aにボルト締め固定されている。なお、前記ロッド9aの先端部には、前記回動部材8の先端位置を規制する抜け止めプレート9bが装着されている。
【0029】
前記検知部材10は前記ロッド9aに溶接固定された基部10aと、該基部10aから突出するドッグ部10bとを有する。
【0030】
前記検知ユニット5は、前記工具7の工具保持部4bへの戻り動作により回動部材8が回動すると、該回動により前記伝達部材9が検知部材10を、これのドッグ部10bが前記近接スイッチ6に対向する検知位置に移動させ、その結果前記近接スイッチ6をオンさせる非折損検知状態となる。
【0031】
前記取付けブラケット9cには回り止めボルト9dが着脱可能に螺挿されている。この回り止めボルト9dが前記検知部材10の基部10aを貫通して取付けブラケット9cに螺挿されたとき、該検知ユニット5は、前記ドッグ部10bが近接スイッチ6をオンさせる前記非折損検知状態となる。
【0032】
また前記検知部材10の基部10aに固定されたボルト10cと、前記取付けブラケット9cに固定されたボルト9eとの間には、ばね11が介在されている。このばね11は、前記検知部材10を図3で時計回りに付勢しており、前記回り止めボルト9dを抜き取ると、検知ユニット5は、前記ドッグ部10bが前記近接スイッチ6との対向位置から離れ、該近接スイッチ6をオフさせる折損検知状態となる。なお、本実施例の検知ユニット5は、工具7が工具保持部4bに保持されていない場合も前記折損検知状態とは同じ状態となっている。
【0033】
前記近接スイッチ6は、機械固定部側に取り付けられた支持プレート6aに、前記ドッグ部10b側に向けて、かつ前記検知ユニット5が前記非折損検知状態にある場合の前記ドッグ部10bに対向する位置に配設されている。該近接スイッチ6に接続された電気配線6bは図示しないコントロールユニットに接続されている。
【0034】
本実施例の折損検知装置12では、各工具7の刃部7bの長さや径等に応じて前記回動部材8の位置調整が可能となっている。この場合、前記回り止めボルト9dを前記検知部材10の基部10aを貫通させて前記取付けブラケット9cに螺挿した状態で、前記測定子8aが前記保持部4bに保持された工具7の刃部7bの先端部上面に当接するように前記回動部材8の軸方向位置及び角度位置を調整する。その後、前記工具7を保持部4bから取り外し、前記回り止めボルト9dを抜き取ると、前記測定子8aは前記ばね11の付勢力により図3に二点鎖線で示すように刃部7bの上面より少し下方に位置する。
【0035】
本実施例装置12では、工具7が工具交換位置Aに位置する工具保持部4b内に戻されると、工具7の刃部7bが折損していない場合は、前記戻り動作に伴って工具7の刃部7bにより測定子8aが図3に二点鎖線で示された位置から実線で示された位置まで回動駆動され、該測定子8aの回動がロッド9aを介して検知部材10に伝達され、これのドッグ部10bが近接スイッチ6に対向するように回動し、該近接スイッチ6がオンし、該検知ユニット5が非折損検知状態となっていることが、つまり工具7の刃部7bが折損していないことが検知される。
【0036】
一方、工具7の刃部7bが折損している場合は、回動部材8は図3に二点鎖線で示す位置に停まって回動されないため検知部材10は移動せず、従って、近接スイッチ6はオフのままであり、該検知ユニット5が折損検知状態となっていることが、つまり工具7の刃部7bが折損していることが検知される。
【0037】
また、本実施例装置12では、前記工具7の長手方向に平行に延びる伝達部材9のロッド9aに、回動部材8を、軸方向位置及び該ロッド9aの軸線回りの角度位置を調整可能に取り付けたので、工具7の長さ、径などに応じて回動部材8の工具長手方向位置、角度位置を調整することで、長さ,径の異なる各種の工具7の折損検知に対応できる。
【0038】
図8は、回動部材8の位置調整機構の変形例を示し、図中、図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0039】
測定子ブロック8bは、ばね13でロッド9aを締め付けており、押しボタンカム14を押すとこれのカム面14aが拡開カム15のカム面15aを押し、これにより前記ばね13の締め付け力が解除され、回動部材8の位置調整が可能となる。
【0040】
なお、前記実施例では、工具主軸の移動により工具交換を行う場合を説明したが、本発明は工具交換アームを用いて工具交換をする場合にも適用することができる。この場合は、工具交換アームに把持された工具が工具マガジンの工具保持部に戻される動作を利用することとなる。
【符号の説明】
【0041】
1 旋盤
3a 工具主軸
4 工具マガジン
4b 保持部
5 検知ユニット
6 センサ
7 工具
8 回動部材
9 伝達部材
10 検知部材
12 工具折損検知装置
A 工具交換位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8