【実施例1】
【0017】
図1〜
図7は、本発明の実施例1に係る工作機械の工具折損検知装置を説明するための図である。
【0018】
図において、1は工具主軸であり、該工具主軸1には、工具マガジン4に保持された各種の工具7から所望の工具が装着され、該工具主軸1に装着された工具7をワーク主軸(図示せず)に把持され、旋回駆動されるワークに作用させることで該ワークの機械加工が行われる。
【0019】
前記工具7は、ホルダ部7aと、該ホルダ部7aに固定された刃部7bとを有する。前記ホルダ部7aは、前記工具マガジン4の後述する工具把持爪4cに把持される溝部7c及び前記工具主軸1に係合固定される係合部7dを有する
前記工具主軸1は機械正面から見て左右方向(X軸方向),上下方向(Y軸方向)及び軸方向(Z軸方向)に移動可能に構成されており、かつZ軸回りに回転駆動される。
【0020】
前記工具マガジン4は、機械固定部に支持され、前記Z軸と平行な軸線回りに回転駆動される円盤4aの外周部に多数の工具保持部4bを備えており、該各工具保持部4bを工具交換位置Aに割り出し位置決め可能に構成されている。なお、前記工具保持部4bは、開閉可能に、かつ閉状態に付勢して配置された一対の把持爪4c、4cで構成されている。
【0021】
前記工具交換位置Aに位置決めされた工具保持部4b内に工具主軸1に装着された工具7がY軸方向に進入すると、該工具保持部4bの把持爪4c,4cが前記溝部7cを把持することにより該工具7は工具マガジン4の所定の工具保持部4bに保持される。また工具交換位置Aにある工具保持部4bに保持された工具7の係合部7dを工具主軸1が係合固定してY軸方向に移動することで該工具7は工具主軸1に装着される。
【0022】
本実施例では、検知ユニット5と近接スイッチ(センサ)6とを有する折損検知装置12が設けられている。
【0023】
前記検知ユニット5は、前記工具マガジン4の、前記刃部7bが細長いため折損し易い等の理由から折損検知を要する工具7を保持する各工具保持部4bに対応して取り付けられている。
【0024】
前記検知ユニット5は、工具7が工具保持部4bに戻される戻り動作により、該工具7の刃部7bが折損していることを検知した折損検知状態又は該刃部7bが折損していないことを検知した非折損検知状態の何れかとなる。
【0025】
また前記近接スイッチ6は、前記検知ユニット5が前記折損検知状態又は非折損検知状態となったことを検知するためのものであり、工具交換位置Aに対応するように機械固定部に配設されている。従ってこの近接スイッチ6は全ての検知ユニット5に共用されている。
【0026】
前記検知ユニット5は、工具7の刃部7bが折損していない場合は、前記戻り動作に伴って刃部7bにより回動駆動される回動部材8と、該回動部材8を支持する伝達部材9と、該伝達部材9に固定された検知部材10とを備えている。
【0027】
前記回動部材8は、L字形の板片からなる測定子8aと、該測定子8aがボルト締め固定された測定子ブロック8bとを有する。この測定子ブロック8bは前記伝達部材9のロッド9aに嵌合する取付け孔8cと、該取付け孔8cに達するスリット8dと、該スリット8dを狭める方向に締め付ける蝶ボルト8eとを有する。前記回動部材8は、前記蝶ボルト8eを緩めることで前記ロッド9aに対してその軸方向位置及び角度位置を調整可能となっている。
【0028】
前記伝達部材9のロッド9aは前記刃部7bと略平行に延びており、該ロッド9aの基端部は取付けブラケット9cに回動可能に支持されている。この取付けブラケット9cは前記工具マガジン4の円盤4aにボルト締め固定されている。なお、前記ロッド9aの先端部には、前記回動部材8の先端位置を規制する抜け止めプレート9bが装着されている。
【0029】
前記検知部材10は前記ロッド9aに溶接固定された基部10aと、該基部10aから突出するドッグ部10bとを有する。
【0030】
前記検知ユニット5は、前記工具7の工具保持部4bへの戻り動作により回動部材8が回動すると、該回動により前記伝達部材9が検知部材10を、これのドッグ部10bが前記近接スイッチ6に対向する検知位置に移動させ、その結果前記近接スイッチ6をオンさせる非折損検知状態となる。
【0031】
前記取付けブラケット9cには回り止めボルト9dが着脱可能に螺挿されている。この回り止めボルト9dが前記検知部材10の基部10aを貫通して取付けブラケット9cに螺挿されたとき、該検知ユニット5は、前記ドッグ部10bが近接スイッチ6をオンさせる前記非折損検知状態となる。
【0032】
また前記検知部材10の基部10aに固定されたボルト10cと、前記取付けブラケット9cに固定されたボルト9eとの間には、ばね11が介在されている。このばね11は、前記検知部材10を
図3で時計回りに付勢しており、前記回り止めボルト9dを抜き取ると、検知ユニット5は、前記ドッグ部10bが前記近接スイッチ6との対向位置から離れ、該近接スイッチ6をオフさせる折損検知状態となる。なお、本実施例の検知ユニット5は、工具7が工具保持部4bに保持されていない場合も前記折損検知状態とは同じ状態となっている。
【0033】
前記近接スイッチ6は、機械固定部側に取り付けられた支持プレート6aに、前記ドッグ部10b側に向けて、かつ前記検知ユニット5が前記非折損検知状態にある場合の前記ドッグ部10bに対向する位置に配設されている。該近接スイッチ6に接続された電気配線6bは図示しないコントロールユニットに接続されている。
【0034】
本実施例の折損検知装置12では、各工具7の刃部7bの長さや径等に応じて前記回動部材8の位置調整が可能となっている。この場合、前記回り止めボルト9dを前記検知部材10の基部10aを貫通させて前記取付けブラケット9cに螺挿した状態で、前記測定子8aが前記保持部4bに保持された工具7の刃部7bの先端部上面に当接するように前記回動部材8の軸方向位置及び角度位置を調整する。その後、前記工具7を保持部4bから取り外し、前記回り止めボルト9dを抜き取ると、前記測定子8aは前記ばね11の付勢力により
図3に二点鎖線で示すように刃部7bの上面より少し下方に位置する。
【0035】
本実施例装置12では、工具7が工具交換位置Aに位置する工具保持部4b内に戻されると、工具7の刃部7bが折損していない場合は、前記戻り動作に伴って工具7の刃部7bにより測定子8aが
図3に二点鎖線で示された位置から実線で示された位置まで回動駆動され、該測定子8aの回動がロッド9aを介して検知部材10に伝達され、これのドッグ部10bが近接スイッチ6に対向するように回動し、該近接スイッチ6がオンし、該検知ユニット5が非折損検知状態となっていることが、つまり工具7の刃部7bが折損していないことが検知される。
【0036】
一方、工具7の刃部7bが折損している場合は、回動部材8は
図3に二点鎖線で示す位置に停まって回動されないため検知部材10は移動せず、従って、近接スイッチ6はオフのままであり、該検知ユニット5が折損検知状態となっていることが、つまり工具7の刃部7bが折損していることが検知される。
【0037】
また、本実施例装置12では、前記工具7の長手方向に平行に延びる伝達部材9のロッド9aに、回動部材8を、軸方向位置及び該ロッド9aの軸線回りの角度位置を調整可能に取り付けたので、工具7の長さ、径などに応じて回動部材8の工具長手方向位置、角度位置を調整することで、長さ,径の異なる各種の工具7の折損検知に対応できる。
【0038】
図8は、回動部材8の位置調整機構の変形例を示し、図中、
図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0039】
測定子ブロック8bは、ばね13でロッド9aを締め付けており、押しボタンカム14を押すとこれのカム面14aが拡開カム15のカム面15aを押し、これにより前記ばね13の締め付け力が解除され、回動部材8の位置調整が可能となる。
【0040】
なお、前記実施例では、工具主軸の移動により工具交換を行う場合を説明したが、本発明は工具交換アームを用いて工具交換をする場合にも適用することができる。この場合は、工具交換アームに把持された工具が工具マガジンの工具保持部に戻される動作を利用することとなる。