(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを貯留するとともにインクを吐出するインクジェットヘッド、前記インクジェットヘッドの下方に配置され、前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留する加圧タンク、前記インクジェットヘッドの下方に配置され、前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取る負圧タンク、前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとの間でインクを循環させる循環経路、および前記負圧タンクから前記加圧タンクへインクを送るインクポンプを有する印刷部と、
前記加圧タンクを密閉状態と大気開放状態との間で切り替える加圧側大気開放弁と、
前記負圧タンクを密閉状態と大気開放状態との間で切り替える負圧側大気開放弁と、
前記負圧タンクから前記加圧タンクへ空気を送るエアポンプと、
前記加圧側大気開放弁および前記負圧側大気開放弁により前記加圧タンクおよび前記負圧タンクをそれぞれ密閉状態とし、前記エアポンプにより前記加圧タンクに正圧を付与するとともに前記負圧タンクに負圧を付与した状態として前記加圧タンクから前記インクジェットヘッドへ向けてインクを送るとともに、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの液面高さに応じて前記インクポンプの駆動を制御することで、前記循環経路に沿ってインクを循環させる制御部とを備え、
前記制御部は、インク循環を開始する際に、前記加圧側大気開放弁により前記加圧タンクを密閉するとともに前記負圧側大気開放弁により前記負圧タンクを大気開放した状態で、前記エアポンプにより前記加圧タンクに正圧を付与することで前記加圧タンクから前記インクジェットヘッドへ向けてインクを送るとともに、前記負圧タンクの液面高さが基準高さ未満になるまで前記インクポンプにより前記負圧タンクから前記加圧タンクへインクを送る予備処理を実行することを特徴とするインクジェット印刷装置。
前記制御部は、所定の予備処理実行条件が満たされる場合に前記予備処理を実行し、前記予備処理実行条件が満たされていない場合には前記予備処理を省略することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図3は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力調整部の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、
図3における紙面の上下を上下方向とする。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、4つの印刷部2と、圧力調整部3と、搬送部4と、操作パネル5と、電源ユニット6と、主電源スイッチ7と、制御部8とを備える。
【0021】
印刷部2は、インクを循環させつつ、搬送部4により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。4つの印刷部2は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のインクを吐出する。4つの印刷部2は、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0022】
図3に示すように、印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インク循環部12と、インク供給部13とを備える。
【0023】
インクジェットヘッド11は、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドモジュール16からなる。
【0024】
ヘッドモジュール16は、ピエゾ式である。ヘッドモジュール16は、インクを貯留するインクチャンバと、インクを吐出する複数のノズル(いずれも図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。
【0025】
インク循環部12は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部12は、加圧タンク21と、分配器22と、集合器23と、負圧タンク24と、インクポンプ25と、インク温度調整部26と、インク温度センサ27と、配管28〜30とを備える。
【0026】
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、配管28および分配器22を介してインクジェットヘッド11に供給される。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層が形成されている。加圧タンク21は、後述の配管60を介して、後述の加圧共通気室51に連通されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド11より低い位置(下方)に配置されている。
【0027】
加圧タンク21は、振動によりインクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されて分配器22および配管28の内部のインクが加圧タンク21に流れ落ちても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、加圧タンク21が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、加圧タンク21は、分配器22および配管28の内部のインクがすべて加圧タンク21に流れ落ちたときに満杯になる程度の容量を有する。
【0028】
加圧タンク21には、フロート部材31と、加圧タンク液面センサ32と、インクフィルタ33とが設けられている。
【0029】
フロート部材31は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達するまで、液面高さに応じて回動するように、加圧タンク21内に支持軸(図示せず)により一端側が軸支されている。フロート部材31の他端には、磁石(図示せず)が設けられている。
【0030】
加圧タンク液面センサ32は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、加圧タンク21の上端から所定距離だけ下の位置にある。加圧タンク液面センサ32は、磁気センサからなり、液面高さが基準高さに達しているときのフロート部材31の磁石を検出する。加圧タンク液面センサ32は、フロート部材31の磁石を検出している場合、すなわち、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。加圧タンク液面センサ32は、フロート部材31の磁石を検出していない場合、すなわち、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
【0031】
インクフィルタ33は、インク内のゴミ等を除去する。
【0032】
分配器22は、配管28を介して加圧タンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に分配する。
【0033】
集合器23は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール16から集める。集合器23により集められたインクは、配管29を介して負圧タンク24へと流れる。
【0034】
負圧タンク24は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを集合器23から受け取って貯留する。また、負圧タンク24は、後述するインク供給部13のインクカートリッジ46から供給されるインクを貯留する。負圧タンク24内には、インクの液面上に空気層が形成されている。負圧タンク24は、後述の配管61を介して、後述の負圧共通気室55に連通されている。負圧タンク24は、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
【0035】
負圧タンク24は、振動によりインクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されてインクジェットヘッド11、集合器23、および配管29の内部のインクが負圧タンク24に流れ落ちても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、負圧タンク24が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、負圧タンク24は、インクジェットヘッド11、集合器23および配管29の内部のインクがすべて負圧タンク24に流れ落ちたときに満杯になる程度の容量を有する。
【0036】
負圧タンク24には、フロート部材36と、負圧タンク液面センサ37とが設けられている。
【0037】
フロート部材36、負圧タンク液面センサ37は、それぞれ加圧タンク21のフロート部材31、加圧タンク液面センサ32と同様のものである。負圧タンク液面センサ37は、フロート部材36の磁石を検出している場合、すなわち、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。負圧タンク液面センサ37は、フロート部材36の磁石を検出していない場合、すなわち、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。基準高さは、負圧タンク24の上端から所定距離だけ下の位置にある。
【0038】
インクポンプ25は、負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送る。インクポンプ25は、配管30の途中に設けられている。
【0039】
インク温度調整部26は、インク循環部12におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部26は、配管28の途中に設けられている。インク温度調整部26は、ヒータ41と、ヒータ温度センサ42と、ヒートシンク43と、冷却ファン44とを備える。
【0040】
ヒータ41は、配管28内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ42は、ヒータ41の温度を検出する。ヒートシンク43は、配管28内のインクを冷却する。冷却ファン44は、ヒートシンク43に冷却風を送る。
【0041】
インク温度センサ27は、インク循環部12におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ27は、配管28の途中に設けられている。
【0042】
配管28は、加圧タンク21と分配器22とを接続する。配管28の一部は、ヒータ41を経由する部分とヒートシンク43を経由する部分とに分岐している。配管28には、加圧タンク21から分配器22に向かってインクが流れる。配管29は、集合器23と負圧タンク24とを接続する。配管29には、集合器23から負圧タンク24に向かってインクが流れる。配管30は、負圧タンク24と加圧タンク21とを接続する。配管30には、負圧タンク24から加圧タンク21に向かってインクが流れる。配管28〜30と分配器22と集合器23とにより、加圧タンク21とインクジェットヘッド11と負圧タンク24との間でインクを循環させる循環経路が構成される。
【0043】
インク供給部13は、インク循環部12にインクを供給する。インク供給部13は、インクカートリッジ46と、配管47と、インク供給弁48とを備える。
【0044】
インクカートリッジ46は、印刷部2で印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ46内のインクは、配管47を介して負圧タンク24に供給される。
【0045】
配管47は、インクカートリッジ46と負圧タンク24とを接続する。配管47には、インクカートリッジ46から負圧タンク24に向かってインクが流れる。
【0046】
インク供給弁48は、配管47内のインクの流路を開閉する。インクカートリッジ46から負圧タンク24へインクを供給する際、インク供給弁48が開かれる。
【0047】
圧力調整部3は、各印刷部2の加圧タンク21および負圧タンク24の圧力を調整する。圧力調整部3は、加圧共通気室(請求項の加圧側共通空間部に相当)51と、加圧側圧力調整弁52と、加圧側大気開放弁53と、加圧側圧力センサ54と、負圧共通気室(請求項の負圧側共通空間部に相当)55と、負圧側圧力調整弁56と、負圧側大気開放弁57と、負圧側圧力センサ58と、エアポンプ59と、4本の配管60と、4本の配管61と、配管62〜67と、エアフィルタ68と、オーバーフローパン69とを備える。
【0048】
加圧共通気室51は、各印刷部2の加圧タンク21の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室51は、4本の配管60を介して4つの印刷部2の加圧タンク21の空気層と連通されている。これにより、各印刷部2の加圧タンク21どうしが、加圧共通気室51および配管60を介して連通されている。
【0049】
加圧側圧力調整弁52は、加圧共通気室51を介して各印刷部2の加圧タンク21の圧力を調整するために、配管63内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁52は、配管63の途中に設けられている。
【0050】
加圧側大気開放弁53は、加圧共通気室51を介して各印刷部2の加圧タンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、配管64内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁53は、配管64の途中に設けられている。
【0051】
加圧側圧力センサ54は、加圧共通気室51内の圧力(加圧側圧力)を検出する。ここで、加圧共通気室51内の圧力は、各印刷部2の加圧タンク21内の圧力と等しい。加圧共通気室51と各印刷部2の加圧タンク21の空気層とが連通されているためである。
【0052】
負圧共通気室55は、各印刷部2の負圧タンク24の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室55は、4本の配管61を介して4つの印刷部2の負圧タンク24の空気層と連通されている。これにより、各印刷部2の負圧タンク24どうしが、負圧共通気室55および配管61を介して連通されている。
【0053】
負圧側圧力調整弁56は、負圧共通気室55を介して各印刷部2の負圧タンク24の圧力を調整するために、配管65内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁56は、配管65の途中に設けられている。
【0054】
負圧側大気開放弁57は、負圧共通気室55を介して各印刷部2の負圧タンク24を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、配管66内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁57は、配管66の途中に設けられている。
【0055】
負圧側圧力センサ58は、負圧共通気室55内の圧力(負圧側圧力)を検出する。ここで、負圧共通気室55内の圧力は、各印刷部2の負圧タンク24内の圧力と等しい。負圧共通気室55と各印刷部2の負圧タンク24の空気層とが連通されているためである。
【0056】
エアポンプ59は、加圧共通気室51および負圧共通気室55を介して各印刷部2の負圧タンク24から加圧タンク21へ空気を送る。エアポンプ59は、配管62の途中に設けられている。
【0057】
4本の配管60は、加圧共通気室51と4つの印刷部2の加圧タンク21とを接続する。配管60は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が加圧タンク21の空気層に接続されている。
【0058】
4本の配管61は、負圧共通気室55と4つの印刷部2の負圧タンク24とを接続する。配管61は、一端が負圧共通気室55に接続され、他端が負圧タンク24の空気層に接続されている。
【0059】
配管62は、エアポンプ59により負圧共通気室55から加圧共通気室51へ送られる空気の流路を形成する。配管62は、一端が負圧共通気室55に接続され、他端が加圧共通気室51に接続されている。
【0060】
配管63,64は、それぞれ一端が加圧共通気室51に接続され、他端が配管67に接続されている。配管65,66は、それぞれ一端が負圧共通気室55に接続され、他端が配管67に接続されている。配管67は、一端(上端)がエアフィルタ68を介して大気に通じ、他端がオーバーフローパン69に接続されている。
【0061】
エアフィルタ68は、配管67の上端に設けられ、外部の空気中のゴミ等の進入を防止するものである。
【0062】
オーバーフローパン69は、例えばインク供給弁48の異常により加圧タンク21、負圧タンク24からインクが溢れ、さらに加圧共通気室51、負圧共通気室55からもインクが溢れ出た場合に、そのインクを受け取る。
【0063】
オーバーフローパン69には、フロート部材71と、オーバーフロー液面センサ72とが設けられている。フロート部材71、オーバーフロー液面センサ72は、それぞれ加圧タンク21のフロート部材31、加圧タンク液面センサ32と同様のものである。
【0064】
オーバーフローパン69は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ72がオンになると、廃液タンクへインクを排出するようになっている。
【0065】
搬送部4は、給紙台(図示せず)から用紙を取り出し、その用紙を搬送経路に沿って搬送する。搬送部4は、用紙を搬送するためのローラ、ローラを駆動させるモータ(いずれも図示せず)等を有する。
【0066】
操作パネル5は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル5は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部と、液晶表示パネル等を有する表示部(いずれも図示せず)とを備える。入力部には、電源(副電源)のオン、オフを切り替えるための副電源キー(図示せず)が設けられている。
【0067】
電源ユニット6は、主電源スイッチ7を介して供給される電力をインクジェット印刷装置1の各部に供給する。
【0068】
主電源スイッチ7は、インクジェット印刷装置1の主電源のオン、オフを切り替えるためのスイッチである。主電源スイッチ7には商用電源が接続されている。
【0069】
制御部8は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。
図2に示すように、制御部8は、主コントローラ81と、メカコントローラ82とを備える。
【0070】
主コントローラ81は、インクジェット印刷装置1全体の制御を司る。主コントローラ81は、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ92と、HDD(Hard Disk Drive)93と、外部I/F(インタフェース)94と、メカコントローラI/F95と、ユーザI/F96と、ヘッドI/F97とを備える。
【0071】
CPU91は、演算処理を実行する。メモリ92は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU91のワークエリアとして使用されるものである。HDD93は、各種のプログラム等を記憶する。
【0072】
外部I/F94は、ネットワークを介して外部の装置との間でデータの送受信を行う。メカコントローラI/F95は、主コントローラ81にメカコントローラ82を接続する。ユーザI/F96は、主コントローラ81に操作パネル5を接続する。ヘッドI/F97は、主コントローラ81にインクジェットヘッド11を接続する。
【0073】
メカコントローラ82は、印刷部2におけるインク循環およびインク供給の制御、圧力調整部3による圧力調整の制御、および搬送部4による用紙搬送の制御を行う。メカコントローラ82は、CPU101と、メモリ102と、センサI/F103と、主コントローラI/F104と、アクチュエータI/F105と、ドライバユニット106と、ラッチ回路107とを備える。
【0074】
CPU101は、演算処理を実行する。メモリ102は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU101のワークエリアとして使用されるものである。
【0075】
センサI/F103は、メカコントローラ82に加圧タンク液面センサ32、負圧タンク液面センサ37等の各種センサを接続する。主コントローラI/F104は、メカコントローラ82を主コントローラ81に接続する。アクチュエータI/F105は、ドライバユニット106に制御信号を送信する。
【0076】
ドライバユニット106は、インクポンプ25、エアポンプ59、搬送部4のモータ等のそれぞれを駆動させる各種ドライバを有する。
【0077】
ラッチ回路107は、主電源がオフからオンになった後、最初に電源(副電源)がオンになった際にセットされるラッチを、主電源がオフになるまで保持する。
【0078】
メカコントローラ82は、印刷時において、通常循環動作による印刷処理または予備処理付き循環動作による印刷処理を実行する。具体的には、メカコントローラ82は、前回の電源(副電源)オフを行った時点以降に主電源の切断は行われていない場合、通常循環動作による印刷処理を実行する。前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われている場合、メカコントローラ82は、予備処理付き循環動作による印刷処理を実行する。
【0079】
通常循環動作は、後述の予備処理を行わずに開始するインク循環動作である。インク循環動作は、エアポンプ59により加圧タンク21に正圧を付与するとともに負圧タンク24に負圧を付与した状態として加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向けてインクを送るとともに、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じてインクポンプ25の駆動を制御することで、循環経路に沿ってインクを循環させる動作である。
【0080】
予備処理付き循環動作は、インク循環の開始時に予備処理を行うものである。予備処理は、負圧タンク24を大気開放した状態でエアポンプ59により加圧タンク21に正圧を付与することで加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向けてインクを送るとともに、負圧タンク24の液面高さが基準高さ未満になるまでインクポンプ25により負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送る処理である。予備処理後は、上述のインク循環動作に移行する。
【0081】
次に、インクジェット印刷装置1の電源(副電源)および主電源のオン、オフの操作時における動作について、
図4を参照して説明する。
【0082】
主電源がオフの状態では、インクジェット印刷装置1の各部には電力が供給されていない。主電源スイッチ7に対する操作により主電源がオフからオンにされると、電源ユニット6に電力が供給される。そして、電源ユニット6は、スタンバイ電源として操作パネル5およびメカコントローラ82のラッチ回路107にのみ電力を供給する。
【0083】
主電源がオンの状態で、操作パネル5に対する操作により電源(副電源)をオフからオンにされると、電源ユニット6が各部に電力を供給し、インクジェット印刷装置1が電源オンの状態となる。
【0084】
電源がオフからオンになると、その直後に、メカコントローラ82のCPU101は、ラッチ回路107のラッチをリードする。
図4に示すように、主電源がオンになった後、最初に電源(副電源)がオンになった時点では、ラッチ回路107にラッチは保持されていない。
【0085】
ラッチをリードしてから所定時間後、CPU101は、ラッチ回路107にラッチをセットする。これにより、ラッチ回路107がラッチを保持した状態となる。この後、電源(副電源)がオフになっても、主電源がオンであれば、ラッチ回路107は、スタンバイ電源によりラッチを保持する。
【0086】
したがって、電源(副電源)がオンされたときに、前回の電源オフ時から主電源がオフにされていない場合、
図4に示すように、CPU101がラッチ回路107のラッチをリードしたときには、ラッチ回路107がラッチを保持している状態である。ラッチ回路107をリードしたときにラッチが保持されていても、CPU101は、リードの所定時間後、ラッチ回路107にラッチをセットする処理を行うが、ラッチ回路107がラッチを保持している状態に変化はない。
【0087】
主電源がオンからオフにされると、電源ユニット6は、インクジェット印刷装置1の各部への電力を遮断する。これにより、ラッチ回路107のラッチはクリアされる。
【0088】
以上のような動作により、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われている場合、今回の電源オンを行った時点において、ラッチ回路107にラッチは保持されていない。一方、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断は行われていない場合、今回の電源オンを行った時点において、ラッチ回路107にラッチが保持されている。
【0089】
次に、インクジェット印刷装置1の印刷時の動作について説明する。
【0090】
図5は、インクジェット印刷装置1の印刷時の動作を説明するためのフローチャートである。
図5のフローチャートの処理は、外部I/F94から主コントローラ81に入力された印刷ジョブがCPU91で画像データとジョブデータとに分割され、ジョブデータがメカコントローラ82に入力されることにより開始となる。ジョブデータは、印刷枚数、用紙種類等を示す情報を含むものである。ここで、印刷を行うときは、インクジェット印刷装置1は、電源(副電源)がオンの状態である。
【0091】
図5のステップS1において、メカコントローラ82のCPU101は、前回の電源(副電源)オフを行った時点以降に主電源の切断が行われているか否かを判断する。ここで、CPU101は、今回の電源オン時にラッチをリードした際に、ラッチ回路107にラッチが保持されていなかった場合、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われていると判断する。
【0092】
前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われていると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、CPU101は、予備処理付き循環動作による印刷処理を実行する。
【0093】
前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断は行われていないと判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS3において、CPU101は、通常循環動作による印刷処理を実行する。
【0094】
次に、上述した
図5のステップS3の通常循環動作による印刷処理について説明する。
図6は、通常循環動作による印刷処理のフローチャートである。
【0095】
図6のステップS11において、メカコントローラ82のCPU101は、液面維持制御を開始する。液面維持制御は、加圧タンク21および負圧タンク24の液面を基準高さ付近に維持するための、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じたインクポンプ25およびインク供給弁48の制御である。
【0096】
具体的には、
図7に示すように、加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ37がともにオンの状態では、CPU101は、インクポンプ25をオフ、インク供給弁48を閉とする。加圧タンク液面センサ32がオンで負圧タンク液面センサ37がオフの状態でも同様に、CPU101は、インクポンプ25をオフ、インク供給弁48を閉とする。
【0097】
加圧タンク液面センサ32がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態では、CPU101は、インクポンプ25をオン、インク供給弁48を閉とする。
【0098】
加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ37がともにオフの状態では、CPU101は、インクポンプ25をオフ、インク供給弁48を開とする。
【0099】
図6に戻り、ステップS11に続いて、ステップS12において、CPU101は、加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁57を閉じる。加圧側大気開放弁53を閉じることにより、加圧共通気室51を介して各印刷部2の加圧タンク21が密閉状態となる。また、負圧側大気開放弁57を閉じることにより、負圧共通気室55を介して各印刷部2の負圧タンク24が密閉状態となる。ここで、加圧側圧力調整弁52および負圧側圧力調整弁56はともに待機中から閉じられている。
【0100】
次いで、ステップS13において、CPU101は、圧力制御を開始する。圧力制御は、加圧タンク21、負圧タンク24にそれぞれ基準値の正圧、負圧を付与し、それらを維持するための、エアポンプ59、加圧側圧力調整弁52、および負圧側圧力調整弁56の制御である。
【0101】
具体的には、CPU101は、圧力制御を開始すると、エアポンプ59を起動する。これにより、負圧共通気室55から加圧共通気室51へ空気が送られることで、負圧共通気室55および負圧タンク24が減圧され、加圧共通気室51および加圧タンク21が加圧される。これにより、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へ向けてインクが流れる。
【0102】
CPU101は、加圧側圧力センサ54の検出値(加圧側圧力)、負圧側圧力センサ58の検出値(負圧側圧力)が、それぞれ加圧側圧力の基準値、負圧側圧力の基準値になると、エアポンプ59を停止する。加圧側圧力および負圧側圧力の基準値は、インクを循環させつつ、インクジェットヘッド11のノズル圧を適正範囲内にするための値として予め設定された値である。ここで、CPU101は、加圧側圧力および負圧側圧力を基準値にするために、加圧側圧力センサ54および負圧側圧力センサ58の検出値に応じて加圧側圧力調整弁52および負圧側圧力調整弁56を開閉し、加圧側圧力および負圧側圧力を調整する。
【0103】
また、圧力制御の開始後は、一度加圧側圧力および負圧側圧力が基準値になった後も、それを維持するように、CPU101は、加圧側圧力センサ54および負圧側圧力センサ58の検出値に応じて、エアポンプ59の駆動、加圧側圧力調整弁52および負圧側圧力調整弁56の開閉を適宜行う。
【0104】
圧力制御の開始後、ステップS14において、CPU101は、加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれの基準値になったか否かを判断する。加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれの基準値になっていないと判断した場合(ステップS14:NO)、CPU101は、ステップS14を繰り返す。
【0105】
加圧側圧力および負圧側圧力がそれぞれの基準値になったとCPU101が判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、CPU91,101は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、CPU101は、ジョブデータに基づき、搬送部4により用紙を搬送させる。また、CPU91は、画像データに基づき、搬送される用紙にインクジェットヘッド11からインクを吐出させる。これにより、用紙に画像が印刷される。
【0106】
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。液面維持制御により、加圧タンク液面センサ32がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態になると、インクポンプ25が負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送る。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0107】
また、CPU101は、インク循環時には、インク温度センサ27の検出温度が適正温度範囲内を維持するように、インク温度調整部26によりインク温度の調整を行う。
【0108】
印刷ジョブの実行開始後、ステップS16において、CPU101は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS16:NO)、CPU101は、ステップS16を繰り返す。
【0109】
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS16:YES)、ステップS17において、CPU101は、圧力制御を終了する。ここで、加圧側圧力調整弁52、負圧側圧力調整弁56が開いている場合、CPU101は、それらを閉じる。
【0110】
次いで、ステップS18において、CPU101は、加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁57を開く。加圧側大気開放弁53を開くことにより、加圧共通気室51および各印刷部2の加圧タンク21が大気開放状態となる。また、負圧側大気開放弁57を開くことにより、負圧共通気室55および各印刷部2の負圧タンク24が大気開放状態となる。
【0111】
次いで、ステップS19において、CPU101は、液面維持制御を終了する。これにより、通常循環動作による印刷処理が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
【0112】
次に、上述した
図5のステップS2の予備処理付き循環動作による印刷処理について説明する。
【0113】
前述のように、予備処理付き循環動作による印刷処理が行われるのは、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われている場合である。ユーザが主電源を切断する理由の一つとして、インクジェット印刷装置1の移動がある。すなわち、主電源の切断が行われている場合、インクジェット印刷装置1の移動が行われた可能性がある。
【0114】
インクジェット印刷装置1の移動が行われると、移動時の振動によりインクジェットヘッド11のノズルのメニスカスが破壊されるおそれがある。ノズルのメニスカスが破壊されると、インクジェットヘッド11がノズルから空気を吸い込む。これにより、分配器22および配管28の内部のインクが加圧タンク21に流れ落ち、インクジェットヘッド11、集合器23、および配管29の内部のインクが負圧タンク24に流れ落ちる。この結果、加圧タンク21および負圧タンク24がインクで満杯になる。
【0115】
この状態で、上述した通常循環動作による印刷処理を開始すると、満杯状態の負圧タンク24に負圧がかかることで、インクが吸引されて配管61および負圧共通気室55に入るおそれがある。
【0116】
配管61および負圧共通気室55に入ったインクは、負圧タンク24に戻ることがある。例えば、インクポンプ25により負圧タンク24から加圧タンク21へインクが送られることで負圧タンク24の液面が下がると、負圧タンク24および負圧共通気室55が減圧される。これにより、配管61および負圧共通気室55から負圧タンク24へインクが流入することがある。
【0117】
ここで、負圧共通気室55は各印刷部2に共通であるため、負圧共通気室55内のインクが他の色に対応する印刷部2の負圧タンク24へ流入することで、インクの混色が生じることがある。また、負圧共通気室55内で複数の色のインクの混色が生じ、この混色のインクが負圧タンク24へ流入することがある。このようにしてインクの混色が生じると、印刷画像の色味が変化し、印刷画質が低下する。
【0118】
また、負圧共通気室55にインクが入ると、そこからエアポンプ59にインクが入り、エアポンプ59が故障するおそれがある。
【0119】
予備処理付き循環動作は、上述のように負圧タンク24からインクが吸引されて負圧共通気室55にインクが入ることを回避するものである。
図8は、予備処理付き循環動作による印刷処理のフローチャートである。ここで、分配器22および配管28の内部のインクが加圧タンク21に流れ落ち、インクジェットヘッド11、集合器23、および配管29の内部のインクが負圧タンク24に流れ落ちたことで、加圧タンク21および負圧タンク24が満杯になっているものとする。インクジェットヘッド11、分配器22、集合器23、配管28,29の内部にはインクがない状態である。
【0120】
図8のステップS21において、メカコントローラ82のCPU101は、加圧側大気開放弁53を閉じる。これにより、加圧共通気室51を介して各印刷部2の加圧タンク21が密閉状態となる。
【0121】
ここで、加圧側圧力調整弁52および負圧側圧力調整弁56はともに待機中から閉じられている。負圧側大気開放弁57は、待機中から開かれている。したがって、負圧共通気室55および各印刷部2の負圧タンク24は大気開放状態である。
【0122】
次いで、CPU101は、エアポンプ59を起動する。これにより、加圧共通気室51および各印刷部2の加圧タンク21が加圧される。これにより、加圧タンク21から配管28を通ってインクが流出し、配管28、分配器22、インクジェットヘッド11、集合器23、配管29がインクで満たされていく。
【0123】
ここで、負圧共通気室55および負圧タンク24は大気開放状態であるため、エアポンプ59が駆動されても負圧はかからない。
【0124】
次いで、ステップS23において、CPU101は、インクポンプ25を起動する。これにより、負圧タンク24から加圧タンク21へインクが送られ、負圧タンク24の液面が低下していく。ここで、加圧タンク21には正圧が付与され、加圧タンク21から配管28を通ってインクが流出しているため、負圧タンク24から加圧タンク21にインクが流入しても、加圧タンク21はオーバーフローしない。
【0125】
次いで、ステップS24において、CPU101は、負圧タンク液面センサ37がオフであるか否かを判断する。負圧タンク液面センサ37がオンであると判断した場合(ステップS24:NO)、CPU101は、ステップS24を繰り返す。
【0126】
負圧タンク液面センサ37がオフであると判断した場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、CPU101は、インクポンプ25を停止する。これにより、負圧タンク24内の液面が基準高さ未満になる。
【0127】
次いで、ステップS26において、CPU101は、前述の液面維持制御を開始する。
【0128】
次いで、ステップS27において、CPU101は、負圧側大気開放弁57を閉じる。これにより、負圧共通気室55を介して各印刷部2の負圧タンク24が密閉状態となる。ここで、加圧側大気開放弁53は、ステップS21で閉じられてから引き続き閉状態であり、加圧共通気室51を介して各印刷部2の加圧タンク21は密閉状態である。
【0129】
この後、ステップS28〜S34の処理は、前述した
図6のステップS13〜S19の処理と同様である。ステップS34において液面維持制御が終了すると、予備処理付き循環動作による印刷処理が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
【0130】
上述した
図8のステップS21〜S25の処理が、予備処理に相当する。この予備処理により、負圧タンク24内の液面が基準高さ未満にまで下げられる。予備処理後は、
図8のステップS26〜S34において、通常循環動作と同様のインク循環が行われる。予備処理により負圧タンク24内の液面が基準高さ未満にまで下げられているので、インク循環時に負圧共通気室55および負圧タンク24に負圧がかけられても、負圧タンク24からインクが吸引されて負圧共通気室55にインクが入ることは回避される。
【0131】
ここで、前述のように、インクジェット印刷装置1では、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われている場合に、インクジェット印刷装置1の移動が行われ、その振動によりインクジェットヘッド11等のインクが加圧タンク21および負圧タンク24に流れ落ちている可能性があるとして、予備処理付き循環動作による印刷処理を行う。
【0132】
しかし、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われていても、インクジェット印刷装置1の移動が行われたとは限らない。また、インクジェット印刷装置1の移動が行われた場合でも、インクジェットヘッド11等のインクが加圧タンク21および負圧タンク24に流れ落ちるとは限らない。
【0133】
このため、インクジェット印刷装置1では、加圧タンク21および負圧タンク24にインクジェットヘッド11等のインクが流れ落ちてはいない、正常な待機状態から、予備処理付き循環動作による印刷処理が行われることもある。この場合、本来は予備処理は不要だが、予備処理の工程を経てインク循環が行われることになる。
【0134】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部8は、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われている場合、予備処理付き循環動作による印刷処理を行う。これにより、負圧タンク24が満杯になっている場合でも、予備処理により負圧タンク24内の液面を下げ、インク循環時に負圧タンク24からインクが吸引されて負圧共通気室55にインクが入ることを回避できる。この結果、インクの混色が生じることによる印刷画質の低下を抑制できる。また、エアポンプ59にインクが入ることを低減し、エアポンプ59の故障を低減できる。
【0135】
また、インクジェット印刷装置1では、前回の電源オフを行った時点以降に主電源の切断が行われていることを予備処理実行条件とし、予備処理実行条件が満たされていない場合は、予備処理を省略した通常循環動作による印刷処理を行う。これにより、不要な予備処理を低減し、予備処理による印刷ジョブの実行開始の遅延を低減できる。
【0136】
なお、インクジェット印刷装置1に振動センサを設け、この振動センサにより所定レベル以上の大きさの振動が検出されたことを予備処理実行条件としてもよい。これにより、予備処理の要否を高精度で判断できる。
【0137】
また、インクジェット印刷装置1に負圧タンク24が満杯であるか否か検出する満杯検出部を設け、この満杯検出部により負圧タンク24が満杯であることが検出されたことを予備処理実行条件としてもよい。これにより、予備処理の要否をより高精度で判断できる。ここで、満杯検出部としては、例えば、フロート部材36および負圧タンク液面センサ37と同様のものを用いることができる。
【0138】
また、ユーザが操作パネル5を操作して予備処理付き循環動作を指示したことを予備処理実行条件としてもよい。これにより、ユーザの判断に基づき予備処理を実行できる。
【0139】
また、予備処理実行条件を設けず、無条件で予備処理付き循環動作による印刷処理を行うようにしてもよい。
【0140】
また、上記実施の形態では、各印刷部2の加圧タンク21が配管60により加圧共通気室51に連通し、各印刷部2の負圧タンク24が配管61により負圧共通気室55に連通する構成について説明したが、4本の配管60、4本の配管61が、それぞれ1本の配管に合流する構成でもよい。この場合、4本の配管60が合流した1本の配管(請求項の加圧側共通空間部に相当)と、4本の配管61が合流した1本の配管(請求項の負圧側共通空間部に相当)との間に、エアポンプ59が設けられる。また、大気開放弁が、4本の配管60が合流した1本の配管と、4本の配管61が合流した1本の配管とにそれぞれ設けられる。
【0141】
また、上記実施の形態では、4つの印刷部2を有するインクジェット印刷装置1について説明したが、印刷部2の数はこれに限らない。印刷部2が1つの場合でも本発明は適用可能である。
【0142】
印刷部2が1つの構成の場合、加圧共通気室51および負圧共通気室55は不要である。エアポンプ59は、加圧タンク21および負圧タンク24に配管を介して接続されていればよい。ただし、印刷部2が1つの構成でも、エアポンプ59の脈動の影響を抑えるため、エアポンプ59と加圧タンク21との間、およびエアポンプ59と負圧タンク24との間にそれぞれ気室があってもよい。加圧側大気開放弁53、負圧側大気開放弁57は、それぞれ加圧タンク21、負圧タンク24に直接設ければよい。
【0143】
印刷部2が1つの構成の場合、インクの混色は生じないが、予備処理を行うことで、エアポンプ59の故障を低減することができる。
【0144】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。