特許第6322500号(P6322500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322500
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】点火制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 17/12 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   F02P17/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-136962(P2014-136962)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-14355(P2016-14355A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】青木 文明
(72)【発明者】
【氏名】青地 高伸
(72)【発明者】
【氏名】林 真人
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−017774(JP,A)
【文献】 特開2013−108465(JP,A)
【文献】 特開平04−284176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00−3/12、7/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電用電圧を発生させる点火コイル(2)と、上記放電用電圧によって放電を発生させ、内燃機関の気筒(6)内に取り込まれた混合気(G)に点火する点火プラグ(3)と、上記点火コイル(2)の動作を制御する制御回路(4)とを備えた点火制御装置(1)において、
上記制御回路(4)には、上記点火プラグ(3)における放電電流(I)を、所定の検出間隔(T1)で検出する検出器(5)が接続されており、
上記所定の検出間隔(T1)で複数回検出を行った電流値に基づいて、上記放電電流(I)の大きさの時間的変化である傾き(α)を算出し、該傾き(α)が所定の変動範囲を外れて変化した時に、上記混合気(G)の燃焼が開始されたと判断するよう構成されていることを特徴とする点火制御装置(1)。
【請求項2】
上記傾き(α)が所定の変動範囲を外れて変化した時に、上記点火コイル(2)における一次コイル(21)へ放電遮断用の通電を開始することにより、上記点火プラグ(3)における放電を遮断するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の点火制御装置(1)。
【請求項3】
上記一次コイル(21)への上記放電遮断用の通電を開始した後には、上記内燃機関の排気工程(K3)又は吸気工程において、上記通電を遮断するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の点火制御装置(1)。
【請求項4】
上記放電電流(I)には、上記点火コイル(2)における二次コイル(22)側の静電容量に起因した突発的な成分としての容量放電成分(I1)と、上記二次コイル(22)側の電磁エネルギーに起因した持続的な成分としての誘導放電成分(I2)とがあり、
上記傾き(α)は、上記検出器(5)による電流値のうち、所定の電流値を超える上記容量放電成分(I1)を除く残りの電流値に基づいて算出するよう構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の点火制御装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の気筒における点火制御を行う点火制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点火制御装置は、点火プラグが接続された点火コイルの一次コイルへの通電及び通電の遮断をするタイミングを制御し、点火プラグにおいて発生させる放電によって、内燃機関の気筒に取り込まれた混合気への点火を行っている。
点火プラグにおける放電時間は、長くなり過ぎると点火プラグの電極の消耗が大きくなり、短くなり過ぎると失火の原因になる。そのため、点火プラグにおける放電時間を適切に制御することが重要になる。
【0003】
例えば、特許文献1の点火装置においては、点火プラグにおける放電開始後の所定期間において、点火コイルの一次電圧の絶対値を所定値以下に制限することが開示されている。この点火装置においては、放電開始後の所定期間において、点火コイルの二次電圧が制限される。そして、気流による放電の吹消えが発生しても、その発生直後に再放電することが回避されることにより、放電繰り返しによるプラグ消耗が抑制される。また、放電期間が不足しないよう誘導放電による放電が継続されることにより、失火が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−100811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の高タンブルエンジン等においては、気筒内における混合気の流速が速い。そして、混合気の流れによって、点火プラグにおける放電の吹消えが生じるごとに再び放電が行われて、混合気の燃焼が行われる。特許文献1の点火装置においては、放電開始後の所定期間において点火コイルの二次電圧が制限されるため、混合気の燃焼が開始される前においても、二次電圧による放電電流が制限される場合がある。この場合、点火プラグにおける放電によって混合気に点火が行われる前に放電電流が制限され、失火が生じやすくなり、燃焼を安定化させることが困難になる。また、特許文献1においては、混合気の燃焼が開始された後にも、点火プラグにおける放電が行われる。そのため、点火プラグにおける放電時間を適切に短くすることができず、点火プラグの消耗を十分に抑制することができない。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、点火プラグの消耗の抑制及び混合気の燃焼の安定化を両立させることができる点火制御装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、放電用電圧を発生させる点火コイルと、上記放電用電圧によって放電を発生させ、内燃機関の気筒内に取り込まれた混合気に点火する点火プラグと、上記点火コイルの動作を制御する制御回路とを備えた点火制御装置において、
上記制御回路には、上記点火プラグにおける放電電流を、所定の検出間隔で検出する検出器が接続されており、
上記所定の検出間隔で複数回検出を行った電流値に基づいて、上記放電電流の大きさの時間的変化である傾きを算出し、該傾きが所定の変動範囲を外れて変化した時に、上記混合気の燃焼が開始されたと判断するよう構成されていることを特徴とする点火制御装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記点火制御装置においては、点火プラグの消耗の抑制及び混合気の燃焼の安定化の両立を図る工夫をしている。
具体的には、内燃機関の燃焼動作において、点火プラグから放電が行われる際には、検出器は、点火プラグにおける放電電流を所定の検出間隔で検出する。このとき、点火制御装置は、制御回路における動作によって、所定の検出間隔で複数回検出を行った電流値に基づいて、放電電流の大きさの時間的変化である傾きを算出する。
【0009】
この傾きは、点火コイルによる混合気への点火によって混合気の燃焼が開始される前の値に比べて、混合気の燃焼が開始された後の値が緩やかになることが分かった。この理由は次のように考える。燃焼が開始された後には、混合気中の酸素、窒素、燃料としての炭化水素等の成分がイオン化し、放電しやすい状況が形成される。これにより、燃焼開始後には、放電時間が引き延ばされ、傾きが緩やかになると考える。
【0010】
点火制御装置は、制御回路における動作によって、傾きの監視を行い、傾きが所定の変動範囲を外れて変化した時に、混合気の燃焼が開始されたと判断する。そして、この判断を行った時には、点火制御装置は、点火プラグにおける放電が行われないようにすることができる。これにより、点火プラグの放電時間を適切に短くすることができ、点火プラグの消耗を抑制することができる。また、燃焼が開始される前に、放電電流が制限されることがなく、失火の発生を抑えて、燃焼を安定化させることができる。
【0011】
それ故、上記点火制御装置によれば、点火プラグの消耗の抑制及び混合気の燃焼の安定化を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例にかかる、点火制御装置を示す説明図。
図2】実施例にかかる、点火制御装置の電気的構成を示す説明図。
図3】実施例にかかる、二次コイル及び点火プラグに流れる放電電流の時間的変化を示すグラフ。
図4】実施例にかかる、点火制御装置の点火動作におけるIGt信号、一次電流及び二次電流の時間的変化を示すグラフ。
図5】実施例にかかる、検出器による各検出時点を示し、検出間隔と算出間隔との関係を示すグラフ。
図6】実施例にかかる、点火制御装置における点火制御プログラムの流れを概念的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した点火制御装置における好ましい実施の形態について説明する。
上記点火制御装置においては、上記傾きが所定の変動範囲を外れて変化した時に、上記点火コイルにおける一次コイルへ放電遮断用の通電を開始することにより、上記点火プラグにおける放電を遮断するよう構成されていてもよい。
この場合には、混合気の燃焼が開始されたと判断された時には、一次コイルへ放電遮断用の通電を開始するといった簡単な構成により、直ちに点火プラグにおける放電を遮断することができる。
【0014】
また、上記一次コイルへの上記放電遮断用の通電を開始した後には、上記内燃機関の排気工程又は吸気工程において、上記通電を遮断するよう構成されていてもよい。
点火コイルにおける一次コイルへ放電遮断用の通電を行うことにより、一次コイルには、通常の放電発生用の通電が行われる以外に、放電遮断用の通電が余分に行われることになる。そのため、放電遮断用の通電を、混合気の燃焼に影響が生じない排気工程又は吸気工程において遮断することにより、この通電の遮断によって点火プラグに発生する放電が、混合気の燃焼に影響を与えないようにすることができる。
【0015】
また、上記放電電流には、上記点火コイルにおける二次コイル側の静電容量に起因した突発的な成分としての容量放電成分と、上記二次コイル側の電磁エネルギーに起因した持続的な成分としての誘導放電成分とがあり、上記傾きは、上記検出器による電流値のうち、所定の電流値を超える上記容量放電成分を除く残りの電流値に基づいて算出するよう構成されていてもよい。
この場合には、放電電流の大きさの時間的変化である傾きを算出する際に、容量放電成分が傾きに与える影響をできるだけ小さくすることができる。そのため、混合気の燃焼が開始された時点の判断の精度を高めることができる。
【実施例】
【0016】
以下に、点火制御装置にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の点火制御装置1は、図1図2に示すように、放電用電圧を発生させる点火コイル2と、放電用電圧によって放電を発生させ、内燃機関の気筒6内に取り込まれた混合気Gに点火する点火プラグ3と、点火コイル2の動作を制御する制御回路4とを備えている。制御回路4には、点火プラグ3における放電電流Iを、所定の検出間隔T1で検出する検出器5が接続されている。点火制御装置1は、所定の検出間隔T1で複数回検出を行った放電電流Iの値に基づいて、放電電流Iの大きさの時間的変化である傾きαを算出し、傾きαが所定の変動範囲を外れて変化した時に、混合気Gの燃焼が開始されたと判断するよう構成されている。
【0017】
以下に、本例の点火制御装置1について詳説する。
図1図2に示すように、点火制御装置1は、内燃機関としてのエンジンの各気筒6における燃焼の制御を行うよう構成されている。点火制御装置1は、制御回路4における制御動作によって、点火コイル2における一次コイル21への通電及び通電の遮断を行うタイミングを制御するよう構成されている。
点火コイル2は、制御回路4に接続されたスイッチング回路41によって通電及び通電の遮断が行われる一次コイル21と、一次コイル21と同心円状に配置され、一次コイル21への通電が遮断されたときの誘導起電力としての二次電圧を発生させる二次コイル22とを有している。エンジンの燃焼サイクルにおける圧縮工程K1又は膨張工程K2において、放電用電圧を発生させるための一次コイル21への通電及び通電の遮断が行われる(図4参照)。
【0018】
図2に示すように、点火プラグ3は、点火コイル2における二次コイル22の高電圧側端部に接続される中心電極31と、シリンダヘッドのプラグホールに取り付けられ、グラウンド電位に接続されるハウジングとを有している。ハウジングには、中心電極31の先端部との間に、放電用間隙Cを形成する接地電極32が設けられている。
制御回路4は、ECU(エンジンコントロールユニット)における点火制御を行う部分として構成されている。検出器5は、二次コイル22の高電圧側端部に接続されており、二次コイル22から点火プラグ3に流れる放電電流Iを検出するよう構成されている。
【0019】
図3は、横軸に時間をとり、縦軸に二次コイル22及び点火プラグ3に流れる二次電流としての放電電流Iをとって、放電電流Iの時間的変化を示す。同図において、一次コイル21への通電を遮断した直後には、二次電圧が急激に上昇し、二次電圧が点火プラグ3における放電電圧に達したときには(図中のt1の時点)、点火プラグ3における放電用間隙Cにおいて火花放電が発生する。また、火花放電とともに放電電流Iが発生する。この放電電流Iには、点火コイル2における二次コイル22側の静電容量に起因した突発的な成分としての容量放電成分I1と、二次コイル22側の電磁エネルギーに起因した持続的な成分としての誘導放電成分I2とが含まれる。突発的な容量放電成分I1は、気筒6内における混合気Gの流れによる、放電の吹消えが生じたときに発生していると考えられる。また、持続的な誘導放電成分I2は、時間とともに徐々に減衰していく。
【0020】
そして、放電電流Iが流れる途中において、放電用間隙Cに発生する火花放電によって、混合気Gに点火が行われ、燃焼が開始される。このとき、放電用間隙Cに存在する混合気G中の酸素、窒素、燃料としての炭化水素等の成分がイオン化し、放電用間隙Cに放電が発生しやすい状況が形成される。そして、燃焼質量割合が0%である、燃焼が開始された時点t2において、誘導放電成分I2の時間的変化を示す傾きαの変曲点Xが出現する。この変曲点Xが出現する時点が、傾きαが所定の変動範囲を外れて変化した時として検出される。傾きαは、変曲点Xを境にして、燃焼開始前の傾きαの大きさ(直線L1によって示す。)に比べて、燃焼開始後の傾きαの大きさ(直線L2によって示す。)が小さくなる。燃焼開始後の傾きαの大きさが小さくなるのは、放電用間隙Cに放電が発生しやすい状況が形成されたことにより、放電時間が引き延ばされるためである。
【0021】
図4は、横軸に時間をとり、縦軸に、一次コイル21におけるIGt信号(点火信号)、一次コイル21における一次電流、二次コイル22における二次電流(放電電流I)をとって、点火制御装置1の点火動作におけるIGt信号、一次電流及び二次電流の時間的変化を示す。
点火制御装置1の動作において、圧縮工程K1において混合気Gが圧縮されるときには、スイッチング回路41によるIGt信号の印加によって一次コイル21への通電が開始される。そして、一次コイル21に一次電流が流れ、一次コイル21が充電される。次いで、混合気Gに点火を行うタイミングに合わせて、一次コイル21への通電が遮断されると、二次コイル22に誘導起電力としての二次電圧が発生するとともに、二次コイル22に二次電流としての放電電流Iが流れる。放電電流Iは、一次コイル21への通電を遮断した直後に最も大きくなり、その後、徐々に減衰していく。そして、放電電流Iが点火プラグ3における放電用間隙Cに流れる間に、混合気Gへの点火が行われる。
【0022】
図1に示すように、制御回路4には、一次コイル21への通電及び通電の遮断のタイミング、検出器5による放電電流Iの値の検出等を行うための点火制御プログラムPが構築されている。点火制御プログラムPにおいては、検出間隔T1よりも長い間隔であって、検出間隔T1の整数倍の間隔になるように、算出間隔T2が設定されている。図5には、検出器5による各検出時点tを示し、検出間隔T1と算出間隔T2との関係を示す。
【0023】
図6には、点火制御装置1における点火制御プログラムPの流れを概念的に示す。
点火制御プログラムPは、エンジンの燃焼サイクル中において、放電用電圧を発生させるための一次コイル21への通電及び通電の遮断A1と、放電の遮断を行うための一次コイル21への通電の開始A2とを行う(図4参照)。
まず、点火制御プログラムPは、エンジンの燃焼サイクルにおける点火時期に応じて、一次コイル21への通電を開始し(同図のステップS1)、所定時間経過後に(S2)、この通電を遮断する(S3、図3図4の時間t1)。
【0024】
そして、点火制御プログラムPは、一次コイル21への通電開始後にこの通電を遮断するときには、一定の検出間隔(時間間隔)T1で、二次コイル22の高電圧側端部及び点火プラグ3に流れる放電電流Iの検出を開始する(S4)。そして、放電電流Iの検出を複数回行ったときの算出間隔T2の経過時に(S5)、複数回検出を行った放電電流Iの値を平均して、放電電流Iの大きさの時間的変化である傾きαを算出する(S6)。
【0025】
このとき、傾きαは、検出器5による放電電流Iの値のうち、所定の放電電流Iの値を超える容量放電成分I1を除く残りの放電電流の値に基づいて算出することができる。容量放電成分I1は、突発的な放電電流Iの成分であって、混合気Gの点火に貢献しない成分であり、傾きαを算出する際の誤差の要因となる。一方、誘導放電成分I2は、持続的な放電電流Iの成分であって、混合気Gの点火に貢献する成分である。そのため、容量放電成分I1を可能な限り除いて傾きαを算出することにより、容量放電成分I1が傾きαに与える影響をできるだけ小さくして、混合気Gの燃焼が開始された時点の判断の精度を高めることができる。
【0026】
点火制御プログラムPにおいては、傾きαが所定の変動範囲を外れて変化した時(変曲点Xが出現した時)に(S7)、混合気Gの燃焼が開始されたと判断し、点火コイル2における一次コイル21へ放電遮断用の通電を開始することにより(図3図4の時間t2)、点火プラグ3における放電を遮断する(S8)。なお、傾きαが所定の変動範囲を外れて変化した時には、傾きαの変曲点Xが出現したと判断する(図3参照)。また、放電の遮断を行うための一次コイル21への通電の遮断は、所定時間経過後に(S9)、燃料サイクル中における排気工程K3において行う(S10、図3図4の時間t3)。なお、この通電の遮断は、吸気工程において行うこともできる。
【0027】
放電の遮断を行うための一次コイル21への通電は、点火プラグ3における放電用間隙Cに放電を発生させるための通電ではない。そして、この通電を遮断したときに放電用間隙Cに発生する放電は、不要な放電となる。そのため、図4に示すように、放電の遮断を行うための一次コイル21への通電の遮断を排気工程K3において行い、不要な放電によって、混合気Gの燃焼に影響が生じないようにすることができる。
【0028】
本例の点火制御装置1の制御回路4における点火制御プログラムPは、上述したように、点火プラグ3の放電用間隙Cにおいて放電電流Iが発生するときに、傾きαの算出及び監視を行い、傾きαが所定の変動範囲を外れて変化した時に、混合気Gの燃焼が開始されたと判断する。そして、この時、点火コイル2における一次コイル21へ放電遮断用の通電を開始することにより、点火プラグ3における放電を遮断する。これにより、混合気Gが点火されて混合気Gの燃焼が開始された後においては、混合気Gの点火に不必要になった放電を停止することができる。
そのため、点火プラグ3の放電時間を適切に短くすることができ、点火プラグ3の消耗を抑制することができる。また、燃焼が開始される前に、放電電流Iが制限されることがなく、失火の発生を抑えて、燃焼を安定化させることができる。
【0029】
それ故、本例の点火制御装置1によれば、点火プラグ3の消耗の抑制及び混合気Gの燃焼の安定化を両立させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 点火制御装置
2 点火コイル
3 点火プラグ
4 制御回路
5 検出器
G 混合気
I 放電電流
α 傾き
図1
図2
図3
図4
図5
図6