特許第6322510号(P6322510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322510
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】管材矯正方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/14 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   B21D3/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-150074(P2014-150074)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22525(P2016-22525A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】岸口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 正志
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/137924(WO,A1)
【文献】 特開2004−258027(JP,A)
【文献】 特開昭61−165229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/00−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の真円度を矯正する管材矯正方法であって、
前記管材の軸線方向の中間部の真円度を矯正する中間部矯正工程と、
前記中間部矯正工程の後で、前記管材の前記軸線方向の端を含む端部の真円度を、前記管材の前記中間部と前記管材の前記端部とが前記軸線方向に連なるように矯正する端部矯正工程と、
を備え
前記中間部矯正工程の前に、
前記管材の外周面を保持機構で保持し、前記管材における径方向外側に突出した突部を径方向内側に変形させる保持工程と、
前記保持機構をリング状の矯正用ケーシングに接近させて前記矯正用ケーシング内に前記管材を挿入する挿入工程と、
前記保持機構による前記管材の保持を解除する解除工程と、
前記保持機構を前記矯正用ケーシングから離間させる退避工程と、を組にして複数回繰り返すことを特徴とする管材矯正方法。
【請求項2】
前記保持工程、前記挿入工程、前記解除工程、及び前記退避工程の前に、
前記管材における前記突部の前記管材の軸線周りの位置を検出する突部検出工程を備えることを特徴とする請求項に記載の管材矯正方法。
【請求項3】
前記管材は、前記軸線方向が鉛直方向に直交するように配置され、
前記中間部矯正工程及び前記端部矯正工程では、自身の外周面を前記管材の内周面に当接させて前記管材の内周に配置される内周側ローラと前記管材とは、前記管材の前記軸線よりも上方側で接触することを特徴とする請求項1または2に記載の管材矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材矯正方法及び管材挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプラインや杭用に用いられる管材は、その真円度が十分に確保されていないと、溶接等の接合や機械的な接合を行うに当たって、接合不良や品質不良を発生することがある。そのため、予め、管材の軸線方向における端部の真円度を高めることが行われている。なお、ここで言う管材の端部とは、管材の端も含む意味である。
真円度とは、本明細書では、管材の軸線方向に直交するある断面における最大外径と最小外径との差のことを意味する。そして、真円度を矯正するとは、管材を真円度がゼロに近づくように矯正することを意味する。真円度がゼロに近いほど(真円度を高めるほど)、管材の断面形状は真円に近くなる。
【0003】
管材の真円度を矯正する管材矯正方法として、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。
この管材矯正方法は、内周面が円形に形成されたリング状のケーシングの内周面を管材の端部の外周面に対向させて管材の外周にケーシングを配置するとともに、外周面を管材の端部の内周面に当接させて管材の内周に内周側ローラを配置する。そして、ケーシングの内周面と管材の外周面との間に圧接力を作用させることで、ケーシングの内周面を矯正型面として管材を塑性変形させるとともに、管材と内周側ローラとを管材の軸線回りに相対的に回転させる。このようにして、管材の端部の真円度を矯正する。
この管材矯正方法に用いられる装置が、管材矯正装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−223817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、矯正した管材の端部に連なる管材の軸線方向の中間部は矯正されていない。このため、管材の端部の真円度を矯正しても、管材の中間部から端部に作用する応力により、管材の端部の真円度が高くならない。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、管材の端部をより真円度を高めて矯正する管材矯正方法、及び、管材矯正装置とともに用いられて管材の端部をより真円度を高めて矯正する管材挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の管材矯正方法は、管材の真円度を矯正する管材矯正方法であって、前記管材の軸線方向の中間部の真円度を矯正する中間部矯正工程と、前記中間部矯正工程の後で、前記管材の前記軸線方向の端を含む端部の真円度を、前記管材の前記中間部と前記管材の前記端部とが前記軸線方向に連なるように矯正する端部矯正工程と、を備え、前記中間部矯正工程の前に、前記管材の外周面を保持機構で保持し、前記管材における径方向外側に突出した突部を径方向内側に変形させる保持工程と、前記保持機構をリング状の矯正用ケーシングに接近させて前記矯正用ケーシング内に前記管材を挿入する挿入工程と、前記保持機構による前記管材の保持を解除する解除工程と、前記保持機構を前記矯正用ケーシングから離間させる退避工程と、を組にして複数回繰り返すことを特徴としている。
この発明によれば、管材の端部の真円度を矯正するときには、管材の端部に連なる管材の中間部の真円度が矯正されている。
【0008】
また、本発明の参考例の管材挿入装置は、円形に形成された自身の内周面を管材の外周面に対向させて前記管材の外周に配置されるリング状の矯正用ケーシングと、自身の外周面を前記管材の内周面に当接させて前記管材の内周に配置される内周側ローラと、前記矯正用ケーシングの内周面と前記管材の外周面との間に圧接力を作用させることで前記管材を塑性変形させる押圧機構と、前記管材と前記内周側ローラとを前記矯正用ケーシングの軸線周りに相対的に回転させる回転機構と、を備える管材矯正装置とともに用いられ、前記矯正用ケーシング内に前記管材を挿入するための管材挿入装置であって、自身の内周面を前記管材の外周面に対向させて前記管材の外周に配置されるリング状の保持用ケーシングと、前記保持用ケーシングに設けられ、前記管材における径方向外側に突出した突部を径方向内側に変形させた状態を保持するとともにこの保持を解除可能な保持機構と、前記保持用ケーシングに設けられ、前記矯正用ケーシングと前記保持用ケーシングとの前記矯正用ケーシングの軸線方向の距離を調整可能な距離調整機構と、を備えることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、保持機構により管材を保持した状態で距離調整機構により矯正用ケーシングに保持用ケーシングを接近させる。保持機構による管材の保持を解除し、矯正用ケーシングから保持用ケーシングを離間させる。このようにして矯正用ケーシングに管材を接近させたり、反対の動作をして矯正用ケーシングから管材を離間させたりする。管材の最大外径が小さくなることで、矯正用ケーシング内に管材が挿入しやすくなる。
管材矯正装置の矯正用ケーシングと内周側ローラとの間に管材の中間部を配置して押圧機構及び回転機構により管材の中間部の真円度を矯正する。その後で、矯正用ケーシングと内周側ローラとの間に管材の端部を配置して押圧機構及び回転機構により管材の端部の真円度を矯正する。このように矯正することで、管材の端部の真円度を矯正するときには、管材の端部に連なる管材の中間部の真円度が矯正されている。
【0010】
また、上記の管材矯正方法において、前記保持工程、前記挿入工程、前記解除工程、及び前記退避工程の前に、前記管材における前記突部の前記管材の軸線周りの位置を検出する突部検出工程を備えることがより好ましい。
また、上記の管材矯正方法において、前記管材は、前記軸線方向が鉛直方向に直交するように配置され、前記中間部矯正工程及び前記端部矯正工程では、自身の外周面を前記管材の内周面に当接させて前記管材の内周に配置される内周側ローラと前記管材とは、前記管材の前記軸線よりも上方側で接触することがより好ましい。
【0011】
また、上記の管材挿入装置において、前記保持機構は、前記保持用ケーシングの周方向に互いに間隔を空けて複数の保持部を有し、複数の前記保持部のうちの少なくとも1つが有する保持用ピストンが、前記保持用ケーシングの径方向に移動可能であることがより好ましい。
この発明によれば、保持機構を周方向に互いに間隔を空けた複数の保持部で構成することで、周方向において管材を全周でなく、複数の位置で保持する。
【0012】
また、上記の管材挿入装置において、複数の前記保持部のうちの少なくとも1つは、前記管材の前記突部に接触する保持部材であることがより好ましい。
また、上記の管材挿入装置において、前記矯正用ケーシングの前記軸線方向の前記保持用ケーシング側の外面には、前記矯正用ケーシングの周方向に延びる溝部が形成され、前記溝部は、前記外面側に形成された外面側溝部と、前記溝部の底面側に形成され、前記矯正用ケーシングの径方向の長さが前記外面側溝部の前記径方向の長さよりも長い底面側溝部と、を有し、前記距離調整機構は、前記軸線方向に延びる棒状に形成された調整用ピストンと、前記調整用ピストンの前記矯正用ケーシング側の端部に設けられ、前記調整用ピストンから径方向外側に突出して前記底面側溝部に係合することなく前記外面側溝部に係合可能な係合部と、前記調整用ピストンを前記軸線方向に移動させるシリンダ本体と、前記調整用ピストンを前記調整用ピストンの軸線周りに回転させる回転部と、を有することがより好ましい。
【0013】
この発明によれば、回転機構により調整用ピストンを回転させて、係合部が突出する方向と溝部が延びる方向とを平行にすることで溝部に係合部が係合しなくなり、係合部が突出する方向と溝部が延びる方向とを直交させることで溝部に係合部が係合する。
溝部に係合部が係合しない向きにして、シリンダ本体により溝部に調整用ピストンを挿入する。溝部に係合部が係合するように調整用ピストンを回転させることで、矯正用ケーシングに調整用ピストンを係合させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、請求項1に記載の管材矯正方法及び参考例の管材挿入装置によれば、管材の端部の真円度を矯正するときに管材の端部が管材の中間部から受ける応力を抑えることができ、管材の端部をより真円度を高めて矯正することができる。
請求項に記載の管材矯正方法によれば、保持機構を矯正用ケーシングに接近させたり離間させたりする長さが短い場合でも、保持工程から退避工程までを組にして複数回繰り返すことで、矯正用ケーシングに対して管材をより長く移動させることができる。
【0015】
請求項に記載の管材矯正方法によれば、管材に応じた突部の位置を検出することができる。
請求項に記載の管材矯正方法によれば、管材が矯正される部分が上方から確認しやすくなる。
【0016】
参考例の管材挿入装置によれば、管材に作用させる保持力を周方向の複数カ所に集中させ管材をより確実に保持することができる。
参考例の管材挿入装置によれば、保持機構を簡単に構成することができる。
参考例の管材挿入装置によれば、矯正用ケーシングに調整用ピストンを係合させた状態でシリンダ本体により調整用ピストンを引き戻すことで、矯正用ケーシングと保持用ケーシングとの距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の管材挿入装置を管材矯正装置とともに模式的に示す側面の断面図である。
図2】同管材挿入装置で使用される管材の断面図である。
図3図1中の切断線A1−A1の断面図である。
図4】同管材挿入装置の矯正用ケーシングの正面図である。
図5】同管材挿入装置のブロック図である。
図6】本実施形態の管材矯正方法を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の管材矯正方法を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図9図8中の切断線A2−A2の断面図である。
図10】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図11】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図12】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図13】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図14】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図15】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図16】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図17】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図18】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図19】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図20】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図21】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図22】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図23】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図24】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図25】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図26】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図27】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図28】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図29】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図30】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図31】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図32】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図33】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図34】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図35】本実施形態の管材矯正方法を示す側面の断面図である。
図36】本発明の第2実施形態の管材挿入装置を管材矯正装置とともに模式的に示す正面の断面図である。
図37】本実施形態の管材矯正方法を示す正面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る管材挿入装置の第1実施形態を、図1から35を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の管材挿入装置1は、管材Tの真円度を矯正する管材矯正装置100とともに用いられる。以下では、まず、管材Tについて説明する。
【0019】
図2は、管材Tの軸線C11方向に直交する平面による断面図である。なお、図2では管材Tの径方向の変形を誇張して示している。この管材Tは管材挿入装置1で使用される管材Tの一例であり、例えばUOE法により形成されたものである。管材Tは、板材を幅方向の両縁部が近づくように曲げることで管状に変形させ、この両縁部を突き合せてシーム溶接して形成したものである。
一般的に、このように形成された管材Tの断面形状(初期形状)は真円にはならない。管材Tには、シーム溶接して形成されたシーム部を含め、管材Tの他の外面よりも径方向外側に突出した突部T1が3つ、管材Tの軸線C11周りに互いに離間した位置に形成されている。各突部T1は管材Tの軸線C11方向に延びている。
図3以降では、突部T1を2点鎖線の丸印で示す。
【0020】
次に、管材矯正装置100について説明する。
図1及び3に示すように、この管材矯正装置100は、管材Tの外周に配置されるリング状の矯正用ケーシング110と、管材Tの内周に配置される内周側ローラ115と、矯正用ケーシング110の内周面と管材Tの外周面との間に圧接力を作用させる押圧機構120と、管材Tと内周側ローラ115とを矯正用ケーシング110の軸線C1周りに相対的に回転させる内周側ローラ駆動モータ(回転機構)125と、矯正用ケーシング110等を支持する基台130とを備えている。
【0021】
矯正用ケーシング110の内周面110aは、矯正用ケーシング110の軸線C1に平行に見たときに、真円形又はほぼ真円形に形成されている。矯正用ケーシング110は、鉄鋼等の金属で形成されている。なお、矯正用ケーシング110の剛性は、管材Tの剛性よりも充分高いことが好ましい。矯正用ケーシング110は、軸線C1が鉛直方向Zに直交するように配置されている。
【0022】
図1及び4に示すように、矯正用ケーシング110の軸線C1に沿う水平方向Xの一方側X1の外面110bには、矯正用ケーシング110の周方向に延びる蟻溝(溝部)111が全周にわたり形成されている。矯正用ケーシング110の外面110bは、矯正用ケーシング110の後述する保持用ケーシング10側の面である。
蟻溝111は、外面110b側に形成された外面側溝部111aと、蟻溝111の底面側に形成された底面側溝部111bとを有している。底面側溝部111bは、外面側溝部111aよりも径方向内側及び径方向外側にそれぞれ突出している。底面側溝部111bの矯正用ケーシング110の径方向の長さL2は、外面側溝部111aの径方向の長さL1よりも長い。
【0023】
矯正用ケーシング110は、図1及び3に示すように内周面110aを管材Tの外周面に対向させて配置される。
水平面G上に配置された基台130には、不図示の支持ロール駆動シリンダを介して図3に示す支持ロール135が一対取付けられている。支持ロール135のローラ135aは、矯正用ケーシング110の軸線C1に平行な軸線C2周りに回転することができる。
支持ロール駆動シリンダとしては、例えば公知の油圧シリンダを用いることができる。支持ロール駆動シリンダを駆動することで、各支持ロール135は基台130に対して鉛直方向Zに移動することができる。一対の支持ロール135のローラ135aは、矯正用ケーシング110を下方側Z2から支持している。
基台130には、支持台131、及び、一対の支持ロール135を挟むように一対のレール132が固定されている。
各レール132は水平方向Xに延びている。レール132の上部には挟持部材133の基端部が固定され、レール132と挟持部材133の先端部との間に隙間S1が形成されている。
【0024】
内周側ローラ115は、図1及び3に示すように円柱状に形成され、自身の軸線C3が矯正用ケーシング110の軸線C1に平行になるように配置されている。内周側ローラ115は、支持台131に取付けられた軸受136により軸線C3周りに回転可能に支持されている。
内周側ローラ115は、自身の外周面を管材Tの内周面に当接させることができる。内周側ローラ115は、矯正用ケーシング110内に、内周側ローラ115の上端と矯正用ケーシング110の内周面110aの上端との隙間が、内周側ローラ115と矯正用ケーシング110との他の部分の隙間よりも狭くなるように配置されている。
【0025】
押圧機構120は、矯正用ケーシング110よりも上方側Z1に配置された圧下ロール121と、圧下ロール121を鉛直方向Zに移動させる圧下ロール駆動シリンダ122を有している。
圧下ロール駆動シリンダ122は基台130に固定されている。圧下ロール駆動シリンダ122は、圧下ロール121を鉛直方向Zに移動させることができる。
【0026】
内周側ローラ駆動モータ125は、支持台131に固定されている。内周側ローラ駆動モータ125は、内周側ローラ115を軸線C3周りに回転させることができる。
内周側ローラ115を管材T内に挿入するために、内周側ローラ115は内周側ローラ駆動モータ125によるいわゆる片持ち式の支持になる。
【0027】
続いて、本実施形態の管材挿入装置1について説明する。管材挿入装置1は、矯正用ケーシング110内に管材Tを挿入するための装置である。
図1、3及び5に示すように、本管材挿入装置1は、管材Tの外周に配置されるリング状の保持用ケーシング10と、保持用ケーシング10に設けられた、管材Tの突部T1を径方向内側に変形させた状態を保持するとともにこの保持を解除可能な保持機構15、及び矯正用ケーシング110と保持用ケーシング10との軸線C1方向の距離を調整可能な距離調整機構20と、保持機構15及び距離調整機構20を制御する制御部25とを備えている。
【0028】
保持用ケーシング10には、保持用ケーシング10の軸線C6周りに貫通孔10aが3つ形成されている。各貫通孔10aは、軸線C6方向に延びるように形成されている。
保持用ケーシング10には、保持用ケーシング10の外周面から内周面まで延びる貫通孔10bが、保持用ケーシング10の周方向に互いに間隔を空けて形成されている。各貫通孔10bには、保持用ケーシング10の内周面側の内径よりも外周面側の内径を大きくすることで、段部10cが形成されている。各貫通孔10bは、管材Tの突部T1に対応する位置に形成されている。
保持用ケーシング10の外周面には、径方向外側に突出する受け部11が一対形成されている。各受け部11は板状に形成されている。保持用ケーシング10及び受け部11は鉄鋼等の金属で形成され、溶接等により互いに接続されている。
受け部11の先端部は、レール132と挟持部材133との間の隙間S1に配置されている。各受け部11は保持用ケーシング10に一体となって、レール132上を水平方向Xに移動することができる。
保持用ケーシング10内に管材Tが挿通されたときには、保持用ケーシング10の内周面が管材Tの外周面に対向する。
【0029】
保持機構15は、3つの保持用シリンダ(保持部)16を有している。各保持用シリンダ16は、例えば公知の油圧シリンダであり保持用ピストン16aと、保持用ピストン16aを保持用ケーシング10の径方向に移動させるための保持用シリンダ本体16bとを有している。保持用シリンダ本体16bには、図示しない油供給パイプや切換え弁等が設けられている。
保持用シリンダ16は保持用ケーシング10の貫通孔10b内に配置され、保持用シリンダ本体16bの先端部が段部10cにネジ嵌合等により固定されている。切換え弁を制御して保持用シリンダ本体16b内の油の量を調整することで、保持用ピストン16aを径方向に移動させることができる。
以下では、保持用ケーシング10の下部に配置された保持用シリンダ16を保持用シリンダ16Aと、保持用シリンダ16A以外の2つの保持用シリンダ16を保持用シリンダ16Bとも称する。
【0030】
図1及び3に示すように、距離調整機構20は、3つの距離調整部21を有している。各距離調整部21は、矯正用ケーシング110の軸線C1方向に延びる棒状に形成された調整用ピストン21aと、調整用ピストン21aの水平方向Xの他方側X2(矯正用ケーシング110側)の端部に設けられた係合部21bと、調整用ピストン21aを軸線C1方向に移動させる調整用シリンダ本体(シリンダ本体)21cと、調整用ピストン21aを調整用ピストン21aの軸線C7周りに回転させる回転部21d(図5参照)とを有している。
【0031】
調整用ピストン21aの端部には、前述の係合部21bが一対、調整用ピストン21aから径方向外側に突出するとともに調整用ピストン21aを挟んで対向するように形成されている。各係合部21bは、調整用ピストン21aの外周面の一部から突出している。これら調整用ピストン21aの水平方向Xの他方側X2の端部、及び一対の係合部21bは、全体としてT字形に形成されている。調整用ピストン21a及び一対の係合部21bは、鉄鋼等の金属で形成されている。
調整用ピストン21aの外径は外面側溝部111aの長さL1よりもわずかに小さい。調整用ピストン21aの外径と一対の係合部21bの長さの和である長さL5(図3参照)は、外面側溝部111aの長さL1よりも長く底面側溝部111bの長さL2よりも短い。
【0032】
このように構成された調整用ピストン21aの一対の係合部21bは、底面側溝部111bに係合することはない。一対の係合部21bは、係合部21bが突出する方向と蟻溝111が延びる方向とが平行のときに外面側溝部111aに係合せず、係合部21bが突出する方向と蟻溝111が延びる方向とが直交するときに外面側溝部111aに係合する。
【0033】
調整用シリンダ本体21cは、保持用シリンダ本体16bと同様に構成されている。
回転部21dには、例えば公知のモータを用いることができる。
制御部25は、図示はしないが演算素子、メモリ、制御プログラム等で構成されている。制御部25には、図5に示すように、保持用シリンダ16の保持用シリンダ本体16b、距離調整部21の調整用シリンダ本体21c及び回転部21dが接続されている。制御部25は、保持用シリンダ本体16bや調整用シリンダ本体21cの切換え弁を制御したり、回転部21dが有する図示しない回転軸を介して調整用ピストン21aを軸線C7周りに回転させたりする。
【0034】
次に、以上のように構成された管材挿入装置1を用いた本実施形態の管材矯正方法について説明する。図6及び7は、本管材矯正方法を示すフローチャートである。
なお、予め、保持用ケーシング10の軸線C6から保持用シリンダ16Bの保持用ピストン16aの先端までの距離を、矯正用ケーシング110の内周面110aの半径よりもわずかに小さい所定の値としておく。
保持用ケーシング10の軸線C6から保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aの先端までの距離を、前述の所定の値よりも充分大きくしておく。距離調整機構20の一対の係合部21bの向きを、矯正用ケーシング110の蟻溝111と平行にしておく。
以下の図12から35では、矯正用ケーシング110の蟻溝111及び距離調整機構20は示していない。
【0035】
突部検出工程(ステップS10)において、図示はしないが、管材Tにおける各突部T1の軸線C11周りの位置を、ターニングローラ等により管材Tを軸線C11周りに回転させつつ表面形状測定器等で測定しながら検出する。管材Tを軸線C11周りに回転させて、保持用ケーシング10の軸線C6周りの各保持用シリンダ16の位置に、管材Tの軸線C11周りの各突部T1の位置が合うようにする。
この突部検出工程(ステップS10)は、後述する第一の保持工程(ステップS15)から第三の退避工程(ステップS28)の前に行う。
以上で突部検出工程(ステップS10)を終了し、第一の保持工程(保持工程、ステップS15)に移行する。
【0036】
第一の保持工程(ステップS15)において、制御部25は、図8及び9に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させて、管材Tの突部T1を径方向内側に変形させ、管材Tの外周面を保持機構15で保持する(クランプON)。より詳しくは、3つの保持用シリンダ16の保持用ピストン16aで管材Tの突部T1の外周面を保持する。管材Tの最大外径が小さくなる。このとき、保持用ケーシング10の軸線C6から保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aの先端までの距離を、前述の所定の値にすることが好ましい。
不図示の昇降機で、管材Tを、軸線C11方向が鉛直方向Zに直交するように配置しつつ鉛直方向Zに移動させ、管材Tの上端の高さを、内周側ローラ115の上端と矯正用ケーシング110の内周面110aの上端との隙間の高さに合わせる。
以上で第一の保持工程(ステップS15)を終了し、第一の挿入工程(挿入工程、ステップS16)に移行する。
【0037】
第一の挿入工程(ステップS16)において、制御部25は、図10に示すように調整用シリンダ本体21cにより調整用シリンダ本体21cに対して調整用ピストン21aを水平方向Xの他方側X2に移動させ、矯正用ケーシング110の蟻溝111内に調整用ピストン21aを挿入する。
回転部21dにより調整用ピストン21aを軸線C7周りに回転させ、外面側溝部111aに一対の係合部21bを係合させる。
図11に示すように調整用シリンダ本体21cにより調整用シリンダ本体21cに対して調整用ピストン21aを水平方向Xの一方側X1に長さL7移動させる。すなわち、この長さL7が矯正用ケーシング110に対して保持用ケーシング10が一度に移動できる長さ(送り長さ)である。
長さL7は、管材Tの外径の0.25倍以上0.5倍以下程度とすることが好ましい。
【0038】
保持用ケーシング10、保持機構15及び距離調整機構20をレール132に沿って水平方向Xの他方側X2に移動させて矯正用ケーシング110に接近させ、矯正用ケーシング110内に管材Tを挿入する(管材Tの引込み)。これにより、矯正用ケーシング110内に管材Tの、端T6が挿入される。第一の保持工程(ステップS15)で管材Tの最大外径が小さくなるため、矯正用ケーシング110内に管材Tを容易に挿入することができる。このとき、内周側ローラ115の上方側Z1と管材Tとの間には、隙間S3が形成されている。
以上で第一の挿入工程(ステップS16)を終了し、第一の解除工程(解除工程、ステップS17)に移行する。
【0039】
第一の解除工程(ステップS17)において、制御部25は図12に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向外側に移動させて、保持機構15による管材Tの保持を解除する(クランプOFF)。
以上で第一の解除工程(ステップS17)を終了し、第一の退避工程(退避工程、ステップS18)に移行する。
【0040】
第一の退避工程(ステップS18)において、制御部25は調整用シリンダ本体21cにより調整用ピストン21aを水平方向Xの他方側X2に移動させ、図13に示すように保持用ケーシング10及び保持機構15を矯正用ケーシング110から離間させる(クランプ後退)。これにより、矯正用ケーシング110に対する管材Tの位置は変わらずに、管材挿入装置1が水平方向Xの一方側X1に移動する。
以上で第一の退避工程(ステップS18)を終了し、第二の保持工程(保持工程、ステップS20)に移行する。
【0041】
第二の保持工程(ステップS20)において、保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させて管材Tの突部T1を径方向内側に変形させ、図14に示すように管材Tの外周面を保持機構15で保持する(クランプON)。
第二の挿入工程(挿入工程、ステップS21)において、図15に示すように保持用ケーシング10、保持機構15及び距離調整機構20を矯正用ケーシング110に接近させ、矯正用ケーシング110内に管材Tを挿入する(管材Tの引込み)。
【0042】
第二の解除工程(解除工程、ステップS22)において、図16に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向外側に移動させて、保持機構15による管材Tの保持を解除する(クランプOFF)。
第二の退避工程(退避工程、ステップS23)において、図17に示すように保持用ケーシング10及び保持機構15を矯正用ケーシング110から離間させる(クランプ後退)。
【0043】
第三の保持工程(保持工程、ステップS25)において、図18に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させて管材Tの突部T1を径方向内側に変形させ、管材Tの外周面を保持機構15で保持する(クランプON)。
第三の挿入工程(挿入工程、ステップS26)において、図19に示すように保持用ケーシング10、保持機構15及び距離調整機構20を矯正用ケーシング110に接近させ、矯正用ケーシング110内に管材Tを挿入する(管材Tの引込み)。これにより、矯正用ケーシング110の水平方向Xの他方側X2から管材Tの端T6が突出するまで矯正用ケーシング110内に管材Tが挿入される。このとき、矯正用ケーシング110から管材Tの端T6が突出する長さL9(突出長さ)は、前述の長さL7(送り長さ)以下にしておく。
【0044】
第三の解除工程(解除工程、ステップS27)において、図20に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向外側に移動させて、保持機構15による管材Tの保持を解除する(クランプOFF)。
第三の退避工程(退避工程、ステップS28)において、図21に示すように保持用ケーシング10及び保持機構15を矯正用ケーシング110から離間させる(クランプ後退)。
このように、保持工程、挿入工程、解除工程及び退避工程を組にし、この組にした複数の工程を後述する中間部矯正工程(ステップS30)の前に3回繰り返す。この例では組にした複数の工程を3回繰り返したが、繰り返す回数はこれに限定されず、2回でもよいし、4回以上でもよい。
以上で第三の退避工程(ステップS28)を終了し、中間部矯正工程(ステップS30)に移行する。
【0045】
中間部矯正工程(ステップS30)において、支持ロール駆動シリンダを駆動して図22に示すように支持ロール135を下方側Z2に移動させる(支持ロール135下降)。これにより、矯正用ケーシング110が下方側Z2に移動し、内周側ローラ115の上端と管材T、管材Tと矯正用ケーシング110の内周面110aの上端とが接触する。すなわち、内周側ローラ115と管材Tとは、管材Tの軸線C11よりも上方側Z1で接触する。
図23に示すように圧下ロール駆動シリンダ122により圧下ロール121を下方側Z2に移動させる(圧下ロール121下降)とともに、内周側ローラ駆動モータ125を駆動して内周側ローラ115を介して管材T及び矯正用ケーシング110を軸線C1周りに回転させる。矯正用ケーシング110の内周面110aと管材Tの外周面との間に圧接力を作用させ、管材Tの端T6を含まない軸線C11方向の中間部T8を軸線C11周りの全周にわたり塑性変形させる。これにより、管材Tの中間部T8の真円度を矯正する。中間部T8の軸線C11方向の長さL11(矯正長さ)は、長さL7(送り長さ)以上である。
以上で中間部矯正工程(ステップS30)を終了し、端部矯正工程(ステップS31)に移行する。
【0046】
端部矯正工程(ステップS31)において、図24に示すように圧下ロール駆動シリンダ122により圧下ロール121を上方側Z1に移動させる(圧下ロール121上昇)。
支持ロール駆動シリンダを駆動して、図25に示すように支持ロール135を上方側Z1に移動させる(支持ロール135上昇)。矯正用ケーシング110が上方側Z1に移動することで、内周側ローラ115の上端と管材Tとの間に、隙間S3が形成される。
【0047】
調整用シリンダ本体21cにより調整用ピストン21aを水平方向Xの一方側X1に移動させ、図26に示すように矯正用ケーシング110に保持用ケーシング10及び保持機構15を接近させる(クランプ前進)。
図27に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させ、管材Tの外周面を保持機構15で保持する(クランプON)。
【0048】
調整用シリンダ本体21cにより調整用ピストン21aを水平方向Xの他方側X2に移動させ、図28に示すように保持用ケーシング10及び保持機構15を矯正用ケーシング110から離間させる(管材T引抜き)。
図29に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向外側に移動させて、保持機構15による管材Tの保持を解除する(クランプOFF)。
【0049】
支持ロール駆動シリンダを駆動して図30に示すように支持ロール135を下方側Z2に移動させる(支持ロール135下降)。これにより、矯正用ケーシング110が下方側Z2に移動し、内周側ローラ115上端と管材T、管材Tと矯正用ケーシング110の内周面110aの上端とが接触する。すなわち、内周側ローラ115と管材Tとは、管材Tの軸線C11よりも上方側Z1で接触する。
図31に示すように圧下ロール駆動シリンダ122により圧下ロール121を下方側Z2に移動させる(圧下ロール121下降)とともに、内周側ローラ駆動モータ125を駆動して内周側ローラ115を介して管材T及び矯正用ケーシング110を軸線C1周りに回転させる。
このとき、長さL7(送り長さ)、長さL9(突出長さ)及び長さL11(矯正長さ)が前述のような関係であるため、管材Tの中間部T8よりも端T6側の全体である管材Tの軸線C11方向の端部T9が、軸線C11周りの全周にわたり塑性変形する。端部T9は、管材Tの端T6を含む。これにより、管材Tの端部T9の真円度を矯正する。管材Tの中間部T8と端部T9とは軸線C11方向に離間することなく互いに連なっている(つながっている)ため、真円度を矯正した管材Tの端部T9が、端部T9に連なる部分から応力を受けて変形するのが抑制される。
【0050】
図32に示すように圧下ロール駆動シリンダ122により圧下ロール121を上方側Z1に移動させる(圧下ロール121上昇)。
支持ロール駆動シリンダを駆動して、図33に示すように支持ロール135を上方側Z1に移動させる(支持ロール135上昇)。内周側ローラ115の上端と管材Tとの間に、隙間S3が形成される。
【0051】
調整用シリンダ本体21cにより調整用ピストン21aを水平方向Xの一方側X1に移動させ、図34に示すように矯正用ケーシング110に保持用ケーシング10及び保持機構15を接近させる(クランプ前進)。
図35に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させ、管材Tの外周面を保持機構15で保持する(クランプON)。
この後で、調整用ピストン21aを水平方向Xの他方側X2に移動させることで、矯正用ケーシング110から管材Tを引き抜く。
以上で端部矯正工程(ステップS31)を終了し、管材Tの中間部T8及び端部T9が矯正される。
【0052】
なお、矯正用ケーシング110の蟻溝111から調整用ピストン21aを引き抜くときには、まず、回転部21dにより調整用ピストン21aを軸線C7周りに回転させ、外面側溝部111aと一対の係合部21bとの係合を解除させる。調整用シリンダ本体21cにより調整用シリンダ本体21cに対して調整用ピストン21aを水平方向Xの一方側X1に移動させる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の管材矯正方法及び管材挿入装置1によれば、管材Tの端部T9の真円度を矯正するときには、管材Tの端部T9に連なる管材Tの中間部T8の真円度が矯正されている。したがって、管材Tの端部T9の真円度を矯正するときに管材Tの端部T9が管材Tの中間部T8から受ける応力を抑えることができ、管材Tの端部T9をより真円度を高めて矯正することができる。
内周側ローラ115は片持ち式の支持になるため、管材Tに対して大きな力を一度に作用させにくい。このような場合であっても、管材Tを中間部T8と端部T9とに分けて矯正することで、管材Tの軸線C11方向の広い範囲にわたり矯正することができる。
【0054】
中間部矯正工程の前に、保持工程、挿入工程、解除工程及び退避工程を組にして複数回繰り返す。矯正用ケーシング110に対して保持用ケーシング10が一度に移動できる長さL7(送り長さ)が短い場合でも、保持工程から退避工程までを組にして複数回繰り返すことで、矯正用ケーシング110に対して管材Tをより長く移動させることができる。
保持工程から退避工程までの工程の前に、突部検出工程(ステップS10)を備えることで、管材Tに応じた突部T1の軸線C11周りの位置を検出することができる。
【0055】
内周側ローラ115と管材Tとが管材Tの軸線C11よりも上方側Z1で接触することで、管材Tが矯正される部分が上方から確認しやすくなる。
保持機構15が3つの保持用シリンダ16を有していることで、管材Tに作用させる保持力を周方向の3カ所に集中させ管材Tをより確実に保持することができる。
矯正用ケーシング110には蟻溝111が形成され、距離調整機構20は調整用ピストン21a、調整用シリンダ本体21c及び回転部21dを有している。矯正用ケーシング110の蟻溝111に調整用ピストン21aを係合させた状態でシリンダ本体21cにより調整用ピストン21aを引き戻すことで、矯正用ケーシング110と保持用ケーシング10との距離を短くすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図36及び37を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図36に示すように、本実施形態の管材挿入装置2は、第1実施形態の管材挿入装置1の一対の保持用シリンダ16Bに代えて一対の保持部材(保持部)30を備えている。各保持部材30は保持用シリンダ16Bに対応する位置に配置され、保持用ケーシング10にネジ結合等により固定されている。保持用ケーシング10の軸線C6方向に見たときの、保持部材30の軸線C6側の面30aの曲率半径は、前述の所定の値である。保持部材30は、鉄鋼等の金属で形成することができる。
なお、一対の保持部材30及び保持用シリンダ16Aで保持機構31を構成する。
【0057】
このように構成された管材挿入装置2を用いた本実施形態の管材矯正方法について説明する。
第一の保持工程(ステップS15)において、制御部25は、図37に示すように保持用シリンダ16Aの保持用ピストン16aを径方向内側に移動させて、管材Tの突部T1を径方向内側に変形させ、管材Tの外周面を保持機構31で保持する。このとき、各保持部材30の面30aが管材Tの突部T1に接触する。
このように、本実施形態の管材矯正方法及び管材挿入装置2によれば、管材Tの端部T9をより真円度を高めて矯正することができる。
さらに、保持部が保持部材30であることで、保持用シリンダ16Bを用いる場合に比べて保持機構31を簡単に構成することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、保持機構31が一対の保持部材30及び保持用シリンダ16Aで構成されるとした。しかし、保持機構を1つの保持部材30、保持用シリンダ16A、及び前述の保持用シリンダ16Bで構成してもよい。
【0059】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態では、内周側ローラ115と管材Tとは、管材Tの軸線C11よりも上方側Z1で接触するとした。しかし、内周側ローラ115と管材Tとが接触する位置はこれに限定されず、管材Tの軸線C11よりも下方側Z2や、管材Tの軸線C11を含む水平面上でもよい。
管材Tの中間部T8を矯正してから端部T9を矯正するという2段階で管材Tを矯正した。しかし、管材Tの矯正は2段階に限られず、管材Tの中間部T8から端T6に向かって矯正する範囲が軸線C11方向に連なるように矯正するのであれば、何段階でもよい。
【0060】
管材TがUOE法により形成されたものであるとした。しかし、管材Tが形成される方法はこれに限られず、例えば管材Tがいわゆるベンディングロール法により形成されたものであってもよい。ベンディングロール法により形成された場合、一般的に突部T1が2つ形成される。この場合、保持機構は、2つの保持用シリンダ16を有するか、1つの保持用シリンダ16及び1つの保持部材30を有するように構成される。
また、突部T1を有さない管材を用いてもよい。この場合、管材矯正方法に突部検出工程(ステップS10)を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、2 管材挿入装置
10 保持用ケーシング
15、31 保持機構
16 保持用シリンダ(保持部)
16a 保持用ピストン
20 距離調整機構
21a 調整用ピストン
21b 係合部
21c 調整用シリンダ本体(シリンダ本体)
21d 回転部
30 保持部材(保持部)
100 管材矯正装置
110 矯正用ケーシング
110b 外面
111 蟻溝(溝部)
111a 外面側溝部
111b 底面側溝部
115 内周側ローラ
120 押圧機構
125 内周側ローラ駆動モータ(回転機構)
C1、C11 軸線
S10 突部検出工程
S15 第一の保持工程(保持工程)
S16 第一の挿入工程(挿入工程)
S17 第一の解除工程(解除工程)
S18 第一の退避工程(退避工程)
S20 第二の保持工程(保持工程)
S21 第二の挿入工程(挿入工程)
S22 第二の解除工程(解除工程)
S23 第二の退避工程(退避工程)
S25 第三の保持工程(保持工程)
S26 第三の挿入工程(挿入工程)
S27 第三の解除工程(解除工程)
S28 第三の退避工程(退避工程)
S30 中間部矯正工程
S31 端部矯正工程
T 管材
T1 突部
T6 端
T8 中間部
T9 端部
Z 鉛直方向
Z2 下方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37