(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アッパ側係合部は、前記ロアフレーム部材に対する前記アッパフレーム部材の相対回転範囲の全域で、前記ロア側係合部に対して前記係合可能に対向する請求項1又は請求項2に記載のリクライニング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなリクライニング装置では、車両等の衝突時に、シートバック側のアッパフレーム部材からリクライナを介してシートクッション側のロアフレーム部材に過大な荷重が作用する。この際、アッパフレーム部材及びロアフレーム部材とリクライナとの溶接部には、剥離方向の力が加わるため、溶接部の強度確保が求められる。他方、車両用シートには軽量化の要請があり、リクライナの小径化(小型化)や上記各フレーム部材の薄肉化が求められるため、上記溶接部の強度確保と背反する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両衝突等による車両用シートへの荷重入力時にリクライナとフレーム部材との溶接部に加わる剥離方向の力を低減することができるリクライニング装置及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るリクライニング装置は、車両用シートの骨格の一部を構成するロアフレーム部材と、前記車両用シートの骨格の一部を構成するアッパフレーム部材と、前記ロアフレーム部材と前記アッパフレーム部材との間に設けられて両者に溶接され、前記アッパフレーム部材を前記ロアフレーム部材に対して相対回転角度を調整可能に連結したリクライナと、前記ロアフレーム部材
の外周部から前記アッパフレーム部材とは反対側へ延出されたフランジの一部によって構成され、前記リクライナと同心の円弧状に形成されたロア側係合部と、前記アッパフレーム部材から前記ロアフレーム部材側へ延出されると共に、前記ロア側係合部に対して前記アッパフレーム部材とは反対側から係合可能に対向する
第1対向部、及び前記ロア側係合部に対して前記リクライナの半径方向内側から係合可能に対向する第2対向部を有するアッパ側係合部が設けられ
、前記第2対向部が前記リクライナと同心の円弧状に形成された延出部材と、を備え
、前記第2対向部と前記ロア側係合部との間には、前記リクライナの同心の円弧状をなす隙間が形成されている。
【0007】
請求項1に記載のリクライニング装置では、車両用シートの骨格の一部を構成するロアフレーム部材と、当該車両用シートの骨格の一部を構成するアッパフレーム部材とが、両者に溶接されたリクライナによって相対回転角度を調整可能に連結されている。ロアフレーム部材には、リクライナと同心の円弧状に形成されたロア側係合部が設けられている。また、アッパフレーム部材からロアフレーム部材側へ延出された延出部材には、ロア側係合部に対してアッパフレーム部材とは反対側から係合可能に対向するアッパ側係合部が設けられている。このため、車両衝突等による車両用シートへの荷重入力時には、アッパ側係合部がロア側係合部に対してアッパフレーム部材とは反対側から係合することより、アッパフレーム部材とロアフレーム部材との離間が抑制される。その結果、上記各フレーム部材とリクライナとの溶接部に加わる剥離方向の力を低減することができる。
しかも、このリクライニング装置では、アッパフレーム部からロアフレーム部側へ延出された延出部材が備えるアッパ側係合部が、ロアフレーム部材のロア側係合部に対してアッパフレーム部材とは反対側から対向する第1対向部と、ロア側係合部に対してリクライナの半径方向内側から対向する第2対向部とを有している。このため、車両衝突等による車両用シートへの荷重入力時には、第1対向部及び第2対向部がロア側係合部に対してアッパフレーム部材とは反対側及びリクライナの半径方向内側から係合することより、アッパフレーム部材とロアフレーム部材との離間を効果的に抑制できる。
また、このリクライニング装置では、ロアフレーム部材のロア側係合部に対してリクライナの半径方向内側から対向するアッパ側係合部の第2対向部と、ロア側係合部との両方が、リクライナと同心の円弧状に形成されている。このため、ロアフレーム部材に対するアッパフレーム部材の相対回転時にロア側係合部とアッパ側係合部とが不用意に干渉することを防止しつつ、アッパ側係合部の第2対向部とロア側係合部との係合時における係合面積を広く確保することができる。
さらに、このリクライニング装置では、ロア側係合部は、ロアフレーム部材の外周部からアッパフレーム部材とは反対側へ延出されたフランジの一部によって構成されているため、ロア側係合部の構成を従来と同一の簡単なものにすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るリクライニング装置は、請求項1に記載のリクライニング装置において、前記ロアフレーム部材には、前記リクライナの周方向に並ぶ複数の第1嵌合部が形成され、前記アッパフレーム部材には、前記リクライナの周方向に並ぶ複数の第2嵌合部が形成され、前記リクライナは、前記複数の第1嵌合部に嵌合した状態で前記ロアフレーム部材に溶接された複数の第1突起と、前記複数の第2嵌合部に嵌合した状態で前記アッパフレーム部材に溶接された複数の第2突起と、を有している。
【0009】
請求項2に記載のリクライニング装置では、リクライナに設けられた複数の第1突起が、ロアフレーム部材に形成された複数の第1嵌合部に嵌合した状態でロアフレーム部材に溶接されている。また、リクライナに設けられた複数の第2突起が、アッパフレーム部材に形成された複数の第2嵌合部に嵌合した状態でロアフレーム部材に溶接されている。このような構成では、リクライナの小径化や上記各フレーム部材の薄肉化によって、上記各溶接部の強度確保が困難になるが、本発明では、前述した如きロア側係合部とアッパ側係合部との係合により、上記各溶接部に加わる剥離方向の力を低減することができる。これにより、例えばリクライナの小径化や上記各フレーム部材の薄肉化を図りつつ、上記各溶接部の強度を確保することが可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るリクライニング装置は、請求項1又は請求項2に記載のリクライニング装置において、前記アッパ側係合部は、前記ロアフレーム部材に対する前記アッパフレーム部材の相対回転範囲の全域で、前記ロア側係合部に対して前記係合可能に対向する。
【0011】
請求項3に記載のリクライニング装置では、上記のように形成されているため、ロアフレーム部材に対するアッパフレーム部材の相対回転範囲によらず、前述した効果を得ることができる。
【0016】
請求項
4に記載の発明に係るリクライニング装置は、請求項1〜請求項
3の何れか1項に記載のリクライニング装置において、前記ロアフレーム部材は、前記リクライナの周方向に並ぶ一対の当接部を有し、前記延出部材は、前記リクライナの周方向において前記一対の当接部の間に位置するストッパ部を有し、前記ストッパ部と前記一対の当接部との当接によって、前記ロアフレーム部材に対する前記アッパフレーム部材の相対回転範囲が制限される。
【0017】
請求項
4に記載のリクライニング装置では、前述した延出部材が、ロアフレーム部材に対するアッパフレーム部材の相対回転範囲を制限するためのストッパ部を有している。これにより、上記のような相対回転範囲を制限するための部材(ストッパ部材)と、延出部材とを別々に設ける場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0020】
請求項
5に記載の発明に係る車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記シートクッションの後端部に設けられ、乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度を調整可能な請求項1〜請求項
4の何れか1項に記載のリクライニング装置と、を備えている。
【0021】
請求項
5に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項
4の何れか1項に記載のリクライニング装置を備えているため、前述した作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るリクライニング装置及び車両用シートでは、車両衝突等による車両用シートへの荷重入力時にリクライナとフレーム部材との溶接部に加わる剥離方向の力を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1〜
図14を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート10及びリクライニング装置12について説明する。なお、図中矢印FRはシート前方向を示し、矢印UPはシート上方向を示し、矢印INはシート幅方向内方を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0025】
図1〜
図8に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10では、シートクッションフレーム18に対してシートバックフレーム20がリクライニング装置12を介して傾斜角度を調整可能に連結されている。なお、この車両用シート10の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。
【0026】
シートクッションフレーム18は、乗員が着座するシートクッション14の骨格を構成しており、シートバックフレーム20は、シートクッション14の後端部に設けられて乗員の背部を支持するシートバック16の骨格を構成している。なお、シートバックフレーム20及びシートクッションフレーム18には、それぞれ表皮材によって覆われたシートパッド(何れも図示省略)が取り付けられる構成になっている。先ず、車両用シート10の全体構成について説明し、その後に本実施形態の要部について説明する。
【0027】
上記のシートクッションフレーム18は、シートクッション14の左右の側部において前後方向に延在する左右のサイドフレーム部22(
図1〜
図8では右側のサイドフレーム部22は図示省略)を備えている。左右のサイドフレーム部22の前端部は、図示しないフロントフレーム部によってシート幅方向に連結されており、左右のサイドフレーム部22の後端部は、リヤフレーム部24によってシート幅方向に連結されている。左右のサイドフレーム部22は、周知のリフタ機構及びシートスライド機構を介して車体床部に連結されており、車体床部に対して上下位置及び前後位置を調整可能とされている。
【0028】
また、左右のサイドフレーム部22の後端部には、それぞれBブラケット30(
図1〜
図8では右側のBブラケット30は図示省略)がボルト32及び図示しないナットによって固定されている。左右のBブラケット30は、リクライニング装置12の構成部材であるロアフレーム部材に相当する。このBブラケット30は、シートバックフレーム20の一部(シートバック16の骨格の一部)を構成しており、左右のサイドフレーム部22の後端部から上方側へ突出している。なお、本実施形態では、左右のサイドフレーム部22、フロントフレーム部及び左右のBブラケット30が板金によって形成されており、リヤフレーム部24が金属パイプによって形成されている。
【0029】
一方、シートバックフレーム20は、シートバック16の左右の側部においてシートバック16の上下方向に延在する左右のサイドフレーム部34(
図1〜
図8では左側のサイドフレーム部34は図示省略)を備えている。左右のサイドフレーム部34の下部の後端部は、背面パネル36によってシート幅方向に連結されており、左右のサイドフレーム部34の上端部は、図示しないアッパフレーム部によってシート幅方向に連結されている。本実施形態では、左右のサイドフレーム部34及び背面パネル36が板金によって形成されており、アッパフレーム部が金属パイプによって形成されている。また、本実施形態では、左右のサイドフレーム部34が、リクライニング装置12の構成部材であるアッパフレーム部材に相当する。
【0030】
左右のサイドフレーム部34の下端部は、左右のBブラケット30に対してシート幅方向内側に配置されている。左右のサイドフレーム部34の下端部と左右のBブラケット30との間には、リクライニング装置12の構成部材であるリクライナ(リクライニングユニット)38が設けられている。なお、本車両用シート10では、シート左側とシート右側で共通している構成が多いため、以下の記載では、主にシート左側の構成について説明し、シート右側の構成についての説明を省略する。
【0031】
図3に示されるように、リクライナ38は、Bブラケット30側に位置する第1円盤部材としてのベースプレート40と、サイドフレーム部34側に位置する第2円盤部材としてのラチェットプレート42とを備えている。これらのベースプレート40及びラチェットプレート42は、円盤状に形成されており、軸線方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されると共に、互いに同軸的かつ相対回転可能に重ねられている。
【0032】
ベースプレート40の外周部には、取付金具としての筒状のホルダリング44が固定されており、当該ホルダリング44によってラチェットプレート42の外周部が包み込まれている。これにより、ベースプレート40とラチェットプレート42との分離が阻止されている。ベースプレート40とラチェットプレート42との間には、ベースプレート40に対するラチェットプレート42の相対回転角度を調整するための図示しない角度調整機構が設けられている。この角度調整機構は、従来周知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
ベースプレート40は、ラチェットプレート42とは反対側の面であるシート幅方向外側面がBブラケット30のシート幅方向内側面に重ね合わされている。このベースプレート40のシート幅方向外側面には、シート幅方向外側へ向けて複数(ここでは4つ)のエンボス部(第1突起)40Aが突出形成されている。これらのエンボス部40Aは、ベースプレート40すなわちリクライナ38の周方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。
【0034】
これらのエンボス部40Aは、エンボス加工によって形成されたものであり、
図1に示されるように、シート幅方向から見て円形又は略矩形に形成されている。これらのエンボス部40Aに対応してBブラケット30には、複数の第1嵌合孔(第1嵌合部)46が形成されている。これらの第1嵌合孔46は、各エンボス部40Aの形状に対応した円形又は略矩形に形成されており、各エンボス部40Aが各嵌合孔46に嵌合している。この嵌合状態で、各エンボス部40Aの先端部とBブラケット30における各嵌合孔46の周縁部とが、例えば炭酸ガスアーク溶接によって溶接されている。
【0035】
ラチェットプレート42は、ベースプレート40とは反対側の面であるシート幅方向内側面がサイドフレーム部34の下端部におけるシート幅方向外側面に重ね合わされている。このラチェットプレート42のシート幅方向内側面には、シート幅方向内側へ向けて複数(ここでは4つ)のエンボス部(第2突起)42Aが突出形成されている。これらのエンボス部42Aは、ラチェットプレート42すなわちリクライナ38の周方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。
【0036】
これらのエンボス部42Aは、エンボス加工によって形成されたものであり、
図4に示されるように、シート幅方向から見てラチェットプレート42と同心の円弧状に形成されている。これらのエンボス部42Aに対応してサイドフレーム部34の下端部には、複数の第2嵌合部48が形成されている。これらの第2嵌合部48は、サイドフレーム部34の下端部に形成された開口50の外周部に形成された切欠部によって構成されている。これらの第2嵌合部48は、各エンボス部42Aの形状に対応した円弧状に形成されており、各エンボス部42Aは、各第2嵌合部48に嵌合している。この嵌合状態で、各エンボス部42Aの先端部とサイドフレーム部34における各第2嵌合部48の周縁部とが、例えば炭酸ガスアーク溶接によって溶接されている。
【0037】
ベースプレート40及びラチェットプレート42の軸心部には、リクライナ38の構成部品であるセンターシャフト38Aが貫通している。このセンターシャフト38Aには、コネクティングロッド52の軸線方向端部が相対回転不能に連結されている。コネクティングロッド52は、左右のリクライナ38間に架け渡されている。このコネクティングロッド52によって左右のリクライナ38の角度調整機構が連結されている。センターシャフト38Aの軸線方向一端部(ここではシート左側の端部)は、Bブラケット30を貫通してBブラケット30のシート左側に突出している。この突出部分には、ロック解除レバー54が固定されている。このロック解除レバー54の操作によってセンターシャフト38Aが軸線回り一方へ所定量回転されると、これに伴いコネクティングロッド52同一方向に回転され、シート右側のセンターシャフト38A回転し、左右のリクライナ38の角度調整機構のロックが解除される。これにより、ベースプレート40に対するラチェットプレート42の相対回転角度の調整、すなわちシートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム20の傾斜角度の調整が可能になる。
【0038】
(本実施形態の要部)
次に、本実施形態の要部について説明する。
【0039】
本実施形態では、前述したBブラケット30は、板厚方向がシート幅方向に沿う姿勢で配置されているが、Bブラケット30の外周部からは、シート幅方向外側へ向けてフランジ30Aが延出されている。このフランジ30AによってBブラケット30の面剛性が向上している。このフランジ30Aの上部は、ロア側係合部56とされている。このロア側係合部56は、リクライナ38と同心の円弧状に形成されている。
【0040】
また、Bブラケット30には、ロア側係合部56の前後に、一対の当接部としての前側当接部58及び後側当接部60が形成されている。前側当接部58及び後側当接部60は、リクライナ38の周方向に並んでおり、ロア側係合部56に対してリクライナ38の半径方向外側へ突出している。ロア側係合部56、前側当接部58及び後側当接部60は、サイドフレーム部34の下端部からBブラケット30側(シート幅方向外側)へ延出された延出部材としてのキャッチャー62に対応している。
【0041】
キャッチャー62は、例えば板金がプレス加工されることで形成されたものであり、Bブラケット30及びリクライナ38に対してシートバック16の上方側に配置されている。このキャッチャー62のシート幅方向内側端部には、固定部62Aが設けられている。固定部62Aは、板厚方向がシート幅方向に沿った矩形の板状に形成されており、溶接等の手段によってサイドフレーム部34の下端部におけるシート幅方向外側面に固定されている。固定部62Aの下端部からは、シート幅方向外側へ向けてストッパ部62Bが延出されている。
【0042】
ストッパ部62Bは、板厚方向がシートバック16の上下方向に沿った板状に形成されており、Bブラケット30のロア側係合部56に対して隙間を隔ててシートバック16の上方側から対向している。このストッパ部62Bは、リクライナ38の周方向において、前側当接部58と後側当接部60の間とに位置しており、Bブラケット30よりもシート幅方向外側へ突出している。このストッパ部62Bのシート幅方向外側端部からは、アッパ側係合部62Cが延出されている。
【0043】
アッパ側係合部62Cは、ロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側(シート幅方向外側)から係合可能に対向している。このアッパ側係合部62Cは、ストッパ部62Bのシート幅方向外側端部からシートバック16の下方側へ延出された第1対向部としての外側対向部62C1を備えている。この外側対向部62C1は、ストッパ部62Bに対してシートバック16の前方側及び後方側へ延びており、リクライナ38と同心の円弧状に湾曲している。この外側対向部62C1は、ロア側係合部56に対してシート幅方向外側から対向しており、
図5に示されるように、湾曲方向に沿った長さ寸法がロア側係合部56における湾曲方向に沿った長さ寸法と同等に設定されている。
【0044】
外側対向部62C1の下端部からは、シート幅方向内側へ向けて下側対向部62C2が延出されている。この下側対向部62C2は、外側対向部62C1と同様にリクライナ38と同心の円弧状に湾曲している。この下側対向部62C2は、外側対向部62C1の下端部(下端縁部)の全域から延出されており、
図5に示されるように、湾曲方向に沿った長さ寸法がロア側係合部56における湾曲方向に沿った長さ寸法と同等に設定されている。この下側対向部62C2のシート幅方向内側端部は、
図3に示されるように、ロア側係合部56に対してリクライナ38の半径方向内側(シートバック16の下方側)から近接して対向している。下側対向部62C2とロア側係合部56との間には、リクライナ38と同心の円弧状をなす隙間64(
図3及び
図5参照)が形成されている。この隙間64におけるリクライナ38の半径方向に沿った寸法は、例えば数ミリ程度に設定されている。
【0045】
上記構成の車両用シート10では、アッパ側係合部62Cは、Bブラケット30に対するサイドフレーム部34の相対回転範囲の全域で、ロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側(シート幅方向外側)から係合可能に対向するように設定されている(
図5〜
図7参照)。また、ロア側係合部56及び下側対向部62C2は、何れもリクライナ38と同心の円弧状に湾曲しているため、シートバックフレーム20がシートクッションフレーム18に対してリクライナ38回りに回転した際に、下側対向部62C2がロア側係合部56と干渉しないようになっている。
【0046】
また、この車両用シート10では、キャッチャー62のストッパ部62Bと、Bブラケット30の前側当接部58及び後側当接部60との当接によってシートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム20の回転範囲が制限される構成になっている。
【0047】
具体的には、
図5に示されるように、シートバックフレーム20がシートクッションフレーム18に対して設計基準位置に位置する状態では、ストッパ部62Bが前側当接部58と後側当接部60の何れに対しても離間するようにキャッチャー62が設けられている。そして、
図6に示されるように、シートバックフレーム20がシートクッションフレーム18に対してフロントモスト位置へ回転されると、ストッパ部62Bが前側当接部58に当接する。これにより、フロントモスト位置よりもシート前方側へのシートバックフレーム20の前傾が規制される構成になっている。また、
図7及び
図8に示されるように、シートバックフレーム20がシートクッションフレーム18に対してリヤモスト位置へ回転されると、ストッパ部62Bが後側当接部60に当接する。これにより、リヤモスト位置よりもシート前方側へのシートバックフレーム20の後傾が規制される構成になっている。
【0048】
また、本実施形態では、
図9及び
図10に示されるように、上述したリクライナ38が、従来のリクライナ110と比較して小型(小径)に形成されている。具体的には、従来のリクライナ110は、直径D1が例えば80.9φに設定されており、ラチェットプレート114に形成された複数のエンボス112の中心を通る仮想円の直径d1(溶接部の直径)が例えば36φに設定されている。一方、本実施形態に係るリクライナ38は、直径D2が例えば62φに設定されており、ラチェットプレート42に形成された複数のエンボス42Aの中心を通る仮想円の直径d2(溶接部の直径)が例えば32φに設定されている。
【0049】
また、本実施形態では、Bブラケット30及びサイドフレーム部34が従来よりも薄肉化(薄厚化)されている。具体的には、従来のBブラケット30の板厚が例えば2.3ミリメートルであったのに対し、本実施形態に係るBブラケット30の板厚は例えば2.0ミリメートルに設定されている。また、従来のサイドフレーム部34の板厚が例えば1.2ミリメートルであったのに対し、本実施形態に係るサイドフレーム部34の板厚は例えば1.0ミリメートルに設定されている。
【0050】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
本実施形態では、シートバックフレーム20の一部を構成するBブラケット30と、シートバックフレーム20の一部を構成するサイドフレーム部34の下端部とが、両者に溶接されたリクライナ38によって相対回転角度を調整可能に連結されている。Bブラケット30には、リクライナ38と同心の円弧状に形成されたロア側係合部56が設けられている。また、サイドフレーム部34の下端部から延出されたキャッチャー62には、ロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側(シート幅方向外側)から係合可能に対向するアッパ側係合部62Cが設けられている。
【0052】
このため、例えば車両が追突されることにより、シートバック16のシートバックフレーム20に対してシート後方側への過大な荷重が作用した際には、アッパ側係合部62Cがロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側から係合する(噛み合う)。これにより、サイドフレーム部34とBブラケット30との離間が抑制される。つまり、サイドフレーム部34に固定されたキャッチャー62によって、リクライナ38がBブラケット30とサイドフレーム部34との間に挟み込まれることにより、Bブラケット30及びサイドフレーム部34とリクライナ38との間の距離が物理的に保持される。
【0053】
これにより、リクライナ38の複数のエンボス部40AとBブラケット30との溶接部、及びリクライナ38の複数のエンボス部42Aとサイドフレーム部34との溶接部に加わる剥離方向の力を低減することができる。その結果、本実施形態では、リクライナ38の小径化や、Bブラケット30及びサイドフレーム部34の薄肉化を図りつつ、上記各溶接部の強度を確保することができる。
【0054】
上記の効果について、
図11に示される車両用シート100(比較例)を用いて説明する。この車両用シート100では、本実施形態に係る車両用シート10と同様に、リクライナ38の小径化や、Bブラケット30及びサイドフレーム部34の薄肉化が図られている。但し、この車両用シート100では、リクライニング装置102が本実施形態に係るキャッチャー62の代わりにストッパ部材104を備えている。このストッパ部材104は、キャッチャー62の固定部62A及びストッパ部62Bと同様の固定部62A及びストッパ部62Bを備えているが、アッパ側係合部62Cが省略されている。この車両用シート100では、上記以外の構成は、本実施形態に係る車両用シート10と同様とされている。
【0055】
比較例に係る車両用シート100では、本実施形態と同様に、リクライナ38が小径化されているため、Bブラケット30及びサイドフレーム部34とリクライナ38との溶接長が従来と比べて短くなっている。特に、
図12に示されるエンボス部42Aとサイドフレーム部34との溶接部W(
図12以外では図示省略)の溶接長が短くなっている。このため、リクライナ38とサイドフレーム部34との溶接強度が従来と比べて特に低下している。
【0056】
また、この車両用シート100では、リクライナ38が小径化されているため、車両の追突時にシートバックフレーム20に入力される荷重Fの入力点と、リクライナ38の溶接部Wとの距離Lが従来と比べて長くなっている。このため、荷重Fの入力時に溶接部Wに発生するモーメントが従来と比べて増加することになる。
【0057】
さらに、この車両用シート100では、Bブラケット30及びサイドフレーム部34が従来よりも薄肉化されているため、Bブラケット30及びサイドフレーム部34の板厚低下により、Bブラケット30及びサイドフレーム部34とリクライナ38との溶接強度が従来と比べて低下している。なお、単純な板厚低下による溶接強度の低下に加え、Bブラケット30及びサイドフレーム部34を高張力鋼板によって製造する場合には、材料の変化による溶接時の脆性化によっても溶接強度が低下する。以上のことは、本実施形態に係る車両用シート10についても同様である。
【0058】
上述の車両用シート100では、前述したように本実施形態に係るキャッチャー62の代わりにストッパ部材104が設けられている。この車両用シート100のシートバックフレーム20に対してシート後方側への過大な荷重Fが作用した際には、キャッチャー62によるサイドフレーム部34とBブラケット30との離間抑制効果が得られないため、
図13に示されるように、リクライナ38とサイドフレーム部34との溶接部が破壊される。その結果、シートクッションフレーム18及びシートバックフレーム20が大きく変形してしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態では、シートバックフレーム20に対してシート後方側への過大な荷重Fが作用した場合でも、キャッチャー62によってサイドフレーム部34とBブラケット30との離間が抑制されるため、
図14に示されるように、リクライナ38とサイドフレーム部34との溶接部の破壊が防止又は抑制される。その結果、シートクッションフレーム18及びシートバックフレーム20の変形を少なくすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、キャッチャー62のアッパ側係合部62Cが、シートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム20の相対回転範囲の全域で、ロア側係合部56に対してシート幅方向外側(サイドフレーム部34とは反対側)から係合可能に対向する。このため、シートクッション14に対するシートバック16の傾斜角度によらず、前述した効果を得ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態、アッパ側係合部62Cが、Bブラケット30のロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側から対向する外側対向部62C1と、ロア側係合部56に対してリクライナ38の半径方向内側から対向する下側対向部62C2とを有している。このため、車両衝突等によるシートバックフレーム20への荷重入力時には、外側対向部62C1及び下側対向部62C2がロア側係合部56に対してサイドフレーム部34とは反対側及びリクライナ38の半径方向内側から係合することより、サイドフレーム部34とBブラケット30との離間を効果的に抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、キャッチャー62が備えるストッパ部62Bと、Bブラケット30が備える前側当接部58及び後側当接部60との当接によって、Bブラケット30に対するサイドフレーム部34の相対回転範囲、すなわちシートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム20の相対回転範囲が制限される。つまり、本実施形態では、車両衝突時にリクライナ38の溶接部を保護するキャッチャー62が、Bブラケット30に対するサイドフレーム部34の相対回転範囲を制限するためのストッパ部62Bを有している。これにより、上記のような相対回転範囲を制限するための部材と、キャッチャー62とを別々に設ける場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、Bブラケット30のロア側係合部56に対してリクライナ38の半径方向内側から対向する下側対向部62C2と、ロア側係合部56との両方が、リクライナ38と同心の円弧状に形成されている。このため、シートクッションフレーム18に対するシートバックフレーム20の相対回転時にロア側係合部56と下側対向部62C2とが不用意に干渉することを防止しつつ、下側対向部62Cとロア側係合部56との係合時における係合面積を広く確保することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ロア側係合部56は、Bブラケット30の外周部から延出されたフランジ30Aの一部によって構成されている。これにより、ロア側係合部56の構成を従来と同一の簡単なものにすることができる。
【0065】
以上、実施形態を示して本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。