(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
食用油脂中に難油溶性成分を分散せしめた組成物であって、(a)主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、(b)主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、(c)蒸留モノグリセライド及び(d)主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするソフトカプセル充填用液状組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる食用油脂としては、例えばコメ油、コーン油、キャノーラ油、オリーブ油、米ぬか油、大豆油、大豆白絞油、サフラワー油、ごま油、パーム油、パーム核油、やし油、ヒマワリ油、綿実油、菜種油、菜種白絞油、落花生油、グレープシード油、しそ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、魚油、乳脂又はラード等の動物性油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)及びこれらのエステル交換油、分別油、水素添加油又はプロピレングリコールジ脂肪酸エステル等が挙げられる。これら食用油脂は、1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0011】
本発明で用いられる難油溶性成分は、親油性の低い物質から構成され、本発明のソフトカプセル充填用液状組成物の有効成分を構成するものである。具体的には、本発明における難油溶性成分とは、粉末の形態であって、食用油脂100gに該粉末1gを入れ20℃で混合したとき、30分以内に溶解しない物質を指すものとする。
【0012】
このような難油溶性成分としては、例えば、ビタミン類(特にアスコルビン酸、ビタミンB1、B2、B6、B12等の水溶性ビタミン)、クエン酸、ヒアルロン酸、カルシウムパウダー等の栄養補助成分;ローヤルゼリーエキス末(粉末)、プロポリスエキス末、ブルーベリーエキス末、アガリクスエキス末、サメ軟骨抽出エキス末、ウコン末、イチョウ葉エキス末、ギムネマエキス末、その他の動植物粉末、乳糖、オリゴ糖、キトサン、食物繊維等の健康食品成分;或いは生薬エキス末、漢方、医薬組成物等の薬効成分が挙げられる。これら難油溶性成分は1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明で言うところの反応モノグリセライドは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応生成物又はグリセリンと油脂(トリグリセライド)とのエステル交換反応生成物から未反応のグリセリンを可及的に除去したものであって、モノグリセライド(グリセリンモノ脂肪酸エステル)、ジグリセライド(グリセリンジ脂肪酸エステル)及びトリグリセライド(グリセリントリ脂肪酸エステル)を含有する混合物である。該反応モノグリセライド100%中のモノグリセライドの含有量は、通常40〜60%であり、好ましくは45〜55%である。また、反応モノグリセライド100%中のジグリセライドの含有量は、通常25〜45%であり、好ましくは35〜45%である。反応モノグリセライド100%中のトリグリセライドの含有量は、通常1〜15%であり、好ましくは1〜10%である。
【0014】
上記反応モノグリセライドの組成、すなわち反応モノグリセライド中のモノグリセライド、ジグリセライド及びトリグリセライドの含有量は、反応モノグリセライドをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析することにより求められる。具体的には、以下に示す分析条件にて反応モグリセライドを分析し、分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定する。測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノグリセライド含有量、ジグリセライド含有量及びトリグリセライド含有量を求めることができる。
HPLC分析条件を以下に示す。
【0015】
(HPLC分析条件)
装置:島津高速液体クロマトグラフ
データ処理ソフトウェア(型式:LCsolution ver.1.0;島津製作所社製)
ポンプ(型式:LC−20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO−20A;島津製作所社製)
オートサンプラ(型式:SIL−20A;島津製作所社製)
検出器:RI検出器(型式:RID−10A;島津製作所社製)
カラム:GPCカラム(型式:SHODEX KF−801;昭和電工社製)及びGPCカラム(型式:SHODEX KF−802;昭和電工社製)の2本連結
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.01g/1mLTHF
サンプル注入量:20μL(in THF)
【0016】
上記反応モノグリセライドの製法としては、例えば、(1)グリセリンと油脂とのエステル交換反応による製法、(2)グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応による製法が挙げられる。これら製法の概略を、以下の(1)及び(2)にそれぞれ示す。
【0017】
(1)エステル交換反応による反応モノグリセライドの製法
例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、グリセリン及び油脂を2:1のモル比で仕込み、通常触媒として、例えば水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下、例えば180〜260℃、好ましくは200〜250℃で、0.5〜15時間、好ましくは1〜3時間加熱してエステル交換反応を行う。反応圧力条件は、常圧下又は減圧下が好ましい。得られた反応液は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド等を含む混合物である。
反応終了後、反応液中に残存する触媒を中和し、次に反応液を、好ましくは、減圧下で蒸留して残存するグリセリンを留去し、必要であれば脱塩、脱色、ろ過等の処理を行い、最終的に、全体に対してモノグリセライドを40〜60%、ジグリセライドを25〜45%含む反応モノグリセライドを得る。
【0018】
(2)エステル化反応による反応モノグリセライドの製法
例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器にグリセリン及び脂肪酸を1:1のモル比で仕込み、必要に応じ酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば180〜260℃の範囲、好ましくは200〜250℃で0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間加熱してエステル化反応を行う。得られた反応液は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド等を含む混合物である。
反応終了後、反応液中に残存する触媒を中和し、次に反応液を、好ましくは、減圧下で蒸留して残存するグリセリンを留去し、必要であれば脱塩、脱色、ろ過等の処理を行い、最終的に、全体に対してモノグリセライドを40〜60%、ジグリセライドを25〜45%含む反応モノグリセライドを得る。
【0019】
本発明においては、上記反応モノグリセライドの中でも、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド及び主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライドを組合せて用いられる。主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライドとしては、例えば主構成脂肪酸がパルミチン酸(炭素数16)の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸がステアリン酸(炭素数18)の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸がアラキジン酸(炭素数20)の反応モノグリセライド等が挙げられ、中でも、主構成脂肪酸がパルミチン酸及び/又はステアリン酸の反応モノグリセライドが好ましい。また、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライドとしては、主構成脂肪酸がベヘン酸の反応モノグリセライドが挙げられる。
【0020】
本発明において、反応モノグリセライドについて「主構成脂肪酸」とは、反応モノグリセライドを構成する全脂肪酸100質量%中、60質量%以上、好ましくは75質量%以上を占める脂肪酸をいう。従って、例えば主構成脂肪酸の炭素数16〜18の反応モノグリセライドは、該反応モノグリセライドを構成する全脂肪酸100質量%中、炭素数16〜18の範囲に含まれる脂肪酸が60質量%以上を占めるものを意味する。同様に、主構成脂肪酸の炭素数18の反応モノグリセライドは、該反応モノグリセライドを構成する全脂肪酸100質量%中、炭素数18の脂肪酸(即ち、ステアリン酸等)が60質量%以上を占めるものを意味する。また、後述の蒸留モノグリセライド及びポリグリセリン脂肪酸エステルについての「主構成脂肪酸」の定義もこれと同じである。
【0021】
主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライドとしては、例えば、ポエムP−200(製品名;主構成脂肪酸の炭素数16〜18;モノグリセライド含有量約52%;理研ビタミン社製)、ポエムV−200(製品名;主構成脂肪酸の炭素数18;モノグリセライド含有量約50%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらの市販品を用いることができる。また、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライドとしては、ポエムB−200(製品名;モノグリセライド含有量約47%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらの市販品を用いることができる。
【0022】
本発明で用いられる蒸留モノグリセライドは、上述した製法により得られる反応モノグリセライドを精製し、モノグリセライドの含有量を高めたものである。該蒸留モノグリセライド100%中のモノグリセライドの含有量は、通常90%以上である。本発明で用いられる蒸留モノグリセライドを構成する脂肪酸に特に制限はないが、例えば食用可能な動植物油脂を起源とする炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸)等が好ましく、より好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸である。
【0023】
上記蒸留モノグリセライド100%中のモノグリセライドの含有量は、上記分析条件にてHPLCを用いて分析することにより求められる。具体的には、蒸留モノグリセライドを上記HPLC分析条件で分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノグリセライドの含有量を求めることができる。
【0024】
本発明で用いられる蒸留モノグリセライドは、上述した反応モノグリセライドを精製することにより製造することができる。精製方法としては、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて真空蒸留する方法が挙げられる。これらの方法を用いて精製することにより、モノグリセライドを全体の90%以上含む蒸留モノグリセライドを得ることができる。該蒸留モノグリセライド中のモノグリセライド含有量の上限は、通常99%程度である。
【0025】
蒸留モノグリセライドとしては、例えば、エマルジーP−100(製品名;主構成脂肪酸の炭素数16〜18;モノグリセライド含有量約98%;理研ビタミン社製)、ポエムS−100(製品名;主構成脂肪酸の炭素数18;モノグリセライド含有量約98%;理研ビタミン社製)、ポエムB−100(製品名;主構成脂肪酸の炭素数22;モノグリセライド含有量約96%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0026】
本発明で用いられる主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンとベヘン酸とのエステル化反応生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造され得る。
【0027】
本発明で用いられる主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるポリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物が挙げられる。また、ポリグリセリンは、グリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩または脱色などの処理を行って良い。該ポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が通常約2〜20、好ましくは約2〜15のポリグリセリンが挙げられる。具体的には、例えばジグリセリン(平均重合度:約2.0)、トリグリセリン(平均重合度:約3.0)、テトラグリセリン(平均重合度:約4.0)、ヘキサグリセリン(平均重合度:約6.0)、オクタグリセリン(平均重合度:約8.0)およびデカグリセリン(平均重合度:約10.0)などが挙げられ、特にトリグリセリンおよびテトラグリセリンが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるベヘン酸としては、特に制限はないが、純度が50%以上のものが好ましい。純度が50%以上であると、難油溶性成分の分散安定性が十分に得られる。
【0029】
本発明で用いられる主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製法の概略は以下の通りである。例えば、ポリグリセリンとしてトリグリセリンを用いる場合、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、トリグリセリンとベヘン酸を約1:2〜1:3のモル比で仕込み、通常触媒として水酸化ナトリウムを加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、180〜260℃の範囲、好ましくは200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は常圧下または減圧下で、反応時間は0.5〜15時間、好ましくは1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、約12以下を目安に決められる。
【0030】
エステル化反応終了後、必要に応じて反応混合物中に残存する触媒を中和し、必要であれば脱塩、脱色、ろ過などの処理を行い、最終的に、本発明の主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルを得る。
【0031】
主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムHB(商品名;トリグリセリン脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムJ−46B(商品名;テトラグリセリン脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0032】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物は、本発明の効果を奏する限り、必要に応じて上記食用油脂、難油溶性成分、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド及び主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル以外のその他の成分を含んでもよい。
【0033】
その他の成分としては、モノエステル体含有量が50%以上のジグリセリン脂肪酸エステル、酸化防止剤(例えば、抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル)等が挙げられる。その他の成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
なお、その他の成分として、上記モノエステル体含有量が50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルを本発明のソフトカプセル充填用液状組成物に使用すると、該組成物を充填したソフトカプセル剤を摂取した際に、胃液中で難油溶性成分が容易に分散し、生体内への有効成分の吸収促進が期待できるため好ましい。
【0035】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物は、上記食用油脂、難油溶性成分、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル及び必要に応じてモノエステル体含有量が50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルを混合及び撹拌しながら、これらの成分を均一に分散させることにより製造される。具体的には、例えば、食用油脂、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル及び必要に応じてモノエステル体含有量が50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルを、例えば、60〜90℃、好ましくは70〜80℃に加熱して均一に混合及び撹拌して溶解液を調製した後、該溶解液を例えば40〜60℃に冷却し、更に難油溶性成分を加えて混合及び撹拌し、該難油溶性成分を均一に分散して製造される。なお、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル及びモノエステル体含有量が50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルは、これらを予め混合し、加熱して溶融させたものを使用することができる。混合及び撹拌するための装置に特に制限はないが、例えば、バイオミキサー、ホモジェッター等の高速撹拌機又は高速粉砕機を用いることができる。
【0036】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の食用油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、通常20〜95質量%、好ましくは25〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。本発明において食用油脂の含有量が上記範囲であれば、難油溶性成分を食用油脂中に十分に分散させることができるとともに、食用油脂中における難油溶性成分の分散安定性が良好である。
【0037】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の難油溶性成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、通常1〜70質量%、好ましくは3〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。本発明において難油溶性成分の含有量が上記範囲であれば、難油溶性成分を食用油脂中に十分に分散させることができる。また、食用油脂中での難油溶性成分の分散安定性が良好であるため、ソフトカプセル剤中で難油溶性成分の分離が生じない。
【0038】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライドの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常0.25〜14質量%、好ましくは0.25〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%である。本発明において該反応モノグリセライドの含有量が上記範囲であれば、食用油脂中での難油溶性成分の分散安定性が良好であるため、ソフトカプセル剤中で難油溶性成分の分離が生じない。また、ソフトカプセル充填用液状組成物の保存中における硬度の上昇が抑制され、該組成物をソフトカプセルに充填する工程が容易になる。
【0039】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライドの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常0.25〜14質量%、好ましくは0.25〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%である。本発明において該反応モノグリセライドの含有量が上記範囲であれば、食用油脂中での難油溶性成分の分散安定性が良好であるため、ソフトカプセル剤中で難油溶性成分の分離が生じない。また、ソフトカプセル充填用液状組成物の保存中における硬度の上昇が抑制され、該組成物をソフトカプセルに充填する工程が容易になる。
【0040】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の蒸留モノグリセライドの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常0.5〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。本発明において該蒸留モノグリセライドの含有量が上記範囲であれば、食用油脂中での難油溶性成分の分散安定性が良好であるため、ソフトカプセル剤中で難油溶性成分の分離が生じない。また、ソフトカプセル充填用液状組成物の保存中における硬度の上昇が抑制され、該組成物をソフトカプセルに充填する工程が容易になる。
【0041】
本発明のソフトカプセル充填用液状組成物100質量%中の主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常0.25〜14質量%、好ましくは0.25〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%である。本発明において該蒸留モノグリセライドの含有量が上記範囲であれば、食用油脂中での難油溶性成分の分散安定性が良好であるため、ソフトカプセル剤中で難油溶性成分の分離が生じない。また、ソフトカプセル充填用液状組成物の保存中における硬度の上昇が抑制され、該組成物をソフトカプセルに充填する工程が容易になる。
【0042】
また、本発明のソフトカプセル充填用液状組成物にモノエステル体含有量50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合、該組成物100質量%中のモノエステル体含有量50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常0.05〜1.5質量%、好ましくは、0.05〜1質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。本発明において該ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記範囲であると、生体内(例えば、胃液中)において難油溶性成分が十分に分散するため、ソフトカプセル剤の摂取により難油溶性成分の効果が十分に発揮されることが期待できる。
【0043】
このようにして得られるソフトカプセル充填用液状組成物を、常法に従い、ゼラチンを主成分とする皮膜で包み込むことによりソフトカプセル剤を製造することができる。具体的には、例えば、2枚のゼラチンシートの間に内容物としてソフトカプセル充填用液状組成物を一定量注入して打ち抜く方法によりソフトカプセル剤を製造することができる。
【0044】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
[ソフトカプセル充填用液状組成物の作製]
(1)ソフトカプセル充填用液状組成物作製のための原材料
1)菜種サラダ油(J−オイルミルズ社製)
2)コーンスターチ(三和澱粉工業社製)
3)リボフラビン(理研ビタミン社製)
4)主構成脂肪酸の炭素数が16〜18の反応モノグリセライド(商品名:ポエムP−200;モノグリセライド含有量約52%;理研ビタミン社製)
5)主構成脂肪酸の炭素数が18の反応モノグリセライド(商品名:ポエムV−200;モノグリセライド含有量約50%;理研ビタミン社製)
6)主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド(商品名:ポエムB−200;モノグリセライド含有量約47%;理研ビタミン社製)
7)蒸留モノグリセライド(商品名:エマルジーP−100;モノグリセライド含有量約98%;理研ビタミン社製)
8)蒸留モノグリセライド(商品名:ポエムS−100;モノグリセライド含有量約98%;理研ビタミン社製)
9)主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムHB;トリグリセリン脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)
10)主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ−46B;テトラグリセリン脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)
【0046】
(2)原材料の配合組成
ソフトカプセル充填用液状組成物(実施品1〜4及び比較品1〜5)の作製に使用した原材料の配合組成を表1に示した。この内、実施品1〜4は本発明に係る実施例であり、比較品1〜5はそれらに対する比較例である。
【0047】
【表1】
【0048】
(3)ソフトカプセル充填用液状組成物の作製
表1に示した配合組成に基づいてソフトカプセル充填用液状組成物を作製した。即ち、主構成脂肪酸の炭素数が16〜20の反応モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22の反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド、主構成脂肪酸の炭素数が22のポリグリセリン脂肪酸エステルを菜種サラダ油に加え、これを80℃に加熱して撹拌し、これらの食品用乳化剤を該サラダ油中に溶解させた。得られた溶解液を水浴中で50℃まで冷却し、これを室温下でミキサー(型式:ウルトラタラックスT−25ベーシック;IKAジャパン社製)を使用して8000rpmで撹拌しながらコーンスターチ及びリボフラビンを加えて、さらに8000rpmで10分間撹拌し、コーンスターチ及びリボフラビンがサラダ油中に分散した分散液を得た。このとき、溶解液ないし分散液の温度が40〜50℃になるように温水または冷水を使用して適宜温度調整した。得られた分散液を真空脱泡処理した後、水浴中で25℃まで冷却し、ソフトカプセル充填用液状組成物約150g(実施品1〜4及び比較品1〜5)を得た。
【0049】
(4)ソフトカプセル充填用液状組成物の評価
上述した方法により作製したソフトカプセル充填用液状組成物(実施品1〜4及び比較品1〜5)の各々について下記の評価試験を実施した。結果を表2に示した。
【0050】
[難油溶性成分の分離の評価]
ソフトカプセル充填用液状組成物(実施品1〜4及び比較品1〜5)の各々を遠沈管(容量50mL;プラスチック製)に50g入れ、これを遠心機(型式:SL−IV;佐久間製作所社製)を用いて回転数3000rpmで15分間遠心した。その後、遠心分離機から遠沈管を取り出し、遠沈管の試料について、難油溶性成分(コーンスターチ及びリボフラビン)の分離の有無を目視により観察した。
【0051】
[硬度の評価]
ソフトカプセル充填用液状組成物(実施品1〜4及び比較品1〜5)の各々をプラスチック製の円錐台形状の容器(容量90mL;内径:上部65mm、底部45mm)に40g充填し、25℃で24時間保存した後、硬度を測定した。硬度の測定では、テクスチャアナライザ(型式:EZ−Test;φ14円柱型治具装着;進入速度120mm/min;島津製作所社製)を使用し、円柱型治具を組成物の表面からその内部に10mm進入させるまでの間に測定される最大応力(N)を硬度とした。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果から明らかなように、実施品1〜4のいずれも、難油溶性成分の分離が生じておらず、これらの硬度は最大でも1.21Nに抑制されていた。一方、比較品1〜4では、いずれも難油溶性成分の分離が生じ、中でも、比較品4は、その硬度が2.52Nに上昇していた。また、比較品5では、難油溶性成分の分離は生じなかったが、その硬度は2.00Nに上昇していた。即ち、比較品1〜5は、いずれもソフトカプセル剤への使用に適さないものであった。