特許第6322554号(P6322554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322554
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】樹脂成形装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20180423BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20180423BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20180423BHJP
   B29C 45/18 20060101ALI20180423BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20180423BHJP
【FI】
   H01L21/56 B
   B29C45/42
   B29C45/02
   B29C45/18
   !H05K3/28 G
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-228905(P2014-228905)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-92355(P2016-92355A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 健司
(72)【発明者】
【氏名】小口 達司
(72)【発明者】
【氏名】北島 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 一彦
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−094630(JP,A)
【文献】 特開2012−045734(JP,A)
【文献】 特表2003−524896(JP,A)
【文献】 特開2013−042017(JP,A)
【文献】 特開2004−179357(JP,A)
【文献】 特開2006−315184(JP,A)
【文献】 特開2001−001290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28−31
H01L 21/67−687
B29C 45/02
B29C 45/18
B29C 45/42
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂供給位置でワークに樹脂を供給する樹脂供給部と、
成形位置でワークに樹脂成形を行う成形部と、
前記樹脂供給部と前記成形部との間でワークを搬送するワーク搬送部と
を備え、
前記ワーク搬送部が、回転軸と、前記回転軸を中心に回転可能に設けられ、ワークの受け渡しをするハンドとを有し、
前記ハンドの回転軌跡上に前記樹脂供給位置および前記成形位置があるように、前記樹脂供給部および前記成形部が配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形装置において、
第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とを仕切るパネルとを有する筐体を備え、
前記ワーク搬送部が、前記回転軸を回転させる回転駆動源を有し、
前記パネルを挟んで、前記第1室に前記ハンドが配置され、前記第2室に前記回転駆動源が配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂成形装置において、
前記ワーク搬送部が、前記ハンドのチャック開閉を行うチャック駆動源を有し、
前記パネルを挟んで、前記第1室に前記ハンドが配置され、前記第2室に前記チャック駆動源が配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の樹脂成形装置において、
前記樹脂供給部が、前記樹脂供給位置に樹脂を吐出するシリンジと、前記シリンジを往復動させるシリンジ駆動源とを有し、
前記パネルを挟んで、前記第1室に前記シリンジが配置され、前記第2室に前記シリンジ駆動源が配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項4記載の樹脂成形装置において、
前記成形部が、樹脂を熱硬化させる成形金型を有し、
前記第1室に前記シリンジおよび前記成形金型が配置され、
前記樹脂供給部が、前記シリンジ内の樹脂の温度を管理する冷却部を有し、
前記冷却部が、前記シリンジと前記成形金型との間であって、前記シリンジの前記成形金型側に配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の樹脂成形装置において、
前記樹脂供給部が、前記回転軌跡の接線方向に往復動可能なカップを有し、
前記ハンドが前記樹脂供給位置にあるときに、前記カップが前記樹脂供給位置から退避され、前記ハンドが前記樹脂供給位置にないときに、前記カップが前記樹脂供給位置に進出されることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の樹脂成形装置において、
前記樹脂供給部が、前記回転軸の軸方向と平行な方向に往復動可能に設けられ、前記樹脂供給位置で前記ハンドにワークを受け渡す爪と、前記爪を往復動させる爪駆動源とを有し、
前記パネルを挟んで、前記第1室に前記爪が配置され、前記第2室に前記爪駆動源が配置されることを特徴とする樹脂成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012−114285号公報(以下、「特許文献1」という。)には、ワーク搬送部が備える多関節ロボットを囲んで、ワーク供給部、樹脂供給部、プレス部およびワーク収納部が配置された樹脂成形装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−114285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形装置(半導体封止装置)は、例えば、半導体素子などの電子部品を樹脂で封止するため、これらが実装されたリードフレーム、樹脂基板、ウエハあるいは複数の被成形品をワークとして一括で樹脂成形する(この後、個片化される)ことで、樹脂成形品を大量に製造している。近年、コスト低減の目的から、さらに大型基板、ウエハの大型化が進んでいる。しかしながら、カスタムIC(Integrated Circuit)など多品種少量を製造する場合、高額な大型の樹脂成形装置を用いる必要性が乏しい。
【0005】
本発明の目的は、小型化された樹脂成形装置を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段に係る樹脂成形装置は、樹脂供給位置でワークに樹脂を供給する樹脂供給部と、成形位置でワークに樹脂成形を行う成形部と、前記樹脂供給部と前記成形部との間でワークを搬送するワーク搬送部とを備え、前記ワーク搬送部が、回転軸と、前記回転軸を中心に回転可能に設けられ、ワークの受け渡しをするハンドとを有し、前記ハンドの回転軌跡上に前記樹脂供給位置および前記成形位置があるように、前記樹脂供給部および前記成形部が配置されることを特徴とする。
【0007】
これによれば、ハンドの回転軌跡上において、ワークに対して樹脂供給や樹脂成形などの処理を行うことができる。このため、樹脂供給部と成形部とを近接して配置させることで装置の小型化を図ることができ、省スペースでも樹脂成形装置を配置することができる。また、ハンドの回転軌跡上に樹脂供給位置や成形位置があることで多関節ロボットのような複雑な機構を備えることなく、簡易な構成でワークを搬送することができる。
【0008】
また、前記一解決手段に係る樹脂成形装置において、第1室および第2室と、前記第1室と前記第2室とを仕切るパネルとを有する筐体を備え、前記ワーク搬送部が、前記回転軸を回転させる回転駆動源を有し、前記パネルを挟んで、前記第1室に前記ハンドが配置され、前記第2室に前記回転駆動源が配置されることがより好ましい。これによれば、例えば、鉛直方向にハンドおよび回転駆動源を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、筐体をワークが存在する第1室とワークが存在しない第2室とに分け、粉塵の発生源となり得る回転駆動源などの構成要素を第2室に配置することでクリーンな環境(第1室)で樹脂成形を行うことができる。
【0009】
また、前記一解決手段に係る樹脂成形装置において、前記ワーク搬送部が、前記ハンドのチャック開閉を行うチャック駆動源を有し、前記パネルを挟んで、前記第1室に前記ハンドが配置され、前記第2室に前記チャック駆動源が配置されることがより好ましい。これによれば、例えば、鉛直方向にハンドおよびチャック駆動源を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、粉塵の発生源となり得るチャック駆動源などの構成要素を第2室に配置することでクリーンな環境(第1室)で樹脂成形を行うことができる。
【0010】
また、前記一解決手段に係る樹脂成形装置において、前記樹脂供給部が、前記樹脂供給位置に樹脂を吐出するシリンジと、前記シリンジを往復動させるシリンジ駆動源とを有し、前記パネルを挟んで、前記第1室に前記シリンジが配置され、前記第2室に前記シリンジ駆動源が配置されることがより好ましい。これによれば、例えば、鉛直方向にシリンジおよびシリンジ駆動源を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、ワークへの樹脂供給後に、シリンジを往復動(振動)させることで、シリンジからの樹脂切れを良くすることができ、液だれによる第1室内が汚染されるのを防止することができる。また、粉塵の発生源となり得るシリンジ駆動源などの構成要素を第2室に配置することでクリーンな環境(第1室)で樹脂成形を行うことができる。
【0011】
ここで、前記成形部が、樹脂を熱硬化させる成形金型を有し、前記第1室に前記シリンジおよび前記成形金型が配置され、前記樹脂供給部が、前記シリンジ内の樹脂の温度を管理する冷却部を有し、前記冷却部が、前記シリンジと前記成形金型との間であって、前記シリンジの前記成形金型側に配置されることがより好ましい。これによれば、装置の小型化のために樹脂供給部と成形部とを近接して設けた場合であっても、熱源となる成形金型に近い位置に冷却部を設け、シリンジに貯留されている樹脂が熱により硬化するのを防止することができる。
【0012】
また、前記樹脂供給部が、前記回転軌跡の接線方向に往復動可能なカップを有し、前記ハンドが前記樹脂供給位置にあるときに、前記カップが前記樹脂供給位置から退避され、前記ハンドが前記樹脂供給位置にないときに、前記カップが前記樹脂供給位置に進出されることがより好ましい。すなわち、ハンドの回転半径の直角方向にカップが移動可能に設けられるため、例えば、回転半径が拡がる方向にカップを往復動させる構成よりも装置の小型化を図ることができる。また、仮に液だれしてもカップで捕捉することにより第1室内が汚染されるのを防止することができる。
【0013】
また、前記一解決手段に係る樹脂成形装置において、前記樹脂供給部が、前記回転軸の軸方向と平行な方向に往復動可能に設けられ、前記樹脂供給位置で前記ハンドにワークを受け渡す爪と、前記爪を往復動させる爪駆動源とを有し、前記パネルを挟んで、前記第1室に前記爪が配置され、前記第2室に前記爪駆動源が配置されることがより好ましい。これによれば、例えば、鉛直方向に爪および爪駆動源を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、ワークの受け渡しの際に、例えば多関節ロボットのように、回転軸の軸方向と平行な方向にハンドを進退動させる必要がなくなるため、ハンドの移動空間を狭めることができ、装置の小型化を図ることができる。また、ワークを爪で支持し、ワークWに供給される樹脂の重量を量ることで樹脂を適量供給することができる。また、粉塵の発生源となり得る爪駆動源などの構成要素を第2室に配置することでクリーンな環境(第1室)で樹脂成形を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段によれば、小型化された樹脂成形装置を提供することができる。その結果、カスタム化も容易になり、安価に半導体樹脂成形装置が作れ、開発期間の短縮化もはかれる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す樹脂成形装置の要部を模式的に示す正面図である。
図3図1に示す樹脂成形装置の要部を模式的に示す左側面図である。
図4図1に示す樹脂成形装置の要部を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0017】
(樹脂成形装置の概略)
まず、本発明の実施形態に係る樹脂成形装置10の概略について図1図4を参照して説明する。図1は、樹脂成形装置10を模式的に示す斜視図であり、正面(手前)側の筐体パネルを取り外した状態を示す。また、図2図4は、それぞれ樹脂成形装置10の要部を模式的に示す正面図、左側面図および上面図(樹脂供給面)である。なお、図2図4では、説明を明解にするために、一部の構成要素について、削除したり、破線または二点鎖線で示したりしている。
【0018】
図1に示すように、樹脂成形装置10は、樹脂供給部12、成形部14(プレス部)、ワーク搬送部16およびこれらを収容する筐体18を備えている。樹脂供給部12は、樹脂供給位置AでワークWに樹脂を供給する構造をなしている。また、成形部14は、開閉可能な成形金型20(対をなす上型20Uおよび下型20L)を備え、成形位置BでワークWに樹脂成形を行う構造をなしている。また、ワーク搬送部16は、樹脂供給部12と成形部14との間でワークWを搬送する構造をなしている。なお、筐体18は、全体がシーリングされ、装置内部への粉塵の侵入を防止するために外部に対して内部が正圧(陽圧)とされる。
【0019】
樹脂成形装置10の処理対象となるワークWは、図4に示すように、例えば、ウエハ状の基板に半導体チップなどの電子部品(図示せず)が実装されたものである。なお、一般的にはウエハは円形形状をしているため基板も円形となるが、必ずしも円形である必要は無く、一例として四角形基板でも良い。樹脂成形装置10は、装置外部に対してワークWの受け渡しを行うワーク受け渡し部(図示せず)を備えている。このワーク受け渡し部とワーク搬送部16とは、受け渡し位置CでワークWの受け渡しが行われる。したがって、ワークWは、被成形品として装置外部から樹脂成形装置10へ搬送され、電子部品が樹脂で封止された成形品として樹脂成形装置10から装置外部へ搬送される。なお、受け渡し位置Cでは、透過型光電センサ22によって、ワークWの有無が確認される。
【0020】
(ワーク搬送部)
次に、樹脂成形装置10のワーク搬送部16(ハンド回転による各部受け渡し構造)について図1図4を参照して説明する。ワーク搬送部16は、図2に示すように、回転軸30と、回転軸30の軸方向X(鉛直方向)と交差する方向Y(水平方向)に回転軸30から延在する所定長さのアーム32と、アーム32の先端に設けられるハンド34(開閉するフィンガーを有する)と、回転軸30を回転させる回転駆動源(回転・チャック駆動源36)とを備えている。すなわち、ワークWの受け渡しをするハンド34は、回転軸30を中心に回転可能に設けられる。このようなワーク搬送部16では、ハンド34がワークWをチャック(把持)し、所定量回転して搬送する。
【0021】
また、ワーク搬送部16は、回転軸30およびアーム32を介してハンド34のチャック開閉を行うチャック駆動源(回転・チャック駆動源36)を備えている。このチャック駆動源と、ハンド34の回転駆動源とは別々に設けてもよいが、本実施形態では、回転駆動源(例えば、電動モータ)およびチャック駆動源(例えば、ソレノイド)を1つのケースにまとめて回転・チャック駆動源36としている。回転・チャック駆動源36をケースで覆うことで、粉塵が発生してもそのケース内に留めることができる。
【0022】
ところで、樹脂成形装置10の筐体18は、図1に示すように、複数の部屋を有するように内部が仕切られている。本実施形態では、鉛直方向上側に上室18U(第1室)、鉛直方向下側に下室18Lが設けられるように、筐体18は、上室18Uおよび下室18Lを仕切るパネル38(ベース)を備えている。樹脂成形装置10では、このパネル38をベースとして樹脂供給部12、成形部14、ワーク搬送部16が構築されている。
【0023】
このような筐体18の内部において、ワーク搬送部16は、回転軸30が上室18Uと下室18Lとの境界を渡って(パネル38を貫通して)配置され、アーム32およびハンド34が上室18Uに配置され、回転・チャック駆動源36が下室18Lに配置されている。また、図4に示すように、回転軸30を中心としたハンド34の回転軌跡L(この半径はアーム32の長さ程度となる)上に樹脂供給位置A、成形位置Bおよび受け渡し位置Cがあるように、樹脂供給部12および成形部14が配置されている。なお、本実施形態では、樹脂供給部12と成形部14とは、回転軌跡Lがなす円の直径の位置に配置されている。
【0024】
これによれば、ハンド34の回転軌跡L上において、ワークWに対して樹脂供給や樹脂成形などの処理を行うことができるため、樹脂供給部12と成形部14とを近接して配置する(各部を配置する平面エリアが小さくなる)ことで樹脂成形装置10の小型化(スリム化)を図ることができる。したがって、省スペースでも樹脂成形装置10を工場内に配置することができるようになる。
【0025】
また、ハンド34の回転軌跡L上に樹脂供給位置A、成形位置Bおよび受け渡し位置Cがあることで多関節ロボットのような複雑な機構を備えることなく、簡易な構成でワークWを搬送することができる。また、ハンド34の回転範囲(占有する平面エリア)として、回転軸30を中心に360°一回転させることも考えられるが、90°ずつ180°の回転範囲に樹脂供給位置A、成形位置Bおよび受け渡し位置Cがあることで、円の面積の半分で済む。このように平面エリアを小さくすることで樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。
【0026】
また、樹脂成形装置10では、パネル38を挟んで、上室18Uにハンド34が配置され、下室18Lに回転・チャック駆動源36が配置されている。これにより、鉛直方向にハンド34および回転・チャック駆動源36を配置することができ、配置する平面エリアを小さくし、樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。また、筐体18をワークWが存在する上室18UとワークWが存在しない下室18Lとに分け、粉塵の発生源となり得る回転・チャック駆動源36などの構成要素を下室18Lに配置することでクリーンな環境(上室18U)で樹脂成形を行うことができる。また、回転駆動源およびチャック駆動源をまとめて回転・チャック駆動源36とし、ハンド34の回転動作を行う回転軸30およびアーム32をハンド34のチャック動作にも用いることで樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。
【0027】
(樹脂供給部)
次に、樹脂成形装置10の樹脂供給部12(ディスペンサ)について図1図4を参照して説明する。樹脂供給部12は、図2図3に示すように、樹脂供給位置Aで液状樹脂をノズル(先端)から吐出する蓋付きのシリンジ40と、その蓋を押圧してシリンジ40内の液状樹脂を押し出す吐出プッシャ42とを備えている。また、樹脂供給部12は、パネル38に固定された背板44に鉛直方向に延在するレール46上を移動するガイド48が付いた可動ブロック50を備えている。可動ブロック50を移動させる構成として、樹脂供給部12は、一端が可動ブロック50にねじ込まれる吐出用回転軸52と、これを回転駆動させる吐出モータ54(回転駆動源)と、吐出用回転軸52の他端と接続されたプーリ56と、吐出モータ54の出力軸と接続されたプーリ58と、プーリ56とプーリ58とに架かる無端ベルト60とを備えている。可動ブロック50に吐出プッシャ42が設けられるため、可動ブロック50と共に吐出プッシャ42を移動させることができ、シリンジ40内の液状樹脂を吐出させるときにはシリンジ40内に吐出プッシャ42を進入させることができる。
【0028】
また、樹脂供給部12は、背板44において鉛直方向に延在するレール46上を移動するガイド62が付いた可動板64と、可動板64に取り付けられた可動ブロック66とを備えている。可動板64を移動させる構成として、樹脂供給部12は、先端(一端)が可動板64に設けられる鉛直方向に往復動可能なシリンジロッド68と、シリンジロッド68を往復動(直動)させるシリンジ駆動源70(例えば、シリンダ)とを備えている。可動ブロック66内にシリンジ40が設けられるため、シリンジ駆動源70は、可動ブロック66(可動板64)と共にシリンジ40を移動させることができる。すなわち、シリンジ40は、往復動可能に設けられている。
【0029】
そして、シリンジロッド68が上室18Uと下室18Lとの境界を渡って(パネル38を貫通して)配置され、シリンジ40が上室18Uに配置され、シリンジ駆動源70が、下室18Lに配置されている。すなわち、パネル38を挟んで、上室18Uにシリンジ40が配置され、下室18Lにシリンジ駆動源70が配置されている。
【0030】
これにより、鉛直方向にシリンジ40およびシリンジ駆動源70を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、ワークWへの樹脂供給後に、シリンジ40が振動するようにシリンジ40を往復動させることで、シリンジ40からの樹脂切れを良くすることができ、液だれによる上室18U内が汚染されるのを防止することができる。また、粉塵の発生源となり得るシリンジ駆動源70などの構成要素を下室18Lに配置することでクリーンな環境(上室18U)で樹脂成形を行うことができる。
【0031】
また、樹脂供給部12は、図2に示すように、シリンジ40内の液状樹脂の温度を管理する冷却部72を更に備えている。シリンジ40内の樹脂は、常温であっても硬化が始まり、その特性が劣化してしまう。そこで、冷却部72(例えば、ペルチェ素子付きの放熱フィン)をシリンジ40に接して設けることで樹脂が劣化してしまうのを防止している。
【0032】
ところで、上室18Uでは、樹脂供給部12のシリンジ40および冷却部72と共に、成形部14の成形金型20が配置される。この成形金型20には樹脂を熱硬化させるためのヒータ(図示せず)が内蔵されており、樹脂成形装置10における熱源となっている。そこで、シリンジ40と成形金型20との間であって、シリンジ40の成形金型20側に冷却部72を配置している。これによれば、樹脂成形装置10の小型化のために樹脂供給部12と成形部14とを近接して配置した場合であっても、熱源となる成形金型20に近い位置に冷却部72を設け、シリンジ40に貯留されている樹脂が熱により硬化するのを防止することができる。
【0033】
また、樹脂供給部12は、図3図4に示すように、回転軌跡L(図4参照)の接線方向T(水平方向)に往復動可能なカップ74を備えている。カップ74を移動させる構成として、樹脂供給部12は、カップ74を往復動(直動)させるカップ往復駆動源76(例えば、シリンダ)を備えている。このカップ往復駆動源76は、パネル38上の複数の支柱78によって支持されたステージ80上に設けられ、カップ74が接線方向Tに往復動可能となる所定の位置で支持される。このような樹脂供給部12では、カップ往復駆動源76にカップ74が設けられ、ハンド34が樹脂供給位置Aにあるときに、カップ74が樹脂供給位置Aから退避され、ハンド34が樹脂供給位置Aにないときに、カップ74が樹脂供給位置Aに進出される。
【0034】
このように、ハンド34の回転半径の直角方向(接線方向T)にカップ74が移動可能に設けられるため、例えば、回転半径が拡がる方向にカップ74を往復動させる構成よりも樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。また、仮に液だれしてもカップ74で捕捉することにより上室18U内が汚染されるのを防止することができる。
【0035】
また、樹脂供給部12は、図2図3に示すように、回転軸30の軸方向Xと平行な方向に往復動可能に設けられ、樹脂供給位置AでワークWを受け渡す受け渡し爪82を備えている。受け渡し爪82を移動させる構成として、樹脂供給部12は、受け渡し爪82に設けられる鉛直方向に往復動可能な爪ロッド84と、爪ロッド84を鉛直方向(ワーク搬送部16の回転軸30の軸方向Xと平行な方向)に往復動(直動)させる爪駆動源86(例えば、シリンダ)とを備えている。また、ステージ80には受け渡し爪82が貫通して設けられる貫通孔が形成されており、受け渡し爪82は、ステージ80の表面から進出(突出)したり、退避したりする。
【0036】
このように、受け渡し爪82は、爪ロッド84に設けられるため、爪ロッド84の往復動に合わせて受け渡し爪82も往復動することとなる。そして、爪ロッド84が上室18Uと下室18Lとの境界を渡って(パネル38を貫通して)配置され、受け渡し爪82が上室18Uに配置され、爪駆動源86が下室18Lに配置されている。すなわち、パネル38を挟んで、上室18Uに受け渡し爪82が配置され、下室18Lに爪駆動源86が配置されている。
【0037】
これにより、鉛直方向に受け渡し爪82および爪駆動源86を配置することができ、配置する平面エリアを小さくすることができる。また、ワークWの受け渡しの際に、例えば多関節ロボットのように、回転軸30の軸方向Xと平行な方向(鉛直方向)にハンド34を進退動させる必要がなくなるため、ハンド34の移動空間を狭めることができ、樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。また、粉塵の発生源となり得る爪駆動源86などの構成要素を下室18Lに配置することでクリーンな環境(上室18U)で樹脂成形を行うことができる。また、ワークWを受け渡し爪82で支持し、ワークWに供給される樹脂の重量を量ることで樹脂を適量供給することもできる。
【0038】
(成形部)
次に、樹脂成形装置10の成形部14について図1を参照して説明する。成形部14は、上型20Uおよび下型20Lを有する成形金型20と、成形金型20を開閉する型開閉部88とを備えている。上型20Uには、キャビティ凹部(図示せず)が設けられ、また、下型20Lには、ワークWが配置されるワーク配置部(図示せず)が設けられている。また、型開閉部88には、公知のものを用いることができ、例えば、固定型として下型20Lがパネル38に固定され、可動型として上型20Uが駆動源により昇降するボールネジによって可動される。
【0039】
また、成形部14は、上型20Uの金型面を覆って吸着保持(張設)されるフィルムF(リリースフィルム)を供給するフィルム供給部90を備えている。フィルムFは、金型面より容易に剥離するものであって、耐熱性、柔軟性および伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジンなどが好適に用いられる。
【0040】
フィルム供給部90は、未使用分のフィルムFを送り出す送り出しロール92と、成形金型20で樹脂成形の際に使用された分のフィルムFを巻き取る巻き取りロール94とを備えている。また、フィルム供給部90は、送り出しロール92から巻き取りロール94までのフィルムFの搬送経路を案内するガイドローラ96、98、100を備えている。ガイドローラ96は、送り出しロール92の近傍(フィルム搬送上流側)に固定して設けられている。また、ガイドローラ98、100は、上型20Uの金型面に平行となるように対になって昇降可能に設けられ、上型20Uの金型面にフィルムFを平行に案内する。
【0041】
ここで、フィルム供給部90は、フィルムFが上室18Uと下室18Lとの境界を渡って(パネル38を貫通して)配置され、送り出しロール92が上室18Uに配置され、巻き取りロール94が下室18Lに配置されている。すなわち、送り出しロール92と巻き取りロール94とを鉛直方向において上下に配置して、フィルム供給部90を備える成形部14が配置される平面エリアを小さくすることで樹脂成形装置10の小型化を図ることができる。したがって、省スペースでも樹脂成形装置10を配置することができる。また、粉塵の発生源となり得る、使用後のフィルムFを巻き取る巻き取りロール94などの構成要素を下室18Lに配置することでクリーンな環境(上室18U)で樹脂成形を行うことができる。
【0042】
(樹脂成形装置の動作)
次に、樹脂成形装置10の動作方法(樹脂成形品の製造方法)について、ハンド34の回転による各部での受け渡しを中心に図1図4を参照して説明する。樹脂成形装置10では、ワーク搬送部16がワークWを受け渡し、樹脂供給部12と成形部14へワークWを順次搬送する。まず、樹脂成形装置10にワークW(被成形品)が投入されると、予め待機しているハンド34が受け渡し位置CでワークWをチャックして受け取る。続いて、ハンド34がワークWをチャックしたまま受け渡し位置Cから樹脂供給位置Aまで、回転・チャック駆動源36によって回転軸30を中心に時計回りに90°回転移動する。
【0043】
続いて、樹脂供給位置Aに対して退避している受け渡し爪82が爪駆動源86によって上昇し、ハンド34からワークWを受け取る。このとき、ワークWはハンド34から解放されている。続いて、シリンジ40がシリンジ駆動源70によって下降した後、吐出モータ54によって吐出用回転軸52を回して吐出プッシャ42を下降させると、吐出プッシャ42がシリンジ40内の蓋を押圧することで、シリンジ40から液状樹脂を吐出させ、ワークWに液状樹脂を供給する。このとき、シリンジ40からの液切れを良くするために、シリンジ40を上下に一回ないし、必要により複数回振動させることができる。
【0044】
続いて、シリンジ40がシリンジ駆動源70によって上昇した後、受け渡し爪82が爪駆動源86によって下降し、ハンド34がワークWをチャックして受け渡し爪82からワークWを受け取る。続いて、ハンド34がワークWをチャックしたまま樹脂供給位置Aから受け渡し位置Cを通過して成形位置Bまで、回転・チャック駆動源36によって回転軸30を中心に反時計回りに180°回転移動して、型開きしている成形金型20のワーク配置部にワークWを配置する。このとき、液状樹脂は、ワークWと共に樹脂供給位置Aから成形位置Bまで搬送される。なお、型開きしている上型20Uの金型面では、フィルムFが吸引されて張り付けられている。
【0045】
続いて、成形金型20の内部(キャビティ)を減圧しながら型開閉部88によって型閉じしていき、成形金型20がワークWをクランプ(型閉じ)して液状樹脂をキャビティ内で充填させる。そして、ワークWをクランプした状態で成形金型20のヒータによって液状樹脂を熱硬化させることで、ワークWに樹脂成形された樹脂成形品が略完成される。続いて、成形金型20が型開閉部88によって型開きした後、ハンド34は、成形位置BでワークW(成形品)をチャックし、成形位置Bから受け渡し位置Cまで、回転・チャック駆動源36によって回転軸30を中心に時計回りに90°回転移動する。その後、ワークW(成形品)が樹脂成形装置10から取り出される。なお、次に樹脂成形装置10に投入されるワークW(被成形品)に対しても同様の処理が施される。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、次のとおり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
例えば、前記実施形態では、樹脂供給部として液状樹脂を供給するディスペンサを用いた場合について説明した。これに限らず、樹脂供給部として顆粒状樹脂、シート状樹脂、タブレット状樹脂などを供給するものを用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 樹脂成形装置
12 樹脂供給部
14 成形部
16 ワーク搬送部
30 回転軸
34 ハンド
図1
図2
図3
図4