(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322570
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】呼吸器疾患患者において睡眠の質を改善するために用いるアクリジニウム
(51)【国際特許分類】
A61K 31/473 20060101AFI20180423BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20180423BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20180423BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20180423BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20180423BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
A61K31/473
A61K31/573
A61K45/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P25/20
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-504296(P2014-504296)
(86)(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公表番号】特表2014-510771(P2014-510771A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012056575
(87)【国際公開番号】WO2012140081
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年2月25日
【審判番号】不服2017-2354(P2017-2354/J1)
【審判請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】11382114.4
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/497,771
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(72)【発明者】
【氏名】マリア・エステル・ガルシア・ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサロ・デ・ミケル・セラ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ホセ・サラ・ペイナド
【合議体】
【審判長】
蔵野 雅昭
【審判官】
前田 佳与子
【審判官】
穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/112274(WO,A2)
【文献】
Chest.,2010年,Vol.138,No.4,Meeting Abstract,465A
【文献】
Eur Respir J,1997年,Vol.10,p.815−821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
CAPLUS,REGISTRY,MEDLINE,BIOSIS,EMBASE(STN)
JSTPlus,JMEDPlus,JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患患者において睡眠の質を改善するために用いる医薬の製造を目的とする、アクリジニウムまたはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物のいずれか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用であって、ここで、該睡眠の質が、a)総覚醒回数、b)早朝覚醒およびc)中途覚醒の1つまたはそれ以上の低減により評価されるものである、使用。
【請求項2】
アクリジニウムが臭化アクリジニウムである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
呼吸器疾患患者が、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
アクリジニウムが、吸入に適する乾燥粉末製剤の形態である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
1回の吸入あたり、100ないし1000マイクログラムの臭化アクリジニウムに相当する計量公称薬用量のアクリジニウムを提供する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
アクリジニウムが、1日1回またはそれ以上投与される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
アクリジニウムが、治療的有効量のコルチコステロイド、ベータ−アドレナリンアゴニストおよび/またはPDE4阻害物質と共投与される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の呼吸器疾患患者における睡眠の質の改善を目的とする使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載のアクリジニウムまたはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物のいずれか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、ここで、該睡眠の質が、a)総覚醒回数、b)早朝覚醒およびc)中途覚醒の1つまたはそれ以上の低減により評価されるものである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、呼吸器疾患患者において睡眠の質を改善するために有利に使用され得るアクリジニウムの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患は、世界的な発生率の増大を伴って、世界的に重要な健康問題となっている。それらは、通常、気管支収縮をもたらす気道の炎症性機能障害により特徴付けられる。
【0003】
喘息において、炎症は、先天性および後天性免疫応答の両者を活性化するアレルゲンおよびウイルスを含む種々の誘因物質への暴露により引き起こされる。COPDにおいて、炎症は、主として、有害な粒子およびガス、特にタバコの煙への暴露によって起こる。単一の病的状態というよりはむしろ、COPDは、慢性気管支炎または肺気腫のようないくつかの障害を包含する用語である。
【0004】
喘息およびCOPDは、一般に、呼吸困難(息切れ)、疲労、咳、喘鳴、胸苦しさ、または鬱血のような肺の症状の結果としての身体機能の重度の障害および痰の産生に関係する。呼吸器疾患を有する多くの患者は、睡眠の質におけるこれらの症状の深刻な影響を訴える。
【0005】
COPD患者では、睡眠関連の病訴は、呼吸困難および疲労の後の、第3の最も一般に報告される症状である(Kinsman et al, Chest, 1983, 83, 755−761)。喘息の場合には、患者の80%が、夜間の喘鳴および咳によって少なくとも時折起こされ、重度の持続的喘息を有する多くの患者は、実際に毎晩目覚める(Turner−Warwick, M.; Am. J. Med., 1988, 85 (suppl. 1B), 6−8)。
【0006】
呼吸器疾患患者により度々報告される睡眠の病訴は、例えば長時間の入眠障害、中途覚醒、頻繁な覚醒および目覚め、浅い睡眠、総睡眠時間の減少、早朝覚醒およびその後の睡眠の困難、一般的不眠症、ならびに全般的な睡眠の質の低下である。朝方の息切れによる日中の過剰な眠気および活動制限もまた、低下した睡眠の質の一般的な結果である。
【0007】
これらの睡眠障害は、進行性疾患をより重度にし、呼吸器疾患患者のクオリティー・オブ・ライフを実質的に低下させる傾向がある。
【0008】
ベータアドレナリンアゴニストまたはコリン作動性ムスカリン受容体のアンタゴニスト(一般に、抗コリン作動薬または抗ムスカリン作動薬として公知)のような気管支拡張薬は、通常、喘息またはCOPDのような閉塞性気道疾患に罹患する呼吸器疾患患者への吸入投与のために処方される。全ての市販の抗コリン作動薬は、合成トロパン誘導体であり、プラトロピウム、オキシトロピウム、およびチオトロピウムが含まれる。チオトロピウムは、現在市販されている唯一の長時間作用性抗コリン作動薬である。
【0009】
気道反応性および気道抵抗性への概日リズムの影響が、呼吸器疾患患者においては正常な対照よりもるはかに大きいことは周知である。結果として、呼吸器疾患患者は、特に夜間および早朝に気管支収縮傾向があり、このことは、彼らの睡眠の質に影響を与える主な因子である。故に、夜間の気管支収縮を克服または予防することを目的とする処置が、非常に望ましい。しかしながら、Calverley et al., in Thorax, 2003, 58 (10), 855−860による研究は、夕方の長時間作用性の気管支拡張剤チオトロピウムの投与が、それが朝にのみ投与されるときよりも、夜間により多くの気管支拡張作用を生じないことを示す。
【0010】
驚くべきことに、アクリジニウムが、呼吸器疾患患者において一般に見られる睡眠障害の発生を顕著に減少させ、故に、睡眠の質および全般的なクオリティー・オブ・ライフを上昇させることが見出された。
【0011】
アクリジニウムは、3(R)−(2−ヒドロキシ−2,2−ジチエン−2−イルアセトキシ)−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンであり、呼吸器疾患、とりわけ喘息およびCOPDの処置における吸入投与のための、Almirallにより開発されている長時間作用性ムスカリン受容体アンタゴニストである。それは、WO01/04118に最初に記載された。
【0012】
アクリジニウムは、ヒトの血漿中で2種の不活性な代謝産物へ迅速に加水分解されるため、全身性副作用の可能性が少なく、現在市販されている吸入用抗コリン作動性処置剤よりも広範に安全である。睡眠の質の改善におけるそのさらなる効果は、予期されなかった本発明の発見である。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
本発明は、呼吸器疾患患者の睡眠の質を改善するために用いる、アクリジニウム、またはその立体異性体もしくは立体異性体の混合物のいずれか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0014】
好ましくは、アクリジニウムは、アニオンX
−との塩形態である。最も好ましくは、アニオンX
−は臭化物である。
【0015】
好ましい態様において、呼吸器疾患患者は、急性もしくは慢性気管支炎、肺気腫、喘息および慢性閉塞性肺疾患から選択される疾患、好ましくは喘息および慢性閉塞性肺疾患、最も好ましくは慢性閉塞性肺疾患に罹患する。
【0016】
別の態様において、アクリジニウムは、吸入投与に適する医薬組成物として投与され、好ましくは乾燥粉末形態で投与される。組成物は、何れかの吸入装置、より好ましくはGenuair(登録商標)により投与され得る。
【0017】
典型的に、乾燥粉末製剤は、単糖類、二糖類または多糖類および糖アルコール類から選択される薬学的に許容される担体を含む。好ましくは、該担体はラクトースである。
【0018】
アクリジニウムは、少なくとも1日1回、好ましくは朝または夕方に投与される。より好ましくは、アクリジニウムは、1日2回投与される。最も好ましい態様において、アクリジニウムは、1日2回投与され、朝に1回、夕方にもう1回投与される。
【0019】
1回の吸入に使用されるアクリジニウムの有効量は、吸入用乾燥粉末中に100ないし1000マイクログラムの臭化アクリジニウム、より好ましくは200または400マイクログラムの臭化アクリジニウムの計量公称薬用量に相当する量である。
【0020】
別の好ましい態様において、アクリジニウムは、例えば、コルチコステロイド、ベータ−アドレナリンアゴニスト、PDE4阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗IgE抗体、ロイコトリエンD4阻害剤、egfr−キナーゼの阻害剤、p38キナーゼ阻害剤および/またはNK1−受容体アンタゴニストの1種またはそれ以上から選択される呼吸器疾患の処置に適するさらなる医薬と共に投与される。さらなる医薬は、アクリジニウムと同じ医薬組成物中に存在するか、または別の医薬組成物中に存在していてよい。好ましくは、さらなる医薬は、コルチコステロイド、ベータ−アドレナリンアゴニストおよび/またはPDE4阻害剤から選択される。
【0021】
呼吸器疾患患者における睡眠の質のアクリジニウムによる改善は、
a)入眠障害
b)総覚醒回数
c)早朝覚醒
d)中途覚醒
e)浅い眠り
f)不眠
g)日中の眠気または疲労感
h)午前中の活動制限
の1つまたはそれ以上の低減により、および/または総睡眠時間の増加により評価され得る。
【0022】
アクリジニウムによる睡眠の質の改善に貢献し得る臨床的因子には、以下の睡眠時間中の呼吸器系に関する病訴
a)咳の程度および/または頻度
b)痰の産生
c)喘鳴
d)胸苦しさ
e)胸部鬱血
f)気管支収縮
g)息切れ
h)レスキュー薬の必要度
の1つまたはそれ以上の低減がある。
【0023】
本発明は、呼吸器疾患患者における睡眠の質の改善のためのアクリジニウムを含む医薬組成物をさらに提供する。
【0024】
本発明は、呼吸器疾患患者における睡眠の質の改善のための医薬の製造を目的とする、アクリジニウムの使用をさらに提供する。
【0025】
本発明は、呼吸器疾患患者における睡眠の質の改善方法であって、該患者に上記の有効量のアクリジニウムを投与することを含む方法をさらに提供する。
本発明は、睡眠障害を有する患者における呼吸器障害、好ましくは喘息または慢性閉塞性肺疾患の処置に使用するための、上記のアクリジニウムをさらに提供する。好ましくは、睡眠障害は、
a)入眠障害、
b)夜間に1回またはそれ以上、好ましくは2回またはそれ以上、より好ましくは3回またはそれ以上の覚醒、
b)早朝覚醒、
c)中途覚醒、
d)浅い眠り、
e)不眠、
f)日中の眠気または疲労感、および
g)午前中の活動制限
の1つまたはそれ以上を伴う。
本発明は、睡眠障害を有する患者における呼吸器障害、好ましくは喘息または慢性閉塞性肺疾患の処置のための医薬の製造を目的とする、上記のアクリジニウムの使用をさらに提供する。好ましくは、睡眠障害は、
a)入眠障害、
b)夜間に1回またはそれ以上、好ましくは2回またはそれ以上、より好ましくは3回またはそれ以上の覚醒、
b)早朝覚醒、
c)中途覚醒、
d)浅い眠り、
e)不眠、
f)日中の眠気または疲労感、および
g)午前中の活動制限
の1つまたはそれ以上を伴う。
【0026】
発明の詳しい説明
典型的に、アクリジニウムは、アニオンX
−との塩形態で投与され、ここでX
−は、一価または多価酸の薬学的に許容されるアニオンである。より典型的には、X
−は、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸のような無機酸、またはメタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸もしくはマレイン酸のような有機酸から誘導されるアニオンである。最も好ましくは、アクリジニウムは、臭化アクリジニウムの形態である。
【0027】
本発明の化合物は、非溶媒和物形態および溶媒和物形態の両方で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本明細書中、本発明の化合物および一定量の1種またはそれ以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む分子複合体を記載するために使用される。用語「水和物」は、該溶媒が水であるとき、用いられる。溶媒和物形態の例としては、水、アセトン、ジクロロメタン、2−プロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはそれらの混合物と合する本発明の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、1つの溶媒分子は、水和物のような、本発明の化合物の1つの分子と結合し得ることが具体的に考慮される。
【0028】
用語“処置する”および“処置”は、疾患もしくは病状の症状の改善および/または疾患もしくは病状の原因の排除もしくは減少および/または疾患もしくはその症状の発現の予防を包含することが理解されるべきである。
【0029】
用語“治療的有効量”は、処置を必要とする患者に投与されたとき、処置効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0030】
アクリジニウムはまた、上記の疾患または障害の処置において有効であることが公知の他の薬剤と併用され得る。例えば、アクリジニウムは、コルチコステロイドまたはグルココルチコイド、ベータ−アドレナリンアゴニスト、PDE4阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗IGE抗体、ロイコトリエンD4アンタゴニスト、egfrキナーゼの阻害剤、p38キナーゼ阻害剤および/またはNK−1受容体アゴニストと併用され得る。
【0031】
本発明においてアクリジニウムと組み合わされ得るコルチコステロイドとしては、特に、呼吸器疾患または状態の処置において吸入による投与に適する薬剤、例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメサゾン、チプレダン(tipredane)、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、ジプロピオン酸アルクロメタゾン(alclometasone)、ハロメタゾン、メチルプレドニゾロンスレプタネート(suleptanate)、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム塩、トリアムシノロン、ベタメタゾン17−吉草酸塩、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびヒドロコルチゾンプロブテート(probutate)が挙げられる。ブデソニドおよびモメタゾンが、とりわけ好ましい。
【0032】
本発明においてアクリジニウムと組み合わされ得るベータ−アドレナリンアゴニストとしては、特に、呼吸器疾患または状態の処置において有用なβ2アドレナリンアゴニスト、例えば、遊離形または薬学的に許容される塩形の、アルフォルモテロール、バンブテロール、ビトルテロール、ブロキサテロール(broxaterol)、カルブテロール(carbuterol)、クレンブテロール、ドペキサミン、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール(ibuterol)、イソプレナリン、マブテロール、メルアドリン、ノロミロール(nolomirole)、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リトドリン、リモテロール(rimoterol)、サルブタモール、サルメテロール、シベナデット(sibenadet)、スルフォンテロール(sulfonterol)、テルブタリン、ツロブテロール、ビランテロール、オロダテロール、KUL−1248、LAS−100977、カルモテロールおよびインダカテロールからなる群から選択される薬剤が挙げられる。好ましくは、β2アドレナリンアゴニストは、長時間作用性のβ2アドレナリンアゴニスト、例えば、遊離形または塩形の、フォルモテロール、サルメテロール、カルモテロール、ビランテロール、オロダテロール、LAS−100977およびインダカテロールからなる群から選択される。
【0033】
本発明においてアクリジニウムと組み合わされ得るPDE4阻害剤としては、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン(cipamfylline)、アロフィリン、フィラミナスト(filaminast)、ピクラミラスト、メソプラム(mesopram)、塩酸ドロタベリン、リリミラスト(Lirimilast)、ロフルミラスト、シロミラスト、6−[2−(3,4−ジエトキシフェニル)チアゾール−4−イル]ピリジン−2−カルボン酸、(R)−(+)−4−[2−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−2−フェニルエチル]ピリジン、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミド、9−(2−フルオロベンジル)−N6−メチル−2−(トリフルオロメチル)アデニン、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−8−メトキシキノリン−5−カルボキサミド、N−[9−メチル−4−オキソ−1−フェニル−3,4,6,7−テトラヒドロピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−3(R)−イル]ピリジン−4−カルボキサミド、3−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジル]−6−(エチルアミノ)−8−イソプロピル−3H−プリン塩酸塩、4−[6,7−ジエトキシ−2,3−bis(ヒドロキシメチル)ナフタレン−1−イル]−1−(2−メトキシエチル)ピリジン−2(1H)−オン、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン、シス[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール、ONO−6126(Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)、ならびにPCT特許出願番号WO03/097613、およびPCT/EP03/14722およびスペイン特許出願番号P200302613において特許請求される化合物が挙げられる。
【0034】
本発明に用いるためのアクリジニウムは、局所的に抗ムスカリン作用を供するために適当な何れかの経路で投与され得る。好ましくは、吸入、例えば、粉末、スプレーまたはエアロゾルとして、好ましくは乾燥粉末として、吸入により投与される。アクリジニウムを含む医薬組成物は、常用の希釈剤または添加剤を用いて、当技術分野で公知の技術を用いて製造され得る。
【0035】
吸入用の乾燥粉末中の投与のための薬剤は、望ましくは、制御された粒子サイズを有する。気管支系への吸入に最適な粒子サイズは、通常、1−10μm、好ましくは2−5μmである。20μm以上のサイズを有する粒子は、一般的に、小さい気道に到達するために吸入されたとき、大きすぎる。これらの粒子サイズを達成するために、生産される有効成分の粒子は、従来法により、例えば微粒子化法または超臨界流体法によりサイズを縮小され得る。望ましい画分は、空気分類または篩い分けにより分離され得る。好ましくは、粒子は、結晶であり得る。
【0036】
微粉化粉末を用いる高用量再現性の達成は、それらの乏しい流動性および極度の凝集傾向のために困難である。乾燥粉末組成物の効率を改善するために、粒子は、吸入器中では大きいが、呼吸管へ放出されたとき小さくなければならない。故に、添加剤、例えば、単糖類、二糖類もしくは多糖類またはラクトース、マンニトールもしくはグルコースのような糖アルコールが、一般的に使用される。添加剤の粒子サイズは、通常、本発明の吸入薬物よりはるかに大きい。添加剤がラクトースであるとき、それは典型的には、ラクトース粒子として、好ましくは結晶性アルファ・ラクトース一水和物として存在し、例えば、20−1000μmの範囲、好ましくは90−150μmの範囲の平均粒子サイズを有する。一態様において、本発明の製剤に使用されるラクトース粒子は、90−160μmのd10、170−270μmのd50、および290−400μmのd90を有する。
【0037】
本発明に用いるための好適なラクトース原体は、例えば、DMW Internacional (Respitose GR−001, Respitose SV−001, Respitose SV−003); Meggle (Capsulac 60, Inhalac 70, Capsulac 60 INH); および、Borculo Domo (Lactohale 100−200, Lactohale 200−300, and Lactohale 100−300)から市販されている。
【0038】
ラクトース粒子とアクリジニウムとの重量比は、用いる吸入装置によって変わるが、典型的に、例えば5:1ないし200:1、例えば50:1ないし150:1、例えば60ないし70:1である。
【0039】
好ましい態様において、アクリジニウムは、乾燥粉末吸入器による投与に適する、1:50ないし1:150のアクリジニウム:ラクトースの重量比でラクトースと混合される臭化アクリジニウムの乾燥粉末製剤の形態で投与され、ここで、アクリジニウム粒子は、直径2ないし5μm、例えば、直径3μm未満の平均粒子サイズを有し、ラクトース粒子は、90−160μmのd10、170−270μmのd50、および290−400μmのd90を有する。
【0040】
吸入による肺への局所送達のための乾燥粉末組成物は、吸入器または吹き入れ器(insufflator)に用いるための、例えばゼラチン製のカプセルおよびカートリッジ、または例えばラミネートアルミ箔のようなブリスターで提供され得る。各カプセルまたはカートリッジは一般に、0.001〜50mg、より好ましくは0.01〜5mgの有効成分または当量のその薬学的に許容される塩を含有し得る。あるいは、有効成分は添加剤を用いずに提供され得る。
【0041】
製剤の包装は、単回用量もしくは複数回用量の送達のために適当であり得る。複数回用量の送達の場合には、製剤を予め定量するか、または使用時に定量することができる。故に、乾燥粉末吸入器は、3群:(a)単回用量、(b)複数回単位用量、および(c)複数回用量デバイスに分類される。
【0042】
アクリジニウムは、好ましくは、複数用量吸入器、より好ましくは以下の特許出願番号WO97/000703、WO03/000325およびWO2006/008027に記載のGenuair(登録商標)(以前は、Novolizer SD2FLとして公知)を用いて投与される。
【0043】
投与量は、例えば、個体、投与の方法および頻度、ならびに処置すべき状態の性質および重症度によって変わり得る。70kgの成人ヒトに対する1日投与量は、例えば、典型的に、吸入のための乾燥粉末形態の100−1000マイクログラム量の有効物質であり得る。
【実施例】
【0044】
実施例1
第IIa相無作為化−二重盲検−クロスオーバー臨床試験において、中程度ないし重度のCOPDを有する患者は、アクリジニウム400マイクログラムを1日2回(朝9時、および夜9時)およびプラセボを15日間投与され、処置期間の間に9−15日のウォッシュアウト期間を設けた。
【0045】
睡眠の質を、以下の基準に従い0−4スコアを用いて患者の投与記録に毎日記録して評価した。
【表1】
【0046】
アクリジニウム処置した患者は、未処置患者と比較して、顕著に改善された睡眠の質を示した。
【0047】
実施例2
第III相二重盲検−無作為化−プラセボ−対照臨床試験において、睡眠の質およびレスキュー薬の使用を、COPD患者において臭化アクリジニウムを1日2回投与して評価した。
【0048】
FEVl/FVC<70%のCOPD患者を、アクリジニウム200マイクログラム、400マイクログラム、またはプラセボに関して無作為化した(1:1:1)。睡眠の質を、電子記録および質問表を用いて毎日報告し、症状の頻度および重症度、および午前中の活動に対するその影響を評価した。
【0049】
12週目に、アクリジニウムは、プラセボと比較して、顕著に睡眠の質を改善した。
アクリジニウム200mcgおよび400mcgは、夜間の息切れおよび咳の重症度、覚醒頻度および再び睡眠することの困難性を顕著に軽減した。さらに、唾液の産生およびレスキュー薬の使用も減少した。
【0050】
アクリジニウムの両用量はまた、早朝の息切れの重症度および息切れおよび咳がもたらす午前中の活動への影響を顕著に低減させた。
【0051】
実施例3
第IIa相無作為化−二重盲検−ダブルダミー−クロスオーバー臨床試験において、中程度ないし重度のCOPDを有する患者は、アクリジニウム400μg BID(1日2回)、チオトロピウム 18μg QD(1日1回)およびプラセボを15日間投与され、処置期間の間に9−15日間のウォッシュアウト期間を設けた。
【0052】
睡眠障害の発生率は、患者の記録カードに毎日記録された。実施例1に記載の通り、スコアは、覚醒なしの0から、睡眠障害の重症度の増加による1−4の範囲であった。その後、ベースライン値に対する各処置により生じるスコアの変化を測定した。
【0053】
チオトロピウムで処置された患者の平均スコア(+/−SEM)は、−0.011(0.091)であり、それは、ベースライン値と実質的に同程度であり、プラセボ処置された患者で観察されるスコア0.061(0.088)と非常に似ていた。これらの2つのスコアに統計的有意差はない(p>0.05)。これに対して、アクリジニウムで処置された患者のスコアは、−0.123(0.089)であった。この場合、プラセボ処置とは統計的有意差がある(p<0.05)。
【0054】
これらの第IIa相臨床試験結果は、患者が、現在市販されている標準的抗コリン剤であるチオトロピウムで処置されるとき、アクリジニウムによってもたらされる睡眠の質の顕著な改善が観察されないことを実証する。故に、アクリジニウムのこの予期されない効果は、自明ではなく、発明の進歩性を支持する。