(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322579
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】オルトフェニルフェノールおよび銀の抗微生物組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 31/08 20060101AFI20180423BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20180423BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20180423BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20180423BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20180423BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20180423BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20180423BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20180423BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20180423BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
A01N31/08
A01N59/16 A
A01P3/00
A61K8/19
A61K8/34
A61L2/18
A61Q5/02
A61Q19/00
C02F1/50 510A
C02F1/50 510Z
C02F1/50 520A
C02F1/50 520B
C02F1/50 520F
C02F1/50 520K
C02F1/50 520L
C02F1/50 520P
C02F1/50 520Z
C02F1/50 531T
C02F1/50 532C
C02F1/50 532L
C02F1/50 540B
C02F1/50 540C
C02F1/50 540F
C09D5/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-544816(P2014-544816)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公表番号】特表2015-507609(P2015-507609A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】US2012066648
(87)【国際公開番号】WO2013082025
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月13日
【審判番号】不服2017-3414(P2017-3414/J1)
【審判請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/565,654
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティールタンカラ・ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジー・ロジャーソン
(72)【発明者】
【氏名】キラン・パリーク
【合議体】
【審判長】
瀬良 聡機
【審判官】
瀬下 浩一
【審判官】
齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−248124(JP,A)
【文献】
特開平11−189503(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073747(WO,A1)
【文献】
特表2007−537203(JP,A)
【文献】
特開2001−181118(JP,A)
【文献】
特開平6−122606(JP,A)
【文献】
特開2002−105338(JP,A)
【文献】
特表2003−529041(JP,A)
【文献】
特表2002−539895(JP,A)
【文献】
米国特許第2965487(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルトフェニルフェノールおよび銀の無機供給源を含む相乗作用を有する抗糸状菌組成物であって、前記オルトフェニルフェノールと銀の重量比(オルトフェニルフェノール:銀)が、1:0.0057〜1:0.1176、1:0.1765〜1:0.2353、または1:0.3529である、抗糸状菌組成物。
【請求項2】
前記銀が銀放出制御製剤の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも40重量パーセントの水を含む水性または含水系において糸状菌を制御するための方法であって、前記水性または含水系に請求項1または2に記載の組成物を加える工程を含む、方法。
【請求項4】
オルトフェニルフェノールおよび銀の無機供給源を含む相乗作用を有する抗酵母組成物であって、前記オルトフェニルフェノールと銀の重量比(オルトフェニルフェノール:銀)が、1:0.0267〜1:0.0533、1:0.1429〜1:0.2000、1:0.2353、または1:0.4706である、抗酵母組成物。
【請求項5】
前記銀が銀放出制御製剤の形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも40重量パーセントの水を含む水性または含水系において酵母を制御するための方法であって、前記水性または含水系に請求項4または5に記載の組成物を加える工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物組成物および微生物の制御のための使用方法に関する。該組成物は、オルトフェニルフェノールおよび銀を含む。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の合剤の使用は潜在市場を拡大し、使用濃度およびコストを低減し、廃棄物を減らすことができる。場合によっては、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物に対して活性が弱いため、または抗微生物作用が比較的遅いため、または高温もしくは高pHなどの特定の条件下で不安定であるために、高い使用濃度であっても微生物の効果的な制御を提供できない。微生物の全域的制御を提供するため、または特定の目的の使用環境においてより低い使用率で同レベルの微生物制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の合剤が使用される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、微生物の効果的な制御を提供するために、高い活性を有する抗微生物化合物の新規な合剤の必要がある。本発明が取り組む課題は、このような抗微生物化合物の合剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、オルトフェニルフェノールおよび銀を含む抗微生物組成物を提供する。
【0005】
本発明はまた、水性または含水系において微生物を制御するための方法も提供する。本方法は、前記系を有効量の上記抗微生物組成物で処理する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
上述のように、本発明は、抗微生物組成物および微生物の制御において該組成物を使用する方法を提供する。該組成物は、オルトフェニルフェノールおよび銀を含む。驚くことに、上記のようなオルトフェニルフェノールと銀の特定の重量比での組合せは、微生物制御に使用した場合に相乗作用を示すことが発見された。すなわち、このような単剤の組合せは、そうでない場合に特定の使用濃度でそれら個々の性能に基づいて予想されるものよりも向上した抗微生物特性をもたらす。見られた相乗作用は、許容できる抗微生物特性を達成するために使用される単剤の量の低減を可能とする。
【0007】
本明細書では、「微生物」という意味には、限定されるものではないが、細菌、真菌、藻類、およびウイルスを含む。「制御」および「制御する」という用語は、それらの意味の範囲内に、限定されるものではないが、微生物の成長もしくは増殖の阻害、微生物の殺生、殺菌、および/または微生物成長からの保護を含むと広義に解釈されるべきである。
【0008】
本発明の組成物は、オルトフェニルフェノールおよび銀を含む。オルトフェニルフェノールは、様々な商業ソースから入手可能であり、または既知の技術を用いて当業者により作製可能である。
【0009】
銀は、イオン形態または非イオン形態を含め、微生物の細胞成分と反応し得るいずれの形態であってもよい。銀は、好ましくは、無機または有機供給源から、または電解による銀イオンの形成によって得られる。例としては、限定されるものではないが、以下のもの:酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、ヒ酸銀、安息香酸銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩素酸銀、塩化銀、クロム酸銀、クエン酸銀水和物、シアン酸銀、シクロヘキサン酪酸銀、フッ化銀、ヘプタフルオロ酪酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、フッ化水素銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、メタバナジン酸銀、メタンスルホン酸銀、メテナミン銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀、ペンタフルオロプロピオン酸銀、過塩素酸銀水和物、過塩素酸銀一水和物、過塩素酸銀、リン酸銀、フタロシアニン銀、ピコリン酸銀、タンパク銀、タンパク銀複合物、p−トルエンスルホン酸銀、セレン化銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロホウ酸銀、チオシアン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、またはタングステン酸銀のうち1以上が含まれる。好ましい供給源は硝酸銀である。銀はまた、銀の放出を制御するように設計された製剤から得ることもできる。銀の放出制御製剤の例としては、有機ポリマー、ゼオライト、ガラス、リン酸カルシウム、二酸化チタンおよび酸化亜鉛に基づくものが含まれる。これらの製剤は、前述の種々の無機銀または有機銀の形態を使用することができる。銀の放出制御製剤の例としてはまた、それぞれ参照により本明細書の一部とされる米国特許第7,390,774号、同第7,927,379号に記載されているものも含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のオルトフェニルフェノールと銀の重量比は、1:0.5〜1:0.0004の間、あるいは1:0.5〜1:0.005の間、あるいは1:0.2〜1:0.0004の間、あるいはまた1:035〜1:004の間である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物により制御される微生物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などのグラム陽性菌である。いくつかの実施形態では、微生物は、酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である。いくつかの実施形態では、微生物は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などの糸状菌である。いくつかの実施形態では、微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などのグラム陰性菌である。
【0012】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、界面活性剤、安定剤、離乳化剤、ポリマー、および/または付加的殺生物剤を含む、付加的成分を含有してもよい。
【0013】
本発明の組成物は、水性または含水系などの様々な媒体中で微生物を制御するために有用である。いくつかの実施形態では、水性または含水系は、少なくとも40重量パーセント、あるいは少なくとも60重量パーセント、あるいはまた少なくとも80重量パーセントの水を含む。本発明の組成物が微生物を制御するためにともに使用され得る水性または含水系の限定されない例としては、オイルおよび天然ガス適用、冷却水、空気洗浄器、熱交換器、ボイラー水、パルプ製紙工場用水、他の工業用水、バラスト水、廃水、金属加工油、ラテックス、塗料、コーティング剤、接着剤、インク、テープジョイントコンパウンド、顔料、水性スラリー、水泳プール、パーソナルケア用品(シャンプーおよびローションなど)、家庭用品、工業・施設用品(クリーナー、ポリッシュ、洗剤など)、膜および濾過系、織物、皮および皮製造系、またはそれらとともに使用される系が含まれる。
【0014】
当業者ならば、過度な実験を行うことなく、任意の特定の適用に使用されるべき組成物の濃度を容易に決定することができる。例として、好適な有効濃度(オルトフェニルフェノールおよび銀の両方の合計)は一般に殺生物剤を含む水性または含水系の総重量に対して1〜2500ppmの間、あるいは5〜1000ppmの間、あるいは10〜500ppmの間、あるいはまた50〜300ppmの間である。
【0015】
本発明の組成物の成分は水性または含水系に別個に添加することもできるし、または添加前に予め混合することもできる。当業者ならば、適当な添加方法を容易に決定することができる。組成物は前記系において、限定されるものではないが、界面活性剤、イオン性/非イオン性ポリマーおよびスケール・腐食防止剤、脱酸素剤、ならびに/または付加的殺生物剤などの他の添加剤と併用することができる。
【0016】
特に断りのない限り、数値範囲、例えば、「2〜10」という場合には、範囲を定義している数値(例えば、2および10)を含む。
【0017】
特に断りのない限り、比、パーセンテージ、部などは重量による。
【0018】
以下の実施例は本発明の例示であって、その範囲を限定することを意図しない。特に断りのない限り、本明細書で使用される比、パーセンテージ、部などは重量による。
【実施例】
【0019】
オルトフェニルフェノールおよび銀をその合剤の相乗指数(S.I.)を決定することにより相乗作用に関して評価する。相乗指数は、2つの抗微生物化合物(AおよびB)単剤と合剤の場合の最小阻害濃度(MIC)に基づいて計算される。供試生物はグラム陰性菌(緑膿菌)、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)、酵母(カンジダ・アルビカンス)および糸状菌(アスペルギルス・ニガー)である。細菌の場合の接触時間は24時間および48時間、酵母は48時間および72時間、糸状菌は3日間および7日間である。試験は96ウェルマイクロタイタープレートで行う。試験の詳細を表1〜3に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
MIC合剤の相乗作用の実証のための試験結果を以下の表4〜6に示す。各表は、インキュベーション時間で試験した微生物に対する2成分の合剤の結果;化合物A単剤(CA)、成分B単剤(CB)、ならびに混合物(Ca)および(Cb)に関してMICにより測定されるエンドポイント活性(ppm);SI計算値;および供試した各合剤の相乗作用比の範囲を示す。SIは次のように計算する。
Ca/CA+Cb/CB=相乗指数(「SI」)
式中、
CA=エンドポイントをもたらした単剤で作用する化合物Aの濃度(ppm)(化合物AのMIC)。
Ca=エンドポイントをもたらした、混合物中の化合物Aの濃度(ppm)。
CB=エンドポイントをもたらした、単剤で作用する化合物Bの濃度(ppm)(化合物BのMIC)。
Cb=エンドポイントをもたらした、混合物中の化合物Bの濃度(ppm)。
【0024】
Ca/CAとCb/CBの和が1より大きい場合、拮抗作用が示される。この和が1に等しい場合には相加作用が示され、1より小さい場合には相乗作用が示される。
【0025】
【表4-1】
【表4-2】
【0026】
表4のデータは、OPPと銀の間に1:0.0012〜1:4706の比の予期されない相乗作用的相互作用が存在することを示す。
【0027】
【表5-1】
【表5-2】
【0028】
表5のデータは、OPPと銀の間に1:0.0004〜1:0.2353の比の予期されない相乗作用的相互作用が存在することを示す。
【0029】
【表6-1】
【表6-2】
【0030】
表6のデータは、OPPと銀の間に1:0.0004〜1:0.3529の比の予期されない相乗作用的相互作用が存在することを示す。