(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記案内制御手段は、複数の前記発生地点の密集度に基づいて、当該複数の前記発生地点における車両の停止状態が一時停止であるか否かを判定し、当該停止状態に対応する前記注意事象の発生原因を示す案内を行わせる、
請求項1に記載の注意案内システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)注意案内システムの構成:
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
(1−2)注意案内システムの構成:
(2)注意事象情報送信処理:
(3)注意案内処理:
(4)他の実施形態:
【0011】
(1)注意案内システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる注意案内システムの構成を示すブロック図である。本実施形態における注意案内システム10は車両に備えられたナビゲーション端末100と協働する。
【0012】
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
ナビゲーション端末100は道路を走行する複数の車両のそれぞれに搭載されている。ナビゲーション端末100は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記録媒体300とを備える。制御部200は、記録媒体300やROMに記憶されたプログラムを実行する。本実施形態において制御部200は、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行する。
【0013】
車両は、通信部220とGPS受信部410と車速センサ420とジャイロセンサ430とECU(Electronic Control Unit)440とユーザI/F部450とを備えている。通信部220は、無線通信を行うための回路によって構成され、制御部200は通信部220を制御して注意案内システム10と通信を行う。GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を制御部200に出力する。車速センサ420は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部200は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ430は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。
【0014】
記録媒体300には、地図情報300aが記録されている。地図情報300aには車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間を接続するの道路区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間データ、道路区間についての各種情報を示すリンクデータ等が含まれている。また、リンクデータには、道路区間上に設けられた各種地物の位置を示す地物情報が対応づけられている。各種地物とは、一時停止線、信号機、踏切等である。
【0015】
制御部200は、車速センサ420やジャイロセンサ430やGPS受信部410等の出力信号に基づいて車両の走行軌跡を取得するとともに、地図情報300aのノードデータやリンクデータに基づいて道路区間の形状を取得する。そして、制御部200は、車両の走行軌跡とマッチする形状を有する道路区間を車両が走行している走行道路区間として特定し、当該走行道路区間上にて車両の現在位置を特定する。
【0016】
ECU440は、車両を制御するための回路である。本実施形態のECU440は、ブレーキ制御回路からブレーキペダルの踏み込み量を示す信号を取得するとともに、当該ブレーキ制御回路からアンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号を取得する。なお、アンチロックブレーキシステムは、進行方向においてタイヤがスリップ(ロック)していることをトリガーとして作動する。ECU440は、ブレーキペダルの踏み込み量を示す信号とアンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号とを制御部200に出力する。
【0017】
ユーザI/F部450は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。ナビゲーションプログラム210の機能により制御部200は、車両の現在位置および現在位置周辺の地図をユーザI/F部450にて表示する。すなわち、制御部200は、車両の現在位置を取得し、地図情報300aに基づいて現在位置周辺の地図を示す画像を生成してユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部は、現在位置を含む地図を表示する。
【0018】
ナビゲーションプログラム210は、注意事象情報送信部210aと注意案内部210bとを含む。
注意事象情報送信部210aは、注意事象が車両にて生じた地点である発生地点を示す注意事象情報を注意案内システム10に送信する機能を制御部200に実現させるモジュールである。本実施形態において、注意事象とは、急減速が生じることである。具体的に、制御部200は、アンチロックブレーキシステムが作動した場合、および、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上となった場合に注意事象としての急減速が生じたと判定する。
【0019】
注意事象情報送信部210aの機能により制御部200は、車両にて注意事象が生じた道路上の発生地点を示す注意事象情報を注意案内システム10に送信する。すなわち、注意事象情報送信部210aの機能により制御部200は、車両にて急減速が生じた時刻において特定されている現在位置を発生地点として取得し、当該発生地点を示す注意事象情報を注意案内システム10に送信する。これにより、注意事象情報が通信部220を介して注意案内システム10に送信されることとなる。図示しないが、多数の車両から注意案内システム10に対して注意事象情報が送信され、注意案内システム10は注意事象情報を収集できる。
【0020】
注意案内部210bの機能により制御部200は、注意案内システム10から送信された案内情報に基づいて案内を行う。注意案内部210bの機能により制御部200は、注意案内システム10に対して案内情報の取得要求を送信し、当該取得要求に対する応答として案内情報を受信する。この取得要求においては、車両が走行している走行道路区間と現在位置とを示す情報が添付される。注意案内システム10は、取得要求に対する応答として、走行道路区間上における現在位置の前方についての案内情報をナビゲーション端末100に送信する。注意案内部210bの機能により制御部200は、案内情報に基づいてユーザI/F部450のスピーカーにて案内のメッセージを音声出力する。
【0021】
(1−2)注意案内システムの構成:
次に、注意案内システム10について説明する。注意案内システム10は、車両にて発生し得る注意事象についての案内を車両にて行うために構成される。そのために、注意案内システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30と通信部22とを備えている。制御部20は、記録媒体30やROMに記録されたプログラムを実行する。通信部22は、無線通信を行うための回路によって構成され、制御部20は通信部22を制御して車両と通信を行う。制御部20は、注意案内プログラム21を実行する。
【0022】
記録媒体30には、地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、ナビゲーション端末100の地図情報300aと同様である。また、記録媒体30には、注意事象情報DB(データベース)30bが記録されている。注意事象情報DB30bは、注意事象としての急減速が生じた地点である発生地点を示す注意事象情報を蓄積したデータである。注意事象情報DB30bには、複数の車両から送信された注意事象情報が蓄積されている。
【0023】
注意案内プログラム21は、注意事象情報取得部21aと案内制御部21bと案内情報送信部21cとを含む。
注意事象情報取得部21aは、車両にて注意事象としての急減速が生じた道路上の発生地点を示す注意事象情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、注意事象情報取得部21aの機能により制御部20は、注意事象情報DB30bに蓄積されている注意事象情報を取得する。そして、制御部20は、案内情報の取得要求を送信した車両(以下、要求車両)が走行している走行道路区間上における現在位置の前方の区間である前方区間を取得し、当該前方区間内の位置を発生地点としている注意事象情報を抽出する。前方区間とは、走行道路区間のうち、現在位置から所定距離(例えば500m)前方の位置までの区間である。なお、現在位置から所定距離前方の位置よりも手前に走行道路区間の終点の交差点が存在する場合、制御部20は、走行予定経路または現在位置からの道なりの経路上の前方において、現在位置から所定距離以内となる区間を前方区間として取得してもよい。走行予定経路とは、公知の経路探索手法によって探索された目的地までの経路である。道なりの経路とは、走行道路区間の終点の交差点における進行方向の変化量が閾値以下となる経路であってもよいし、走行道路区間と同一路線または同一規模(レーン数、幅員等)の道路区間で構成される経路であってもよい。
【0024】
案内制御部21bは、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点についての案内内容を切り替える機能を制御部20に実現させるモジュールである。まず、案内制御部21bの機能により制御部20は、要求車両の前方区間内に存在する発生地点の位置の標準偏差を算出し、当該標準偏差の逆数を密集度として取得する。発生地点の位置の標準偏差とは、要求車両の現在位置から各発生地点までの距離(直線距離、道路区間上の距離等)の標準偏差であってもよい。なお、発生地点の密集度は、発生地点の位置のばらつきが小さいほど大きくなる指標であればよく、発生地点のばらつきの単調減少関数によって得られればよい。また、発生地点の位置のばらつきは、発生地点の位置の分散やレンジ(現在位置から各発生地点までの距離の最小値〜最大値の幅)であってもよい。
【0025】
案内制御部21bの機能により制御部20は、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点において生じた注意事象の発生原因を示す案内を行う。具体的に、案内制御部21bの機能により制御部20は、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点における車両の停止状態が一時停止であるか否かを判定し、当該停止状態に対応する注意事象の発生原因を示す案内を行う。まず、案内制御部21bの機能により制御部20は複数の発生地点の密集度が所定の判定値以上である場合に車両の停止状態が一時停止であると判定し、複数の発生地点の密集度が所定の判定値未満である場合に車両の停止状態が一時停止でないと判定する。車両の停止状態が一時停止でないとは、一時停止する場合よりも長い期間にわたって車両が停止することを意味する。判定値は、一記録媒体30に記録されている。
【0026】
ここで、停止状態が一時停止でないことに対応する注意事象の発生原因とは、停止状態が一時停止とならない地点にて生じる急減速の発生原因である。停止状態が一時停止でないことに対応する急減速の発生原因として、信号待ち車両や渋滞車両が挙げられる。例えば、注意事象としての急減速の発生原因として信号待ち車両が取得された場合、制御部20は、急減速の発生原因を示す案内のメッセージ『信号待ちの車両に注意して下さい』を、要求車両のユーザI/F部450にて音声出力させるための案内情報を生成する。
【0027】
図2A〜2Cは、案内情報の取得要求を行った要求車両Gの前方区間に信号機Sが存在する交差点C1とわき道(右側)が接続する交差点C2とが存在する道路の模式図である。わき道とは、信号機Sが存在しない交差点C2にて前方区間に接続する道路区間を意味する。
図2Aに示すように、交差点C1の信号機Sが赤現示になった直後においては、信号待ち車両Wの車列が短くなる。従って、信号待ち車両Wに気付くのが遅れた事象車両Hにて急減速が生じる発生地点は、信号機Sに近い地点となる。一方、
図2Bに示すように、交差点C1の信号機Sが赤現示になってからしばらく経過した後においては、信号待ち車両Wの車列が長くなる。従って、信号待ち車両Wに気付くのが遅れた事象車両Hにて急減速が生じる発生地点は、信号機Sにから遠い地点となる。このように、信号機Sが存在する交差点C1では、信号待ち車両Wの停止時間が長くなり得るため、信号待ち車両Wに気付くのが遅れた事象車両Hにて急減速が生じる発生地点の密集度は小さくなる。
【0028】
一方、停止状態が一時停止であることに対応する注意事象の発生原因とは、停止状態が一時停止となる地点にて生じる急減速の発生原因である。停止状態が一時停止であることに対応する急減速の発生原因として、飛び出し車両や右左折車両や一時停止車両が挙げられる。右左折車両とは、要求車両Gの前方区間にて要求車両Gが直進できないT字交差点が存在する場合に、当該T字交差点における右左折に備えて減速する車両である。一時停止車両とは、要求車両Gの前方区間にて一時停止線や踏切等が存在する場合に、当該停止地点にて停止する車両である。例えば、注意事象としての急減速の発生原因として飛び出し車両が取得された場合、制御部20は、急減速の発生原因を示す案内のメッセージ『わき道からの飛び出しに注意して下さい』を、要求車両GのユーザI/F部450にて音声出力させるための案内情報を生成する。
【0029】
図2Cに示すように、交差点C2にてわき道から飛び出し車両Dが飛び出すと、当該交差点C1に接近している事象車両Hにて急減速が生じることとなる。飛び出し車両Dが出現する位置は交差点C2に限られるため、事象車両Hにて急減速が生じる発生地点のばらつきが小さくなる。事象車両Hは一旦減速するものの、走行を再開できるため、事象車両Hの手前に形成される後続車両の車列が長くなる可能性は小さい。従って、飛び出し車両Dを原因として停止した車両に気付くのが遅れた車両が急減速したとしても、当該急減速の発生地点は交差点C2に近い位置となる可能性が大きく、事象車両Hにて急減速が生じる発生地点の密集度は大きくなる。
【0030】
なお、車両の停止状態が一時停止であるか否かを判定する判定値は、停止状態が一時停止となる発生原因(飛び出し車両Dや右左折車両や一時停止車両)における発生地点の密集度の分布と、停止状態が一時停止とならない発生原因(信号待ち車両Wや渋滞車両)における発生地点の密集度の分布とに基づいて設定できる。例えば、双方の分布(平均値や中央値や最頻値等)の中間の密集度を判定値として設定してもよい。
【0031】
案内情報送信部21cは、要求車両Gに搭載されたナビゲーション端末100に案内情報を送信する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、案内情報の取得要求に応じて案内情報を生成すると、当該案内情報をナビゲーション端末100に返信する。これにより、要求車両GのユーザI/F部450にて案内のメッセージを出力することができる。なお、制御部20は、案内情報において発生地点の位置(平均位置)を示す情報を添付してもよく、当該発生地点の位置の所定距離手前の地点にて案内のメッセージの出力を開始させてもよい。
【0032】
以上説明した本実施形態において、注意事象の発生原因に応じて、複数の発生地点の密集度が異なると考えることができる。例えば、複数の発生地点の密集度が大きい場合、注意事象の発生原因が存在する位置のばらつきが小さいと考えることができる。すなわち、複数の発生地点の密集度が大きい場合、発生原因が存在する位置のばらつきが小さくなりやすい発生原因によって注意事象が生じたと考えることができる。逆に、複数の発生地点の密集度が小さい場合、発生原因が存在する位置のばらつきが大きくなりやすい発生原因によって注意事象が生じたと考えることができる。従って、複数の発生地点の密集度に基づいて案内内容を切り替えることにより、注意事象の発生原因に適した案内をすることができる。
【0033】
また、注意事象の発生原因を示す案内を行わせることにより、注意事象の発生原因をユーザが認識することができる。ここで、停止状態が一時停止でない場合、停止時間の終了を待つ車両の車列が長くなり得るため、当該車列の最後尾で生じる注意事象の発生地点のばらつきが大きくなる。すなわち、密集度が小さい発生地点であるほど、停止状態が一時停止でない地点が注意事象の発生原因であると特定できる。一方、停止状態が一時停止である場合、停止時間の終了を待つ車両の車列が長くなる可能性が小さいため、当該車列の最後尾で生じる注意事象の発生地点は車両が停止する地点の近くで密集することとなる。すなわち、密集度が大きい発生地点であるほど、停止状態が一時停止である地点が注意事象の発生原因であると特定できる。
【0034】
(2)注意事象情報送信処理:
次に、車両にて実行される注意事象情報送信処理について説明する。
図3Aは、注意事象情報送信処理のフローチャートである。注意事象情報送信処理は、所定の時間周期または走行距離周期ごとに実行される処理である。まず、ナビゲーション端末100の制御部200は、車両情報を取得する(ステップS100)。車両情報とは、車両にて注意事象としての急減速が生じているか否かを判定するための情報である。具体的に、制御部20は、車両情報として、ブレーキペダルの踏み込み量を示す信号と、アンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号とを取得する。
【0035】
次に、注意事象情報送信部210aの機能により制御部200は、車両にて注意事象としての急減速が生じているか否かを判定する(ステップS110)。急減速が生じているとは、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上であることと、アンチロックブレーキシステムが作動したこととのいずれかに該当することを意味する。
【0036】
車両にて急減速が生じていると判定しなかった場合(ステップS110:N)、制御部200は、注意事象情報送信処理の最初(ステップS100)にリターンする。すなわち、次の周期にて車両情報が取得されるまで待機する。 一方、車両にて急減速が生じていると判定した場合(ステップS110:Y)、制御部200は、急減速の発生地点を取得する(ステップS120)。具体的に、制御部200は、車両にて注意事象としての急減速が生じていると判定した時刻における現在位置を発生地点として取得する。
【0037】
次に、注意事象情報送信部210aの機能により制御部200は、注意事象情報を生成する(ステップS130)。この注意事象情報は、少なくとも発生地点を示す。次に、注意事象情報送信部210aの機能により制御部200は、注意事象情報を注意案内システム10に送信する(ステップS140)。以上説明した注意事象情報送信処理が道路上を走行する各車両にて実行されることにより、注意案内システム10は注意事象情報を収集することができる。
【0038】
(3)注意案内処理:
次に、注意案内システム10にて実行される注意案内処理について説明する。
図3Bは、注意事象情報送信処理のフローチャートである。注意案内処理は、要求車両Gのナビゲーション端末100から案内情報の取得要求を受信した場合に実行される処理である。この取得要求においては、要求車両Gが走行している走行道路区間と現在位置とを示す情報が添付される。注意案内システム10は、走行道路区間上における現在位置の前方についての案内情報を取得要求への応答として送信するために注意案内処理を実行する。
【0039】
まず、注意案内システム10の制御部20は、案内情報の取得要求を受信する(ステップS200)。次に、注意事象情報取得部21aの機能により制御部20は、注意事象情報DB30bに蓄積されている注意事象情報を抽出する(ステップS210)。具体的に、制御部20は、要求車両Gが走行している走行道路区間上における現在位置の前方の区間である前方区間を取得し、当該前方区間内の位置を発生地点としている注意事象情報を抽出する。前方区間とは、走行道路区間のうち、現在位置から所定距離(例えば500m)前方の位置までの区間である。
【0040】
次に、案内制御部21bの機能により制御部20は、注意事象情報が1個でも抽出できたか否かを判定する(ステップS220)。注意事象情報が1個でも抽出できたと判定しなかった場合(ステップS220:N)、案内制御部21bの機能により制御部20は、案内を行わないことを示す情報を要求車両Gのナビゲーション端末100に送信し(ステップS230)、注意案内処理を終了する。すなわち、要求車両Gの前方区間にて注意事象としての急減速が1度も発生したことがないとして、当該要求車両Gにて急減速に対する案内を行わせない。
【0041】
一方、注意事象情報が1個でも抽出できたと判定した場合(ステップS220:Y)、案内制御部21bの機能により制御部20は、地図情報30aを参照することにより、要求車両Gの前方区間についての情報を取得する(ステップS240)。具体的に、制御部20は、要求車両Gの前方区間の道路に設けられた交差点を示すノードデータや各種地物を示す地物情報や当該前方区間の道路の形状を示す形状補間データを取得する。すなわち、制御部20は、急減速の発生原因を特定するための情報を地図情報30aから取得する。
【0042】
そして、案内制御部21bの機能により制御部20は、地図情報30aに基づいて注意事象としての急減速の発生原因を特定する(ステップS250)。
図2A〜2Cに示すように、制御部20は、要求車両Gの前方区間に信号機Sが設けられた交差点C1が存在する場合、急減速の発生原因が信号待ち車両Wであると特定する。また、制御部20は、要求車両Gの前方区間に信号機Sが設けられない交差点C2(わき道が接続する交差点)が存在する場合、発生原因が飛び出し車両Dであると特定する。また、制御部20は、前方区間に一時停止線や踏切等の停止地点が存在する場合に一時停止車両が発生原因であると特定すればよいし、前方区間にT字路が存在する場合に右左折車両が発生原因であると特定すればよい。なお、制御部20は、単一の発生原因のみを特定する場合もあるし、複数の発生原因のみを特定する場合もある。
図2A〜2Cの場合、信号待ち車両Wと飛び出し車両Dとの双方が発生原因として特定されることとなる。
【0043】
次に、案内制御部21bの機能により制御部20は、ステップS250にて特定された発生原因が複数であるか否かを判定する(ステップS260)。ステップS250にて特定された発生原因が複数であると判定しなかった場合(ステップS260:N)、案内制御部21bの機能により制御部20は、単一の発生原因を確定する(ステップS270)。すなわち、地図情報30aに基づいて特定した発生原因が単一である場合には、当該単一の発生原因をそのまま確定する。
【0044】
一方、ステップS250にて特定された発生原因が複数であると判定した場合(ステップS260:Y)、案内制御部21bの機能により制御部20は、要求車両Gの前方区間における急減速の発生地点の密集度を取得する(ステップS280)。制御部20は、ステップS210にて抽出した注意事象情報が示す発生地点、すなわち要求車両Gの前方区間内の発生地点の密集度を取得する。具体的に、制御部20は、要求車両Gの前方区間内に存在する発生地点の位置の標準偏差を算出し、当該標準偏差の逆数を密集度として取得する。なお、要求車両Gの前方区間内の発生地点が1個のみである場合、制御部20は、密集度が取得できないと判定する。
【0045】
次に、案内制御部21bの機能により制御部20は、発生地点の密集度に基づいて注意事象としての急減速の発生原因を特定する(ステップS290)。まず、制御部20は、発生地点の密集度が記録媒体30に記録されている判定値以上であるか否かを判定する。複数の発生地点の密集度が判定値以上である場合、制御部20は、車両の停止状態が一時停止であると判定する。一方、複数の発生地点の密集度が判定値未満である場合、制御部20は、車両の停止状態が一時停止でないと判定する。
【0046】
車両の停止状態が一時停止であると判定した場合、制御部20は、車両の停止状態が一時停止となる地点にて発生する急減速の発生原因を特定する。すなわち、制御部20は、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因から、車両の停止状態が一時停止とならない地点に対応する発生原因を除外する。上述したように、車両の停止状態が一時停止とならない地点にて発生する急減速の発生原因として、信号待ち車両Wと渋滞車両とが挙げられる。従って、車両の停止状態が一時停止であると判定した場合、制御部20は、信号待ち車両Wと渋滞車両とを、急減速の発生原因から除外する。
図2Cの場合、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因は、信号待ち車両Wと飛び出し車両Dとなる。しかし、複数の発生地点の密集度が判定値以上となるため、車両の停止状態が一時停止であると判定され、交差点C1における信号待ち車両Wが急減速の発生原因から除外されることとなる。従って、
図2Cの場合、制御部20は、残りの飛び出し車両Dを急減速の発生原因として特定することとなる。
【0047】
一方、車両の停止状態が一時停止でないと判定した場合、制御部20は、車両の停止状態が一時停止とならない地点にて発生する急減速の発生原因を特定する。すなわち、制御部20は、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因から、車両の停止状態が一時停止となる地点に対応する発生原因を除外する。上述したように、車両の停止状態が一時停止となる地点にて発生する急減速の発生原因として、飛び出し車両Dと右左折車両と一時停止車両とが挙げられる。従って、車両の停止状態が一時停止でないと判定した場合、制御部20は、飛び出し車両Dと右左折車両と一時停止車両とを、急減速の発生原因から除外する。
【0048】
図2A,2Bの場合、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因は、信号待ち車両Wと飛び出し車両Dとなる。しかし、複数の発生地点の密集度が判定値未満となるため、車両の停止状態が一時停止でないと判定され、交差点C2における飛び出し車両Dが急減速の発生原因から除外されることとなる。従って、
図2A,2Bの場合、制御部20は、残りの信号待ち車両Wを急減速の発生原因として特定することとなる。一方、
図2Cの場合も、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因は、信号待ち車両Wと飛び出し車両Dとなる。しかし、複数の発生地点の密集度が判定値以上となるため、車両の停止状態が一時停止であると判定され、交差点C1における信号待ち車両Wが急減速の発生原因から除外されることとなる。従って、
図2Cの場合、制御部20は、残りの飛び出し車両Dを急減速の発生原因として特定することとなる。
【0049】
図2A〜2Cでは、急減速の発生原因として単一の発生原因が特定される様子を示したが、必ずしも急減速の発生原因として単一の発生原因が特定されなくてもよく、ステップS290にて除外されずに残った複数の発生原因が残った場合には、当該残った複数の発生原因のそれぞれを急減速の発生原因として特定してもよい。なお、要求車両Gの前方区間内の発生地点が1個のみである場合、制御部20は、密集度が取得できないと判定する。この場合、制御部20は、ステップS250にて地図情報30aに基づいて特定された発生原因のすべてを急減速の発生原因として特定してもよい。
【0050】
ステップS270またはステップS290にて、要求車両Gの前方区間における急減速の発生原因を特定すると、案内制御部21bの機能により制御部20は、急減速の発生原因を示す案内情報を要求車両Gに送信する(ステップS300)。すなわち、制御部20は、急減速の発生原因を示すメッセージを、要求車両GのユーザI/F部450にて音声出力させるための案内情報を生成して、要求車両Gに送信する。これにより、要求車両Gのナビゲーション端末100は、案内情報に基づいてユーザI/F部450にて案内のメッセージを出力することができる。
【0051】
(4)他の実施形態:
前記実施形態において、案内制御部21bの機能により制御部20は、必ずしも注意事象の発生原因を示す案内を行わなくてもよい。すなわち、制御部20は、発生地点の密集度に基づいて特定した注意事象の発生原因に応じて案内内容を切り替えればよい。例えば、制御部20は、発生地点の密集度に基づいて特定した注意事象の発生原因に応じて、注意事象を防止するための運転操作の緊急性を導出し、当該緊急性を示す案内を行ってもよい。むろん、制御部20は、注意事象の発生原因に応じて案内のメッセージの長さや音量や発話タイミング等を切り替えてもよい。また、制御部20は、案内をディスプレイに表示させる場合に、注意事象の発生原因に応じて案内の色やサイズやフォントや透明度を切り替えてもよい。
【0052】
さらに、案内制御部21bの機能により制御部20は、必ずしも発生地点の密集度に基づいて発生地点における車両の停止状態を判定しなくてもよく、発生地点の密集度に基づいて注意事象の発生原因を直接取得してもよい。例えば、複数の発生地点の密集度と注意事象の発生原因との対応関係を予め調査しておき、当該対応関係を規定したテーブルを用意しておいてもよい。このテーブルを参照することにより、制御部20は、複数の発生地点の密集度に対応する注意事象の発生原因を直接特定できる。
【0053】
なお、前記実施形態では、案内情報の取得要求があった場合に注意事象の発生原因を特定したが、注意事象情報が取得されるごとに、発生地点の密集度に基づいて注意事象の発生原因を特定し、当該発生原因を注意事象情報DB30bに記録しておいてもよい。そして、制御部20は、案内情報の取得要求があった段階で、要求車両Gの前方区間の発生地点に対応付けられた発生原因を注意事象情報DB30bから取得し、当該発生原因に応じた案内情報を生成してもよい。さらに、注意事象情報DB30bは、ナビゲーション端末100の記録媒体300に記録されてもよい。そして、ナビゲーション端末100は、記録媒体300に記録された注意事象情報DB30bに基づいて、車両の前方区間に存在する発生地点の密集度を取得し、当該密集度に応じて案内の内容を切り替えてもよい。
【0054】
また、注意事象は必ずしも急減速でなくてもよく、例えば急操舵や急加速等の運転操作であってもよい。他の車両(信号待ち車両W,飛び出し車両D)を避けるための急操舵を注意事象として捉えた場合、複数の発生地点の密集度に基づいて、急減速と同様の注意事象の発生原因を特定することができる。前記実施形態では、地図情報30aと複数の発生地点の密集度とに基づいて注意事象の発生原因を特定したが、制御部20は、少なくとも複数の発生地点の密集度とに基づいて注意事象の発生原因を特定すればよい。
【0055】
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。注意事象情報取得手段は、車両にて注意事象が生じた道路上の発生地点を示す注意事象情報を取得すればよく、車両から注意事象情報を受信してもよいし、注意事象情報が蓄積された記録媒体から注意事象情報を取得してもよい。また、注意事象情報取得手段は、複数の発生地点の密集度が取得できるように、複数の注意事象情報を取得すればよい。また、注意事象情報は、少なくとも注意事象ごとに発生地点を示す情報であればよく、発生地点以外の情報(発生時刻、注意事象の属性、注意事象の程度、車両の識別情報等)を含んでもよい。注意事象とは、車両に関して生じ得る事象であり、所定の車両の操作状態であってもよいし、所定の車両の運動状態であってもよいし、車両が走行する領域の環境(天候、渋滞等)であってもよい。
【0056】
案内制御手段は、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点についての案内内容を切り替えればよく、複数の発生地点の密集度ごとに異なる案内を行うための案内情報を生成してもよい。これにより、案内情報を受信した車両にて注意事象についての案内を行うことができる。むろん、必ずしも車両にて注意事象についての案内が行われなくてもよく、道路等に備えられた各種情報表示装置において注意事象についての案内が行われなくてもよい。案内制御手段は、所定区間を定義するとともに、当該所定区間に存在する複数の発生地点の個数を密集度として取得してもよい。所定区間とは、密集度を評価する対象の区間である。案内制御手段は、所定区間に存在する複数の発生地点の標準偏差や分散等が大きくなるほど小さくなる指標値を密集度として取得してもよい。所定区間は、長さが所定距離の区間であってもよいし、リンク(例えば最も近い交差点同士の間の道路区間)であってもよい。
【0057】
注意案内システムは、車両に搭載された車載端末と通信可能に接続されたサーバであってもよい。すなわち、注意事象情報取得手段はサーバに備えられ、当該注意事象情報取得手段は、注意事象が生じた道路上の発生地点を示す注意事象情報を車載端末から取得してもよい。また、案内制御手段はサーバに備えられ、当該案内制御手段は複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点についての案内内容を切り替える案内情報を生成し、当該案内情報を車載端末に送信してもよい。むろん、注意事象情報取得手段と案内制御手段とが車載端末に備えられてもよいし、注意事象情報取得手段と案内制御手段とが車載端末とサーバとに分散して備えられてもよい。
【0058】
また、案内制御手段は、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点において生じた注意事象の発生原因を示す案内を行わせてもよい。これにより、注意事象の発生原因をユーザが認識することができる。なお、案内制御手段は、注意事象の発生原因を示す案内とともに、発生原因に応じた注意事象の防止策を案内させてもよい。
【0059】
さらに、案内制御手段は、複数の発生地点の密集度に基づいて、当該複数の発生地点における車両の停止状態が一時停止であるか否かを判定し、当該停止状態に対応する注意事象の発生原因を示す案内を行わせてよい。ここで、停止状態が一時停止でない場合、停止時間の終了を待つ車両の車列が長くなり得るため、当該車列の最後尾で生じる注意事象の発生地点のばらつきが大きくなる。すなわち、密集度が小さい発生地点であるほど、停止状態が一時停止でない地点が注意事象の発生原因であると特定できる。一方、停止状態が一時停止である場合、停止時間の終了を待つ車両の車列が長くなる可能性が小さいため、当該車列の最後尾で生じる注意事象の発生地点は車両が停止する地点の近くで密集することとなる。すなわち、密集度が大きい発生地点であるほど、停止状態が一時停止である地点が注意事象の発生原因であると特定できる。
【0060】
さらに、本発明のように、注意事象について案内を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステム、走行履歴情報の管理システムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。