特許第6323089号(P6323089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323089
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】レベル調整方法およびレベル調整装置
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/30 20060101AFI20180507BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   H03G3/30 C
   H04R3/00 310
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-51426(P2014-51426)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-177290(P2015-177290A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100105500
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】五藤 三貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−072561(JP,A)
【文献】 特開2011−234076(JP,A)
【文献】 特開平10−284964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 3/30
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のレベルを調整して出力するレベル調整装置であって、
前記入力信号のレベルを、相対的に速い追随速度で検出し、第1レベル信号を出力する第1レベル検出部と、
前記入力信号のレベルを、前記第1レベル検出部より遅い追随速度で検出し、第2レベル信号を出力する第2レベル検出部と、
前記第1レベル信号の前記第2レベル信号に対するレベル比が、1以上の所定レベル比を超える場合、または、以上の場合は、前記第1レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、前記レベル比が前記所定レベル比以下の場合、または、未満の場合は、前記第2レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、該決定したゲイン値に応じた制御信号を出力する制御部と、
該制御部から出力される前記制御信号に基づいて、前記入力信号のレベルを調整する調整部と、
を備え、前記第1レベル検出部および前記第2レベル検出部におけるアタックレートがリリースレートより速く設定されていることを特徴とするレベル調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、値が時間的になめらかに変化するよう、前記制御信号を平滑化して前記調整部に出力することを特徴とする請求項1記載のレベル調整装置。
【請求項3】
さらに、前記入力信号から聴感上の音量に影響が大きい帯域の成分を抽出するフィルタ手段を備えており、
前記第1レベル検出部及び前記第2レベル検出部は、それぞれ、前記フィルタ手段でフィルタ処理された信号のレベルを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のレベル調整装置。
【請求項4】
さらに、前記制御部は、前記入力信号が所定レベル未満となったことを検出して、前記調整部にミュートを指示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のレベル調整装置。
【請求項5】
入力信号のレベルを調整して出力するレベル調整方法であって、
前記入力信号のレベルを、相対的に速い追随速度で検出し、第1レベル信号を出力する第1レベル信号生成過程と、
前記入力信号のレベルを、前記第1レベル検出手段より遅い追随速度で検出し、第2レベル信号を出力する第2レベル信号生成過程と、
前記第1レベル信号の前記第2レベル信号に対するレベル比が、1以上の所定レベル比を超える場合、または、以上の場合は、前記第1レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、前記レベル比が前記所定レベル比以下の場合、または、未満の場合は、前記第2レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、該決定したゲイン値に応じた制御信号を出力するゲイン値生成過程と、
前記制御信号に基づいて、前記入力信号のレベルを調整するレベル調整過程と、
を備え、前記第1レベル検出部および前記第2レベル検出部におけるアタックレートがリリースレートより速く設定されていることを特徴とするレベル調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、違う曲などになっても適切な音量に自動的に調整することができるレベル調整方法およびレベル調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
BGM等の演奏音をスピーカで再生して聴取する場合は、曲毎に音量が変化していることがあり、ちゃんと聞こえるが、うるさすぎない音量への調整が望まれる。そのため、入力信号のレベルに応じて、その信号のレベル変化を抑えるようにゲイン調整を行い、ゲイン調整された出力信号を出力するレベル調整装置が知られている。このようなレベル調整装置においては、入力信号のレベルを検出するレベル検出部を備えている。このレベル検出部は、入力信号の変化していくレベルに追随してレベル検出するのであるが、その追随速度はレベル検出部に設定された時定数に応じて決まるようになる。そして、時定数を大きく設定して追随速度を遅くすると、演奏音のレベルが速い速度で変化する区間ではレベル検出が追いつかないことから、その区間において出力される演奏音のレベルが大きくなりすぎるようになる。また、時定数を小さく設定して追随速度を速くすると、演奏音のレベルの変動に素早く追随してレベル調整されることから、リスナがゲインの変動に気が付いてしまうようになる。
そこで、追随速度の遅い長期ゲインと追随速度の速い短期ゲインとを算出し、算出された長期ゲインと短期ゲインとに基づいて信号レベルを調整するようにしたレベル調整装置も開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5236006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
聴者の立場に立つと、曲の途中でゲインの変動に気が付くことは、音楽鑑賞の妨げとなり好ましくない。つまり、基本的には、ゲインの変化速度を遅くすることが望ましい。しかし、長期ゲインと短期ゲインの両方を算出する従来の方式は、信号処理の構成が複雑であり、かつ、ゲイン調整後の信号のレベルがどのように変化するのか予測がしにくい。
そこで、本発明は、リスナにゲイン変動を余り感じさせず、レベル変化の速い信号にも対処でき、かつ、制御の容易な単純な構成のレベル調整方法およびレベル調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のレベル調整装置は、入力信号のレベルを調整して出力するレベル調整装置であって、前記入力信号のレベルを、相対的に速い追随速度で検出し、第1レベル信号を出力する第1レベル検出部と、前記入力信号のレベルを、前記第1レベル検出部より遅い追随速度で検出し、第2レベル信号を出力する第2レベル検出部と、前記第1レベル信号の前記第2レベル信号に対するレベル比が、1以上の所定レベル比を超える場合、または、該所定レベル比以上の場合は、前記第1レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、前記レベル比が該所定レベル比以下の場合、または、該所定レベル比未満の場合は、前記第2レベル信号に基づいてゲイン値を決定し、該決定したゲイン値に応じた制御信号を出力する制御部と、該制御部から出力される前記制御信号に基づいて、前記入力信号のレベルを調整する調整部とを備え、前記第1レベル検出部および前記第2レベル検出部におけるアタックレートがリリースレートより速く設定されていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレベル調整装置は、リスナにゲイン変動を余り感じさせず、かつ、レベル変化の速い信号にも対処することができるレベル調整装置であって、単純な構成であり、かつ、制御の容易なレベル調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例のレベル調整装置を備えるオーディオ装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施例にかかるレベル調整装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施例にかかるレベル調整装置のゲインの変化特性および入出力特性を示す図である。
図4】本発明の第1実施例にかかるレベル調整装置の制御部で実行される処理のフローチャートである。
図5】本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置の制御部で実行される処理のフローチャートである。
図7】本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置に入力される入力信号およびレベル検出部A1,A2で検出されたレベル検出信号が選択される態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例のレベル調整装置1を備えるオーディオ装置50の構成を示すブロック図を図1に示す。なお、本発明の実施例のレベル調整装置1は、本発明の実施例のレベル調整方法を具現化したデジタルの音響信号処理装置であるが、同方法をアナログの音響信号装置として具現化してもよい。
図1に示すオーディオ装置50において、サウンドソース51は、スピーカ53で再生すべき音響信号の供給源となる装置であり、有線放送、音楽サーバ端末、長時間レコーダやミキサ等とされる。このサウンドソース51からデジタルの音響信号が、本発明にかかるレベル調整装置1に入力され、レベル調整装置1において、その音響信号のレベルが、その音響信号の入力レベルに応じて自動調整される。レベル調整装置1でレベルが自動調整されたデジタルの音響信号はパワーアンプ52でアナログ信号に変換され、電力増幅されてスピーカ53から放音される。レベル調整装置1は、それ自体を1つの独立した装置としてもよいが、サウンドソース51の筐体に内蔵したり、パワーアンプ52の筐体に内蔵したり、スピーカ53の筐体に内蔵したりしても良い。
【0009】
本発明の第1実施例にかかるレベル調整装置1の構成を示すブロック図を図2に示す。以下に追随速度として使用する「アタックレート」、「リリースレート」は、それぞれ、入力信号の各周期のピークレベルに追随する速さを示す「時定数」である。
図2に示す第1実施例のレベル調整装置1において、サウンドソース51からの音響信号は入力端子INから入力されて、第1レベル検出部10および第2レベル検出部11と調整部13とに入力される。第1レベル検出部10は、入力された音響信号のレベルを第2レベル検出部11と比較して相対的に速い追随速度(アタックレートがリリースレートより速く、例えば、アタックレートが数ミリ秒〜数十ミリ秒、リリースレートが数百ミリ秒〜数秒)で検出し、その検出されたレベルを示す第1レベル信号LV1を出力する。また、第2レベル検出部11は、入力された音響信号のレベルを第1レベル検出部10より遅い追随速度(アタックレートがリリースレートより速く、例えば、アタックレートが数100ミリ秒〜数秒、リリースレートが数秒〜数十秒)で検出し、その検出されたレベルを示す第2レベル信号LV2を出力する。第1レベル信号LV1と第2レベル信号LV2とは制御部12に供給され、制御部12は、第1レベル信号LV1の第2レベル信号LV2に対する比(レベル比)に基づいて、いずれか一方のレベル信号を選択し、ゲインカーブに基づいて、その選択されたレベル信号に対応するゲイン値GVを決定して、調整部13に供給する。第1レベル信号LV1の第2レベル信号LV2に対する比が、1以上の所定値を超える場合、または、該所定値以上の場合は、速い追随速度の第1レベル信号LV1が選択され、該所定値以下の場合、または、該所定値未満の場合は、追随速度の遅い第2レベル信号LV2が選択される。そして、調整部13が、サウンドソース51からの音響信号を、供給されたゲイン値GVに対応するゲインで増幅することによりレベル調整装置1から出力される音響信号のレベルが均一化される。ここでの「均一化」は、音響信号に含まれる長いフレーズ同士や、曲同士で、リスナが感じる音量を比較したときに、それらが同じ位の音量に感じるように、音響信号のレベルを調整するものである。入力レベルが急激に増加する緊急の場合を除いて、制御部12がゲイン値GVをゆっくりと変化させるよう構成されており、サウンドソース51からの音響信号における演奏された個別の音符音の立上りから立下りまでの音量変化(所謂エンベロープ)の形状や、連続する音符音の強弱関係は基本的に維持される。調整部13は、増幅器あるいは減衰器により構成することができる。
【0010】
図3(a)に示すゲインの変化特性は、入出力がデシベルスケールの「ゲインカーブ」である。制御部12は、このゲインカーブに基づいて、入力レベルLin(=レベル信号LV1またはLV2)に応じたゲインG(=ゲイン値GV)を決定する。これにより、レベル調整装置1の入出力特性は、デシベルスケールで、図3(b)に示すようになる。
図3(a)に示したように、入力レベルLinが−∞(dB)からLin1(dB)の範囲では、ゲインGは−∞(dB)である。これにより、音響信号はミュートされ、レベル調整装置1からは無音信号が出力される。入力レベルLinがLin1(dB)以上の範囲では、入力レベルLinの増減を打ち消すように、入力レベルLinが増加すればゲインGが減少し、Linが減少すればゲインGが増加する。これにより、レベル調整装置1からは、レベルが均一化された音響信号が出力される。ただし、ゲインGには、ハードウェア都合等による下限Gminがある。入力レベルLinが所定値Lin2より大の範囲では、前記打ち消しのために下限値Gminより小さな値が必要となるが、ゲインGをその値まで下げることはできないので、代わりに、下限値Gminに保持される。この範囲では、入力レベルLinに応じてレベルが増減する音響信号が出力される。
なお、Lin2が入力レベルLinの上限値より大になるように、入力側で入力レベルLinの上限を制限したり、小さな下限値Gminを取れるハードウェアを採用してもよい。
【0011】
レベル調整装置1の制御部12で実行される周期処理のフローチャートを図4に示す。図4に示す周期処理は、動作期間中、繰り返し行われている処理である。制御部12は、所定ないし可変の時間ごとにこの周期処理を実行する。まず、ステップS10にて、制御部12は第1レベル検出部10からの第1レベル信号LV1と、第2レベル検出部11からの第2レベル信号LV2とを取得する。制御部12で取得された第1レベル信号LV1と第2レベル信号LV2とはリニアスケールの値とされており、ステップS11にて、制御部12は、第1レベル信号LV1を第2レベル信号LV2で除算した値(レベル比)が閾値Tを超えるか否かを判定する。ここで、閾値Tは値が1以上の定数であってそのレベル比が閾値Tを超える場合は、制御部12はステップS11にてYESと判定しステップS12に進む。ステップS12では、LVxレジスタに第1レベル信号LV1を格納する。そして、ステップS14において、制御部12は、図3(a)と同特性のリニアスケールのゲインカーブに基づいて、LVxレジスタに格納した第1レベル信号LV1に対応するゲイン値GVを決定して、周期処理を終了する。また、そのレベル比が閾値T以下の場合は、制御部12は、ステップS11にてNOと判定してステップS13に分岐する。ステップS13では、LVxレジスタに第2レベル信号LV2を格納する。そして、ステップS14において、制御部12は、図3(a)と同特性のリニアスケールのゲインカーブに基づいて、LVxレジスタに格納した第2レベル信号LV2に対応するゲイン値GVを決定して、周期処理を終了する。ここでは、この周期処理で決定したゲイン値GVを平滑化して時間的に滑らかに変化するゲイン値GVに替えてから調整部13に供給する構成とするのがよい。その平滑化処理は調整部13にて行ってもよいが、制御部12が周期処理におけるステップS14にてローパスフィルタ処理や補間等の平滑化処理を行うことが好ましい。平滑化処理によって、制御部12から調整部13に供給されるゲイン値GVは、ステップS11での判定が変化しても、時間的に滑らかに変化する。そして、調整部13が、入力する音響信号を、ゲイン値GVに対応するゲインで増幅して出力することにより、レベル調整装置1からは、レベルが均一化された音響信号が出力される。
なお、ステップS14で用いるゲインカーブは、レベル信号で参照されるゲイン値GVを記憶したゲインテーブルとして実現してもよいし、レベル信号に適用することによりゲイン値GVを算出する算術演算として実現してもよい。また、ステップS11における判定条件の不等号は、「を超える」を示す「>」ではなく、「以上」を示す「≧」であってもよい。
【0012】
上記した周期処理が制御部12で実行されることから、本発明の第1実施例にかかるレベル調整装置1においては、第1レベル信号LV1の第2レベル信号LV2に対する比が閾値Tを超える場合は、入力する音響信号のレベル変化が速い場合であり、その音響信号のレベル変化に相対的に速い追随速度で追随する第1レベル信号LV1に基づいて音響信号のレベルが制御される。このことから、レベル変化の速い信号に対処してレベル制御を行うことができる。また、第1レベル信号LV1の第2レベル信号LV2に対する比が閾値T以下の場合は、入力する音響信号のレベル変化が遅い場合であり、第1レベル検出部10より遅い追随速度でその音響信号のレベル変化に追随する第2レベル信号LV2に基づいて音響信号のレベルが制御される。このことから、リスナにゲイン変動を余り感じさせることなくレベル制御を行うことができる。これらのレベル制御は、2つのレベル検出部10,11で検出した2つのレベルに基づき、制御部12で1つのゲインカーブを用いてゲインを決定するといった、制御が容易な単純な構成で実現されている。第1レベル信号の選択条件は、1以上とされている閾値Tの値によって適宜調整できる。閾値Tを1に近い値にすると、LV1が選択される時間が増えて音響信号の速い立ち上がりを確実に抑えられるようになるが、反面、ユーザが時間的なゲイン変動を感じやすくなる。閾値Tが1から離れるに従って、LV2が選択される時間が増えて、ユーザが時間的なゲイン変動を感じにくくなるが、音響信号の速い立ち上がりを抑え切れない場合が出てくる。なお、以上の説明では閾値Tは1以上の値としたが、1より小さい値であっても閾値Tとして採用することは可能である。ただし、1より小さい値を閾値Tを採用すると、ゲインの変化に鋭角的な不連続を生じ、ユーザにゲイン変動を感じさせるので、それは避けたほうがよい。
周期処理のステップS11では、判定処理をリニアスケールで行っているが、デシベルスケールで行うようにしてもよい。その場合、制御部12が、ステップS11の実行に先立って、第1レベル信号LV1および第2レベル信号LV2をデシベルスケールに変換し、ステップS11において、判定式(LV1−LV2)>T’(ただし、T’は閾値Tをデシベルスケールに変換した正の閾値。また、判定式中の「>」は「≧」であってもよい。)の判定を行うようにするとよい。これにより、上述した周期処理と同様に、リニアスケールにおける第1レベル信号LV1の第2レベル信号LV2に対する比(レベル比)が閾値Tを超えるか否かを判定できる。また、この場合、ステップS14におけるレベル値に対するゲインカーブの適用は、後述する第2実施例と同様に、デシベルスケールで行ってもよい。
【0013】
次に、本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置1の構成を示すブロック図を図5に示す。以下に追随速度として使用する「アタックレート」、「リリースレート」、「アタックリリースレート」は、それぞれ、整流された信号に追随する速さを示す「時定数」である。
図5に示す第2実施例のレベル調整装置1においては、サウンドソース51からステレオの音響信号が入力される。このステレオの音響信号の左信号(L)は入力端子LINに入力され、右信号(R)は入力端子RINに入力されて、それぞれディレイ部24,25を介して調整部13に入力される。また、入力端子LINに入力された左信号と入力端子RINに入力された右信号とは加算部20により加算されて、BPF21およびABS23に入力される。BPF21は、入力された音響信号から人間の聴感上の音量への寄与が大きい主帯域(例えば、200Hz〜10kHz)を抽出するバンドパスフィルタである。このフィルタは、バンドパスフィルタに限ることはなく、逆ラウドネスに準じる周波数特性であればどのようなタイプのフィルタでもよい。ABS22,23は、それぞれ入力されたデジタル音響信号の各サンプル値の絶対値を出力する整流部である。ABS22で整流された音響信号は、第1レベル検出部A1および第2レベル検出部A2に入力される。第1および第2レベル検出部A1,A2は、それぞれ、アタックレートとリリースレートで特定される追随速度で入力された音響信号のレベルを検出し、その検出されたレベルを示す各レベル信号LA1,LA2を出力する。出力される各レベル信号LA1,LA2の値は、入力した音響信号サンプル値がレベル信号LA1,LA2より大きい場合は、アタックレートの示す追随速度で上昇し、小さい場合は、リリースレートに対応する追随速度で下降する。第1レベル検出部A1のアタックレートは、例えば数ミリ秒〜数十ミリ秒とされ、リリースレートは、例えば数百ミリ秒〜数秒とされる。また、第2レベル検出部A2のアタックレートは、例えば数百ミリ秒〜数秒とされ、リリースレートは、例えば数秒〜数十秒とされる。これにより、この第1レベル検出部A1は、相対的に速い追随速度で、音響信号の音符毎のエンベロープ(短時間毎のピークレベルに相当)を遅れることなく検出する。また、第2レベル検出部A2は、第1レベル検出部A1より数倍ないし数十倍遅い追随速度で、音響信号の全体的なレベル変動(実効値に相当)を検出する。
【0014】
ABS23で整流された音響信号は、第3レベル検出部B1および第4レベル検出部B2に入力される。第3レベル検出部B1は、演奏が終了して、音響信号に含まれる演奏音が減衰して残留ノイズだけになるタイミング、すなわち、音響信号のミュートを開始してもよいタイミングを、制御部12において検出するために設けられている。そのため、第3レベル検出部B1は、アタックとリリースとで追随速度の区別のない単なるLPFとして構成されており、そのレート(つまりアタックとリリースのレート)は、例えば数秒〜数十秒に設定される。これにより、第3レベル検出部B1は、1乃至複数小節に相当する期間でのゆっくりとしたレベル変動を検出し、その検出されたレベルを示す第3レベル信号LB1を出力する。また、第4レベル検出部B2は、演奏が始まり、音響信号に含まれる演奏音が立ち上がるタイミング、すなわち音響信号のミュートを解除すべきタイミングを、制御部12において遅延なく開始するために設けられたレベル検出器であって、入力する音響信号の絶対値を、追随遅延なしで、そのまま第4レベル信号LB2として出力する。
【0015】
4つのレベル検出部A1,A2,B1,B2から出力される4つのレベル信号LA1,LA2,LB1,LB2は、それぞれ、制御部12に入力される。制御部12は、ミュートをオンするかオフするかを判定する「MUTE判定処理」と、調整部13に供給されるゲイン値GVを決定するためのレベル信号LVxを決定する「LVx決定処理」とを行う判定/決定部30を備えている。MUTE判定処理でミュートをオンすると判定された場合は、判定/決定部30は、LVx決定処理で、ゼロレベル(−∞dB)をレベル信号LVxとして決定し出力する。また、MUTE判定処理でミュートをオフすると判定された場合は、LVx決定処理で、第1レベル信号LA1と第2レベル信号LA2の大きさに基づき、いずれか一方のレベル信号をレベル信号LVxとして決定し出力する。
【0016】
リニア−ログ変換部31は、判定/決定部30からのレベル信号LVxを、デシベルスケールのレベル信号LVxに変換する。制御部12は、このデシベルスケールのレベル信号LVxにゲインカーブ32を適用し、そのレベル信号LVxに対応するデシベルスケールのゲイン値GVを求める。ここで、ゲインカーブ32は、図3(a)と同じものを用いてもよいし、Lin1の値がよりゼロレベル(つまり−∞dB)に近いカーブを用いてもよい。ログ−リニア変換部33は、そのデシベルスケールのゲイン値GVを、リニアスケールのゲイン値GVに変換する。平滑化部34は、レベル信号LVxが第1レベル信号LA1と第2レベル信号LA2との間で切り替えられた際に、ゲイン値GVがステップ状に変化することなく滑らかに変化するよう、リニアスケールのゲイン値GVに対して、ローパスフィルタ処理や補間等からなる平滑化処理を施して調整部13に出力する。そして、調整部13は、平滑化されたゲイン値GVに対応するゲインで、サウンドソース51からのステレオの音響信号を増幅して出力する。
【0017】
上述したように、第1レベル検出部A1のアタックレートは、速い立ち上がりにも追従できる、短めの時定数とされており、また、第4レベル検出部B2の遅延はゼロとされている。しかしながら、実際に音響信号の立ち上がりに応じて、ミュートを解除しゲイン値GVを変化させるまでには、その制御経路に入る各ブロック(21、22、23、A1、B2、12)に起因する遅れが生じる。ディレイ部24、25は、その遅れを補償するものであって、入力する音響信号を、一定時間(数十ミリ〜数百ミリ秒)遅延して調整部13に供給する。これにより、音響信号の立ち上がり時に、ミュートの解除が遅れたり、ゲイン値GVの減衰が遅れたりすることを防止できる。
本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置1は、第1実施例と同じく、図3(a)に示すゲインカーブを用いてレベル制御を行い、その入出力特性は、音響信号に含まれる演奏音が残っている場合、図3(b)に示す特性となる。このレベル調整装置1では、演奏が終了して、第3レベル検出部B1から出力される第3レベル信号LB1が示すレベルが残留ノイズと見なせるレベルより小さくなると、制御部12によりミュートがオンと判定されゲインGVがゼロレベルとされて、音響信号がミュートされる。その後、演奏が再開され、制御部12において、第4レベル検出部B2の第4レベル信号LB2から演奏音の開始が検出されミュートがオフと判定されると、ミュートが解除され、音響信号のレベルを均一化するレベル調整が再開される。このように、第1実施例と同様のレベルの均一化に加え、第3レベル検出部B1および第4レベル検出部B2と制御部12とにより、残留ノイズの出力を防止するノイズゲートも実現されている。
【0018】
第2実施例にかかるレベル調整装置1の制御部12で実行される周期処理のフローチャートを図6(a)に示す。図6(a)に示す周期処理は、動作期間中、繰り返し行われている処理である。制御部12は、所定ないし可変時間ごとに周期処理を実行する。まず、ステップS20にて第1レベル検出部A1〜第4レベル検出部B2から、リニアスケールの第1レベル信号LA1〜第4レベル信号LB2を取得する。ステップS20に続き、制御部12はミュート判定処理を行う。このミュート判定処理では、まず、ステップS21にて、現在ミュートがオフとなっているか否かをMUTEレジスタの値から判定する。ここで、ミュートがオフ(MUTE=0)である場合は、制御部12はYESと判定してステップS22に進み、第3レベル信号LB1がミュートをスタートさせる閾値TMSより小さいか否かを判定する。ここで、第3レベル検出部B1が楽曲の演奏における1乃至複数小節に相当する期間でのレベル変化の遅いレベル変動に追従する速度で入力信号の全帯域のレベルを検出していることから、もし、第3レベル信号LB1が閾値TMSより小さければ、それは、レベル調整装置1に入力された音響信号が残留ノイズ(演奏音が終了した状態)のみとなっており、ミュートしてよい状態になったことを示している。そこで、制御部12は、ステップS22でYESと判定した場合は、ステップS23に進みMUTEレジスタに、ミュートをオンするという判定結果を示す「1」を格納する。また、ミュートがオンであった(MUTE=1)場合は、制御部12は、ステップS21でNOと判定してステップS24に分岐し、第4レベル信号LB2がミュートを終了させる閾値TMEより大きいか否かを判定する。ここで、第4レベル検出部B2が遅延なしで入力信号のレベルを検出していることから、もし、第4レベル信号LB2が閾値TMEを超えていれば、レベル調整装置1に入力された音響信号中で演奏音が開始され、ミュートを解除すべき状態になったことを示している。そこで、制御部12は、ステップS24でYESと判定した場合は、ステップS25に進み第3レベル検出部B1の第3レベル信号LB1に閾値TMSより大きいレベルの定数である初期値LB1oを設定する。これにより、一旦ミュートをオフすると判定した場合、少なくとも、第3レベル検出部B1において第3レベル信号LB1が初期値LB1oから閾値TMSまで減衰する時間は、ミュートオフの判定が継続するようになる。次いで、ステップS26にて、MUTEレジスタにミュートをオフするという判定結果を示す「0」を格納する。
【0019】
制御部12は、ミュート判定処理を、ステップS23を終了した時、ステップS22で第3レベル信号LB1が閾値TMSより小さくないと判定した時、ステップS26を終了した時、あるいは、ステップS24で第4レベル信号LB2が閾値TMEより大きくないと判定した時に終了し、続けて、LVx決定処理を開始する。
LVx決定処理では、まず、ステップS30にて、直前のミュート判定処理が終了した段階でミュートオフが判定されている(MUTE=0)か否かを判定する。ここで、ミュートオフが判定されている場合は、制御部12は、YESと判定してステップS31に進み、第1レベル信号LA1の第2レベル信号LA2に対する比(レベル比)が閾値TAを超えるか否かを判定する。ここで、閾値TAは1以上の定数であって、そのレベル比が閾値TAを超える場合は、制御部12は、ステップS31にてYESと判定してステップS32に進み、LVxレジスタに第1レベル信号LA1を格納する。そして、制御部12は、ステップS35にて、図3(a)のゲインカーブに基づき、LVxレジスタに格納した第1レベル信号LA1に対するゲイン値GVを決定する。このステップをより詳細に説明すると、まず、リニアスケールの第1レベル信号LA1をデシベルスケールに変換する(LIN→LOG31)。次に、デシベルスケールの第1レベル信号LA1に、図3(a)に示されるデシベルスケールのゲインカーブを適用し、デシベルスケールのゲイン値GVを得る(ゲインカーブ32)。次に、そのデシベルスケールのゲイン値GVをリニアスケールに変換する(LOG→LIN33)。さらに、リニアスケールのゲイン値GVに平滑化処理を施し(平滑化部34)、平滑化されたリニアスケールのゲイン値GVを調整部13に供給する。以上でステップS35の処理が終了して、制御部12は、この周期処理を終了する。そして、調整部13が、入力する音響信号を、ゲイン値GVに対応するゲインで増幅して出力することにより、レベル調整装置1からは、速い追随速度でのレベル制御によりレベルが均一化された音響信号が出力される。この場合は、第1レベル信号LA1の第2レベル信号LA2に対する比が、閾値TAを超えることから、一時的に、入力された音響信号のレベルが比較的速い速度で上昇しており、レベル調整装置1では、その音響信号のレベルを相対的に速い追随速度で検出した第1レベル信号LA1に基づいてその音響信号がレベル制御される。このように、演奏音の立ち上がりが速い時には、一時的に、レベル変化の速い信号に追随する出力レベルの均一化が行われる。
【0020】
また、第1レベル信号LA1の第2レベル信号LA2に対する比が、閾値TA以下の場合は、制御部12はステップS31にてNOと判定してステップS34に分岐し、LVxレジスタに第2レベル信号LA2を格納する。そして、上述した第1レベル信号LA1の場合と同様に、制御部12は、ステップS35にて、図3(a)のゲインカーブに基づき、LVxレジスタに格納した第2レベル信号LA2に対応するゲイン値GVを決定し、そのゲイン値GVを調整部13に供給して周期処理を終了する。そして、調整部13が、入力する音響信号を、ゲイン値GVに対応するゲインで増幅して出力することにより、レベル調整装置1からは、遅い追随速度でのレベル制御によりレベルが均一化された音響信号が出力される。この場合は、入力された音響信号のレベル変化が遅い場合であり、入力された音響信号のレベルを第1レベル検出部A1より相対的に遅い追随速度で検出した第2レベル信号LA2に基づいて音響信号がレベル制御される。
このように、演奏音が入力している間、基本的には、リスナにゲイン変動を余り感じさせることのない出力レベルの均一化が行われる。
さらに、ミュートオンが判定されている(MUTE=1)場合は、制御部12は、ステップS30でNOと判定してステップS33に分岐し、LVxレジスタにゼロレベル「0」(−∞dB)を格納する。そして、上述した第1レベル信号LA1の場合と同様の処理により、制御部12は、ステップS35にて、図3(a)のゲインカーブに基づき、LVxレジスタに格納したゼロレベルに対応するゼロレベル(−∞dB)のゲイン値GVを決定し、そのゲイン値GVを調整部13に供給して周期処理を終了する。この場合、調整部13は、サウンドソース51からの音響信号を、そのゲイン値GVが示すゼロレベルのゲインで増幅するので、結果的に、その音響信号はミュートされる。
【0021】
上記した周期処理を制御部12が実行することから、本発明の第2実施例にかかるレベル調整装置1においては、入力する音響信号に対し、基本的には、ゆっくりとした追随速度でのレベル制御を施すことにより、リスナにゲイン変動を余り感じさせることなく音響信号のレベルを制御でき、また、レベルの立ち上がりが速い信号が入力した際には、その信号に対し、一時的に、速い追随速度でのレベル制御を施すことにより、その速いレベル変化に追従して音響信号のレベルを制御できる。さらに、曲間等で演奏音がある程度継続的に途切れた際には音響信号をミュートすることにより、スピーカ53からの残留ノイズがリスナの耳につくのを防止できる。以上の機能を備えているにも関わらず、このレベル調整装置1は、1つの検出レベルに1つのゲインカーブを適用して1つのゲイン値を決定する簡単な構成であり、レベル制御にかかる特性の調整が容易である。また、デシベルスケールのゲインカーブを採用することにより、そのカーブを折れ線形状に近づけて簡単な算術演算でも実現できるようにした。また、レベル信号やゲイン値のデータ長が同じであっても、リニアスケールのゲインカーブと比較して、制御可能なレベル範囲(ダイナミックレンジ)が広くなる。
なお、以上に説明した第2実施例の周期処理では、ステップS22、S24、S31の判定処理をリニアスケールで行っていたが、それぞれ、デシベルスケールで行うようにしてもよい。あるステップの判定処理をデシベルスケールで行いたければ、その判定にかかるレベル信号を、ステップS20から当該ステップまでの任意の時点で、リニアスケールからデシベルスケールに変換すればよい。そして、ステップS22またはS24の判定処理をデシベルスケールで行う場合、その判定条件には、閾値TMSまたはTMEをデシベルスケールに変換した閾値TMS’またはTME’を用いればよい。また、ステップS31の判定処理をデシベルスケールで行う場合、閾値TAをデシベルスケールに変換した閾値TA’を用いて、判定式(LA1−LA2)>TA’の判定を行えばよい。この判定は、デシベルスケールにおける、第1レベル信号LA1の第2レベル信号LA2に対するレベル差が、閾値TA’を超えるか否かの判定であるが、第1実施例で説明した、リニアスケールにおける、第1レベル信号LA1の第2レベル信号LA2に対するレベル比が閾値TAを超えるか否かの判定と、実質的に等価である。また、ステップS33に関しては、LVxレジスタにデシベルスケールのゼロレベル(つまり−∞dB)を設定するよう変更すれば、ステップS35におけるリニアスケールからデシベルスケールへの変換(LIN→LOG31)を省略できる。
また、第2実施例の周期処理では、ミュートオンが判定されている場合(ステップS30のNO判定)にもゲインカーブを適用しているが、このゲインカーブの適用は省略可能である。すなわち、ステップS30でNO判定の場合に、ステップS33でゼロレベル(−∞dB)を直接ゲイン値GVとして格納し、ステップS35では、そのゲイン値GVの平滑化処理のみを行って調整部13に供給するようにしてもよい。
また、ステップS22、S24、S31における判定条件の不等号は、それぞれ、「<」、「>」、「>」ではなく、等号付きの「≦」、「≧」、「≧」であってもよい。
【0022】
第2実施例にかかるレベル調整装置1では、上記説明したように第1レベル信号LA1に基づいてサウンドソース51からの音響信号が均一化される時間区間と第2レベル信号LA2に基づいてサウンドソース51からの音響信号が均一化される時間区間とがある。横軸を時間として、2つのレベル検出部A1,A2に供給される音響信号を図7(a)に示し、第1レベル検出部A1で検出された第1レベル信号LA1と、第2レベル検出部A2で検出された第2レベル信号LA2と、第2レベル信号LA2に代えて第1レベル信号LA1が選択される区間T1,T2,T3とを図7(b)に示す。
図7(a)に示す入力信号40は、サウンドソース51からの音響信号がBPF21を通過した波形である。この入力信号40から検出された第1レベル信号LA1と、第2レベル信号LA2とが図7(b)に示されている。第1レベル検出部A1は相対的に速い追随速度でレベルのピークを検出していることから、第1レベル信号LA1は図示するように入力信号40のエンベロープにほぼ追従するレベル信号となる。また、第2レベル検出部A2はゆっくりしたレベル変動に追従する速度でレベルを検出していることから、第2レベル信号LA2はそのエンベロープに遅れてゆっくり変化するレベル信号となる。時間軸上の特定区間T1,T2,T3では、第1レベル信号LA1が第2レベル信号LA2より、リニアスケールで所定レベル比(デシベルスケールで所定差)をつけて、大きくなっている。これらの区間では、ステップS31にてYESと判定されて、レベル信号LVxとして一時的に第1レベル信号LA1が選択され、調整部13における音響信号のレベル制御を、入力信号の立ち上がりに遅れることなく行うことができる。そして、区間T1,T2,T3以外の通常区間では、ステップS31にてNOと判定されて、レベル信号LVxとして第2レベル信号LA2が選択され、調整部13における通常のレベル制御を、リスナにゲイン変動を感じさせることなく行うことができる。この第2レベル検出信号LA2の値は、その他のレベル信号の影響を受けることはなく、リスナが感じるゲインの継続性が保たれる。
【0023】
次に、第2実施例にかかるレベル調整装置1は、図6(a)の周期処理のうちのLVx決定処理を、図6(b)のように変更することにより、単なるノイズゲートとして動作させることもできる。この場合、ステップS20にて取得するデータは、第3レベル信号LB1と第4レベル信号LB2だけでよい。ステップS40で、ミュートオフが判定されていた(MUTE=0)場合、ステップS41にてLVxレジスタに基準レベルを示す「1」が格納され、それに応じて、ステップS35ではゲイン値GVが基準レベル(0dB)に決定される。ミュートオンが判定されていた(MUTE=1)場合、ステップS42にてLVxレジスタにゼロレベルを示す「0」が格納され、それに応じて、ステップS35ではゲイン値GVがゼロレベル(−∞dB)に決定される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
また、以下の説明において、「レベル変化が速い」とは、第1レベル検出部が出力する入力信号のレベル変化に鋭敏に追従した第1レベル信号と、第2レベル検出部が出力する入力信号のレベル変化に鈍く追従した第2レベル信号との比が、第1レベル信号>第2レベル信号である状態を指し、この状態は、例えば静寂状態から楽曲の演奏が始まったときや、破裂音や爆発音などが発生したとき等、入力信号のレベルが急激に増加するといった状況である。
以上説明した本発明の実施例にかかるレベル調整装置では、サウンドソースからの音響信号に応じて、楽曲の途中のレベル変化があまり速くない通常区間では、遅い追随速度とされゲイン変動が目立ちにくい第2レベル検出部のレベル信号を用いて、ゲインの制御を行い、強い演奏音の頭等のレベルが急激に立ち上がる一部区間(上記特定区間)では、速いレベル変動に対応できる第1レベル検出部のレベル信号を用いて、ゲインの制御を行っている。そして、これら両ゲイン制御を、共通のゲインカーブ特性に基づいて行っているため、レベル調整装置の構成がシンプルであり、かつ、レベル変化特性の制御が容易となる。
また、本発明の実施例にかかるレベル調整装置では、追随する速さの異なる2つのレベル検出部の1つの出力を選択していたが、速さの異なる3つ以上のレベル検出部を設けて、そのうちの1つの出力を選択し、その選択された出力に基づいてゲインを決定するようにしてもよい。
さらに、本発明の実施例にかかるレベル調整装置は、信号処理をプログラム可能なデジタル信号処理プロセッサ(DSP)やパーソナルコンピュータ(PC)で構成してもよいし、アナログ演算回路で構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 レベル調整装置、10 第1レベル検出部、11 第2レベル検出部、12 制御部、13 調整部、20 加算回路、21 BPF、22 ABS回路、23 ABS回路、24,25 ディレイ部、30 判定/決定部、31 リニア−ログ変換部、32 ゲインカーブ、33 ログ−リニア変換部、34 平滑部、40 入力信号、50 オーディオ装置、51 サウンドソース、52 パワーアンプ、53 スピーカ、A1 第1レベル検出部、A2 第2レベル検出部、B1 第3レベル検出部、B2 第4レベル検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7