(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを照明する照明装置と、ワークを撮影するカメラと、データ処理装置とを備え、 データ処理装置は、カメラから照明が写り込んだワークの画像を取り込む手段と、照明が写り込んだワークの画像を2値化する手段と、2値化画像の白の2値化画素数に基づいて防眩性レベルを評価する手段を有する防眩性検査装置であって、
照明が写り込んだワークの画像を2値化する閾値が2つあり、防眩性レベルを評価するのに基づく2値化画像の白の2値化画素数が、低い閾値で2値化した2値化画像から高い閾値で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数であることを特徴とする防眩性検査装置。
ワークを照明する照明装置とワークを撮影するカメラと共に防眩性検査装置を構成するデータ処理装置に、カメラから照明が写り込んだワークの画像を取り込む工程と、照明が写り込んだワークの画像を2値化する工程と、2値化画像の白の2値化画素数に基づいて防眩性レベルを評価する工程とを実行させる防眩性検査プログラムであって、
照明が写り込んだワークの画像を2値化する閾値が2つあり、防眩性レベルを評価するのに基づく2値化画像の白の2値化画素数が、低い閾値で2値化した2値化画像から高い閾値で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数であることを特徴とする防眩性検査プログラム。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、スマートフォン、タブレットなどのディスプレイの最表面には、視認性を向上させるために、反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムには、入射光を散乱させることにより防眩性を持たせたAG(Anti Glare)や反射光を干渉させて反射光を低減させたLR(Low−Reflection)などがある。
【0004】
反射防止フィルムのAG製品の光学特性には、「ヘイズ」「透過率」「光沢度」「画像鮮明度」などがあり、それらが防眩性の品質管理項目として一定の規格値を設けて生産されている。
【0005】
しかし、それら一定の規格値のもとAG製品を生産した同等品であっても、製造ロットなどが異なるものなどでは、フィルムの外観(フィルムに写り込んだ照明等の見え方)を目視にて確認すると、見た目が異なるといった現象が発生する。
【0006】
そこで防眩性を評価する前述した光学特性以外の指標として、フィルム外観(フィルムに写り込んだ照明の見え方)の目視による官能評価がある。
【0007】
この目視による官能評価は、[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)、[3]ブラック視感(写り込んだ照明がない部分のグレー度合い)のいずれか一つの方法、或いは、複数の方法を組み合わせて、防眩性レベルを、1刻みに評価するものである。
【0008】
そして、規格下限の値を例えば−2、規格上限の値を例えば+2と定めて、防眩性レベルが、規格下限の値以上、かつ規格上限の値以下の場合、規格内でOKとし、規格下限の値より小さい、又は、規格上限の値より大きい場合、規格外でNGとしている。
【0009】
しかしながら、上述の[1]、[2]、[3]のいずれの方法を重視し、いずれの方法を用いて評価するかは、各メーカーによって異なるために、同じサンプルを評価しても、評価結果は、各メーカーによって異なることがある。
【0010】
また、上述の[1]、[2]、[3]のいずれの方法を重視し、いずれの方法を用いて評価するかを定めたとしても、目視による官能評価であるため、人により評価のバラツキが生じる可能性がある。
【0011】
ところで、特許文献1では、防眩性の効果を定量化し、目視による感応試験との整合性が図れるようにすることを目的として、評価対象の防眩処理したフィルム面の法線に対して等角度の位置に、マスクにより光源の大きさが制御される拡散性の光源とCCDカメラとを配置し、前記光源からの光をマスクの窓を通して防眩処理したフィルム面に映り込ませ、前記マスクにピントを合わせるとともに、同一サンプルに対して反射像の輝度のピーク値が一定になるように調節された絞りを介して前記防眩処理したフィルムからの正反射画像を前記CCDカメラにより取り込み、取り込んだ画像データの輝度分布曲線を9次の多項式により平滑化して回帰曲線を求め、該回帰曲線の2次微分から変曲点を求めるとと
もに、求めた変曲点の1次微分値から回帰曲線の最大傾斜角度を求め、該最大傾斜角度の値により防眩性を評価する方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、特許文献1の防眩性を評価する方法は、カメラと照明との角度を可変としており、また複雑なアルゴリズムで処理を行うために処理スピードの関係で処理エンジンがハイスペックとなり高額になるという欠点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態の防眩性検査装置の扉を開けた時の正面図。
【
図2】データ処理装置のハードウエア構成を示す図。
【
図3】ステージの構成の説明図であって、(a)はワーク押さえ上板の平面図、(b)はワークの平面図、(c)はワーク押さえ下板の平面図、(d)はワークをワーク押さえ上板とワーク押さえ下板とで挟み樹脂製ローレットネジで固定した時のステージの正面図。
【
図4】カメラと照明装置との設置位置関係を示す図。
【
図5】照明が写り込んだワークの画像の中で検査エリアを示す図。
【
図6】照明が写り込んだワークの検査エリア内の画像を示す図。
【
図7】防眩性レベルが規格下限のサンプル、防眩性レベルが規格上限のサンプル、それぞれについて、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和するようにシャッタースピードを遅くして撮影して得た照明が写り込んだ検査エリア内の画像を示す図。
【
図8】
図7に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像について
図7の任意のY軸と平行な縦ライン上の輝度分布を示すグラフ。
【
図9】
図7に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像を2値化した2値化画像を示す図。
【
図10】各基準サンプルの白の2値化画素数を示す表。
【
図11】各基準サンプルの白の2値化画素数を示すグラフ。
【
図12】防眩性レベルが±3で規格外(NG)のサンプル、防眩性レベルが0で規格内(OK)のサンプルについて、照明が写り込んだ検査エリア内の画像と2値化画像とを示す図。
【
図13】防眩性レベルが規格下限のサンプル、防眩性レベルが規格上限のサンプル、それぞれについて、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和しないようにシャッタースピードを速くして撮影して得た照明が写り込んだ検査エリア内の画像を示す図。
【
図14】
図13に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像について
図13の任意のY軸と平行な縦ライン上の輝度分布を示すグラフ。
【
図15】
図13に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像について、閾値(1)は、高い閾値(1)で2値化した2値化画像、閾値(2)は、低い閾値(2)で2値化した2値化画像、(2)−(1)は、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像を示す図。
【
図16】各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、規格内外であるかの合否、高い閾値(1)で2値化した2値化画像、低い閾値(2)で2値化した2値化画像、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像、それぞれについて白の2値化画素数を示す表。
【
図17】各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、低い閾値(2)で2値化した2値化画像の白の2値化画素数を示すグラフ。
【
図18】各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数を示すグラフ。
【
図19】防眩性レベル評価処理の流れの例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
【0024】
本実施形態の防眩性検査装置は、
図1に示すように、ボックス9と、データ処理装置8とを備える。
【0025】
ボックス9は、
図1に示すように、その内部の底に、ワーク5を固定するステージ4が設置され、その内部の天井に、ワーク5を照明する照明装置7と、照明装置7からの照明が写り込んだワーク5を撮影して、照明装置7からの照明が写り込んだワーク5の画像を得るカメラ6が設置され、さらに、その内部を開け閉めする扉10を備える。
【0026】
ボックス9は、光の反射を抑えるために黒色の部材で構成されている。
【0027】
データ処理装置8は、パソコン等のコンピュータであって、
図2に示すように、中央処理装置と、主記憶装置と、補助記憶装置と、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備え、カメラ6に接続されている。
【0028】
データ処理装置8は、その補助記憶装置に、防眩性検査プログラムを保存しており、この防眩性検査プログラムを主記憶装置にロードして、中央処理装置が実行することによって、カメラ6に、照明装置7からの照明が写り込んだワーク5を撮影させ、カメラ6から、照明装置7からの照明が写り込んだワーク5の画像を、その主記憶装置に取り込んで、ワーク5の防眩性レベルを評価してワーク5の防眩性を検査する。
【0029】
ワーク5は、防眩性の検査対象物であって、例えば、液晶テレビ、スマートフォン、タブレット等のディスプレイの最表面に使用される反射防止フィルムが挙げられる。
【0030】
ステージ4は、
図1及び
図3(d)に示すように、樹脂製ローレットネジ1と、ワーク押さえ上板2と、ワーク押さえ下板3とを備える。
【0031】
ワーク押さえ上板2は、
図3(a)に示すように、中心部のくり抜き11と、穴A’と、穴B’と、穴C’とを有する。
【0032】
ワーク押さえ下板3は、
図3(c)に示すように、穴Aと、穴Bと、穴Cとを有する。
【0033】
ワーク押さえ下板3の穴Aは、樹脂製ローレットネジ1と噛み合うねじ山を有する。
【0034】
ワーク押さえ上板2の穴B’と、ワーク押さえ下板3の穴Bとで、ワーク押さえ上板2とワーク押さえ下板3との位置合わせをしながら、
図1及び
図3(d)に示すように、ワーク5を、ワーク押さえ上板2とワーク押さえ下板3で挟み、樹脂製ローレットネジ1を、ワーク押さえ上板2の穴A’に通して、ワーク押さえ下板3の穴Aのねじ山に噛み合わせて、樹脂製ローレットネジ1を締めることによって、ワーク5をステージ4に固定する。
【0035】
このように、ワーク5をステージ4に固定することで、ワーク5をフラットにし、ワーク5が撓むことにより照明の写り込みが変化することを防止できる。
【0036】
ボックス9の内部の底のステージ4設置位置には、ピン(図示せず)が立てられており、このピンを、ワーク押さえ下板3の穴Cと、ワーク押さえ上板2の穴C’とに嵌めることで、ワーク5の位置と方向とが一定に保たれる。
【0037】
このように、ワーク5の方向を一定に保つことで、ワーク5の方向が変化することにより照明の写り込みが変化することを防止できる。
【0038】
ワーク押さえ下板3のワーク5を載置する面には、ワーク5を繰り返し貼り剥がし可能な粘着材が設けられており、この粘着材によってワーク5にカール(反り)があってもワーク5をワーク押さえ下板3にフラットに貼り付けることができる。このような、粘着材としては、例えば、微粘着のウレタンゲルやシリコーンゴムが挙げられる。
【0039】
ワーク5が透明である場合、ワーク押さえ下板3のワーク5を載置する面を黒色とすることで、この面に設けられている粘着材で、ワーク5が、この面に密着していることと相俟って、ワーク5の裏面の反射を低減できる。
【0040】
尚、ステージ4は、ワーク5をフラットにする機構の一例であって、ワーク5をフラットにできれば他の機構であっても構わない。また、ボックス9の内部の底のステージ4設置位置に設けるピンと、ステージ4とは、ワーク5の方向を一定にする機構の一例であって、ワーク5の方向を一定にできれば他の機構であっても構わない。さらに、ワーク5がフラットであれば、ワーク5をフラットにする機構は不要である。
【0041】
カメラ6は、1視野画像内での焦点ズレ発生を抑えるために、
図4に示すように、ワーク5に対して設置角度を0度、すなわち、ワーク5表面とカメラ6の向きとを90度にして設置される。
【0042】
照明装置7に関しては特に角度は指定しないが、
図4のように、ワーク5に対して設置角度を0度にする場合、干渉を防ぐため、カメラ6と照明の軸をずらして設置する。
【0043】
このとき、カメラ視野の中心からカメラ筐体分ずれて照明が写りこむため、カメラ6のレンズにはなるべくレンズひずみの影響が少ないものを選択する方が好ましい。
【0044】
検査エリアとする範囲は、レンズによる画像ひずみのない部分とする。もしくは、防眩性検査プログラムで画像処理を行いレンズによる画像ひずみを校正するとよい。
【0045】
照明には額縁またはパターンを持った均一な面発光を用いることでエッジ部が発生するので、写り込みの鮮明さ評価に効果的である。
【0046】
防眩性検査プログラムにより、データ処理装置8は、カメラ6から、
図5に示すような、カメラ6が撮影して得た照明が写り込んだワーク5の画像を取り込み、この画像から検査エリアを切り取って、
図6に示すような、検査エリア内の画像を得、この検査エリア内の画像に対して、防眩性レベルの評価を行う。
【0047】
防眩性レベルの評価方法には、
[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)
[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)
の二つがあり、防眩性検査プログラムにより、データ処理装置8は、いずれかの評価方法を選択させ、選択された評価方法で、防眩性レベルの評価を行う。
【0048】
まず、[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)による防眩性レベルの評価方法について説明する。
【0049】
まず、防眩性レベルが規格下限のサンプルと、防眩性レベルが規格上限のサンプルを対象として、写り込んだ照明の拡がりの大きさについて評価を実施した。ここで、防眩性レベルの規格下限は、−2であり、防眩性レベルの規格上限は、+2であって、各サンプルの防眩性レベルは目視で官能評価したものである。
【0050】
図7に、防眩性レベルが規格下限のサンプル、防眩性レベルが規格上限のサンプル、それぞれについて、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和するようにシャッタースピードを遅くして撮影して得た照明が写り込んだ検査エリア内の画像を示す。規格下限と規格上限のサンプルの画像を比較すると、規格上限の方が規格下限に比べ照明写りこみの拡がりが大きいことが分かる。
【0051】
図8に、
図7に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像について
図7の任意のY軸と平行な縦ライン上の輝度分布を示す。
図8に示す輝度分布から、規格上限のサンプルの画像の方が規格下限のサンプルの画像に比べ輝度分布はブロードであることがわかる。また、規格下限及び上限のいずれのサンプルも、輝度が250付近で飽和していることがわかる。
【0052】
このような輝度分布の傾向から、一定の輝度閾値で画素を白黒に2値化し、白又は黒の2値化画素数を算出し、白又は黒の2値化画素数を比較することで拡がりの大きさについて数値評価することが可能である。ここで、2値化は、輝度閾値以上の輝度を有する画素を白とし、閾値未満の輝度を有する画素を黒とするか、或いは、輝度閾値より大きい輝度を有する画素を白とし、閾値以下の輝度を有する画素を黒とする。
【0053】
例として、
図7の規格下限及び規格上限のサンプルの画像をある閾値で白黒に2値化した2値化画像を
図9に示す。
図9を見ると、規格上限のサンプルの2値化画像の方が2値化された白の画素の面積が大きいことがわかる。このように規格下限及び規格上限においては、数値評価で防眩性レベルが評価可能である。
【0054】
次に、基準サンプルを対象として、写り込んだ照明の拡がりの大きさついて評価を、規格下限及び規格上限のサンプルと同様に、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和するようにシャッタースピードを遅くして撮影して実施した。
【0055】
ここで、基準サンプルとは、目視で、防眩性レベルを、−4〜+4まで、1刻みに設定したサンプルのことである。
【0056】
図10に各基準サンプルの白の2値化画素数の表を示し、
図11に各基準サンプルの白の2値化画素数のグラフを示す。
【0057】
目視で官能評価された防眩性レベルと白の2値化画素数の関係は、防眩性レベルの上昇に伴い白の2値化画素数も増加する。
【0058】
また、
図12に、防眩性レベルが±3で規格外(NG)のサンプル、防眩性レベルが0で規格内(OK)のサンプルについて、照明が写り込んだ検査エリア内の画像と2値化画像を示すが、白の2値化画素数に差があるのが分かる。
【0059】
以上のように、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和するようにシャッタースピードを遅くして撮影する場合、ワーク5の照明が写り込んだ検査エリア内の画像を2値化して白の2値化画素数を求め、この白の2値化画素数を、閾値で2値化した2値化画像の白の2値化画素数と防眩性レベルとを対応付ける表と対照することで、ワーク5の防眩性レベルを評価することが可能である。
【0060】
また、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和するようにシャッタースピードを遅くして撮影する場合、規格上下限での白の2値化画素数を決めることで、防眩性レベルが規格内でOKであるか規格外でNGであるかの合否の判定は可能である。
【0061】
次に、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)による防眩性レベルの評価方法について説明する。
【0062】
まず、防眩性レベルが規格下限のサンプルと、防眩性レベルが規格上限のサンプルを対象として、写り込んだ照明の輪郭の鮮明度について評価を実施した。ここで、防眩性レベルの規格下限は、−2であり、防眩性レベルの規格上限は、+2であって、各サンプルの防眩性レベルは目視で官能評価したものである。
【0063】
まず、
図13に、防眩性レベルが規格下限のサンプル、防眩性レベルが規格上限のサンプル、それぞれについて、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和しないようにシャッタースピードを速くして撮影して得た照明が写り込んだ検査エリア内の画像を示す。規格下限と規格上限のサンプルの画像を比較すると、規格下限は規格上限に比べ照明輪郭が鮮明であることが分かる。
【0064】
図14に、
図13に示す防眩性レベルが規格下限及び上限のサンプルの画像について
図13の任意のY軸と平行な縦ライン上の輝度分布を示す。
【0065】
規格上限の輝度分布と規格下限の輝度分布とを比較すると、規格下限の輝度分布は山の高さが高く裾野がシャープであり、規格上限の輝度分布は山の高さが低く裾野がブロードであることがわかる。
【0066】
さらに、輝度分布は規格上限と規格下限で交わる点がある。
【0067】
この交点を挟んで閾値を2つ(
図14に示す閾値(1)、閾値(2))設けて画素を白黒に2値化すると、
図15の閾値(1)に示すように、交点よりも輝度が高い閾値(1)で2値化した時は規格下限の方が規格上限よりも白の2値化画素数は大きく、
図15の閾値(2)に示すように、交点よりも輝度が低い閾値(2)で2値化した時は規格上限の方が規格下限よりも白の2値化画素数は大きくなる。
【0068】
この結果、
図15の(2)−(1)に示すように、交点よりも輝度が低い閾値(2)で
2値化した2値化画像から、交点よりも輝度が高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像では、規格下限の方が規格上限よりも白の2値化画素数が少ない。そして、上述したように、規格下限は規格上限に比べ照明輪郭が鮮明である。
【0069】
これより照明輪郭の鮮明度は、交点よりも輝度が低い閾値(2)で2値化した2値化画像から、交点よりも輝度が高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像により評価可能である。すなわち、この差の2値画像の白い画素数が少なければ、照明輪郭は鮮明である。
【0070】
次に、実サンプルを対象として、写り込んだ照明の輪郭の鮮明度について評価を、規格下限及び上限のサンプルと同様に、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和しないようにシャッタースピードを速くして撮影して実施した。
【0071】
図16に、各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、規格内外であるかの合否、高い閾値(1)で2値化した2値化画像、低い閾値(2)で2値化した2値化画像、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像、それぞれについて白の2値化画素数を示す表を示す。
【0072】
また、
図17に、各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、低い閾値(2)で2値化した2値化画像の白の2値化画素数を示すグラフを示す。
【0073】
さらに、
図18に、各サンプルについて、目視で官能評価された防眩性レベル(目視評価防眩Lv.)、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数を示すグラフを示す。
【0074】
図16の表から明らかなように、サンプルA〜Fの目視で官能評価された防眩性レベルは、0〜+1と、規格下限の−2と規格上限の+2との間にあるため、規格内外であるかの合否は、規格内であるということでOKとなっている。他方、サンプルGの目視で官能評価された防眩性レベルは、+3と、規格上限の+2を越えているため、規格内外であるかの合否は、規格外であるということでNGとなっている。
【0075】
照明が写り込んだ検査エリア内の画像を、低い閾値(2)で2値化し、白の2値化画素数から防眩性レベルを評価することは、上述したように、[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)による評価方法であるが、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和しないようにシャッタースピードを速くして撮影した場合、
図17のグラフから明らかように、合否がOKのサンプルA〜Fと、合否がNGのサンプルGとでは、低い閾値(2)で2値化した白の2値化画素数がほぼ同等であり区別は困難である。
【0076】
一方、
図18のグラフから明らかように、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数では、合否がOKのサンプルA〜Fと、合否がNGのサンプルGとでは、白の2値化画素数に差があり、写り込んだ照明の輪郭の鮮明度の評価でNGとなるサンプルを区別することが可能である。
【0077】
以上のように、写り込んだ照明の部分の輝度が飽和しないようにシャッタースピードを速くして撮影する場合、ワーク5の照明が写り込んだ検査エリア内の画像を2つの閾値(1)及び(2)2値化して、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数を求め、この白の2値化画素数を、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数と防眩性レベルとを対応付ける表と対照することで、ワーク5の防眩性レベルを評価することが可能である。
【0078】
以上の2つの評価方法の説明から明らかなように、データ処理装置8の補助記憶装置には、[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)の評価方法を行うのに必要なデータとして、閾値と、この閾値で2値化した2値化画像の白の2値化画素数と防眩性レベルとを対応付ける表(以後、第1の対応表とも云う)とが保存されている。
【0079】
また、データ処理装置8の補助記憶装置には、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)の評価方法を行うのに必要なデータとして、高い閾値(1)と、低い閾値(2)と、低い閾値(2)で2値化した2値化画像から高い閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像の白の2値化画素数と防眩性レベルとを対応付ける表(以後、第2の対応表とも云う)とが保存されている。
【0080】
また、データ処理装置8の補助記憶装置には、規格下限の防眩性レベルの値として−2、規格下限の防眩性レベルの値として+2が保存されている。
【0081】
以下に、防眩性検査プログラムにより、データ処理装置8が実行する防眩性レベル評価処理の流れの例を、
図19のフローチャートに従って説明する。
【0082】
S(STEP)1;
[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)のいずれの評価方法で評価を行うのかを入力装置で選択入力させる。
【0083】
S(STEP)2;
カメラ6で、照明装置7からの照明が写り込んだワーク5を撮影して、カメラ6から、照明が写り込んだワーク5の画像を取り込む。
【0084】
S(STEP)3;
照明が写り込んだワーク5の画像から検査エリアを切り取って、照明が写り込んだワーク5の検査エリア内の画像を得る。
【0085】
S(STEP)4;
[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)のいずれの評価方法が選択されたのかを判断し、
[1]写り込んだ照明の拡がりの大きさ(照明輪郭部からの光の拡がり)の評価方法が選択された場合は、STEP5に進み、
他方、[2]写り込んだ照明の輪郭の鮮明度(照明輪郭線の鮮明さ)の評価方法が選択された場合は、STEP8に進む。
【0086】
S(STEP)5;
補助記憶装置から閾値を読み出して、この閾値で、照明が写り込んだワーク5の検査エリア内の画像を2値化する。
【0087】
S(STEP)6;
照明が写り込んだワーク5の検査エリア内の2値化画像から、白の2値化画素数を求め
る。
【0088】
S(STEP)7;
補助記憶装置から第1の対応表を読み出して、この第1の対応表と、求めた白の2値化画素数とを対照することにより、ワーク5の防眩性レベルを評価し、STEP13に進む。
【0089】
S(STEP)8;
補助記憶装置から閾値(1)を読み出して、この閾値(1)で、照明が写り込んだワーク5の検査エリア内の画像を2値化する。
【0090】
S(STEP)9;
補助記憶装置から閾値(2)を読み出して、この閾値(2)で、照明が写り込んだワーク5の検査エリア内の画像を2値化する。
【0091】
S(STEP)10;
閾値(2)で2値化した2値化画像から閾値(1)で2値化した2値化画像を引いた差の2値化画像を求める。
【0092】
S(STEP)11;
求めた差の2値化画像から、白の2値化画素数を求める。
【0093】
S(STEP)12;
補助記憶装置から第2の対応表を読み出して、この第2の対応表と、求めた白の2値化画素数とを対照することにより、ワーク5の防眩性レベルを評価する。
【0094】
S(STEP)13;
補助記憶装置から、規格下限の防眩性レベルの値と規格上限の防眩性レベルの値とを読み出し、これら規格下限の値、規格上限の値を、それぞれ、評価して得られたワーク5の防眩性レベルと比較して、ワーク5が規格内でOKであるか規格外でNGであるかを判定する。
【0095】
S(STEP)14;
ワーク5の防眩性レベルの評価結果と規格内外の判定結果とを出力装置で出力するとともに補助記憶装置に保存する。