特許第6323098号(P6323098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323098
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】ピン挿入装置及びピン挿入不良判定方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20180507BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   H05K13/08
   H01R43/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-57392(P2014-57392)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-179646(P2015-179646A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 誠
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−202500(JP,A)
【文献】 特開2013−125803(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0194884(US,A1)
【文献】 特開平08−195592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に固定された中空の筒体にピンを圧入するピン挿入装置であって、
前記ピンを保持して前記筒体に挿入するピン挿入ヘッドと、
該ピン挿入ヘッドに装着され、前記ピン挿入ヘッドが前記筒体へ前記ピンの圧入を開始した後の振動エネルギーを検出する振動センサと、
該振動センサで検出した振動エネルギー検出値と判定閾値とに基づいて前記筒体内への前記ピンの圧入障害による挿入不良を判定する挿入不良判定部とを
備えたことを特徴とするピン挿入装置。
【請求項2】
前記基板は、絶縁基板と配線回路とを備えた絶縁回路基板で構成され、
前記筒体は、筒部と、前記配線回路に接続される側の端に半径方向へ突出したフランジ部とを有する導電性筒体で構成され、
前記ピンは、導電性金属で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のピン挿入装置。
【請求項3】
前記振動センサは、ストレインセンサ、ピエゾセンサ、エコースティックエミッションセンサの何れか1つで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピン挿入装置。
【請求項4】
前記挿入不良判定部は、前記振動センサで検出した振動エネルギー検出値が入力され、当該振動エネルギー検出値の二乗平均平方根を算出し、算出した二乗平均平方根のピーク値が前記判定閾値を超えたときに挿入不良であると判定することを特徴とする請求項1に記載のピン挿入装置。
【請求項5】
前記挿入不良判定部は、挿入不良と判定した筒体の識別情報と前記二乗平均平方根の最大値とを記憶する不良情報記憶部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のピン挿入装置。
【請求項6】
前記ピン挿入ヘッドを駆動するピン挿入制御部を備え、
前記挿入不良判定部は、挿入不良と判定すると、前記ピン挿入ヘッドの下降を停止させる下降停止信号を前記ピン挿入制御部へ送信し、
前記ピン挿入制御部は、前記下降停止信号を受信すると前記ピン挿入ヘッドの下降を停止させることを特徴とする請求項4又は5に記載のピン挿入装置。
【請求項7】
絶縁回路基板に固定された導電性筒体に導電性ピンを圧入開始した後に生じる振動エネルギーを検出する工程と、
検出した振動エネルギー検出値とあらかじめ決められた判定閾値とに基づいて前記導電性ピンの前記導電性筒体への圧入障害による挿入不良を判定する工程と
を備えることを特徴とするピン挿入不良判定方法。
【請求項8】
前記振動エネルギーの検出は、アコースティックエミッションセンサで行うことを特徴とする請求項7に記載のピン挿入不良判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に固定された中空の筒体にピンを圧入するピン挿入装置及びピン挿入不良判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電力半導体モジュールに使用される絶縁回路基板では、外部接続するための接続ピンを絶縁回路基板に配置する場合に、絶縁回路基板に両端にフランジ部を有する円筒状の接続素子の一方のフランジ部を半田付けし、他方のフランジ部側から接続ピンをピン挿入装置によって圧入するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0194884号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、絶縁回路基板に半田付けされた接続素子にピン挿入装置によって接続ピンを圧入するので、接続素子を絶縁回路基板に半田付けする際に、半田が接続素子の内部に付着したり、接続素子の製造過程で内部に塵埃が付着したりしている場合や、ピン挿入装置に保持している接続ピンと接続素子との間の位置ずれが生じている場合には、ピン挿入装置による接続ピンの嵌合が阻害されてスムーズな圧入を行うことができない。
【0005】
しかしながら、ピン挿入装置による接続ピンの嵌合が阻害されているか否かを判別することはできず、接続ピンが折れた場合には目視によって確認することはできるが、接続ピンが曲がったり、接続ピンが傾いたりした場合には、曲がりや傾きが大きい場合には目視によって確認することはできなるが、曲がりや傾きが小さい場合には目視による確認が困難であり、ピン挿入状態の良否を正確に判定することができないという未解決の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ピン挿入装置によるピン挿入状態の良否を正確に判定することができるピン挿入装置及びピン挿入不良判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るピン挿入装置の一態様は、基板に固定された中空の筒体にピンを圧入するピン挿入装置であって、 前記ピンを保持して前記筒体に挿入するピン挿入ヘッドと、 該ピン挿入ヘッドに装着され、前記ピン挿入ヘッドが前記筒体へ前記ピンを挿入する過程での振動エネルギーを検出する振動センサと、 該振動センサで検出した振動エネルギー検出値と判定閾値とに基づいて前記筒体に対する前記ピンの挿入不良を判定する挿入不良判定部とを備えている。また、上記の本発明に係るピン挿入装置の一態様において、前記基板が絶縁基板と配線回路とを備えた絶縁回路基板で構成され、前記筒体は、筒部と、前記配線回路に接続される側の端に半径方向へ突出したフランジ部とを有する導電性筒体で構成され、前記ピンは、導電性金属で構成されていることが望ましい。
【0008】
上記の本発明に係るピン挿入装置の一態様において、前記振動センサは、ストレインセンサ、ピエゾセンサ、エコースティックエミッションセンサの何れか1つで構成されていることが望ましい。
上記の本発明に係るピン挿入装置の一態様において、前記挿入不良判定部は、前記振動センサで検出した振動エネルギー検出値が入力され、当該振動エネルギー検出値の二乗平均平方根を算出し、算出した二乗平均平方根のピーク値が前記判定閾値を超えたときに挿入不良であると判定することにしてもよい。
上記の本発明に係るピン挿入装置の一態様において、前記挿入不良判定部は、挿入不良と判定した筒体の識別情報と前記二乗平均平方根の最大値とを記憶する不良情報記憶部を備えていることにしてもよい。
【0009】
また、上記の本発明に係るピン挿入装置の一態様において、前記ピン挿入ヘッドを駆動するピン挿入制御部を備え、前記挿入不良判定部は、挿入不良と判定すると、前記ピン挿入ヘッドの下降を停止させる下降停止信号を前記ピン挿入制御部へ送信し、前記ピン挿入制御部は、前記下降停止信号を受信すると前記ピン挿入ヘッドの下降を停止させることにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係るピン挿入不良判定方法の一態様は、絶縁回路基板絶縁回路基板に固定された導電性筒体に導電性ピンを圧入する際に生じる振動エネルギーを検出する工程と、検出した振動エネルギー検出値とあらかじめ決められた判定閾値とに基づいて前記導電性ピンの前記導電性筒体への挿入状態の良否を判定する工程とを備える。
前記振動エネルギーの検出は、アコースティックエミッションセンサで行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板に固定された筒体にピンを圧入する際に、ピンを保持したピン挿入ヘッドに伝達される振動エネルギーを検出してピンの挿入状態の良否を判定するようにしたので、ピン挿入状態の良否を正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用し得る接続筒体を装着した絶縁回路基板を示す図であって、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。
図2】絶縁回路基板に固定した接続筒体を示す図であって、図1(a)は断面図、図2(b)は平面図である。
図3】本発明の一実施形態を示すピン挿入装置の概略構成を示す斜視図である。
図4】アコースティックエミッションセンサを示す断面図である。
図5】ピン挿入不良判定部を示すブロック図である。
図6】アコースティックエミッションセンサの検出信号波形を示す図である。
図7】ピン挿入状態を示す断面図である。
図8】ピン挿入不良状態を示す断面図である。
図9】導電性筒体の半田付け不良状態を示す断面図である。
図10】ピン挿入不良発生時のRMS信号を示す波形図である。
図11】導電性導体の不良状態と検出信号ピーク値との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るピン挿入装置について図面を伴って説明する。
先ず、本発明を適用し得る導電性を有する接続筒体1及びこの接続筒体1に圧入される導電性を有する接続ピン2について説明する。
接続筒体1は、例えば銅で形成されている。この接続筒体1は、図2に示すように、中空の円筒部1aとこの円筒部1aの両端部に形成された半径方向に延長するフランジ部1b及び1cとで構成されている。フランジ部1b及び1cには外周側に半田を内外に流動させる切欠部1dが形成されている。そして、接続筒体1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、絶縁回路基板3に形成された配線回路4上に、一方のフランジ部1cが円筒部1aを絶縁回路基板3の上面に対して垂直とするように半田5を使用した半田付けによって固定されている。
【0014】
図1(b)、図2(a)及び図2(b)に示すように、接続ピン2は、断面方形の銅線材でなる線状体を所定長さに切断して、この線状体の断面の対角線の長さが接続導体1の円筒部1aの内径より長い角柱状に形成され、接続筒体1の長さよりも十分に長い。
そして、図3に示すピン挿入装置11によって、接続ピン2は、絶縁回路基板3に固定された接続筒体1に上方から挿入されて、接続筒体1の円筒部1a内に嵌合される。
【0015】
図3に示すように、ピン挿入装置11は、基台12上に絶縁回路基板XYテーブル13が配置されており、このXYテーブル13は、XYテーブル13上に配置された絶縁回路基板3を水平方向に移動させることができる
基台12上のXYテーブル13より奥側に支持部15が配置されている。 支持部15には、絶縁回路基板3に対向して配置されたピン挿入ヘッド14を、上下方向に移動可能に支持する上下方向移動機構16が配置されている。支持部15の背面側は、線状体18を巻装したリール17が回転可能に支持されており、線状体18は、支持部15の前面側に配置されたガイド部材19を介してピン挿入ヘッド14に供給される。
ピン挿入ヘッド14は、線状体18を保持するクランプ部20と進退機構20cを有する。クランプ部20は、分割された一対のクランプ半体20a及び20bを有する。一方のクランプ半体20aがピン挿入ヘッド14に固定され、他方のクランプ半体20bが進退機構20cによって移動可能に支持されている。
進退機構20cには、クランプ半体20bを移動させることで、線状体18(接続ピン2)をクランプ半体20aとクランプ半体20bで把持するクランプ状態と、線状体18(接続ピン2)の把持を開放する開放状態とがある。
【0016】
さらに、ピン挿入ヘッド14には、図示しないが線状体18を所定長さに切断して接続ピン2とするカッター部材が配置されており、このカッター部材で線状体18を接続筒体1に挿入する毎に切断する。線状体18を所定長さに切断して、線状体18を接続ピン2にした後、接続筒体1に挿入してもよい。
クランプ部20のクランプ半体20aには、アコースティックエミッションセンサ(以下、単にAEセンサと称す)25が配置されており、接続ピン2の接続筒体1への嵌合時に発生する振動エネルギーを検出する振動センサとして用いている。
【0017】
このAEセンサ25は、AE(アコースティックエミッション)波を検出する。AE波は、材料が変形あるいは破壊する際に、内部に蓄えていた弾性エネルギーを音波(弾性波、AE波)として放出する現象で放出される。このAE波は、主に超音波領域の周波数である数10kHz〜数MHzの高い周波数成分を有する。
ここで、AEセンサ25は、図4に示すように、アルミニウム製やステンレス製の一面を開放した箱状のシールドケース26と、このシールドケース26の開放端面を覆うアルミナ等の絶縁物で形成された受波板27と、この受波板27のシールドケース26の内面側に銀蒸着膜28を介して装着されたピエゾ(PZT)素子29を配置し、このピエゾ素子29の銀蒸着膜28とは反対側に形成された同様の銀蒸着膜30に外部出力線31が接続され、この外部出力線31がコネクタ32に接続されている。
【0018】
そして、AEセンサ25のコネクタ32から伸ばされた信号配線が、図7に示すように挿入不良判定部40に接続されている。この挿入不良判定部40は、図5に示すように、AEセンサ25のAE信号が入力されるアナログ信号前処理回路33と、このアナログ信号前処理回路33から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路34と、変換されたデジタル信号を解析する判定部35とを備えている。 アナログ信号前処理回路33は、AEセンサ25から出力されるAE信号を増幅するAEプリアンプ33aと、このAEプリアンプ33aで増幅された増幅信号からAE波周波数成分を抽出するバンドパスフィルタ33bとで構成されている。
【0019】
判定部35は、信号処理回路35aと、ピン挿入良否判定回路35bと、不良情報記憶部35cと、表示部35dとを備えている
信号処理回路35aは、A−D変換回路34から入力される増幅されたAE波デジタル信号が入力され、このAE波デジタル信号を二乗平均平方根(RMS)処理したRMS信号をピン挿入良否判定回路35bに出力する。
【0020】
ピン挿入良否判定回路35bは、信号処理回路35aから出力されるRMS信号と、予め設定した判定閾値とを比較してピン挿入状態の良否判定を行い、RMS信号がピン挿入不良判定閾値未満であるときにピン挿入状態が良好であると判断し、RMS信号がピン挿入不良の判定閾値を超えた場合に、ピン挿入状態が不良であると判断する。そして、ピン挿入良否判定回路35bでは、判定結果がピン挿入不良である場合に、RMS信号の最大値と現在ピン挿入中の接続筒体の識別情報とを対にして不良情報記憶部35cに記憶するとともに、これらを表示部35dに表示する。これと同時に、ピン挿入良否判定回路35bでは、ピン挿入が不良であると判断した場合、すなわち、RMS信号の値が判定閾値を超えた場合、ピン挿入ヘッド14の下降を停止させる下降停止信号を、ピン挿入制御部36へ送信する。そして、ピン挿入制御部36は、下降停止信号を受信するとピン挿入ヘッド14の下降を停止させる
ピン挿入制御部36は、ピン挿入ヘッド14の下降ストロークを検出するストロークセンサ37からストローク検出信号が入力される。ピン挿入制御部36は、XYテーブル13を制御して、ピン挿入ヘッド14にクランプされている線状体18の真下に接続筒体1を位置させるように絶縁回路基板を移動させる絶縁回路基板移動制御と、上下方向移動機構16及び進退機構20cを駆動して、ピン挿入ヘッド14の上下動と、線状体18の把持及び開放とを行うピン挿入制御とを行う。
【0021】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
先ず、図3に示すように、接続筒体1を半田付けした絶縁回路基板3をピン挿入装置11のXYテーブル13上に載置して固定する。ピン挿入装置11では、リール17に巻装された線状体18がガイド部材19を介してピン挿入ヘッド14に供給される。この線状体18の先端は、接続筒体1に当接しない程度に所定長さ突出するように、クランプ半体20a及び20bによって把持されている。絶縁回路基板
この状態で、ピン挿入装置11が動作を開始すると、最初に線状体18(接続ピン2)が挿入される接続筒体1の円筒部1aの中心が、クランプ部20で把持されている線状体18の先端の真下に位置決めされるように、XYテーブル13が制御される。このとき、ピン挿入ヘッド14に配置された図示しない撮像装置で接続筒体1の平面画像を撮像することにより、接続筒体1の位置決めが正確に行われる。
【0022】
そして、接続筒体1の位置決めが完了すると、図7に示すように、上下方向移動機構16が作動されて、ピン挿入ヘッド14が下降される。クランプ部20でクランプされている線状体18(接続ピン2)が、絶縁回路基板3に固定されている接続筒体1の円筒部1aの内部へ挿入される。このとき、接続ピン2の断面の対角線の長さが、接続筒体1の円筒部1aの内径よりも長いので、線状体18(接続ピン2)が接続筒体1内に圧入される。
【0023】
この線状体18(接続ピン2)を圧入する際、AEセンサ25が、クランプ部20を介して線状体18(接続ピン2)の振動を計測し、AEセンサ25からAE信号が出力される。このAE信号は、AEプリアンプ33aで増幅され、バンドパスフィルタ33bで図6(a)に示す超音波領域のアナログ信号が抽出される。このアナログ信号がA−D変換回路34でデジタル信号に変換され、判定部35の信号処理回路35aに入力される。
【0024】
この信号処理回路35aでは、デジタル信号を二乗平均平方根処理して、図6(b)に示すRMS信号に変換する。ピン挿入良否判定回路35bは、RMS信号の値と判定閾値とを比較し、RMS信号が判定閾値以下であるときにはピン挿入状態が良好であると判断する。 このピン挿入状態の良好状態が継続して、接続ピン2となる線状体18の先端が接続筒体1内に所定位置まで圧入されると、図5に示すストロークセンサ37がオン状態となり、このオン信号がピン挿入制御部36に供給される。次に、ピン挿入制御部36が、ストロークセンサ37のオン信号を受信すると、クランプ部20による導電性接続ピン2の把持を解除する。上下方向移動機構16が作動されてピン挿入ヘッド14が上昇し、所定位置まで上昇すると、クランプ部20で線状体18を再度把持される。この際、線状体18の切断予定部位から所定長さだけ上方の部位をクランプ部20で把持される。次に、ピン挿入制御部36は図示しないカッター部を作動させて線状体18を切断して接続ピン2とする。
【0025】
以上の動作を繰り返して、絶縁回路基板3上の全ての接続筒体1への線状体18(接続ピン2)の圧入を実行する。そして、作業が完了した絶縁回路基板3をXYテーブル13から取り出して、新たな絶縁回路基板3をXYテーブル13にセットして上記ピン挿入動作を実行する。 ところで、接続筒体1は、絶縁回路基板3の配線回路4上に塗布された半田5によって絶縁回路基板3にハンダ付けされているので、半田付け処理中に接続筒体1の円筒部1aの内周面に、図9(a)〜(c)に示すように、半田が付着してしまう半田付け不良が発生することがある。
【0026】
すなわち、この半田付け不良の具体例は、図9(a)に示すように、絶縁回路基板3への接続筒体1の半田付けの際に、半田5が円筒部1aの内周面の上端側まで付着する場合や、図9(b)に示すように、半田5が円筒部1aの内周面の途中まで上昇する場合や、図9(c)に示すように、半田5が円筒部1aの内周面の一部に付着する場合などがある。 このように接続筒体1の円筒部1aの内周面に半田付け不良が生じると、接続筒体1の接続ピン2を圧入してその先端が半田付着部に到達するまでの間では、図10に示すように、信号処理回路35aから出力されるRMS信号のレベルが判定閾値Sth以下で変動している。このため、ピン挿入良否判定回路35bで、ピン挿入が正常であると判断され、接続ピン2となる線状体18の接続筒体1への圧入が継続される。
【0027】
しかしなから、図8に示すように、接続ピン2となる線状体18の先端が半田付着部に到達すると、接続ピン2の圧入に障害が生じることから、図10に示すように、RMS信号の最大値が、判定閾値Sthを超えるレベルの大きなRMS信号となる。このため、ピン挿入良否判定回路35bから不良検出信号がピン挿入制御部36に出力される。このことにより、ピン挿入装置11のピン挿入ヘッド14の下降が停止される。そして、判定閾値Sthを超えるRMS信号の最大値と、現在、線状体18を圧入している接続筒体1の固有の識別情報とを、不良情報記憶部35cに記憶される。そして、表示部35dにこれらの情報が表示される。
【0028】
以上のように、接続筒体1に圧入している線状体18が大きく曲がったり、折れたりする前に圧入が停止されるので、ピン挿入装置11へのダメージや絶縁回路基板3へ影響を与えることを確実に防止することができる。
そして、接続ピン2の挿入が停止された絶縁回路基板3をXYテーブル13から取り外し、新たな絶縁回路基板3をXYテーブル13にセットすることにより、再度ピン挿入処理が継続される。
【0029】
そして、ピン挿入不良が生じた絶縁回路基板3については、不良情報記憶部35cに不良情報が接続筒体1の固有の識別情報とともに、不良情報記憶部35cに記憶されるとともに、表示装置35dに表示されるので、半田付け不良を生じた接続筒体1を特定して、半田付け不良状態を確認することができる。
このように、半田付け不良状態を生じた接続筒体1を有する絶縁回路基板3については、該当する接続筒体1を取り外して、新たな導電性筒体1を手動で半田付けし、その後は、例えば手動ピン挿入機で残りの導電性筒体1に接続ピン2を圧入することにより、ピン挿入処理を終了することができる。
【0030】
このとき、図示しないが手動ピン挿入機にもクランプ部にAEセンサ25を装着し、このAEセンサ25のコネクタ32にアナログ信号前処理回路33、A−D変換回路34及び判定部35を接続することにより、上述したピン挿入装置11と同様にピン挿入不良を判断することができる。
そして、上記実施形態では、振動センサとしてAEセンサ25を適用したので、ピン挿入不良を検出する応答性が速く、ピン挿入状態の良否判定を迅速に行うことができる。
【0031】
また、ピン挿入が良好である場合についても、各接続筒体1への接続ピン挿入時にRMS信号の最大値を記憶しておくことにより、ピン挿入状態の評価を行うことができる。
ちなみに、接続筒体1の良否状態をX線撮影した画像と、該当する接続筒体1に接続ピン2を圧入した状態で、RMS信号のピーク値とを比較したところ、図11に示す結果が得られた。すなわち、内周面の半田の付着量が多い接続筒体1A〜1Cでは、RMS信号のピーク値が判定閾値Sthを超えており、内周面の半田の付着量が少ない接続筒体1D〜1FについてはRMS信号の最大値が判定閾値Sthより十分に小さいことが確認された。従って、RMS信号の最大値によってピン挿入状態の良否の判定を正確に行うことができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、ピン挿入装置11で線状体18を切断して接続ピン2を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、予め切断された接続ピン2を保持する振動フィーダ等を設置して接続ピン2を一本ずつクランプ部20に供給するようにしてもよい。
また、接続筒体1の筒部断面形状と接続ピン2の断面形状とは円筒形と方形とに限定されるものではなく、接続筒体1の筒部を方形筒部とし、接続ピン2の断面形状を円形としたり、接続筒体1の筒部を三角形とし、接続ピン2の断面形状を四角形としたり等、接続筒体1に接続ピン2を圧入可能に形成されていれば任意形状の組み合わせとすることができる。
【0033】
また、上記実施形態においては、ピン挿入装置11の絶縁回路基板3側がXY移動され、ピン挿入ヘッド14が上下方向に移動する場合について説明したが、ピン挿入ヘッド14をXY移動し、絶縁回路基板3側を固定するようにしてもよく、さらには両者をXY移動させたり、一方をX方向に移動させ、他方をY方向に移動させたりするようにしてもよい。
【0034】
また、ピン挿入装置11としては、上記構成に限定されるものではなく、接続ピンを把持して接続筒体1に圧入可能な構成であれば、任意の構成を適用することができる。
また、筒体としては接続筒体に限定されるものでなく、導電性の有無にかかわらず任意の筒体を適用することができ、この筒体に導電性を有する又は導電性を有しないピンを圧入する場合に本発明を適用することができる。
【0035】
また、振動センサとしてはAEセンサに限定されるものではなく、ピエゾセンサ、ストレインセンサ等のピン挿入不良を検知可能な任意のセンサを適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、接続筒体1の内周面に半田が付着した半田不良の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、接続筒体1の内周面に突起や挿入阻止物が付着していたり、接続筒体1の円筒部が変形していたり、接続筒体1が絶縁回路基板3に傾いて固定されていたりする場合などのピン挿入不良を判断することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…接続筒体
1a…円筒部
1b,1c…フランジ部
1d…切欠部
2…接続ピン
3…絶縁回路基板
4…配線回路
5…半田
11…ピン挿入装置
12…基台
13…XYテーブル
14…ピン挿入ヘッド
15…支持部
16…上下方向移動機構
17…リール
18…線状体
19…ガイド部材
20…クランプ部
20a,20b…クランプ半体
20c…進退機構
25…アコースティックエミッション(AE)センサ
26…シールドケース
27…受波板
28,30…銀蒸着膜
29…ピエゾ素子
31…外部出力線
32…コネクタ
33…アナログ信号前処理回路
33a…AEプリアンプ
33b…バンドパスフィルタ
34…A−D変換回路
35…判定部
35a…信号処理回路
35b…ピン挿入良否判定回路
35c…不良情報記憶部
35d…表示部
36…ピン挿入制御部
37…ストロークセンサ
40…挿入不良判定部
図1
図2
図3
図4
図5
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図11