(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したデータ記憶装置は、データに優先順位が付けられていない、または、新しいデータを優先順位が高いものとして優先的に記憶している。しかしながら、例えば、監視対象の監視点検においてセンサで測定されたセンサデータを、異常検出、メンテナンス、予防保全等の指標として記憶するような場合、記憶すべきセンサデータの優先順位は時系列のみで決まるものではない。例えば、メンテナンスや予防保全に必要とされる異常を示すセンサデータは優先順位が高く、メンテナンスや予防保全にあまり必要とされない正常を示すセンサデータは優先順位が低い。
【0008】
このように、時系列で優先順位が決まらないデータを記憶するような場合、上述した従来のデータ記憶装置は、データに優先順位が付けられていない、または、時系列で優先順位を決定してしまうため、効率よくデータを記憶することができないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、データを効率よく記憶することができることを目的とするデータ記憶装置、データ記憶方法、および、データ記憶プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のデータ記憶装置は、センサで測定されたデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部により取得されたデータを用いて、マハラノビス・タグチシステムに属する手法における単位空間を代表する指標である単位空間情報
を逐次更新する単位空間算出部と、前記単位空間算出部で
更新される単位空間情報を用いたマハラノビス・タグチシステムに属する手法により、前記データ取得部で取得されたデータのマハラノビス距離を算出するマハラノビス距離算出部と、前記単位空間を構成するデータの全てを同時に記憶することなく、前記マハラノビス距離算出部で算出されたマハラノビス距離に基づいてデータを評価し、評価結果に応じて該データを選択的に記憶部に記憶し、選択されなかったデータを削除する記憶制御部と、を備える。
【0011】
また、前記単位空間算出部は、前記データ取得部でデータが取得された際に所定のフィルタ条件を満たす場合に、該データを用いて前記単位空間情
報を更新するようにしてもよい。
【0012】
また、前記フィルタ条件は複数設けられ、前記単位空間算出部は、前記マハラノビス距離算出部によりマハラノビス距離を算出する際に用いられる単位空間情報とは別に、複数のフィルタ条件毎に設けられるそれぞれの単位空間情報のうち、前記データ取得部でデータが取得された際に満たす条件に対応する一または複数の単位空間情
報を、前記データ取得部で取得されたデータを用いて算出して記憶部に記憶し、前記マハラノビス距離算出部によりマハラノビス距離を算出する際に用いられる単位空間情報を切り替えるべき切替条件が満たされる場合、前記記憶部に記憶された複数の単位空間情報のうちの一の単位空間情報を、前記マハラノビス距離算出部によりマハラノビス距離を算出する際に用いられる単位空間情報として設定する単位空間切替部を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明のデータ記憶方法は、センサで測定されたデータを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップにより取得されたデータを用いて、マハラノビス・タグチシステムに属する手法における単位空間を代表する指標である単位空間情報
を逐次更新する単位空間算出ステップと、前記単位空間算出ステップで
更新される単位空間情報を用いたマハラノビス・タグチシステムに属する手法により、前記データ取得ステップで取得されたデータのマハラノビス距離を算出するマハラノビス距離算出ステップと、前記単位空間を構成する該データの全てを同時に記憶することなく、前記マハラノビス距離算出ステップで算出されたマハラノビス距離に基づいてデータを評価し、評価結果に応じて該データを選択的に記憶部に記憶し、選択されなかったデータを削除する記憶制御ステップと、を有する。
【0014】
また、本発明のデータ記憶プログラムは、コンピュータに対して、センサで測定されたデータを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップにより取得されたデータを用いて、マハラノビス・タグチシステムに属する手法における単位空間を代表する指標である単位空間情報
を逐次更新する単位空間算出ステップと、前記単位空間算出ステップで
更新される単位空間情報を用いたマハラノビス・タグチシステムに属する手法により、前記データ取得ステップで取得されたデータのマハラノビス距離を算出するマハラノビス距離算出ステップと、前記単位空間を構成する該データの全てを同時に記憶することなく、前記マハラノビス距離算出ステップで算出されたマハラノビス距離に基づいてデータを評価し、評価結果に応じて該データを選択的に記憶部に記憶し、選択されなかったデータを削除する記憶制御ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、データを効率よく記憶することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(データ記憶システム100)
図1は、データ記憶システム100の概略的な接続関係を示した説明図である。データ記憶システム100は、複数のデータ取得装置110(110a、110b、110c、・・・)と、データ集約装置120とを含む構成とされ、データ取得装置110とデータ集約装置120とが、専用回線、LAN(Local Area Network)、インターネット等の通信回線102を介して接続される。
【0019】
データ取得装置110は、それぞれ複数のセンサ112(112a〜112i、・・・)に接続され、センサ112で測定されたセンサデータを取得し、詳しくは後述するように、マハラノビス・タグチ法(以下、MT法とも呼ぶ)を用いて、センサデータを選択的に記憶する。また、データ取得装置110は、取得したセンサデータを通信回線102を介してデータ集約装置120に送信する。
【0020】
データ集約装置120は、センサ112で測定されてデータ取得装置110で選択されたセンサデータを通信回線102を介して受信し、詳しくは後述するように、マハラノビス・タグチ法を用いて、受信したデータを選択的に記憶する。
【0021】
(データ取得装置110)
図2は、データ取得装置110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図2に示すように、データ取得装置110は、外部I/F(インターフェイス)部140、通信部142、CPU144、メモリ部146、データ記憶部148を含む構成とされる。
【0022】
外部I/F部140は、シリアルインターフェースなどで構成され、センサ112との通信を行う。通信部142は、通信回線102を介してデータ集約装置120と通信する。
【0023】
CPU(Central Processing Unit)144は、データ取得装置110全体を統括制御する。メモリ部146は、プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)、および、ワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory)からなる。データ記憶部148は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成され、データを長期的に記憶する。
【0024】
図3(a)は、メモリ部146のデータ構成を示す図であり、
図3(b)は、データ記憶部148のデータ構成を示す図である。
図3(a)に示すように、メモリ部146は、MT法で用いられる単位空間を代表する指標である単位空間情報(例えば、重心および相関行列の逆行列)を算出する際に使用されるとともに、算出される単位空間情報または、当該単位空間情報の算出過程で得られる中間演算結果が記憶される複数の単位空間用作業エリア170(170a〜170n)が設けられる。また、メモリ部146は、MT法によりマハラノビス距離(以下、MDとも呼ぶ)を算出する際に実際に使用される単位空間情報が現在運用単位空間情報172として記憶される。また、メモリ部146は、センサ112から取得されたセンサデータを一時的に記憶するセンサデータ記憶エリア174が設けられる。なお、単位空間情報は、重心および相関行列の逆行列に限られない。また、中間演算結果とは、例えば、単位空間情報が重心である場合、重心の算出過程で得られる各データの合計値およびデータ数である。
【0025】
一般的にデータ記録装置には必ず記憶して置かなければならないデータと、空き容量に応じて取捨選択を行なってもよいデータの二種類が存在する。
図3(b)に示すように、データ記憶部148は、複数の単位空間のそれぞれに対して設定されるフィルタ条件180(180a〜180n)が記憶される。また、データ記憶部148は、最低限記憶しなければならないとされるデータが通常収集データ182として記憶されるとともに、MT法を用いた演算結果により選択されたセンサデータが選択収集データ184として記憶される。さらに、データ記憶部148は、MT法により算出されたMDのヒストグラムがMD履歴186として、センサ112ごとの貢献度が貢献度履歴188として記憶される。なお、通常収集データ182は、メモリ部146の単位空間用作業エリア170に記憶された単位空間情報およびその算出に係る情報(データ利用期間等)、実際に使用される現在運用単位空間情報172などが含まれる。
【0026】
図2に示したように、CPU144は、メモリ部146のROMに格納されたデータ記憶プログラムをRAMに展開してデータ記憶処理を実行する際、センサデータ取得部160、マハラノビス距離(MD)算出部162、記憶制御部164、単位空間算出部166、単位空間切替部168として機能する。
【0027】
CPU144は、データ記憶処理を実行すると、センサ112からセンサデータを取得し、現在運用単位空間情報172を用いてセンサデータのMDを算出する。そして、CPU144は、算出されたMDに基づいて、取得したセンサデータをデータ記憶部148に長期間に亘って記憶すべきであると判断した場合だけ、当該センサデータをデータ記憶部148に記憶し、記憶すべきでないと判断した場合には当該センサデータをデータ記憶部148に記憶しない(削除する)。
【0028】
しかしながら、例えば季節変動や環境変化により現在運用単位空間情報172を用いると、正常状態とすべきデータであっても正常なMDが算出されなくなる場合がある。このような場合、より現状に則した単位空間情報に変更すべきであるが、記憶すべきでないと判断されたセンサデータがデータ記憶部148に記憶されていないために、CPU144は後から単位空間に属するデータ点を処理して単位空間情報を算出することができない。
【0029】
そこで、CPU144は、現在運用単位空間情報172とは別にフィルタ条件180毎に設定された複数の単位空間情報、または、中間演算結果を、センサ112からセンサデータを取得する度にその都度(on the flyで)算出(更新)しておく。そしてCPU144は、現在運用単位空間情報172を切り替えるべきであると判断した場合、フィルタ条件180毎に設定された複数の単位空間情報の中から、最適であるとされる一の単位空間情報を現在運用単位空間情報172として選択して記憶することでMDを算出する際に用いられる単位空間情報を切り替える。以下、データ記憶処理の具体的な処理を説明する。
【0030】
センサデータ取得部160は、センサ112のそれぞれに対して予め設定され、メモリ部146に記憶されたトリガ条件およびそのトリガ条件を制御するパラメータを取得し、当該トリガ条件が満たされると、センサ112からセンサデータを取得する。そして、センサデータ取得部160は、センサ112からセンサデータを取得すると、当該センサデータをメモリ部146のセンサデータ記憶エリア174に一時的に記憶する。なお、トリガ条件として、例えばN秒毎に1回のような周期指定が行われ、パラメータとしてその具体的な時間Nが設定される。
【0031】
MD算出部162は、メモリ部146に記憶された現在運用単位空間情報172を用いて、センサデータ記憶エリア174に一時的に記憶されたセンサデータのMDを算出する。
【0032】
記憶制御部164は、データ記憶部148に記憶されたMD履歴186を読み出し、MD履歴186のヒストグラムに基づき、MD算出部162で算出されたMDが選択収集データ184として記憶すべきか判断する。具体的には、記憶制御部164は、MDが異常とされる所定の閾値(例えば、2)以上である場合や、これまでに算出された過去のMD値を記録したヒストグラムと対比させて、MDが上位にある場合は記憶すべきであると判断する。
【0033】
また、記憶制御部164は、データ記憶部148に記憶された貢献度履歴188を読み出し、貢献度履歴188を用いて、センサデータが測定されたセンサ112の貢献度を算出し、センサデータ記憶エリア174に記憶されたセンサデータを選択収集データ184として記憶すべきか判断する。例えば、MDが閾値を超えている場合であって、一つのセンサ112の貢献度が特に高い場合は、当該センサ112で取得されるセンサデータを選択収集データ184として記憶すべきと判断する。また、MDが閾値を超えていない場合であっても、各センサのMDへの貢献度分布が過去に起こった興味のある事象のMD貢献度部分布と類似していれば、記憶すべきと判断する。
【0034】
そして、記憶制御部164は、選択収集データ184として記憶すべきであると判断した場合、センサデータ記憶エリア174に一時的に記憶されたセンサデータを選択収集データ184としてデータ記憶部148に記憶するとともに、通信部142を介してデータ集約装置120に送信する。一方で、記憶制御部164により選択収集データ184として記憶すべきでないと判断された場合、記憶制御部164は、センサデータ記憶エリア174に一時的に記憶されたセンサデータを、センサデータ記憶エリア174から削除する。
【0035】
また、記憶制御部164は、MD履歴186のヒストグラムに対して、MD算出部162で算出されたMDを反映させたヒストグラムを改めて算出し、算出したヒストグラムを新たなMD履歴186としてデータ記憶部148に記憶する。また、記憶制御部164は、貢献度履歴188の貢献度分布に対して、MD算出部162で算出されたMDを反映させた貢献度分布を改めて算出し、算出した貢献度分布を新たな貢献度履歴188としてデータ記憶部148に記憶する。
【0036】
このように、MD算出部162は、センサデータがセンサデータ記憶エリア174に一時的に記憶される度に、当該センサデータのMDを、現在運用単位空間情報172を用いて算出する。そして、記憶制御部164は、MD履歴186および貢献度履歴188を用いて、MD算出部162で算出されたMDを評価し、評価結果に応じて記憶すべきであるセンサデータを選択収集データ184としてデータ記憶部148に記憶する。したがって、記憶制御部164は、例えば、異常を示す優先順位が高い、すなわち商業価値の高いセンサデータのみを選択してデータ記憶部148に記憶し、正常を示す優先順位が低い、すなわち商業価値の低いセンサデータを個々にはデータ記憶部148に記憶せず、単位空間情報、または中間演算結果としてコンパクトに記録するので、効率よく優先順位の高いセンサデータを記憶することができる。
【0037】
単位空間算出部166は、センサデータ記憶エリア174にセンサデータが記憶される度に、MT法で用いられる単位空間情報、または中間演算結果を、メモリ部146に設けられた単位空間用作業エリア170を使用して算出する。なお、単位空間用作業エリア170は、それぞれ異なる条件が予め設定された複数のフィルタ条件180毎にそれぞれ設けられる。
【0038】
ここで、具体例を挙げて説明すると、例えば、センサ112が、圧縮機の吸気温度、排気温度、吸気圧力、排気圧力、運転モード、消費電力、フロー、回転数、軸振動量、外気温などを測定したとする。そして、複数あるフィルタ条件180から選択される1のフィルタ条件180aとして、MDが1×安全率以下、季節変動に対応した期間(例えば、3月〜6月など)、直近2時間の外気温変化が2度以下、および、運転開始またはモード変更して1時間以上が設定されたとする。また、他のフィルタ条件180bは、MDが1×安全率以下、外気温が15度〜18度に設定されたとする。また、フィルタ条件180cは、MDが1×安全率以下、外気温が18度〜20度に設定されたとする。また、フィルタ条件180dは、MDが1×安全率以下、外気温が15度〜18度、運転モードが通常モードに設定される。このように、複数のフィルタ条件180が予め設定されたとする。
【0039】
すなわち、単位空間算出部166は、センサデータ記憶エリア174にセンサデータが記憶されると、当該センサデータがそれぞれのフィルタ条件180を満たすか判断し、満たしたフィルタ条件180に対応する、既に算出されている単位空間情報または中間演算結果を単位空間用作業エリア170から読み出す。そして、単位空間算出部166は、読み出した単位空間情報または中間演算結果に対して、センサデータ記憶エリア174に記憶されたセンサデータを反映させた結果を算出し、センサデータ記憶エリア174に単位空間情報または中間演算結果を更新する(上書きする)。
【0040】
例えば、単位空間算出部166は、センサデータ記憶エリア174に記憶されたセンサデータがフィルタ条件180aおよび180bを満たす場合、フィルタ条件180aおよび180bにそれぞれ対応する単位空間用作業エリア170aおよび170bに記憶された単位空間情報または中間演算結果を読み出し、読み出した単位空間情報または中間演算結果に対してセンサデータを反映させた単位空間情報または中間演算結果を算出する。
【0041】
このように、単位空間算出部166は、MDを算出する際に実際に使用されている単位空間とは別に、フィルタ条件180ごとの単位空間情報または中間演算結果を、センサデータが取得される度にその都度(on the flyで)、算出しておく。これにより、現在運用単位空間情報172が、例えば季節変動や環境変化によりセンサの測定対象が正常状態であるにもかかわらず、正常状態とすべきMDが算出されなくなった場合であっても、記憶制御部164により記憶すべきでないと判断されたセンサデータがデータ記憶部148に記憶されていないために、後から単位空間情報を算出することができなくなるといったことを回避することができる。
【0042】
そして、実際にMDを算出する際に使用されている単位空間情報が、季節変動や環境変化により正常状態とすべきMDが算出されなくなった場合等には、センサデータ記憶エリア174に記憶された単位空間情報のうちのいずれかを、その時点で使用されている単位空間情報と切り替えて、MDを算出する単位空間情報として利用する。
【0043】
単位空間切替部168は、切替条件を満たす場合には、実際に使用されている単位空間情報を、単位空間用作業エリア170に記憶された単位空間情報のうちのいずれかに切り替える。なお、切替条件としては、定期的(数ヶ月に一度)、明らかな正常状態であってもMDが全体的に大きい傾向を示す場合、現在使用している単位空間と単位空間用作業エリア170に記憶された単位空間とが有意な乖離(例えば、共分散行列の各要素の誤差に対して、3σ以上の差)が見られる場合、正常状態であるにもかかわらず、算出されるMDが1と比較して大きくなってきた場合などが設定される。また、センサデータが取得される度に中間演算結果が算出されている場合、単位空間算出部166は、切替条件を満たす場合に、これまでに更新された中間演算結果を用いて単位空間情報を算出する。
【0044】
単位空間切替部168は、切替条件を満たす場合、現在運用単位空間情報172を読み出し、単位空間情報の品質を確認する。ここでは、読み出された単位空間情報に対して、予め保持しておいた統計的に十分な個数(本事例では直近100個とする)のセンサデータを用いて、切替候補となる単位空間情報の各々を適用してMDを算出し、算出されたMDの安定性により品質が確認される。なお、直近100個のセンサデータは、データ記憶部148に記憶されていてもよく、また、切替条件が成立した後に取得されるようにしてもよい。
【0045】
そして、単位空間切替部168は、単位空間情報の品質に基づき、最も品質の高い単位空間情報を判断し、最も品質の高い単位空間情報を現在運用単位空間情報172としてメモリ部146に記憶する(更新する)。これにより、現在運用単位空間情報172として実際にMDを算出する際に使用される単位空間情報を切り替える。
【0046】
このように、単位空間算出部166が、MDを算出する際に実際に使用されている単位空間情報とは別に、フィルタ条件180ごとの単位空間情報または中間演算結果をそれぞれ算出しておき、単位空間切替部168は、切替条件を満たす場合、最も品質の高い単位空間情報を、MDを算出する際に実際に使用されている単位空間情報と切り替える。これにより、記憶制御部164は、単位空間を構成するセンサデータの全てを同時に記憶することなく、その時点における高品質の単位空間情報を用いて、効率よく、かつ高精度に優先順位の高いセンサデータを記憶することができる。
【0047】
(データ記憶処理)
図4は、データ取得処理の流れを説明したフローチャートである。
図5は、データ選択記憶処理の流れを説明したフローチャートである。
図6は、単位空間算出処理の流れを説明したフローチャートである。
図7は、単位空間切替処理の流れを説明したフローチャートである。なお、データ記憶処理は、
図4に示すデータ取得処理、
図5に示すデータ選択記憶処理、
図6に示す単位空間算出処理、および、
図7に示す単位空間切替処理を含み、これらの処理が並行して実行される。
【0048】
(データ取得処理)
図4に示すように、CPU144は、トリガ条件を取得し(ステップS100)、当該トリガ条件に対して設定されたパラメータが当該トリガ条件を満たしているかを判断する(ステップS102)。この結果、トリガ条件を満たしていると判断した場合(ステップS102においてYES)、CPU144は、センサ112からセンサデータを取得し(ステップS104)、取得したセンサデータをメモリ部146のセンサデータ記憶エリア174に一時的に記憶するとともに(ステップS106)、メモリ部146に記憶されていた古いセンサデータを削除し(ステップS108)、ステップS102の処理に戻る。なお、CPU144は、センサ112からセンサデータを取得した際に、センサデータ取得フラグをオンにし、後述するデータ選択記憶処理、単位空間算出処理においてセンサデータが新たに取得されたことを検出できるようにしている。
【0049】
一方、トリガ条件を満たしていないと判断した場合(ステップS102においてNO)、CPU144は、メモリ部146に記憶されていた古いセンサデータを削除し(ステップS108)、ステップS102の処理に戻る。
【0050】
(データ選択記憶処理)
図5に示すように、CPU144は、センサデータ取得フラグに基づいて、新たに取得されたセンサデータがあるか判断し(ステップS200)、新たにセンサデータが取得されるまでステップS200の処理を実行する。新たに取得されたセンサデータがあると判断した場合(ステップS200においてYES)、CPU144は、メモリ部146のセンサデータ記憶エリア174からセンサデータを読み出すとともに(ステップS202)、現在運用単位空間情報172を読み出す(ステップS204)。
【0051】
そして、CPU144は、現在運用単位空間情報172を用いて、上記ステップS202で読み出したセンサデータのMDを算出する(ステップS206)。その後、CPU144は、データ記憶部148に記憶されたMD履歴186を読み出し(ステップS208)、MD履歴186のヒストグラムに基づいて、センサデータを選択収集データ184として記憶すべきかを判断する(ステップS210)。その結果、センサデータを選択収集データ184として記憶すべきであると判断した場合(ステップS210においてYES)、CPU144は、センサデータをデータ記憶部148に記憶するためのフラグをオンする(ステップS212)。一方、センサデータを選択収集データ184として記憶すべきでないと判断した場合(ステップS210においてNO)、CPU144は、フラグをオンせずにステップS214の処理に移る。
【0052】
また、CPU144は、上記ステップS202で読み出されたセンサデータを測定したセンサ112の貢献度履歴188を読み出し(ステップS214)、センサデータを測定したセンサ112の貢献度を算出する(ステップS216)。そして、CPU144は、上記ステップS212でフラグがオンされていない場合、上記ステップS216で算出された貢献度に基づき、センサデータ記憶エリア174に記憶されたセンサデータを選択収集データ184として記憶すべきか判断する(ステップS218)。その結果、センサデータを選択収集データ184として記憶すべきであると判断した場合(ステップS218においてYES)、CPU144は、フラグをオンする(ステップS220)。一方、センサデータを選択収集データ184として記憶すべきでないと判断した場合(ステップS218においてNO)、CPU144は、フラグをオンせずにステップS222の処理に移る。
【0053】
CPU144は、フラグがオンしているかを判断し(ステップS222)、その結果、フラグがオンしていると判断した場合(ステップS222においてYES)、センサデータをデータ記憶部148に記憶させるとともにフラグをオフし(ステップS224)、ステップS200の処理に戻る。一方、フラグがオンしていないと判断した場合(ステップS222においてNO)、CPU144は、センサデータをデータ記憶部148に記憶させることなく、ステップS200の処理に戻る。
【0054】
(単位空間算出処理)
図6に示すように、CPU144は、センサデータ取得フラグに基づいて、新たに取得されたセンサデータがあるか判断し(ステップS300)、新たにセンサデータが取得されるまで、ステップS300の処理を実行する。新たに取得されたセンサデータがあると判断した場合(ステップS300においてYES)、CPU144は、メモリ部146のセンサデータ記憶エリア174からセンサデータを読み出す(ステップS302)。
【0055】
そして、CPU144は、最初のフィルタ条件180を読み出し(ステップS304)、当該フィルタ条件180を満たしているかを判断する(ステップS306)。その結果、フィルタ条件180を満たしていないと判断した場合(ステップS306においてNO)CPU144は、ステップS312の処理に移る。
【0056】
一方、フィルタ条件180を満たしていると判断した場合(ステップS306においてYES)、CPU144は、当該フィルタ条件180に対応する単位空間情報または中間演算結果を単位空間用作業エリア170から読み出し(ステップS308)、上記ステップS302で読み出したセンサデータを用いて、当該フィルタ条件180に関する単位空間情報または中間演算結果を更新する(ステップS310)。
【0057】
そして、CPU144は、全てのフィルタ条件180を読み出したかを判断する(ステップS312)。その結果、全てのフィルタ条件180を読み出していないと判断した場合(ステップS312においてNO)、CPU144は、次のフィルタ条件180を読み出し(ステップS314)、ステップS306の処理に戻る。そして、CPU144は、全てのフィルタ条件180を読み出し終えるまで、ステップS306〜ステップS314の処理を繰り返し、全てのフィルタ条件180を読み出したと判断した場合(ステップS312においてYES)、ステップS300の処理に戻る。
【0058】
(単位空間切替処理)
図7に示すように、CPU144は、切替条件を満たすか判断し(ステップS400)、切替条件を満たすまで、ステップS400を実行する。そして、CPU144は、切替条件を満たすと判断した場合(ステップS400においてYES)、最初の単位空間用作業エリア170から単位空間情報を読み出し(ステップS402)、当該単位空間の品質をチェックする(ステップS404)。
【0059】
そして、CPU144は、全ての単位空間情報を読み出したかを判断し(ステップS406)、全ての単位空間情報を読み出していないと判断した場合(ステップS406においてNO)、次の単位空間情報を単位空間用作業エリア170から読み出し(ステップS408)、ステップS404の処理に戻る。そして、CPU144は、全ての単位空間情報を読み出し終えるまで、ステップS404〜ステップS408の処理を繰り返す。
【0060】
CPU144は、全ての単位空間情報を読み出したと判断した場合(ステップS406においてYES)、上記ステップ404で確認した単位空間情報の品質を判断し(ステップS410)、切り替えるべき単位空間情報があるかを判断する(ステップS412)。
【0061】
その結果、切り替えるべき単位空間情報があると判断した場合(ステップS412においてYES)、CPU144は、切り替えるべき単位空間を現在運用単位空間情報172としてメモリ部146に記憶することで単位空間情報を切り替え(ステップS414)、ステップS400の処理に戻る。一方、切り替えるべき単位空間情報がないと判断した場合(ステップS412においてNO)、CPU144は、ステップS400の処理に戻る。
【0062】
(データ集約装置120)
図8は、データ集約装置120の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図8に示すように、データ集約装置120は、通信部200、CPU202、メモリ部204、データ記憶部206を含む構成とされる。
【0063】
通信部200は、通信回線102を介してデータ取得装置110と通信する。CPU202は、データ集約装置120全体を統括制御する。メモリ部204は、プログラム等が格納されたROM、および、ワークエリアとしてのRAMからなる。データ記憶部206は、例えば、HDD、SSDなどで構成され、データを長期的に記憶する。メモリ部204は、データ取得装置110のメモリ部146と同様に、複数の単位空間用作業エリア、センサデータ記憶エリア等が設けられるとともに、現在運用単位空間情報が記憶される。
【0064】
図9は、データ記憶部206に記憶されるデータの構成を示す図である。
図9に示すように、データ記憶部206は、データ取得装置110と同様に、フィルタ条件230(230a〜230n)、通常収集データ232、選択収集データ234、MD履歴236、貢献度履歴238が記憶される。また、データ記憶部206は、データ取得装置110毎に選択収集データ234として記憶すべきMDの閾値が設定された装置別MD判定情報240、および、運用毎に選択収集データ234として記憶すべきMDの閾値が設定された運用別MD判定情報242が記憶される。
【0065】
CPU202は、メモリ部204のROMに格納されたデータ記憶プログラムをRAMに展開してデータ記憶処理を実行する際、センサデータ取得部210、MD算出部212、記憶制御部214、単位空間算出部216、単位空間切替部218、選択条件決定部220として機能する。
【0066】
センサデータ取得部210は、データ取得装置110から送信されるセンサデータを、通信部200を介して取得し、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに一時的に記憶する。
【0067】
MD算出部212は、データ取得装置110のMD算出部162と同様に機能する。MD算出部212は、メモリ部204に記憶された現在運用単位空間情報を用いて、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに一時的に記憶されたセンサデータのMDを算出する。
【0068】
記憶制御部214は、データ記憶部206に記憶されたMD履歴236および貢献度履歴238を読み出し、当該MD履歴236および貢献度履歴238に基づいて、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに記憶されたセンサデータを選択収集データ234として記憶すべきか判断する。
【0069】
また、記憶制御部214は、メモリ部204から装置別MD判定情報240および運用別MD判定情報242を読み出し、当該装置別MD判定情報240および運用別MD判定情報242に基づいて、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに記憶されたセンサデータを選択収集データ234として記憶すべきか判断する。
【0070】
記憶制御部214は、センサデータを選択収集データ234として記憶すべきであると判断した場合、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに記憶されたセンサデータを選択収集データ234としてデータ記憶部206に記憶する。一方で、センサデータを選択収集データ234として記憶すべきでないと判断した場合、メモリ部204のセンサデータ記憶エリアに記憶されたセンサデータは、メモリ部204から削除される。
【0071】
また、記憶制御部214は、データ取得装置110の記憶制御部164と同様に、MD履歴236および貢献度履歴238を更新してデータ記憶部206に記憶する。
【0072】
単位空間算出部216は、データ取得装置110の単位空間算出部166と同様に機能し、センサデータ記憶エリアにセンサデータが記憶される度に、MT法で用いられる単位空間情報をフィルタ条件230毎に算出する。
【0073】
単位空間切替部218は、データ取得装置110の単位空間切替部168と同様に機能し、切替条件を満たす場合には、実際に使用されている単位空間情報を、単位空間用作業エリアに記憶された単位空間情報のうちのいずれかに切り替える。
【0074】
選択条件決定部220は、装置別MD判定情報240および運用別MD判定情報242を、例えばユーザによる入力部(図示せず)に対する入力操作に応じて決定する。
【0075】
これにより、データ集約装置120は、データ取得装置110と同様に、効率よく優先順位の高いセンサデータを記憶することができるとともに、データ取得装置110別、または、運用別に効率よく優先順位の高いセンサデータを記憶することができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
なお、上述した実施形態では、MT法を用いたが、MT法に限られず、MTA法、MTS法、TS法、T法など、マハラノビス・タグチシステムに属する手法に適応することができる。
【0078】
また、上述した実施形態では、センサデータを取得する度に、単位空間情報または中間演算結果を算出するようにしたが、例えば、センサデータを2回取得する度に、単位空間情報または中間演算結果を算出するようにしてもよく、センサデータを任意の回数だけ取得する度に、単位空間情報または中間演算結果を算出するようにしてもよい。ただし、単位空間を構成する全てのセンサデータを記憶してから単位空間情報または中間演算結果を算出することはない。
【0079】
また、コンピュータを、データ記憶装置として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。