【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る電流共振型電源装置の構成を示す図である。
図1に示す電流共振型電源装置は、全波整流回路DB、コンデンサC1、制御回路10、リアクトルLr、スイッチ素子Q1,Q2、トランスT、ダイオードD1,D2、コンデンサC2〜C4、フォトカプラPC、出力電圧検出器30、コンデンサCL,SB、抵抗R1を有して構成される。
【0017】
全波整流回路DBは、交流電圧ACを全波整流し、全波整流電圧をコンデンサC1を介して直列に接続されたスイッチ素子Q1(第1スイッチ素子)とスイッチ素子Q2(第2スイッチ素子)に出力する。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、MOSFET等のスイッチ素子からなる。
【0018】
スイッチ素子Q2のドレイン−ソース間には、電流共振用のリアクトルLrとトランスTの一次巻線Pと電流共振用のコンデンサC2との直列回路が接続されている。トランスTの二次巻線S1と二次巻線S2とは、直列に接続され、二次巻線S1の一端にはダイオードD1のアノードが接続される。二次巻線S2の一端にはダイオードD2のアノードが接続される。
【0019】
ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとはコンデンサC3の一端とフォトカプラPCのフォトダイオードのアノードと出力電圧検出器30の一端とに接続される。二次巻線S1の他端と二次巻線S2の他端とはコンデンサC3の他端と出力電圧検出器30の他端とに接続される。
【0020】
スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、制御回路10の制御信号により交互にオン/オフする。出力電圧検出器30は、コンデンサC3の両端の出力電圧を検出し、検出された電圧をフィードバック信号としてフォトカプラPCを介して一次側の制御回路10のFB端子に出力する。
【0021】
制御回路10は、出力電圧検出器30からのフィードバック信号に基づいてスイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とを交互にオン/オフさせる。トランスTの一次巻線Pの一端とコンデンサC2の一端とには、コンデンサC4の一端が接続され、コンデンサC4の他端には抵抗R1の一端が接続され、抵抗R1の他端は接地されている。
【0022】
制御回路10は、集積回路(IC)で構成されており、コンパレータ11,12,14、充放電コントロール部13、論理回路15、発振器(OSC)16、アンド回路17,18、ハイサイドドライバ19、ローサイドドライバ20を有している。
【0023】
制御回路10は、スイッチ素子Q1のゲートに接続されるVGH端子、スイッチ素子Q2のゲートに接続されるVGL端子、抵抗R1の一端に接続されるPL端子、コンデンサCCLに接続されるCL端子、コンデンサCSBに接続されるSB端子、フォトカプラPC内のフォトトランジスタのコレクタに接続されるFB端子を有している。
【0024】
(実施例1に係る電流共振型電源装置の特徴的構成)
次に、実施例1に係る電流共振型電源装置の特徴を説明する。この電流共振型電源装置は、外部からスタンバイ信号を受けずにIC内部でスタンバイ状態負荷を検出して、通常モードからスタンバイモードに切り替わるオートスタンバイ機能を有する。スタンバイ状態負荷の検出は、トランスの一次巻線に流れる電流の情報を用いている。
【0025】
LLC電流共振システムでは、トランスの一次巻線電流は、循環電流(トランスの二次側に送られない電流)と負荷電流(出力電流に比例した電流)を含んでいる。この一次巻線電流から負荷電流の情報のみ取り出すことにより、スタンバイ状態を検出することができる。
【0026】
図2は、本発明の実施例1に係る電流共振型電源装置の軽負荷時及び重負荷時の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図2(a)は軽負荷時、
図2(b)は重負荷時の波形を示しており、一般に軽負荷時と比較して重負荷時は発振周期が長くなる。
【0027】
図2(a)(b)に示すように、スイッチ素子Q1のゲートにパルス信号からなるVGH端子電圧を印加すると、トランスTの一次巻線Pに共振電流が流れる。この共振電流をコンデンサC4(本発明の負荷電流検出回路に対応)で抽出し、制御回路10のスイッチSW1を介してCL端子に入力すると、CL端子内部入力電流が得られる。このCL端子内部入力電流は、前述のトランスの一次巻線電流と同様に負荷電流と循環電流を含んでいる。
【0028】
図2に示すようにスイッチ素子Q1のオン期間に亘ってCL端子内部入力電流を取り込んだ場合、循環電流は波形に示すように正負に同じように電流が流れるため平均するとゼロとなる。一方、負荷電流はCL端子に接続するコンデンサCCLによって上記オン期間に亘って積分されるため、その平均負荷電流値に相当する直流電圧からなるCL端子電圧が得られる。このCL端子電圧は負荷電流の情報を反映しているため、
図2に示すように軽負荷よりも重負荷の方がCL端子電圧(あるいは平均負荷電流)は高くなる。尚、コンデンサC4,CCLは、本発明の負荷電流検出回路に対応する。
【0029】
スタンバイ検出コンパレータ11は、本発明のスタンバイ状態検出回路に対応し、反転入力端子にコンデンサCCLの両端電圧を入力し、非反転入力端子にスタンバイ閾値V1を入力し、コンデンサCCLの両端電圧がスタンバイ閾値V1以上のとき、定常状態を検出して、Lレベルを論理回路15とスイッチSW2とに出力してスイッチSW2のFB端子を選択する。
【0030】
このとき、FB端子に入力されたフィードバック信号がスイッチSW2を介して発振器(OSC)16に出力され、発振器(OSC)16は、フィードバック信号の値に応じてパルス信号の発振周期(周波数)を制御するとともに、ハイサイド用のパルス信号とローサイド用のパルス信号を生成する。ハイサイドHoのパルス信号とローサイドLoのパルス信号とは、デッドタイムを有しながらHレベルとLレベルとが交互に変化する。
【0031】
アンド回路17は、ハイサイドHoのパルス信号と論理回路15の出力とのアンドを取り、論理出力をハイサイドドライバ19に出力する。アンド回路18は、ローサイドLoのパルス信号と論理回路15の出力とのアンドを取り、論理出力をローサイドドライバ20に出力する。
【0032】
ハイサイドドライバ19は、アンド回路17からの出力によりスイッチ素子Q1をオン/オフさせる。ローサイドドライバ20は、アンド回路18からの出力によりスイッチ素子Q2をオン/オフさせる。
【0033】
スタンバイ検出コンパレータ11が定常状態を検出した場合には、論理回路15は、Hレベルをアンド回路17,18に出力するので、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは交互にオン/オフされる。
【0034】
次に、スタンバイ検出コンパレータ11は、コンデンサCCLの両端電圧がスタンバイ閾値V1未満のとき、スタンバイ状態を検出して、Hレベルを論理回路15とスイッチSW2とに出力してスイッチSW2のスタンバイ端子(SB端子)を選択する。
【0035】
コンパレータ12は、FB端子から非反転入力端子にフィードバック信号を入力し、反転入力端子に第1基準電圧Vr1を入力し、フィードバック信号が第1基準電圧Vr1以上である場合には、充放電コントロール部13をオン状態にさせる。
【0036】
コンデンサCSBは、スイッチSW2のSB端子と充放電コントロール部13の出力端子に接続される。充放電コントロール部13は、オン状態にされたときに、コンデンサCSBを充電させる。
【0037】
コンパレータ14の非反転入力端子は、コンデンサCSBの一端とスイッチSW2のSB端子と充放電コントロール部13の出力端子とに接続される。コンパレータ14は、本発明のバースト発振動作部に対応し、非反転入力端子にコンデンサCSBの電圧を入力し、反転入力端子に第2基準電圧Vr2を入力し、コンデンサCSBの電圧が第2基準電圧Vr2以上のときに、Hレベルを論理回路15に出力する。
【0038】
このとき、論理回路15は、Hレベルをアンド回路17,18に出力するので、発振器OSC16のパルス信号をハイサイドドライバ19、ローサイドドライバ20に出力する。このため、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とが交互にオン/オフする。
【0039】
その後、フィードバック信号が第1基準電圧Vr1未満となると、充放電コントロール部13がオフ状態にされるため、コンデンサCSBが放電される。その後、コンデンサCSBの電圧が第2基準電圧Vr2未満となると、コンパレータ14からLレベルが論理回路15に出力される。このため、発振器OSC16の出力が停止される。この繰り返しによりスイッチング動作をバースト発振動作にすることができる。
【0040】
即ち、コンパレータ12は、フィードバック信号を第1基準電圧Vr1と比較して充放電コントロール部13を介してコンデンサCSBを充放電させるので、スタンバイ状態時の出力電圧変動幅を決定することができる。
【0041】
次に、
図3に示すタイミングチャートを参照しながら、バースト発振動作の詳細を説明する。まず、SB端子電圧が発振停止電圧VTH_L以下でかつFB端子電圧が発振停止電圧VTH_Lになると、スイッチング動作が停止し、出力電圧が低下する。出力電圧が低下すると、FB端子電圧は上昇し、発振開始しきい電圧VTH_Hに達すると、コンパレータ12の非反転端子電圧が高くなるので、充放電コントロール部13にHレベルの信号を出力してSB端子のコンデンサCSBを定電流値で充電する。これにより、SB端子電圧は徐々に一定の傾きで増加する。また、コンパレータ12は出力がHレベルになると基準電圧Vr1の電圧値を所定分低下させる。
【0042】
次に、SB端子電圧が発振開始電圧VTH_Hに達すると、スイッチング動作が再開する。ここで、発振器OSCはSB端子電圧に基づきスイッチング周波数を決定し、SB端子電圧が低い状態では高い発振周波数を出力し、SB端子電圧が上昇するに従って発振周波数を減少させていく。SB端子電圧が低い状態では、電流共振用のリアクトルLrとトランスTの一次巻線PとコンデンサC2との直列回路の共振点のピークよりも高い周波数であり、直列回路に流れる電流は小さい電流から流れ始め、SB端子電圧の上昇に伴い共振点の周波数に徐々に近づくので、直列回路に流れる電流は徐々に大きくなり、出力電圧は上昇する(ソフトオン)。
【0043】
出力電圧が上昇するに従い、出力電圧検出器30の動作により、フォトカプラPCを介してFB端子電圧は徐々に低下していく。これに伴い、FB端子電圧が基準電圧Vr1の電圧値(所定分低下させた値)を下回ると、コンパレータ12出力はLレベルに反転し、充放電コントロール部13はSB端子のコンデンサCSBを定電流値で放電する。これにより、SB端子電圧は徐々に低下し、再び発振停止電圧VTH_L以下になると、スイッチング動作が停止する。なお、SB端子電圧の低下に伴い、電流共振用のリアクトルLrとトランスTの一次巻線PとコンデンサC2との直列回路の共振のピークより発振周波数は遠ざかっていくので、直列回路に流れる電流は徐々に小さくなってオフする(ソフトオフ)。
【0044】
ソフトオン/ソフトオフ機能のSB端子の充放電時間は、コンデンサCSBに依存する。
【0045】
このように実施例1に係る電流共振型電源装置によれば、コンデンサC4,CClがコンデンサC2に流れる共振電流に含まれる負荷電流を検出し、検出された負荷電流と閾値とに基づいてスタンバイ検出コンパレータ11がスタンバイ状態を検出するので、スタンバイ状態が検出されたとき、フィードバック信号に基づきバースト発振動作のための信号を生成することができる。従って、外部からスタンバイ信号を受けずにスタンバイモードに切り替わることでスタンバイ用のフォトカプラ及びその周辺回路を削減してコストを低減できる。
【実施例2】
【0046】
図4は本発明の実施例2に係る電流共振型電源装置の構成を示す図である。実施例2に係る電流共振型電源装置は、力率改善回路(PFC制御部31)を有し、定常状態のときにはPFC制御部31を動作させ、スタンバイ状態のときにはPFC制御部31を停止させることにより、電力消費を低減することを特徴とする。
【0047】
図4に示す本発明の実施例2に係る電流共振型電源装置は、
図1に示す電流共振型電源装置の構成に対して、さらに、インバータ22、リアクトルL1、PFC制御部31、スイッチ素子Q3、ダイオードD3、コンデンサC5,C6、抵抗R2〜R5、トランジスタTr1,Tr2、ツェナーダイオードZD1を備えている。
【0048】
リアクトルL1の一端は、コンデンサC1の一端に接続され、リアクトルL1の他端は、MOSFETからなるスイッチ素子Q3のドレインとダイオードD3のアノードとに接続される。ダイオードD3のカソードは、コンデンサC5の一端とスイッチ素子Q1のドレインに接続される。PFC制御部31は、スイッチ素子Q3をオンオフさせることにより力率を改善する。
【0049】
インバータ22は、入力端子がスタンバイ検出コンパレータ11の出力に接続され、出力端子がコンデンサC6の一端と抵抗R2の一端とツェナーダイオードZD1のカソードに接続される。ツェナーダイオードZD1のアノードは、トランジスタTr1のベースと抵抗R3の一端とに接続される。
【0050】
トランジスタTr1のエミッタと抵抗R3の他端とコンデンサC6の他端と抵抗R2の他端とは、接地される。トランジスタTr1のコレクタは、抵抗R5を介してトランジスタTr2のベースと抵抗R4の一端に接続される。
【0051】
トランジスタTr2のエミッタと抵抗R4の他端には電源Vccが供給されている。トランジスタTr2のコレクタは、PFC制御部31に接続される。
【0052】
このように構成された実施例2に係る電流共振型電源装置のPFC制御部31の起動を説明する。まず、スタンバイ検出コンパレータ11が定常状態を検出した場合、即ち、スタンバイ検出コンパレータ11がLレベルをインバータ22に出力すると、インバータ22はHレベルをコンデンサC6に出力する。このため、トランジスタTr1とトランジスタTr2とがオンし、電源VccがPFC制御部31に供給されるので、PFC制御部31が動作する。
【0053】
一方、スタンバイ検出コンパレータ11がスタンバイ状態を検出した場合、即ち、スタンバイ検出コンパレータ11がHレベルをインバータ22に出力すると、インバータ22はLレベルをコンデンサC6に出力する。このため、トランジスタTr1とトランジスタTr2とがオフし、電源VccがPFC制御部31に供給されなくなるので、PFC制御部31が動作しなくなる。
【0054】
一般的な電流共振電源装置では、スタンバイ用信号とPFC制御部31のオン/オフ信号は独立になっている。つまり、二次側のシステムマイコンから上記の2つの制御信号が出力され、別々のフォトカプラを介して、それぞれ電源制御ICのスタンバイ回路とPFC制御部31に入力され、独立に制御される。これに対して、本発明では、スタンバイ用信号が制御回路10内部により生成され、それがオン/オフ端子から出力されるため、スタンバイ状態と定常状態の切り替えに同期してPFC制御部31を直接オン/オフさせることができる。従って、実施例2は、実施例1のオートスタンバイ機能を用いることにより、単にスタンバイ時の消費電力を低減できるだけでなく、上記の2つのフォトカプラおよびその周辺回路が不要となり部品点数を削減できる上に、一次/二次間の信号のやり取りがなくなるため、それに伴う絶縁も不要となり小型化へ貢献するとともにシステムとしての信頼性も向上する。
【0055】
なお、本発明は、実施例1、実施例2に係る電流共振型電源装置に限定されるものではない。例えば、負荷電流の情報と、交流入力電圧の情報とを組み合わせることにより、交流入力電圧に応じてスタンバイ閾値の電圧を変化させることができる。
【0056】
また、スタンバイ閾値は、制御回路10内部で固定値に設定してもよく、あるいは外部入力により設定しても良い。スタンバイ閾値を外部入力により設定する場合、端子は独立でも多機能との兼用にしてもよい。また、スタンバイ閾値は、連続値でも離散値でもよい。あるいは、スタンバイ閾値は、ヒステリシスを設けてもよい。制御回路10からオン/オフ信号を出力するオン/オフ端子は独立でも多機能との兼用にしてもよい。