(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1給水制御部は、前記水位検出部により検出される水位が、前記第1目標水位となるように、前記給水流量調整部をPI制御又はPID制御することを特徴とする、請求項1に記載のボイラ装置。
前記制御部は、前記水位検出部により検出される水位が、前記第2給水制御部により、前記第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まった後、所定の時間経過後に第1給水制御部による制御を行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のボイラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エコノマイザを有するボイラ装置において、例えばボイラの燃焼量、缶体の内部圧力、缶体への給水温度、給水の電気伝導率を含むパラメータに基づいて目標水位を算出して、連続給水制御を行う場合、次のような課題が生じる。
【0006】
前述したパラメータの一つ、例えば、燃焼量が大きく変化すると、目標水位が大きくずれることがあり、連続給水制御に支障が生じる場合がある。
例えば、負荷が少なくなり、燃焼ステージが高燃焼から低燃焼に変わる場合、高燃焼時の水位と低燃焼時の目標水位とは、水位の差がかなりある。このため、制御部は、缶内の水位を上げるため、給水ポンプ及び給水流量調整弁を制御して、給水量を急激に増やすことになる。給水量が多くなると、エコノマイザ内を通過する水量が多くなるために、缶体への給水温度が定常時よりも低くなり、さらに、算出される目標水位が上がることになる。こうすることで、目標水位のオーバーシュートが発生し、定常時の目標水位よりも高い目標水位まで水位を上げることになる。その後、定常状態になると、定常時の目標水位に戻るための復帰遅延が発生する。
【0007】
逆に、負荷が大きくなり、燃焼ステージが低燃焼から高燃焼に変わる場合、制御部は、缶内の水位を下げるため、給水ポンプ及び給水流量調整弁を制御して、給水量を急激に減らすことになる。給水量が少なくなると、エコノマイザ内に滞留する水量が多くなるために缶体への給水温度が定常時よりも高くなり、さらに、算出される目標水位が下がることになる。こうすることで、目標水位のアンダーシュートが発生し、定常時の目標水位よりも低い目標水位まで水位を下げることになり、ボイラ待機による圧力低下等の弊害が発生する可能性がある。また、定常状態になると、定常時の目標水位に戻るための復帰遅延が発生する。
【0008】
このように、エコノマイザを有するボイラ装置において、例えば、燃焼量が大きく変化すると、缶体への給水温度が急激に変化することで、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートが発生し、連続給水制御に支障が生じる。
【0009】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであって、エコノマイザを有するボイラ装置において、例えば、燃焼量のステージが急激に変更された場合であっても、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートを未然に防ぐことで、過熱防止やボイラ待機による圧力低下防止を可能とし、定常時の目標水位に遅延なく移行できるように連続給水制御することができるボイラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のボイラ装置は、次のように構成している。
(1)本発明のボイラ装置は、燃料を燃焼させて給水から蒸気を生成するボイラ装置であって、缶体と、前記缶体に供給される給水を前記燃料が燃焼されて発生した燃焼ガスにより加熱する給水加熱器と、前記給水加熱器を介して前記缶体に給水を供給する給水ラインと、前記缶体の内部の水位を検出する水位検出部と、前記給水ラインにおける前記給水加熱器と前記缶体との間において前記缶体に供給される給水の温度を測定する第1給水温度測定部と、前記給水ラインにおける前記給水加熱器よりも上流側において前記給水加熱器に供給される給水の温度を測定する第2給水温度測定部と、前記給水ラインにおける前記給水加熱器よりも上流側に配置され、前記給水加熱器に供給される給水の流量を調整する給水流量調整部と、前記給水流量調整部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水位検出部により検出される水位が、前記第1給水温度測定部により測定される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位を含む第1適正水位範囲に収まる場合、前記水位検出部により検出される水位が、前記第1目標水位となるように、前記給水流量調整部を連続制御する第1給水制御部と、前記水位検出部により検出される水位が、前記第1給水温度測定部により測定される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位を含む第1適正水位範囲外である場合、前記水位検出部により検出される水位が、前記第2給水温度測定部により測定される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まるまで、給水を供給又は停止するように前記給水流量調整部を間欠制御する第2給水制御部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のエコノマイザを有するボイラ装置によると、燃焼量のステージが例えば、低燃焼から高燃焼に、又は高燃焼から低燃焼に急激に変更され、大幅な目標水位の変動が生じた場合であっても、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートを未然に防ぐとともに、過熱防止やボイラ待機による圧力低下防止を可能とし、定常時の目標水位に遅延なく移行できるように連続給水制御することができる。
【0012】
(2)前記第1給水制御部は、前記水位検出部により検出される水位が、前記第1目標水位となるように、前記給水流量調整部をPI制御又はPID制御することが好ましい。
【0013】
(3)前記制御部は、前記水位検出部により検出される水位が、前記第2給水制御部により、前記第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まった後、所定時間経過後に第1給水制御部による制御を行うことが好ましい。
そうすることで、給水温度が安定化するまでの時間を確保することができる。
【0014】
(4)前記第2適正水位範囲の上限及び下限がそれぞれ前記第2目標水位に等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エコノマイザを有するボイラ装置において、制御部は、水位検出部により検出される水位が、第1給水温度測定部により測定される、缶体に供給される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位を含む第1適正水位範囲外である場合、第2給水制御部により、前記水位検出部により検出される水位が、第2給水温度測定部により測定される、給水加熱器に供給される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まるまで、給水を供給又は停止するように間欠制御するようにしたので、例えば、燃焼量のステージが低燃焼から高燃焼に、又は高燃焼から低燃焼に急激に変更され、大幅な目標水位の変動が生じた場合であっても、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートを未然に防ぐとともに、過熱防止やボイラ待機による圧力低下防止を可能とすることができる。
そして、ボイラが定常状態になった場合、定常時の目標水位に遅延なく、連続給水制御に復帰することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態の構成]
以下、本発明に係るボイラ装置の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
ボイラ装置1は、給水ラインL1を介して供給された給水W1を加熱して、蒸気W2を発生させる。
図1に示すように、第1実施形態に係るボイラ装置1は、缶体20と、給水加熱器としてのエコノマイザ3と、缶体20の蒸気圧力を検出する蒸気圧力検出部としての圧力センサ30と、缶体20の内部の水位を検出する水位検出部としての水位センサ31と、缶体入口の給水温度を測定する第1給水温度測定部としての第1給水温度センサ32と、エコノマイザ入口の給水温度を測定する第2給水温度測定部としての第2給水温度センサ33と、缶水の電気伝導率を測定する電気伝導率センサ34と、給水ポンプ8と、給水流量調整部としての給水流量調整弁9と、制御部10と、記憶部11と、を備える。
【0018】
さらに、ボイラ装置1は、給水ラインL1と、燃料供給ラインL2と、蒸気供給ラインL3と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0019】
なお、各ラインには、各種バルブ、各種センサ、逆止弁、オリフィス、ストレーナ等の機器が必要に応じて設けられるが、
図1では適宜に図示を省略する。
【0020】
給水ラインL1は、給水W1を、エコノマイザ3を介して缶体20に向けて供給するラインである。給水ラインL1の上流側の端部は、給水源(不図示)に接続されている。給水ラインL1の下流側の端部は、缶体20の給水導入口に接続されている。
【0021】
エコノマイザ3は、給水ラインL1に設けられ、缶体20において燃料が燃焼したときに生じる排ガスの廃熱により、缶体20に供給される前の給水W1を予め加熱する設備である。
また、給水ラインL1には、給水ポンプ8と、給水流量調整弁9が設けられている。さらに、給水ラインL1には、第1給水温度センサ32と、第2給水温度センサ33と電気伝導率センサ34と、が設けられている。
【0022】
第1給水温度センサ32は、給水ラインL1におけるエコノマイザ3よりも下流側に配置され、給水ラインL1におけるエコノマイザ3よりも下流側を流通する給水W1(エコノマイザ3からボイラ2に供給される給水W1)の温度を検出する。換言すると、第1給水温度センサ32は、給水ラインL1におけるエコノマイザ3と缶体20との間を流通する給水W1の温度を検出する。第1給水温度センサ32は、接続部J1において、給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、エコノマイザ3と缶体20との間に配置されている。第1給水温度センサ32は、制御部10に電気的に接続されている。第1給水温度センサ32で検出された給水W1の温度(以下、「缶体入口の給水温度」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0023】
第2給水温度センサ33は、給水ラインL1におけるエコノマイザ3よりも上流側に配置され、給水ラインL1におけるエコノマイザ3よりも上流側を流通する給水W1(給水ライン1からエコノマイザ3に供給される給水W1)の温度を検出する。換言すると、第2給水温度センサ33は、給水ラインL1におけるエコノマイザ3の入り口における給水W1の温度を検出する。第2給水温度センサ33は、接続部J2において、給水ラインL1に接続されている。接続部J2は、給水流量調整弁9とエコノマイザ3との間に配置されている。第2給水温度センサ33は、制御部10に電気的に接続されている。第2給水温度センサ33で検出された給水W1の温度(以下、「エコノマイザ入口の給水温度」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0024】
電気伝導率センサ34は、缶水の電気伝導率を測定するセンサである。電気伝導率センサ34で測定された缶水の電気伝導率値は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0025】
給水ポンプ8は、給水W1を吸入し、缶体20に向けて吐出する装置である。給水ポンプ8に併設されたモータ(不図示)は、制御部10に電気的に接続されており、制御部10からの制御信号に基づいて制御されて駆動する。給水ポンプ8は、インバータ周波数により制御されて駆動することで、流量調整可能に構成してもよい。
【0026】
給水流量調整弁9は、給水ラインL1において、給水ポンプ8よりも下流側であってエコノマイザ3よりも上流側に配置され、エコノマイザ3に供給される給水W1の流量を調整可能な弁である。給水流量調整弁9は、制御部10に電気的に接続されている。給水流量調整弁9の弁開度(弁体の開度)は、制御部10からの駆動信号により制御される。
【0027】
缶体20は、下部管寄せ、水管、上部管寄せ、バーナ等(いずれも不図示)を備える。
上部管寄せは、環状に形成された中空の容器である。各水管の上端部は、上部管寄せと連通している。上部管寄せの上端には、蒸気供給ラインL3の上流側の端部が接続されている。複数の水管で発生した蒸気W2は、上部管寄せを介して蒸気供給ラインL3へ送出される。上部管寄せには、上部管寄せ内の蒸気圧力を検出する蒸気圧力検出部としての圧力センサ30が接続されている。蒸気供給ラインL3は、水管で発生した蒸気W2を負荷装置5へ供給するラインである。蒸気供給ラインL3の下流側の端部は、負荷装置5に接続されている。
【0028】
バーナ(不図示)は、燃料(液体又は気体等)を燃焼させる燃焼装置である。バーナには、燃料供給ラインL2が接続されている。燃料供給ラインL2は、燃料供給源(不図示)から送出された燃料を、バーナに供給するラインである。
【0029】
水位センサ31は、缶体20の内部の水位を検出する機器である。水位センサ31は、制御部10に電気的に接続されている。水位センサ31で検出された缶体20の内部の水位(以下、「水位Hd」ともいう)は、検出信号として制御部10に送信される。
【0030】
負荷装置5は、ボイラ2から供給された蒸気W2により動作する装置(例えば、熱交換器)である。負荷装置5において使用された蒸気W2は、熱を奪われて凝縮し、ドレンW(不図示)となって排出される。
【0031】
制御部10は、缶体20における燃料の燃焼状態を、負荷装置5で消費される蒸気の量や、圧力センサ30により検出された蒸気の圧力等に基づいて、燃焼状態(例えば、段階値制御ボイラの場合は、1段階〜3段階等のN位置又は比例制御ボイラの場合は、最小燃焼状態から最大燃焼状態の範囲)及び燃焼停止状態のいずれかに設定する。
【0032】
制御部10は、第1給水制御部101と、第2給水制御部102と、を備える。
第1給水制御部101は、水位センサ31により検出される水位が、第1給水温度センサ32により測定される、缶体入り口の給水温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位を含む第1適正水位範囲に収まる場合、水位センサ31により検出される水位が第1目標水位となるように、給水流量調整弁9を連続制御する。
第2給水制御部102は、水位センサ31により検出される水位が、第1給水温度センサ32により測定される給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位を含む第1適正水位範囲外である場合、水位センサ31により検出される水位が、第2給水温度センサ12により測定されるエコノマイザ入り口の給水温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まるまで、給水を供給又は停止するように給水流量調整弁9を間欠制御する。
【0033】
記憶部11には、例えば、後述する第1給水制御部101及び第2給水制御部102にそれぞれ対応する適正水位のテーブル又は近似関数等が記憶される。
【0034】
制御部10及び記憶部11は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成することができる。この場合、記憶部11は、メモリにより構成することができる。
マイクロプロセッサには、時間の計時等を管理するインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
各種プログラムがマイクロプロセッサにより実行されることにより、マイクロプロセッサが第1給水制御部101と、第2給水制御部102と、を備える制御部10として機能する。
【0035】
次に第1実施形態に係るボイラ装置1の給水制御について説明する。
制御部10は、第1給水制御部101により、負荷率(ボイラ1の燃焼量)、圧力センサ30により測定された缶体20の内部圧力、電気伝導率センサ34により測定された缶水の電気伝導率及び第1給水温度センサ32により測定された缶体入口の給水温度に基づいて水管の内部の第1目標水位を含む第1適正水位範囲を算出する。
ここで、第1適正水位範囲は、第1目標水位に予め設定されるディファレンシャル値をプラスした値を上限値とし、ディファレンシャル値をマイナスした値を下限値とする範囲とすることができる。
【0036】
より具体的には、第1給水制御部101は、第1目標水位を、例えば次のように算出することができる。
ボイラ装置1が段階値制御ボイラである場合には、記憶部11は、例えば、
図3に示すように、特定の負荷率(例えば、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)、及び特定の電気伝導率ごとに、缶体20の内部圧力を横列、給水温度を縦列として、横列におけるそれぞれの内部圧力及び縦列におけるそれぞれの給水温度に対応する目標水位を縦列及び横列の交点に有する適正水位のテーブルを記憶する。
【0037】
具体的には、記憶部11は、複数の負荷率(例えば、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)における所定の缶体の内部圧力及び所定の給水温度に対応する適正水位のテーブルを特定の電気伝導率ごとに記憶する。
例えば、
図3に示すように、記憶部11は、低燃焼位置における適正水位のテーブル111a〜111dを記憶する。
各テーブル111a〜111dは、電気伝導率が順に100、200、300及び400mS/mである場合の缶体の内部圧力及び給水温度に対応する適正水位の値を示している。
【0038】
テーブル111a〜111dと同様に、記憶部11は、中燃焼位置における適正水位のテーブル及び高燃焼位置における適正水位のテーブルを記憶する。
中燃焼位置における適正水位のテーブル及び高燃焼位置における適正水位のテーブルもテーブル111a〜111dと同様に、電気伝導率が100、200、300及び400mS/mである場合の缶体の内部圧力及び給水温度に対応する適正水位の値を示している。
【0039】
第1給水制御部101は、圧力センサ30により測定された缶体20の内部圧力及び第1給水温度センサ32により測定された缶体入り口の給水温度に近似する複数(例えば、4つ)の適正水位を、燃焼位置に対応する適正水位のテーブルから選択し、選択した複数の適正水位から、缶体20の内部圧力及び給水温度に対応する適正水位を、線形補間を用いて電気伝導率ごとに求める。第1給水制御部101は、求めた特定の電気伝導率ごとの適正水位から、電気伝導率センサ34により測定された電気伝導率における適正水位を、線形補間を用いて求め、当該適正水位を第1目標水位として算出する。
【0040】
また、ボイラ装置1が比例制御ボイラである場合には、記憶部11は、缶体20の燃焼量、第1給水温度センサ32により測定された給水温度、電気伝導率センサ34により測定された缶水の電気伝導率、及び圧力センサ30により測定された缶体20の内部の蒸気の圧力を入力として、適正水位を算出するための近似関数を記憶する。
【0041】
第1給水制御部101は、缶体20の燃焼量、第1給水温度センサ32により測定された缶体入口の給水温度、電気伝導率センサ34により測定された缶水の電気伝導率、及び圧力センサ30により測定された缶体20の内部の蒸気の圧力から、記憶部11に記憶される近似関数を用いて適正水位を求め、当該適正水位を第1目標水位として算出する。
【0042】
次に、制御部10は、水位センサ31により検出された缶体20の内部の水位が、第1適正水位範囲に収まるか否かを判定して、水位が、第1適正水位範囲に収まる場合、水位センサ31により検出される水位が、第1目標水位となるように、第1給水制御部101により、給水流量調整弁9を連続制御する。
この際、第1給水制御部101は、水位センサ31により検出される水位が、第1目標水位となるように、給水流量調整弁9をPI制御又はPID制御することができる。
【0043】
なお、給水流量の連続制御(PI制御又はPID制御を含む)に際しては、給水流量調整弁9による給水流量の連続制御に制限されない。例えば、流量の調整可能な給水ポンプ8により給水流量を連続制御してもよい。また、流量の調整可能な給水ポンプ8と給水流量調整弁9とにより、給水流量を連続制御してもよい。給水流量調整弁9による給水量調整、流量の調整可能な給水ポンプ8による給水量調整、流量の調整可能な給水ポンプ8と給水流量調整弁9による給水量調整のいずれを採用するかは任意に設定することができる。
【0044】
缶体20の内部の水位が、第1適正水位範囲に収まらない場合、制御部10は、第2給水制御部102により、負荷率(ボイラ1の燃焼量)、圧力センサ30により測定された缶体20の内部圧力、電気伝導率センサ34により測定された缶水の電気伝導率及び第2給水温度センサ12により測定されたエコノマイザ3入口の給水温度に基づいて水管の内部の第2目標水位を含む第2適正水位範囲を算出する。
ここで、第2適正水位範囲は、第2目標水位に予め設定されるディファレンシャル値をプラスした値を上限値とし、ディファレンシャル値をマイナスした値を下限値とする範囲とすることができる。
【0045】
なお、第2給水制御部102の、水管の内部の第2目標水位を算出する手順については、第1給水制御部101の、水管の内部の第1目標水位を算出する手順と同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、給水温度の測定個所が異なるため、適正水位を算出するための適正水位のテーブル及び適正水位を算出するための近似関数は、第1給水制御部101のそれとは異なる。
【0046】
次に、第2給水制御部102は、水位センサ31により検出される水位が、第2適正水位範囲内か、範囲外であるかを判定する。
水位センサ31により検出される水位が、第2適正水位範囲の上限を超えている場合、第2給水制御部102は、水位が第2適正水位範囲内に収まるまで、給水を停止するように給水流量調整弁9をオフ制御する。
また、水位センサ31により検出される水位が、第2適正水位範囲の下限以下の場合、第2給水制御部102は、水位が第2適正水位範囲に収まるまで、給水を供給するように給水流量調整弁9をオン制御する。
このように、制御部10は、水位が、第2適正水位範囲に収まらない場合、第2給水制御部102により、給水を間欠制御する。
【0047】
水位センサ31により検出される水位が、第2適正水位範囲内の場合、又は第2給水制御部102による間欠給水制御により、水位センサにより検出される水位が、第2適正水位範囲に収まった場合、制御部10は、所定時間経過後に、第1給水制御部101による連続給水制御(PI制御又はPID制御を含む)に移行する。
なお、所定時間は、缶体給水温度が安定化するまでの時間を確保するためのものである。
【0048】
こうすることで、制御部10は、燃焼量のステージが低燃焼から高燃焼に、又は高燃焼から低燃焼に急激に変更され、大幅な目標水位の変動が生じた場合であっても、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートを未然に防ぐとともに、過熱防止やボイラ待機による圧力低下防止を可能とすることができる。
そして、ボイラが定常状態になった場合、定常時の目標水位に遅延なく、連続給水制御(PI制御又はPID制御)に復帰することができる。
【0049】
次に、第1実施形態のボイラ装置1における、制御部10の動作について、
図4を参照しながら説明する。
【0050】
ステップST1において、制御部10は、第1給水制御部101により、缶体入口の給水温度を含む複数のパラメータに基づいて水管の内部の第1目標水位を含む第1適正水位範囲を算出する。
【0051】
ステップST2において、制御部10は、水位センサ31により検出された缶体20の内部の水位が、ステップST1において算出した第1適正水位範囲に収まるか否かを判定する。第1適正水位範囲に収まる場合(YES)には、ステップST3へ進む。第1適正水位範囲に収まらない場合(NO)にはステップST4に進む。
【0052】
ステップST3において、制御部10は、第1給水制御部101により、水位センサ31により検出される水位が、第1目標水位となるように、給水流量調整弁9等を連続制御(PI制御又はPID制御)する。その後、ステップST1に戻る。
【0053】
ステップST4において、制御部10は、第2給水制御部102により、エコノマイザ入口の給水温度を含む複数のパラメータに基づいて水管の内部の第2目標水位を含む第2適正水位範囲を算出する。
【0054】
ステップST5において、制御部10は、第2給水制御部102により、水位センサ31により検出された缶体20の内部の水位が、ステップST4において算出した第2適正水位範囲内か否かを判定する。水位が第2適正水位範囲に収まる場合(YES)には、ステップST8に進む。水位が、第2適正水位範囲の上限を超えている場合には、ステップST6へ進む。水位が、第2適正水位範囲の下限以下の場合、ステップST7へ進む。
【0055】
ステップST6において、制御部10は、第2給水制御部102により、水位が第2適正水位範囲内に収まるまで、給水を停止するように給水流量調整弁9をオフ制御する。水位が第2適正水位範囲内に収まった場合、ST8に進む。
【0056】
ステップST7において、制御部10は、第2給水制御部102により、水位が第2適正水位範囲に収まるまで、給水を供給するように給水流量調整弁9をオン制御する。水位が第2適正水位範囲内に収まった場合、ST8に進む。
【0057】
ステップST8において、制御部10は、所定時間経過後に、ステップST1に戻る。
【0058】
上述した第1実施形態に係るボイラ装置1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0059】
第1実施形態におけるエコノマイザを有するボイラ装置1によると、定常時は、第1給水制御部101により、水位センサ31により検出される水位が、第1給水温度センサ32により測定される缶体入り口の給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第1目標水位となるように、給水流量調整弁9等を連続制御(PI制御又はPID制御)する。非定常時になった場合、例えば燃焼量のステージが低燃焼から高燃焼に、又は高燃焼から低燃焼に急激に変更され、大幅な目標水位の変動が生じた場合(水位が第1目標水位を含む第1適正水位範囲外となった場合)第2給水制御部102により、水位センサ31により検出される水位が、第2給水温度センサ12により測定されるエコノマイザ入り口の給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて算出される第2目標水位を含む第2適正水位範囲内になるように、給水流量調整弁9等を間欠制御し、水位が第2目標水位を含む第2適正水位範囲に収まった後、所定時間経過後に第1給水制御部による制御に戻す。このため、非定常時に、大幅な目標水位の変動が生じた場合であっても、目標水位のオーバーシュート又はアンダーシュートを未然に防ぐとともに、過熱防止やボイラ待機による圧力低下防止を可能とし、定常時の目標水位に遅延なく移行できるように連続給水制御することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0061】
エコノマイザ3を加熱する排ガスは、ボイラ2からの排ガスに制限されず、例えば、別設備のエンジンからの排ガスであってもよい。
【0062】
第1実施形態では、給水流量調整部を給水流量調整弁9としたが、給水流量調整部は、弁(バルブ)に制限されない。例えば、給水流量調整部として、流量の調整可能な給水ポンプ8としてもよい。また、給水流量調整部を流量の調整可能な給水ポンプ8と給水流量調整弁9とから成るものとしてもよい。給水流量調整弁9による給水量調整、流量の調整可能な給水ポンプ8による給水量調整、流量の調整可能な給水ポンプ8と給水流量調整弁9による給水量調整のいずれを採用するかは任意に設定することができる。
【0063】
第1実施形態では、第1給水制御部101により、第1給水温度センサ32により測定される缶体入口の給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて第1目標水位を算出しているが、当該機能を第1給水制御部101から独立させてもよい。同様に、第2給水制御部102により、第2給水温度センサ33により測定されるエコノマイザ入口の給水の温度を含む複数のパラメータに基づいて第2目標水位を算出しているが、当該機能を第2給水制御部102から独立させてもよい。
【0064】
第1実施形態では、制御部10が、水位センサ31により検出された缶体20の内部の水位が、第1適正水位範囲に収まるか否かを判定しているが、第1給水制御部101により、判定してもよい。