(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2導電型中間領域の最も外側に、前記第1小領域よりも不純物濃度が低く、かつ外側に隣接する前記第2導電型半導体領域よりも不純物濃度が高い第3小領域が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記第3小領域は、前記第2導電型中間領域の最も外側に配置された前記第1小領域の内部に、前記第1小領域よりも不純物濃度の低い第2導電型の第1小領域部が選択的に設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
前記第3小領域は、前記活性領域と前記終端構造部との境界に沿った方向に、前記第1小領域と前記第1小領域部とを交互に繰り返し配置してなることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
前記第2導電型中間領域の最も内側に、内側に隣接する前記第2導電型半導体領域よりも不純物濃度が低く、かつ前記第2小領域よりも不純物濃度が高い第4小領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
前記第4小領域は、前記第2導電型中間領域の最も内側に配置された前記第2小領域の内部に、前記第2小領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第2小領域部が選択的に設けられてなることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
前記第4小領域は、前記活性領域と前記終端構造部との境界に沿った方向に、前記第2小領域と前記第2小領域部とを交互に繰り返し配置してなることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
隣り合う前記第1小領域と前記第2小領域との間に、前記第1小領域よりも不純物濃度が低く、かつ前記第2小領域よりも不純物濃度が高い第5小領域が設けられていることを特徴とする請求項1または8に記載の半導体装置。
前記第5小領域は、前記第1小領域の内部に、前記第1小領域よりも不純物濃度の低い第2導電型の第3小領域部が選択的に設けられてなることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
前記第5小領域は、前記活性領域と前記終端構造部との境界に沿った方向に、前記第1小領域と前記第3小領域部とを交互に繰り返し配置してなることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
最も外側に位置する前記区分に配置された前記第1小領域の内部に、前記第1小領域よりも不純物濃度の低い第2導電型の第1小領域部が選択的に設けられていることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一つに記載の半導体装置。
最も内側に位置する前記区分に配置された前記第2小領域の内部に、前記第2小領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第2小領域部が選択的に設けられていることを特徴とする請求項13〜20のいずれか一つに記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)半導体を用いた半導体装置(以下、炭化珪素半導体装置)は、近年、シリコン(Si)半導体を用いた半導体装置の限界を超える素子として注目されている。特に、炭化珪素半導体は、シリコン半導体に比べて破壊電界強度が高い、熱伝導率が高いという特長を活かして高耐圧素子への応用が期待されている。しかし、実用的な炭化珪素半導体装置を作製(製造)するには、高耐圧を安定して得られる終端構造の形成が重要な課題となっている。終端構造部は、活性領域の周囲を囲み、活性領域の基板おもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する領域である。活性領域は、オン状態のときに電流が流れる領域である。
【0003】
通常、素子の耐圧は、n
-型ドリフト層となるn
-型半導体基板(半導体チップ)のおもて面側に形成され、かつ活性領域から活性領域と終端構造部との境界付近まで延在するp型高濃度領域の外周部における電界集中によって制限される。このp型高濃度領域は、例えばpn接合ダイオードの場合、n
-型ドリフト層との間のpn接合を形成するp型アノード領域である。そこで、p型高濃度領域の外側(チップ外周部側)の端部に隣接して、p型高濃度領域よりも不純物濃度の低いp
-型低濃度領域を形成することで、終端構造部における電界を緩和する接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造が公知である。
【0004】
JTE構造では、p型高濃度領域とn
-型ドリフト層との間のpn接合から外側に伸びる空乏層はp型高濃度領域およびp
-型低濃度領域の両方に広がる。これによって、p型高濃度領域の外周部での電界が緩和されるため、耐圧を向上させることができる。このJTE構造をさらに高耐圧な素子に適用する場合、p
-型低濃度領域の外周部にも電界が集中し、その結果、JTE構造を構成するp
-型低濃度領域の外周部でのアバランシェ降伏によって耐圧が制限されてしまう。このような問題は、p
-型低濃度領域の不純物濃度を内側(活性領域側)から外側に向う方向に緩やかに減少させることで回避することができる。
【0005】
このように内側から外側に向う方向に緩やかに減少する不純物濃度分布を有するp
-型低濃度領域からなるJTE構造は、VLD(Variation of Lateral Doping)構造と称される。VLD構造では、電界集中点が複数個所に分散されるため、最大電界強度が大幅に低減される。ところで、不純物の熱拡散が非常に小さく、かつ不純物導入のために高加速電圧のイオン注入を行う炭化珪素半導体では、VLD構造を適用してp
-型低濃度領域の不純物濃度を内側から外側に向う方向に減少させることは難しい。このため、外側に配置されるほど不純物濃度を低くしたまたは厚さを薄くした複数のp
-型低濃度領域を隣接して形成してJTE構造を構成する必要がある。
【0006】
不純物濃度または厚さの異なる複数のp
-型低濃度領域からなるJTE構造を構成する場合、素子の耐圧性能の観点から、p
-型低濃度領域の個数を増やし、隣り合うp
-型低濃度領域同士の不純物濃度差を可能な限り小さくすることが好ましい。しかしながら、工程数が増加するため、製造コストの低減を妨げる要因となっている。現在、炭化珪素半導体装置では、2段階または3段階で不純物濃度または厚さを変えた複数のp
-型低濃度領域からなるJTE構造を形成することが一般的である。炭化珪素半導体装置の一般的なJTE構造について、ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)を例に説明する。
【0007】
図15は、従来のSiC−SBDの構造を示す説明図である。
図15(a)には平面レイアウトを示し、
図15(b)には
図15(a)の切断線AA−AA’における断面構造を示す。
図15に示すように、例えば600Vや1200Vの耐圧クラスでは、一般的に、活性領域111の周囲を囲む終端構造部112には、不純物濃度の異なる2つのp型領域(p
-型領域104およびp
--型領域105)からなるJTE構造が設けられる。具体的には、n
+型炭化珪素基板101のおもて面に、n
-型ドリフト層102となる炭化珪素エピタキシャル層が堆積されている。以下、n
+型炭化珪素基板101およびn
-型ドリフト層102からなるエピタキシャル基板を炭化珪素基体(半導体チップ)とする。
【0008】
炭化珪素基体のおもて面(n
-型ドリフト層102側の表面)の表面層には、活性領域111と終端構造部112との境界に、活性領域111から終端構造部112にわたってp型ガードリング103が選択的に設けられている。p型ガードリング103は、活性領域111におけるn
-型ドリフト層102とアノード電極108とのショットキー接合の周囲を囲む。また、終端構造部112において、炭化珪素基体のおもて面の表面層には、p型ガードリング103よりも外側に、p型ガードリング103の周囲を囲むようにJTE構造が設けられている。JTE構造は、p
-型領域104およびp
--型領域105(以下、第1JTE領域104および第2JTE領域105とする)からなる。
【0009】
第1JTE領域104は、p型ガードリング103の周囲を囲み、かつp型ガードリング103の外側の端部に接する。第1JTE領域104の不純物濃度は、p型ガードリング103の不純物濃度よりも低い。第2JTE領域105は、第1JTE領域104よりも外側に配置され、第1JTE領域104の周囲を囲み、かつ第1JTE領域104の外側の端部に接する。第2JTE領域105の不純物濃度は、第1JTE領域104の不純物濃度よりも低い。また、第1,2JTE領域104,105は、ともに一様な不純物濃度分布を有する。符号107,109は、それぞれ層間絶縁膜およびカソード電極である。
【0010】
発明者の鋭意研究により、1200V耐圧クラスまでは、
図15に示すJTE構造によって耐圧を確保可能であるが、さらに高耐圧クラスでは、第1JTE領域104と第2JTE領域105との境界における電界集中が顕著になる傾向があることが確認されている。この第1JTE領域104と第2JTE領域105との境界における電界集中が生じることにより、終端構造部112の所定耐圧を確保するために必要な製造プロセスのマージンが低減するという問題がある。終端構造部の所定耐圧を確保するために必要な製造プロセスのマージンとは、JTE構造を構成するp型領域を形成する際のイオン注入精度(ドーズ量や拡散深さ)、電気的活性化率に対する終端構造部の耐圧のマージンである。
【0011】
このような製造プロセスのマージンについての問題は、JTE構造を構成するp型領域の個数を増やして、不純物濃度差の小さいp型領域同士が隣接するように複数のp型領域を配置し、内側から外側に向ってより段階的に不純物濃度を減少させることで改善可能である。しかしながら、JTE構造を構成するp型領域の個数を増やした分だけフォトリソグラフィおよびイオン注入の工程数が増えることとなり、コストの増大につながるという新たな問題が生じる。そこで、炭化珪素半導体装置のJTE構造に関して、JTE構造の電界を緩和するための種々の提案がなされている。
【0012】
JTE構造の電界を緩和した装置として、第2JTE領域の、第1JTE領域側の部分に、第1JTE領域と同じ不純物濃度を有する複数のp型小領域を、第1JTE領域の周囲を囲むリング状に設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1(第0033段落、第11図)参照。)。また、JTE構造の電界を緩和した別の装置として、下記特許文献1のJTE構造をさらに最適化した装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、さらに第2JTE領域の周囲を囲む第3JTE領域を備え、第3JTE領域の、第2JTE領域側の部分に、第2JTE領域と同じ不純物濃度を有する複数のp型小領域が設けられている。
【0013】
図15の第1,2JTE領域104,105の2層構造のJTE構造に下記特許文献1,2のJTE構造を付加した構造を
図16に示す。
図16は、従来のSiC−SBDの構造の別の一例を示す説明図である。
図16(a)にはJTE構造の平面レイアウトを示し、
図16(b)にはJTE構造の断面構造を示す。
図16に示すJTE構造では、第1JTE領域104と第2JTE領域105との間に、p
-型小領域121およびp
--型小領域122からなる電界緩和領域120が設けられている。p
--型小領域122とp
-型小領域121とは、内側(活性領域111側)から外側に向う方向に、内側に隣接するp型小領域の周囲を囲むように交互に繰り返し配置されている。
【0014】
p
-型小領域121の不純物濃度は、第1JTE領域104の不純物濃度と等しい。p
-型小領域121の幅(内側から外側に向う方向の幅、以下、単に幅とする)x
11は、第1JTE領域104の幅よりも狭く、かつ外側に配置されたp
-型小領域121ほど狭い幅となっている。p
--型小領域122の不純物濃度は、第2JTE領域105の不純物濃度と等しい。p
--型小領域122の幅x
12は、第2JTE領域105の幅よりも狭く、かつ外側に配置されたp
--型小領域122ほど広い幅となっている。このようにp
-型小領域121およびp
--型小領域122の各幅x
11,x
12をそれぞれ外側に向けて変えることで、第1JTE領域104から第2JTE領域105へ向う方向に不純物濃度を徐々に減少させた構成となっている。
【0015】
下記特許文献1,2では、活性領域の周囲を囲む同心円状に各JTE領域を形成しており、各JTE領域の不純物濃度はイオン注入のドーズ量で制御されている。また、このようにJTE領域の不純物濃度を制御する方法以外に、JTE領域の平面パターンをJTE領域ごとに変えることで各JTE領域の不純物濃度を制御する方法も報告されている。例えば、第1JTE領域と同一の不純物濃度および同一の深さを有するp
-型領域をメッシュ形状(格子状)に配置してn
-型ドリフト層をマトリクス状に残した第2JTE領域を備えた装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3のJTE構造を
図17,18に示す。
【0016】
図17は、従来のSiC−SBDの構造の別の一例を示す説明図である。
図17(a)には平面レイアウトを示し、
図17(b)には
図17(a)の切断線BB−BB’における断面構造を示す。
図18は、
図17の要部を拡大して示す平面図である。
図18には、
図17の矩形枠130で囲む部分を拡大して示す。
図17,18に示すように、下記特許文献3では、第1JTE領域131と同一の不純物濃度および同一の深さを有する第2JTE領域132の内部にn
-型ドリフト層102を選択的に残すことによって、第1JTE領域131の外側に第1JTE領域131よりも不純物濃度の低いJTE領域を設けたことと等価となる。
【0017】
また、下記特許文献3には、マトリクス状に残したn
-型ドリフト層102の幅や配置密度を変えて、第2JTE領域132の内部に占めるn
-型ドリフト層102の割合を変えることで所定の不純物濃度分布を得ることが記載されている。また、下記特許文献1〜3に示すJTE構造は、炭化珪素半導体装置のJTE構造に限らず、上述したVLD構造の改良項目として知られている。例えば、メッシュ状またはマトリクス状のパターンに開口した酸化膜をマスクとしてイオン注入により所定の平面パターンのp
-型領域を形成することで、JTE領域の所定の不純物濃度分布を得る方法が提案されている(例えば、下記特許文献4(第0050段落、第3図)参照。)。また、円形状、長方形形状または十字形状の単位マスクよりなるイオン注入用マスクを形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献5参照。)。下記特許文献5では、各JTE領域の形成領域において、それぞれ、単位マスクの寸法と配置間隔が異なるようにイオン注入用マスクを形成している。
【0018】
また、JTE構造の別の形成方法として、第1JTE領域と、第1JTE領域よりも外側に設けられた、第1JTE領域よりも不純物濃度の低い第2JTE領域と、第1JTE領域と第2JTE領域との間に設けられた不純物濃度の異なる第1,2p型小領域からなり、第1JTE領域と第2JTE領域との間の平均不純物濃度を有する第3JTE領域と、からなるJTE構造を形成するにあたって、次の方法が提案されている。第1マスクを用いてイオン注入し、第2JTE領域と同じ不純物層を第1JTE領域の形成領域におよぶように形成するとともに第2小領域を形成する。その後、少なくとも第2JTE領域を覆う第2マスクを用いてイオン注入し、第1JTE領域および第1小領域を形成する(例えば、下記特許文献2参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0073】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、ショットキーバリアダイオード(SBD)を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図1(a)には平面レイアウトを示し、
図1(b)には
図1(a)の切断線A−A’における断面構造を示す。
図2は、
図1のJTE構造の一部(後述する電界緩和領域20)を拡大して示す説明図である。
図2(a),2(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図3は、
図1のJTE構造の一部の不純物濃度分布を示す特性図である。
図3(a)には、電界緩和領域20の平面レイアウトを示す。
図3(b)には、
図3(a)の切断線B−B’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図3(c)には、電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。
【0074】
図1(a)に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置は、オン状態のときに電流が流れる活性領域11と、活性領域11の基体おもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する終端構造部12と、を備える。活性領域11には、SBDの素子構造(不図示)が設けられている。活性領域11と終端構造部12との境界には、活性領域11の周囲を囲むようにp型ガードリング3が設けられている。終端構造部12は、活性領域11の周囲を囲む。終端構造部12には、不純物濃度の異なる2つのp型領域(第2導電型半導体領域(p
-型領域4およびp
--型領域5))と、p
-型領域4とp
--型領域5との間に設けられたp型の電界緩和領域(第2導電型中間領域)20と、からなるJTE構造が設けられている。
【0075】
p型ガードリング3、p
-型領域(以下、第1JTE領域とする)4、電界緩和領域20およびp
--型領域(以下、第2JTE領域とする)5は、内側(活性領域側)から順に、活性領域11(例えば半導体チップの中心)を中心とした同心円状に配置されている。第1JTE領域4の不純物濃度は、p型ガードリング3の不純物濃度よりも低い。第2JTE領域5の不純物濃度は、第1JTE領域4の不純物濃度よりも低い。電界緩和領域20の平均不純物濃度は、第1JTE領域4の不純物濃度よりも低く、かつ第2JTE領域5の不純物濃度よりも高い。電界緩和領域20の単位面積あたりの平均不純物濃度は、第1JTE領域4と第2JTE領域5との中間の不純物濃度である。電界緩和領域20の詳細な説明については後述する。
【0076】
図1(b)に示すように、p型ガードリング3、第1JTE領域4、電界緩和領域20および第2JTE領域5は、それぞれ、炭化珪素基体(半導体チップ)10のおもて面(n
-型ドリフト層2側の表面)の表面層に選択的に設けられている。炭化珪素基体10とは、n
+型炭化珪素基板1のおもて面にn
-型ドリフト層2となる炭化珪素エピタキシャル層を積層してなるエピタキシャル基板である。p型ガードリング3は、活性領域11と終端構造部12との境界に、活性領域11から終端構造部12にわたって選択的に設けられている。p型ガードリング3は、活性領域11におけるn
-型ドリフト層2とアノード電極8とのショットキー接合の周囲を囲む。
【0077】
JTE構造は、p型ガードリング3よりも外側に設けられている。具体的には、JTE構造を構成する各領域のうち、最も内側に配置された第1JTE領域4は、p型ガードリング3の外側の端部に接する。電界緩和領域20は、第1JTE領域4よりも外側に配置され、かつ第1JTE領域4の外側の端部に接する。第2JTE領域5は、電界緩和領域20よりも外側に配置され、かつ電界緩和領域20の外側の端部に接する。p型ガードリング3、第1JTE領域4、電界緩和領域20および第2JTE領域5の深さは、ともに等しくてもよいし、隣接する領域との上記不純物濃度差を満たすように種々調整されていてもよい。
【0078】
層間絶縁膜7は、終端構造部12のJTE構造(すなわち第1JTE領域4、電界緩和領域20および第2JTE領域5)を覆う。すなわち、終端構造部12のJTE構造は、層間絶縁膜7によって、アノード電極8と電気的に絶縁されている。層間絶縁膜7の内側端部は、p型ガードリング3上に延在している。アノード電極8は、炭化珪素基体10のおもて面上に設けられ、n
-型ドリフト層2にショットキー接合するとともにp型ガードリング3に接する。アノード電極8の端部は、層間絶縁膜7上に延在している。カソード電極9は、炭化珪素基体10の裏面(n
+型カソード層となるn
+型炭化珪素基板1の裏面)に設けられている。
【0079】
次に、電界緩和領域20について詳細に説明する。
図2に示すように、電界緩和領域20は、p
-型領域(以下、第1小領域とする)21とp
--型領域(以下、第2小領域とする)22とを、第1JTE領域4の周囲を囲む同心円状に交互に繰り返し配置してなる。
図2では、左側が活性領域11側(すなわち第1JTE領域4側)であり、右側がチップ外周部側(すなわち第2JTE領域5側)である(
図3〜6,11,20,22,23,26〜31,34,36,38,40,44,46,47においても同様)。電界緩和領域20の、最も内側には、第1JTE領域4に接するように第2小領域22が配置され、最も外側に、第2JTE領域5に接するように第1小領域21が配置される。第1小領域21は、外側に配置されるほど狭い幅(内側から外側に向う方向の幅)x
1で設けられている。第2小領域22は、配置位置によらずほぼ同じ(一定の)幅x
2で設けられている。第1小領域21の不純物濃度は、例えば、第1JTE領域4の不純物濃度とほぼ等しい。第2小領域22の不純物濃度は、例えば、第2JTE領域5の不純物濃度とほぼ等しい。
【0080】
図3(b)に示すように、隣接する第1小領域21と第2小領域22との間には、p型不純物濃度差Δn
pが存在する。例えば、1組の隣接する第1小領域21および第2小領域22において、第1小領域21の幅および不純物濃度をそれぞれx
1およびn
p1とし、第2小領域22の幅および不純物濃度をそれぞれx
2およびn
p2とする。この場合、電界緩和領域20において、1組の隣接する第1小領域21および第2小領域22を含む領域(以下、等価濃度領域とする)30の平均不純物濃度N
pは下記(3)式であらわされる。また、電界緩和領域20は、内側から外側へ向う方向に複数の等価濃度領域30を隣接して並べた構成と仮定することができる。
【0081】
N
p=((x
1×n
p1)+(x
2×n
p2))/(x
1+x
2) ・・・(3)
【0082】
したがって、
図3(c)に示すように、マクロな視点から見れば、上述したように第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2を設定することで、外側に配置されるほど等価濃度領域30の平均不純物濃度N
p(第1,2小領域21,22間を横切る点線で示す)が小さくなる。すなわち、隣接する第1小領域21と第2小領域22とのp型不純物濃度差Δn
pを内側から外側に向うにしたがって徐々に減少させることができ、当該p型不純物濃度差Δn
pの減少に伴ってその部分での電界強度を低減することができると推測される。このため、電界緩和領域20の不純物濃度分布を、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布とほぼ等価な不純物濃度分布に近づけることができる。
図2,3(a)では、不純物濃度のほぼ等しい領域(第1JTE領域4と第1小領域21、および、第2JTE領域5と第2小領域22)を同じハッチングで示す(
図4〜9,11,20(a),20(b),21,22(a),23(a)、
図26〜30,46,47の(a)、
図31,34,36,38,40,44の(a),(b)においても同様)。
【0083】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、第1JTE領域と第2JTE領域との間に、第1,2JTE領域それぞれと略同じ不純物濃度の第1,2小領域を第1JTE領域の周囲を囲む同心円状に交互に繰り返し配置してなる電界緩和領域を設けることで、第1JTE領域と第2JTE領域との間の不純物濃度勾配を、電界緩和領域を設けない場合に比べて小さくすることができる。これにより、第1JTE領域と第2JTE領域との間の電界を緩和することができ、終端構造部の外周部での絶縁破壊強度を高くすることができる。さらに、実施の形態1によれば、相対的に低不純物濃度の第2小領域は一定の幅とし、相対的に高不純物濃度の第1小領域は外側に配置されるほど幅を狭くすることで、電界緩和領域の幅を狭くすることができる。したがって、終端構造部全体の幅(エッジ長)を長くすることなく、終端構造部の耐圧を向上させることができる。これにより、コストの増大を回避することができるとともに、終端構造部の耐圧を向上させることができる。例えば、炭化珪素半導体装置として用いられるSBDやMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)においては、活性領域と終端構造部との耐圧差は終端構造部の耐圧が大きいほど動作が安定し、実使用上に信頼性が向上する。このため、可能な限り終端構造部の耐圧を高くすることが好ましい。
【0084】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。
図4は、実施の形態2にかかる半導体装置のJTE構造の一部を示す説明図である。
図4(a),4(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。実施の形態2にかかる半導体装置の電界緩和領域20以外の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置(
図1)と同様である。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、電界緩和領域20の最も外側の第1小領域21(すなわち第2JTE領域5の内側に接する第1小領域21)の内部に、第1小領域21よりも不純物濃度の低い第1小領域部31を選択的に設けている点である。すなわち、電界緩和領域20の最も外側の小領域(以下、第3小領域とする)20aは、第1小領域21および第1小領域部31で構成されている。このため、第3小領域20aの平均不純物濃度は、第1小領域21の不純物濃度よりも低く、かつ第2JTE領域5の不純物濃度よりも高い。
【0085】
具体的には、第1小領域部31は、活性領域11と終端構造部12との境界に沿った接線方向Yに所定の間隔で配置されている。
図4において、Xは活性領域11と終端構造部12との境界から外側に向う法線方向Xであり、接線方向Yと直交する方向である。第1小領域部31は、内側に隣接する第2小領域22と、外側に隣接する第2JTE領域5とに接する。すなわち、第3小領域20aは、第1小領域21と第1小領域部31とが接線方向Yに交互に繰り返し配置された構成となっている。第1小領域部31の不純物濃度は、例えば、第2JTE領域5の不純物濃度とほぼ等しい。この第1小領域21および第1小領域部31の面積比を適宜変更することで、第3小領域20aの平均不純物濃度を制御することができる。このため、第3小領域20aおよび第3小領域20aの内側に隣接する第2小領域22からなる等価濃度領域30aの平均不純物濃度を、第2JTE領域5の不純物濃度に近づけることができる。
【0086】
例えば、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の等価濃度領域30aとの間には、第1,2小領域21,22の形成工程のプロセス限界に起因するp型不純物濃度差Δn
plが存在する(
図3(c)参照)。具体的には、電界緩和領域20の最も外側の第1小領域21の幅x
1の限界値は、第1小領域21を形成するためのイオン注入用マスクのフォトリソグラフィ工程のプロセス限界で決まる最小幅x
1minとなる。また、第2小領域22の幅(一定幅)x
2の限界値は、第2小領域22を形成するためのイオン注入用マスクのフォトリソグラフィ工程のプロセス限界で決まる最小幅x
2minとなる。このため、最小幅x
1minの第1小領域21と、当該第1小領域21の内側に隣接する最小幅x
2minの第2小領域22からなる等価濃度領域30aの平均不純物濃度にも限界値が存在する。したがって、上述したように電界緩和領域20の最も外側の第1小領域21の内部に第1小領域部31を設けて、電界緩和領域20の最も外側の等価濃度領域30aの平均不純物濃度を第2JTE領域5の不純物濃度に近づける。これにより、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の等価濃度領域30aとのp型不純物濃度差Δn
plを低減させることができるため、このp型不純物濃度差Δn
plに起因する電界集中による耐圧の低下を回避することができる。
【0087】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、電界緩和領域の最も外側の第1小領域の内部に第1小領域よりも不純物濃度の低い第1小領域部を設けることで、電界緩和領域の最も外側の等価濃度領域の平均不純物濃度を第2JTE領域の不純物濃度に近づけることができる。このため、電界緩和領域の不純物濃度分布を、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布とほぼ等価な不純物濃度分布にさらに近づけることができる。これにより、電界緩和領域と第2JTE領域との境界付近での不純物濃度差によって生じる電界集中を緩和することができる。
【0088】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。
図5は、実施の形態3にかかる半導体装置のJTE構造の一部を示す説明図である。
図5(a),5(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。実施の形態3にかかる半導体装置の電界緩和領域20以外の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置(
図1)と同様である。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、電界緩和領域20の最も内側の第2小領域22(すなわち第1JTE領域4の外側に接する第2小領域22)の内部に、第2小領域22よりも不純物濃度の高い第2小領域部32を選択的に設けている点である。すなわち、電界緩和領域20の最も内側の小領域(以下、第4小領域とする)20bは、第2小領域22および第2小領域部32で構成されている。このため、第4小領域20bの平均不純物濃度は、第1JTE領域4よりも低く、かつ第2小領域22の不純物濃度よりも高い。
【0089】
具体的には、第2小領域部32は、接線方向Yに所定の間隔で配置されている。第2小領域部32は、内側に隣接する第1JTE領域4と、外側に隣接する第1小領域21とに接する。すなわち、第4小領域20bは、第2小領域22と第2小領域部32とが接線方向Yに交互に繰り返し配置された構成となっている。第2小領域部32の不純物濃度は、例えば、第1JTE領域4の不純物濃度とほぼ等しい。この第2小領域22および第2小領域部32の面積比を適宜変更することで、第4小領域20bの平均不純物濃度を制御することができる。このため、第4小領域20bおよび当該第4小領域20bの外側に隣接する第1小領域21からなる等価濃度領域30bの平均不純物濃度を、第1JTE領域4の不純物濃度に近づけることができる。
【0090】
例えば、第1JTE領域4と電界緩和領域20の最も内側の等価濃度領域30bとの間には、第2小領域22の形成工程のプロセス限界に起因するp型不純物濃度差Δn
phが存在する(
図3(c)参照)。具体的には、上述したように第2小領域22の幅x
2の限界値は、第2小領域22を形成するためのイオン注入用マスクのフォトリソグラフィ工程のプロセス限界で決まる最小幅x
2minとなる。このため、最小幅x
2minの第2小領域22と、当該第2小領域22の外側に隣接する最大幅x
1maxの第1小領域21からなる等価濃度領域30bの平均不純物濃度にも限界値が存在する。したがって、上述したように電界緩和領域20の最も内側の第2小領域22の内部に第2小領域部32を設けて、電界緩和領域20の最も内側の等価濃度領域30bの平均不純物濃度を第1JTE領域4の不純物濃度に近づける。これにより、第1JTE領域4と電界緩和領域20の最も内側の等価濃度領域30bとのp型不純物濃度差Δn
phを低減させることができるため、このp型不純物濃度差Δn
phに起因する電界集中による耐圧の低下を回避することができる。
【0091】
また、実施の形態3に実施の形態2を適用し、第4小領域20bの平均不純物濃度を制御するとともに、電界緩和領域20の最も外側の小領域(第3小領域)の平均不純物濃度を制御してもよい。
【0092】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、電界緩和領域の最も内側の第2小領域の内部に第2小領域よりも不純物濃度の高い第2小領域部を設けることで、電界緩和領域の最も内側の等価濃度領域の平均不純物濃度を第1JTE領域の不純物濃度に近づけることができる。このため、電界緩和領域の不純物濃度分布を、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布とほぼ等価な不純物濃度分布にさらに近づけることができる。これにより、電界緩和領域と第1JTE領域との境界付近での不純物濃度差によって生じる電界集中を緩和することができる。
【0093】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の構造について説明する。
図6は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図6(a),6(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示し、
図6(c)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態4にかかる半導体装置の電界緩和領域20以外の構成は、実施の形態1にかかる半導体装置(
図1)と同様である。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、第1小領域21と当該第1小領域21の外側に隣接する第2小領域22との境界20c付近において、第1小領域21の内部に、第1小領域21よりも不純物濃度の低い第3小領域部33を選択的に設けている点である。
【0094】
すなわち、第1小領域21の、当該第1小領域21の外側に隣接する第2小領域22との境界20c付近に、第1小領域21および第3小領域部33からなる小領域(以下、第5小領域とする)20dが設けられている。この第5小領域20dの平均不純物濃度は、第1小領域21の不純物濃度よりも低く、かつ第2小領域22の不純物濃度よりも高い。具体的には、第3小領域部33は、接線方向Yに所定の間隔で配置されている。第3小領域部33は、外側に隣接する第2小領域22に接する。すなわち、第3小領域部33と第1小領域21とは、例えば、接線方向Yに所定の間隔で交互に繰り返し配置されている。第3小領域部33の不純物濃度は、例えば、第2JTE領域5の不純物濃度とほぼ等しい。
【0095】
この第2小領域22および第3小領域部33の面積比を適宜変更することで、第1小領域21と当該第1小領域21の外側に隣接する第2小領域22との境界20c付近の平均不純物濃度を制御し、例えば第1小領域21と第2小領域22との中間の不純物濃度にすることができる。このため、第1小領域21から当該第1小領域21の外側に隣接する第2小領域22に至る部分において、第1小領域21と第2小領域22との間に生じるp型不純物濃度差Δn
pを(
図6(c)参照)、内側から外側に向って第1小領域21の不純物濃度から第2小領域22の不純物濃度に段階的に近づけることができる。これにより、第1小領域21と当該第1小領域21の外側に隣接する第2小領域22とのすべての境界20cにおいて、第1小領域21と第2小領域22とのp型不純物濃度差Δn
pを低減させることができる。
【0096】
また、第1小領域21と当該第1小領域21の内側に隣接する第2小領域22との境界20e付近において、第1小領域21の内部に、第1小領域21よりも不純物濃度の低い第4小領域部(不図示)を選択的に設けてもよい。この場合、第2小領域22から当該第2小領域22の外側に隣接する第1小領域21に至る部分において、第1小領域21と第2小領域22とのp型不純物濃度差Δn
pを、内側から外側に向って第2小領域22の不純物濃度から第1小領域21の不純物濃度に段階的に近づけることができる。これにより、第1小領域21と当該第1小領域21の内側に隣接する第2小領域22との境界20eにおいて、第1小領域21と第2小領域22とのp型不純物濃度差Δn
pを低減させることができる。
【0097】
また、実施の形態4に実施の形態3,2を適用し、電界緩和領域20の最も内側の小領域(第4小領域)や、電界緩和領域20の最も外側の小領域(第3小領域)の平均不純物濃度を制御してもよい。
【0098】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態4によれば、第1小領域の内部の、第2小領域との境界付近に、第1小領域よりも不純物濃度の低い第3小領域部または第4小領域部、もしくはその両方を選択的に設けることで、電界緩和領域の不純物濃度分布を、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布とほぼ等価な不純物濃度分布にさらに近づけることができる。
【0099】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体装置の構造について説明する。
図7は、実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図7(a)〜7(c)には、それぞれ電界緩和領域20の断面構造の異なる一例を拡大して示す。
図7では、左側が活性領域11側であり、右側がチップ端部である(
図21においても同様)。実施の形態5にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、第2JTE領域5よりも外側に、さらに1つ以上の電界緩和領域を設けている点である。各電界緩和領域の不純物濃度分布は、実施の形態1と同様に、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布とほぼ等価な不純物濃度分布となっている。
【0100】
具体的には、例えば、
図7(a)に示すように、第2JTE領域5よりも外側にさらに1つの電界緩和領域(以下、第2電界緩和領域とする)41が設けられている。第2電界緩和領域41は、第2JTE領域5の外側の端部に接し、かつ第2JTE領域5の周囲を囲む。第2電界緩和領域41は、第1小領域23と第2小領域24とを、第2JTE領域5の周囲を囲む同心円状に交互に繰り返し配置してなる。第2電界緩和領域41の第1小領域23の不純物濃度は、例えば、第2JTE領域5の不純物濃度とほぼ等しい。第2電界緩和領域41の第2小領域24はn
-型領域であり、その不純物濃度はn
-型ドリフト層2の不純物濃度とほぼ等しい。第2電界緩和領域41の平均不純物濃度は、第2JTE領域5の不純物濃度よりも低い。第2電界緩和領域41の第1,2小領域23,24の各幅および平面レイアウトは、第1JTE領域4と第2JTE領域5との間に配置された電界緩和領域(以下、第1電界緩和領域とする)20と同様である。第1電界緩和領域20の構成は、実施の形態1の電界緩和領域と同様である。
【0101】
また、
図7(b)に示すように、第2電界緩和領域41の外側にさらに第3JTE領域(p
---型領域)6を設けてもよい。すなわち第1〜3JTE領域4〜6からなる3ゾーンJTE構造としてもよい。第3JTE領域6は、第2電界緩和領域41の外側の端部に接し、かつ第2電界緩和領域41の周囲を囲む。この場合、第2電界緩和領域41の第2小領域24はp型領域であり、その不純物濃度は例えば第3JTE領域6の不純物濃度とほぼ等しい。第3JTE領域6の不純物濃度は、第2電界緩和領域41の平均不純物濃度よりも低い。
【0102】
また、
図7(c)に示すように、第3JTE領域6の外側にさらに電界緩和領域(以下、第3電界緩和領域とする)42を設けてもよい。第3電界緩和領域42は、第3JTE領域6の外側の端部に接し、かつ第3JTE領域6の周囲を囲む。第3電界緩和領域42は、第1小領域25と第2小領域26とを、第3JTE領域6の周囲を囲む同心円状に交互に繰り返し配置してなる。第3電界緩和領域42の第1小領域25の不純物濃度は、例えば、第3JTE領域6の不純物濃度とほぼ等しい。第3電界緩和領域42の第2小領域26はn
-型領域であり、その不純物濃度はn
-型ドリフト層2の不純物濃度とほぼ等しい。第3電界緩和領域42の平均不純物濃度は、第3JTE領域6の不純物濃度よりも低い。第3電界緩和領域42の第1,2小領域25,26の各幅および平面レイアウトは、第1電界緩和領域20と同様である。
【0103】
第3電界緩和領域42の外側にさらにJTE領域および電界緩和領域を交互に繰り返し配置することでさらにJTE構造での電界集中を緩和させることができるが、その分、フォトリソグラフィやイオン注入の工程を追加することとなり、コストの増大につながる。このため、上述した
図7(a)〜7(c)に示すJTE構造が現実的な構成であると推測される。また、実施の形態5に実施の形態2〜4を適用し、各電界緩和領域20,41,42の最も内側の小領域(第4小領域)や、各電界緩和領域20,41,42の最も外側の小領域(第3小領域)、各電界緩和領域20,41,42の第1,2小領域間の小領域(第5小領域)の平均不純物濃度を制御してもよい。
【0104】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態5によれば、第2JTE領域の外側にさらに電界緩和領域やJTE領域を交互に繰り返し配置することにより、第2JTE領域の外側における電界集中を緩和させることができる。このため、終端構造部での電界集中をさらに緩和させることができる。
【0105】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法として、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について
図1,8,9を参照しながら説明する。
図8,9は、実施の形態6にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8,9には、(a)に製造途中の平面レイアウトを示し、(b)に製造途中の断面構造を示す。
図8,9では、左側が活性領域11側であり、右側がウエハ端部である。
【0106】
まず、所定の不純物濃度を有する所定厚さのn
+型炭化珪素基板(半導体ウエハ)1を用意する。次に、n
+型炭化珪素基板1のおもて面にn
-型ドリフト層2となる炭化珪素エピタキシャル層を成長させることによりエピタキシャルウエハ(炭化珪素基体10)を作製する。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、活性領域11の周囲を囲む終端構造部12において、炭化珪素基体10のおもて面(n
-型ドリフト層2側の表面)の表面層に、活性領域11の周囲を囲む例えば環状の平面形状でp型ガードリング3を選択的に形成する。
【0107】
次に、
図8に示すように、炭化珪素基体10のおもて面に、第1JTE領域4および第1小領域21の形成領域が開口した例えばレジスト材または酸化膜(SiO
2)からなる第1イオン注入用マスク51を形成する。次に、第1イオン注入用マスク51をマスクとして例えばアルミニウム(Al)などのp型不純物を第1イオン注入することにより、n
-型ドリフト層2の表面層に、第1JTE領域4および第1小領域21をそれぞれ選択的に形成する。このとき、第2JTE領域5および第2小領域22の形成領域は第1イオン注入用マスク51によって覆われているため、p型不純物は注入されない。次に、第1イオン注入用マスク51を除去する。
【0108】
次に、
図9に示すように、n
-型ドリフト層2の表面に、第1,2JTE領域4,5および第1,2小領域21,22の形成領域が開口した例えばレジスト材または酸化膜からなる第2イオン注入用マスク52を形成する。次に、第2イオン注入用マスク52をマスクとして例えばアルミニウムなどのp型不純物を第2イオン注入することにより、n
-型ドリフト層2の表面層に、第2JTE領域5および第2小領域22をそれぞれ選択的に形成する。また、この第2イオン注入により、すでに形成されている第1JTE領域4および第1小領域21が高不純物濃度化される。
【0109】
このように第1イオン注入用マスク51によって第2小領域22の形成領域を覆うことで、第1,2小領域21,22を容易に形成することができる。また、2回のイオン注入(第1,2イオン注入)により、2段階に不純物濃度が減少した2層構造(第1,2JTE領域4,5)のJTE構造が形成されるとともに、所定の平面レイアウトで配置された不純物濃度の異なる第1,2小領域21,22からなる電界緩和領域20を形成することができる。すなわち、活性領域11側から外側に向う方向に一定の割合で減少する平均不純物濃度分布を有する電界緩和領域20が形成される。
【0110】
次に、第2イオン注入用マスク52を除去した後、その後の一般的な製造プロセス工程(例えば層間絶縁膜7、アノード電極8およびカソード電極9の形成)を行う。その後、半導体ウエハをチップ状に切断(ダイシング)することにより、
図1に示すSBDが完成する。
【0111】
上述した実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法において、電界緩和領域20を構成する第1,2小領域の平面レイアウトは、第1イオン注入用マスク51のパターンによって種々変更可能である。すなわち、実施の形態6に実施の形態2,4を適用して、第2JTE領域5とほぼ同じ不純物濃度を有する第1小領域部31(
図4参照)や第3小領域部33(
図6参照)、第4小領域部(不図示)を形成することにより、実施の形態2,4にかかる半導体装置を作製することができる。また、実施の形態6に実施の形態3を適用して、第1JTE領域4とほぼ同じ不純物濃度を有する第2小領域部32(
図5参照)を形成することにより、実施の形態3にかかる半導体装置を作製することができる。
【0112】
以上、説明したように、実施の形態6によれば、実施の形態1〜5と同様の効果を得ることができる。
【0113】
(実施例1)
次に、終端構造部12の耐圧について検証した。
図10は、実施例1にかかる半導体装置の終端構造部の耐圧特性を示す特性図である。
図10の横軸は第1JTE領域4を形成するための第1イオン注入のドーズ量であり、縦軸は終端構造部12の耐圧である。まず、実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、2層構造のJTE構造を構成する第1,2JTE領域4,5間に電界緩和領域20を備えたSiC−SBD(
図1,2参照)を作製した(以下、実施例1とする)。実施例1においては、第1JTE領域4と第2JTE領域5との不純物濃度比を1:0.5と固定し、第1JTE領域4を形成するための第1イオン注入のアルミニウムのドーズ量を種々変更して複数の試料を作製し、各試料の耐圧を測定した。その結果を
図10に示す。また、
図10には、比較として、電界緩和領域20を設けない従来のJTE構造からなるSiC−SBD(
図15参照。以下、従来例1とする)の耐圧特性を示す。従来例1の、電界緩和領域20を備えていないこと以外の構成は、実施例1と同様である。
【0114】
図10に示す結果より、従来例1では、第1JTE領域4の不純物濃度(第1イオン注入のドーズ量)によって耐圧が低下する場合があることが確認された。一方、実施例1においては、第1JTE領域4の不純物濃度によらず、耐圧をほぼ一定に確保することができ、従来例1で生じた耐圧の落ち込みが改善されていることがわかる。半導体装置の最大耐圧は、終端構造部12におけるJTE構造の外側の耐圧で決定される。実施例1においては、電界緩和領域20を設けることにより、第1JTE領域4と第2JTE領域5との間の電界が緩和され、電界集中点が分散されるため、耐圧の落ち込みが生じないと推測される。
【0115】
(実施例2)
次に、エッジ長(終端構造部12の幅)について検証した。
図11は、実施例2にかかる半導体装置のJTE構造の平面レイアウトを示す平面図である。
図11には、(a)に実施の形態1にかかる半導体装置(
図1参照)の構成を備えたSiC−SBDのJTE構造を示し(以下、実施例2とする)、(b),(c)に従来のSiC−SBD(
図16参照)のJTE構造を示す(以下、従来例2,3とする)。実施例2は、第1JTE領域4と第2JTE領域5との間に電界緩和領域20を備える。実施例2の電界緩和領域20は、外側に配置されるほど幅x
1を狭くした第1小領域21と、配置位置によらず一定の幅x
2を有する第2小領域22とを交互に繰り返し配置してなる。
【0116】
従来例2,3は、第1JTE領域104と第2JTE領域105との間に電界緩和領域120を備える。従来例2の電界緩和領域120は、配置位置によらず一定の幅x
11を有する第1小領域121と、外側に配置されるほど幅x
12を広くした第2小領域122とを交互に繰り返し配置してなる(上記特許文献2の
図10に相当)。従来例3の電界緩和領域120は、外側に配置されるほど幅x
11を狭くした第1小領域121と、外側に配置されるほど幅x
12を広くした第2小領域122とを交互に繰り返し配置してなる(上記特許文献2の
図11に相当)。実施例2および従来例2,3ともに、第1小領域および第2小領域を4つずつ配置している。
【0117】
図11に示すように、実施例2の電界緩和領域20には、従来例2,3のように外側に配置されるほど幅を広くした領域が存在しない。このため、実施例2は、従来例2,3に比べて電界緩和領域20の幅を狭くすることができ、エッジ長を短縮することができることがわかる。したがって、本発明においては、終端構造部12に電界緩和領域20を設けることによるエッジ長の拡大を最小限に抑制することができ、コストの増大を抑制することができることが確認された。
【0118】
次に、3ゾーンJTE構造を備えた終端構造部12の耐圧および電界強度分布について検証した。
図12は、実施例2にかかる半導体装置の電界強度分布を示す特性図である。
図13は、従来例2の半導体装置の電界強度分布を示す特性図である。
図14は、従来例3の半導体装置の電界強度分布を示す特性図である。
図12〜14の横軸はp型ガードリングと第1JTE領域との境界(0μm)から外側に向う方向の距離であり、縦軸は電界強度である。基体おもて面から1μmの深さにおいて最大電界強度を示す部分の電界強度を算出している(
図25,43においても同様)。実施例2の電界緩和領域20を3ゾーンJTE構造の第1〜3電界緩和領域20,41,42(
図7(c)参照)に適用した場合の終端構造部12の電界強度分布を
図12に示す。従来例2,3の電界緩和領域120を3ゾーンJTE構造の第1〜3電界緩和領域120,141,142(
図19参照)に適用した場合の終端構造部112の電界強度分布をそれぞれ
図13,14に示す。
【0119】
図12〜14は、それぞれ、実施例2および従来例2,3を適用した3ゾーンJTE構造のSiC−SBDに一定電圧3300Vを印加した場合の逆方向回復時における終端構造部12,112の電界強度分布をシミュレーションした結果である。実施例2において、n
-型ドリフト層2の厚さおよび不純物濃度をそれぞれ30μmおよび3×10
15/cm
3とした。第1〜3JTE領域4〜6の不純物濃度比を、第1JTE領域4:第2JTE領域5:第3JTE領域6=1:0.6:0.4とした。第1〜3JTE領域4〜6のドーズ量を、それぞれ2.1×10
13/cm
2、1.26×10
13/cm
2および0.84×10
13/cm
2とした。従来例2,3の第1〜3JTE領域104〜106の構成は、実施例2の第1〜3JTE領域4〜6と同様である。
【0120】
これら実施例2および従来例2,3を適用した3ゾーンJTE構造のSiC−SBDの耐圧をそれぞれ算出した。その結果、実施例2は、耐圧4253Vであり、従来例2,3に比べて電界緩和領域20の幅を狭くしたとしても、従来例2(耐圧4252V)および従来例3(耐圧4234V)とほぼ同じ耐圧が得られることが確認された。また、
図12に示すように、実施例2おいて、第1〜3JTE領域4〜6の隣接するJTE領域間(第1〜3電界緩和領域20,41,42)での電界集中が、従来例2,3(
図13,14)と同様に緩和されていることが確認された。これらの結果から、本発明の構成を有する電界緩和領域20を用いてエッジ長を短縮した終端構造部12においても、従来の終端構造部112と同様の耐圧を得ることができ、かつ終端構造部12の電界強度分布も良好であることが確認された。
【0121】
(実施の形態7)
次に、実施の形態7にかかる半導体装置の構造について説明する。
図20は、実施の形態7にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図20には、
図1のJTE構造の一部を拡大して示す。
図20(a),20(b)にはそれぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を示し、
図20(c)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態7にかかる半導体装置は、電界緩和領域20の第1,2小領域21,22の繰り返しピッチが実施の形態1にかかる半導体装置と異なる。第1,2小領域21,22の不純物濃度、電界緩和領域20の配置、電界緩和領域20と隣接する第1,2JTE領域4,5との平均不純物濃度差、および活性領域11の構成は、実施の形態1と同様である。
【0122】
具体的には、実施の形態7にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、次の2点である。1つ目の相違点は、等価濃度領域30(1組の隣接する第1,2小領域21,22を含む微小領域)を1つ以上周期的に配置した1区分を複数(ここでは例えば4つの区分61〜64)隣接して配置して電界緩和領域20を構成している点である。例えば、
図20には、第1区分61に2つの等価濃度領域30を配置し、第2区分62に3つの等価濃度領域30を配置し、第3区分63に4つの等価濃度領域30を配置し、第4区分64に6つの等価濃度領域30を配置した電界緩和領域20を示す。
図20(c)に示す活性領域側からチップ外周部側へ向う向き(横向き)の両矢印はそれぞれ1つの等価濃度領域30を示している。
【0123】
2つ目の相違点は、各区分61〜64ごとに第1小領域21の幅x
1を変えて、かつ外側の区分62〜64に配置されるほど第1小領域21の幅x
1を狭くする点である。すなわち、1つの区分内に配置された複数の第1小領域21はすべて同じ幅x
1であり、各区分61〜64に配置された第1小領域21のうち、第1区分61の第1小領域21の幅x
1が最も広く、第4区分64の第1小領域21の幅x
1が最も狭い。第2小領域22が配置位置によらずほぼ同じ幅x
2で設けられている点は、実施の形態1と同様である。すなわち、区分61〜64は外側に配置されるほど平均不純物濃度が低くなり、電界緩和領域20平均不純物濃度分布(傾斜)は内側から外側へ向って4段階で減少している。
【0124】
等価濃度領域30の平均不純物濃度N
pを決める第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2の組み合わせは、最も平均不純物濃度の低い第4区分64の第1小領域21の幅x
1が可能な限りイオン注入工程のプロセス限界で決まる最小寸法になるように設定することが好ましい。すなわち、第4区分64の第1小領域21の幅x
1がプロセス限界となるように第1〜4区分61〜64の各第1小領域21の幅x
1を決定することで、第1〜4区分61〜64の各等価濃度領域30の平均不純物濃度を決定する。そして、第1〜4区分61〜64の各等価濃度領域30の周期的な組み合わせにより、第1〜4区分61〜64にそれぞれ配置される等価濃度領域30の個数が決定される。
【0125】
このように同一区分内に配置する等価濃度領域30はすべて同一構成であるため、各区分61〜64の平均不純物濃度はそれぞれに配置された等価濃度領域30の平均不純物濃度N
p(上記(3)式参照)と同じになるが、各区分61〜64内それぞれの不純物濃度勾配が緩やかになる。これにより、各区分61〜64内において、第1小領域21と第2小領域22との境界での電界集中が緩和される。その理由は、次の通りである。1つの等価濃度領域30の不純物濃度勾配を緩やかにするには、等価濃度領域30の幅(=x
1+x
2)がある程度必要となる。例えば、3300V耐圧クラスの終端構造部12を設計する場合、等価濃度領域30の幅は10μm以上20μm以下程度必要である。等価濃度領域30の幅は外側に配置されるほど狭くなるため、外側に配置された等価濃度領域30ほど不純物濃度勾配を緩やかにしにくい。例えば、第1小領域21の幅x
1を10μm程度とし、第2小領域22の幅x
2をイオン注入工程のプロセス限界で決まる最小寸法(1μm〜2μm程度)とした等価濃度領域30を仮定する。この寸法の等価濃度領域30であっても、電荷印加時に、当該等価濃度領域30を構成する1組の隣り合う第1小領域21と第2小領域22との境界に電界が集中することが発明者によるシミュレーションにより確認されている。実施の形態7においては、上述したように同一区分内に配置された等価濃度領域30はすべて同一構成とすることで、各区分61〜64内での平均不純物濃度をそれぞれほぼ一定とすることができる。すなわち、電界緩和領域20の平均不純物濃度分布は、1区分に相当する幅の広い等価濃度領域30を、電界緩和領域20を区分した分(すなわち4つ)だけ配置したことと等価な平均不純物濃度分布とすることができるからである(
図20(c)に点線で示す)。この場合、電界緩和領域20の平均不純物濃度分布は隣接する区分61〜64の境界で段差状に減少するが、平均不純物濃度の異なる等価濃度領域30間の不純物濃度差は実施の形態1と同様に内側から外側に向って徐々に減少するように設定される。このため、電界緩和領域20の電界強度分布は、内側から外側に向って徐々に減少する不純物濃度分布となる。
【0126】
このように、電界緩和領域20には、隣接する第1,2JTE領域4,5との所定の平均不純物濃度差を満たすように、かつ各区分61〜64ごとに異なる繰り返しピッチで、内側のJTE領域を囲む同心円状に第1,2小領域21,22が交互に繰り返し配置される。この電界緩和領域20は、例えば3ゾーンJTE構造に配置する複数の電界緩和領域にそれぞれ適用可能である。
図21は、実施の形態7にかかる半導体装置の別の一例の構造を示す断面図である。
図21には、実施の形態5と同様に(
図7(c)参照)、第1〜3電界緩和領域20,41,42を配置した場合を示す。第1〜3電界緩和領域20,41,42の配置および隣接するJTE領域との平均不純物濃度差は、実施の形態5と同様である。
【0127】
この場合、第1,2JTE領域4,5間に配置される第1電界緩和領域20の第1,2小領域21,22の構成は、上述した電界緩和領域20と同様である(
図20参照)。また、第2,3電界緩和領域41,42の第1,2小領域(図示省略)においても第1電界緩和領域20と同様に、第2,3電界緩和領域41,42の所定の平均不純物濃度を満たすように、各区分61〜64の各等価濃度領域30の周期的な組み合わせを決定すればよい。すなわち、第1〜3電界緩和領域20,41,42は、同一の構造となっている。これにより、第2,3電界緩和領域41,42においても、第1,2小領域間での電界集中を緩和して、第2,3電界緩和領域41,42の電界分布がさらになだらかになるという効果が得られる。
【0128】
上述した実施の形態7にかかる半導体装置の製造方法は、上述した実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法において上述した各電界緩和領域20,41,42の各区分61〜64における第1,2小領域21,22の平面レイアウトをイオン注入用マスクのパターンによって実現すればよい。
【0129】
(実施例3)
次に、実施の形態7にかかる半導体装置の終端構造部12の耐圧について検証した。
図22は、実施例3にかかる半導体装置のJTE構造の一部を示す説明図である。
図23は、従来例4にかかる半導体装置のJTE構造の一部を示す説明図である。
図22,23において、(a),(b)にはそれぞれ電界緩和領域20,120の平面レイアウトおよび不純物濃度分布を示す。
図24は、実施例3にかかる半導体装置の終端構造部の耐圧特性を示す特性図である。
図22に示す実施例3の電界緩和領域20を3ゾーンJTE構造に設けた第1〜3電界緩和領域20,41,42(
図21参照)に適用したときの終端構造部12の耐圧のシミュレーション結果を
図24に示す。また、
図24には、比較として、
図23に示す従来例4の電界緩和領域120を従来の3ゾーンJTE構造に設けた第1〜3電界緩和領域120,141,142(
図19参照)に適用したときの終端構造部112の耐圧のシミュレーション結果を示す。
図24の横軸は第1JTE領域4,104を形成するための第1イオン注入のドーズ量であり、縦軸は終端構造部12,112の耐圧である。すなわち、
図24は、第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量が変動したときの終端構造部12,112の耐圧依存性を示している。
【0130】
実施例3の第1電界緩和領域20は、実施の形態7にかかる半導体装置の電界緩和領域20に相当し(
図20)、第1〜4区分61〜64に区分している。第1区分61を構成する第1小領域21の幅x
1を11μmとした。第2区分62を構成する第1小領域21の幅x
1を3.3μmとした。第3区分63を構成する第1小領域21の幅x
1を1.6μmとした。第4区分64を構成する第1小領域21の幅x
1を1.0μmとした。第2小領域22の幅x
2は第1〜4区分61〜64ともに同じ1.8μmとした。第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度(等価濃度領域30の平均不純物濃度)比を、第1JTE領域4の不純物濃度の比率を1とし、第2JTE領域5の不純物濃度の比率を0としたときに、第1区分61:第2区分62:第3区分63:第4区分64=0.86:0.65:0.47:0.36とした。各区分61〜64の等価濃度領域30の周期的な配置は、次の通りである。第1区分61に1つの等価濃度領域30を配置した(1周期)。第2区分62に3つの等価濃度領域30を配置した(3周期)。第3区分63に4つの等価濃度領域30を配置した(4周期)。第4区分64に5つの等価濃度領域30を配置した(5周期)。すなわち、第1電界緩和領域20の総幅は55.7μm(=12.8μm×1周期+5.1μm×3周期+3.4μm×4周期+2.8μm×5周期)である。第2,3電界緩和領域41,42の構成は、第1電界緩和領域20と同様である。第2電界緩和領域41における第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度比は、第2JTE領域5の不純物濃度の比率を1とし、第3JTE領域6の不純物濃度の比率を0としたときの比率となる。第3電界緩和領域42における第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度比は、第3JTE領域6の不純物濃度の比率を1とし、n
-型ドリフト層2の不純物濃度の比率を0としたときの比率となる。第1〜3JTE領域4〜6の幅をすべて40μmとした。第1〜3JTE領域4〜6の不純物濃度比を、第1JTE領域4:第2JTE領域5:第3JTE領域6=1:0.5:0.3とした。活性領域11にはSBDの素子構造を設けた。n
-型ドリフト層2はSiCエピタキシャル層とし、その不純物濃度および厚さをそれぞれ3×10
15/cm
3および30μmとした。層間絶縁膜7の厚さを0.5μmとした。アノード電極8の材料をチタン(Ti)とした。アノード電極8を覆うように設けられた電極パッド18の材料をアルミニウム(Al)とした。
【0131】
従来例4の第1電界緩和領域120は、外側に配置されるほど幅x
11を狭くした第1小領域121と、外側に配置されるほど幅x
12を広くした第2小領域122とを交互に繰り返し配置してなる(上記特許文献2の
図11に相当)。従来例4には、第1小領域121および第2小領域122を4つずつ配置した。1組の隣接する第1小領域121および第2小領域122を含む各等価濃度領域を内側(第1JTE領域104側)から順に第1〜4等価濃度領域161〜164とする。第1〜4等価濃度領域161〜164の平均不純物濃度をそれぞれ実施例3の第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度と同じにし、第1電界緩和領域120の総幅を実施例3の第1電界緩和領域20の総幅と同じに55.7μmとした。第2,3電界緩和領域141,142の構成は、第1電界緩和領域120と同様である。第2電界緩和領域141における第1〜4等価濃度領域161〜164の平均不純物濃度比は、第2JTE領域105の不純物濃度の比率を1とし、第3JTE領域106の不純物濃度の比率を0としたときの比率となる。第3電界緩和領域142における第1〜4等価濃度領域161〜164の平均不純物濃度比は、第3JTE領域106の不純物濃度の比率を1とし、n
-型ドリフト層102の不純物濃度の比率を0としたときの比率となる。第1〜3JTE領域104〜106の幅および不純物濃度比は、実施例3の第1〜3JTE領域4〜6と同様である。活性領域111、n
-型ドリフト層102、層間絶縁膜107、アノード電極108および電極パッド118の構成は、それぞれ実施例3の活性領域11、n
-型ドリフト層2、層間絶縁膜7、アノード電極8および電極パッド18と同様である。
【0132】
図24に示す結果より、実施例3は、特に第1JTE領域4を形成するためのイオン注入のドーズ量が1.5×10
13/cm
3以上2.0×10
13/cm
3以下程度であるときに、従来例4よりも耐圧を高くすることができることが確認された。また、一般的に、素子の破壊耐圧を高めるために、終端構造部12,112の耐圧は活性領域11,111の耐圧よりも大きくする(終端構造部12,112の耐圧>活性領域11,111の耐圧)。
図24には、実施例3および従来例4において、終端構造部12,112の耐圧が活性領域11,111の耐圧よりも大きい範囲13,113をそれぞれ矢印で示す。実施例3および従来例4ともに上記諸条件の場合の活性領域11,111の耐圧は4150Vであり、終端構造部12,112の耐圧が活性領域11,111の耐圧よりも大きい範囲13,113を、製造プロセスにおいて第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量のマージン(以下、ドーズ量マージンとする)とすることができる。すなわち、実施例3のドーズ量マージンは従来例のドーズ量マージンよりも1.5倍程度大きいことがわかる。
【0133】
次に、実施の形態7にかかる半導体装置の終端構造部12の電界強度分布について検証した。
図25は、実施例3にかかる半導体装置の電界強度分布を示す特性図である。実施例3および従来例4の第1JTE領域4,104および第1電界緩和領域20,120付近の電界強度分布をシミュレーションした結果を
図25に示す。第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量を2×10
13/cm
3とした(
図24の点線C)。
図25に示す結果より、実施例3の終端構造部12の耐圧が従来例4の終端構造部112の耐圧よりも高くなっていることに応じて、実施例3の終端構造部12の電界強度が従来例4の終端構造部112の電界強度よりも低減されていることが確認された。第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量が2×10
13/cm
3以外の場合については図示省略するが、
図24,25の結果より、終端構造部12の耐圧が高くなることで
図25に示す結果と同様の結果となることがわかる。
【0134】
以上、説明したように、実施の形態7によれば、実施の形態1,5,6と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態7によれば、同一区分内に配置する等価濃度領域をすべて同一構成とすることで、電界緩和領域の各区分内において、第1小領域と第2小領域との境界での電界集中が緩和される。これにより、終端構造部の耐圧や、第1,2小領域を形成するためのイオン注入のドーズ量のばらつきに対するマージンを大きくすることができる。
【0135】
(実施の形態8)
次に、実施の形態8にかかる半導体装置の構造について説明する。
図26は、実施の形態8にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図26(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図26(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態8にかかる半導体装置は、実施の形態7に実施の形態2を適用した構成を備える。
【0136】
具体的には、電界緩和領域20の最も外側の第4区分64内に配置されたすべての第1小領域21の内部に、第1小領域21よりも不純物濃度の低い第1小領域部31が接線方向Yに所定の間隔で選択的に設けられている。すなわち、電界緩和領域20の最も外側の第4区分64には、第1小領域21および第1小領域部31で構成された第3小領域20aと、第2小領域22とが法線方向Xに交互に繰り返し配置され、1組の隣接する第3小領域20aおよび第2小領域22からなる1つ以上の等価濃度領域30aが周期的に配置される(符号30aを付した法線方向Xに連続する5つの横向きの両矢印で示す(
図28においても同様))。これにより、実施の形態2と同様に、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の第4区分64(等価濃度領域30a)とのp型不純物濃度差Δn
pl(
図3(c)参照)が低減される。例えば、第1,2JTE領域4,5および第1〜3区分61〜63を実施の形態7に記載の上記諸条件と同様に設定し、第4区分64の第1小領域21と第1小領域部31の不純物濃度の比率を1:1で構成した場合、第4区分64の平均不純物濃度の比率を0.2程度まで低減させることができる。
【0137】
以上、説明したように、実施の形態8によれば、実施の形態1,5〜7と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態8によれば、電界緩和領域の最も外側の区分内のすべての第1小領域に第1小領域部を選択的に設けることで、電界緩和領域の最も外側の区分の平均不純物濃度を第2JTE領域の不純物濃度に近づけることができるため、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。また、電界緩和領域の最も外側の区分内のすべての第1小領域に第1小領域部を選択的に設けることで、電界緩和領域の最も外側の区分内のすべての等価濃度領域の平均不純物濃度が同じになるため、実施の形態7と同様の効果が維持される。
【0138】
(実施の形態9)
次に、実施の形態9にかかる半導体装置の構造について説明する。
図27は、実施の形態9にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図27(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図27(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態9にかかる半導体装置は、実施の形態7に実施の形態3を適用した構成を備える。
【0139】
具体的には、電界緩和領域20の最も内側の第1区分61内に配置されたすべての第2小領域22の内部に、第2小領域22よりも不純物濃度の高い第2小領域部32が接線方向Yに所定の間隔で選択的に設けられている。すなわち、電界緩和領域20の最も内側の第1区分61には、第2小領域22および第2小領域部32で構成された第4小領域20bと、第1小領域21とが法線方向Xに交互に繰り返し配置され、1組の隣接する第4小領域20bおよび第1小領域21からなる1つ以上の等価濃度領域30bが周期的に配置される。これにより、実施の形態3と同様に、第1JTE領域4と電界緩和領域20の最も内側の第1区分61(等価濃度領域30b)とのp型不純物濃度差Δn
ph(
図3(c)参照)が低減される。例えば、第1,2JTE領域4,5および第2〜4区分62〜64を実施の形態7に記載の上記諸条件と同様に設定し、第1区分61の第2小領域22と第2小領域部32の不純物濃度の比率を1:1で構成した場合、第1区分61の平均不純物濃度の比率を0.864程度まで増加させることができる。
【0140】
以上、説明したように、実施の形態9によれば、実施の形態1,5〜7と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態9によれば、電界緩和領域の最も内側の区分内のすべての第2小領域に第2小領域部を選択的に設けることで、電界緩和領域の最も内側の区分の平均不純物濃度を第1JTE領域の不純物濃度に近づけることができるため、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。また、電界緩和領域の最も内側の区分内のすべての第2小領域に第2小領域部を選択的に設けることで、電界緩和領域の最も内側の区分内のすべての等価濃度領域の平均不純物濃度が同じになるため、実施の形態7と同様の効果が維持される。
【0141】
(実施の形態10)
次に、実施の形態10にかかる半導体装置の構造について説明する。
図28は、実施の形態10にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図28(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図28(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態10にかかる半導体装置は、実施の形態8と実施の形態9とを組み合わせた構成を備える。
【0142】
すなわち、実施の形態10においては、実施の形態8と同様に、電界緩和領域20の最も外側の第4区分64に、1組の隣接する第3小領域20aおよび第2小領域22からなる1つ以上の等価濃度領域30aが周期的に配置され、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の第4区分64(等価濃度領域30a)とのp型不純物濃度差Δn
pl(
図3(c)参照)が低減されている。かつ、実施の形態9と同様に、電界緩和領域20の最も内側の第1区分61に、1組の隣接する第4小領域20bおよび第1小領域21からなる1つ以上の等価濃度領域30bが周期的に配置され、第1JTE領域4と電界緩和領域20とのp型不純物濃度差Δn
phが低減されている。
【0143】
以上、説明したように、実施の形態10によれば、実施の形態1〜3,5〜9と同様の効果を得ることができる。
【0144】
(実施の形態11)
次に、実施の形態11にかかる半導体装置の構造について説明する。
図29は、実施の形態11にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図29(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図29(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態11にかかる半導体装置が実施の形態8にかかる半導体装置と異なる点は、内側から3つ目の第1小領域21から最も外側の第1小領域21までのすべての第1小領域21の内部に、接線方向Yに所定の間隔で第1小領域部31が選択的に設けられている点である。具体的には、第1JTE領域4を囲む同心円状に、1組の隣接する第1小領域21および第2小領域22からなる2つの等価濃度領域30が配置されている(符号30を付し左側から法線方向Xに連続する2個の横向きの両矢印で示す)。そして、この等価濃度領域30を囲む同心円状に、1組の隣接する第3小領域20aおよび第2小領域22からなる複数の等価濃度領域30aが配置されている(符号30aを付し右側から法線方向Xに連続する11個の横向きの両矢印で示す)。
【0145】
各第3小領域20aは、外側に配置されるほど第1小領域21に対する第1小領域部31の比率が高くなっている。すなわち、外側に配置されるほど第3小領域20aの平均不純物濃度が低くなるようにピッチまたは接線方向Yの幅を変えて第1小領域21に第1小領域部31を設けて、外側に配置されるほど等価濃度領域30aの平均不純物濃度が減少するように調整されている。各等価濃度領域30,30aの平均不純物濃度分布を
図29(b)に点線で示す。これにより、第1〜4区分61〜64内での平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に徐々に減少させることができ、各区分61〜64内の隣接する等価濃度領域30aの境界での電界強度を低減させることができる。また、第1〜4区分61〜64内の各平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に徐々に減少させることができるため、電界緩和領域20の不純物濃度分布を内側から外側に向って徐々に減少する理想的な不純物濃度分布にさらに近づけることができる。第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に所定の傾斜で徐々に減少させることができればよく、第1小領域部31を設けない第1小領域21が存在してもよい。
【0146】
以上、説明したように、実施の形態11によれば、実施の形態1,2,5〜8と同様の効果を得ることができる。
【0147】
(実施の形態12)
次に、実施の形態12にかかる半導体装置の構造について説明する。
図30は、実施の形態12にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図30(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図30(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態12にかかる半導体装置が実施の形態9にかかる半導体装置と異なる点は、ほぼすべての第2小領域22の内部に、接線方向Yに所定の間隔で第2小領域部32が選択的に設けられている点である。具体的には、第1JTE領域4を囲む同心円状に、1組の隣接する第4小領域20bおよび第1小領域21からなる複数の等価濃度領域30bが配置されている(符号30bを付した法線方向Xに連続する13個の横向きの両矢印で示す)。
【0148】
各第4小領域20bは、外側に配置されるほど第2小領域22に対する第2小領域部32の比率が低くなっている。すなわち、内側に配置されるほど第4小領域20bの平均不純物濃度が高くなるようにピッチまたは接線方向Yの幅を変えて第2小領域22に第2小領域部32を設けて、外側に配置されるほど等価濃度領域30bの平均不純物濃度が減少するように調整されている。各等価濃度領域30bの平均不純物濃度分布を
図30(b)に点線で示す。これにより、第1〜4区分61〜64内での平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に徐々に減少させることができ、各区分61〜64内の隣接する等価濃度領域30bの境界での電界強度を低減させることができる。また、第1〜4区分61〜64内の各平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に徐々に減少させることができるため、電界緩和領域20の不純物濃度分布を内側から外側に向って徐々に減少する理想的な不純物濃度分布にさらに近づけることができる。第1〜4区分61〜64の平均不純物濃度を内側から外側に向う方向に所定の傾斜で徐々に減少させることができればよく、第2小領域部32を設けない第2小領域22が存在してもよい。
【0149】
以上、説明したように、実施の形態12によれば、実施の形態1,3,5〜7,9と同様の効果を得ることができる。
【0150】
(実施の形態13)
次に、実施の形態13にかかる半導体装置の構造について説明する。
図31は、実施の形態13にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図31には、
図1の電界緩和領域20を拡大して示す。
図31(a),31(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図31(c)には、
図31(a)の切断線C−C’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図32,33は、
図31の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。
図32には、横軸の1メモリを1つの等価濃度領域30(1組の隣接する第1,2小領域21,22を含む領域)とし、縦軸に等価濃度領域30ごとの第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2をプロットする(
図35,37,39,41,45においても同様)。
【0151】
実施の形態13にかかる半導体装置が実施の形態7にかかる半導体装置と異なる点は、次の3点である。1つ目の相違点は、電界緩和領域20を構成する各区分(ここでは例えば8つに区分)71〜78の幅(内側から外側に向う方向の幅)Δxがすべてほぼ等しい点である。すなわち、電界緩和領域20は、等しい幅Δxで8つの区分71〜78に区分されている。各区分71〜78は、それぞれ、実施の形態7と同様に、等価濃度領域30を1つ以上周期的に配置してなる。各区分71〜78の幅Δxは、それぞれの区分を構成する1つ以上の等価濃度領域30の幅(=x
1+x
2)の合計である。
図31では、各区分に内側から外側に向って順に符号71〜78を付している(
図32,34〜41においても同様)。
【0152】
2つ目の相違点は、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpが等しい点である。上述したように各区分71〜78の幅Δxがすべて等しいことで、内側から外側に向って減少する電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70a(内側から外側に向う方向の平均不純物濃度の減少率=ΔNp/Δx)は電界緩和領域20全域(すなわちすべての区分71〜78)にわたって一定である。
図31(c)には、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70aをあらわす近似直線を点線で示す(
図34(c),46(b),47(b)においても同様)。各区分71〜78には、それぞれ、実施の形態7と同様に、同一条件の1つ以上の等価濃度領域30が配置される。このため、各区分71〜78の平均不純物濃度は、それぞれに配置された等価濃度領域30の平均不純物濃度Npに等しい。すなわち、各区分71〜78の平均不純物濃度は、上記(3)式で算出される。
【0153】
電界緩和領域20を形成するにあたって、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpがすべてほぼ一定で、かつ各区分71〜78の幅Δxがすべてほぼ一定となるように、第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2を決定する。等価濃度領域30の最小構造は第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2をともにプロセス限界で決まる最小寸法とした場合であるが、等価濃度領域30の最小構造を配置しなくてもよい。すなわち、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70aが電界緩和領域20全域にわたって一定となるように所定の幅x
1,x
2で第1,2小領域21,22が周期的に配置されていればよい。
【0154】
さらに、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70aを電界緩和領域20全域にわたって一定にしたとしても、第2JTE領域5と電界緩和領域20との境界20fに、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の第8区分78(等価濃度領域30)とのp型不純物濃度差Δn
plが生じる。この第2JTE領域5と第8区分78とのp型不純物濃度差Δn
plは、電界緩和領域20の幅を広くして低減させることが好ましい。その理由は、第2JTE領域5と電界緩和領域20との境界20f付近の電界集中が緩和され、第2JTE領域5の耐圧が向上するからである。
【0155】
同様に、第1JTE領域4と電界緩和領域20との境界20gにも、第1JTE領域4と電界緩和領域20の最も内側の第1区分71(等価濃度領域30)とのp型不純物濃度差Δn
phが生じる。このp型不純物濃度差Δn
phも、第1JTE領域4と電界緩和領域20との境界20g付近の電界強度に影響を及ぼし、第1JTE領域4の耐圧を左右する。このため、第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phも可能な限り小さくし、第1JTE領域4の耐圧を向上させることが好ましい。
【0156】
第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phの最小値は、電界緩和領域20の区分数で決まる各区分71〜78の幅Δxと、プロセス限界で決まる第2小領域22の幅x
2の最小寸法と、で一意に決まる。第1区分71の平均不純物濃度は、第1JTE領域4の平均不純物濃度に近い値であることが好ましく、好適には第1JTE領域4の平均不純物濃度の9割以上であることがよい。すなわち、第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phは、第1JTE領域4の平均不純物濃度の1割未満であることが好ましい。
【0157】
特に限定しないが、例えば、電界緩和領域20の幅を60μmとし、電界緩和領域20を8つに区分して各区分71〜78の幅Δxを7.5μmとした場合の電界緩和領域20の各区分71〜78の条件は次のとおりである。第1JTE領域4の不純物濃度の比率を1とし、第2JTE領域5の不純物濃度の比率を0としたときの、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpの比率を0.11とする。すなわち、外側に配置されるほど第1,2小領域21,22の不純物濃度n
p1,n
p2がそれぞれ11%ずつ低くなることと等価である。
【0158】
この条件において、第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phを0.91としたときの各区分71〜78の第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2を
図32に示す。
図32に図示した第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2のうち、第1〜4区分71〜74における第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2の詳細な数値を
図33に示す。なお、第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2の最小寸法は、プロセス限界で決まる例えば0.7μmとする。
【0159】
図32,33に示すように、第1区分71には1つの等価濃度領域30が配置される(1周期)。この等価濃度領域30を構成する第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2はそれぞれ6.8μmおよび0.7μmである。第1区分71の幅Δxは、第1区分71を構成する1つの等価濃度領域30の幅と等しく7.5μmである。第1区分71の平均不純物濃度の比率は、第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phと同じ0.91である。
【0160】
第2区分72には2つの等価濃度領域30が配置される(2周期)。この等価濃度領域30を構成する第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2はそれぞれ3.01μmおよび0.74μmであり、その合計(等価濃度領域30の幅)は3.75μmである。第2区分72の幅Δxは、第2区分72を構成する2つの等価濃度領域30の幅の合計(3.75μm×2=7.5μm)である。第2区分72の平均不純物濃度の比率は、第1区分71の平均不純物濃度の比率よりも0.11だけ低い0.80(=0.91−0.11)である。
【0161】
第3区分73には2つの等価濃度領域30が配置される(2周期)。この等価濃度領域30を構成する第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2はそれぞれ2.60μmおよび1.15μmであり、その合計は3.75μmである。第3区分73の幅Δxは、第3区分73を構成する2つの等価濃度領域30の幅の合計(3.75μm×2=7.5μm)である。第3区分73の平均不純物濃度の比率は、第2区分72の平均不純物濃度の比率よりも0.11だけ低い0.69(=0.80−0.11)である。
【0162】
第4区分74には4つの等価濃度領域30が配置される(4周期)。この等価濃度領域30を構成する第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2はそれぞれ0.795μmおよび1.080μmであり、その合計は1.875μmである。第4区分74の幅Δxは、第4区分74を構成する4つの等価濃度領域30の幅の合計(1.875μm×4=7.5μm)である。第4区分74の平均不純物濃度の比率は、第3区分73の平均不純物濃度の比率よりも0.11だけ低い0.58(=0.69−0.11)である。
【0163】
同様に、第5区分75には4つの等価濃度領域30が配置される(4周期)。第6,7区分76,77にはそれぞれ2つの等価濃度領域30が配置される(2周期)。第8区分78に1つの等価濃度領域30が配置される(1周期)。すなわち、この一例においては、電界緩和領域20に第1,2小領域21,22が18個ずつ配置される。第5〜8区分75〜78における第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2の詳細な数値は説明を省略する。第5〜8区分75〜78の平均不純物濃度の比率は外側に配置されるほどさらに0.11ずつ低くなり、それぞれ0.47、0.36、0.25および0.14である。第2JTE領域5と第8区分78とのp型不純物濃度差Δn
plは0.14となる。
【0164】
第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2は、当該第1,2小領域21,22で構成される等価濃度領域30の幅および平均不純物濃度N
pに基づいて決定される。具体的には、等価濃度領域30の幅は、当該等価濃度領域30の配置された区分71〜78の幅Δxを当該区分71〜78における等価濃度領域30の個数(周期)で割った値となる。第1区分71の平均不純物濃度は、第1JTE領域4の不純物濃度から第1JTE領域4との所定のp型不純物濃度差Δn
phを引いた値である。第2〜8区分72〜78の平均不純物濃度は、それぞれの内側に隣接する区分71〜77の平均不純物濃度から、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpを引いた値である。第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2は、合計値(=x
1+x
2)が当該第1,2小領域21,22で構成される等価濃度領域30の幅とほぼ等しくなり、かつ当該等価濃度領域30の平均不純物濃度N
pが当該等価濃度領域30の配置された区分71〜78の平均不純物濃度とほぼ等しくなる値であり、上記(3)式を用いて算出される。
【0165】
第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2を決定するにあたって、さらに実施の形態7との3つ目の相違点として、外側に向うほど第1小領域21の幅x
1が狭くなっていなくてもよいし、すべての第2小領域22の幅x
2が一定でなくてもよい。例えば、
図32に示すように、第6,8区分76,78の第1小領域21の幅x
1を(矢印76a,78aで示す部分)、それぞれ内側の第5,7区分75,77の第1小領域21の幅x
1よりも広くしてもよい。また、外側に配置されるほど第2小領域22の幅x
2を広くしてもよいし、この場合において、
図32に示すように、第3区分73の第2小領域22の幅x
2を(矢印73aで示す部分)、外側の第4区分74の第2小領域22の幅x
2よりも広くしてもよい。すなわち、第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2は、内側または外側にそれぞれ隣り合う第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2に対して規則性を有していなくてもよい。
【0166】
また、各区分内の等価濃度領域30の周期を種々変更してもよい。
図34は、実施の形態13にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す説明図である。
図34(a),34(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図34(c)には、
図34(a)の切断線D−D’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図35は、
図34の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。
図34,35には、例えば、第4,5区分74,75にそれぞれ2つの等価濃度領域30を配置した場合(2周期)を示す。
図34に示す電界緩和領域20の第4,5区分74,75以外の条件は、
図31に示す電界緩和領域20と同様である。
図34(c)と
図31(c)とで、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70aは変わらないことがわかる。すなわち、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70aは、各区分71〜78における等価濃度領域30の周期によらず、区分71〜78の幅および隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpで設定可能である。
【0167】
以上、説明したように、実施の形態13によれば、実施の形態1,7と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態13によれば、所定の電気的特性(耐圧確保等)を満たす平均不純物濃度で、電界緩和領域の平均不純物濃度勾配を電界緩和領域全域にわたって一定とすることができる。これにより、第1JTE領域と第2JTE領域との間の電界をさらに緩和させることができる。また、実施の形態13によれば、電界緩和領域の幅に合わせて電界緩和領域の平均不純物濃度勾配を決定することができるため、可能な範囲で電界緩和領域の幅を狭くすることができる。したがって、終端構造部の幅を広げることなく、終端構造部の耐圧を向上させることができる。
【0168】
(実施の形態14)
次に、実施の形態14にかかる半導体装置の構造について説明する。
図36は、実施の形態14にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図36には、
図1の電界緩和領域20を拡大して示す。
図36(a),36(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図36(c)には、
図36(a)の切断線E−E’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図37は、
図36の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。
【0169】
実施の形態14にかかる半導体装置が実施の形態13にかかる半導体装置と異なる点は、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpを低くして、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bを緩やかにした点である。
図36(c)には、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bをあらわず近似直線を点線で示す(
図38(c)、44(c)においても同様)。例えば、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpを0.055とした場合の電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bを
図36(c)に示す。ここでは、
図36,37に示すように、第1,2区分71,72にそれぞれ1つの等価濃度領域30を配置し(1周期)、第3〜6区分73〜76にそれぞれ2つの等価濃度領域30を配置し(2周期)、第7,8区分77,78に4つの等価濃度領域30を配置している(4周期)。
【0170】
実施の形態14においては、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bが緩やかになることで、電界緩和領域20での電界緩和効果を高めることができる。また、外側の第7,8区分77,78における等価濃度領域30の周期を増やすことで、電界緩和領域20での電界緩和効果を高めることができる。一方、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bが緩やかになることで、第2JTE領域5と第8区分78とのp型不純物濃度差Δn
plが大きくなる。このため、第2JTE領域5と電界緩和領域20との境界20fでの電界集中が懸念されるが、この点については例えば後述する実施の形態16,18で解消可能である。また、第2JTE領域5と第8区分78とのp型不純物濃度差Δn
plを小さくすることで、第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phが大きくなる場合には、第1JTE領域4と電界緩和領域20との境界20gでの電界集中が懸念される。この点については例えば後述する実施の形態16,17で解消可能である。
【0171】
各区分71〜78の第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2は、実施の形態13と同様に、電界緩和領域20の区分数および隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpに基づいて種々変更可能である。
図37には、第2小領域22の幅x
2をほぼ一定とし、第3,7区分73,77の第2小領域22の幅x
2をそれぞれ外側の第4,8区分74,78の第2小領域22の幅x
2よりも広くした一例を示す。
【0172】
また、各区分内の等価濃度領域30の周期を種々変更してもよい。
図38は、実施の形態14にかかる半導体装置の構造の別の一例を示す説明図である。
図38(a),38(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図38(c)には、
図38(a)の切断線F−F’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図39は、
図38の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。
図38,39には、例えば、第7区分77に1つの等価濃度領域30を配置し(1周期)、第8区分78に2つの等価濃度領域30を配置した(2周期)場合を示す。
図38に示す電界緩和領域20の第4,5区分74,75以外の条件は、
図36に示す電界緩和領域20と同様である。実施の形態13の別の一例(
図34,35参照)と同様に、
図38(c)と
図36(c)とで、電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bは変わらない。
【0173】
以上、説明したように、実施の形態14によれば、実施の形態7,13と同様の効果を得ることができる。実施の形態14によれば、電界緩和領域の平均不純物濃度勾配を緩やかにすることで、終端構造部の内側の部分(第1JTE領域側の部分)の耐圧をさらに向上させることができる。
【0174】
(実施の形態15)
次に、実施の形態15にかかる半導体装置の構造について説明する。実施の形態15にかかる半導体装置は、実施の形態13にかかる半導体装置の電界緩和領域20(
図31〜33参照)を、実施の形態7の別の一例(
図21参照)と同様に3ゾーンJTE構造の第1〜3電界緩和領域20,41,42に適用した半導体装置である。第1〜3電界緩和領域20,41,42の配置および隣接するJTE領域との平均不純物濃度差は、例えば実施の形態7の別の一例と同様であってもよい。
【0175】
(実施例4)
次に、実施の形態15にかかる半導体装置の終端構造部12の耐圧について検証した。
図40は、従来例5にかかる半導体装置のJTE構造の一部を示す説明図である。
図40(a),40(b)にはそれぞれ電界緩和領域120の平面レイアウトおよび不純物濃度分布を示す。
図40(c)には、
図40(a)の切断線CC−CC’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図41は、
図40の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。
図42は、実施例4にかかる半導体装置の終端構造部の耐圧特性を示す特性図である。
図42には、実施例4の電界緩和領域20を3ゾーンJTE構造の第1〜3電界緩和領域20,41,42(
図21参照)に適用したときの終端構造部12の耐圧のシミュレーション結果を示す。また、
図42には、比較として、
図40に示す従来例5の電界緩和領域120を従来の3ゾーンJTE構造の第1〜3電界緩和領域120,141,142(
図19参照)に適用したときの終端構造部112の耐圧のシミュレーション結果を示す。
図42の横軸は第1JTE領域4,104を形成するための第1イオン注入のドーズ量であり、縦軸は終端構造部12,112の耐圧である。すなわち、
図42は、第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量が変動したときの終端構造部12,112の耐圧依存性を示している。
【0176】
実施例4の第1電界緩和領域20は、実施の形態15にかかる半導体装置の構成を備えたSiC−SBDのJTE構造である。具体的には、実施例4の第1電界緩和領域20は、実施の形態13に例示したように8つに区分され、各区分71〜78に1つ以上の等価濃度領域30を配置した、計18個ずつの第1,2小領域21,22で構成される(
図31〜33参照)。第1電界緩和領域20の幅を60μmとし、区分71〜78の幅Δxをそれぞれ7.5μmとした。第1JTE領域4と第1区分71とのp型不純物濃度差Δn
phを0.91とした。第1JTE領域4の不純物濃度の比率を1とし、第2JTE領域5の不純物濃度の比率を0としたときの、隣接する区分71〜78間の平均不純物濃度差ΔNpの比率を0.11とし、第1電界緩和領域20の平均不純物濃度を外側に向って一定の濃度勾配70aで減少させた。第2,3電界緩和領域41,42の構成は、第1電界緩和領域20と同様である。第1〜3JTE領域4〜6の幅および第1〜3JTE領域4〜6の不純物濃度比は、実施例3と同様である。活性領域11、n
-型ドリフト層2、層間絶縁膜7、アノード電極8および電極パッド18の構成は、実施例3と同様である。
【0177】
図40,41に示すように、従来例5の第1電界緩和領域120は、外側に配置されるほど幅x
11を狭くした第1小領域121と、外側に配置されるほど幅x
12を広くした第2小領域122とを交互に繰り返し配置してなる。従来例5では、1組の隣接する第1,2小領域121,122を含む等価濃度領域を複数(ここでは8つ)配置し、内側から順に第1〜8等価濃度領域171〜178とする。第1電界緩和領域120の総幅を実施例4の第1電界緩和領域20の総幅と同じ60μmとし、各等価濃度領域171〜178の幅をすべて7.5μmとした。第1JTE領域104と第1等価濃度領域171とのp型不純物濃度差を0.91とした。第1〜8等価濃度領域171〜178の平均不純物濃度は、それぞれ実施例4の第1〜8区分71〜78の平均不純物濃度と同じであり、外側に向って一定の濃度勾配で減少する。第2,3電界緩和領域141,142の構成は、第1電界緩和領域120と同様である。第1〜3JTE領域104〜106の幅および不純物濃度比は、実施例4の第1〜3JTE領域4〜6と同様である。活性領域111、n
-型ドリフト層102、層間絶縁膜107、アノード電極108および電極パッド118の構成は、それぞれ実施例4の活性領域11、n
-型ドリフト層2、層間絶縁膜7、アノード電極8および電極パッド18と同様である。符号170は、電界緩和領域120の平均不純物濃度勾配である。
【0178】
これら実施例4および従来例5の終端構造部12,112の耐圧をシミュレーションした結果、
図42に示すように、実施例4においては、終端構造部12のほぼ全域にわたって、従来例5よりも耐圧が高いことが確認された。実施例4および従来例5の第1JTE領域4,104を形成するためのイオン注入のドーズ量を1.65×10
13/cm
3としたシミュレーション点G1,G2の状態の終端構造部12,112の電界強度分布を
図43に示す。
図43は、実施例4の半導体装置の電界強度分布を示す特性図である。
図43に示す結果より、実施例4および従来例5ともに、p型ガードリング3と第1JTE領域4との境界X0(0μm)から外側に50μm程度離れた地点X1付近での電界強度がほぼ同程度の最大値を示すことが確認された。この地点X1付近で最大電界強度を示すことにより、さらに外側の第2JTE領域5,105および第3JTE領域6,106の電界強度も高くなると推測される。そして、実施例4においては、従来例5に比べて第1〜3電界緩和領域20,41,42における電界の振幅(電界強度の振れ幅)が小さいことが確認された。すなわち、実施例4の第1〜3電界緩和領域20,41,42における電界強度の最小値は、従来例5の同電界強度の最小値に比べて高い。これにより、実施例4においては、第1電界緩和領域20よりも外側の地点X2付近の電界強度や、さらに第2電界緩和領域41よりも外側での電界強度が従来例5に比べて高くなると推測される。したがって、実施例4においては、終端構造部12の全域にわたって、従来例5よりも電界強度を高くすることができ、従来例5よりも耐圧を高くすることができることが確認された。
【0179】
以上、説明したように、実施の形態15によれば、実施の形態7,13,14と同様の効果を得ることができる。
【0180】
(実施の形態16)
次に、実施の形態16にかかる半導体装置の構造について説明する。
図44は、実施の形態16にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図44には、
図1の電界緩和領域20を拡大して示す。
図44(a),44(b)には、それぞれ電界緩和領域20の平面レイアウトおよび断面構造を拡大して示す。
図44(c)には、
図44(a)の切断線H−H’におけるp型不純物濃度分布を示す。
図45は、
図44の各区分の第1,2小領域の幅の一例を示す説明図である。実施の形態16にかかる半導体装置は、実施の形態13に実施の形態14を適用した半導体装置である。
【0181】
具体的には、実施の形態16にかかる半導体装置は、実施の形態14と同様に電界緩和領域20の平均不純物濃度勾配70bを緩やかにし、かつ実施の形態13と同様に第1,2JTE領域4,5と電界緩和領域20とのp型不純物濃度差Δn
ph,Δn
plを小さくした構成を備える。より具体的には、電界緩和領域20の所定の平均不純物濃度勾配70bと、第1,2JTE領域4,5と電界緩和領域20との所定のp型不純物濃度差Δn
ph,Δn
plとが得られるように、電界緩和領域20の区分数および隣接する区分間の平均不純物濃度差ΔNpを決定する。
【0182】
例えば、
図44,45には、電界緩和領域20を14に区分して各区分71〜84の幅Δxを5.5μmとし、隣接する区分間の平均不純物濃度差ΔNpを0.055とした場合を示す。各区分には内側から外側に向って順に符号71〜84を付している。第1〜3,13,14区分71〜73,83,84にそれぞれ1つの等価濃度領域30を配置し(1周期)、第4〜12区分74〜82にそれぞれ2つの等価濃度領域30を配置している(2周期)。各区分71〜84の第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2は、実施の形態13と同様に、電界緩和領域20の区分数および隣接する区分71〜84間の平均不純物濃度差ΔNpに基づいて種々変更可能である。ここでは、内側から外側に向って、実施の形態13とほぼ同様に第1,2小領域21,22の幅x
1,x
2を異ならせた状態を示す。この場合、電界緩和領域20の幅は77μmとなる。
【0183】
以上、説明したように、実施の形態16によれば、実施の形態7,13,14と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態16によれば、電界緩和領域の幅が長くなるものの、終端構造部の耐圧を向上させることができ、かつ第1JTE領域を形成するためのドーズ量マージンを拡大することができる。
【0184】
(実施の形態17)
次に、実施の形態17にかかる半導体装置の構造について説明する。
図46は、実施の形態17にかかる半導体装置の構造を示す説明図である。
図46(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図46(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態17にかかる半導体装置は、実施の形態13〜16に実施の形態3を適用した構成を備える。
図46には、実施の形態14に実施の形態3を適用した場合を示す。
【0185】
具体的には、電界緩和領域20の最も内側の第1区分71内に配置されたすべての第2小領域22の内部に、第2小領域22よりも不純物濃度の高い第2小領域部32が接線方向Yに所定の間隔で選択的に設けられている。すなわち、電界緩和領域20の最も内側の第1区分71には、第2小領域22および第2小領域部32で構成された第4小領域20bと、第1小領域21とが法線方向Xに交互に繰り返し配置され、1組の隣接する第4小領域20bおよび第1小領域21からなる1つ以上の等価濃度領域30bが周期的に配置される。これにより、実施の形態3と同様に、第1JTE領域4と電界緩和領域20の最も内側の第1区分71(等価濃度領域30b)とのp型不純物濃度差Δn
ph(
図3(c)参照)が低減される。例えば、第1区分71の第2小領域22と第2小領域部32の不純物濃度の比率を1:1で構成した場合、第1区分71の平均不純物濃度の比率を0.95程度まで増加させることができる。
【0186】
また、最も内側の第2小領域22のみを、第2小領域部32を配置した第4小領域20bとしてもよい。
【0187】
以上、説明したように、実施の形態17によれば、実施の形態7と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態17によれば、電界緩和領域の最も内側の区分の平均不純物濃度を第1JTE領域の不純物濃度に近づけることができるため、終端構造部の内側の部分の耐圧をさらに向上させることができる。
【0188】
(実施の形態18)
次に、実施の形態18にかかる半導体装置の構造について説明する。
図47は、実施の形態18にかかる半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図47(a)には電界緩和領域20の平面レイアウトを示し、
図47(b)には電界緩和領域20の不純物濃度分布を示す。実施の形態18にかかる半導体装置は、実施の形態16に実施の形態2を適用した構成を備える。
【0189】
具体的には、
図47に示すように、電界緩和領域20の最も外側の第8区分78内に配置されたすべての第1小領域21の内部に、第1小領域21よりも不純物濃度の低い第1小領域部31が接線方向Yに所定の間隔で選択的に設けられている。すなわち、電界緩和領域20の最も外側の第8区分78には、第1小領域21および第1小領域部31で構成された第3小領域20aと、第2小領域22とが法線方向Xに交互に繰り返し配置され、1組の隣接する第3小領域20aおよび第2小領域22からなる1つ以上の等価濃度領域30aが周期的に配置される(符号30aを付した法線方向Xに連続する4つの横向きの両矢印で示す)。これにより、実施の形態2と同様に、第2JTE領域5と電界緩和領域20の最も外側の第8区分78(等価濃度領域30a)とのp型不純物濃度差Δn
pl(
図3(c)参照)が低減される。
【0190】
また、最も外側の第1小領域21のみを、第1小領域部31を配置した第3小領域20aとしてもよい。
【0191】
以上、説明したように、実施の形態18によれば、実施の形態2,7,13と同様の効果を得ることができる。実施の形態18によれば、電界緩和領域の最も外側の区分(または最も外側の等価濃度領域)の平均不純物濃度を第2JTE領域の不純物濃度に近づけることができるため、終端構造部の外側の部分の耐圧をさらに向上させることができる。
【0192】
上述した実施の形態8〜12にかかる半導体装置の製造方法は、上述した実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法において各電界緩和領域20,41,42の各区分61〜64における第1,2小領域21,22および各小領域部の平面レイアウトをイオン注入用マスクのパターンによって実現すればよい。
【0193】
また、実施の形態7〜12の電界緩和領域20も、実施の形態1と同様に、外側に配置されるほど幅x
1を狭くした第1小領域21と、配置位置によらず一定の幅x
2を有する第2小領域22とを交互に繰り返し配置してなる。このため、実施の形態7〜12においても実施例1,2と同様の効果が得られる。また、実施の形態13〜18も、実施の形態1と同様に、第1,2JTE領域4,5間に電界緩和領域20を備える。このため、実施の形態7〜12においても実施例1,2と同様の効果が得られる。
【0194】
上述した実施の形態13〜18にかかる半導体装置の製造方法は、上述した実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法において各電界緩和領域20,41,42の各区分71〜78(または各区分71〜84)における第1,2小領域21,22および各小領域部の平面レイアウトをイオン注入用マスクのパターンによって実現すればよい。
【0195】
また、実施の形態13,14,16〜18の電界緩和領域20も、実施の形態15と同様に、すべての区分の幅Δxが等しく、かつ電界緩和領域20全域にわたって一定の濃度勾配で外側に向って平均不純物濃度が減少する構成を有する。このため、実施の形態13,14,16〜18においても実施例4と同様の効果が得られる。
【0196】
以上において本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、たとえば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、本発明では、SBDを例に説明しているが、これに限らず、終端構造部に耐圧構造を形成した様々な半導体装置に適用可能である。具体的には、本発明は、例えば、MOSFETや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などに適用可能である。また、上述した各実施の形態7〜12では、電界緩和領域を4つに区分した場合を例に説明しているが、これに限らず、電界緩和領域を区分する個数や、各区分に配置する等価濃度領域の個数(周期)および幅、隣接する区分間の平均不純物濃度差、電界緩和領域(区分)の平均不純物濃度勾配等は、電界緩和領域の電界集中を緩和させるのに好ましい個数に種々変更可能である。
【0197】
また、上述した各実施の形態では、炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を堆積した炭化珪素エピタキシャル基板を用いた場合を例に説明しているが、これに限らず、例えばデバイスを構成するすべての領域を炭化珪素基板の内部にイオン注入により形成した拡散領域としてもよい。本発明は、シリコン半導体を用いた半導体装置にも適用可能であり、同様の効果を奏する。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。